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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C04B
管理番号 1071583
審判番号 不服2001-1854  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-03-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-02-13 
確定日 2003-02-25 
事件の表示 平成4年特許願第246011号「切削工具用立方晶窒化ほう素焼結体」拒絶査定に対する審判事件〔平成6年3月15日出願公開、特開平6-72768、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願請求項1に係る発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.本願の手続の経緯および本願発明
本願は、平成4年8月24日に出願した特許出願であって、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、本願明細書の特許請求の範囲に記載された次のものである。

【請求項1】直接転換法によって得られた純度99重量%以上の立方晶窒化ほう素焼結体からなり、その焼結体を構成する一次結晶粒子の大きさの平均が3.0μm以下であることを特徴とする切削工具用立方晶窒化ほう素焼結体。

2.原査定の理由
原査定の理由の概要は、本願発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平3-65234号公報(以下、「引用例1」という)、特開平1-184033号公報(以下、「引用例2」という)及び特開平2-163339号公報(以下、「引用例3」という)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用例の記載
3-1.引用例1
引用例1には、以下のことが記載されている。
(イ-1)「低圧相窒化ほう素を、触媒を使用せず静的超高圧高温で処理して立方晶窒化ほう素を製造するにあたり、低圧相窒化ほう素が菱面体窒化ほう素を含むことを特徴とする立方晶窒化ほう素の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
(イ-2)「(産業上の利用分野)窒化ほう素の高圧相である立方晶窒化ほう素(以下「cBN」で示す)は、ダイヤモンドに次ぐ硬さと熱伝導率を有し、また化学的に安定であることから、鉄系金属の機械加工用工具や半導体デバイスの放熱基板としての利用が進められている。本発明は、低圧相窒化ほう素から触媒を用いない静的高温高圧法によってcBNを得るための製造方法に関するものである。」(第1頁左下欄第10〜18行)
(イ-3)「このため触媒および焼結助剤を用いない無触媒直接転換法(以下、「直接法」という)により、cBNの粒子及び焼結体の製造を、より穏やかな条件下に実現することが望まれている。直接法によるcBNは微細粒子から構成された多結晶体であり、・・・工具材料、放熱基板として優れた性能を発揮するものと期待されるからである。」(第1頁右下欄第19行〜第2頁左上欄第7行)
(イ-4)「(発明が解決しようとする課題)直接法によるcBNの合成を従来よりも低温・低圧の条件下に可能ならしめ、工業的生産性が低いためにこれまで実用化が困難であった高純度のcBNの粒子またはその焼結体を得ることが本発明の目的である。
発明者らは直接法によるcBNの製造方法、特に原料として使用する低圧相窒化ほう素の種類とcBNへの転換条件との関係について種々検討した結果、従来の原料に少量のrBNを加えたものを用いることにより、意外にも従来より著しく穏やかな高温高圧条件下にcBNへの転換が可能となることを見いだし、本発明に至ったものである。(第2頁左下欄第8〜末行)
(イ-5)「本発明方法に係わる以上の原料は、円板あるいは粉末に加工され、ベルト型高温高圧装置に充填される。その後、まず圧力を続いて温度を上昇させ、所望の温度・圧力で一定時間保持して高温高圧処理を行う。この際、保持する温度、圧力および時間は、好ましくはそれぞれ1700〜2050℃、5〜6.5万気圧および5分-3時間である。」(第3頁右上欄第5〜11行)
(イ-6)「(作用)従来、cBNの原料として用いられる低圧相窒化ほう素は、入手の容易さや価格の面からhBNおよび/又はtBNが広く使われた。しかし、これら従来の原料では例えば文献2)の実施例のように、温度2100℃以上および圧力65kbar以上のように厳しい高温高圧処理が必要であって工業生産に適さない。しかし、この従来原料に前述した方法で少量のrBNを含ませた本発明の原料を用いると、例えば1700〜2050℃および5〜6.5万気圧の生産性に優れた温度圧力条件で触媒を使用せずにcBNの製造が可能となる。このような穏やかな条件でcBNへの直接転換が可能になるのは次のような理由によると思われる。」(第3頁右上欄第19行〜左下欄第12行)
(イ-7)「本発明の原料を1700〜2050℃および5〜6.5万気圧の条件で高温高圧処理した場合、まずrBNが短時間の内に無拡散転移によりcBNに転換すると考えられる。次に、同条件下ではそれ単一では転換を起こさないhBNあるいはtBNもすでに転換しそれに接しているcBN粒子の成長に伴ってその中に取り込まれてcBNに転換して、最終的には原料全体がcBNに転換するものと思われる。」(第3頁右下欄第16行〜第4頁左上欄第3行)
(イ-8)「立方晶窒化ほう素を製造した実施例において、実施例No.3、5〜8、11〜12、14〜16、18〜20での生成物内のcBN(重量%)が100、実施例No.10、13、17で生成物内のcBN(重量%)が99である」旨(第4頁右上欄の表1)

3-2.引用例2
引用例2には、以下のことが記載されている。
(ロ-1)「触媒を使用せずに熱分解窒化ほう素を高温高圧で処理することにより立方晶窒化ほう素を製造するに当り、前記熱分解窒化ほう素が、気相から析出されたままの状態において、六角鱗片状の六方晶窒化ほう素粒子がランダム配向した構造を有し、c軸方向の層間距離(d002)が3.35Å以下であり、密度が2.18g/cm3より大きく、c軸方向の結晶子の大きさが1000Å以上であり、かつ純度が99.995%以上であり、前記高温高圧の条件が1500℃以上の温度および5万気圧以上の圧力であることを特徴とする立方晶窒化ほう素の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
(ロ-2)「実施例No.15、16、17での生成物の結晶相がCBNであって、該生成物の粒径(μm)が、それぞれ、5、10、15」(第6頁の表2)

3-3.引用例3
引用例3には、以下のことが記載されている。
(ハ-1)「平均粒径が2μm以下の立方晶窒化硼素粉末を45〜60体積%含有し、残部結合材よりなる混合粉末を超高圧焼結して得られた焼結体であって、前記結合材は、TiNz、Ti(C1-xNx)z、(Ti,M)(C1-xNx)zおよび(Ti,M)Nzからなる群から選択した1種以上のTi化合物(但し、MはTiを除く周期律表第IVa、Va、VIa族の遷移金属元素であり、0.45≦z≦0.65、0.50≦x<1.0)を含み、含有されるTiと周期律表第IVa、Va、VIa族の遷移金属元素との割合が原子比で2/3〜97/100であり、5〜15重量%のAlを含み、タングステンを前記Ti化合物、WCおよびWの少なくともいずれかの形態で含み、前記結合材中の全タングステン濃度が2〜20重量%であり、前記焼結体組織において、平均粒径2μm以下の立方晶窒化硼素結晶が前記結合材よりなる結合相を介して相互に接合されている、高精度加工工具用焼結体。」(特許請求の範囲第1項)
(ハ-2)「この発明の焼結体では、上述のような結合材よりなる結合相を介してcBN結晶が相互に接合しており、微粒のcBNが充填されている組織を有する。そのため、cBNの含有量を多くすることが可能とされている。それによって、焼結体の強度および耐摩耗性も改善されている。また、粗粒のcBNが脱落することによって、被削材の面粗度が悪化するため、cBNの粒度は2μm以下の微粒であることが必要であり、好ましくは1μm以下であればよい。」(第4頁左下欄第16行〜右下欄第5行)

4.当審の判断
本願発明は、前記1.で記載したとおりの切削工具用立方晶窒化ほう素焼結体に関するものであるが、ここでの、直接転換法とは、本願明細書の記載(段落0009)によれば、触媒や結合材を用いず固体間の直接相転移によってcBN(立方晶窒化ほう素)焼結体を製造する方法をいうものである。
一方、引用例1には、前記(イ-1)の記載によれば、立方晶窒化ほう素の製造方法に関する発明が記載されており、そして、その立方晶窒化ホウ素の製造方法では、前記(イ-3)及び(イ-4)の記載によれば、触媒及び焼結助剤(結合材を含む)を用いない直接法により焼結体を得ることを含むものであって、また、前記(イ-5)〜(イ-7)の記載によれば、その製造方法では、固体間の直接相転移により立方晶窒化ホウ素が形成されるものと解されるものであり、以上のことからすると、引用例1に記載される発明において製造される立方晶窒化ホウ素は、直接転換法によって得られた立方晶窒化ほう素焼結体を含むものである。そして、引用例1の前記(イ-8)の記載によれば、その実施例No.3、5〜8、10〜20において、生成物内の立方晶窒化ほう素(cBN)は99重量%以上であり、また、前記(イ-2)の記載によれば、得られた立方晶窒化ほう素は、鉄系金属の機械加工用工具として利用されるもので、そのことから切削工具に使用できることも自明のことである。
そこで、本願発明と、引用例1に記載される製造された上記の立方晶窒化ほう素とを対比すると、
両者は、
「直接転換法によって得られた純度99重量%以上の立方晶窒化ほう素焼結体からなる切削工具用立方晶窒化ほう素焼結体」である点で一致する。
しかし、本願発明では、「その焼結体を構成する一次結晶粒子の大きさの平均が3.0μm以下である」のに対し、引用例1に記載のものでは、立方晶窒化ほう素の焼結体を構成する一次結晶粒子に関して触れられることがなく、したがって、当該一次結晶粒子の大きさについて何も示されず、この点で両者は相違する。
そこで、上記相違点に関する構成が容易に想到することができたものであるか否かについて検討する。
引用例1に記載のものでは、上記したとおり、立方晶窒化ほう素の焼結体を構成する一次結晶粒子に関して触れられることがないのであるから、引用例1に記載の発明からは、上記相違点に関する構成を容易に導き出すことができない。
次に、引用例2の記載をみると、そこには、直接転換法により立方晶窒化ほう素焼結体を製造することが示されており、そして、上記(ロ-2)の記載によれば、その生成物のCBN(立方晶窒化ほう素)結晶相の粒径は、5〜15μmであることも示される。
しかし、引用例2に記載のCBN結晶相の当該粒径は、本願発明で規定する一次結晶粒子の平均粒径が3μm以下よりも大きく、また、そのCBN結晶相の当該粒径の数値も、偶々、示されるだけであって、CBN結晶相の粒径の意義につき説明されるところは何もない。
したがって、引用例2に記載のものから、上記相違点に関する構成を容易に導き出すことができない。
次いで、引用例3の記載をみる。
引用例3の上記(ハ-2)の記載によれば、粗粒のcBN(立方晶窒化ほう素)が脱落することによって、被削材の面粗度が悪化するため、cBNの粒度は2μm以下の微粒であることが必要であり、好ましくは1μm以下であればよいことが記載されている。
ところが、引用例3に記載された焼結体は、上記(ハ-1)の記載から明らかなように、平均粒径が2μm以下の立方晶窒化硼素粉末と、Ti化合物、Al、タングステンからなる結合材との混合粉末を超高圧焼結して得られた焼結体であって、焼結体組織において、結合材よりなる結合相を介して、平均粒径2μm以下の立方晶窒化硼素結晶が相互に結合されているものである。
そして、引用例3に記載のものでは、予め製造された所望の粒径の立方晶窒化ほう素粉末を用い、これを結合材と混合して焼結させることにより、所望の粒径の微粒子を有する焼結体を得ることができるものである。
一方、引用例1に記載されるような、直接転換法による立方晶窒化ホウ素焼結体は、結合材を介在せず、立方晶窒化硼素粉末同士の結合のみにより構成されるものであり、そして、当該焼結体は、低圧相窒化ほう素を、高温高圧下で処理することにより、直接相転移させた結果として、立方晶窒化ほう素の微粒子からなる焼結体が製造されるものであって(必要ならば、引用例1及び2の従来の技術の欄を参照)、得られた焼結体に存在する微粒子の径(一次結晶粒子の大きさ)が通常の焼結体のように単純に設計できるものではない。
このように、引用例1に記載の焼結体と引用例3に記載される焼結体とは、いずれも焼結体といえるものであるとしても、その焼結体の製造方法、及び、微粒子の結合構造ないしは結合状態が相違し、焼結体に存在する微粒子に対する認識が基本的に異なるものである。
そうすると、引用例3で教示されるところの立方晶窒化硼素粉末の粒度を2μm以下とする技術が公知であるとしても、それを、引用例1に記載の発明の焼結体に適用しようと想到すること、そして、そこに存在する一次結晶粒子の大きさを本願発明の数値範囲に調整して、本願発明のようにすることは、当業者といえども容易になしうるものではない。
そして、本願明細書の記載(段落0023、0024及び表1の記載参照)の記載によれば、本願発明では、上記相違点に関する構成を具備することにより、その余の構成と相俟って、切削工具用立方晶窒化ほう素焼結体として、粗粒の脱落に基づく摩耗に対して耐性を示すだけでなく、粒界に結合剤が存在しないうえに粒径が小さく均質な微細構造を有しているという構造に基づいて、クラックの伝播が起こりにくく靭性が大きい、等の有用な効果を奏したものである。
してみると、上記相違点に関する構成が、引用例1、2及び3に記載のものから容易に想到することができない。

また、本願発明と引用例2に記載の発明を対比した場合には、本願発明は、「その焼結体を構成する一次結晶粒子の大きさの平均が3.0μm以下である」という構成を具備する点で引用例2に記載のものと相違するものであり、そして、上記した理由と同じ理由により、その相違する構成が、引用例2、1及び3に記載のものから容易に想到することができない。

したがって、本願発明は、引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものは認められない。

5.結び
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2003-02-12 
出願番号 特願平4-246011
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C04B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三崎 仁  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 唐戸 光雄
後谷 陽一
発明の名称 切削工具用立方晶窒化ほう素焼結体  
代理人 渡辺 敬介  
代理人 渡辺 敬介  
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