ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G06F |
---|---|
管理番号 | 1071697 |
審判番号 | 不服2001-9658 |
総通号数 | 39 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-02-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-06-08 |
確定日 | 2003-02-06 |
事件の表示 | 平成10年特許願第229574号「組合せ最適化方法および組合せ最適化システム」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 2月25日出願公開、特開2000- 57124]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年8月14日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、平成13年6月19日付けの手続補正書によって補正された明細書(以下、本願明細書という。)及び図面の記載からみて、請求項1に記載された次の事項により特定されるものと認める。 「複数地点のすべての各二地点間の距離を距離データとして与えられ、距離和が最短となる地点の順序を決める組合せ最適化を行う組合せ最適化部と、確率パラメータを格納するパラメータ格納部とを有し、 前記組合せ最適化部は、前記組合せ最適化を行うために、前記順序の各順番において、どの地点を通るかを与える確率分布を持つ確率モデルを使用するものであり、 a)前記距離データと前記パラメータ格納部に格納されている確率パラメータとから、前向き確率、後ろ向き確率を算出し、 b)これら前向き確率、後ろ向き確率、及び前記パラメータ格納部から読み出された確率パラメータとに基づいて前記確率パラメータを更新し、 c)前記パラメータ格納部から読み出された確率パラメータと前記b)で更新された確率パラメータとを比較し、両者の差が大であれば、更新された確率パラメータを前記パラメータ格納部に格納して、前記a)に戻り、 そうでない場合には、d)に進み、 d)前記パラメータ格納部に格納されている確率パラメータに基づいて、前記順序を定める ことを特徴とする組合せ最適化システム。」 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概容は、「本願の請求項1乃至3に係る発明は、自然法則を利用した技術思想の創作ではないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない。」というものである。 3.請求人の主張 請求人は、平成13年6月19日付け手続補正書により請求項の記載を補正するとともに、審判請求の理由において、「請求項1-3記載の発明では、その主要な処理の一部である、確率パラメータの更新に、パラメータ格納部というハードウェア資源を用いており、請求項1-3記載の発明は、いずれも、特許法第29条柱書の規定を充足することは明かである」旨主張している。 4.当審の判断 本願明細書には、本願発明がコンピュータのハードウェアとソフトウェアにより実現される旨明示されていないが、この分野の技術常識、及び本願明細書には本願発明の組合せ最適化部の具体的ハードウェア構成が一切記載されていないことを勘案すると、本願発明は、 複数地点のすべての各二地点間の距離を距離データとして与えられ、距離和が最短となる地点の順序をコンピュータにより数値的に求める組合せ最適化システムであって、数学的近似解法に関するものであり、組合せ最適化部及びパラメータ格納部から構成されるものである。 そして、本願発明は、パラメータ格納部というハードウェア資源を用いてはいるが、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていなければ、すなわち、数学的近似解法に係るソフトウェアのアルゴリズムを、請求項の記載に基づいて当業者が把握できる程度に具体的に記載されていなければ、実質的には数学的解法であって、自然法則を利用していないものに等しいので、特許法第2条で規定する発明に該当しないものとなる。 そこで、本願発明の組合せ最適化部における手順a)乃至d)について、その記載が、その記載に基づいて、数学的近似解法に係るソフトウェアのアルゴリズムを当業者が把握できる程度に具体的なものか検討する。 すると、手順c)及び手順d)はともかく、手順a)は、「前記距離データと前記パラメータ格納部に格納されている確率パラメータとから、前向き確率、後ろ向き確率を算出し、」というものであり、前向き確率、及び後ろ向き確率というものが距離データ及び確率パラメータからどのように算出されるのか明確でなく、この手順a)を実施するソフトウェアのアルゴリズムを当業者が把握できる程度に手順a)が具体的に記載されているとは認めることができない。 また、手順b)も、単に「これら前向き確率、後ろ向き確率、及び前記パラメータ格納部から読み出された確率パラメータとに基づいて前記確率パラメータを更新し、」と規定されているだけものであり、手順b)を実施するソフトウェアのアルゴリズムを当業者が把握できる程度に具体的に記載したものではない。 そして、本願発明は、複数地点のすべての各二地点間の距離を距離データとして与えられ、距離和が最短となる地点の順序をコンピュータにより数値的に求める組合せ最適化システムであって、距離和が最短となる地点の順序を算出する手段が上述のとおりであるから、結局、本願発明は全体としてみて、実質的には数学的解法に該当し、自然法則を利用した技術思想であると認めることはできない。 なお、請求人は、上記のごとく、「本願発明では、その主要な処理の一部である、確率パラメータの更新に、パラメータ格納部というハードウェア資源を用いており、本願発明は、、特許法第29条柱書の規定を充足することは明かである」旨主張しているが、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されているといえるためには、単にあるハードウェア資源を用いることに言及していればよしとするものではなく、当該処理を実施するためのソフトウェアのアルゴリズムを当業者が把握できる程度に具体的に記載することが必要であるから、請求人の上記主張を認めることはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第1項の柱書きに規定する要件を満たしていないので、本願は、原査定の理由によって拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-12-02 |
結審通知日 | 2002-12-03 |
審決日 | 2002-12-16 |
出願番号 | 特願平10-229574 |
審決分類 |
P
1
8・
14-
Z
(G06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩間 直純 |
特許庁審判長 |
徳永 民雄 |
特許庁審判官 |
村上 友幸 平井 誠 |
発明の名称 | 組合せ最適化方法および組合せ最適化システム |
代理人 | 河合 信明 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 京本 直樹 |