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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1071354
審判番号 不服2001-19546  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-07-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-11-01 
確定日 2003-01-23 
事件の表示 平成10年特許願第361666号「相変化光記録媒体の初期化方法及びその装置」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 7月 4日出願公開、特開2000-187894]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年12月18日の出願であって、その請求項1乃至9に係る発明は、平成13年7月30日付け手続補正で補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
相変化光記録媒体の表面に記録トラックを複数含む大きさの光ビームを照射して前記表面に形成された記録膜を前記複数の記録トラック分一括して結晶化することにより前記記録膜を光記録が可能な初期状態とする相変化光記録媒体の初期化方法において、
光ビームが始点から終点まで移動する場合、前記終点に近づくほどパワが小さく、少なくとも前記終点に最も近いもののパワと最も遠いもののパワとが異なり、かつ、前記終点に最も近い光ビームのパワが前記記録膜において結晶化が起こり始めるパワで、前記終点に最も遠い光ビームのパワが前記記録膜が溶融する直前のパワ未満になっている複数個の光ビームを互いに所定間隔を維持したまま始点から終点まで移動することを特徴とする相変化光記録媒体の初期化方法。」(以下、本願発明という)

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-241160号公報(平成10年9月11日公開、以下「引用刊行物1」という。)には、次の事項からなる発明が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 情報記録面に所定パワーのレーザ光を照射して該情報記録面を初期化する相変化記録媒体の初期化方法において、
前記レーザ光のパワーを前記情報記録面に結晶化が起き始める近傍の第1のパワーに設定し、当該レーザ光を初期化対象部分に繰り返し照射することを特徴とした相変化記録媒体の初期化方法。
【請求項2】 情報記録面に所定パワーのレーザ光を照射して該情報記録面を初期化する相変化記録媒体の初期化方法において、
前記レーザ光のパワーを前記情報記録面に結晶化が起き始める近傍の第1のパワーに設定し当該レーザ光を初期化対象部分に繰り返し照射する第1の工程と、前記レーザ光のパワーを前記第1のパワーよりも強い第2のパワーに設定し当該レーザ光を前記初期化対象部分に1回乃至複数回照射する第2の工程とを備えたことを特徴とする相変化記録媒体の初期化方法。
【請求項3】 前記第1のパワーを、前記情報記録面に結晶化が起き始めるパワーの1倍乃至1.3倍に設定することを特徴とした請求項1又は2記載の相変化記録媒体の初期化方法。
【請求項4】 前記第2のパワーを、前記初期化対象部分が溶融しない範囲に設定することを特徴とした請求項2記載の相変化記録媒体の初期化方法。
【請求項5】 前記第2工程で初期化対象部分にレーザ光を複数回照射する場合は、照射を行う毎に前記レーザ光のパワーを徐々に強くすることを特徴とした請求項2記載の相変化記録媒体の初期化方法。」
(2)「【0030】
今回の実施例では、基板4として、直径120mm、トラックピッチ0.56μm、基板厚0.6mmのポリカーボネイト基板を用い、その基板4に、干渉膜2としてZnS-SiO2膜を160nm、記録膜1としてGe2Sb2Te5膜を10nm、保護膜3としてZnS-SiO2膜を32nm、順次成膜した。これに加え、今回は保護膜3の上にAiTi膜を80nmさらに成膜している。
【0031】
一方、初期化装置の光スポット径は、ディスクの接線方向(タンジェンシャル方向)が2μm程度、半径方向(ラジアル方向)が100μm程度のものを用いた。この場合、相変化記録媒体の初期化(結晶化)が始まるレーザーパワは350mWであった。また、ディスクの回転数は各半径で線速7.5m/sになるように設定した。更に、ディスクが1周するたびに光ヘッドは5μm移動するようにした。これらの条件の下で、相変化記録媒体に本発明の初期化方法を実施した。」

同じく原査定の拒絶の理由に引用された、特開平9-35267号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、次の事項からなる発明が記載されている。
(3)「【特許請求の範囲】
【請求項1】相変化光学記録媒体の初期化に当たって、相変化記録層に対して、該相変化記録層の融点より低い温度による複数の加熱過程を経て初期化を行うことを特徴とする光学記録媒体の初期化方法。
【請求項2】上記複数の加熱過程が、少なくとも主としてまず低温度における結晶化核の生成を行う加熱過程と、その後に主として高温度における結晶成長を行う加熱過程とを有することを特徴とする請求項1に記載の光学記録媒体の初期化方法。
【請求項3】相変化光学記録媒体の相変化記録層に対して該相変化記録層の融点よりそれぞれ低い温度の加熱を行う複数の加熱部が設けられ、上記光学記録媒体上の上記複数の加熱部による加熱が順次行われる構成とされたことを特徴とする光学記録媒体の初期化装置。
【請求項4】上記複数の加熱部が、レーザー加熱による加熱部とされたことを特徴とする請求項3に記載の光学記録媒体の初期化装置。」
(4)「【0010】尚、本明細書において、主として結晶核の生成とは、この結晶核の生成と同時に少しの結晶育成が発生すること、また主として結晶の育成とは、結晶の育成とともに少しの結晶核の発生が生じる場合があることを含むことを意味するものである。」
(5)「【0012】図1に示す本発明による光学記録媒体の初期化装置においては、光学記録媒体76の上述の相変化記録層72を加熱する第1および第2の1対の加熱部11Aおよび11Bを、矢印aで示す光学記録媒体の回転方向すなわち進行方向に沿って同一軌跡上すなわち同一円周トラック上に沿って加熱する配置関係に配列した場合である。」
(6)「【0015】ここで、ビームスポット6Aおよび6Bは、光学記録媒体76の初期化を要する部分の最内周部にくるように設定し、スピンドルモータとスライドサーボにより、光学記録媒体76の、各ビームスポット6Aおよび6Bとの相対線速度が9.4m/sの一定線速となるように制御する。これらビームスポット6Aおよび6Bは、光学記録媒体76の初期化を要する部分の最内周部から最外周部まで、もしくは最外周部から最内周部まで走査できるようになされる。」

3.対比
引用刊行物1に記載された発明と本願発明とを対比すると、本願発明の「前記終点に近づくほどパワが小さく」とは、ビームが移動するにつれてパワが変化する様にも読みとれる記載ではあるが、ビームのパワが変化していないこと、すなわち、ディスク上の全領域において、最初に照射されるビームのパワは、結晶化が起こり始めるごく近傍のパワであって終点に向けての移動につれて小さくなる様なものではないことが明細書の記載からみて認められる。したがって「終点に近いもの」とは、ディスク上のすべての点において最初に照射するビームであり、「最も遠いもの」とは、ディスク上の、「終点に近いもの」が照射した後にその同一の点において繰り返し照射するビームのうちの最後に照射するビームであることが明細書の記載から認められる。
また、引用刊行物1の段落【0030】および【0031】には、実施例として、本願明細書に記載されたと同様の、トラックピッチ0.56μm、および 光スポット径は、半径方向(ラジアル方向)が100μm程度である旨の記載があるので、このビームを用いる本願発明が記録トラックを複数含む大きさのビームを照射しており、複数の記録トラック分一括して結晶化しているのであれば、引用刊行物1に記載された発明でも同様であることは明らかであるから、両者は、
[一致点]
相変化光記録媒体の表面に記録トラックを複数含む大きさの光ビームを照射して前記表面に形成された記録膜を前記複数の記録トラック分一括して結晶化することにより前記記録膜を光記録が可能な初期状態とする相変化光記録媒体の初期化方法において、
初期化の際に、先に照射するビームほどパワが小さく、少なくとも最初に照射するビームのパワと最後に照射するビームのパワとが異なり、かつ、前記最初に照射する光ビームのパワが前記記録膜において結晶化が起こり始めるパワで、前記最後に照射する光ビームのパワが前記記録膜が溶融する直前のパワ未満になっている光ビームで始点から終点まで移動することを特徴とする相変化光記録媒体の初期化方法。である点で一致し、
[相違点]
本願発明では、パワの異なる「複数個の光ビームを互いに所定間隔を維持したまま始点から終点まで移動する」のに対し、引用刊行物1に記載された発明では、1つのレーザ光を用い、パワを変えて複数回照射している点で相違している。

4.相違点に対する判断
しかしながら、本願請求項1に係る発明では、「複数個」の個数は限定されておらず、また、上記「所定間隔」がどの程度なのかも規定されておらず、かつ段落【0036】の記載によれば複数のヘッドのディスク中心からの距離の差を一定として逆方向に移動していることから、「所定間隔」とは、ビームの半径方向の物理的距離の差を示すものと認められ、してみると線速度一定としたときのある一点に照射される複数ビームの時間間隔は、ディスク中心部と周辺部とでは変化(中心部では時間間隔が短く、周辺部では時間間隔が長くなる変化)しているものと認められ、初期化のための温度の制御について「所定間隔」に格別な意味を認めることができない。
そして、相変化型光記録媒体を初期化するために、「複数個の光ビームを互いに所定間隔を維持したまま始点から終点まで移動する」構成とした発明が引用刊行物2に記載されており、この引用刊行物2に記載された発明は、初期化に要する時間を短縮するために加熱温度の異なる複数の照射部を用いる点で本願発明と同一の分野に属し同一の目的及び効果を有するものであり、本願発明の上記相違点に関しては、上記のとおりそれ以外に格別の意味を認めることができないものであることから、引用刊行物1に記載されたような初期化方法において、初期化に要する時間を短縮するために引用刊行物2に記載された上記構成を採用して本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。
なお、請求人は、審判請求理由において、本願発明では終点に最も近い光ビームのパワを結晶化が起こり始めるパワとする点で相違する旨主張しているが、この構成は、ビームの数を除いて引用刊行物1の請求項5に係る発明と同じであるから、この点の主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、引用刊行物1および2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-11-12 
結審通知日 2002-11-19 
審決日 2002-12-06 
出願番号 特願平10-361666
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ゆずりは 広行殿川 雅也  
特許庁審判長 麻野 耕一
特許庁審判官 張谷 雅人
田良島 潔
発明の名称 相変化光記録媒体の初期化方法及びその装置  
代理人 京本 直樹  
代理人 福田 修一  
代理人 河合 信明  
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