ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
---|---|
管理番号 | 1071577 |
審判番号 | 審判1999-18226 |
総通号数 | 39 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-07-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-11-15 |
確定日 | 2003-02-04 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第289226号「保護されたメモリを含む集積回路及びその集積回路を使用した保護されたシステム」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 7月21日出願公開、特開平 7-182243]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成6年10月28日(優先権主張1993年10月28日フランス国)に出願されたものであって、その請求項1ないし11に係る発明は、明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。 「電気的に変更可能な不揮発性メモリと、組み込まれた制御回路と、電源がオンにされた時に、前記メモリがロックされた状態を決定する状態になるロックを構成する少なくとも1つの揮発性メモリ要素とを備える集積回路であって、上記メモリが、上記ロックによって読出保護することができる第1の領域と、上記ロックによって常に読出保護及び書込み保護され、所定のアドレスに少なくとも1つのパスワードを含む第2の領域とを備え、上記制御回路が、上記メモリがロックされている時に、上記の所定のアドレスによってアドレス指定されるデータ要素を書き込む命令を検出する第1の手段と、上記データ要素の上記パスワードとの互換性を確認する第2の手段を備え、該互換性が同一性とは異なり、互換性が成立すると、上記ロックが解除されることを特徴とする集積回路。」 なお、平成11年12月15日付け手続補正は、同日付けで却下された。 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭64-41048号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。 (1)「EPROMにパスワードが書き込まれている時は、電源電圧Vcc立上り時、データラッチパターン群13IIには、パスワードのデータがラッチされ、データラッチパターン群13Iには、パスワードのデータがラッチされない。 データラッチ回路群13Iのデータ読込み、データ読出しのタイミングは、POC・WまたはPOA・PrまたはPOC・Wが”H”の時、つまり、(8000)H番地のデータが消去状態での電源電圧Vcc立上り時、または(8000)H番地のプログラム書込み時、及びパスワード書込済時の”L”データ読込みタイミングである。データラッチ回路群13IIのデータ読込み、データ読出しのタイミングは、第1図に示すようにPOC,POA・Pr、POA・Veのオアが”H”の時、つまり電源電圧Vcc立上げ時または、(8000)H番地のプログラム書込みまたは、プログラム・ベリファイ時である。」(3頁右上欄10行〜左下欄7行) (2)「第1図の信号Tは、イクスクルーシブオア回路14、アンド回路16などで構成され、データラッチ回路群13Iとデータラッチ回路群13IIのデータが等しい時にのみ“H”となる。この信号Tと、動作モード選択用デコーダ11の出力VeのアンドをとったV’eをEPROMのベリファイ信号とする。プログラム・ベリファイVeは、データラッチ回路群13I、13IIが一致しないかぎり”H”にならない。このことよりプログラム・ベリファイのプロテクト化が可能である。」(3頁左下欄15行〜右下欄4行) (3)「さらに、パスワードが(8000)H番地に書込まれている時は、ここに書き込まれているデータを知っている場合に限り、(8000)H番地にパスワードをEPROMライターでプログラム書込みを行う操作を行うことにより、データラッチ回路群13Iのデータをデータラッチ回路群13IIと一致させることができ、プログラム・ベリファイのプロテクトの解除が可能である。」(第3頁右下欄8行〜16行) (4)「このため、本実施例では、パスワードの書込みが可能なアドレスを複数にするのはもちろん、更にパスワードを書き込むアドレスもEPROMライターによるプログラム書込みで任意に決められるものである。」(5頁左上欄13行〜17行) してみると、引用例1には次の発明が記載されている。 データラッチ回路群Iとデータラッチ回路群IIのデータを比較しプログラム・ベリファイのプロテクト化を行うイクスクルーシブオア回路、アンド回路及びラッチ回路であって、電源電圧の立上り時にはデータラッチ回路群Iにはパスワードのデータがラッチされないものであって、 プログラム・ベリファイのプロテクト化される領域(アドレス(0000)H〜(7FFF)H)と、 パスワードが格納されるともに常に読出し保護および書込み保護された領域(アドレス(8000)H))を備え、 ライターによってパスワード格納アドレスへ書込みを行う操作を行うことによりパスワード照合を行って、一致が得られた場合にのみ、前記プログラム・ベリファイのプロテクトが解除される紫外線消去型不揮発性半導体装置 また、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭64-53244号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。 「第10図は既に第1図のセキュリティコード記憶回路35に記憶されたセキュリティコードをライト(変更)する、つまり更新するための入力方式を示すフローチャートである。(中略)ステップ50においてこの更新モードに入るためには、先ずセキュリティコード入力モードで正しいセキュリティコードが入力されていなければならない。」(8頁左上欄3行〜13行) 3.対比 本願の請求項1に係る発明(以下、前者という。)と引用例1に記載された発明(以下、後者という。)とを比較する。 後者においてはメモリにはプログラムが格納されることを前提としており、プログラム・ベリファイのプロテクトとは、プログラムの読出し保護のことであるから、後者の「プログラム・ベリファイのプロテクト化される領域(アドレス(0000)H〜(7FFF)H)」、「パスワードが格納されるとともに常に読出し保護および書込み保護された領域(アドレス(8000)H)」は、それぞれ、前者の「読出保護することができる第1の領域」「常に読出保護及び書込み保護され、所定のアドレスに少なくとも1つのパスワードを含む第2の領域」に相当する。 後者の「データラッチ回路群Iとデータラッチ回路群IIのデータを比較しプログラム・ベリファイのプロテクト化を行うイクスクルーシブオア回路、アンド回路及びラッチ回路であって、電源電圧の立上り時にはデータラッチ回路群Iにはパスワードのデータがラッチされないもの」は、電源電圧の立上り時には、データラッチ回路群Iには、パスワードのデータはラッチされていないから、比較は一致せずプログラム・ベリファイはプロテクトされた状態となっている。従って、後者の前記構成は前者の「電源がオンにされた時に前記メモリがロックされた状態を決定する状態になる」ことと同等である。なお、ラッチ回路は通常揮発性メモリ要素と考えるのが至当である。 また、後者の「ライターによってパスワード格納アドレスへ書込みを行う操作を行う」「パスワード照合を行って」は、そのように動作するための手段を有しているから、前者の「所定のアドレスによってアドレス指定されるデータ要素を書き込む命令を検出する第1の手段」、「上記データ要素の上記パスワードとの互換性を確認する第2の手段」と同等である。 さらに、後者の不揮発性半導体メモリは、プログラム・ベリファイのためにパスワード照合を行っているから、前者における「制御回路」に相当する手段を有すると考えるのが至当である。 従って、両者は 電気的にプログラム可能な不揮発性メモリと、制御回路と、ロックを構成する少なくとも1つの揮発性メモリ要素であって、電源がオンにされた時に前記メモリがロックされた状態を決定する状態になる要素とを備える不揮発性半導体装置において、上記メモリが、読出保護することができる第1の領域と、上記ロックによって常に読出保護及び書込み保護され、所定のアドレスに少なくとも1つのパスワードを含む第2の領域とを備え、上記制御回路が、上記メモリがロックされている時に、上記の所定のアドレスによってアドレス指定されるデータ要素を書き込む命令を検出する第1の手段と、上記データ要素の上記パスワードとの互換性を確認する第2の手段を備え、互換性が成立すると、上記ロックが解除されることを特徴とする不揮発性半導体装置 である点で一致する。 一方、両者は以下の点で相違する。 (1)電気的にプログラム可能な不揮発性メモリとして、前者は、電気的に消去を行う不揮発性メモリであるのに対し、後者は、紫外線で消去を行う不揮発性メモリである点 (2)前者において、第2の手段が確認に用いるデータ要素とパスワードの互換性とは同一性とは異なるものであるのに対し、後者において、第2の手段が確認に用いる互換性は同一性である点 (3)前者では、ロック解除により、メモリの「第1領域」「第2領域」のいずれもロックが解除された状態になるのに対し、後者では、「第2領域」のロックが解除されるが、「第1領域」のロックは解除されない点 (4)前者では、不揮発性メモリに制御回路が組み込まれて集積回路を構成しているのに対し、後者では制御回路が組み込まれて集積化されているか否かが不明な点 4.相違点についての判断 相違点(1)について 後者のものは紫外線で消去を行う不揮発性半導体メモリ(EPROM)のような電気的にプログラム可能な不揮発性半導体メモリに対する保護技術であるが、電気的にプログラム可能な不揮発性半導体メモリとしては、引用例2に見られるような電気的に消去を行う不揮発性半導体メモリ(EEPROM)も周知のものであり、後者における保護技術を電気的に消去を行うタイプの不揮発性メモリに適用することに何らの阻害要件はなく、必要に応じて適用し得るものである。 相違点(2)について 後者における「データ要素とパスワードとの互換性の確認」はイクスクルーシブオアを用いているので同一性を確認しているが、パスワードの照合手法としてデータ要素とパスワードの間に所定の関係が成り立つかどうかで検証する手法も周知のものであるから、前者のように同一性ではない互換性で確認することも格別のことということはできない。 相違点(3)について 後者のものは紫外線で消去を行う不揮発性半導体メモリ(EPROM)を用い、パスワードは変更不能とする仕様のものと作られているが、相違点(1)で述べたように電気的に消去を行う不揮発性半導体メモリ(EEPROM)を用いること、また、パスワードについてもパスワード照合が取れた後で変更可能とするような仕様も必要に応じて採用されているところである(引用例2)。 従って、パスワードが格納される「第1領域」についてもロックが解除されるようにすることは必要に応じて為し得る設計事項にすぎないものである。 相違点(4)について 引用例2のものは、メモリとパスワード照合に関する回路が単一パッケージに集積化されている。従って、後者においてメモリとパスワード照合のための制御回路を集積化することは回路実現時に普通に想定されることにすぎない。そして、集積化すると内部信号線の全てが外部端子には直接接続されるものではないから、バス上を伝送される信号を単純な分析で検出できないことは普通に予測される効果にすぎない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例1、2に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-08-22 |
結審通知日 | 2002-09-03 |
審決日 | 2002-09-17 |
出願番号 | 特願平6-289226 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 梅村 勁樹、野仲 松男 |
特許庁審判長 |
吉岡 浩 |
特許庁審判官 |
長島 孝志 石井 茂和 |
発明の名称 | 保護されたメモリを含む集積回路及びその集積回路を使用した保護されたシステム |
代理人 | 越場 隆 |