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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1071666
審判番号 不服2001-23091  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-09-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-12-25 
確定日 2003-02-05 
事件の表示 平成 4年特許願第 43893号「画像処理装置およびその制御方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 9月21日出願公開、特開平 5-244414]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年2月28日に出願されたものであって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成11年3月1日、平成13年9月21日、平成14年1月24日、及び平成14年9月13日の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 同期信号に同期して画像を処理する画像処理部から、その画像処理に同期して、前記同期信号および複数の色成分データで表される画像データを入力する入力手段と、
前記入力手段から供給される同期信号に基づき、前記入力手段から供給される入力画像データの色空間情報が、予め用意された、特定画像を示す色空間情報と類似するか否かを判定する第一の判定手段と、
前記入力手段から供給される、前記第一の判定手段に供給される同期信号と同じ同期信号に基づき、前記入力手段から供給される、前記第一の判定手段に供給される入力画像データと同じ入力画像データのエッジ画像を抽出して、そのエッジ画像に、予め用意された、前記特定画像の形状に関する形状情報が含まれるか否かを、前記第一の判定手段の判定に並行して判定する第二の判定手段と、
前記第一の判定手段から出力される、前記画像データの色空間情報が前記特定画像を示す色空間情報に類似するという判定結果、および、前記第二の判定手段から出力される、前記画像データに前記特定画像の形状に関する形状情報が含まれるという判定結果の両方を条件に、前記入力画像データが前記特定画像を表すことを示す一致信号を出力する処理手段とを有することを特徴とする画像処理装置。」
2 引用刊行物
これに対して、当審の拒絶理由で引用した特開平1-316782号公報(平成1年12月21日出願公開。以下「引用例1」という。)には、「画像処理装置」の発明に関し
ア 発明の目的について、「本発明の目的は、貨幣もしくは有価証券等の偽造行為が未然に防止される画像処理装置を提供することにある」(2頁右上欄3行〜5行)こと、
イ 課題を解決するための手段について、「原稿より画像情報を読取る読取手段と、当該読取られた画像情報を記録媒体上に形成する画像形成手段と、読取りに係る原稿が複製を禁止されているものであることを所定の基準に従って評価する評価手段と、当該評価に応じた度合いで、読取られた画像情報を変換する変換処理手段とを備えたことを特徴とする」(2頁右上欄8行〜14行)こと、
ウ 発明の実施例について、「第1図示の露光走査ユニット11によって読み取られたカラー画像信号は、増幅回路7から信号線501を介してビデオ処理ユニット12に入力される。本ユニット12内では当該入力をビデオレシーバ回路60で受け取り、次にビデオ前処理回路61で各色での画素ずれや、シェーディングを補正してr,g,b信号として出力する。前処理されたビデオ信号は紙幣・証券類特徴抽出回路52に入力される」(5頁右上欄16行〜左下欄4行)こと、
エ 同じく発明の実施例について、「紙幣・証券類特徴抽出回路52では入力されてくるr,g,b信号をもとに、あらかじめ設定されている紙幣・証券類の特徴とマッチングするか否かを判定し、VUBUSを介してCPU22に判定結果を返す。CPU22はいくつかの特徴に対する判定結果をもとに「紙幣または証券類らしさ」の度合いを演算し、「紙幣または証券類らしさの度合い」に応じてVUBUSを介して特定の処理回路に対し、変換パラメータを設定する」(5頁左下欄17行〜右上欄5行)こと、
オ 同じく発明の実施例について、「紙幣・証券類特徴抽出回路52が行うマッチング判定の処理としては、入力されたr,g,bにつき、原稿のカラースペクトル分布をROM等に予め登録してあるデータと比較することによって評価を行ったり、原稿の一部あるいは全体の総合的な画像パターンをROM等に予め登録されてあるパターンデータと比較して評価をを行ったり、さらにはそれらのような処理を併用して行うようにすることもできる。(中略)第5図は以上のような特徴抽出回路52により得たいくつかの評価に基づいてCPU22が行うパラメータ変換処理手順の一例を示す。(中略)まず、ステップS1では、上述の回路52その他より種々の評価(判定結果)を入力する。次に、ステップS3では、当該評価に基づいて適宜の演算を行い、「紙幣または証券類らしさ」の度合いを決定する」(5頁右下欄6行〜6頁左上欄8行)こと、
カ 発明の効果について、「紙幣や証券類の偽造が有効に防止できる」(7頁左下欄13行)こと、が記載されている。
同じく当審の拒絶理由で引用した特開昭61-220085号公報(昭和61年9月30日出願公開。以下「引用例2」という。)には、「印刷物判別装置」の発明に関し、
キ 「光電スイッチPS(16)は、搬送される印刷物の陰をとらえ、印刷物の配給をみ印刷物端信号を出力されこの出力信号はタイミングコントローラ(17)に入力される。そしてこのタイミングコントローラ(17)から、後段の検切処理回路(15), マルチ・プレクサMPX(11),A/D変換器(12),データ切替スイッチ(13),バッファメモリ(14),平均色相計算回路(18),類似度計算回路(19),基準パターン・メモリ(20)およびマイクロプロセッサ(21)に対し、その種々のものに見合った、タイミング信号T1乃至T9が供給され、タイミングを制御する」(2頁右上欄6行〜16行参照)こと、が記載されている。

3 対比・判断
そこで、本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、
(a) 引用例1に記載された発明は、露光走査ユニット11によって読み取られたカラー画像信号をビデオ処理ユニット12に入力し、同ユニット12内のビデオ前処理回路61で各色での画素ずれや、シェーディングを補正し、補正後のr,g,b信号を後段の紙幣・証券類特徴抽出回路52に出力するものである(上記2イ、ウ参照)から、画像処理部が「同期信号に同期して画像を処理」し、また、入力手段による画像データの入力が、「画像処理に同期して、同期信号」と共に行われる点を除き、「画像処理部から複数の色成分データで表される画像データを入力する入力手段」を備える点で、本願発明と差異がない。
(b)引用例1に記載された発明は、入力されてくるr,g,b信号をもとに、あらかじめ設定されている紙幣・証券類の特徴とマッチングするか否かを判定する紙幣・証券類特徴抽出回路52を備え、そのマッチング判定の処理としては、入力されたr,g,bにつき、原稿のカラースペクトル分布(色空間情報に相当)をROM等に予め登録してあるデータと比較することによって評価を行うものを含むものである(上記2エ、オ参照)から、類似するか否かの判定が、「入力手段から供給される同期信号に基づき」行われる点を除き、「入力手段から供給される入力画像データの色空間情報が、予め用意された、特定画像を示す色空間情報と類似するか否かを判定する第一の判定手段」を備える点で、本願発明と差異がない。
(c)引用例1に記載された発明は、前記したように、入力されてくるr,g,b信号をもとに、あらかじめ設定されている紙幣・証券類の特徴とマッチングするか否かを判定する紙幣・証券類特徴抽出回路52を備え、そのマッチング判定の処理としては、原稿の一部あるいは全体の総合的な画像パターンをROM等に予め登録されてあるパターンデータと比較して評価を行うことを含むものであり、また、カラースペクトルについての評価(第二の判定手段)を含むこれら種々の評価(判定結果)は、CPU22入力されて、適宜の演算が行われるものであり(上記2エ、オ参照)、それらの評価はそれぞれ並行して行われることが当業者に明かであるから、第二の判定手段が、「前記入力手段から供給される、前記第一の判定手段に供給される同期信号と同じ同期信号に基づき」、「入力画像データのエッジ画像を抽出して、そのエッジ画像に、予め用意された、前記特定画像の形状に関する形状情報が含まれるか否かを」判定する点を除き、「入力手段から供給される前記第一の判定手段に供給される入力画像データと同じ入力画像データに、予め用意された、前記特定画像に関するパターン情報が含まれるか否かを、前記第一の判定手段の判定に並行して判定する第二の判定手段」を備える点で、本願発明と差異がない。
(d) 引用例1に記載された発明は、前記したように、入力されたr,g,bにつき、原稿のカラースペクトル分布(色空間情報に相当)をROM等に予め登録してあるデータと比較することによって行う評価(第一の判定手段)と、原稿の一部あるいは全体の総合的な画像パターンをROM等に予め登録されてあるパターンデータと比較して行う評価(第二の判定手段)を備え、これらの種々の評価(判定結果)は併用され、CPU22入力されて、適宜の演算が行われ、「紙幣または証券類らしさの度合いを決定するものであり(上記2エ、オ参照)、前記適宜の演算は、前記種々の評価(判定結果)を条件とすることが当業者に明かであるから、第二の判定手段から出力される判定結果が、「前記画像データに前記特定画像の形状に関する形状情報が含まれるという判定結果」である点を除き、「第一の判定手段から出力される、前記画像データの色空間情報が前記特定画像を示す色空間情報に類似するという判定結果、および、前記第二の判定手段から出力される、前記画像データに前記特定画像に関するパターン情報が含まれるという判定結果の両方を条件に、前記入力画像データが前記特定画像を表すことを示す一致信号を出力する処理手段」を備える点で、本願発明と差異がない。
したがって、両者は、
「画像処理部から複数の色成分データで表される画像データを入力する入力手段と、前記入力手段から供給される入力画像データの色空間情報が、予め用意された、特定画像を示す色空間情報と類似するか否かを判定する第一の判定手段と、前記入力手段から供給される前記第一の判定手段に供給される入力画像データと同じ入力画像データに、予め用意された、前記特定画像に関するパターン情報が含まれるか否かを、前記第一の判定手段の判定に並行して判定する第二の判定手段と、前記第一の判定手段から出力される、前記画像データの色空間情報が前記特定画像を示す色空間情報に類似するという判定結果、および、前記第二の判定手段から出力される、前記画像データに前記特定画像に関するパターン情報が含まれるという判定結果の両方を条件に、前記入力画像データが前記特定画像を表すことを示す一致信号を出力する処理手段とを有する画像処理装置」である点で一致し、次の各点で相違する。
(相違点1)
本願発明は、画像処理部が「同期信号に同期して画像を処理」し、また、入力手段による画像データの入力が、「画像処理に同期して、同期信号」と共に行われるのに対して、引用例1に記載された発明は、そのような構成を明記しない点。
(相違点2)
本願発明は、第一の判定手段における判定が「入力手段から供給される同期信号に基づき」行われるのに対して、引用例1に記載された発明は、そのような構成を明記しない点。
(相違点3)
本願発明は、第二の判定手段が「前記入力手段から供給される、前記第一の判定手段に供給される同期信号と同じ同期信号に基づき」、「入力画像データのエッジ画像を抽出して、そのエッジ画像に、予め用意された、前記特定画像の形状に関する形状情報が含まれるか否かを」判定するのに対して、引用例1に記載された発明は、そのような構成を明記しない点。
(相違点4)
本願発明は、第二の判定手段から出力される判定結果が、「前記画像データに前記特定画像の形状に関する形状情報が含まれるという判定結果」であるのに対して、引用例1に記載された発明は、そのような構成を明記しない点。
そこで、まず、相違点1について検討すると、
画像処理部を同期信号に同期して動作させ、処理した画像データをその画像処理に同期して後段の処理部に入力することは、例示するまでもなく、当業者に周知であるから、画像処理部を「同期信号に同期して画像を処理」するように構成し、また、入力手段による画像データの入力を、「画像処理に同期して、同期信号」と共に行うものとすることは、当業者が格別の創意工夫を要することなく容易になし得ることである。
次に、相違点2について検討すると、
画像等の入力データを処理するデータ処理手段を、入力側から供給される同期信号に基づいて制御することは、引用例2に例示されるように(上記2キ参照)当業者に周知であるから、データ処理手段である第一の判定手段における判定を「入力手段から供給される同期信号に基づき」行うものとすることは、当業者が格別の創意工夫を要することなく容易になし得ることである。
次に相違点3について検討すると、
判定手段を構成する各処理部をを同一のタイミング信号(同期信号)により制御することは、引用例2に例示されるように(上記2キ参照)、当業者に周知であり、また、形状情報のマッチングにより特定画像であるか否かの判定を行うことや、複数の形状情報間のマッチング判定を、各パターンから抽出したエッジ画像に基づいて行うことは、当業者に周知である(必要であれば、前者について特開平2-210591号公報、後者について、特開平3-85984号公報参照)から、第二の判定手段を「前記入力手段から供給される、前記第一の判定手段に供給される同期信号と同じ同期信号に基づき」、「入力画像データのエッジ画像を抽出して、そのエッジ画像に、予め用意された、前記特定画像の形状に関する形状情報が含まれるか否かを」判定するように構成することは、当業者が格別の創意工夫を要することなく容易になし得ることである。
次に、相違点4について検討すると、相違点3について検討したように、「入力画像データのエッジ画像を抽出して、そのエッジ画像に、予め用意された、前記特定画像の形状に関する形状情報が含まれるか否かを」判定するように構成することは、当業者が容易になし得ることであるから、第二の判定手段から出力される判定結果を「前記画像データに前記特定画像の形状に関する形状情報が含まれるという判定結果」とすることも、当業者が格別の創意工夫を要することなく容易になし得ることである。
そして、本願発明の構成によりもたらされる効果も引用例1に記載された発明、及び周知技術から当業者が容易に予測し得る程度のものであり格別のものではない。
4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-11-13 
結審通知日 2002-11-18 
審決日 2002-12-13 
出願番号 特願平4-43893
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加内 慎也  
特許庁審判長 東 次男
特許庁審判官 江頭 信彦
佐藤 聡史
発明の名称 画像処理装置およびその制御方法  
代理人 大塚 康徳  
代理人 高柳 司郎  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  

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