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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1071739
異議申立番号 異議2002-70718  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-03-25 
確定日 2002-11-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3211590号「偏光板」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3211590号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3211590号の請求項1ないし4に係る発明は、平成6年11月14日に特許出願され、平成13年7月19日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、特許異議申立人中山清より特許異議の申立てがなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成14年8月6日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は以下のとおりである。
訂正事項a
特許請求範囲中、請求項1に「偏光子に保護フィルムが接着されており、液晶表示装置に貼合して用いる偏光板であって、対角7cm以上の大きさを有し、その吸収軸がチップカット後の長辺に対して0±10°または90±10°となるようにチップカットされていることを特徴とする偏光板。」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として「ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素および/または二色性染料を吸着配向させた偏光子に、トリアセチルセルロースフィルムからなる保護フィルムが接着されており、液晶表示装置に粘着剤を介して貼合して用いる偏光板であって、対角7cm以上の大きさを有し、その吸収軸がチップカット後の長辺に対して0±5°または90±5°となるようにチップカットされていることを特徴とする偏光板。」と訂正する。
訂正事項b
特許請求の範囲中、請求項2を、特許請求の範囲の減縮を目的として削除する。
訂正事項c
特許請求の範囲中、請求項3及び4を、明りょうでない記載の釈明を目的として、それぞれ新請求項2及び3に繰り上げる。
訂正事項d
特許請求の範囲中、請求項5を明りょうでない記載の釈明を目的として、新請求項4に繰り上げるとともに、同請求項で引用する「請求項3」を「請求項2」に訂正する。
訂正事項e
発明の詳細な説明中、段落0006を、明りょうでない記載の釈明を目的として、次のとおりに訂正する。
「すなわち本発明は、偏光子に保護フィルムが接着されており、液晶表示装置に粘着剤を介して貼合して用いる偏光板であって、その吸収軸がチップカット後の長辺に対して0±5°または90±5°となるようにチップカットされていることを特徴とする偏光板を提供し、また、上記偏光板に位相差板を貼合してなる楕円偏光板を提供し、さらには、上記偏光板または上記楕円偏光板を用いてなる液晶表示装置を提供するものである。」
訂正事項f
発明の詳細な説明中、段落0007を、明りょうでない記載の釈明を目的として、次のとおりに訂正する。
「本発明の偏光板に用いられる偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素および/または二色性染料を吸着配向させたものである。この偏光子に、トリアセチルセルロースフィルムからなる透明性に優れた保護フィルムが、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル系接着剤等を用いて接着され、偏光板となる。好ましくは、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素および/または二色性染料を吸着配向させた偏光子の両面に、トリアセチルセルロースフィルムからなる保護フィルムが接着されている偏光板である。偏光子の厚みや保護フィルムの厚みは特に制限されるものでなく、例えば、偏光子は15〜25μm程度、保護フィルムは50〜400μm程度である。」
訂正事項g
発明の詳細な説明中、段落0009を、明りょうでない記載の釈明を目的として、次のとおりに訂正する。
「偏光板のチップカットは、その吸収軸がチップカット後の長辺に対して、0±5°または90±5°となるようにする。このようにすることで、例えば、長辺に対して45°または135°となるようにチップカットした偏光板を用いた場合に、液晶表示装置の製造時に行われる熱処理や高温環境下での断線チェックの際、また耐久性試験の際に発生しやすいフィルム周囲の色ヌケを著しく低減させることができる。」

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項aは訂正前の請求項2で規定していた事項を請求項1に組み入れるとともに、「液晶表示装置に貼合して用いる」をより下位概念である「液晶表示装置に粘着剤を介して貼合して用いる」に限定し、さらに「その吸収軸がチップカット後の長辺に対して0±10°または90±10°となるように」をより下位概念である「その吸収軸がチップカット後の長辺に対して0±5°または90±5°となるように」に限定しようとするものであるから、この訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記訂正事項bは訂正前の請求項2を削除するものであるから、この訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記訂正事項c、dは上記訂正事項a、bの訂正に伴い請求項の繰り上げや引用形式を整理するものであるから明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記訂正事項e〜gは上記訂正事項aの訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を適合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立ての概要
特許異議申立人中山清は、甲第1〜4号証を提出し、特許第3211590号の訂正前の請求項1〜5に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号の規定、又は特許法第29条第2項の規定に該当するので、特許法第113条第1項第2号の規定により本件特許を取り消すべき旨主張している。

4.特許異議申立てについての判断
(1)本件発明
特許第3211590号の請求項1〜4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明4」という。)は、平成14年8月6日付けの訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
請求項1「ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素および/または二色性染料を吸着配向させた偏光子に、トリアセチルセルロースフィルムからなる保護フィルムが接着されており、液晶表示装置に粘着剤を介して貼合して用いる偏光板であって、対角7cm以上の大きさを有し、その吸収軸がチップカット後の長辺に対して0±5°または90±5°となるようにチップカットされていることを特徴とする偏光板。」
請求項2「請求項1記載の偏光板に位相差板を貼合してなる楕円偏光板。」
請求項3「請求項1記載の偏光板を用いてなる液晶表示装置。」
請求項4「請求項2記載の楕円偏光板を用いてなる液晶表示装置。」

(2)引用刊行物
当審が通知した取消の理由に引用した刊行物3(特開昭61-136746号公報、異議申立人の甲第3号証)には次の事項が記載されている。
「ポリビニルアルコール系フィルムに沃素及び/又は二色性染料などの偏光素子を吸着配向せしめてなる偏光子の両面に、一軸方向に延伸してなるプラスチックフィルム(異方性フィルム)を、該フィルムの延伸軸と前記偏光子の延伸軸とを平行にして接着剤等で貼り合せてなる積層タイプの偏光板が知られている。該偏光板は液晶表示装置に実装するために、通常短冊矩形状に切断又は打ち抜きされ、偏光板小片とされるが、このとき小片の切断線は前記偏光子の延伸軸に対して2度未満の角度内で平行に行うことが必要である。これは実装時の位置決めを切断線を基準として行っているためであり、2度以上であると偏光板小片を実装したときに表示が不鮮明になるからである。」(第2頁左上欄第5〜末行)
上記記載からみて、刊行物3には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ポリビニルアルコール系フィルムに沃素及び/又は二色性染料を吸着配向させた偏光子に、一軸方向に延伸してなるプラスチックフィルム(異方性フィルム)が接着剤等で貼り合せてなり、液晶表示装置に実装して用いる偏光板であって、短冊矩形状に切断された偏光板の小片の切断線は偏光子の延伸軸に対して2度未満の角度内で平行となるよう切断されている偏光板」
また、当審が通知した取消の理由に引用した刊行物1(特開平4-123008号公報、異議申立人の甲第1号証)には次の事項が記載されている。
「第1図において、1は予め製品サイズ以上の大きさに加工した偏光フイルムからなる偏光板であり、2は高分子透明フイルムを延伸した複屈折性フイルムからなる位相差板である。破線部は製品サイズの大きさを表している。かかる偏光板1と位相差板2は、最適な光軸関係となるようにして重ね合わされ、接着剤を介して(図示省略)貼り合わされる。Xは偏光軸、Yは遅相軸(通常は延伸軸となる)を示し、XとYの交差角度θは通常15〜75°とされるのが好ましい。」(第2頁右上欄第9〜18行)
「〈実施例〉偏光板として、延伸ポリビニルアルコールに沃素錯体を付着させ両面にトリアセテートフイルムの保護層を設けた厚さ180μmの高分子フイルム(日東電工(株)製NPF-G1220DU)で220mm×160mmサイズにカットしたものを用意した。一方、位相差板としてポリカーボネートフイルムを140°Cの乾燥塔内で10%延伸した厚さ50μmの高分子フイルム(日東電工(株)製NRF-RF、位相差値は500nm)」を同寸法にカットした。この両フイルムを偏光軸と遅相軸とが45°に交差するように配置し、アクリル系接着剤を介してフイルムよりやや広幅のラミネートロールの加圧によって貼り合わせた。加圧は、23°C下、圧力5kg/cm2の条件で行った。そして、このようにロールの加圧によって貼り合わせた後、200mm×140mmの製品サイズにトムソン刃型で打ち抜いた。このように打ち抜いてなる積層楕円偏光板は、気泡の抱き込みがなく、強固に接着していた。そしてこの楕円偏光板を液晶ディスプレイに実装したところ、画面全体にわたって色ムラのない均一な白黒表示の表示が得られた。」(第2頁右下欄第7行〜第3頁左上欄第9行)
また、刊行物1の第1図には偏光板1の長辺と偏光軸Xがほぼ同方向であることが読みとれる。

また、当審が通知した取消の理由に引用した刊行物2(特開平6-300918号公報、異議申立人の甲第2号証)には次の事項が記載されている。
「【産業上の利用分野】本発明は、STN(Super Twisted Nematic)型液晶ディスプレイ等に用いられる楕円偏光板の製造法に関する。」(【0001】)
「本発明における偏光フイルムとしては、特に制限はなく、偏光素膜をそのまま用いることもできるが、通常は、偏光素膜の少なくとも片面(通常は両面)に保護層を積層したものを用いる。ここで偏光素膜としては、ビニルアルコール系重合体/ヨウ素系、ビニルアルコール系重合体/2色性染料系、ビニルアルコール系重合体/ポリエン系、ポリハロゲン化ビニル/ポリエン系、ポリアクリロニトリル/ポリエン系、ポリ(メタ)アクリレート/ポリエン系、ポリカーボネート系などが挙げられる。上記中、ビニルアルコール系重合体とは、ポリビニルアルコールやエチレン-ビニルアルコール共重合体などである。保護層としては、セルローストリアセテートシート、ポリカーボネートシート、ポリメチルメタクリレートシートをはじめとする光等方性の透明シートが挙げられる。その厚さは120〜200μm程度である。」(【0007】)
「【実施例】以下、本発明について実施例を挙げて更に詳述する。
実施例1
ポリビニルアルコール系の位相差フィルム[平均重合度2000、平均ケン化度99.7モル%の厚さ60μmの一軸延伸ポリビニルアルコールフイルム(R値=410nm、延伸倍率1.15倍、延伸後220℃で30秒間熱処理したもの)]より、図1に示す如く、光学軸(延伸軸)と辺bcの角度が30度になるように17cm×22cmの矩形状物(abcd)を裁断した。同様にして、位相差矩形状物を数枚裁断した。(保護フィルムは、60μm厚みのポリエチレン)次に、該位相差矩形状物数枚を幅30cm、厚み40μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、辺bcが該フィルムの長手方向(製造ラインの流れ方向)と一致するように両面粘着テープで固定し表面のポリエチレンフイルムを剥がした。製造ライン上で、該フィルムの上部より偏光フィルム[平均重合度2000、平均ケン化度99.7モル%の一軸延伸ポリビニルアルコールフイルムをヨウ素で染色処理してなる厚さ180μmのフイルム(透過率41%、偏光度99.9%)で、接着面にアクリル系粘着剤を厚さ25μmになるように塗工し、更に厚さ40μmの離型フイルムを積層]を離型フイルムを剥離しながら供給して該位相差矩形状物と接着していった。最後に、位相差矩形状物と偏光フィルムの積層体を15cm×20cmの矩形に裁断して楕円偏光板を得た。」(【0013】、【0014】)

また、当審が通知した取消の理由に引用した刊行物4(特開平1-304421号公報、異議申立人の甲第4号証)には次の事項が記載されている。
「定尺の偏光板材から液晶表示パネルに使用する偏光板の取り枚数を最大にすることを目的とし」(第1頁左下欄末行〜右下欄第1行)
「上記STN型液晶表示パネルでは、大型化するに従い、それに使用する偏光板の取り数にムダが発生し、高価になるという問題がある。例えばパネルの大きさが20cm×30cmで第6図に示す吸収軸方向の偏光板を、例えば第7図に示すような1m×50cmの定尺材から取り出そうとすると同図(a)及び(b)に示すように5°又は15°の角度を付ける必要があり上下4枚ずつしか取れず、無駄になる部分が多く非常に効率が悪いものとなる。」(第2頁右上欄第9〜18行)

(3)対比・判断
(3-1)本件発明1
引用発明に記載された「沃素」、「接着剤等で貼り合せてなり」及び「短冊矩形状に切断」は、それぞれ本件発明1の「ヨウ素」、「接着されており」及び「チップカット」に相当する。また、引用発明の「一軸方向に延伸してなるプラスチックフィルム」は偏光板を保護する役割があるのは明らかであるから保護フィルムに相当する。また、「短冊矩形状に切断された偏光板の小片の切断線」は短冊矩形状の1辺すなわちチップカット後の1辺に相当し、その1辺が長辺か短辺かが明確でないが、その1辺が偏光子の延伸軸に対して2度未満の角度内で平行となるということは、延伸軸がその1辺に対して0°±2°となることであり、吸収軸は延伸軸と直交する関係にあることが明らかであるから、引用発明において吸収軸は上記1辺または上記1辺に直交する辺に対して0°±2°または90°±2°となることが明らかである。そして、上記1辺は長辺か短辺の何れかであり、上記1辺が短辺であったとしても上記1辺と直交する辺が長辺となるから、いずれにしても引用発明には吸収軸がチップカット後の長辺に対して0°±2°または90°±2°となることが記載されているといえる。そうすると両者は、
「ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素および/または二色性染料を吸着配向させた偏光子に、保護フィルムが接着されており、液晶表示装置に用いる偏光板であって、その吸収軸がチップカット後の長辺に対して0±5°または90±5°となるようにチップカットされていることを特徴とする偏光板。」で一致し、
本件発明1の保護フィルムが「トリアセチルセルロースフィルム」からなるのに対し、引用発明では、プラスチックフィルムが何であるのか具体的に記載されていない点(以下、「相違点1」という。)
本件発明1の偏光板は液晶表示装置に「粘着剤を介して貼合して」用いるのに対し、引用発明では実装して用いると記載されているのみである点(以下、「相違点2」という。)
本件発明1の偏光板は「対角7cm以上の大きさを有」するのに対し、引用発明では偏光板の大きさが記載されていない点(以下、「相違点3」という。)で相違している。
そこで、上記相違点について検討する。
まず、相違点1について検討する。
偏光板の保護フィルムとして、トリアセチルセルロースフィルムを用いることは周知(刊行物1、2参照)のことであり、引用発明の保護フィルムとして該周知の保護フィルムを採用することは当業者であれば容易になし得ることである。
次に、相違点2について検討する。
偏光板を液晶表示装置に粘着剤を介して貼合することは周知(例えば、特開平6-308444号公報、特開平6-123805号公報、特開平4-124601号公報、実願昭57-141601号(実開昭59-46307号)のマイクロフィルム等参照)のことであり、引用発明における液晶表示板への実装を粘着剤を介して貼合するようにすることは当業者であれば容易になし得ることである。
次に、相違点3について検討する。
偏光板を対角7cm以上の大きさとすることは普通に行われていることであり(刊行物1、2、4参照)引用発明の偏光板の大きさを対角7cm以上とすることは当業者にとって格別困難なくなし得ることである。

(3-2)本件発明2、4
偏光板に位相差板を貼合して楕円偏光板とすること、及び楕円偏光板を液晶表示装置に用いることは周知(刊行物1、2参照)のことであるから、本件発明2、4は実質的に本件発明1と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-3)本件発明3
偏光板を液晶表示装置に用いることは引用発明に記載されているから、本件発明3は本件発明1と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1〜4は、上記刊行物3に記載の発明および周知技術等から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜4は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1〜4についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
偏光板
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素および/または二色性染料を吸着配向させた偏光子に、トリアセチルセルロースフイルムからなる保護フィルムが接着されており、液晶表示装置に粘着剤を介して貼合して用いる偏光板であって、対角7cm以上の大きさを有し、その吸収軸がチップカット後の長辺に対して0±5°または90±5°となるようにチップカットされていることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
請求項1記載の偏光板に位相差板を貼合してなる楕円偏光板。
【請求項3】
請求項1記載の偏光板を用いてなる液晶表示装置。
【請求項4】
請求項2記載の楕円偏光板を用いてなる液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は偏光板に関する。詳しくは、色ヌケ現象のない偏光板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、携帯テレビやパーソナルコンピューター、パーソナルワープロ等に広く用いられているが、通常、偏光板を用い、偏光を利用して表示を行うものが多い。
【0003】
これらの液晶表示装置は、その製造の際に、60℃以上の熱処理や高温環境下での回路の断線チェック等を受ける場合が多く、また実使用時においても、車載用途や屋外用途など、過酷な条件にさらされることがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の偏光板あるいは楕円偏光板を用いた場合には、このような高温環境下での処理や回路チェック終了後の点灯検査、80℃以上の高温耐久性試験、60℃-90%RHの高温高湿耐久性試験等において、偏光板に起因する不良現象、すなわち、周囲が中央部よりも明るくなったり、あるいは逆に暗くなったりする、いわゆる色ヌケ現象が発生するという問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる問題を解決すべく鋭意検討した結果、偏光板の吸収軸方向とチップカット後の長辺のなす角度が特定の関係になるようチップカットされた偏光板とすることにより、上記の問題点が解消できることを見いだし、本発明に到達した。
【0006】
すなわち本発明は、偏光子に保護フィルムが接着されており、液晶表示装置に粘着剤を介して貼合して用いる偏光板であって、その吸収軸がチップカット後の長辺に対して0±5°または90±5°となるようにチップカットされていることを特徴とする偏光板を提供し、また、上記偏光板に位相差板を貼合してなる楕円偏光板を提供し、さらには、上記偏光板または上記楕円偏光板を用いてなる液晶表示装置を提供するものである。
【0007】
本発明の偏光板に用いられる偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素および/または二色性染料を吸着配向させたものである。この偏光子に、トリアセチルセルロースフィルムからなる透明性に優れた保護フィルムが、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル系接着剤等を用いて接着され、偏光板となる。好ましくは、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素および/または二色性染料を吸着配向させた偏光子の両面に、トリアセチルセルロースフィルムからなる保護フィルムが接着されている偏光板である。偏光子の厚みや保護フィルムの厚みは特に制限されるものでなく、例えば、偏光子は15〜25μm程度、保護フィルムは50〜400μm程度である。
【0008】
通常、偏光板は所定サイズのチップにカットして用いられるが、色ヌケはチップのサイズが大きくなるにつれて顕著に現れるため、本発明は、対角7cm以上のチップカット品に対して有効である。
【0009】
偏光板のチップカットは、その吸収軸がチップカット後の長辺に対して、0±5°または90±5°となるようにする。このようにすることで、例えば、長辺に対して45°または135°となるようにチップカットした偏光板を用いた場合に、液晶表示装置の製造時に行われる熱処理や高温環境下での断線チェックの際、また耐久性試験の際に発生しやすいフィルム周囲の色ヌケを著しく低減させることができる。
【0010】
本発明の偏光板に貼合される位相差板は特に限定されるものではなく、通常用いられているような透明性に優れた熱可塑性樹脂からなる位相差板、例えば、一軸延伸されたポリカーボネートフィルムからなる位相差板等を使用することができる。
【0011】
また、本発明の偏光板と位相差板を貼り合わせて楕円偏光板とする方法にも特に制限はなく、粘着剤を介して貼合する等の通常の方法を用いることができる。この場合、位相差板の光軸角度はこの楕円偏光板を用いる液晶表示装置の表示特性が最適となるように適宜設定される。
【0012】
本発明の偏光板および楕円偏光板に用いられる粘着剤にも特に限定はなく、アクリル系等の通常の粘着剤を用いることができる。
【0013】
【発明の効果】
本発明の偏光板を用いることにより、液晶表示装置の製造時に行われる熱処理や高温環境下での断線チェック、さらには耐久性試験の際に発生しやすいフィルム周囲の色ヌケが著しく低減された液晶表示装置を得ることができる。
【0014】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
実施例
ポリビニルアルコール系偏光子(厚み20μm)の両面に保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルム(厚み80μm)が貼合された偏光板(商品名スミカランSF-1822A、住友化学工業(株)製)の片面に、それぞれアクリル系粘着剤層P-1、P-2(厚み約25μm)を設け、2種類の粘着剤付き偏光板を得た。
【0016】
これらの偏光板を、それぞれ6.6cm×8.4cmの長方形で、その吸収軸が長辺(8.4cmの辺)に対して0°となるようにチップカットした(サンプル1)。また同じ偏光板を、それぞれ6.6cm×8.4cmの長方形で、その吸収軸が長辺に対して90°となるようにチップカットした(サンプル2)。これらの、大きさは同一だが吸収軸角度の異なる2種類のチップカット品サンプル1とサンプル2を一組として、各々の粘着剤付き偏光板について各15組のサンプルを得た。
【0017】
次に、各々の粘着剤層を介してこれらの偏光板をSiO2コートガラス板(日本板硝子(株)製、Hコートガラス)の両面に、それぞれガラスの表側にサンプル1、ガラスの裏側にサンプル2を各々の吸収軸がガラスを挟んで互いに直交するように貼合して、偏光板が表裏の両面に貼合され、偏光板/粘着剤層/ガラス板/粘着剤層/偏光板の順で積層されたガラス板を得た。
【0018】
このようなガラス板を各々の粘着剤付き偏光板につき各15セット用意し、各3セットずつに分けて、以下に示す5種類の条件での熱処理および湿熱処理による色ヌケ発生試験を行った。
【0019】
A: 温度50℃、圧力5kg/cm2のオートクレーブ中で20分間処理をした後、恒温恒湿槽中、85℃-ドライの常圧雰囲気下で48時間処理した。
B: 温度50℃、圧力5kg/cm2のオートクレーブ中で20分間処理をした後、恒温恒湿槽中、100℃-ドライの常圧雰囲気下で48時間処理した。
C: 温度50℃、圧力5kg/cm2のオートクレーブ中で20分間処理をした後、恒温恒湿槽中、60℃-95%RHの常圧雰囲気下で48時間処理した。
D: 温度50℃、圧力5kg/cm2のオートクレーブ中で20分間処理をした後、恒温恒湿槽中、65℃-95%RHの常圧雰囲気下で48時間処理した。
E: 温度50℃、圧力5kg/cm2のオートクレーブ中で20分間処理をした後、恒温恒湿槽中、80℃-90%RHの常圧雰囲気下で48時間処理した。
【0020】
熱処理および湿熱処理後、偏光板を貼合したガラス板を目視で観察することにより、色ムラ発生の有無を評価した。結果を表1に示した。いずれの粘着剤を用いたサンプルにおいても、またいずれの処理条件においても、色ヌケの発生はほとんど見られなかった。
【0021】
比較例
ガラス板の表側と裏側の両面に貼合する偏光板として、いずれも長辺(8.4cmの辺)に対して吸収軸が45°となるようにチップカットした偏光板を用いた以外は、実施例と同様の試験を行った。結果を表1に示した。いずれの粘着剤を用いたサンプルにおいても、すべての処理条件で色ヌケが発生した。
【0022】
【表1】

 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項a
特許請求範囲中、請求項1に「偏光子に保護フィルムが接着されており、液晶表示装置に貼合して用いる偏光板であって、対角7cm以上の大きさを有し、その吸収軸がチップカット後の長辺に対して0±10°または90±10°となるようにチップカットされていることを特徴とする偏光板。」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として「ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素および/または二色性染料を吸着配向させた偏光子に、トリアセチルセルロースフィルムからなる保護フィルムが接着されており、液晶表示装置に粘着剤を介して貼合して用いる偏光板であって、対角7cm以上の大きさを有し、その吸収軸がチップカット後の長辺に対して0±5°または90±5°となるようにチップカットされていることを特徴とする偏光板。」と訂正する。
訂正事項b
特許請求の範囲中、請求項2を、特許請求の範囲の減縮を目的として削除する。
訂正事項c
特許請求の範囲中、請求項3及び4を、明りょうでない記載の釈明を目的として、それぞれ新請求項2及び3に繰り上げる。
訂正事項d
特許請求の範囲中、請求項5を明りょうでない記載の釈明を目的として、新請求項4に繰り上げるとともに、同請求項で引用する「請求項3」を「請求項2」に訂正する。
訂正事項e
発明の詳細な説明中、段落0006を、明りょうでない記載の釈明を目的として、次のとおりに訂正する。
「すなわち本発明は、偏光子に保護フィルムが接着されており、液晶表示装置に粘着剤を介して貼合して用いる偏光板であって、その吸収軸がチップカット後の長辺に対して0±5°または90±5°となるようにチップカットされていることを特徴とする偏光板を提供し、また、上記偏光板に位相差板を貼合してなる楕円偏光板を提供し、さらには、上記偏光板または上記楕円偏光板を用いてなる液晶表示装置を提供するものである。」
訂正事項f
発明の詳細な説明中、段落0007を、明りょうでない記載の釈明を目的として、次のとおりに訂正する。
「本発明の偏光板に用いられる偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素および/または二色性染料を吸着配向させたものである。この偏光子に、トリアセチルセルロースフィルムからなる透明性に優れた保護フィルムが、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル系接着剤等を用いて接着され、偏光板となる。好ましくは、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素および/または二色性染料を吸着配向させた偏光子の両面に、トリアセチルセルロースフィルムからなる保護フィルムが接着されている偏光板である。偏光子の厚みや保護フィルムの厚みは特に制限されるものでなく、例えば、偏光子は15〜25μm程度、保護フィルムは50〜400μm程度である。」
訂正事項g
発明の詳細な説明中、段落0009を、明りょうでない記載の釈明を目的として、次のとおりに訂正する。
「偏光板のチップカットは、その吸収軸がチップカット後の長辺に対して、0±5°または90±5°となるようにする。このようにすることで、例えば、長辺に対して45°または135°となるようにチップカットした偏光板を用いた場合に、液晶表示装置の製造時に行われる熱処理や高温環境下での断線チェックの際、また耐久性試験の際に発生しやすいフィルム周囲の色ヌケを著しく低減させることができる。」
異議決定日 2002-09-13 
出願番号 特願平6-279531
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (G02B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山村 浩  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 北川 清伸
柏崎 正男
登録日 2001-07-19 
登録番号 特許第3211590号(P3211590)
権利者 住友化学工業株式会社
発明の名称 偏光板  
代理人 中山 亨  
代理人 神野 直美  
代理人 久保山 隆  
代理人 中山 亨  
代理人 神野 直美  
代理人 久保山 隆  

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