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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06T
管理番号 1071685
審判番号 不服2001-18774  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-08-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-18 
確定日 2003-02-06 
事件の表示 平成 4年特許願第 46191号「画像投影装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 8月20日出願公開、特開平 5-207990]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願発明は、平成4年1月31日の出願であって、平成13年4月2日に手続補正がされ、平成13年9月11日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成13年10月18日に審判請求がされたものである。


2.本願発明

本願発明は、明細書及び図面の記載からみて、上記平成13年4月2日付け手続補正書で手続補正された請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)である。

「【請求項1】
原画像を構成する異なる位置の多数の平面的な画像の各々の上で投影像の各画素への投影線近傍に位置する複数の画素値を取り出す手段と、
これら取り出された各画素値よりスプライン関数による補間計算によって投影線上の画素値を各平面的な画像ごとに得るスプライン関数補間手段と、
該同一投影線上に位置するものとして平面的な画像の各々から求めた値のうちの最大値を選んでその投影線上の画素値とすることにより投影像の各画素値を得る手段と
を備えることを特徴とする画像投影装置。」


3.引用刊行物

これに対して、当審が通知した拒絶の理由で刊行物3として引用した「畑中雅彦、鶴岡大八郎、“超伝導MRIシステム-新しい臨床応用ソフトウェア-、東芝レビュー、Vol.46、No.2、93-96頁、(1991年2月)」(以下、「刊行物3」という。)には、「超伝導MRIシステム」に関して、図面と共に、以下の記載がある。
(ア)「脳内血管のように複雑に走行する血管系を十分に描出するためには三次元的にデータを収集し、得られた三次元MRアンギオ画像データを投影して多方向から観察することが行われている(図4)。」(第95頁左欄7行〜10行)
(イ)「図4.三次元MRアンギオ画像データからの投影原理 投影線に沿った画像値の中で、最大値を投影面に投影している(最大値投影法)。」(図4)
上記(ア)及び(イ)の記載によると、刊行物3には、
「三次元的にデータを収集して得られた三次元MRアンギオ画像データについて、投影線に沿った画像値の中で、最大値を投影面に投影して多方向から観察する超伝導MRIシステム」(以下、「刊行物3記載の発明」という。)が記載されている。

当審が通知した拒絶の理由で刊行物1として引用した「田宏、他、“スプライン関数によるMR画像の補間拡大”、MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY、Vol.9、No.3、43、339-340頁、(1991年6月)」(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。
(ウ)「特にMR画像は縦横のマトリクスであるため、従来の線形補間法やタイル補間法では組織の境界部分で輪郭線がギザギザになる。MRアンジオのように血管と他の背景部分とのコントラスト差の大きい場合には血管が滑らかな連続した線としてつながらない。そこで我々は種々のスプライン関数を用いて補間を行う方法を検討し、処理の容易さ、補間の滑らかさの点から雲形定規的スプライン関数を用いてMR画像の補間拡大を行った。」(339頁26行〜30行)
上記(ウ)の記載によると、刊行物1には、
「MR画像は縦横のマトリクスであるため、従来の線形補間法やタイル補間法では組織の境界部分で輪郭線がギザギザになり、MRアンジオでは血管が滑らかな連続した線としてつながらないことから、雲形定規的スプライン関数を用いてMR画像の補間を行うこと」(以下、「刊行物1記載の事項」という。)が記載されている。


4.対比・判断

本願発明と刊行物3記載の発明とを対比すると、
(あ)刊行物3記載の発明は、三次元的にデータを収集して得られた三次元MRアンギオ画像データについて、投影面に投影して多方向から観察する超伝導MRIシステムであるから、画像投影装置である点で、刊行物3記載の発明は本願発明と相違しない。

(い)刊行物3記載の発明は、三次元的にデータを収集して得られた三次元MRアンギオ画像データについて、投影線に沿った画像値を投影面に投影しているから、取り出す画素値が「投影像の各画素への投影線近傍に位置する複数の画素値」ではない点を除き、「原画像を構成する異なる位置の多数の平面的な画像の各々の上で投影像の各画素の画素値を取り出す手段」を、刊行物3記載の発明が有することは明らかである。

(う)刊行物3記載の発明は、三次元的にデータを収集して得られた三次元MRアンギオ画像データについて、投影線に沿った画像値の中で、最大値を投影面に投影しているから、「同一投影線上に位置するものとして平面的な画像の各々から求めた値のうちの最大値を選んでその投影線上の画素値とすることにより投影像の各画素値を得る手段」を、刊行物3記載の発明が有することは明らかである。

したがって、本願発明と刊行物3記載の発明とは、
「原画像を構成する異なる位置の多数の平面的な画像の各々の上で投影像の各画素の画素値を取り出す手段と、
同一投影線上に位置するものとして平面的な画像の各々から求めた値のうちの最大値を選んでその投影線上の画素値とすることにより投影像の各画素値を得る手段と
を備えることを特徴とする画像投影装置」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本願発明は、取り出す画素値が投影像の各画素への投影線近傍に位置する複数の画素値であり、これら取り出された各画素値よりスプライン関数による補間計算によって投影線上の画素値を各平面的な画像ごとに得るスプライン関数補間手段を備えているのに対して、刊行物3記載の発明は、取り出す画素値の数が記載されておらず、スプライン関数補間手段を備えていない点。

そこで、相違点について検討するに、三次元MRアンギオ画像データは、縦横のマトリクスの画素データから構成されるMR断面画像の断面画像系列から構成されているから、この三次元MRアンギオ画像データを最大値投影法により投影した場合、その投影角度によっては投影線上に画素が存在しない場合があり、このような場合には、投影線上の画素値を補間して求める必要があることは明らかな事項であるとともに、補間により投影線の画素値を求める構成として、最近傍の画素を用いる構成や線形補間法によって画素を補間して求める構成が、本願発明の「従来の技術」の欄で審判請求人が記載している如く、三次元MRアンギオ画像データを最大値投影法で投影する画像投影装置にとって周知な構成である。
そして、刊行物1には、MR画像において、線形補間法により補間した場合に生じる輪郭線のギザギザをなくし、滑らかな連続線でつながるようにするため、補間方法としてスプライン関数を用いて補間することが開示されており、補間方法としては、最近傍の値を代用する方法や線形補間する方法に比較して、スプライン関数を用いて補間する方法は、より誤差の少ない補間が可能であることは、審判請求人が平成14年10月31日付け意見書で「表示画像をよりスムースにするために用いられることが周知であるスプライン補間」と記載しているごとく、周知な事項である。
また、スプライン関数を用いて補間するためには、求めようとする点の近傍に位置する複数の画素値を取り出し、これら取り出された各画素値よりスプライン関数による補間計算によって、その点の画素値を得るスプライン関数補間手段を備える必要があること、及び、補間された投影像を得るためには、補間演算を断面画像系列の各MR断面画像の各々で求められる必要があることは明らかな事項である。
このため、刊行物3記載の発明において、取り出す画素値が投影像の各画素への投影線近傍に位置する複数の画素値であり、これら取り出された各画素値よりスプライン関数による補間計算によって投影線上の画素値を各平面的な画像ごとに得るスプライン関数補間手段を備えるように構成することは、当業者であれば容易になし得る事項である。

そして、本願発明における効果も、刊行物3記載の発明及び刊行物1記載の事項から当業者が容易に予想し得る程度のものであって、格別のものではない。

なお、審判請求人は、平成14年10月31日付けの意見書において、
「刊行物1及び刊行物2ともに、画像上のギザギザをスムースにすることを課題としてスプライン補間を採用することを開示しているだけであり、本願発明のように、最大投影法を用いる場合における課題を何等示唆するものではありません。すなわち、本願発明は、最大投影法を採用するものであるため、画像におけるギザギザをスムースにするという課題はなく、各投影像ごとに真の最大値を特定するという課題を有するものであり、かかる最大値投影法における課題は、刊行物1及び刊行物2には、何等開示されておりません。」と主張している。
しかしながら、上記相違点の検討で記載した如く、三次元MRアンギオ画像データは、縦横のマトリクスの画素データから構成されるMR断面画像の断面画像系列から構成され、この三次元MRアンギオ画像データを最大値投影法により投影した場合、その投影角度によっては投影線上に画素が存在しない場合があり、このような場合には、この投影線上の画素値を補間して求める必要があること、及び、補間により投影線の画素値を求める構成として、最近傍の画素を用いる構成や線形補間法によって画素を補間することによって画素間の画素値を求める構成が、本願発明の「従来の技術」の欄で審判請求人が記載している如く、三次元MRアンギオ画像データを最大値投影法で投影する画像投影装置にとって周知な構成である。
そして、刊行物1には、補間演算として線形補間法を用いた場合に生じる輪郭線のギザギザをなくし、滑らかな連続線でつながるようにすることを目的として、補間演算としてスプライン補間演算を用いることが記載されている。
このため、補間演算として線形補間法を用いた場合に輪郭線のギザギザが生じるという問題意識に基づいて、滑らかな連続線でつながるようにするという目的を設定し、刊行物3記載の発明に刊行物1記載の事項を組み合わせることは、当業者であれば格別の困難性を有することなくなし得る事項であって、上記主張を採用することはできない。


5.むすび

したがって、本願発明は、刊行物3記載の発明及び刊行物1記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-11-22 
結審通知日 2002-11-26 
審決日 2002-12-13 
出願番号 特願平4-46191
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 手島 聖治真木 健彦▲広▼島 明芳  
特許庁審判長 東 次男
特許庁審判官 佐藤 聡史
江頭 信彦
発明の名称 画像投影装置  
代理人 江口 裕之  
代理人 喜多 俊文  

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