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審決分類 |
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 G03G 審判 一部申し立て 2項進歩性 G03G |
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管理番号 | 1071761 |
異議申立番号 | 異議2001-73201 |
総通号数 | 39 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2003-03-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-11-28 |
確定日 | 2002-12-02 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3170798号「画像形成装置」の請求項5ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3170798号の請求項5ないし8に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3170798号の請求項1〜8に係る発明は、平成4年5月14日に特許出願され、平成13年3月23日にその特許権の設定登録がなされ、その後、異議申立人 キャノン株式会社により特許異議の申立てがなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成14年5月7日に訂正請求がなされた(この訂正請求は平成14年9月30日に取り下げられた。)。その後、異議申立人に対して審尋書が通知され、それに対する回答書が提出され、特許権者から上申書が提出された。その後、再度取消の理由が通知され、その指定期間内である平成14年9月30日に特許異議意見書の提出とともに訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 [訂正事項a] 特許請求の範囲の請求項5に 「表面に静電潜像が形成される像担持体(507)と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器(551)と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置(552)と、レーザービームが走査された像担持体の表面に現像剤を付着させる現像器(553)とを備え、前記レーザービーム走査装置はレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)を有し、前記半導体レーザーアレイと前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズ(502)の前記偏向装置(504)側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部と前記光軸との間隔をt、前記開口絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 st/f≦0.12(D/d)2.3+0.17 D/d≦2 なる条件を満足することを特徴とする画像形成装置。」 とあるのを、 「表面に静電潜像が形成される像担持体(507)と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器(551)と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置(552)と、レーザービームが走された像担持体の表面に現像剤を付着させる現像器(553)とを備え、前記レーザービーム走査装置は基板面に対して垂直にレーザービームを射出する複数の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出さたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)を有し、前記複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離が、他の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離と異なっており、前記半導体レーザーアレイと前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズ(502)の前記偏向装置(504)側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部と前記光軸との間隔をt、前記開口絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 st/f≦0.12(D/d)2.3+0.17 D/d≦2 s≠0 なる条件を満足し、かつ前記開口絞り(503)は前記コリメータレンズ(502)の保持枠に形成されていることを特徴とする画像形成装置。」 と訂正する。 [訂正事項b] 特許請求の範囲の請求項6に 「表面に静電潜像が形成される像担持体(507)と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器(551)と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置(552)と、レーザービームを走査するレーザービーム走査装置(552)と、レーザービームが走査された像担持体(507)の表面に現像剤を付着させる現像器(553)とを備え、前記レーザービーム走査装置はレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部(502)から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズと、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズの前記偏向装置側の焦点と前記開口絞りとの間隔をs、前記コリメータレンズの光軸から最も離れた位置に配置された発光部と前記光軸との間隔をt、前記開口絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 st/f≦0.06(D/d)2.9+0.08 D/d≦2 なる条件を満足することを特微とする画像形成装置。」 とあるのを、 「表面に静電潜像が形成される像担持体(507)と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器(551)と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置(552)と、レーザービームが走査された像担持体(507)の表面に現像剤を付着させる現像器(553)とを備え、前記レーザービーム走査装置は基板面に対して垂直にレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離が、他の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離と異なっており、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズの前記偏向装置側の焦点と前記開口絞りとの間隔をs、前記コリメータレンズの光軸から最も離れた位置に配置された発光部と前記光軸との間隔をt、前記開口絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 st/f≦0.06(D/d)2.9+0.08 D/d≦2 s≠0 なる条件を満足し、かつ前記開口絞り(503)は前記コリメータレンズ(502)の保持枠に形成されていることを特徴とする画像形成装置。」 と訂正する。 [訂正事項c] 特許請求の範囲の請求項7に 「レーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(502)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズ(502)の前記偏向装置側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部(512b)と前記光軸(510)との間隔をt、前記開口絞りの直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 st/f≦0.12(D/d)2.3+0.17 D/d≦2 なる条件を満足することを特徴とするレーザービーム走査装置。」 とあるのを、 「基板面に対して垂直にレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離が、他の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離と異なっており、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(502)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリータレンズ(502)の前記偏向装置側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部(512b)と前記光軸(510)との間隔をt、前記開口絞りの直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 st/f≦0.12(D/d)2.3+0.17 D/d≦2 s≠0 なる条件を満足し、かつ前記開口絞り(503)は前記コリメータレンズ(502)の保持枠に形成されていることを特徴とするレーザービーム走査装置。」 と訂正する。 [訂正事項d] 特許請求の範囲の請求項8に 「レーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズ(502)の前記偏向装置(504)側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部(512b)前記光軸との間隔をt、前記開口絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 st/f≦0.06(D/d)2.9+0.08 D/d≦2 なる条件を満足することを特徴とするレーザービーム走査装置。」 とあるのを、 「基板面に対して垂直にレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離が、他の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離と異なっており、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズ(502)の前記偏向装置(504)側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部(512b)と前記光軸との間隔をt、前記開口絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 st/f≦0.12(D/d)2.9+0.08 D/d≦2 s≠0 なる条件を満足し、かつ前記開口絞り(503)は前記コリメータレンズ(502)の保持枠に形成されていることを特徴とするレーザービーム走査装置。」 と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項a、b、c、dについては、半導体レーザーアレイは、基板面に対して垂直にレーザービームを射出する複数個の発光部を有することと、複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズの光軸までの距離が、他の発光部からコリメータレンズの光軸までの距離と異なることを限定するとともに、sについてs≠0となる点を限定し、さらに、開口絞りは、コリメータレンズの保持枠に形成されていることを限定するものであり、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、これらの限定事項は、特許明細書(ここでは特許公報で代替する)の第29頁左欄第40行〜同右欄第1行、第28頁右欄第45行〜第29頁左欄第1行、第27頁右欄第18行〜第29行及び第29頁右欄第10行〜第29行に記載されているし、これらの限定によって、実質上特許請求の範囲を拡張したり変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 (1)特許異議申立ての概略 本件請求項5〜8に係る発明は、甲第1号証(刊行物1:特開平3-248114号公報)、甲第2号証(刊行物2:特開昭64-44085号公報)及び甲第3号証(刊行物3:特開平2-54981号公報)記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 また、本件発明に係る出願は、明細書の記載に不備があり、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 (2)本件請求項5〜8に係る発明 上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件請求項5〜8に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項5〜8に記載されたとおりのものである。(以下、それぞれ「本件発明5」、「本件発明6」、「本件発明7」、「本件発明8」という。) (3)引用刊行物記載の発明 [刊行物1記載の発明] a.本発明は、デジタル複写機、レーザビームプリンタ、光ディスク等に光ビームで書込を行うためのレーザービーム走査光学系に関し、特に、複数のレーザビームによって同時に書込を行うマルチビーム走査光学系に関する。(第1頁右上欄第4行〜第8行) b.第4図に示すように、前記マルチビームレーザダイオードアレイ01は下面に電極基板02とその上に載置されたLDチップ(レーザダイオードチップ)03とを備え、前記LDチップ03はチップ基板04の上部に絶縁層05で分離された2個の発振領域06および07を有するレーザダイオードLD1およびLD2を備えている。なお、レーザダイオードLD1、LD2間の間隔…はr1である。そして、…駆動電流を供給したとき、前記各レーザダイオードLD1およびLD2は矢印で示す一定の偏向方向を持つ第1、第2レーザビームL1、L2を前方に…出射するようになっている。(第2頁右上欄第20行〜左下欄第15行) c.この明細書でレーザビームおよびそのスポットの径は、光の強度が最高強度の(1/e2)=0.135の部分の径を意味している。(第3頁左上欄第18行〜右上欄第1行) d.アパーチャ010の径が前記コリメート化された外径Dのレーザビームの最高強度部分(ビーム中心部分)の1/2の強度を有する部分の径と同じ大きさの径(以下、このような大きさの径を『1/2強度径』というように表現する。この1/2強度径はガウス型の強度分布を有するビームの場合D/1.69=0.59Dである。)であるならば、αの値は、α=1.48である。(第5頁右上欄第2行〜第11行) e.前記課題を解決するために、本出願の第1発明のマルチビーム走査光学系は、次の構成を備えたことを特徴とする。すなわち、各々独立に変調されたLD駆動信号によりそれぞれ駆動されるとともに発振位置が距離r1離れて配置された複数のレーザダイオードを有するレーザアレイと前記複数のレーザダイオードの出力する拡がり角θ1で波長入の複数のレーザビームをコリメート光にするコリメートレンズおよび前記コリメート光にされたレーザビームを回転多面鏡の鏡面に集束させる副走査方向に光学的パワーを有する第1副走査方向パワー光学部材から成る第1走査光学系と、前記回転多面鏡と感光体表面との間に配設されたf-θレンズおよびこのf-θレンズから出射したレーザビームを感光体表面の副走査方向Yに所定の飛び越し走査数iだけ離れた位置で収束させる副走査方向Yに光学的パワーを有する第2副走査方向パワー光学部材とから成る第2走査光学系と、を備えたマルチビーム走査光学系において、前記コリメート光にされた複数のレーザビームが第1走査光学系の光軸と交わる位置にアパーチャを配設し、前記各パラメータr1、λ、θ1、およびiが次式を満足するように定められたマルチビーム走査光学系。 k=αiλ/r1θ1但し、1.5≦k≦1.8であり、αは、アパーチャの副走査方向Yの径に依存する値で、前記第1副走査方向パワー光学部材の焦点距離をf2、前記アパーチャに入射するコリメート光とされたレーザビームの副走査方向の径をD、前記回転多面鏡の鏡面に収束するレーザビームの副走査方向の径をd2としたときに、d2=(αλf2)/Dを満たす値である。また、本出願の第2発明のマルチビーム走査光学系は、前記第1発明のマルチビーム走査光学系において、α=1.48としたことを特徴とする。(第5頁右下欄第12行〜第6頁右上欄第12行) f.用いるレーザビームの本数は2以上の任意の数とすることが可能である。(第10頁左上欄第2行〜第4行) ここで、上記bの記載と第4図とを併せて参照すると、レーザダイオードアレイは、端面発光型レーザダイオードで構成されていることが分かる。また、上記eには、αの値を1.48とすることが記載されているが、これは、上記dの記載を参照すれば明らかなように、アパーチャの径を、コリメート光にされたレーザビームの外径の0.59倍にすることを意味している。 以上のことをまとめると、刊行物1には、 「複数の端面発光型レーザダイオードを有するレーザアレイと、前記複数のレーザダイオードから出力される複数のレーザビームをコリメート光にするコリメートレンズおよび副走査方向に光学的パワーを有する第1光学部材からなる第1走査光学系と、回転多面鏡、f-θレンズおよび副走査方向に光学的パワーを有する第2光学部材からなる第2走査光学系とを有し、前記コリメート光にされた複数のレーザビームが前記第1走査光学系の光軸と交わる位置にアパーチャが配設され、前記アパーチャの径が、前記コリメート光にされたレーザビームの外径の0.59倍であるマルチビーム走査光学系」 が記載されている。 [刊行物2、3記載の発明] 基板面に垂直にレーザービームを出力する半導体レーザーアレイが記載されている。 (4)特許法第29条違反についての対比及び判断 [本件発明7] 最初に「本件発明7」について対比し、判断する。 本件発明7と刊行物1に記載された発明とを比較すると、刊行物1に記載された発明の「発振位置」、「コリメート光」、「コリメートレンズ」および「マルチビーム走査光学系」は、本件発明7の「発光部」、「平行ビーム」、「コリメータレンズ」および「レーザービーム走査装置」に相当する。 刊行物1に記載された発明の「レーザアレイ」と本件発明7の「半導体レーザーアレイ」とは、レーザービームを出射する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイである点で共通する。 刊行物1に記載された発明の「第1光学部材」、「回転多面鏡」、「f-θレンズ」および「第2光学部材」は、コリメート光にされたレーザビームを偏向するためのものであるから、全体として本件発明7の「偏向装置」に相当する。 刊行物1に記載された発明の「アパーチャ」と本件発明7の「開口絞り」とは、半導体レーザーアレイと偏向装置との間の光路上に設けられた開口絞りである点で共通する。 刊行物1に記載された発明では、「アパーチャの径が、前記コリメート光にされたレーザビームの外径の0.59倍」とされる一方、本件発明7では、「D/d≦2」、すなわち、開口絞りの直径Dが平行ビームの直径dの2倍以下とされているから、両者は、開口絞りの直径Dを平行ビームの直径dの0.59倍とすることを含む点で共通している。 したがって、本件発明1と刊行物1に記載された発明とは、 「レーザービームを出射する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイと、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズと、レーザービームを偏向する偏向装置とを有し、前記半導体レーザーアレイと前記偏向装置との間の光路上に開口絞りが設けられ、前記開口絞りの直径が前記平行ビームの直径の0.59倍とされるレーザービーム走査装置」 である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 半導体レーザーアレイからのレーザービームが、本件発明7では、「基板面に対して垂直に」出射するのに対し、刊行物1に記載された発明では、「基板の端面から」出射する点。 (相違点2) 開口絞りを設ける位置について、本件発明7では、「複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズの光軸までの距離が、他の発光部からコリメータレンズの光軸までの距離と異なっており」、「コリメータレンズの焦点距離をf、コリメータレンズの偏向装置側の焦点と開口絞りとの間隔をs、コリメータレンズの光軸から最も離れた位置に配置された発光部と光軸との間隔をt、開口絞りの直径をD、平行ビームの直径をdとするとき、st/f≦0.12(D/d)2.3+0.17、s≠0」としているのに対し、刊行物1に記載された発明では、「コリメート光にされた複数のレーザビームが第1走査光学系の光軸と交わる位置」としている点。 (相違点3) 開口絞りを設ける位置について、本件発明7では、「開口絞りはコリメータレンズ保持枠に形成されている」としているのに対し、刊行物1に記載された発明では、この点に関する記載も示唆もない点。 なお、以下では、本件発明7の2つの関係式を、それぞれ「条件式1」および「条件式2」と言う。 st/f≦0.12(D/d)2.3+0.17 …条件式1 s≠0 …条件式2 (相違点の検討) 相違点1については、刊行物2および3には、基板面に垂直にレーザービームを出力する半導体レーザーアレイが記載されている。そして、これらの半導体レーザーアレイをレーザービーム走査装置に使用することを阻害する要因は、刊行物1〜3の記載からは認められない。したがって、刊行物1に記載された発明で用いられている端面発光型レーザーダイオードを有するレーザーアレイに代えて、刊行物2および3に記載された半導体レーザーアレイを採用し、相違点1の構成を得ることは、当業者が容易に思い付くことである。 相違点2については、まず、刊行物1に記載された発明において、開口絞りが設けられている「コリメート光にされた複数のレーザビームが第1走査光学系の光軸と交わる位置」とは、上記(5)の記載と第1A図および第1B図とを参照すれば明らかなように、コリメータレンズの2つの焦点のうち、偏向装置側にある焦点の位置である。すなわち、刊行物1に記載された発明の開口絞りは、本件発明7で定義された量で表現すると、s=0の位置に設けられている。 次に、本件発明7において、開口絞りが設けられる位置を具体的に見てみると、次のようになる。 既に述べたように、刊行物1に記載された発明も本件発明7も、開口絞りの直径を平行ビームの直径の0.59倍とすることを含む点で共通しているから、本件発明7の条件式1において、D/d=0.59とすることができる。そうすると、条件式1の右辺は、具体的に計算することができ、その結果として、 st/f≦0.12×(0.59)2.3+0.17=0.21 が得られる。これをsについて解くと、 s≦0.21f/t が得られるが、fおよびtは、定義によりいずれも正の数であるから、右辺は必ず正の数になる。したがって、この関係式は、sの上限を定めるものとして把握することができる。 一方、本件発明7の条件式2は、定義によりsが正の数であることを考慮すると、 0<s と同義である。 したがって、本件発明7において、開口絞りが設けられる位置は、 0<s かつ s≦0.21f/t で表されることが分かる。 以上のことから、相違点2は、結局のところ、「開口絞りを設ける位置が、刊行物1に記載された発明ではs=0の位置とされているのに対し、本件発明7では0<sかつs≦0.21f/tの位置とされている点」と言い換えることができる。 さて、刊行物1に記載された発明において、開口絞りがs=0の位置に設けられているのは、複数の平行ビームが互いに重なり合う位置に開口絞りを設ければ、その開口絞り通過後の各平行ビーム間に生じるパワーのばらつきが最小限になるためである。逆に、開口絞りをs=0以外の位置に設けると、その開口絞りを通過する各平行ビームが開口絞りによって「蹴られる」度合いが異なるため、その開口絞り通過後の各平行ビーム間に、より大きなパワーのばらつきが生じることになる。 しかし、パワーのばらつきは、開口絞りがs=0の位置から少しでもずれれば、臨界的な変化を起こし、直ちに無視できなくなる大きさになるという性質のものではなく、開口絞りがs=0の位置にあるときに最小値となり、sが増加するに従って連続的に増加していく性質のものである。そして、刊行物1に記載された発明において、開口絞り通過後の各平行ビームのパワーが僅かにばらつくことも許容できないと解釈すべき事情は窺えない。これらのことを勘案すると、刊行物1に記載された発明は、開口絞りをs=0の位置から少しでも変位させた瞬間に成り立たなくなるようなものではなく、開口絞りの位置が多少変位したとしても、その開口絞り通過後の各平行ビームに生じるパワーのばらつきがさほど大きくない範囲であれば、開口絞りをs=0の位置に設けたときと同様の作用効果を奏するものであると認められる。そうすると、刊行物1に記載された発明において、開口絞りを0<sとなる位置に設け得ることは、当業者であれば容易に予想できることである。 以上のことからすると、既に述べたとおり、開口絞りがs=0の位置にあるとき、開口絞り通過後の各平行ビーム間に生じるパワーのばらつきは最小になり、sが増加するにつれて連続的に増加していくのであって、刊行物1に記載された発明において、許容されるパワーのばらつきに上限があることは、当業者が容易に予想できることであるから、その上限を越えないようにするために、sに何らかの上限を設ける程度のことは、当業者が容易に思い付くことである。 相違点3については、開口絞りの位置をs=0から多少変位したとしても像形成上差し支えない範囲があることは当業者が容易に予想できることであり、また、一般的に言って光学系ではレンズの保持枠を開口絞りとして用いることがあるとしても、刊行物1に記載の発明はあくまでもs=0の時、パワーのばらつきが最小になる(最適位置)ということを示唆するものであるから、開口絞りの位置を、別の条件から決められるレンズの位置に変位されることまで示唆するものではなく、この点が当業者が容易に考えつくことができたとすることはできない。 したがって、本件発明7は、刊行物1〜3に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 [本件発明8] 本件発明8は、本件発明7の条件式1に代えて、 st/f≦0.06(D/d)2.9+0.08 …条件式3 を構成要件としたものであるが、条件式1と条件式3とは、開口絞り通過後の各平行ビーム間に生じるパワーのばらつきが20%以下に抑えられるか、5%以下に抑えられるかという点でしか相違しない。そうすると、本件発明8の条件式3には、本件発明7の条件式3と同じ理由により、格別の技術的意義を認めることができない。しかし、本件発明8の「開口絞りはコリメータレンズ保持枠に形成されている」ことについては、本件発明7と同じ理由により当業者が容易に考えつくことができたとすることはできない。 したがって、本件発明8は、刊行物1〜3に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 [本件発明5及び6] 本件発明5、本件発明6は、それぞれ本件発明7、本件発明8のレーザービーム走査装置を備えた画像形成装置であるが、上で述べたように本件発明7及び本件発明8が刊行物1〜3に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、その発明を含む本件発明5及び本件発明6についても、刊行物1〜3に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)特許法第36条違反についての判断 異議申立人は、本件請求項5〜8に記載の発明は、複数の発光部の発光光量(パワー)が互いに等しいという条件を欠いている点で不明確である旨述べているが、複数の発光部の発光光量(開口絞りを通過する前の発光光量)が異なっている場合には、開口絞りによるビームの蹴られ方が同じであっても、両者のビームのパワーに差が生じてしまうことから、本件請求項5〜8に記載の条件式を満足することによりビームパワーのばらつきを20%、5%に抑えることができるのは、複数の発光部の発光光量が相互に等しいという前提で当該条件式が導出されていると見ることができる。 とすれば、本件請求項5〜8に記載の「複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ」の発光部の発光光量が相互に等しい関係にあると見ることができるから、発明の詳細な説明には、本件発明5〜8について当業者が容易に実施し得る程度に記載されていないとすることはできない。 また、異議申立人は、訂正された請求項5〜8に、さらにコリメータレンズの光軸上に1つの発光部を配置するという限定をしない限り、明細書の記載不備は解消しない旨述べているが、本件請求項5〜8記載の条件式は、コリメータレンズの光軸上に1つの発光部を配置するとともに、他の発光部を光軸から最も離れた位置に配置することを前提として導出されているが、これらは、それぞれ開口絞りによる蹴られが最小の位置から最大の位置、つまり、開口絞りを通過後のビームのばらつきを許容範囲に抑えられる発光部の位置を規定するものであり、上記条件式は不等式を含めることで、前記許容範囲を規定するものとなっているから、「コリメータレンズの光軸上に1つの発光部を配置する」点を限定しなければ構成が特定できないとすることはできない。 さらに、異議申立人は、請求項5〜8に「複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズの光軸までの距離と異なって」いる点が追加された以上、図42の構成は実施例から除外するべきである旨述べているが、半導体レーザーアレイ501上の4つの発光部が、コリメータレンズ502の光軸からそれぞれ等距離にあるように見える、本件特許明細書に添付された図42の構成は、本件請求項6に上記記載を追加する訂正がされたことにより、本件発明6に対する実施例として適切でないものとなったが、図42の記載を削除しないとしても、本件発明6について当業者が容易に実施できない程ではない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明5〜8についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明についての特許を取り消すべきでない理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 画像形成装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 表面に静電潜像形成される像担持体(5)と、この像担持体(5)の表面を帯電させる帯電器(52)と、帯電した前記像担持体(5)の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置(53)と、レーザービームが走査された前記像担持体(5)の表面に現像剤を付着させる現像器(55)とを備え、前記レーザービーム走査装置(53)は素子基板(22)上にレーザービームの発光部(21a)が複数形成された半導体レーザーアレイ(21)と、前記発光部(21a)からのレーザービームを前記像担持体(5)の表面へ偏向させる偏向装置(3)とを有し、前記発光部(21a)は前記半導体レーザーアレイ(21)表面に2次元状に配置されるとともに、各発光部(21a)は個別にその点灯および光量が制御可能であり、 半導体レーザーアレイ(21)の発光部(21a)は、素子基板(22)面に対し垂直な光軸を有し、 半導体レーザーアレイの発光部(21a)は、素子基板(22)面上に配置された反射率の異なる一対の反射鏡(23,28)と、これら一対の反射鏡(23,28)の間に配置されるとともに柱状のクラッド層(26)を含む多層の半導体層とを有する光共振器と、前記柱状のクラッド層(26)の周囲に埋め込まれたII-VI族化合物半導体エピタキシャル層(32)とを備え、 柱状に形成されたクラッド層(26)は半導体層に設けられた分離溝により形成され、II-VI族化合物半導体エピタキシャル層(32)は前記分離溝内に埋め込み形成されるとともに、多層の半導体層は前記分離溝下方に配置された活性層(25)を有し、これにより各光共振器での光の位相が同期し、 半導体レーザーアレイ(21)の発光部(21a)より射出されるレーザービームは直線偏光であり、前記レーザービームの光軸に直交する断面が楕円状をなし、前記レーザービームの偏光面の方向が前記楕円の長軸および短軸のいずれの方向とも異なることを特徴とする画像形成装置。 【請求項2】 表面に静電潜像形成される像担持体(5)と、この像担持体(5)の表面を帯電させる帯電器(52)と、帯電した前記像担持体(5)の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置(53)と、レーザービームが走査された前記像担持体(5)の表面に現像剤を付着させる現像器(55)とを備え、前記レーザービーム走査装置(53)は素子基板(22)上にレーザービームの発光部(21a)が複数形成された半導体レーザーアレイ(21)と、前記発光部(21a)からのレーザービームを前記像担持体(5)の表面へ偏向させる偏向装置(3)とを有し、前記発光部(21a)は前記半導体レーザーアレイ(21)表面に2次元状に配置されるとともに、各発光部(21a)は個別にその点灯および光量が制御可能であり、 半導体レーザーアレイ(21)の発光部(21a)は、素子基板(22)面に対し垂直な光軸を有し、 半導体レーザーアレイの発光部(21a)は、素子基板(22)面上に配置された反射率の異なる一対の反射鏡(23,28)と、これら一対の反射鏡(23,28)の間に配置されるとともに柱状のクラッド層(26)を含む多層の半導体層とを有する光共振器と、前記柱状のクラッド層(26)の周囲に埋め込まれたII-VI族化合物半導体エピタキシャル層(32)とを備え、 柱状に形成されたクラッド層(26)は半導体層に設けられた分離溝により形成され、II-VI族化合物半導体エピタキシャル層(32)は前記分離溝内に埋め込み形成されるとともに、多層の半導体層は前記分離溝下方に配置された活性層(25)を有し、これにより各光共振器での光の位相が同期し、 半導体レーザーアレイ(21)の発光部(21a)は、偏光面が互いに異なる複数の光共振器からなることを特徴とする画像形成装置。 【請求項3】 表面に静電潜像が形成される像担持体(105)と、この像担持体(105)の表面を帯電させる帯電器(152)と、帯電した前記像担持体(105)の表面に対してレーザービームを走査するレーザービーム走査装置(153)と、レーザービームが走査された前記像担持体(105)の表面に現像剤を付着させる現像器(155)とを備え、前記レーザービーム走査装置(153)は素子基板(122)上にレーザービームの発光部(121a)が形成された半導体レーザー(121)と、前記発光部(121a)からのレーザービームを前記像担持体の表面へ偏向させる偏向装置(103)とを有し、前記発光部(121a)は前記素子基板(122)面に対し垂直な光軸を有し、 半導体レーザーの発光部(121a)は、素子基板(122)面上に配置された反射率の異なる一対の反射鏡(123,128)と、これら一対の反射鏡の間に配置されるとともに柱状のクラッド層(126)を含む多層の半導体層とを有する光共振器と、前記柱状のクラッド層(126)の周囲に埋め込まれたII-VI族化合物半導体エピタキシャル層(132)とを備え、 柱状に形成されたクラッド層(126)は半導体層に設けられた分離溝により形成され、II-VI族化合物半導体エピタキシャル層(132)は前記分離溝内に埋め込み形成されるとともに、多層の半導体層は前記分離溝下方に配置された活性層(125)を有し、これにより各光共振器での光の位相が同期し、 半導体レーザー(121)の発光部(121a)より射出されるレーザービームは直線偏光であり、前記レーザービームの光軸に直交する断面が楕円状をなし、前記レーザービームの偏光面の方向が前記楕円の長軸および短軸のいずれの方向とも異なることを特徴とする画像形成装置。 【請求項4】 表面に静電潜像が形成される像担持体(105)と、この像担持体(105)の表面を帯電させる帯電器(152)と、帯電した前記像担持体(105)の表面に対してレーザービームを走査するレーザービーム走査装置(153)と、レーザービームが走査された前記像担持体(105)の表面に現像剤を付着させる現像器(155)とを備え、前記レーザービーム走査装置(153)は素子基板(122)上にレーザービームの発光部(121a)が形成された半導体レーザー(121)と、前記発光部(121a)からのレーザービームを前記像担持体の表面へ偏向させる偏向装置(103)とを有し、前記発光部(121a)は前記素子基板(122)面に対し垂直な光軸を有し、 半導体レーザーの発光部(121a)は、素子基板(122)面上に配置された反射率の異なる一対の反射鏡(123,128)と、これら一対の反射鏡の間に配置されるととも柱状のクラッド層(126)を含む多層の半導体層とを有する光共振器と、前記柱状のクラッド層(126)の周囲に埋め込まれたII-VI族化合物半導体エピタキシャル層(132)とを備え、 柱状に形成されたクラッド層(126)は半導体層に設けられた分離溝により形成され、II-VI族化合物半導体エピタキシャル層(132)は前記分離溝内に埋め込み形成されるとともに、多層の半導体層は前記分離溝下方に配置された活性層(125)を有し、これにより各光共振器での光の位相が同期し、 半導体レーザー(121)の発光部(121a)は、偏光面が互いに異なる複数の光共振器からなることを特徴とする画像形成装置。 【請求項5】 表面に静電潜像が形成される像担持体(507)と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器(551)と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置(552)と、レーザービームが走査された像担持体の表面に現像剤を付着させる現像器(553)とを備え、前記レーザービーム走査装置は基板面に対して垂直にレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)を有し、前記複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離が、他の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離と異なっており、前記半導体レーザーアレイと前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズ(502)の前記偏向装置(504)側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部と前記光軸との間隔をt、前記開口絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足し、かつ前記開口絞り(503)は、前記コリメータレンズ(502)の保持枠に形成されていることを特徴とする画像形成装置。 【請求項6】 表面に静電潜像が形成される像担持体(507)と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器(551)と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置(552)と、レーザービームが走査された像担持体(507)の表面に現像剤を付着させる現像器(553)とを備え、前記レーザービーム走査装置は基板面に対して垂直にレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離が、他の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離と異なっており、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズの前記偏向装置側の焦点と前記開口絞りとの間隔をs、前記コリメータレンズの光軸から最も離れた位置に配置された発光部と前記光軸との間隔をt、前記開口絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足し、かつ前記開口絞り(503)は前記コリメータレンズ(502)の保持枠に形成されていることを特徴とする画像形成装置。 【請求項7】 基板面に対して垂直にレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離が、他の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離と異なっており、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(502)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズ(502)の前記偏向装置側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部(512b)と前記光軸(510)との間隔をt、前記開口絞りの直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足し、かつ前記開口絞り(503)は前記コリメータレンズ(502)の保持枠に形成されていることを特徴とするレーザービーム走査装置。 【請求項8】 基板面に対して垂直にレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離が、他の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離と異なっており、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズ(502)の前記偏向装置(504)側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部(512b)と前記光軸との間隔をt、前記開口絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足し、かつ前記開口絞り(503)は前記コリメータレンズ(502)の保持枠に形成されていることを特徴とするレーザービーム走査装置。 【発明の詳細な説明】 <技術分野> 本発明はレーザービームの走査によって像担持体上に潜像を形成する画像形成装置に関する。 <背景技術> 従来、レーザービームにより像担持体上に静電潜像を形成し、電子写真プロセスにより紙上に高速に印刷を行なう画像形成装置が、コンピュータ、ファクシミリ、多機能複写機等の出力装置として広く用いられてきた。そして、近年、出力速度の向上がより一層望まれ、その改良が進んでいる。 例えば回転多面鏡型偏向装置を用いた画像形成装置では、その鏡面の小面の1つにつき1本のレーザービームを偏向させて1本の走査線を描くので、単位時間当りの走査数を増加させるには、回転多面鏡の小面の数が一定の場合、その回転数が大きくなる。逆に回転数が一定の場合には、回転多面鏡の面数が増加する。回転多面鏡の回転数を増加させるには、気体または液体の動圧または静圧を利用した軸受が必要となるが、これらの軸受は高価で取扱が難しく一般的なレーザービームプリンタに用いることは困難であった。逆に多面鏡の面数を増加させると、偏向角が小さくなるので、偏向装置以降の光路長が長くなる。また結像光学系に入射するレーザービームのコリメート径が光路長に比例して大きくなり、レンズや回転多面鏡の大きさも大きくなる。特に、高い解像度が要求される場合は、走査線の数が増えるため、より大きい回転数と、長い光路長が必要となる。このことは、偏向装置に回転多面鏡以外のものを用いる場合でも同様の現象であり、走査周波数の増大と、偏向装置以降の光路長の増加をもたらす。そのため一度の走査で、複数のレーザービームを用いて複数の走査線を書き込む(いわゆるマルチビーム)露光方法が開発されている。 複数のレーザービームを得るためには、複数のガスレーザー(例えば、He-Ne)発振器を光源として用いたり、1つの発振器のレーザービームを音響光学変調器(AOM)などで時分割的に複数に振り分けたりする方法も開発されたが、より簡潔で装置が小型になる方法として、例えば特開昭54-7328に示すように、1つの素子上に複数のレーザービーム射出用発光部を集積した、半導体レーザーアレイが光源として用いられるようになってきた。 半導体レーザーアレイを用いた画像形成装置について以下説明する。画像形成装置は、1つの基板上に集積されたレーザーアレイを光源として用いており、各発光部のビーム放射点は半導体の素子基板の端面にある。複数のレーザービームは共通のコリメータレンズによって各々略一定の直径を持つレーザービームにコリメートされ、回転多面鏡(偏向装置)の1つの小面に入射する。ここで小面の回転に伴って、レーザービームは偏向され、結像レンズを経由してスポットに集束され、像担持体を露光して静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、電子写真プロセスに従って、現像され紙の上に転写され、最後に定着が行なわれる。また、特開昭54-158251に示されているように、像担持体上で同時に走査する走査線の間隔を小さくするため、レーザーアレイの発光部は走査面に対してある角度を持って配置されている。 他方、このような半導体レーザーアレイを用いた画像形成装置に対し、従来から高速かつ高解像度の走査を行なうことができる画像形成装置が求められている。しかしながら従来の画像形成装置では、高速かつ高解像度の走査を十分実現することができないのが実情である。 <発明の開示> 本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、高速かつ高解像度のレーザービーム走査を行なうことができるとともに、コンパクトな画像形成装置を提供することを目的とする。 本発明の第1の特徴は、表面に静電潜像が形成される像担持体と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器と、帯電した前記像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置と、レーザービームが走査された前記像担持体の表面に現像剤を付着させる現像器とを備え、前記レーザービーム走査装置は素子基板上にレーザービームの発光部が複数形成された半導体レーザーアレイと、前記発光部からのレーザービームを前記像担持体の表面へ偏向させる偏向装置とを有し、前記発光部は前記半導体レーザーアレイ表面に2次元状に配置されるとともに、各発光部は個別にその点灯および光量が制御可能であることを特徴とする画像形成装置である。 本発明の第2の特徴は、素子基板上にレーザービームの発光部が複数形成された半導体レーザーアレイと、前記発光部からのレーザービームを偏向させる偏向装置とを有し、前記発光部は前記半導体アレイ表面に2次元状に配置されるとともに、各発光部は個別にその点灯および光量が制御可能となっていることを特徴とするレーザービーム走査装置である。 本発明の第3の特徴は、表面に静電潜像が形成される像担持体と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器と、帯電した前記像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置と、レーザービームが走査された前記像担持体の表面に現像剤を付着させる現像器とを備え、前記レーザービーム走査装置は素子基板上にレーザービームの発光部が形成された半導体レーザーと、前記発光部からのレーザービームを前記像担持体の表面へ偏向させる偏向装置とを有し、前記発光部は前記素子基板面に対し略垂直な光軸を有することを特徴とする画像形成装置である。 本発明の第4の特徴は、素子基板上にレーザービームの発光部が形成された半導体レーザーと、前記発光部からのレーザービームを偏向させる偏向装置とを有し、前記発光部は前記素子基板面に対し略垂直な光軸を有することを特徴とするレーザービーム走査装置である。 本発明の第5の特徴は、表面に静電潜像が形成される像担持体と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置と、レーザービームが走査された像担持体の表面に現像剤を付着させる現像器とを備え、前記レーザービーム走査装置は複数のレーザービームを射出する半導体レーザーアレイと、前記複数のレーザービームの各々を平行化するコリメータレンズと、前記コリメーターレンズで平行化された複数のレーザービームの方向を周期的に偏向する偏向装置と、前記偏向装置によって偏向されたレーザービームを前記像担持体上に結像させる走査レンズとを有し、前記偏向装置は1つの反射面を有する回転鏡であることを特徴とする画像形成装置である。 本発明の第6の特徴は、複数のレーザービームを射出する半導体レーザーアレイと、前記複数のレーザービームの各々を平行化するコリメータレンズと、前記コリメーターレンズで平行化された複数のレーザービームの方向を周期的に偏向する偏向装置と、前記偏向装置によって偏向されたレーザービームを像担持体上に結像させる走査レンズとを有し、前記偏向装置は1つの反射面を有する回転鏡であることを特徴とするレーザービーム走査装置である。 本発明の第7の特徴は、表面に静電潜像が形成される像担持体と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置と、レーザービームが走査された像担持体の表面に現像剤を付着させる現像器とを備え、前記レーザービーム走査装置はレーザービームを射出する発光部を複数有する半導体レーザーアレイと、前記複数のレーザービームの各々を平行化するコリメータレンズと、前記コリメーターレンズでコリメートされた複数のレーザービームの方向を周期的に偏向する偏向装置と、前記偏向装置によって偏向されたレーザービームを前記像担持体上に結像させる走査レンズとを有し、前記コリメータレンズの焦点距離をfc、前記半導体レーザーアレイ上の複数の発光部のうち、相互の距離の最も遠い2つの発光部の間隔をδmaxとすると、 fc/δmax>25 であることを特徴とする画像形成装置である。 本発明の第8の特徴は、レーザービームを射出する発光部を複数有する半導体レーザーアレイと、前記複数のレーザービームの各々を平行化するコリメータレンズと、前記コリメータレンズでコリメートされた複数のレーザービームの方向を周期的に偏向する偏向装置と、前記偏向装置によって偏向されたレーザービームを前記像担持体上に結像させる走査レンズとを備え、前記コリメータレンズの焦点位置をfc、前記半導体レーザーアレイ上の複数の発光部のうち、相互の距離の最も遠い2つの発光部の間隔をδmaxとすると、 fc/δmax>25 であることを特徴とするレーザービーム走査装置である。 本発明の第9の特徴は、表面に静電潜像が形成される像担持体と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置と、レーザービームが走査された像担持体の表面に現像剤を付着させる現像器とを備え、前記レーザービーム走査装置はレーザービームを射出する複数個の発光部が素子基板上に設けられた半導体レーザーアレイと、前記発光部から射出されるレーザービームを偏向する偏向装置とを有し、前記半導体レーザーアレイから射出されるレーザービームの中心軸は、前記素子基板面に対して略垂直であり、前記半導体レーザーアレイと前記偏向装置との間の光路上において、複数のレーザービームの断面の少なくとも一部が重なり合う位置に開口絞りを設け、前記開口絞りを通過した後の複数のレーザービームのうち、パワーが最大であるレーザービームについて、そのパワーを1としたときに、その他のレーザービームのパワーが各々0.9以上となることを特徴とする画像形成装置である。 本発明の第10の特徴は、レーザービームを射出する複数個の発光部が素子基板上に設けられた半導体レーザーアレイと、前記発光部から射出されるレーザービームを偏向する偏向装置とを有し、前記半導体レーザーアレイから射出されるレーザービームの中心軸は、前記素子基板面に対して略垂直であり、前記半導体レーザーアレイと前記偏向装置との間の光路において、複数のレーザービームの断面の少なくとも一部が重なり合う位置に開口絞りを設け、前記開口絞りを通過した後の複数のレーザービームのうち、パワーが最大であるレーザービームについて、そのパワーを1としたときに、その他のレーザービームのパワーが各々0.9以上となることを特徴とするレーザービーム走査装置である。 本発明の第11の特徴は、表面に静電潜像が形成される像担持体と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置と、レーザービームが走査された像担持体の表面に現像剤を付着させる現像器とを備え、前記レーザービーム走査装置はレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイと、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズと、レーザービームを偏向する偏向装置を有し、前記半導体レーザーアレイと前記偏向装置との間の光路上に開口絞りが設けられ、前記コリメータレンズの焦点距離をf、前記コリメータレンズの前記偏向装置側の焦点と前記開口絞りとの間隔をs、前記コリメータレンズの光軸から最も離れた位置に配置された発光部と前記光軸との間隔をt、前記開口絞りの直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足することを特徴とする画像形成装置である。 本発明の第12の特徴は、表面に静電潜像が形成される像担持体と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置と、レーザービームが走査された像担持体の表面に現像剤を付着させる現像器とを備え、前記レーザービーム走査装置はレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイと、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズと、レーザービームを偏向する偏向装置とを有し、前記半導体レーザーアレイと前記偏向装置との間の光路上に開口絞りが設けられ、前記コリメータレンズの焦点距離をf、前記コリメータレンズの前記偏向装置側の焦点と前記開口絞りとの間隔をs、前記コリメータレンズの光軸から最も離れた位置に配置された発光部と前記光軸との間隔をt、前記開口絞りの直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足することを特徴とする画像形成装置である。 本発明の第13の特徴は、レーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイと、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズと、レーザービームを偏向する偏向装置とを有し、前記半導体レーザーアレイと前記偏向装置との間の光路上に開口絞りが設けられ、前記コリメータレンズの焦点距離をf、前記コリメータレンズの前記偏向装置側の焦点と前記開口絞りとの間隔をs、前記コリメータレンズの光軸から最も離れた位置に配置された発光部と前記光軸との間隔をt、前記開口絞りの直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足することを特徴とするレーザービーム走査装置である。 本発明の第14の特徴は、レーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイと、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズと、レーザービームを偏向する偏向装置とを有し、前記半導体レーザーアレイと前記偏向装置との間の光路上に開口絞りが設けられ、前記コリメータレンズの焦点距離をf、前記コリメータレンズの前記偏向装置側の焦点と前記開口絞りとの間隔をs、前記コリメータレンズの光軸から最も離れた位置に配置された発光部と前記光軸との間隔をt、前記開口絞りの直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足することを特徴とするレーザービーム走査装置である。 <図面の簡単な説明> 図1は本発明による画像形成装置の第1の実施例を示すレーザー走査光学系の概略図、 図2は画像形成装置を示す側面図、 図3は面発光型半導体レーザーアレイの光共振器の断面図、 図4は位相同期の面発光型半導体レーザーアレイの発光部を示す斜視図、 図5は走査線に対するスポット位置の関係を示す配置図、 図6は位相同期の面発光型半導体レーザーアレイの発光部の光共振器の配置図、 図7は一般的な端面発光型半導体レーザーアレイの概念図、 図8は一般的なレーザ走査光学系の光路断面図、 図9は走査線に対するスポット位置の関係を示す配置図、 図10は一般的な金属ミラーのP偏向およびS偏向の反射率を示す説明図、 図11はレーザービームのコリメート径の調整方法を示す概略図、 図12は本発明による画像形成装置の第2の実施例を示すレーザー走査光学系の概略図、 図13は画像形成装置を示す側面図、 図14は面発光型半導体レーザーの光共振器の断面図、 図15は位相同期の面発光型半導体レーザーアレイの発光部を示す斜視図、 図16は位相同期の面発光型半導体レーザーアレイの発光部の光共振器の配置図、 図17は一般的なレーザ走査光学系の走査線と直角方向の光軸断面図、 図18は一般的な半導体レーザーの概略図、 図19は一般的な金属ミラーのP偏向およびS偏向の反射率を示す説明図、 図20は本発明による画像形成装置の第3の実施例を示すレーザ走査光学系の概略図、 図21は画像形成装置を示す側面図、 図22は走査面内での光路断面図、 図23は面発光型半導体レーザーの光共振器の断面図、 図24は走査線に対するスポット位置の関係を示す配置図、 図25はビーム偏向装置の平面図、 図26は一般的な回転多面鏡を用いたビーム偏向装置の作動図、 図27は一般的なレーザービーム走査光学系の光路断面図、 図28は一般的な端面発光型半導体レーザーの概略図、 図29は本発明による画像形成装置の第4の実施例を示すレーザー走査光学系の概略図、 図30は画像形成装置を示す側面図、 図31は面発光型半導体レーザーの光共振器の断面図、 図32は走査線に対するスポット位置の関係を示す配置図、 図33は一般的なレーザービーム走査光学系の光路断面図、 図34は一般的なマルチビーム走査方式における光路断面図、 図35は一般的な端面発光型半導体レーザーの概略図、 図36は一般的な倒れ補正レンズを含む光路断面図、 図37は本発明による画像形成装置の第5の実施例を示すレーザー走査光学系の概略図、 図38は画像形成装置を示す側面図、 図39は走査光学系における光源付近の構成図、 図40は他の実施例を示す走査光学系における光源付近の構成図、 図41は一般の走査光学系における光源付近の構成図、 図42は本発明による画像形成装置の第6の実施例を示すレーザー走査光学系の概略図、 図43は一般の走査光学系における光源付近の構成図、 図44は開口絞りによってビームがけられることを示す説明図、 図45はコリメータレンズの焦点位置に開口絞りを設けた場合の光線図、 図46はコリメータレンズの焦点位置からはずれた位置に開口絞りを設けた場合の光線図、 図47はビーム断面強度分布がけられる様子を示す図、 図48は画像形成装置を示す側面図、 図49は走査光学系における光源付近の構成図。 <発明を実施するための最良の形態> §1 画像形成装置の第1の実施例 1-1 背景技術との対比 本実施例をより良く理解するため、はじめに背景技術について述べる。 画像形成装置に用いられている一般的な半導体レーザーアレイを図7に示す。図7に示すように、レーザービームを射出する半導体レーザーアレイ1においては、レーザービームの光軸を含み接合面に平行な面と、同じく光軸を含み接合面に垂直な面では、ビームの拡がり角が大きく異なっていた。図7において、接合面に平行な面での拡がり角θpは通常のレーザーダイオードの場合、半値全角で約10度になる。ところが接合面に垂直な面では拡がり角θtは回析の影響を受け、半値全角で約 30度と大きくなる。さらにこの拡がり角θt、θpの大きさや、その比(すなわち楕円の長径、短径の比)を自由に設定することも難しい。また、これにともないビームウエストの位置も平行面と垂直面ではδだけ異なる。この値を一般に「非点隔差」と呼ぶ。 この非点隔差のためコリメータレンズを出たビームは、厳密には走査面とその直交する方向のどちらかあるいは両方とも平行にはならない。そのため、像担持体上に正確にスポットを結像することが出来ず、収差を持っていた。従来のレーザービームプリンタでは、結像レンズの焦点距離も長く、スポット径も大きいため、さほど問題にはならなかったが、近年、高解像度のプリンタへの要求が高まるにつれて、この収差が問題となってきた。これに対する一つの解決方法として、垂直面内、水平面内に異なるパワーをレンズの組合せなどで構成したいわゆるアナモフィックレンズを用いて、非点隔差の補正を行なうビーム整形光学系が提案されている。しかし、この様なビーム整形光学系は機器のコストダウン、及び小型化に好ましくなく、複数のレーザービームを走査する場合には適用は難しい。 また半導体レーザーアレイ1の端面からレーザービームが放射されるため、レーザービームの発光部は必然的に1次元の直線上の配列とならざるをえず、より多く複数のレーザービームを得ようとする場合、線状にレーザービームが配列されるため、光学系の有効径が大きくなるという問題があった。 さらに、この拡がり角自体の値の大きさのため、必然的にこれをコリメートするコリメータレンズの焦点距離は数mm前後と小さくなる。半導体レーザーアレイとコリメータレンズの距離が僅かで(例えば数十μm)も変動すると、得られるコリメート光(平行ビーム)が平行ではなくなり、結像光学系への入射時のビーム径も変動し、像担持体上での結像スポットサイズが変化してしまう。従って半導体レーザーとコリメータレンズの調整許容範囲が非常に小さくなり、生産性が悪いという問題点があった。また、初期的には正確に調整してあっても、使用時の光学系周辺の温度上昇や経年による部材の変形のためコリメータレンズの位置が狂い、やはり、結像スポット径が変動してしまい、画像品質が劣化するという問題があった。 さらに、複数の平行な光軸を持つレーザービームがこのコリメータレンズに入射すると、その光軸は大きな角度をもってひろがっていってしまう。いま簡単のために、レーザービームの数が2本で、コリメータレンズ、結像レンズがいずれも凸の単レンズであるレーザ走査光学系を考える。図8はこの光学系の光路上の断面図を示したもので、半導体レーザーアレイ1を間隔dで射出した2本のレーザービームは、焦点距離fcのコリメータレンズ2で平行になる。ここで半導体レーザーアレイ1はコリメータレンズ2の物体側焦点におかれているので、2本のレーザービームは像側焦点Fで交差する。このほぼ平行な2本のレーザービームを像面11に結像させるため、焦点距離fiの結像レンズ4をその物体側焦点が前記のコリメータレンズ2の像側焦点Fに一致するように置く。なお、偏向装置の鏡面は光学的にはパワーを持たないのでここでは省略してある。例えば像面11で100μm(ここでスポット径、ビーム径は、ビームの断面の強度分布がガウス分布として、ピーク強度に対して1/e2のパワーとなる直径と定義する)のスポット6に結像させる場合、fiを200mmとすれば結像レンズへの入射ビーム径(すなわちコリメート径)Wcは約2mmである。このビーム径を得るためには、コリメータレンズ2の焦点距離fcは約3mmとなる。図8で明らかなように像面でのスポットの間隔d′はfcとfiの比にdを掛けたものである。現在の半導体レーザーアレイでは、お互いの干渉を避けるため、その発光部の間隔は100μm以下にするのは難しい。従って、今の例では、像面上でのスポット間隔d′は、 となってしまう。 また、回転多面鏡の各小面の倒れ角度の差を補正するいわゆる倒れ補正光学系を有する場合、各レンズとコリメータレンズとの相対距離によって、各レーザービームの光軸がなす角度はさらに大きくなってしまうことがある。そのためさらにレンズを追加したり、例えば特開昭58-211735に示されるように、プリズムを入れるなどしてレーザービームの光軸の相互の角度の補正を行なう構造が提案されていた。しかしこれらの構造は、光学系の構成をより複雑にし、高価で調整も難しくなる。なお、図8においては、簡単のため倒れ補正レンズは省略してある。 次に、図9に従来の像担持体上での走査線に対するスポット位置の関係をしめす。この例ではスポットは4か所、すなわち4本のレーザービームで書込みを行なっている。上記に述べたように、レーザー走査光学系では拡大光学系となり、半導体レーザーアレイ上でのスポット間隔は像担持体上では図中のd′のように拡大され、通常、走査線9の間隔Pよりかなり大きくなる。例えば解像度300dpi(dot par inch、1インチ[=25.4mm]当りのドット数)の場合、P=25.4/300=84.7μmであるが、スポット間隔は前記のように6.7mmという値になってしまう。そのためスポット6の中心を結んだ線12と走査線9のなす角度αは、この場合では、 と非常に小さなものとなる。半導体レーザーアレイ1上での発光部を結んだ線(すなわち接合面の端面)も走査面に対してαだけ傾けて取り付ける必要があり、αが小さくなるに従い、極めて微妙な調整が必要であった。 また、一般に半導体レーザーから射出されるレーザービームの偏光は直線偏光であり、レーザービームの偏光面の方向は半導体レーザーアレイの接合面の傾きによって一意にきまってしまう。ところが一般に反射面での反射率はその鏡面への入射角度によってP偏光とS偏光によって反射率が異なる。図10に金属ミラーのP偏光、S偏光の各々の反射率Rp、Rsを示す。回転多面鏡の回転に伴いその鏡面への入射角が変化するので、図10に示すようにP偏光とS偏光の合成として表わされるレーザービームの光量も変動してしまう。特に回転多面鏡での偏向角を大きくとる場合に問題となる。これを避けるため特開昭58-42025に示すように偏光面を回転多面鏡の回転軸に対して45°傾ける方法も提案されているが、前述のように、端面発光型の半導体レーザーアレイ1では走査線間隔の制約から、この傾き角度が決まってしまうため、この方法を用いることはできない。この場合は、1/4λ板等を用いて偏光面を回転させなくてはならない、という問題点があった。 さらに、半導体レーザーアレイ1を射出した各レーザービームは同一のコリメータレンズ2に入射する。このとき、図8に示すように各レーザービームのコリメート径Wcはレーザービームの拡がり角θと半導体レーザーアレイ1からコリメータレンズ2までの距離fcで決まるが、レンズまでの距離は各レーザービームとも同一であるので、レーザービームの拡がり角θのみで決まる。ところが従来の端面発光型半導体レーザーアレイ1ではこの拡がり角は各発光部毎にばらつくため、各レーザービームのコリメート径Wcもばらつきをもつ。従って、このコリメートされたレーザービームを結像させたスポットサイズもばらついてしまう。通常ごく普通に使用されているレーザービームを1本しか用いない(シングルビームの)レーザー走査光学系では図11に示すように、コリメータレンズ2の前後どちらかに絞り13をいれて、コリメート径Wcを調整するようなビーム整形を行なうことが出来るが、図8のように複数のレーザービームが重なって入射する場合には絞りをコリメータレンズの焦点位置にしかおくことはできない。 一般に半導体レーザーアレイにおいては、レーザー発振は光共振器を流れる電流が一定値を超えなければ生じない。この電流値を「しきい値電流」と呼ぶが、従来の半導体レーザーアレイでは「しきい値電流」が数10 mAもあり、その熱によってレーザービームの特性、特に発振波長のシフトが生ずるため、半導体レーザーアレイからの放熱が問題となっていた。特に、複数のビームを射出する半導体レーザーアレイでは、発光部の数だけ熱源があり、多数の発光部を集積する際の障害となっていた。 1-2 本発明の構成 本発明の一実施例を以下に説明する。図2は本発明の画像形成装置の全体を示す図である。転写材51上に印刷結果を得るプロセスはいわゆる電子写真プロセスによっている。像担持体5としては、半導体レーザーを光源に用いた電子写真プリンタでは長波長側に増感した有機感光体(OPC)が多く用いられる。この像担持体5はまず、帯電器52で一定の表面電位に帯電されたのち、レーザービーム走査装置53によって光書込すなわち露光が行なわれる。このレーザービーム走査装置53から画像情報に従って光強度が各々独立に変調された複数のレーザービーム54が像担持体5を軸方向に走査し、露光部のみに表面電位を打ち消す電荷を発生させ、その部分の表面電位の絶対値は小さくなる。結果として像担持体5上には画像に応じた表面電位の分布、すなわち静電潜像が形成される。静電潜像は現像器55によって表面電位に応じて選択的に現像剤を付着させることにより現像される。この現像剤は転写器56によって転写材51(通常は紙)に転写される。転写材51上の現像剤は、定着器57によって熱圧力定着され排出される。 図1は本発明の画像形成装置に用いるレーザービーム走査装置53の概観図である。図2に示したレーザービーム走査装置53ではレーザービーム54は折り曲げられて下方に射出する場合を想定していたが、ここでは説明のため単純化して描いてある。 図1において、半導体レーザーアレイ21は複数の発光部21aが2次元状に素子基板22(図3)上に配置されており、コリメータレンズ2によって所定のビーム直径を持つレーザービームにコリメート(平行化)される。発光部21aは制御装置60によって個別にその点灯および光量が制御される。このレーザービームは回転多面鏡3の1つの小面に入射し、その回転に伴って、各々偏向される。結像レンズ4を通過したレーザービームは像担持体5上でスポット6に結像する。図1において、倒れ補正レンズは簡単のため省略してある。 この様な特性を持つ半導体レーザーアレイ21としては、いわゆる面発光型半導体レーザーアレイを用いるのが好ましい。さらにより望ましくは、II-VI族化合物半導体を埋め込んだ発光部を有する面発光半導体レーザーアレイが用いられる。図3はこの面発光型半導体レーザーアレイ21の発光部21aのうちの1つの断面図である。図3において、1つの光共振器が素子基板22上に2次元的に配置された1つの発光部に対応している。 図3においてGaAs基板22の上に、組成の違う2種のAlGaAs層を数10層積層した半導体多層膜反射層23が形成され、その上にそれぞれAlGaAsからなるクラッド層24、活性層25、クラッド層26、コンタクト層27が積層され、最後にSiO2誘電体多層膜反射層28が形成されている。またGaAs基板 22の裏面全体及び、表面の誘電体多層反射層のまわりに窓状の電極29、30が形成されており全体が光共振器を構成している。 活性層25で発生した光は基板22面と垂直方向に、上下の反射層27、23の間を往復し発振するので、そのレーザービーム31の光軸は基板22面に対してほぼ垂直となる。光共振器の回りには埋め込み層32としてII-VI族の化合物半導体が埋め込まれている。II-VI族の化合物半導体としては、II族元素としてZn、Cd、Hg、VI族元素としてO、S、Se、Teを2〜4元素組み合わせ、また、その化合物の格子定数を前記のクラッド層24、活性層25、クラッド層26からなる半導体層の格子定数に合わせるのが望ましい。このII-VI族の化合物半導体は電気抵抗が非常に大きいため、電流を光共振器のなかに効率的に閉じこめる。また、埋め込み層32は光共振器を構成しているAlGaAs半導体層とは屈折率に差があるため、光共振器の内部で素子基板22面に垂直もしくはそれに近い角度で進む光はこの埋め込み層32との界面で全反射し効率的に閉じこめられる。 このため、このような半導体レーザーアレイ21を用いれば、従来の半導体レーザーアレイに比べて大変小さい電流でレーザー発振が始まる。すなわち、しきい値電流が低い。よって、複数の発光部21aをアレイ化して1つの素子基板22上に集積しても、素子基板22での損失熱量が少なくより多くの光パワーもしくは発光部 21aの数を得ることが出来る。 また、面発光半導体レーザーアレイ21は、レーザービームの射出部(発光部)21aの断面積(ニア・フィールド・パターン)が、従来の端面発光型の半導体レーザーに比べて比較的大きくとれるため、レーザービームの拡がり角は小さくなる。この拡がり角の大きさは射出窓の面積で決まるが、その面積はエッチング等で正確に制御できるため、拡がり角も一定にすることができる。さらに、レーザービームの拡がり角の縦横すなわち楕円断面ビームの長径と短径の比もこの射出窓の形状で随意に設定できる。例えば、完全な円形窓にすれば、等方的な拡がり角を持つ円形断面のレーザービームが得られる。従って、光軸方向の断面によるビームの非点隔差も少ない。 ところが、通常のレーザービームプリンターでは、像担持体上でのレーザービームの結像スポットの形状は走査方向に短軸が一致するような楕円状とする事が多い。これは、走査方向には点灯時間だけスポットが移動し像が長く伸びるので、これを補正するためである。そのためには結像光学系に入射するレーザービームの断面形状は、逆に走査方向に長軸をもつ楕円であることが望ましい。上記で述べたように、面発光の半導体レーザーアレイ21では射出ビームの楕円比を自由に制御できるので、特別な光学系を用いなくとも、走査面に長軸を有し、適切な長軸と短軸の比を持つような断面をもつレーザービームを結像光学系に入射させることができる。 また、この面発光半導体レーザーアレイ21は上述のように各発光部21aからのレーザービームの拡がり角を均一にできる。よって、コリメータレンズもしくは結像光学系への入射ビーム径を各レーザービームともほぼ一定に管理でき、結果として像担持体上での結像スポットサイズも一定にできる。 面発光半導体レーザーアレイ21では共振器の素子基板22面内での断面積が大きくなると、0次モードだけではなく、高次のモードの発振が始まり、結像したスポットの光量分布もいくつものピークを持ち、像担持体5上に静電潜像を作るのには甚だ好ましくない。そこで、複数の小さな光共振器を近接して並べ、位相同期して発振させることにより、0次モードで発振する面積の大きな発光部21aを得ることが出来る。 この位相同期型面発光半導体レーザーアレイ21の1つの発光部21aの一部断面図を図4に示す。ここでは複数の光共振器が非常に狭い間隔で隣接しており、埋め込み層32の下部は活性層25に達していない。このため、埋め込み層32下方のクラッド層26を介して隣接する光共振器から漏れる光が互いに影響し、同位相で発振する。このため、この隣接する複数の光共振器があたかも1つの光共振器のように動作する。このように各光共振器の射出光の波面が揃うので、面状のレーザー放射源として作用し、その発光部の見かけ上の面積は大きくなるため、レーザービームの拡がり角は非常に小さく、半値全角で2度以下にすることも可能である。 このように位相同期を行なう面発光半導体レーザーアレイ21では、レーザービームの拡がり角が従来の半導体レーザーに比べて小さくなるが、これを従来の実施例と対比して説明する。例えばレーザービームの拡がり角を半値全角で2度とし、先の例と同じく直径2mmのビーム径で結像光学系に入射させるとするとコリメータレンズの焦点距離fcは約35mmになる。このようにコリメータレンズ2の焦点距離fcを長くすることができるので、半導体レーザーアレイ21に対するコリメータレンズ2の距離の調整余裕が増加する。また、像担持体上でのレーザービームの結像スポット間隔d′は、半導体レーザーアレイ21を射出するレーザービームの間隔をdとすると、 となり、走査線間隔も従来例と同じ84.7μmとすると、走査面に対するスポットを結んだ線の角度αは となり、従来の半導体レーザーアレイを使った場合に比べてはるかに大きく取れる((3)式参照)。このため、半導体レーザーアレイ21の光軸方向回りの取付調整も容易に行なうことができるとともに、各部品の加工公差によってはこの角度αの調整を行なわずに組み立てることもできる。また、各結像スポットやそこに至るまでのレーザービームが互いに接近しているので、光学系の有効径も小さくてすむことがこの図からも明らかである。 さらにレーザービームの拡がり角を極端に小さくすることにより、半導体レーザーアレイ21から回転多面鏡3に至りさらに結像レンズ4にいたる距離の間に、レーザービームの大きさはあまり広がらず、結像レンズ4の入射面においても、所要の結像スポット径を得るのに十分な小ささにできる。すなわち、通常のレーザー走査光学系のような所要のコリメート径にレーザービームをコリメート(平行化)するコリメータレンズが不要となる。但し、回転多面鏡3の偏向角に応じて光路長が変化し、結像レンズ4に入射するレーザービームの大きさも変化して行くので、それを補正する光学系が必要になる。しかも、そのような光学的機能は結像レンズ4にもたせることは容易であるので、全体の光学系の構成要素は少なくなる。 また、面発光形の半導体レーザーアレイ21においては、発光部21aが互いに干渉しない距離さえおけば、どこにでも発光部21aを置くことが可能なため、素子基板22上に2次元状に発光部21aを配列できる。いま、先に図8で示した従来の実施例と同様に4本のレーザービームで走査を行なう露光系を考える。図5(a)で示すように4本のレーザービームを配列すると、図5(b)のように一直線に並べる場合に比べてレーザービーム相互の角度もしくは距離を小さくでき、光学系の大きさをそれにあわせて小さくできる。 上記の例はレーザービームが4本の場合を示したが、レーザービームの数が更に増えた場合、像担持体5上でのスポット6の位置が最も近接するよう、半導体レーザーアレイ21上の発光部21aの配置を自由に選べるので、効果はより大きくなる。一例としてレーザービーム数が8本のときの走査線9に対する結像スポット6の配置例を図5(c)に示す。 なお、以上の結像スポットの相対位置の関係は、必ずしも半導体レーザーアレイ21上での発光部21aの配置と相似形ではない。例えば、既に触れたような回転多面鏡3の倒れ補正光学系等のように、走査方向とその直交方向で光学的特性が異なる光学要素がレーザービームの途中にはいった場合、各レーザービーム相互のなす角度や距離は、走査方向とその直交方向で異なることもある。しかし、そのような場合でも従来の端面発光半導体レーザーアレイでは、一直線に並ぶ発光部は像担持体上で一直線上の結像スポット列にしかなり得ない。これに対して本発明においては、上に述べたような発光部21aを素子基板22上に2次元的に配列できる効果は同様に発揮される。 面発光形の半導体レーザーアレイ21においても一般的に、射出レーザービームは直線偏光になる。その方向は共振器の素子基板22面内の平面形状によって決まり、おおむねは平面形状の長手方向に偏光面が一致する。例えば楕円状の共振器形状にすればその長軸方向が偏光面になる。前述のように位相同期型の半導体レーザーアレイ21においては1つの発光部は複数例えば4つの位相同期して発振する光共振器から構成されている。このとき射出レーザービームの断面形状は各光共振器から射出されたレーザービームの合成された形状となるため、個々の光共振器の並べ方によって射出ビームの断面形状を自由に設定できる。この場合も偏光面の向きは個々の共振器の平面形状で決まるので、例えば合成された楕円のレーザービームを得る場合でもその長軸と偏光面の方向を独立に設定できる。 図6(a)はこの様子を模式的に示したもので、半導体レーザーアレイ上の1つの発光部42をビーム射出側からみた平面図である。図6(a)に示すように、4つの位相同期して発振している楕円状断面の光共振器41が1つの発光部42を構成しており、個々の光共振器 41から射出されるレーザービームの偏光面43は、図6(a)では45度傾いているが、合成して得られる楕円状のレーザービームの長軸は上下方向になる。また図6(b)に示すように、個々の光共振器41から射出されるレーザービームの偏光面43の方向を互いに異なる角度で配置すると、その合成された射出レーザービームは近似的に円偏光になる。 先にも述べたように通常のレーザービームプリンターでは、像担持体上でのレーザービームの結像スポット6の形状は走査方向に短軸が一致するような楕円状とする事が多い。そこで前述の様に各光共振器からのレーザービームの偏光面の向きを合成楕円レーザービーム断面の長軸方向に対して45度傾け、合成した射出ビームの長軸を走査方向に一致させるように半導体レーザーアレイ21を設ければ、各光共振器からのレーザービームの偏光面はビーム走査面とは45度傾くことになる。その結果、回転多面鏡3の回転軸に対しても偏光面は45度傾いており、図11に示したような回転多面鏡への入射角による反射率の差を受けにくい。このことは、ほぼ円偏光である楕円断面のレーザービームでも同様である。なお、光学系の構成によっては、半導体レーザーアレイ21から射出するレーザービームの短軸を走査方向に一致させる場合もあるが、全く同様の効果を発揮する。 以上に説明した実施例は、本発明の一実施例に過ぎない。例えば偏向装置として回転多面鏡3ではなく、ガルバノミラーやホログラムディスクを用いても同様の効果を有する。また、コリメータレンズ、倒れ補正レンズ、結像レンズの有無、構成や相対位置関係が変わっても本発明の効果は同じく発揮される。 また、本発明の画像形成装置の応用範囲は、プリンタ、複写機等の印刷装置のみならず、ファクシミリ、ディスプレイにても全く同様な効果を有する。 1-3 効果 以上に述べたように本発明の画像形成装置においては、半導体レーザーアレイを用いて複数レーザービームで走査する露光方法をとることにより、高速かつ高解像度な走査装置を低い走査周波数と短い光路長で得ることができ、装置の小型化、低価格化が可能となる。 さらに、前記半導体レーザーアレイに面発光半導体レーザーアレイを用いることにより、 ▲1▼ レーザービームの拡がり角が小さくなり、コリメータレンズと半導体レーザーアレイの距離を大きく取れるため、コリメータレンズの光軸方向の調整余裕が増し、生産性が上がると同時に、経年劣化や使用時の温度変動の影響を受けずに一定のスポット径で、露光が可能となり、画像品質が向上する。 ▲2▼ 発光部をアレイ状に並べた場合には、各々の発光部からのビームの拡がり角のばらつきが少ないため、その結像スポット径のばらつきも少なくなると同時に、そのビーム間の角度や、結像スポットの間隔も小さくできる。このため光学系の構成が簡素になり、かつ各レンズや偏向器の有効面積を小さくすることが可能となり、装置の低価格化に寄与する。 ▲3▼ 面発光半導体レーザーアレイでは2次元状に発光部を配置することが可能なため、より一層、各レンズや偏向器の有効面積を小さくすることが可能となる。 ▲4▼ 結像スポットの間隔が走査線間隔に比べて大きくないので、半導体レーザーアレイの光軸回りの取付角度の許容誤差が大きく取れ、容易に調整できるとともに、走査線間隔のばらつきも少なくなり、画像品質が向上する。 ▲5▼ 面発光半導体レーザーアレイでは、その特性上、非点隔差が少なく、ビーム断面の楕円形状(長軸と短軸の比)を自由に設定できるため、通常これらの補正に必要な光学系を用いずとも正確なビーム整形が可能となる。 ▲6▼ さらに面発光半導体レーザーアレイにII-VI族の化合物半導体を埋め込み層として用いることにより、低しきい値電流でのレーザー発振が可能となり、素子の発熱によるレーザーの特性への影響が軽減でき、より多くの発光部の集積が可能になる。 ▲7▼ 次に面発光半導体レーザーとして複数の光共振器が位相同期して発光する位相同期型の面発光半導体レーザーアレイを用いることにより、一層射出ビームの拡がり角を小さくでき、場合によってはコリメータレンズを省略することが可能となり、光学系の構成を一層簡素化できる。 ▲8▼ また、偏光面を自由に設定できる複数の光共振器で1つの発光部を構成することができるので、楕円断面の合成レーザービームを用いる場合に、各レーザービームの偏光面の方向を合成レーザービーム断面の長軸方向とは独立にかつ任意に制御でき、回転多面鏡への入射角の違いから生ずる反射率の差による、レーザービームの走査方向の位置による光量変動を最小限にとどめることが容易に実現できる。 §2 画像形成装置の第2実施例 2-1 背景技術との対比 本実施例をより良く理解するため、はじめに背景技術について述べる。 従来の画像形成装置の光路断面図を図17に示す。図17は画像形成装置の像担持体の走査面と垂直でかつレーザービームの光軸を含む光路断面図である。画像形成装置の回転多面鏡の小面8に対して光軸が折返されて描かれている。図17において、半導体レーザー101から放射されたレーザービームは拡がり角θで放射される。このビームは焦点距離fcのコリメータレンズ102によってほぼ平行なビームに整形される。倒れ補正レンズ107によって各ビームは回転多面鏡の小面108の上に一旦集束する。回転多面鏡で偏向されたビームは2つめの倒れ補正レンズ107′を出たビームは再び平行なビームとなり、焦点距離fiの結像レンズ104によって、像担持体上にスポット106を結ぶ。走査面と平行な面内では、倒れ補正レンズ107,107′は光学的パワーを持たないため、その面内ではビームは平行なままである。すなわち、前記回転多面鏡の小面108上にはビームは線像として結像する。 しかし、従来用いられてきた半導体レーザー101からのレーザービームは図18の概念図に示すように、光軸を含み接合面に平行な面と、同じく光軸を含み接合面に垂直な面では、ビームの拡がり角が大きく異なっていた。接合面に平行な面での拡がり角θpは通常の半導体レーザーの場合、半値全角で約10度になる。ところが接合面に垂直な面では拡がり角θtは回析の影響を受け、半値全角で約30度と大きくなる。さらにこの拡がり角θt、θpの大きさや、その比(すなわち楕円の長径、短径の比)を自由に設定することも難しい。また、これにともないビームウエストの位置も平行面と垂直面ではdだけ異なる。この値を一般に「非点隔差」と呼ぶ。 この非点隔差のためコリメータレンズを出たビームは、厳密には走査面とその直交する方向のどちらかあるいは両方とも平行にはならない。そのため、像担持体上に正確にスポットを結像することが出来ず、収差を持っていた。 従来の画像形成装置では、結像レンズの焦点距離も長く、スポット径も大きいため、さほど問題にはならなかったが、近年、高解像度のプリンタへの要求が高まるにつれて、この収差が問題となってきた。これに対する一つの解決方法として、垂直面内、水平面内に異なるパワーをレンズの組合せなどで構成したいわゆるアナモフィックレンズを用いて、非点隔差の補正を行なうビーム整形光学系が提案されている。しかし、この様なビーム整形光学系は機器のコストダウン、及び小型化に好ましくない。 次に、ビームの拡がり角が大きいことによって生ずる問題を先の図17を用いて説明する。いま、例えば像面111で100μm(ここでスポット径、ビーム径は、ビームの断面の強度分布がガウス分布として、ピーク強度に対して1/e2のパワーとなる直径と定義する)のスポット106に結像させる場合、fiを200mmとすれば結像レンズへの入射ビーム径(すなわちコリメート径)Wcは約2mmである。倒れ補正レンズ107,107′は多面鏡の小面108に対して対称であり、レンズ107′の射出ビーム径とレンズ107の入射ビーム径は等しい。このビーム径を得るためには、コリメータレンズ102の焦点距離fcは約3mmとなる。 このようにコリメータレンズ102の焦点距離が短いため、正確に平行なビームを得るためには、半導体レーザーに対するコリメータレンズの光軸方向の位置の誤差は極めて小さく調整する必要があった。また、上記のビームの拡がり角θt、θpも半導体のプロセス上の要因により大きくばらつくことがあり、結果として平行化されたビームの径もばらつきを生ずるという問題があり、コリメータ102の後ろにスリットもしくは開口絞りを設け、ビーム径を絞るようなビーム整形を行なう必要があった。さらに、初期的には正確に調整してあっても、使用時の光学系周辺の温度上昇や経年による部材の変形のためコリメータレンズ102の位置が狂い、やはり、結像スポット径が変動してしまい、画像品質が劣化するという問題があった。 また、一般に半導体レーザーの偏光は直線偏光であり、レーザービームの偏光面の方向は半導体レーザーの接合面の傾きによって一意にきまってしまう。ところが一般に反射面での反射率はその鏡面への入射角度によってP偏光とS偏光によって反射率が異なる。図19に金属ミラーのP偏光、S偏光の各々の反射率Rp、Rsを示す。 回転多面鏡の回転に伴いその鏡面への入射角が変化するので、図19に示すようにP偏光とS偏光の合成として表わされるレーザービームの光量も変動してしまう。特に回転多面鏡での偏向角を大きくとる場合に問題となる。これを避けるため特開昭58-42025に示すように偏光面を回転多面鏡の回転軸に対して45°傾ける方法も提案されているが、ビームの楕円断面の長軸の方向も決まってしまうため、この方法を用いることはできないか、もしくは1/4λ板等を用いて偏光面を回転させなくてはならない、という問題点があった。 また、一般に半導体レーザーにおいては、レーザー発振は光共振器を流れる電流が一定値を超えなければ生じない。この電流値を「しきい値電流」と呼ぶが、従来の半導体レーザーでは数10mAもあり、その熱によってレーザーの特性、特に発振波長のシフトが生ずるため、素子の放熱が問題となっていた。 2-2 本発明の構成 本発明の一実施例を以下に説明する。図13は本発明における画像形成装置を示す図である。転写材151上に印刷結果を得るプロセスはいわゆる電子写真プロセスによっている。像担持体105としては、半導体レーザーを光源に用いて電子写真プリンタでは長波長側に増感した有機感光体(OPC)が多く用いられる。この像担持体105は、帯電器152で一定の表面電位に帯電されたのち、レーザービーム走査装置153によって光書込すなわち露光が行なわれる。このレーザービーム走査装置153から画像情報に従って光強度が変調されたレーザービーム154が像担持体105を軸方向に走査し、露光部のみに表面電位を打ち消す電荷を発生させ、その部分の表面電位の絶対値は小さくなる。結果として像担持体上には画像に応じた表面電位の分布、すなわち静電潜像が形成される。静電潜像は現像器155によって表面電位に応じて選択的に現像剤を付着させることにより現像される。この現像剤は転写器156によって転写材151(通常は紙)に転写される。転写材151上の現像剤は、定着器157によって熱圧力定着され排出される。 次に図12によりレーザービーム走査装置について説明する。図13に示したレーザービーム走査装置153ではレーザービーム154は折り曲げられて下方に射出する場合を想定していたが、ここでは説明のため単純化して描いてある。図12において半導体レーザー121は、接合面に対して垂直な方向にレーザービームを発光部121aから射出する。発光部121aの点灯および光量は制御装置160により制御される。このビームはコリメータ102によって所定のビーム直径を持つレーザービームにコリメートされる。このレーザービームは回転多面鏡103の1小面に入射し、その回転に伴って偏向される。結像レンズ104を通過したビームは像担持体105上でスポット106に結像する。この様な特性を持つ半導体レーザーとしては、いわゆる平面発光型の半導体レーザーを用いるのが好ましい。さらにより望ましいのは発光部121aの周囲にII-VI族化合物半導体を埋め込んだ面発光型の半導体レーザーを用いることが好ましい。図14はこの面発光型半導体レーザーの発光部121aの断面図であって、1つの光共振器が1つの発光部を構成している場合を示している。図14においてGaAs基板122の上にまず組成の違う2種のAlGaAs層を数10層積層したクラッド層124、活性層125、クラッド層126、コンタクト層127が積層され、最後にSiO2誘導体多層膜反射層128が形成されている。またGaAs基板122の裏面全体及び、表面の誘電体多層膜反射層のまわりに窓状の電極129、130が形成されており全体が光共振器を構成している。活性層125で発生した光は基板122面と垂直方向に、上下の反射層127、123の間を往復し発振するので、そのレーザービーム131の光軸は基板面に対してほぼ垂直となる。 光共振器の回りには埋め込み層132としてII-VI族の化合物半導体が埋め込まれている。II-VI族の化合物半導体としては、II族元素としてZn、Cd、Hg、VI族元素としてO、S、Se、Teを2〜4元素組み合わせ、また、その化合物の格子定数を前記のクラッド層124、活性層125、クラッド層126からなる半導体層の格子定数に合わせるのが望ましい。このII-VI族の化合物半導体は電気抵抗が非常に大きいため、電流を光共振器のなかに効率的に閉じこめると同時に、光共振器を構成しているAlGaAs半導体層とは屈折率に差があるため、光共振器の内部で素子の基板面に垂直もしくはそれに近い角度で進む光はこの埋め込み層132との界面で全反射し効率的に閉じこめられる。このため、このような半導体レーザーを用いれば、従来の半導体レーザーに比べて大変小さい電流でレーザー発振が始まる。すなわち、しきい値電流が低く、素子基板での損失熱量が少ない。 また、面発光半導体レーザーでは、レーザービームの射出部の断面積(ニア・フィールド・パターン)が、従来の端面発光型の半導体レーザーに比べて比較的大きくとれるため、レーザービームの拡がり角は小さくなる。この拡がり角の大きさは射出窓の面積で決まるが、その面積はエッチング等で正確に制御できるため、拡がり角も一定にすることができる。さらに、レーザービームの拡がり角の縦横すなわち楕円断面ビームの長径と短径の比もこの射出窓の形状で随意に設定できる。例えば、完全な円形窓にすれば、等方的な拡がり角を持つ円形断面のレーザービームが得られる。従って、光軸方向の断面によるビームの非点隔差も少ない。 ところで、通常のレーザービームプリンターでは、像担持体上でのレーザービームの結像スポットの形状は走査方向に短軸が一致するような楕円状とする事が多い。これは、走査方向に点灯時間だけスポットが移動し像が長く伸びるので、これを補正するためである。そのためには結像光学系に入射するレーザービームの断面形状は、逆に走査方向に長軸をもつ楕円であることが望ましい。本実施例の場合、面発光の半導体レーザー121では射出ビームの楕円比を自由に制御できるので、特別な光学系を用いなくとも、走査面に長軸を有し、適切な長軸と短軸の比を持つような断面をもつレーザービームを結像光学系に入射させることができる。 面発光半導体レーザー121では光共振器の素子基板122面内での断面積が大きくなると、0次モードだけではなく、高次のモードの発振が始まり、結像したスポットの光量分布もいくつものピークを持ち、像担持体105上に静電潜像を作るのには甚だ好ましくない。そこで、複数の小さな光共振器を近接して並べ、位相同期して発振させることにより、0次モードで発振する、面積の大きな発光部121aを得ることが出来る。 以下にこの位相同期型の面発光半導体レーザー121の1つの発光部121aの一部断面図を図15に示す。ここでは複数の光共振器が非常に狭い間隔で隣接しており、埋め込み層132の下部は活性層125に達していない。このため埋め込み層132下方のクラッド層126を介して隣接する光共振器から漏れる光が互いに影響し、同位相で発振する。このためこの隣接する複数の光共振器があたかも1つの光共振器のように動作する。このように各光共振器の射出光の波面が揃うので、面状のレーザー放射源として作用し、その発光部121aの見かけ上の面積は大きくなるため、レーザービームの拡がり角は非常に小さく、半値全角で2度以下にすることも可能である。 従って位相同期型発光半導体レーザーでは、レーザービームの拡がり角が従来の半導体レーザーに比べて小さくなるが、これを従来の実施例と比較して説明する。例えばレーザービームの拡がり角を半値全角で2度とし、従来の実施例と同じく直径2mmのビーム径で結像光学系に入射させるとするとコリメータレンズ102の焦点距離fcは約35mmになる。このようにコリメータレンズ102の焦点距離fcが長くすることができるので、半導体レーザー121に対するコリメータレンズ102の距離の調整余裕が増す。 さらにレーザービームの拡がり角を極端に小さくした場合、半導体レーザーから回転多面鏡103に至りさらに結像レンズ104にいたる距離の間に、レーザービームの大きさはあまり広がらず、結像レンズ104の入射面においても、所要の結像スポット径を得るのに十分な小ささにできる。すなわち通常のレーザー走査光学系のような所要のコリメート径に、レーザービームをコリメート(平行化)するコリメータレンズが不要となる。但し、回転多面鏡103の偏向角に応じて光路長が変化し、結像レンズ104に入射するレーザービームの大きさも変化して行くので、それを補正する光学系が必要になる。しかし、そのような光学的機能は結像レンズにもたせることは容易であるので、全体の光学系の構成要素は少なくなる。 面発光形の半導体レーザーにおいても一般的に、射出ビームは直線偏光になる。その方向は共振器の素子基板面内の平面形状によって決まり、おおむねは平面形状の長手方向に偏光面が一致する。例えば楕円状の共振器形状にすればその長軸方向が偏光面になる。前述のように位相同期型の半導体レーザーの発光部は、複数例えば4つの位相同期して発振する光共振器から構成されている。このとき射出ビームの断面形状はその合成された形状となるため、個々の光共振器の並べ方によって合成射出ビームの断面形状を自由に設定できる。この場合も各レーザービームの偏光面の向きは個々の共振器の平面形状で決まるので、例えば合成された楕円のレーザービームを得る場合でもその長軸と偏光面の方向を独立に設定できる。 図16(a)はこの様子を模式的に示したもので半導体レーザーの発光部142をビーム射出側からみた平面図である。4つの位相同期して発振している楕円状断面の光共振器141が1つの発光部142を構成しており、個々の共振器141から射出されるレーザービームの偏光面143は図では45度傾いているが、合成して得られる楕円状のレーザービームは長軸は上下方向になる。また図16(b)に示すように、個々の光共振器141の偏光面143の方向を互いに異なる角度で配置すると、その合成された射出ビームは近似的に円偏光になる。 先にも述べたように通常のレーザービームプリンターでは、像担持体上でのレーザービームの結像スポットの形状は走査方向に短軸が一致するような楕円状とする事が多い。そこで前述の様にレーザービームの偏光面の向きを合成楕円ビーム断面の長軸方向と45度傾けた場合、合成射出ビームの長軸を走査方向に一致させるように半導体レーザーを配置すれば、その偏光面はビーム走査面とは45度傾く。その結果、回転多面鏡103の回転軸に対しても偏光面は45度傾いており、図19に示したような回転多面鏡103への入射角による反射率の差を受けにくい。このことは前記の円偏光である楕円断面のレーザービームでも同様である。なお、光学系の構成によっては、半導体レーザーを射出するレーザービームの短軸を走査方向に一致させる場合もあるが、全く同様の効果を発揮する。 以上に説明した実施例は、本発明の一実施例に過ぎず、例えば偏向器として回転多面鏡ではなく、ガルバノミラーやホログラムディスクを用いても同様の効果を有する。また、コリメータレンズ、倒れ補正レンズ、結像レンズの有無、構成や、相対位置関係が変わっても本発明の効果は同じく発揮される。 また、本発明の画像形成装置の応用範囲は、プリンタ、複写機等の印刷装置のみならず、ファクシミリ、ディスプレイにても全く同様な効果を有することは言うまでもない。 2-3 効果 以上に述べたように本発明の画像形成装置においては、半導体レーザーに面発光半導体レーザーを用いることにより、 ▲1▼ レーザービームの拡がり角が小さくなり、コリメータレンズと半導体レーザーの距離を大きく取れるため、コリメータレンズの光軸方向の調整余裕が増し、生産性が上がると同時に、経年劣化や使用時の温度変動の影響を受けずに一定のスポット径で、露光が可能となり、画像品質が向上する。 ▲2▼ 面発光半導体レーザーでは、その特性上、非点隔差が少なく、ビーム断面の楕円形状(長軸と短軸の比)を自由に設定できるため、通常これらの補正に必要な光学系を用いずとも正確なビーム整形が可能となる。 ▲3▼ さらに面発光半導体レーザーにII-VI族の化合物半導体を埋め込み層として用いることにより、低しきい値電流でのレーザ発振が可能となり、素子の消費電流の低減が可能となり、素子の発熱によるレーザーの特性への影響が軽減できる。 ▲4▼ 次に面発光半導体レーザーとして複数の光共振器が位相同期して発光する位相同期型の面発光半導体レーザーを用いることにより、一層射出ビームの拡がり角を小さくでき、場合によってはコリメータレンズを省略することが可能となり、光学系の構成を一層簡素化できる。 ▲5▼ また、偏光面を自由に設定できる複数の光共振器で1つの発光部を構成するため、楕円断面のレーザービームを用いる場合に、レーザービームの偏光面の方向をビーム断面の長軸方向とは独立にかつ任意に制御でき、回転多面鏡への入射角の違いから生ずる反射率の差による、レーザービームの走査方向の位置による光量変動を最小限にとどめることが容易に実現できる。 §3 画像形成装置の第3の実施例 3-1 背景技術との対比 本実施例をより良く理解するため、はじめに背景技術について述べる。 従来の画像形成装置の光路断面図を図27に示す。図27は画像形成装置の像担持体の走査面と垂直で光軸を含む面、すなわち副走査面内における光路断面図である。また、回転多面鏡の反射面208に対して光軸を折り返して描いてある。図27において、半導体レーザー201から放射されたレーザービームは拡がり角θで放射される。このビームは焦点距離fcのコリメータレンズ202によってほぼ平行なビームに整形され、倒れ補正レンズ207によって各ビームは回転多面鏡の反射面208の上に一旦集束する。回転多面鏡208で偏向されたビームは、2つめの倒れ補正レンズ207′を出た後再び平行なビームとなり、焦点距離fiの走査レンズ204によって、像担持体211上にスポット206を結ぶ。走査面と平行な面内では、倒れ補正レンズ207,207′は光学的パワーを持たないため、その面内ではビームは平行なままである。すなわち、回転多面鏡の反射面208上にはビームは線像として結像する。 次にこの倒れ補正レンズ207,207′の働きを説明する。回転多面鏡の各反射面208の相互の回転軸に対する傾きはどのように精密に加工しても、角度にして数十秒の誤差ををもち、従ってこの面に反射されたビームの結像位置は、「光学てこ」の原理で像担持体の表面では副走査方向にずれを生じ、走査線ピッチに対して、無視できない大きさとなる。そこで特開昭48-49315に示されるように、各反射面と像担持体211表面(結像面)を光学的な共役位置とするような、倒れ補正レンズ207′が設けられる。この倒れ補正レンズ207′は一般に、副走査面内でのみ光学的パワーを有するシリンドリカルレンズやトーリックレンズで構成される。いま反射面が傾いた場合でも、そのビームは結像面では必ず同一の位置に結像する。 図28は従来用いられてきたいわゆる端面発光型の半導体レーザーの概念図である。図28に示すように、光軸を含み接合面に平行な面と、同じく光軸を含み接合面に垂直な面では、ビームの拡がり角が大きく異なっている。接合面に平行な面での拡がり角θpは通常のレーザーダイオードの場合、半値全角で約10度になる。ところが接合面に垂直な面では拡がり角θtは回折の影響を受け、半値全角で約30度と大きくなる。 しかし、このように接合面とその直交方向で放射されるレーザービームの拡がり角が異なる場合、これをそのままコリメータレンズ202で平行化(すなわちコリメート)すると、平行になったレーザービームの断面も大きく潰れた楕円状になってしまう。そしてこの長径と短径の比が著しく違う平行ビームを走査レンズ204で像担持体211上に結像させると、その結像スポットは平行ビームとは逆の長径と短径の比を持つ楕円状になる。 一方、特開昭52-119331に示されるように、像面すなわち像担持体上では、結像スポットは、走査方向にやや短い短軸を有するような楕円とすることが望ましい。これは、レーザーが一定時間のパルスで点灯するので、その間の移動距離を補正するため、副走査方向に比べ、走査方向のスポット径を小さくする必要があるからである。 このため、前記のように拡がり角の比が著しく異なるビームを所望の長径と短径の比を持つスポットに結像させるのには、走査方向とその直交方向で光学的特性の違う、すなわちアナモフィックな光学系を半導体レーザー201から像担持体211までの経路中のどこかに持たねばならなかった。 そこで、前記の倒れ補正光学系にこの特性を持たせてしまう方法が、最も広く用いられている。図27において倒れ補正レンズ207,207′は副走査方向にアフォーカルであるので、反射面からの2つのレンズへの距離が異なる構成にすれば、副走査方向にだけ作用するビームエキスパンダーとなる。 しかし、このような倒れ補正光学系は、一般に長尺のシリンドリカルレンズやトーリックレンズなどで構成され、製作が困難かあるいは製作費の高い光学部品となる。また、回転多面鏡より手前にある倒れ補正レンズ207の光軸調整は精度を要し、この種の画像形成装置の生産性と信頼性の向上を阻む要因の1つであった。 すでに述べたように、この倒れ補正レンズが必要となるような、副走査面内のレーザービームの角度誤差を生ずる主な原因は、回転多面鏡の各反射面の相互間の角度加工精度に起因し、回転多面鏡の回転軸の動的な振れはあまり大きな問題ではない。そこで、回転多面鏡ではなく、ただ1つの鏡面を回転させれば、この問題の大きな要因が取り除かれ、通常の画像形成装置に対しては、倒れ補正レンズは不要となる。 また、このような回転鏡では反射面が1つしかないため、その加工が容易で、回転部分の慣性モーメントが小さいため、回転時の振動に対しても有利である。 このような、回転単面鏡のアイデアは古くから存在するが、1回転当り1走査しかできないため、多面鏡に比べ著しく走査速度が低下し、いわゆるレーザービームプリンターに使用するには不十分なものであった。 いま、走査線のピッチを300dpi(1インチ[=25.4mm]あたり300ドットすなわち、走査線の数が300)で、用紙の大きさがA4であって、これを長手方向に給紙し、1分当り10枚の印字を行なうのに相当する画像形成を行なう場合、6面の回転多面鏡を用いればその回転数は約7000rpm(1分当りの回転数)となる。一般に、ボールベアリングを用いた回転多面鏡の回転数の上限は現在の技術では、約12000〜14000rpmであると言われ、仮に12000rpmで回転する1枚の反射鏡を用いたとしても、1分当りの印字枚数は3枚弱になってしまう。 また、倒れ補正レンズ207,207′を取り除いてしまうと、既に述べたように、半導体レーザーから放射される拡がり角の楕円比の大きいレーザービームを像担持体上で所要の楕円比をもつスポットに結像させるアナモフィックなビームエクスパンダーとしての機能も失われてしまう。 3-2 本発明の構成 図21は本発明による画像形成装置を示す図である。転写材251上に印刷結果を得るプロセスは、いわゆる電子写真プリンタの場合長波長側に増感した有機感光体(OPC)が多く用いられる。この像担持体205はまず、帯電器252で一定の表面電位に帯電されたのち、レーザービーム走査装置253によって光書込すなわち露光が行なわれる。このレーザービーム走査装置253から画像情報に従って光強度が各々独立に変調された複数のレーザービーム254が像担持体205を軸方向に走査し、露光部のみに表面電位を打ち消す電荷を発生させ、その部分の表面電位の絶対値は小さくなる。結果として、像担持体205上には画像に応じた表面電位の分布、すなわち静電潜像が形成される。静電潜像は現像器255によって表面電位に応じて選択的に現像剤を付着させることにより現像される。この現像剤は転写器256によって転写材251(通常は紙)に転写される。転写材251は、定着器257によって熱圧力定着され排出される。 図20は本発明によるレーザービーム走査光学装置の概観図である。図21に示したレーザービーム走査装置253ではレーザービーム254は折り曲げられて下方に射出する場合を想定していたが、図20では説明のため単純化して描いてある。本発明のように複数のレーザービームで走査を行なう方式は「マルチビーム」レーザー走査方式とも呼ばれる。ここで半導体レーザーアレイ221の複数の発光部221aから射出した複数のレーザービームは、コリメータレンズ202によって所定のビーム直径を持つレーザービームにコリメート(平行化)される。このレーザービームはただ1つの反射面を持つ回転鏡218に入射し、その回転に伴って、各々偏向される。走査レンズ204を通過したレーザービームは像担持体205上でスポット206に結像する。発光部221aは個別に、制御装置260によりその点灯および光量が制御される。 走査レンズ204の機能は大きく分けて2つある。1つはいわゆる「fθ機能」であって、回転鏡218の等角速度の走査を像担持体205上での等線速の走査に変換する働きを有する。もう1つは、像面湾曲の補正機能であり、走査角度によって結像点が光軸方向に前後に移動し、像面が平面になるよう補正する働きを持つ。 ところで、コリメータレンズ202および走査レンズ204は、いずれも光軸を含むすべての面内において等方的な光学的特性を有している。すなわち、光軸を含むすべての面内において、コリメータレンズ202および走査レンズ204は、各々の焦点距離および曲率が同一となっており、アナモファックでないレンズとなっている。 レーザービームの本数は本実施例では4本であるので、回転鏡218の回転数が同じであれば、レーザービームが1本の場合に比べて、4倍の走査速度を得ることができる。先の従来例で示したような現在得られる最高の回転数の回転鏡を使用したとすると、A4用紙換算で1分当り10枚強の印字速度が得られ、現状のパーソナルユース向けのレーザービームプリンター用には十分な走査速度を有する。さらにレーザービームの本数を増やして行けば、一般的な業務用途にも対応が可能である。 半導体レーザーアレイ221の各発光部221aは各々の走査線に書き込むべき画像データに基づいて独立に制御され、変調されたレーザービームを放射する。このため図では示されていないが、画像データの記憶部から半導体レーザーアレイ221にはパラレルにデータが転送される。 後で述べるように、走査線間隔を所定の値とするため、各ビームの結像スポットの走査方向の位置が異なる。このため、各レーザービームの変調のタイミングはその位置のずれ量に応じて遅延させる機能が備えられている。 図22は、本発明のマルチビームレーザー走査方式に於て、いま簡単のために、レーザービームの数が2本でコリメータレンズ、走査レンズがいずれも凸の単レンズであるレーザービーム走査光学系を考える。半導体レーザーアレイ221を間隔dで射出した2本のレーザービームは、焦点距離fcのコリメータレンズ202で各々は平行なレーザービームになる。ここで半導体レーザーアレイ221はコリメータレンズ202の物体側焦点におかれているので、2本のレーザービームは像側焦点Fで交差する。例えば像面211でスポット直径d0=100μm(ここでスポット直径、ビーム直径は、ビームの断面の強度分布がガウス分布として、ピーク強度に対して1/e2のパワーとなる直径と定義する)のスポット206に結像させる場合、fiを200mmとすれば走査レンズへの入射ビーム直径(すなわちコリメート直径)Wcは下に示す式(5)で表わされる。 但しλはレーザーの波長で780nmである。一方、コリメータレンズ202の焦点距離fcは、半導体レーザーアレイ221からの射出レーザービームの拡がり角θで決まり、下に示す式(6)で表わされる。 ここでθはビームの直径の定義と同時に1/e2の全角で定義する。 次に、コリメータレンズ202から偏向装置の反射面208までは、走査装置の各要素の配置上、一定の距離hが必要であるとし、さらにn本のレーザービームが一直線上に並んで配列されているとすると、反射面208上ではn本のレーザービームの反射される位置のさしわたし距離qは、レーザービームの間隔をdとすると、 で表わされる。 半導体レーザーアレイに現在よく用いられる、素子の基板端面からレーザービームが放射される端面発光型半導体レーザーを用いる場合について説明する。従来例の説明の中の図28で示すように、射出されるレーザービームは、半導体レーザーアレイ201の基板の垂直方向に回析の影響を受け、半値全角で約30度前後の角度をもって広がって行く。このときコリメータレンズ202の焦点距離fcは約3mmになる。そこで、例えばレーザービームの本数nを4、コリメータレンズ202から反射面208まで距離hを100とすると、q=9.7mmとなる。このため反射面の大きさは少なくともこの距離q分だけ多く必要となる。このような場合でも、本発明では反射面は1つしかないため、回転多面鏡の場合に比べ、反射面の大きさを大きくすることはさほど問題ではない。 しかし、半導体レーザーアレイ221には、いわゆる面発光半導体レーザーを用いるのがより好ましい。このような面発光半導体レーザーアレイ221では、レーザービームの発光部221aの断面積が、従来の端面発光型の半導体レーザーに比べて大きくとれるため、レーザービームの拡がり角は小さくなる。この拡がり角の大きさは射出窓の面積で決まるが、その面積はエッチング等で正確に制御できるため、拡がり角も一定にすることができる。例えば、拡がり角が半値全角で8度程度のレーザービームを得ることも十分可能である。さらに、この様な面発光半導体レーザーでは電流及び光を効率的にレーザーの光共振器の中に閉じこめることが出来るので、1つの発光部当りの発熱を減少させると同時に、複数の発光部が隣あった場合の相互の光学的、電気的及び熱的干渉を少なくすることが出来る。よって発光部の間隔も従来の半導体レーザーに比べ、小さくすることが出来る。 先の式(6)を用いて、射出ビームの拡がり角が8度である面発光型の半導体レーザーを用いた場合のコリメータレンズの焦点距離fcを求めると約8mmとなる。また、半導体レーザーアレイ上での発光部の間隔dは50μm程度にはできるので、先の例と同様に、ビーム数n=4で、コリメータレンズ202から反射面208までの距離hを100mmとすると、反射面上での4本のビームのさしわたし距離qは、先の式(7)によれば約1.73mmとなり、ビームのコリメート直径Wcに比べてさほど問題となる値ではない。 特に、より高解像度の画像を形成するために、例えば像担持体上でのスポット直径を50μmとする場合、先の式に従えばコリメート直径Wcは倍の約4mm程度になる。従ってコリメータレンズの焦点距離fcも倍になり、反射面上でのビームの反射位置の間隔qもさらに半分になる。 このように、各ビームを追跡していくと、光軸上のどの位置においても、各ビームのなす距離は、コリメート直径に比べれば十分小さいため、複数のレーザービームを扱う光学系ではあっても、代表的な1つのビームについて光学設計をおこなえばよく、レーザー走査光学系の設計が非常に容易になる。 また、コリメータレンズの焦点距離が従来の端面発光型半導体レーザーを用いた場合に比べて大きいため、半導体レーザーとコリメータレンズの光軸方向の距離の誤差がより大きく許容される。 このようにマルチビーム走査方式に適した、面発光型の半導体レーザーアレイの中でも、さらにより望ましいのは発光部の周囲にII-VI族化合物半導体を埋め込んだ面発光型の半導体レーザーアレイである。 図23はこの面発光型半導体レーザーアレイ221の素子基板上に2次元的に配置された発光部221aのうちの1つの断面図である。図23においてGaAs基板222の上にまず組成の違う2種のAlGaAs層を数10層積層した半導体多層反射層223を形成し、その上にそれぞれAlGaAsからなるクラッド層224、活性層225、クラッド層226、コンタクト層227を積層し、最後にSiO2誘電体多層膜反射層228が形成されている。またGaAs基板222の裏面全体及び、表面の誘電体多層膜反射層のまわりに窓状の電極 229,230が形成されており、全体が光共振器を構成している。活性層で発生した光は基板面と垂直方向に、上下の反射層227,223の間を往復し発振するので、そのレーザービーム231の光軸は基板面に対してほぼ垂直となる。 光共振器の回りには埋め込み層232としてII-VI族の化合物半導体が埋め込まれている。II-VI族の元素としてO、S、Se、Teを2〜4元素組み合わせ、また、その化合物の格子定数を前記のクラッド層224、活性層225、クラッド層226からなる半導体層の格子定数に合わせるのが望ましい。このII-VI族の化合物半導体は電気抵抗が非常に大きいため、電流を光共振器のなかに効率的に閉じこめると同時に、光共振器を構成しているAlGaAs半導体層とは屈折率に差があるため、光共振器の内部で素子の基板面に垂直もしくはそれに近い角度で進む光はこの埋め込み層232との界面で全反射し効率的に閉じこめられる。このため、このような半導体レーザーを用いれば、従来の半導体レーザーに比べて大変小さい電流でレーザー発振が始まる。すなわち、しきい値電流が低く、素子基板での損失熱量が少ない。図23においてGaAs基板222の上にダイオードが形成されており、活性層225で発生した光は、反射層223と228の間を往復し発振し、2つの反射層の中で僅かに反射率の小さい反射層228から、レーザービーム231として素子の基板面に対して垂直に射出する。 従来例の説明のところでも触れたように、通常のレーザービームプリンターでは、像担持体上でのレーザービームの結像スポットの形状は走査方向に短軸が一致するような楕円状とするため、走査レンズに入射するレーザービームの断面形状は、逆に走査方向に長軸をもつ楕円であることが望ましい。 しかし、本発明では倒れ補正光学系が存在しないので、先にも述べたように、端面発光型の半導体レーザーアレイを用いる場合は、適切な楕円形状のレーザービームを走査レンズに入射させるため、アナモフィックな特性をもったコリメータレンズを用いて、レーザービームの断面の楕円の長径と短径の比を整形する必要がある。そのようなコリメータレンズを製作することはさほど困難ではなく、本発明の利点を損ねるものではない。 ところが、面発光型の半導体レーザーアレイでは、射出レーザービームの断面の楕円比を自由に制御できるので、特別な光学系を用いなくとも、走査面に長軸を有し、適切な長軸と短軸の比を持つような断面をもつレーザービームを走査レンズに入射させることができる。すなわち、結像スポットの理想的な楕円比を得るためにも、面発光型の半導体レーザーアレイは最適である。 また、面発光形の半導体レーザーにおいては、互いに干渉しない距離さえおけば、どこにでも発光部を置くことが可能なため、素子上に2次元状に発光部を配列できる。いま、4本のレーザービームで走査を行なう露光系において、走査線と結像スポットの位置関係を考える。ここでは1個の走査で互いに隣合う4本の走査線を描くとする。図24(a)で示すよう結像スポット206を配列すると、図24(b)のように一直線に並べる場合に比べてレーザービーム相互の角度もしくは距離を小さくでき、偏向器の反射面の大きさや、他の光学系の大きさをそれにあわせて小さくできる。 上記の例はレーザービームが4本の場合を示したが、レーザービームの数が更に増えた場合、像担持体上でのスポットの位置が最も近接するよう、半導体レーザーアレイ上の発光部の配置を自由に選べるので、効果はより大きくなる。一例としてレーザービーム数が8本のときの走査線に対する結像スポットの配置例を図24(c)に示す。すなわち、回転鏡の反射面の面数が1つであっても、更にビーム数を増やして行くことによって、実用上十分な印字速度を得ることができる。 なお、この実施例においては、走査光学系は走査方向、副走査方向と同一の光学的特性であるので、像担持体状での結像スポットの配置と、半導体レーザーアレイ上での発光部の配置は相似形となる。 次に図25の平面図を用いて本発明に用いられる偏向装置について説明する。反射面215はただ1つ設けられており、モーター216の回転部に取付けられており、一定速度で回転する。従来の多面鏡では先にも述べたように、各反射面の相互の傾き精度を維持するために、その加工方法や、構造に制約があった。一般には、回転多面鏡はアルミ等の金属の一体削りだしの鏡体の上にコーティングを施した物が多かった。しかし、反射面が1つの場合は、製作方法は上記のような削り出しに限らず、平面度の出し易いガラスの表面に金属反射膜を蒸着したもの等を回転部分に貼りつけるだけで製作でき、非常に安価にできる。 反射面215を含む回転部分は、従来の多面鏡に比べて質量が小さく、回転時の振動などに関して非常に有利である。なお、この回転部分は回転軸に関してダイナミックバランスをとるように設計、あるいは必要によって追加工が施されている。 また、反射面215の中央が回転軸Aに一致するように設計されている。そして、反射面215上の回転軸A近傍にレーザービーム217を入射させると、反射面 215が回転しても、レーザービーム217は反射面215上のほぼ一点にとどまるので、反射面の大きさは従来の回転多面鏡に比べて非常に小さくて済む。 さらに、反射面が1面しかない場合、ビームを偏向できる角度は多面鏡の場合に比べて飛躍的に広がる。例えば、図26に示すように6面鏡の場合、レーザービーム217のコリメート直径Wcを0であるとしたとき、反射面の大きさにかかわらず走査角αの限界は120度である。一方、走査光学系の設計においては有効走査角は大きい場合で90度程度あり、これに反射面への入射レーザービームのコリメート直径Wcや、ビームの走査開始位置の検出のための検出器を設置する位置の余裕を取るためには、前記の6面鏡では偏向装置の走査角が不足し、走査レンズの有効走査角が狭められてしまう。 これに対して反射面が1面の場合は上記のように反射面上に回転軸を位置させるか、反射面の大きさが無限大の場合、理論的には360度になる。従って、走査角の大きな走査レンズを使用することができ、走査光学系全体を小さく設計できる。 また、反射面が1面の場合、実際の走査に使用される期間は1回転の時間の10%前後になり、他の時間は走査には寄与しない。その期間にレーザーが放射されると、反射面の背面などにレーザービームが照射され、意図しない反射光が像担持体上に結像する恐れがあるので、不要な期間はレーザーを作動させない回路が設けられている。 あるいは、このような走査に使用されない時間を用いて、逆にレーザーを点灯させ、その光量を検出し、所定の光量になるよう、レーザーの駆動電流を設定することができる。この電流制御のためのレーザーの点灯時に、さきに述べたように、不要な反射によりレーザービームが像担持体に到達するのを防ぐため、偏向装置の周辺部材の角度を適切に設計したり、反射防止の表面処理を行なうことが望ましい。 以上に説明した実施例は、本発明の一実施例に過ぎず、コリメータレンズ、走査レンズの構成や、相対位置関係が変わっても本発明の効果は同じく発揮される。また、回転鏡の構造、製造方法もプラスチックの射出成形など、他の方法でも同様の効果を発揮することは明らかである。さらに、回転鏡は一定速度で一方向に回転する形式のものだけではなく、回転振動を行なういわゆるガルバノミラーであっても本発明の効果は同様に発揮される。 あるいは、先の実施例で示した面発光型レーザーの素子の構造は、実現可能な1つの例示であって、射出ビームの拡がり角や発光部の間隔などの特性が同等な構造であれば、他の構造であっても全く同等の効果を発揮する。 さらに、本発明の画像形成装置の応用範囲は、プリンタ、複写機等の印刷装置のみならず、ファクシミリ、ディスプレイにおいても全く同様な効果を有することは言うまでもない。 3-3 効果 以上に述べたように本発明の画像形成装置においては、ただ1つの平面の反射面を有する回転鏡を偏向器として使用することにより、偏向器の回転部分が小型、軽量となり、製作が容易であるばかりでなく、動的な振動特性も改善される。また、倒れ補正光学系を省略し、また特にアナモフィックな光学系を用いないことで、非常に簡素な構成で、組立調整の容易な走査光学系が実現できる。さらに、マルチビーム方式とすることにより、従来と同様の走査速度を維持できる。 本発明によれば、特に面発光型の半導体レーザーアレイを用いた場合、コリメータレンズと走査レンズ以外に新たな付加的な光学系を追加することなく、反射面の大きさを小さくできると同時に、像面での結像スポットの楕円比を自由に設定できる。 §4 画像形成装置の第4の実施例 4-1 背景技術との対比 本実施例をより良く理解するため、はじめに背景技術について述べる。 従来の画像形成装置の光路断面図を図33に示す。 図33において、半導体レーザー301から放射されたレーザービームは拡がり角θで放射される。このビームは焦点距離fcのコリメータレンズ302によってほぼ平行なビームに整形され、倒れ補正レンズ307によって各ビームは回転多面鏡の反射面308の上に一旦集束する。回転多面鏡で偏向されたビームは2つめの倒れ補正レンズ307′を出たビームは再び平行なビームとなり、焦点距離fiの走査レンズ304によって、像担持体上にスポットを結ぶ。走査面と平行な面内では、倒れ補正レンズ307,307′は光学的パワーを持たないため、その面内ではビームは平行なままである。すなわち、前記回転多面鏡の反射面8上にはビームは線像として結像する。 次にこの倒れ補正レンズ307,307′の働きを説明する。回転多面鏡の各反射面308の相互の回転軸に対する傾きはどのように精密に加工しても、角度にして数十秒の誤差をもち、従ってこの面に反射されたビームの結像位置は、「光学てこ」の原理で拡大され、像担持体の表面では、走査線ピッチに対して無視できない大きさとなる。そこで特開昭48-49315に示されるように、各反射面と像担持体表面(結像面)を光学的な共役位置とするような、倒れ補正レンズ307′が設けられる。この倒れ補正レンズ307′は一般に、副走査面内でのみ光学的パワーを有するシリンドリカルレンズやトーリックレンズで構成される。例えば反射面が図33の308′に示したように傾いた場合でも、そのビームは結像面では必ず同一の位置に結像する。 ところが近年、コンピューターの利用技術の向上とともに、画像形成装置の出力速度の向上がより一層望まれ、その改良が進んでいる。しかし、例えば回転多面鏡を用いた偏向装置では、その鏡面の小面の1つにつき1本のレーザービームを偏向させ1本の走査線を描くので、単位時間当りの走査数を増加させるには、回転多面鏡の小面の数を一定である場合には、その回転数が大きくなり、逆に回転数が一定の場合には、回転多面鏡の面数が増加する。回転多面鏡の回転数を増加させるには、気体または液体の動圧または静圧を利用した軸受が必須となるが、これらの軸受は効果で取扱が難しく一般的なレーザービームプリンタに用いることは困難であった。逆に多面鏡の面数を増加させると偏向角が小さくなるので、偏向器以降の光路長が長くなると同時に結像光学系に入射するレーザービームのコリメート直径もそれに比例して大きくなり、レンズや回転多面鏡の大きさも大きくなる。特に、高い解像度も同時に要求される場合は走査線の数も増えるため、より大きい回転数と、長い光路長が必要となる。このことは、偏向装置に回転多面鏡以外のものを用いる場合でも同様で、走査周波数の増大と、偏向装置以降の光路長の増加をもたらす。そのため一度の走査で、複数のレーザービームを用いて複数の走査線を書き込む(いわゆるマルチビーム)露光方法が開発された。 複数のレーザービームを得るためには、複数のガスレーザー(例えば、He-Ne)発振器を光源として用いたり、1つの発振器のレーザービームを音響光学変調器(AOM)などで時分割的に複数に振り分けたりする方法も開発されたが、より簡潔で装置が小型になる方法として、例えば特開昭54-7328に開示されているように、1つの素子上に複数の発光部を集積した半導体レーザーアレイが光源として用いる方法(マルチビームレーザー走査方法)が提案されている。 しかし、このように複数の平行な光軸を持つレーザービームがコリメータレンズに入射すると、その光軸は相互に多きな角度をもってひろがっていってしまい、偏向装置の反射面や光学系を構成するレンズの大きさが、1本のレーザービームを用いて走査する場合に比べて、非常に大きなものとなってしまうという問題点を有していた。 図34は、マルチビームレーザー走査方法において、半導体レーザーアレイから像担持体までの光路断面図を示す。いま簡単のために、レーザービームの数が2本でコリメータレンズ、走査レンズがいずれも凸の単レンズであるレーザービーム走査光学系を考える。半導体レーザーアレイ321を間隔δで射出した2本のレーザービームは、焦点距離fcのコリメータレンズ302で各々は平行なレーザービームになる。ここで半導体レーザーアレイ321はコリメータレンズ2の物体側焦点におかれているので、2本のレーザービームは像側焦点Fで交差する。例えば像面311でスポット直径d=100μm(ここでスポット直径、ビーム直径は、ビームの断面の強度分布がガウス分布として、ピーク強度に対して1/e2のパワーとなる直径と定義する)のスポット306に結像させる場合、fiを200mmとすれば走査レンズへの入射ビーム直径(すなわちコリメート直径)Wcは下に示す式(8)で表わされる。 但しλはレーザーの波長で780nmである。よってこの例においてはコリメート直径Wcは約2mmとなる。 従来用いられてきたいわゆる端面発光型のレーザーダイオードは図35の概念図に示すように、光軸を含み接合面に平行な面と、同じく光軸を含み接合面に垂直な面では、ビームの拡がり角が大きく異なっていた。接合面に平行な面での拡がり角θpは通常の半導体レーザーの場合、半値全角で約10度になる。ところが接合面に垂直な面では拡がり面θtは回析の影響を受け、半値全角で約30度と大きくなる。さらにこの拡がり角θt、θpの大きさや、その比(すなわち楕円の長径、短径の比)を自由に設定することも難しい。この放射ビームの大部分を有効に利用するために半導体レーザーアレイとコリメータレンズの結合効率を高く取った場合、前述のような2mmのコリメート直径を得るためには、コリメータレンズ2の焦点距離fcは3mm程度となる。一方、現在の半導体レーザーアレイでは、お互いの干渉を避けるため、その発光部の間隔δは100μm以下にするのは難しい。 コリメータレンズ302の像側焦点Fから偏向器の反射面308までは、走査装置の各要素の配置上、一定の距離hが必要であり、また半導体レーザーアレイ321上において、複数ある発光部のうち相互の距離が最も遠い2つの発光部の間隔をδmaxとすると、偏向器の反射面308上でのこの2つのビームの間隔qは で表わされる。例えば、ビームの数が4本で、半導体レーザーアレイ上で発光部が0.1mmおきに1列に並んでいるとき、δmaxは3×δ=0.3mmとなる。コリメータレンズ302の像側焦点Fから反射面308まで距離hを50mmとすると、q=5mmとなる。このため反射面の大きさは少なくともこの距離q分にレーザービームコリメート直径を加えた分だけ必要となり、偏向器の回転部分が大きくなり、軸受の負担も大きく、また回転時のアンバランスの影響も受けやすくなる。式(9)で明らかなようにfc/δmaxの値が小さくなるに従って、qの値は大きくなってしまう。 次に、既に述べた倒れ補正レンズ307,307′を走査光学系の中に加えた場合を考察する。倒れ補正レンズはアナモフィックな光学要素であるので、走査面と副走査面では光学的性質が異なる。既に述べたように、倒れ補正レンズでは走査面内では光学的パワーを持たないので、前記の式(9)によって、走査面内で最大距離をもつ2つのビームの反射面上での間隔qは求められる。よって、副走査面内だけを新たに考慮すればよい。図 36は倒れ補正レンズ307を含んだ副走査面内の光路断面図であって、半導体レーザーアレイ321から偏向器の反射面308までを示している。 先に説明した如く、副走査面内でみると、各ビームについては、偏向器の反射面308上で線像となるが、反射面上でその線像が作られる位置は、副走査方向にある距離qをもつ。ビーム偏向器の手前側の倒れ補正レンズ307の焦点距離をft、コリメータレンズ302の像側焦点Fから倒れ補正レンズ307までの距離をt1、倒れ補正レンズ307から偏向器の反射面308までの距離をt2とし、その他の記号は先の図34の場合と同一であるとすると、複数のレーザービームのうち相互の距離の最も遠い2本が倒れ補正レンズ307に入射するときの相互の距離q′、及び反射面308に入射するときのビームの相互の距離qは、それぞれ下に示す式(10)、式(11)で表わされる。 ここで、一般にはコリメートされたレーザービームを走査面上でビームウエストをもたせるためにft=t2となる。 t1<ftのとき、2本のビームは像側では交差しない。よって、q>q′となり、t1が短くなるにしたがってqは大きくなる。例えばt1=20mm、ft=30mm、t2=30mmとして計算すると、q′=2mm、q=3mmとなる。式(11)中にはq′が含まれ、式(10)によれば先と同様にfc/δmaxが大きいとq′も小さくなる。ここでt1+t2=hであるので、走査面内では先の計算例と同じである。すなわち、この例においては、副走査方向の方が、両端のビームのなす距離が少なくなることがわかる。 さらに同様のことが走査レンズ4にこれらの複数のレーザービームが入射するときのビーム相互の距離についてもあてはまる。すなわち、先の倒れ補正レンズへの入射位置を走査レンズの入射位置とみなせば式(10)と同様である。コリメータレンズから走査レンズまでの距離は先の場合より大きいため、走査レンズの大きさをさらに大きくとる必要が生ずる。 一般にレーザービーム走査光学系を構成する各光学要素の光学的パワーは、コリメータレンズが最も大きい。つまり、焦点距離が最も短い。このことは、半導体レーザーアレイから放射された複数のレーザービームが、光学系を経由して像担持体に達するまでの間において、コリメータレンズを通過する際に各ビームのなす角が最も大きく変化することを意味している。 この問題を避けるため、従来多くの光学的な要素の追加により、反射面上で複数のレーザービームが反射される位置を近接させる方法が提案されてきた。例えば特開昭56-69611では、コリメータレンズの後ろにアフォーカルな光学系をおいて、反射面上に各ビームを集めている。しかし、このような光学系を新たに付加することは、やはり、走査光学系の構造が複雑になり、コストや調整の容易さ、信頼性の面で好ましくない。 また、上に述べたように複数のレーザービームが互いに異なる光路をたどる場合、それぞれのレーザービームについて、各収差や結像スポット大きさを所期の値とするための設計を行なう必要があり、設計工数が多くなり、画像形成装置の開発期間が長期に亘ると同時に、複数のレーザービームの全てが走査範囲内の任意の位置に於て、設計仕様を満たすような設計解を得ることが困難になる。このことはより高度な設計が要求される解像度の高い、すなわち結像スポット直径の小さい画像形成装置ではより一層大きな問題となる。 さらに、このような困難を経て設計されたレーザー走査光学系は、通常の1本のレーザービームを用いたレーザービーム走査光学系に比べて、走査器の反射面や各レンズの有効径が大きいだけでなく、その構成も高度な(すなわちレンズの構成枚数が多く、レンズ位置の調整も正確さが要求される)ものとなり、生産設備の共通化が困難になる。 4-2 本発明の構成 図30は本発明の画像形成装置を示した図である。転写材351上に印刷結果を得るプロセスはいわゆる電子写真プロセスによっている。像担持体305としては、半導体レーザーを光源に用いた電子写真プリンタでは、長波長側に増感した有機感光体(OPC)が多く用いられる。この像担持体305はまず、帯電器352で一定の表面電位に帯電されたのち、レーザービーム走査装置353によって光書込すなわち露光が行なわれる。このレーザービーム走査装置353から画像情報に従って光強度が各々独立に変調された複数のレーザービーム354が像担持体305を軸方向に走査し、露光部のみに表面電位を打ち消す電荷を発生させ、その部分の表面電位の絶対値を小さくする。結果として像担持体上には画像に応じた表面電位の分布、すなわち静電潜像が形成される。静電潜像は現像器355によって表面電位に応じて選択的に現像剤を付着させることにより現像される。この現像剤は転写器356によって転写材351(通常は紙)に転写される。転写材351は、定着器357によって熱圧力定着され排出される。 図29は本発明のレーザービーム走査光学系の概観図を示す。図30に示したレーザービーム走査装置353ではレーザービーム354は折り曲げられて下方に射出する場合を想定していたが、ここでは説明のため単純化して描いてある。ここでモノリシックの半導体レーザーアレイ341の複数の発光部341aから射出したレーザービームは、コリメータレンズ302によって所定のビーム直径を持つレーザービームにコリメート(平行化)される。これらのレーザービームは回転多面鏡303に入射し、その回転に伴って、各々偏向される。走査レンズ304を通過したレーザービームは像担持体305上で所定の大きさを持つスポット306に結像する。なお発光部341aは、制御装置360により個別にその点灯および光量が制御される。 この様な特性を持つ半導体レーザーアレイには、いわゆる面発光半導体レーザーを用いるのが好ましい。さらにより望ましいのは発光部の周囲にII-VI族化合物半導体を埋め込んだ面発光型の半導体レーザーアレイである。 図31はこの面発光型半導体レーザーアレイの素子基板上に2次元的に配置された発光部のうちの1つの断面図であって、GaAs基板322の上にまず組成の違う2種のAlGaAs層を数10層積層した半導体多層膜反射層322を形成し、その上にそれぞれAlGaAsからなるクラッド層324、活性層325、クラッド層326、コンタクト層327を積層し、最後にSiO2誘電体多層膜反射層328が形成されている。またGaAs基板322の裏面全体及び、表面の誘電体多層膜反射層のまわりに窓状の電極329,330が形成されており全体が光共振器を構成している。活性層で発生した光は基板面と垂直方向に、上下の反射層327,323の間を往復し発振するので、そのレーザービーム331の光軸は基板面に対してほぼ垂直となる。光共振器の回りには埋め込み層332としてII-VI族の化合物半導体が埋め込まれている。II-VI族の化合物半導体としては、II族元素としてZn、Cd、Hg、VI族元素としてO、S、Se、Teを2〜4元素組み合わせ、また、その化合物の格子定数を前記のクラッド層324、活性層325、クラッド層326からなる半導体層の格子定数に合わせるのが望ましい。このII-VI族の化合物半導体は電気抵抗が非常に大きいため、電流を光共振器のなかに効率的に閉じこめると同時に、光共振器を構成しているAlGaAs半導体層とは屈折率に差があるため、光共振器の内部で素子の基板面に垂直もしくはそれに近い角度で進む光はこの埋め込み層332との界面で全反射し効率的に閉じこめられる。このため、このような半導体レーザーを用いれば、従来の半導体レーザーに比べて大変小さい電流でレーザー発振が始まる。すなわち、しきい値電流が低く、素子基板での損失熱量が少ない。図31においてGaAs基板322の上にダイオードが形成されており、活性層325で発生した光は、反射層323と328の間を往復し発振し、2つの反射層の中で僅かに反射率の小さい反射層328から、レーザービーム31として素子の基板面に対して垂直に射出する。 このような面発光半導体レーザーでは、レーザービームの射出部の断面積が、従来の端面発光型の半導体レーザーに比べて大きくとれるため、レーザービームの拡がり角は小さくなる。この拡がり角の大きさは射出窓の面積で決まるが、その面積はエッチング等で正確に制御できるため、拡がり角も一定にすることができる。例えば、拡がり角が半値全角で8度程度のレーザービームを得ることも十分可能である。さらに、この様な面発光半導体レーザーでは電流及び光を効率的にレーザー共振器の中に閉じこめることが出来るので、1つの発光部当りの発熱を減少させると同時に、複数の発光部が隣あった場合の相互の光学的、電気的及び熱的干渉は従来の端面発光型半導体レーザーアレイに比べて大幅に減少する。よって発光部の間隔も従来の半導体レーザーに比べ、小さくすることが可能であり、50μm程度の値は実現可能である。 先の従来例の説明の中で示したと同様に、ビーム直径2mmにコリメートされたビームを得るためには、上記の面発光型の半導体レーザーを用いた場合のコリメータレンズの焦点距離fcは約8mmとなる。また、半導体レーザーアレイ341上での発光部の間隔δは50μm程度にできるので、ビームを4本直列に配置した場合のδmaxは150μmである。従来の実施例と同じ位置(コリメータレンズからの)に、偏向器の反射面をおいた場合、反射面上でのビームの反射位置の間隔qは1/5以下になる。ここで、fc/δmaxの値は、先の従来例で示したものが、約10であったのに対して、ここでは約53となっている。やはり先に示した従来例と同様に、コリメータレンズから反射面までの距離hを50mmとすると、反射面上での4本のビームのさしわたし距離qは、先の式(9)によれば約0.94mmとなり、ビームのコリメトー直径Wcに比べてさほど問題となる値ではない。 特に、より高解像度の画像を形成するために、例えば像担持体上でのスポット直径dを50μmとする場合、先の式に従えばコリメート直径Wcは倍の約4mm程度になる。従ってコリメータレンズの焦点距離fcも倍になり、反射面上でのビームの反射位置の間隔qもさらに半分になる。 このように、各ビームを追跡していくと、光軸上のどの位置においても、各レーザービームのなす距離は、コリメート直径に比べてもさほど大きな値ではないため、複数のレーザービームを扱う光学系ではあっても、代表的な1つのビームについて光学設計をおこなえばよく、レーザー走査系の設計が非常に容易になる。結像スポットの精度を特に必要としない場合には、従前の1本のレーザービームを用いたレーザービーム走査光学系をそのまま転用することさえ可能である。 次に、面発光形の半導体レーザーにおいては、互いに干渉しない距離さえおけばどこにでも発光部を置くことが可能なため、素子上に2次元状に発光部を配列できる。素子基板上において間隔δで配置された発光部から放射されたレーザービームは走査光学系の光学倍率Mで拡大され、像面すなわち像担持体上で間隔δ′のスポットに結像する。このMの値は概ね、コリメータレンズと走査レンズの焦点距離の比に等しい。 いま、4本のレーザービームで走査を行なう露光系において、走査線と結像スポットの位置関係を考える。ここでは1個の走査で互いに隣合う4本の走査線を描くとする。ここで4つの結像スポット6のうち相互に最も距離の大きいものをδ′maxとする。図32(a)で示すよう結像スポットを配列すると、図32(b)のように一直線に並べる場合に比べてδ′maxを小さくできる。像担持体上での結像スポットの配置は、半導体レーザーアレイ上での発光部の配置に相似であるか、あるいは倒れ補正光学系がある場合などには、副走査方向にさらにある倍率を掛けた写像関係にある。よって、同じ光学系においてδ′maxが小さいということは、δmaxも小さくなることを意味する。従って、図32(b)の配置をとることで、先の式(9),(10)もしくは式(11)においてqが小さくなり、偏向装置の反射面の大きさをそれにあわせて小さくでき、本発明の効果をより高めることができる。 上記の例はレーザービームが4本の場合を示したが、レーザービームの数が更に増えた場合、像担持体上でのスポットの位置が最も近接するよう、半導体レーザーアレイ上の発光部の配置を自由に選べるので、効果はより大きくなる。一例としてレーザービーム数が8本のときの走査線に対する結像スポットの配置例を図32(c)に示す。すなわち式(9)において、一直線状に発光部を配置する場合はδmax=7×δであるが、図32(c)のように配置すれば実質的にδmax=3×δとしてqの値を計算し、光学系の大きさを設計すればよく、本発明の効果がより高められる。また、例えば結像スポット306aと306eは走査方向に関して同じ位置にあるので、対応する発光部を同一のタイミングで駆動できる。 面発光型半導体レーザーアレイを用いると、コリメータレンズの焦点距離が従来の端面発光型半導体レーザーを用いた場合に比べて大きいため、半導体レーザーとコリメータレンズの光軸方向の距離の誤差がより大きく許容される。そのため、製造時の調整作業が容易になるとともに、温度変動や、経年変化によるコリメータレンズの位置ずれの影響も受けにくくなる。 以上のように、本発明の画像形成装置によれば、半導体レーザーアレイから放射された複数のレーザービームをコリメータレンズで平行化し、ビーム偏向器で偏向し、走査レンズを介して、像担持体上にスポットを結像させ光書込を行なう。このときコリメータレンズの焦点距離fcは従来のものに比べて長く、かつ半導体レーザーアレイ上の発光部の間隔δも小さい。特に面発光型の半導体レーザーアレイを用いれば、射出するレーザービームの拡がり角が小さいためコリメータレンズの焦点距離 fcは長くなり、また各発光部での発熱量が少なく、相互の電気的、光学的干渉も少ないため、発光部の間隔もより少なくできる。 また、倒れ補正レンズがない場合において、1列に配置された各レーザービームの両端のビームの偏向器の反射面上での距離qは、前述の式(9)で表わされる。 また倒れ補正レンズがある場合、副走査面における両端のビームの倒れ補正レンズにおける距離q′、及び偏向器の反射面上での距離qは、それぞれ式(10)および式(11)で表わされる。式(9)および式(10)においてq及びq′はfc/δmaxに反比例することが分かる。また式(11)において、qはq′に比例するので、やはりfc/δmaxに反比例する。この場合も走査面においては式(9)が適用できる。 すなわちこれら式(9)〜式(11)を見直してみると、このfc/δmaxの逆数に光軸方向の寸法に相当する値を掛けると、光軸直交方向のビーム間の距離になることがわかる。一般に小型(ここではA4程度の用紙に印字できるものとする)の画像形成装置においては、光軸方向の光学要素間の間隔や焦点距離はおおむね50mm前後の値をとる。この値をZとする。一方、解像度から換算するとレーザービームのコリメート直径は2mm程度である。そこで、各レンズや反射面でのビームの最大距離をコリメート直径と同じ程度にとどめようとすると、δmax/fc×Zを2mm以下にする事が望ましい。よって、fc/δmaxの値は25以上が望ましい。 また、走査レンズにおいても同様に、走査レンズに入射する複数のレーザービームの相互の距離の最も遠いものの距離を上記のように2mm程度にする場合、Zは 100mm程度の値を考慮せねばならない。よって、上記の同じ計算を行なうとfc/δmaxは50以上であることが望ましい。 このように、各レンズや反射面で複数のビーム相互の距離の最大値が、レーザービームのコリメート直径にくらべて同じ程度の数値であれば、1本のレーザービームを走査する光学系に比べて、各レンズや反射面の大きさが著しく大きくなることはない。さらに、前記のレーザービーム相互間の距離をコリメート直径にくらべて小さくできるのであれば、複数のレーザービームを実質的に1つのレーザービームとして光学設計上取り扱うことができる。 以上に説明した実施例は、本発明の一実施例に過ぎず、例えば半導体レーザーは、射出ビームの拡がり角が小さく、発光部の間隔が小さいものであれば同等の効果を有する。また、コリメータレンズ、走査レンズの構成や、相対位置関係が変わっても本発明の効果は同じく発揮される。また、偏向器の構造も回転多面鏡以外にも、ガルバノミラーなどでも同一の効果を発揮することは明らかである。 あるいは、先の実施例で述べた面発光型の半導体レーザーアレイの構造は、コリメータレンズの焦点距離に対して、発光部間の距離が先に示した所定の関係を満たすものであれば、いかなるものであっても同様の効果を得ることができる。 さらに、本発明の画像形成装置の応用範囲は、プリンタ、複写機等の印刷装置のみならず、ファクシミリ、ディスプレイにおいても全く同様な効果を有することは言うまでもない。 4-3 効果 以上に述べたように本発明の画像形成装置においては、複数のレーザービームを用いた露光方法をとりながら、コリメータレンズの焦点距離と半導体レーザーアレイ発光部の間隔をある条件を満たすような半導体レーザーアレイを用いることにより、補助的な光学要素を付加することなく、走査器の反射面の大きさや、各レンズの有効径を小さくでき、走査光学系あるいは画像形成装置全体の小型化、低価格化が可能となる。 また、複数のレーザービームがほぼ同一の光路をとるため、1本のレーザービームを用いた走査光学系と同様に設計ができるため設計工数が大幅に削減でき開発期間が短縮されると同時に、生産設備が1本のレーザービームを用いる走査光学系の場合と共通に利用でき、非常に生産性が向上する。 さらに、複数のレーザービームが走査光学系を構成する各光学系に入射する際に、そのいずれにおいても、ビーム相互の距離が最も遠い2本に間隔がレーザービームのコリメート直径に比べて小さければ、従前の1本のレーザービームを用いた走査光学系をそのまま転用できる。つまり、1本のレーザービームを用いた画像形成装置の走査光学系に一切変更を加えることなく、レーザービームの本数を増加させるだけで、高速の画像形成装置を製造することができ、製品の製造上の利益は計り知れないものがある。 次にレーザービームの拡がり角が小さくなることにより、コリメータレンズと半導体レーザーアレイの距離を大きく取れるため、コリメータレンズの光軸方向の調整余裕が増し、生産性が上がると同時に、経年劣化や使用時の温度変動の影響を受けずに一定のスポット直径で、露光が可能となり、画像品質が向上する。 §5 画像形成装置の第5の実施例 5-1 背景技術の対比 本実施例をより良く理解するため、はじめに背景技術について述べる。 従来の画像形成装置の走査光学系は例えば特開平3-248114号公報に開示されている(図41参照)。図41において光源は、射出されるビームの中心軸が、素子基板面に対し概ね平行となる端面発光半導体レーザーアレイ420が用いられ、コリメータレンズ402の物体側焦平面に配置されている。コリメータレンズ402の像側焦点位置には、開口絞り403が設けられている。 しかしながら、前述したような従来技術では、端面発光半導体レーザーのビーム拡がり角や、各々の発光部の間隔が大きいため、複数のビームの断面が重なり合う位置は、コリメータレンズの像側焦点位置のごく近傍に限られる。特に多数のビームが一列に配置されるとき、その両端のビームの断面が重なり合う位置は、さらに限られた範囲となる。従って、開口絞りを配置する位置も、そのわずかな範囲に限られてしまい、設計上の自由度が小さいという問題点を有している。 また、一般に光学系では、レンズの保持枠を開口絞りとして用いることもあり、そうすれば、別個に開口絞りを設ける必要がない。ところが、前述した従来技術では、コリメータレンズの位置では複数のビームの断面が重なり合わないため、コリメータレンズの保持枠を開口絞りとして用いることができないという問題点をも有している。 5-2 本発明の構成 図38は本発明の画像形成装置の構成図である。電子写真式プリンターの画像形成プロセスについて以下に説明する。帯電器451により像担持体407に一様な電荷が与えられ、走査光学系452で像担持体407上を露光走査することにより潜像を形成する。次に現像器453で潜像上に現像剤を付着させて顕像化し、転写器454で顕像を構成する現像剤を紙等の転写材455上に転写し、定着器456で現像剤を加熱溶融させて転写材455上に定着させる。 図37は本発明の実施例を示す走査光学系の構成図である。光源は、射出されるビームの中心軸が、素子基板422面に対し概ね垂直となる面発光半導体レーザーアレイ401である。面発光半導体レーザーアレイ401の発光部401aから射出された複数のビームは、コリメータレンズ402で平行化され、開口絞り403を通過し、偏向装置である回転多面鏡404の一つの偏向面405に入射する。回転多面鏡404の回転に伴って反射ビームが偏向走査され、結像レンズ406を通過して、像担持体407上に結像される。 なお、発光部401aは、制御装置460により個別にその点灯および光量が制御される。 ところで、一般に端面発光、面発光に関わらず、半導体レーザーからの出力ビームの拡がり角は、発光部ごとにある程度ばらつきがあり、コリメータレンズ402で平行化されたビーム径もばらつく。しかしながら、複数のビームの断面が概ね重なり合う位置に開口絞り403を設け、開口絞り403の径を平行ビーム径とほぼ同等かあるいはそれより小さく設定すれば、開口絞り403通過後の複数の平行ビーム径は均一になる。その結果、像担持体407上に結像されるスポット径も均一になり、安定した良好な印字品質が得られ、装置ごとの印字品質の差もないものとなる。ここで、ビーム拡がり角およびその径とは、ビーム断面の強度分布のガウス分布を成しているものとし、それぞれ中心強度の1/2となる角度の全角、および中心強度の1/e2となる位置を表す直径のことである。 開口絞りによりビーム径が均一化される効果について説明する。レーザービームを開口絞りで絞ると、波動光学としての性質である回折が起こる。開口絞りの中心と入射ビームの中心が一致している場合、回折を考慮した像担持体上の結像スポット直径d0は、 で表される。ここでkは定数、λはレーザービームの波長、fは結像レンズの焦点距離、Dは開口絞りの直径である。さらに、開口絞りへ入射するビームの直径dと開口絞りの直径Dとの比を、裁断比T=d/Dとすると、定数kは、 により計算される(「レーザ&オプティクスガイドII」日本メレスグリオ株式会社)。 一例として、開口絞りの直径Dを1とし、入射ビームの直径dが1を中心に±20%のばらつきを持っている場合、結像スポットの直径のばらつきは、+5.9%〜-3.1%に抑えられる。このように、開口絞りはビーム径のばらつきに対して、結像スポット径のばらつきを小さく抑える効果がある。 開口絞りを、光路上の複数のビームの断面の少なくとも一部が重なり合う位置であって、しかも開口絞りを通過した後の複数のビームのうち、パワーが最大であるビームについて、そのパワーを1としたときに、その他全てのビームのパワーが各々0.9以上となる位置に配置すれば、通過後のビームのパワーのばらつきが10%以下に抑えられる。この程度のばらつきであると、印字の濃度むらのない良好な印字品質が得られる。 ここで、図39に示すような系で、上記の条件を満足する開口絞り403の位置について具体的に説明する。ここで図39(a)は走査光学系の側面図、図39(b)は開口絞り403の位置における断面図である。面発光型半導体レーザーアレイ401は、その特性上、拡がり角を10度以下で発光部の間隔を0.05mm以下にすることが可能である。図39において、発光部A410、発光部B411の間隔Δを0.05mmとし、発光部A410を光学系の光軸412上に置く。各々の発光部410、411から射出されたビームを、それぞれビームA413、ビームB414とする。各々の射出ビームの拡がり角θは共に10度であり、コリメータレンズ402の焦点距離fcを10mm、コリメータレンズ402から回転多面鏡の偏向面405までの距離hを100mmとする。この場合、ビームの直径dは3.0mmとなる。開口絞り403の中心は光軸412上にあり、その直径Dはビーム直径dと等しいものとする。 レーザービームの断面強度分布がガウス分布をなしているとすると、断面強度Iは、 で表される。ここで、Pはビーム全体のパワー、wはビームの半径、xはビーム中心からの距離である。ビームA413が開口絞り403を通過した後のパワーは、上式を、 式(15)のように積分することにより求められ、その値は通過前のパワーPの86.5%である。従って、ビームB414については、開口絞り403通過後のパワーは通過前のパワーに比して、 86.5×0.9=77.9(%) 以上でなければならない。次に、ビームB414が開口絞り403を通過した後のパワーを求める。開口絞り403の面における、ビームB414の中心軸と光軸412との距離をtとすると、開口絞り403通過直前の断面強度Iは円筒座標系を用いて、 と表される。ここで、図39(b)に示すようにrは光軸412から開口絞り403上の任意の点Aまでの距離、φは光軸412とビームB414の中心軸414aとが作る平面Bと、光軸412と点Aとを結んだ線とのなす角である。開口絞り3通過後のビームB14のパワーは上式を で積分することで求められ、tとビーム直径dとの比が0.200のとき、開口絞り403通過後のパワーは通過前のパワーPに比して77.9%となり、先の値と同じとなる。つまり、t/dが0.200以下となる位置に開口絞り403を置けば、開口絞り403通過後のビームA413、ビームB414のパワーの差は10%以下となる。開口絞り403がコリメータレンズ402の位置、あるいは回転多面鏡の偏向面405の位置に置かれたとすると、tの距離はそれぞれ0.05mm、0.45mmであり、t/dはそれぞれ0.017、0.15となり、いずれも0.200より小さい。従って、開口絞り403はコリメータレンズ402と回転多面鏡の偏向面405との間の任意の位置に置くことができ、設計上の自由度を大きくとることができる。また、ビームを一列に配置し数を増加させたときでも、コリメータレンズ402の位置に開口絞り403を設定することができる。コリメータレンズ402の位置に開口絞り403を配置することが可能なので、コリメータレンズ402の保持枠を開口絞りとして用いればよく、別個に開口絞りを設ける必要がないため、走査光学系の構成要素を削減することができる。 なお、この実施例では、開口絞りをコリメータレンズと回転多面鏡との間に設けたが、上記の条件を満足させる位置ならば、面発光半導体レーザーアレイとコリメータレンズとの間に設けてもよい。また、光源と回転多面鏡との間に設ける光学系は、ビームを平行化させるためのコリメータレンズに限らなくてもよい。 図40は他の実施例を示す半導体レーザーから回転多面鏡までの部分の構成図である。開口絞り403は、複数のビームの中心軸が光軸412と交差する位置に設けられている。 このような構成によると、開口絞り403の面では複数のビームの中心軸が完全に一致するため、先の実施例と比較して、さらに結像スポット径の均一性、および結像スポットのパワーの均一性が高くなる。結像スポットのこれらの諸特性に関して、より高い特性が要求される場合に、この構成を採用すればよい。なお、この実施例でも、光源と回転多面鏡との間に設ける光学系は、ビームを平行化させるためのコリメータレンズに限らなくてもよい。 5-3 効果 以上説明したように、本発明によれば、面発光半導体レーザーアレイと偏向器との間の光路上の、複数のビーム断面が概ね重なり合う位置に開口絞りを設けることにより、ビーム拡がり角がばらついても、結像スポット径を均一にすることができ、安定した良好な印字品質が得られるという効果を有する。また、半導体レーザーアレイと偏向器の間の光路上の、広い範囲の任意の位置に開口絞りを設けることができ、あるいは、コリメータレンズの保持枠を開口絞りとして用いることも可能となり、設計上の自由度も大きくなるという効果をも有する。 §6 画像形成装置の第6の実施例 6-1 背景技術との対比 本実施例をより良く理解するため、はじめに背景技術について述べる。 従来、半導体レーザーアレイを用いた画像形成装置の走査光学系は、例えば特開平3-248114号公報に開示されており、図43のような構成である。半導体レーザーアレイ501は、コリメータレンズ502の物体側焦平面に配置されている。コリメータレンズ502の像側焦点位置には、開口絞り503が設けられている。 しかしながら、前述したような従来技術では、開口絞りを配置する位置が、コリメータレンズの像側焦点位置のみに限られているので、設計上の自由度が小さく、また、一般に光学系では、レンズの保持枠を開口絞りとして用いることがあるが、従来技術ではそのような構成にすることもできないという問題点を有している。 6-2 本発明の構成 図48は本発明による画像形成装置の構成図であり、その画像形成プロセスについて説明する。帯電器551により像担持体507に一様な電荷が与えられ、走査光学系552で像担持体507上を露光走査することにより潜像を形成し、現像器553で潜像上に現像剤を付着させて顕像化する。次に転写器554で顕像を構成する現像剤を紙等の転写材555上に転写し、定着器556で現像剤を加熱溶融させて転写材555上に定着させる。 図42は本発明の実施例を示す走査光学系の構成図である。半導体レーザーアレイ501から射出された複数のビームは、コリメータレンズ502で平行化され、開口絞り503を通過し、偏向装置である回転多面鏡504の一つの偏向面505に入射する。回転多面鏡504の回転に伴って反射ビームが偏向走査され、結像レンズ506を通過して、像担持体507上に結像される。 図42および図49において、半導体レーザーアレイ501と偏向器504との間の光路上に開口絞り503が設けられ、コリメータレンズ502の焦点距離をf、コリメータレンズ502の偏向器504側の焦点と開口絞り503との間隔をs、コリメータレンズ502の光軸から最も離れた位置に配置された発光部と光軸との間隔をt、開口絞り503の直径をD、平行ビームの直径をdとすると、 となっている。 また式(18)、(19)の代わりに、 なる条件を満足していても良い。 一般に半導体レーザー501からの出力ビームの拡がり角は、発光部ごとにある程度ばらつきがあり、コリメータレンズ502で平行化されたビーム径もばらつく。しかしながら、複数のビームの断面が概ね重なり合う位置に開口絞り503を設け、開口絞り503の径を平行ビーム径dとほぼ同等かあるいはそれより小さく設定すれば、開口絞り503通過後の複数の平行ビーム径dは均一になる。その結果、像担持体505上に結像されるスポット径も均一となり、安定した良好な印字品質が得られ、装置ごとの印字品質の差もないものとなる。ここで、ビーム拡がり角およびその径とは、ビーム断面の強度分布がガウス分布を成しているものとし、それぞれ中心強度の1/2となる角度の全角、および中心強度の1/e2となる位置を表す直径のことである。 開口絞り503によりビーム径が均一化される効果について説明する。レーザービームを開口絞り503で絞ると、波動光学としての性質である回析が起こる。開口絞り503の中心と入射ビームの中心が一致している場合、回析を考慮した像担持体505上の結像スポット直径d0は、 で表わされる。 ここでkは定数、λはレーザービームの波長、f0は結像レンズの焦点距離、Dは開口絞りの直径である。さらに、開口絞りへ入射するビームの直径dと開口絞りの直径Dとの比を、裁断比T=d/Dとすると、定数kは、 により計算される(「レーザ&オプティクスガイドII」日本メレスグリオ株式会社)。 一例として、開口絞り503の直径Dを1とし、入射ビームの直径dが1を中心に±20%のばらつきを持っている場合、結像スポットの直径のばらつきは、+5.9%〜-3.1%に抑えられる。このように、開口絞り503はビーム径のばらつきに対して、結像スポット径のばらつきを小さく抑える効果がある。 コリメータレンズ502により平行化されたビーム断面の強度分布は、概ねガウス分布をなしており、図44に示すように、平行ビームが開口絞り503を通過するとビームの周辺部がけられるため、通過前に比べて通過後のビームのパワーは低下する。図45のように、開口絞り503をコリメータレンズ502の偏向器側焦点に配置すれば、開口絞り503を通過する複数のビームの中心軸は全て一致するため、各々のビームについて、開口絞り503を通過することによるパワーの低下率は等しい。しかしながら、開口絞り503を配置しうる位置が、コリメータレンズ502の偏向器側焦点の位置のみに限られると、設計上の自由度は小さいものとなってしまう。 図46に示すように、開口絞り503をコリメータレンズ502の偏向器側焦点からずれた位置に配置すると、開口絞り503を通過する複数のビームの中心軸はお互いにずれることになり、コリメータレンズの光軸510に沿ったビーム511aと、光軸510に対して傾きを持ったビーム511bとでは、開口絞り503を通過する際のけられ方が異なる。その様子を示したものが図47である。図47(a)はビーム511aを、図47(b)はビーム511bを各々示しており、それぞれビームの断面強度分布が開口絞りによりけられる部分を斜線部で示してある。開口絞り503通過後のパワーはビームごとに差があり、ビーム511bに比べてビーム 511aのパワーの方が大きい。その差がある程度以上大きくなると、印字したときに濃度むらとなって現れてしまう。しかしながら、開口絞り通過後のパワーにばらつきがあっても、ある程度の範囲内であれば、実質的に良好な印字品質を得ることができる。従って、その許容範囲に対応した、開口絞りを配置しうる許容範囲も存在する。 式(18)に示す条件を満足させると、開口絞り503通過後のビームのパワーのばらつきは20%以下に抑えられる。ただし式(18)の条件は近似式であり、式(19)の条件の範囲内で成立する。また、式(20)の条件を満足させると、開口絞り503通過後のビームのパワーのばらつきは5%以下に抑えられる。ただし式(20)の条件は近似式であり、式(21)の範囲内で成立する。 本発明人が行った実験によれば、画像形成装置で文字や線のみの印字を行う場合には、結像スポットのパワーのばらつきが約20%以下であると良好な印字が得られ、それよりばらつきが大きいと印字品質が悪化する。また、グラフィック出力などで中間調のパターンを印字したり、細かい網点などを印字する場合には、結像スポットのパワーのばらつきが濃度むらとなって現れやすく、良好な印字品質を得るためには、そのばらつきを約5%以下にする必要がある。従って、式(18)の条件および式(19)の条件は文字や線のみの印字を用途とする画像形成装置に適した条件であり、式(20)の条件および式(21)の条件は文字の印字に加え、中間調や網点などの印字をも用途とする画像形成装置に適した条件である。 上記の各条件によると、半導体レーザーアレイ511と偏向装置504の間の光路上の、広い範囲の任意の位置に開口絞り503を設けることができ、設計上の自由度が大きくなる。あるいは、コリメータレンズ502の保持枠を開口絞りとして用いることも可能となり、そうすれば別個に開口絞りを設ける必要がなく、走査光学系の構成要素を削減することができる。 次に一例として図49に示すような系で、前記の各条件を満足する開口絞り503の位置について具体的に計算する。半導体レーザーアレイ501として、面発光半導体レーザーアレイを用いた場合を考える。面発光半導体レーザーとは、射出するビームの中心軸が、素子基板面に対して概ね垂直となる半導体レーザーである。面発光半導体レーザーアレイ501は、その特性上、拡がり角を10度以下に、発光部の間隔を0.05mm以下にすることが可能である。そこで、2個の発光部からなる半導体レーザーアレイ501を考え、発光部512a、発光部512bの間隔tを0.05mmとし、発光部 512aをコリメータレンズ502の光軸510上に置く。なお、これら発光部512a,512bの点灯および光量は、制御装置560により制御される(図42)。各々の発光部から射出されたビームを、それぞれビーム511a、ビーム511bとする。各々の射出ビームの拡がり角θを共に10度とし、コリメータレンズ502の焦点距離fを10mm、コリメータレンズ502から回転多面鏡の偏向面505までの距離hを50mmとする。この場合、ビームの直径dは3.0mmとなる。開口絞り503の中心は光軸510上にあり、その直径Dはビーム直径dと等しいものとする。 D/d=1であるため、式(19)の条件および式 (21)の条件は共に満足される。式(18)の条件によるとs≦58mmとなり、開口絞り503はコリメータレンズ502と回転多面鏡の偏向面505との間の任意の位置に置くことができる。また、式(20)の条件によるとs≦28mmとなり、開口絞り503はコリメータレンズ502と、コリメータレンズ502の偏向面505側焦点から偏向面505側に28mmの位置との間の任意の位置に置くことができる。また、発光部を一列に配置し数を増加させ、tが増加したときでも、式(18)および式(19)の条件のもとにおいては、発光部が12個以内であれば、開口絞り503を設定できる。また、式(20)および式(21)の条件のもとにおいては、発光部が6個以内であれば、コリメータレンズ502の位置に開口絞り503を設定することができる。コリメータレンズ502の位置に開口絞り503を配置することが可能ならば、コリメータレンズ502の保持枠を開口絞りとして用いることもでき、そうすれば別個に開口絞りを設ける必要がないため、走査光学系の構成要素を削減することができる。 6-3 効果 以上説明したように、本発明によれば、半導体レーザーアレイと偏向器との間の光路上に開口絞りが設けられ、式(18)の条件および式(19)の条件を満足することにより、ビーム拡がり角がばらついても、結像スポット径を均一にすることができ、安定した良好な印字品質が得られるという効果を有する。また、文字や線の印字品質を良好に保ちつつ、半導体レーザーアレイと偏向器の間の光路上の、広い範囲の任意の位置に開口絞りを設けることができ、あるいは、コリメータレンズの保持枠を開口絞りとして用いることも可能となり、設計上の自由度も大きくなるという効果をも有する。 また、半導体レーザーアレイと偏向器との間の光路上に開口絞りが設けられ、式(20)の条件および式(21)の各条件を満足することにより、ビーム拡がり角がばらついても、結像スポット径を均一にすることができ、安定した良好な印字品質が得られるという効果を有する。また、文字の印字に加え、中間調や網点などの印字品質をも良好に保ちつつ、半導体レーザーアレイと偏向器の間の光路上の、広い範囲の任意の位置に開口絞りを設けることができ、あるいは、コリメータレンズの保持枠を開口絞りとして用いることも可能となり、設計上の自由度も大きくなるという効果をも有する。 <産業上の利用可能性> 本発明による画像形成装置は、電子写真プロセスにより紙上に高速で印刷を施すことができる。このような画像形成装置は、コンピュータ、ファクシミリ、多機能複写機等の出力装置として広く用いることができる。 |
訂正の要旨 |
訂正要旨 特許第3170798号発明の明細書を以下のように訂正する。 1.訂正事項a 特許請求の範囲の請求項5に 「表面に静電潜像が形成される像担持体(507)と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器(551)と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置(552)と、レーザービームが走査された像担持体の表面に現像剤を付着させる現像器(553)とを備え、前記レーザービーム走査装置はレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)を有し、前記半導体レーザーアレイと前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズ(502)の前記偏向装置(504)側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部と前記光軸との間隔をt、前記開口絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足することを特徴とする画像形成装置。」 とあるのを、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明をを目的として、 「表面に静電潜像が形成される像担持体(507)と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器(551)と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置(552)と、レーザービームが走された像担持体の表面に現像剤を付着させる現像器(553)とを備え、前記レーザービーム走査装置は基板面に対して垂直にレーザービームを射出する複数の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出さたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)を有し、前記複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離が、他の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離と異なっており、前記半導体レーザーアレイと前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズ(502)の前記偏向装置(504)側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部と前記光軸との間隔をt、前記開□絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足し、かつ前記開□絞り(503)は前記コリメータレンズ(502)の保持枠に形成されていることを特徴とする画像形成装置。」 と訂正する。 2.訂正事項b 特許請求の範囲の請求項6に 「表面に静電潜像が形成される像担持体(507)と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器(551)と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置(552)と、レーザービームを走査するレーザービーム走査装置(552)と、レーザービームが走査された像担持体(507)の表面に現像剤を付着させる現像器(553)とを備え、前記レーザービーム走査装置はレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部(502)から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズと、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズの前記偏向装置側の焦点と前記開□絞りとの間隔をs、前記コリメータレンズの光軸から最も離れた位置に配置された発光部と前記光軸との間隔をt、前記開口絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足することを特微とする画像形成装置。」 とあるのを、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明をを目的として、 「表面に静電潜像が形成される像担持体(507)と、この像担持体の表面を帯電させる帯電器(551)と、帯電した像担持体の表面に対して複数のレーザービームを走査するレーザービーム走査装置(552)と、レーザービームが走査された像担持体(507)の表面に現像剤を付着させる現像器(553)とを備え、前記レーザービーム走査装置は基板面に対して垂直にレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離が、他の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離と異なっており、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズの前記偏向装置側の焦点と前記開口絞りとの間隔をs、前記コリメータレンズの光軸から最も離れた位置に配置された発光部と前記光軸との間隔をt、前記開口絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足し、かつ前記開口絞り(503)は前記コリメータレンズ(502)の保持枠に形成されていることを特徴とする画像形成装置。」 と訂正する。 3.訂正事項c 特許請求の範囲の請求項7に 「レーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(502)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズ(502)の前記偏向装置側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部(512b)と前記光軸(510)との間隔をt、前記開口絞りの直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足することを特徴とするレーザービーム走査装置。」 とあるのを、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明をを目的として、 「基板面に対して垂直にレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離が、他の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離と異なっており、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(502)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリータレンズ(502)の前記偏向装置側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部(512b)と前記光軸(510)との間隔をt、前記開口絞りの直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足し、かつ前記開口絞り(503)は前記コリメータレンズ(502)の保持枠に形成されていることを特徴とするレーザービーム走査装置。」 と訂正する。 4.訂正事項d 特許請求の範囲の請求項8に 「レーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズ(502)の前記偏向装置(504)側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部(512b)前記光軸との間隔をt、前記開口絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足することを特徴とするレーザービーム走査装置。」 とあるのを、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明をを目的として、 「基板面に対して垂直にレーザービームを射出する複数個の発光部を有する半導体レーザーアレイ(501)と、前記発光部から射出されたレーザービームを平行ビーム化するためのコリメータレンズ(502)と、レーザービームを偏向する偏向装置(504)とを有し、前記複数個の発光部のうち、少なくとも1個の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離が、他の発光部からコリメータレンズ(502)の光軸までの距離と異なっており、前記半導体レーザーアレイ(501)と前記偏向装置(504)との間の光路上に開口絞り(503)が設けられ、前記コリメータレンズ(502)の焦点距離をf、前記コリメータレンズ(502)の前記偏向装置(504)側の焦点と前記開口絞り(503)との間隔をs、前記コリメータレンズ(502)の光軸から最も離れた位置に配置された発光部(512b)と前記光軸との間隔をt、前記開口絞り(503)の直径をD、前記平行ビームの直径をdとするとき、 なる条件を満足し、かつ前記開口絞り(503)は前記コリメータレンズ(502)の保持枠に形成されていることを特徴とするレーザービーム走査装置。」 と訂正する。 |
異議決定日 | 2002-11-12 |
出願番号 | 特願平4-509287 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
YA
(G03G)
P 1 652・ 536- YA (G03G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 菅藤 政明 |
特許庁審判長 |
石川 昇治 |
特許庁審判官 |
梅岡 信幸 小林 紀史 |
登録日 | 2001-03-23 |
登録番号 | 特許第3170798号(P3170798) |
権利者 | セイコーエプソン株式会社 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 水本 敦也 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 小花 弘路 |
代理人 | 岸田 正行 |
代理人 | 森 秀行 |
代理人 | 森 秀行 |
代理人 | 吉武 賢次 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 名塚 聡 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 名塚 聡 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 吉武 賢次 |