ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G02B |
---|---|
管理番号 | 1071709 |
異議申立番号 | 異議2002-71131 |
総通号数 | 39 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-09-10 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-04-25 |
確定日 | 2002-10-21 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3226220号「カラーフィルターおよびその製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3226220号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)手続の経緯 特許第3226220号の請求項1に係る発明は、平成3年2月8日に特許出願され、平成13年8月31日にその特許の設定登録がなされ、その後異議申立人大湯佳子により特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年9月11日に訂正請求がなされたものである。 (2)訂正の適否についての判断 (ア)訂正の内容 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1を、次のように訂正する。 「【請求項1】 カラーフィルターにおいて、透明基板上に導電性材料で形成され、開口部が一定の間隔をもって同一方向に順次設けられたブラックマトリックス、および該同一方向における順次設けられた開口部および該開口部間におけるブラックマトリックス上に連続して形成された赤色着色層、及び該赤色着色層に隣接して同様に形成された緑色着色層および青色着色層からなるストライプ状の画素を有し、各画素およびブラックマトリックス上に連続した透明電極を有すると共に、透明電極とブラックマトリックスとの間には、各画素毎にストライプ状の電気的接続部が形成されており、電気的接続部がストライプ状の画素ピッチに対して14%以下の幅で、かつ透明電極の400nm〜700nmにおける光の平均透過率が92%以上であることを特徴とするカラーフィルター。」 (イ)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項aに係る訂正は、特許請求の範囲の減縮に該当し、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないし、新規事項の追加にも該当しない。 (ウ)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)(以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 (3)特許異議の申立について (ア)申立の理由の概要 申立人大湯佳子は、証拠として甲第1号証(特開平1ー167823号公報)、甲第2号証(特開平2ー44314号公報)、甲第3号証(特開昭59-149604号公報)、甲第4号証(特開昭61-290605号公報)、甲第5号証(特開平2ー146502号公報)を提出し、本件請求項1に係る発明の特許は、甲第1〜5号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるので、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき旨主張している。 (イ)本件請求項1に係る発明 上記「(2)訂正の適否についての判断」で示したように上記訂正が認められるから、本件請求項1に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 カラーフィルターにおいて、透明基板上に導電性材料で形成され、開口部が一定の間隔をもって同一方向に順次設けられたブラックマトリックス、および該同一方向における順次設けられた開口部および該開口部間におけるブラックマトリックス上に連続して形成された赤色着色層、及び該赤色着色層に隣接して同様に形成された緑色着色層および青色着色層からなるストライプ状の画素を有し、各画素およびブラックマトリックス上に連続した透明電極を有すると共に、透明電極とブラックマトリックスとの間には、各画素毎にストライプ状の電気的接続部が形成されており、電気的接続部がストライプ状の画素ピッチに対して14%以下の幅で、かつ透明電極の400nm〜700nmにおける光の平均透過率が92%以上であることを特徴とするカラーフィルター。」(以下、「本件発明」という。) (ウ)引用刊行物 当審が平成14年7月5日付で通知した取消理由で引用した刊行物1〔甲第1号証(特開平1ー167823号公報)〕には、 「これらの図において、1は液晶を封止する2枚のガラス基板のうちの一方のガラス基板、2はガラス1の内面(液晶封止側)に区画して設けられた赤、緑、青のカラーフィル夕、3はカラーフィル夕2の区画部に設けられカラーフィル夕2とガラス基板1に狭設された金属遮光膜、4はカラーフィル夕2の上に形成された保護膜、5は保護膜4の上に形成されたカラーフィル夕2の区画部において金属遮光膜3と電気的に接続された透明電極膜(ITO)である。」(第2頁左下欄第5〜14行)が記載されている。 同刊行物2〔甲第2号証(特開平2ー44314号公報)〕には、 「透明なガラス板である透明基板10は、上下2面が互いに平行で、各面10a,10bが平らである。上面10aが液晶に臨む側であり、その面10aに、まず、透過光を遮断可能な遮光層20が設けられている。この遮光層20は、黒色染料を含有したポリイミド樹脂、あるいはクロム等の金属材料によって形成することができる。遮光層20は、各色画素を形成するためにエッチングされるが」(第2頁左下欄第8〜16行) 「エッチングによる抜き部分22の大きさは、たとえば、150μm×150μmのように、各色画素の大きさ、たとえば、170μm×170μmよりも一回り小さくする。そしてこのとき、各抜き部分22の間に、たとえば、50μm幅の充分なスペースを取る。」(第2頁右下欄第1〜6行) 「各色画素30は、各抜き部分22を完全に被うように形成するが、遮光層20との重なりはなるべく小さくする方が良い。というのは、隣り合う色画素30間に、平らな遮光層20のスペースを充分に取りたいからである。色画素30と遮光層20との重なりを左右共に10μmとすると、色画素30間の境界領域をなす遮光層20上のスペースは、幅30μmほどである。」(第2頁右下欄第11〜19行) 「遮光層20および各色画素30を形成した透明基板10の上に、さらに、透明保護膜40が全体を被うように形成される。」(第2頁右下欄第20行〜第3頁左上欄第2行) 「こうした透明保護膜40の上に、透明電極ライン50が載る。各透明電極ライン50は、ITO等の透明電極材料をスパッタリング等で成膜し、ついで、それをフォトリソグラフィ法でエッチングする常法によって形成する。」(第3頁左上欄第12〜16行) 「透明保護膜40についても、透明電極ライン50の形成工程によって、カラーフィル夕を損傷することがない場合、たとえば、各色画素30を充分に硬化したような場合には、きわめて薄く形成することもできるし、あるいは省略することもできる。」(第3頁左下欄第4〜9行)が記載されている。 同刊行物3〔甲第3号証(特開昭59-149604号公報)〕には、 「ターゲット電極20に、In2O391mol%、SnO29mol%の焼結体ターゲット21を貼り付け、ターゲットとガラス基板の間隔は50mmとした。」(第4頁左上欄第17〜20行) 「可視域分光透過率は85〜98%、0.5μm以上の膜面粒状異物は・・・であった。」(第4頁左下欄第4〜6行) 「本発明による金属酸化物薄膜は、以上に説明した撮像管ターゲット用として有用であるのみならず、当然のことながら液晶表示素子、電子写真、太陽電池等の種々光電変換素子などにも適用できることは云うまでもない。」(第5頁左下欄第1〜5行)が記載されている。 同刊行物4〔甲第4号証(特開昭61-290605号公報)〕には、 「In2O3焼結体をターゲットとしてプレナーマグネトロン方式スパッタリングで膜形成を行った。」(第2頁左下欄第14〜16行) 「測定の結果、まず可視光の透過率については波長400〜800μmで総てが90%以上の透過率を示した。」(第2頁右下欄第13〜15行) 「従って、液晶用電極や太陽電池の電極での電圧降下や電力消費を抑えることができ、電気エネルギーの移送が効率的に行える。」(第3頁右上欄第14〜16行)が記載されている。 同刊行物5〔甲第5号証(特開平2ー146502号公報)〕には、 「透明電極4を低抵抗化するための一手法として透明電極4の膜厚を厚くする方法がある。第4図にITO透明電極4の膜厚とシート抵抗の関係を示した。」(第2頁左上欄第12〜15行)が記載されている。 (エ)対比・判断 本件発明と上記刊行物1〜5に記載の発明とを対比すると、刊行物1〜5に記載の発明は、本件発明を特定する事項である「同一方向における順次設けられた開口部および該開口部間におけるブラックマトリックス上に連続して形成された赤色着色層、及び該赤色着色層に隣接して同様に形成された緑色着色層および青色着色層からなるストライプ状の画素を有」する点を備えておらず、この点により本件発明は、平成14年9月11日付特許異議意見書第4頁第3〜5行記載の「各画素の平坦性に優れるものとでき、カラー液晶表示装置とした場合の表示性に優れ、また、透明電極を薄膜とした場合でも、導電安定性に優れる」という効果を奏するものであり、本件発明が上記刊行物1〜5のいずれかに記載された発明であるとも、刊行物1〜5に記載の発明から容易に推考することができたものともいえない。 (オ)むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件請求項1に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 カラーフィルターおよびその製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 カラーフィルターにおいて、透明基板上に導電性材料で形成され、開口部が一定の間隔をもって同一方向に順次設けられたブラックマトリックス、および該同一方向における順次設けられた開口部および該開口部間におけるブラックマトリックス上に連続して形成された赤色着色層、及び該赤色着色層に隣接して同様に形成された緑色着色層および青色着色層からなるストライプ状の画素を有し、各画素およびブラックマトリックス上に連続した透明電極を有すると共に、透明電極とブラックマトリックスとの間には、各画素毎にストライプ状の電気的接続部が形成されており、電気的接続部がストライプ状の画素ピッチに対して14%以下の幅で、かつ透明電極の400nm〜700nmにおける光の平均透過率が92%以上であることを特徴とするカラーフィルター。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、カラー液晶表示装置等に使用されるカラーフィルターに関し、とくに透明電極膜に特徴を有するカラーフィルターに関する。 【0002】 【従来の技術】 液晶表示装置は、透明電極を設けたガラス等の透明な基板を1ないし10μm程度のギャップを設けてその間に液晶物質を封入し、配向させ、電極間に電圧を印加または比印加することによって形成される透明部分と不透明部分によって画像を表示している。カラー液晶表示装置はいずれかの透明電極基板上に光の三原色に対応する赤(R)、緑(G)、青(B)の三色のカラーフィルターを設けており、液晶のシャッター作用によって3原色を加色して所望の色を表示している。 【0003】 カラー液晶表示装置用のカラーフィルターは、一般に透明基板、ブラックマトリックス、着色層、保護膜、透明導電膜等により構成されており、RGBの三原色の位置に対向する電極あるいは薄膜トランジスタを形成した透明基板とを1μmないし10μmの間隔を保持し液晶物質を封入して液晶表示装置を形成している。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 カラーフィルターは図6に1部の断面図を示すようにガラス41などの透明基板上に光を遮光し隣接する着色層を区画するブラックマトリックス42を形成した後に、顔料分散法、染色法、電着法、印刷法等によってR、G、Bの三原色を所定の形状とした着色層43を形成し、着色層上には着色層を保護する目的で保護膜44を形成し、更に保護膜の上には、液晶を駆動するための透明電極45が形成されている。一般的なパーソナルコンピュータ用の対角が10インチの表示装置の場合には、R、G、Bの各画素について640×400個ないしは640×480個という膨大な数の微細なの画素から構成されている。 【0005】 カラー液晶表示装置には、液晶の駆動方法によって単純マトリックス方式とアクティブマトリックス方式があるが、最近ではパーソナルコンピュータなどの表示装置用には画質に優れ、それぞれの画素を確実に制御することが可能であり、また動作速度も速いアクティブマトリックス方式の採用が進められている。 【0006】 アクティブマトリックス方式の液晶表示装置では各画素毎に薄膜トランジスタ(TFT)素子をガラス基板上に形成し、各素子のスイッチング作用によって各画素の液晶のシャッター作用を制御している。これらの素子の対極には一様な透明電極が形成されている。 【0007】 透明電極には、一般に酸化錫、酸化インジウムおよびITOと称するこれらの複合酸化物が使用されている。透明電極の成膜方法には、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の各種の方法があるが、カラーフィルターの透明電極の基体となる保護膜は合成樹脂で形成されているので保護膜の耐熱性の面から比較的低温での成膜が可能な方法が求められている。このためにカラーフィルター用の透明電極の製造にはスパッタリングが広く用いられている。また、透明電極の電気抵抗が高いと液晶の駆動には高い電圧が必要となったり、所望の画素以外の部分の液晶を駆動することが起こったり、あるいは必要な画素を正確に駆動することが困難となったり、応答速度が遅くなるなど好ましくない現象が起きるので電気抵抗の低いITO膜が求められている。 【0008】 スパッタリングによって析出するITO膜は基板の温度によって析出物の結晶形態が異なり、とくに析出面の温度を300℃ないし350℃の温度とすれば析出するITO膜の結晶性が改善されて比抵抗が小となるので、低抵抗膜を得るために基板面をこのような温度とすることが行われている。 【0009】 ところが、ガラス基板のような耐熱性の基材の面に直接にITO膜を成膜する場合には350℃程度の温度はなんら問題とならないが、カラーフィルターの保護膜上にITO膜を形成する場合には、基板の温度の上昇には制約がある。すなわち、保護膜および着色層の材料が有機物であるので耐熱性の大きな有機物を使用した場合であっても200℃程度の温度が限界であって、300℃以上に加熱することは不可能である。 【0010】 そこで、液晶駆動用の電気抵抗の低いITO膜を得るためには、低温度で形成した比抵抗が高い膜の膜厚を厚くすることによって実質的な電気抵抗を小さくすることも考慮されるが、膜厚を厚くすると光の透過特性にも変化を生じたり、応力の増大によって外観が変化することが起こり、さらには製造費用の増大やスループットの低下等が起こるので、カラーフィルターには好ましくない。 【0011】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは上記した問題点を解決する手段を検討した結果、カラーフィルターの各色の画素を区画するとともに、液晶の駆動用のTFT等のトランジスタあるいは電極を遮光するためにガラス基板上に形成されているブラックマトリックスを導電体として利用することによりITO膜の実質的な電気抵抗を減少させるものである。 【0012】 カラーフィルターに形成されるブラックマトリックスは、クロム、ニッケル、アルミニウム、タングステン等の金属薄膜あるいはカーボンブラックなどの遮光材料を混合した合成樹脂で形成されており、導電性を有しているので、所定の箇所においてITO膜と電気的な接続を形成することによって、ITO膜の電気抵抗を減少させることを見いだしたものである。 【0013】 本発明のカラーフィルターの製造は、ガラス基板上にブラックマトリックスおよび着色層を形成した後に接続部を設けた保護膜を形成することによって行う。接続部の形成はエッチングなどの各種の方法によって形成することが可能であるが、フォトマスクを使用して露光するのみで微細なパータンを形成することができる光硬化性の透明な樹脂を使用するとレジストを使用することなく所定の接続部を形成することが可能となるので好ましい。このような目的で使用することができる光硬化性の樹脂としては、光感光性を有しており樹脂の硬度が大きいものであれば、多くのものを用いることが可能であるが、光重合性アクリレートオリゴマーに一つの分子内に複数の官能基を有する多官能光重合性アクリレートモノマーを添加した感光性アクリル樹脂を用いることにより、樹脂の橋かけ度を高めて剛直で硬度が大きい膜質とすることができ保護膜上に透明電極を形成してもクラックやしわが発生しない。 【0014】 上記の光重合性アクリレートオリゴマーとしては、分子量1000〜2000程度のものが好ましく、ポリエステルアクリレートまたは、フェノールノボラックエポキシアクリレート、o-クレゾールノボラックエポキシアクリレート等のエポキシアクリレートあるいは、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴマアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等をあげることができ、多官能光重合性アクリレートモノマーとしては、1,4ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。 【0015】 さらに、上記のような光重合性アクリレートオリゴマーに多官能光重合性アクリレートモノマーを添加した光重合性の樹脂に比べて光重合性アクリレートオリゴマーとエポキシ樹脂との混合物に一つの分子内に複数の官能基を有する多官能光重合性アクリレートモノマーを添加した感光性アクリル樹脂を用いることにより、樹脂の橋かけ度を高めて剛直で硬度が大きい膜質とすることができ保護膜上に厚い透明電極を形成してもクラックやしわが発生しないだけでなく着色層の隣接するR、G、B間に形成される凹部およびR、G、Bの部分に高さの違いが生じていても、保護膜の表面の凹凸がきわめて少ない平坦性の良好な保護膜が得られる。 【0016】 このような目的で使用可能な光重合性アクリレートオリゴマーとしては、分子量1000〜2000程度のものが好ましく、ポリエステルアクリレートまたは、フェノールノボラックエポキシアクリレート、o-クレゾールノボラックエポキシアクリレート等のエポキシアクリレートあるいは、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴマアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等をあげることができる。 【0017】 エポキシ樹脂としては以下に〔化1〕および〔化2〕で構造式を示すフェノールノボラック型のエポキシ樹脂あるいはクレゾールノボラック型のエポキシ樹脂をあげることができる。 【0018】 【化1】 ![]() 【0019】 また、多官能光重合性アクリレートモノマーとしては、1,4ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。 【0020】 保護膜の形成方法は透明基板上に設けた着色層上に、光重合性アクリレートオリゴマー、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂、多官能光重合性アクリレートモノマーに重合開始剤、エポキシ硬化剤を添加した感光性樹脂をスピンナー法、ロール法、スプレイ法、スクリーン印刷法などの任意の塗布方法によって塗布した後に所定の電気的接続部のパターンが描かれたマスクを載置して紫外線を照射して必要な箇所を硬化し、紫外線が照射されなかった部分の未硬化の感光性樹脂を溶剤で溶解除去することによって所定の領域のみに橋かけ度を高めた剛直で硬度が大きい膜質とした樹脂の保護膜を形成することができる。 【0021】 次いで、接続部を形成した保護膜上にITO膜をスパッタリングによって成膜すると接続部にはブラックマトリックスが露出しているので、ITO膜はブラックマトリックス上にも堆積し、保護膜上に成膜されるITO膜と一体に形成され、その結果ITO膜のみの場合に比べて実質的にITO膜の電気抵抗を下げることが可能となる。 【0022】 【作用】 カラーフィルターの各色の画素を区画するとともに、液晶の駆動用のTFT等のトランジスタあるいは電極を遮光するためにガラス基板上に形成されているブラックマトリックスを導電体として利用することによりITO膜の実質的な電気抵抗を減少させるものであり、着色層上に形成する保護膜上にブラックマトリックスが露出した部分を設けてITO膜を通常の方法で成膜することによってブラックマトリックスとITO膜との導電接続を実現したことによってITO膜の電気抵抗を低下させることができる。以下に本発明の実施例を示し、更に詳細に説明する。 【0023】 【実施例】 本発明のカラーフィルターを図面を参照して説明する。図1は、本発明のカラーフィルターの平面図であり、図2は図1をA-A線で切断部分平面図である。カラーフィルター1はガラス基板2上に金属クロムなどからなるブラックマトリックス3が形成されており、ブラックマトリックスを境界にしてR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色からなる着色層4が形成されており、着色層上には着色層を保護する透明な合成樹脂からなる保護膜5が形成されている。保護膜上にはITO膜6が設けられているが、ブラックマトリックス上には保護膜が形成されていない接続部7があり、保護膜上にITO膜を成膜すると保護膜が設けられていない接続部にITO膜が成膜され、その結果ブラックマトリックスとITO膜との電気的接続が形成される。また、接続部の形状は円、長方形等の任意の形状とすることができる。接続部を設ける箇所はITO膜の電気抵抗の分布を均一化するためにカラーフィルターに平均的に分布していることが必要であり、各画素毎に設けることが好ましい。接続部の形成箇所の1例を図3を参照して示すと、ブラックマトリックス21の一部に各画素22毎に接続部23を形成している。 【0024】 また、本発明のカラーフィルターを製造する方法を図4を参照して示すと、ブラックマトリックス31および着色層32を形成したガラス基板33(A)上に、保護膜34の材料を塗布(B)し、接続部35を露光しないようなフォトマスク36を設けて紫外線37を照射して露光(C)した後に、現像によって未露光部分38を除去する(D)。そして透明導電性膜39を成膜して接続部において透明導電性膜とブラックマトリックスとの間の導電性接続を形成する。以上のように保護膜として光硬化性の透明な樹脂を使用するとレジストを使用することなくフォトマスクを使用して露光するのみで微細なパータンを形成することができるので好ましい。このような目的で使用することができる光硬化性の樹脂としては、樹脂の硬度が大きいものであれば、多くのものを用いることが可能であり、光重合性アクリレートオリゴマーに多官能光重合性アクタリレートモノマーを添加した感光性樹脂は、硬化後の特性に優れているので好ましい。 【0025】 光重合性アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステルアクリレートまたは、フェノールノボラックエポキシアクリレート、o-クレゾールノボラックエポキシアクリレート等のエポキシアクリレートあるいは、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴマアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等をあげることができ、多官能光重合性アクリレートモノマーとしてはモノマーとしては、1,4ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等があげられる。 【0026】 また、光重合性アクリレートモノマーあるいはオリゴマーにカルボキシル基等の酸性基をもたせるとアルカリ水溶液によって現像することが可能となるので、有機溶剤による現像に比べて取り扱い、廃液処理が容易であり、経済性および安全性の面で好ましい。 【0027】 さらに光重合性樹脂中に開始剤としてベンゾフェノンあるいは、イルガキュアー184、イルガキュアー907、イルガキャアー651(いずれもチバガイギー社商品名)、ダロキュアー(メルク社商品名)などを固形分比1〜3%程度添加してもよい。 【0028】 とくに好適な光重合性アクリレートオリゴマーと多官能性光重合性モノマーの配合比(重量%)は 配合例1 フェノールノボラックエポキシアクリレート…60% トリメチロールプロパントリアクリレート …17% ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート…20% イルガキュアー184 …3% 配合例2 O-クレゾールノボラックエポキシアクリレート…60% ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート …38% イルガキュアー184 …2% 配合例3 ポリウレタンアクリレート …50% ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート …48% イルガキュアー651 …2% 配合例4 メラミンアクリレート …70% トリメチロールプロパントリアクリレート …27% イルガキュアー184 …2% 等をあげることができる。 【0029】 さらに、光重合性アクリレートオリゴマーと多官能性光重合性モノマーにエポキシ樹脂を含有する組成物の配合比(重量%)は、 配合比5 フェノールノボラックエポキシアクリレート …40% フェノールノボラック型エポキシ樹脂 …18% トリメチロールプロパントリアクリレート …17% ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート …20% イルガキュアー184 …3% UVE1014(GE社製) …2% 配合比6 O-クレゾールノボラックエポキシアクリレート…38% クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 …18% ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート …38% イルガキュアー184 …2% UVE1014(GE社製) …2% 配合比7 ポリウレタンアクリレート …35% フェノールノボラック型エポキシ樹脂 …13% ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート …48% UVE1014(GE社製) …2% イルガキュアー651 …2% 配合比8 メラミンアクリレート …49% フェノールノボラック型エポキシ樹脂 …20% トリメチロールプロパントリアクリレート …27% UVE1014(GE社製) …2% イルガキュアー184 …2% 等をあげることができる。 【0030】 実施例1 赤色、緑色及び青色の顔料を、それぞれ下記に示したような組成割合(重量%)で感光性樹脂に分散させて、赤色、緑色及び青色の着色感光性樹脂を作製する。 【0031】 (1)赤色感光性樹脂 ピラゾロンレッド(赤色顔料) …10 ポリビニルアルコール/5%スチルバゾリウムキノリウム(感光性樹脂) … 5 水 …85 (2)緑色感光性樹脂 リオノールグリーン 2Y-301(緑色顔料) … 9 ポリビニルアルコール/5%スチルバゾリウムキノリウム(感光性樹脂) … 5 水 …86 (3)青色感光性樹脂 ファストドゲンブルー(青色顔料) … 3 ポリビニルアルコール/5%スチルバゾリウムキノリウム(感光性樹脂) … 5 水 …92 基板には、厚さ1.1mmのガラス基板(旭硝子(株)製AL材)を充分に洗浄して用い、ガラス基板に、金属クロムをスパッタリングにより厚さ120nmとなるように成膜した。この実施例で製造したストライプ状の画素を有するカラーフィルターの各部の位置関係の詳細図である図5に示すように、フォトエッチングにより開口寸法が縦280μm×横75μm、ピッチが縦330μm×横110μmのブラックトリックスパターンを形成した。 【0032】 その上に、赤色感光性樹脂を1.2μmの膜厚になるように塗布し、その後温度70℃で30分間オーブン中で乾燥させ、水銀ランプを用いて露光し、水によるスプレー現像を1分間行い、赤色画素を形成すべき領域に赤色のレリーフ画像を形成し、さらに150℃で30分間、加熱硬化させた。 【0033】 同様の工程を繰り返して、緑色画素を形成すべき領域に緑色のレリーフ画素を形成し、青色画素を形成すべき領域に青色のレリーフ画素を形成して着色層を形成した。以上により、隣接画素ピッチ110μm、線巾85μmのストライプ状着色画素を形成した。 【0034】 続いて光硬化性アクリレートオリゴマーとして、o-クレゾールノボラックエポキシアクリレート(分子量1500〜2000)を50重量部、多官能重合性モノマーとして、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製DPHA)を50重量部混合し、さらに重合開始剤としてイルガキュアー(チバガイギー社(株)製)2重量部を混合した配合物を、エチルセルソルブアセテート200重量部中に溶解させ、その溶液10gを用いてスピンコーターで前記着色層上に2.0μmの厚さに塗布した。 【0035】 接続部パターンが設けられたフォトマスクを配置したプロキシミティーアライナーによって、2.0KWの超高圧水銀ランプによって紫外線を10秒間照射した。 続いて温度25℃の1,1,2,2-テトラクロロエタンからなる現像液中に1分間浸漬して、塗布膜の未硬化部分のみを除去した。以上により、着色画素を完全に覆うピッチ110μm、線巾95μmのストライプ状保護膜パターンおよびピッチ110μm、線巾15μmのストライプ状接続部パターンを得た。 【0036】 次に、得られた保護膜を形成した基板を直流マグネトロンスパッタリング装置のロード室から基板の加熱室に入れ、基板の温度を200℃に加熱し、10-6torrまで減圧した後にアルゴンの圧力を5.0×10-3torr、酸素の圧力を4.0×10-5torrの分圧となるように製膜室に反応ガスを導入した。 【0037】 スパッタリング装置のITOのターゲットと陽極の間には直流電圧0.4kV、電流3.5Aを印加して、ターゲットと基板との距離を90mmとし、1分間スパッタリングをして、厚さ20nmの透明電極を形成した。 【0038】 得られた透明電極の面積抵抗は9Ω/□であり、400nmないし700nmの光の平均透過率は92%であった。 【0039】 比較例1保護膜を紫外線で硬化する際に、接続部を形成するフォトマスクを設けずに硬化を行ったことを除いては実施例1と同様の方法によってカラーフィルターを製造した。 【0040】 次に、得られた保護膜を形成した基板を直流マグネトロンスパッタリング装置のロード室から基板の加熱室に入れ、基板の温度を200℃に加熱し、10-6torrまで減圧した後にアルゴンの圧力を5.0×10-3torr、酸素の圧力を4.0×10-5torrの分圧となるように製膜室に反応ガスを導入した。 【0041】 スパッタリング装置のITOのターゲットと陽極の間には直流電圧0.4kV、電流3.5Aを印加して、ターゲットと基板との距離を90mmとし、10分間スパッタリングをして、厚さ200nmの透明電極を形成した。 【0042】 得られた透明電極の面積抵抗は23Ω/□であり、400nmないし700nmの光の平均透過率は85%であった。 【0043】 比較例2保護膜を紫外線で硬化する際に、接続部を形成するフォトマスクを設けずに硬化を行ったことを除いては実施例1と同様の方法によってカラーフィルターを製造した。 【0044】 次に、実施例1の透明電極の成膜条件と同様の条件で、実施例1と同じ厚さの20nmのITO膜を形成したところ、得られた透明電極の面積抵抗は250Ω/□であった。 【0045】 【発明の効果】 カラーフィルターの各色の画素を区画するとともに、液晶の駆動用のTFT等のトランジスタあるいは電極を遮光するためにガラス基板上に形成されているブラックマトリックスを導電体として利用し、ブラックマトリックスとITO膜との間に電気的接続を形成しITO膜の実質的な電気抵抗を減少させるものであり、膜厚の薄いITO膜を形成した場合であって十分な導電性を得ることができるので、ITO膜の増大によって生じる透過率の低下あるいはITO膜の膜厚の増大にともなって生じる形態の変化等の問題を解消することができ、特性の優れたカラーフィルターを得ることができる。また、ITO膜厚を薄くすることができるため、成膜工程のスループット向上およびターゲット材料費の低減といった製造上の利点を有する。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明のカラーフィルターの一部の平面図を示す図。 【図2】 本発明のカラーフィルターの一部の断面図を示す図。 【図3】 本発明のカラーフィルターの接続部の配置を示す図。 【図4】 本発明のカラーフィルターの製造過程を示す図。 【図5】 実施例のカラーフィルターの各部の位置関係を示す詳細図。 【図6】 カラーフィルターの断面図を示す図 【符号の説明】 1…カラーフィルター、2…ガラス基板、3…ブラックマトリックス、4…着色層、5…保護膜、6…ITO膜、7…接続部、31…ブラックマトリックス、32…着色層、33…ガラス基板、34…保護膜、35…接続部、36…フォトマスク、37…未露光部、38…透明導電性膜、41…ガラス、42…着色層、43…保護膜、44…透明電極 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1を、次のように訂正する。 「【請求項1】 カラーフィルターにおいて、透明基板上に導電性材料で形成され、開口部が一定の間隔をもって同一方向に順次設けられたブラックマトリックス、および該同一方向における順次設けられた開口部および該開口部間におけるブラックマトリックス上に連続して形成された赤色着色層、及び該赤色着色層に隣接して同様に形成された緑色着色層および青色着色層からなるストライプ状の画素を有し、各画素およびブラックマトリックス上に連続した透明電極を有すると共に、透明電極とブラックマトリックスとの間には、各画素毎にストライプ状の電気的接続部が形成されており、電気的接続部がストライプ状の画素ピッチに対して14%以下の幅で、かつ透明電極の400nm〜700nmにおける光の平均透過率が92%以上であることを特徴とするカラーフィルター。」 |
異議決定日 | 2002-09-30 |
出願番号 | 特願平3-17628 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(G02B)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 横井 康真 |
特許庁審判長 |
高橋 美実 |
特許庁審判官 |
柏崎 正男 青木 和夫 |
登録日 | 2001-08-31 |
登録番号 | 特許第3226220号(P3226220) |
権利者 | 大日本印刷株式会社 |
発明の名称 | カラーフィルターおよびその製造方法 |
代理人 | 内田 亘彦 |
代理人 | 米澤 明 |
代理人 | 蛭川 昌信 |
代理人 | 阿部 龍吉 |
代理人 | 韮澤 弘 |
代理人 | 内田 亘彦 |
代理人 | 阿部 龍吉 |
代理人 | 青木 健二 |
代理人 | 青木 健二 |
代理人 | 蛭川 昌信 |
代理人 | 白井 博樹 |
代理人 | 菅井 英雄 |
代理人 | 白井 博樹 |
代理人 | 菅井 英雄 |
代理人 | 韮澤 弘 |
代理人 | 米澤 明 |
代理人 | 大滝 均 |