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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F24F
管理番号 1071816
異議申立番号 異議2002-71267  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-08-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-05-16 
確定日 2002-12-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3231285号「ドレンホースの接続部構造」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3231285号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕本件特許及び本件特許異議事件の手続の経緯
本件特許第3231285号(以下「本件特許」という。)は、平成11年2月15日に出願されたものであって、平成13年9月14日に設定登録がされ、同年11月19日に特許公報に掲載されたものであり、これに対して、特許異議申立人・玉田修三より平成13年12月25日付けで特許異議の申立てがされ、その後、当審の取消理由通知に対して、平成14年11月8日付け訂正請求書により訂正請求がされたものである。

〔2〕訂正の適否についての判断
1.本件訂正請求は、本件特許の明細書を以下のとおり訂正するものである。
ア.特許請求の範囲の請求項1を、
「室内用空調機内に備えるドレンパンにて受ける水滴を該ドレンパンの排出パイプに接続されるドレンホースを介して外部に排出可能に構成し、前記ドレンホースの接続側端部にシール材を収容するための環状の凹部を形成し、その凹部を、前記ドレンホースの接続側端部が径方向外方側に突出され、かつ、前記シール材のホース長手方向の一端面を受け止める受部となる第1壁部と、この第1壁部の外側端部から径方向と直交する方向に延出され、かつ、前記シール材の厚み方向外面を受け止める受部となる第2壁部と、この第2壁部の遊端部から径方向内方側に延出され、かつ、前記シール材のホース長手方向の他端面を受け止める受部となる第3壁部とからなる断面形状ほぼ短形状に構成し、前記凹部に該凹部の形状に合わせたシール材を収容し、前記ドレンホースの接続側端部を前記排出用パイプに外嵌した状態において、前記ドレンホースの接続側先端部を前記排出用パイプに接触又は接触に近い状態に構成したことを特徴とするドレンホースの接続部構造。」
と訂正する。
イ.特許請求の範囲の請求項2を、
「前記第3壁部の径方向内方側端部から径方向と直交する方向に口縁部を延出してなる請求項1記載のドレンホースの接続部構造。」
と訂正する。
ウ.発明の詳細な説明の段落番号0011中、「が、円弧状や台形状等どのような形状にしてもよい」を削除する。
エ.発明の詳細な説明の段落番号0016中、「することができる。」の後に、「また、第1壁部〜第3壁部までの3つの壁部にてシール材を確実に収容保持することができる。」との記載を追加する。
オ.発明の詳細な説明の段落番号0017中、「第1壁部〜第3壁部までの3つの壁部にてシール材を確実に収容保持することができながらも、」を削除する。

2.そこで、訂正事項について検討する。
特許請求の範囲の請求項1は、「環状の凹部」の構成及び「シール材」の形状を限定するものであるから、この訂正は、特許請求の範囲を実質的に減縮するものであり、また、請求項2も、「シール材」の形状を限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮する訂正に該当する。
次に、発明の詳細な説明の訂正は、特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と整合させたものと認められるから、これらの訂正は、明りょうでない記載の釈明に該当する。
そして、上記請求項1の訂正事項は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内で訂正したものと認められ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
そうすると、本件訂正は、全体として、特許法第120条の4第2項ただし書第1号および第3号にいう特許請求の範囲の減縮および明りょうでない記載の釈明に該当し、また、同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定にも適合する。
したがって、本件各訂正はこれを認める。

〔3〕特許異議申立てについての判断
1.本件請求項1ないし請求項5に係る発明は、訂正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された以下のものにあると認める。
「請求項1
室内用空調機内に備えるドレンパンにて受ける水滴を該ドレンパンの排出パイプに接続されるドレンホースを介して外部に排出可能に構成し、前記ドレンホースの接続側端部にシール材を収容するための環状の凹部を形成し、その凹部を、前記ドレンホースの接続側端部が径方向外方側に突出され、かつ、前記シール材のホース長手方向の一端面を受け止める受部となる第1壁部と、この第1壁部の外側端部から径方向と直交する方向に延出され、かつ、前記シール材の厚み方向外面を受け止める受部となる第2壁部と、この第2壁部の遊端部から径方向内方側に延出され、かつ、前記シール材のホース長手方向の他端面を受け止める受部となる第3壁部とからなる断面形状ほぼ短形状に構成し、前記凹部に該凹部の形状に合わせたシール材を収容し、前記ドレンホースの接続側端部を前記排出用パイプに外嵌した状態において、前記ドレンホースの接続側先端部を前記排出用パイプに接触又は接触に近い状態に構成したことを特徴とするドレンホースの接続部構造。
請求項2
前記第3壁部の径方向内方側端部から径方向と直交する方向に口縁部を延出してなる請求項1記載のドレンホースの接続部構造。
請求項3
前記第2壁部のドレンホース外嵌方向の寸法を前記排出用パ
イプの長手方向の寸法よりも小さく設定し、前記第1壁部の内方側端部を前記排
出用パイプに接触又は接触に近い状態に構成してなる請求項1又は2記載のドレ
ンホースの接続部構造。
請求項4
前記第2壁部の第3壁部側端部を径方向外側に突出して該第2壁部の他の部位よりも大径となる大径部を形成し、前記排出用パイプに前記ドレンホースの接続側端部を外嵌することによりシール材の接続側端部を前記大径部側に入り込ませるようにしてなる請求項1又は2記載のドレンホースの接続部構造。
請求項5
前記シール材を前記凹部内に収容した状態において、該シール材の一部が前記大径部に入り込むための突出部を該シール材に備えさせてなる請求項1又は2又は4記載のドレンホースの接続部構造。」

2.これに対して、特許異議申立人の異議申立ての理由は、訂正前の請求項1〜5に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、いずれも特許を受けることができない発明であり(理由1)、訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前の特許出願であって本件特許の出願後に出願公開されたものの願書に最初に添付した明細書及び図面(甲第9号証)に記載された発明と同一であるから特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない発明であり(理由2)、さらに請求項3ないし5に係る発明は36条第6項第2号に適合しない(理由3)、というにあるものと認められる。
証拠方法:
甲第1号証:発明協会公開技報93-32590(1993年12月1日発行)
甲第2号証:実開昭55-84376号公報
甲第3号証:特公昭36-16588号公報
甲第4号証:特開平7-174271号公報
甲第5号証:実開昭52-138428号公報
甲第6号証:特開昭53-144146号公報
甲第7号証:特開平7-332555号公報
甲第8号証:米国特許第3596939号明細書
甲第9号証:特開平11-94163号公報
ほかに、以下の参考文献(公知文献1〜3)を提出している。
公知文献1:英国特許第1036459号明細書
公知文献2:米国特許第4315630号明細書
公知文献3:特開平3-92691号公報
そこで、異議申立人の主張する理由について検討する。
異議申立人が提示した、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証には、「エアコンドレンホース取り付け部」に関して記載されているが、本件特許の訂正後の請求項1に係る発明のような、「シール材のホース長手方向の一端面を受け止める受部となる第1壁部と、この第1壁部の外側端部から径方向と直交する方向に延出され、かつ、シール材の厚み方向外面を受け止める受部となる第2壁部と、この第2壁部の遊端部から径方向内方側に延出され、かつ、前記シール材のホース長手方向の他端面を受け止める受部となる第3壁部とからなる断面形状ほぼ短形状に構成し、凹部に該凹部の形状に合わせたシール材を収容し、ドレンホースの接続側端部を排出用パイプに外嵌した状態において、ドレンホースの接続側先端部を排出用パイプに接触又は接触に近い状態に構成した」点の構成に関しては記載も示唆もない。
なお、請求項1中の「形状に合わせた」とは、断面形状ほぼ短形状の凹部に収容して第1壁、第2壁部、第3壁部と接した状態のもので、実施例図に例示されるような形状のものを意味し、異議申立人が提出した甲第1号証のような「Oリングを凹部に収容したもの」は、本件請求項1に係る発明の範囲外のものと認められる。特許権者も、平成14年10月22日期日の口頭審理において、同趣旨の陳述を行った。
また、異議申立人が提出したその他の甲号各証は、「管継手」に関するものであって、本件請求項1に係る発明の上記主要な構成に関しては記載も示唆もない。
そして、本件特許の訂正後の請求項1に係る発明は、請求項1に記載された構成が相俟って、明細書記載の効果を奏するものと認められる。
したがって、その余について検討するまでもなく、本件請求項1に係る発明が、異議申立人の提示した甲号各証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
また、請求項2〜5に係る発明は、請求項1に係る発明の構成をさらに限定した発明であるから、請求項2〜5に係る発明についても、異議申立人の提示した甲号各証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
次に、甲第9号証に係る先願明細書及び図面には、もっぱら「伸縮離脱防止継手」について記載されており、本件請求項1に係る発明のような「レンホースの接続部構造」については記載されていない。したがって、本件請求項1に係る発明が、提出された証拠方法に基づいて特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない発明であるとすることはできない。
さらに、請求項3〜5における第1〜3壁部は、発明の詳細な説明及び図面からみて、図の6A〜Cに示される部分であることが明らかであり、大径部についても図の6Eの部分を指すことが明らかであるから、異議申立人のいうような不明確であるとはいえない。したがって、請求項3〜5に係る発明が36条第6項第2号に適合しないということはできない。

〔4〕まとめ
以上によれば、特許異議申立人の主張する申立ての理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。また、ほかに本件各特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ドレンホースの接続部構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 室内用空調機内に備えるドレンパンにて受ける水滴を該ドレンパンの排出用パイプに接続されるドレンホースを介して外部に排出可能に構成し、前記ドレンホースの接続側端部にシール材を収容するための環状の凹部を形成し、その凹部を、前記ドレンホースの接続側端部が径方向外方側に突出され、かつ、前記シール材のホース長手方向の一端面を受け止める受部となる第1壁部と、この第1壁部の外側端部から径方向と直交する方向に延出され、かつ、前記シール材の厚み方向外面を受け止める受部となる第2壁部と、この第2壁部の遊端部から径方向内方側に延出され、かつ、前記シール材のホース長手方向の他端面を受け止める受部となる第3壁部とからなる断面形状ほぼ矩形状に構成し、前記凹部に該凹部の形状に合わせたシール材を収容し、前記ドレンホースの接続側端部を前記排出用パイプに外嵌した状態において、前記ドレンホースの接続側先端部を前記排出用パイプに接触又は接触に近い状態に構成したことを特徴とするドレンホースの接続部構造。
【請求項2】 前記第3壁部の径方向内方側端部から径方向と直交する方向に口縁部を延出してなる請求項1記載のドレンホースの接続部構造。
【請求項3】 前記第2壁部のドレンホース外嵌方向の寸法を前記排出用パイプの長手方向の寸法よりも小さく設定し、前記第1壁部の内方側端部を前記排出用パイプに接触又は接触に近い状態に構成してなる請求項1又は2記載のドレンホースの接続部構造。
【請求項4】 前記第2壁部の第3壁部側端部を径方向外側に突出して該第2壁部の他の部位よりも大径となる大径部を形成し、前記排出用パイプに前記ドレンホースの接続側端部を外嵌することによりシール材の接続側端部を前記大径部側に入り込ませるようにしてなる請求項1又は2記載のドレンホースの接続部構造。
【請求項5】 前記シール材を前記凹部内に収容した状態において、該シール材の一部が前記大径部に入り込むための突出部を該シール材に備えさせてなる請求項1又は2又は4記載のドレンホースの接続部構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、室内用空調機内に備えるドレンパンに貯留される水滴を該ドレンパンの排出用パイプに接続されるドレンホースを介して外部に排出可能に構成してなるドレンホースの接続部構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のドレンホースとして、例えば図11に示すものがある。これは、ドレンホース20の一端にそれの径方向外方側に突出され、かつ、環状のシール材22のホース長手方向の一端22Aを受け止める受部となる第1壁部21Aと、この第1壁部21Aの外側端部から径方向と直交する方向に延出され、かつ、前記シール材22の厚み方向外面22Bを受け止める受部となる第2壁部21Bとから、前記シール材22を収容することができる収容部23を構成し、前記第2壁部21Bの端部に形成された開口部21Kからシール材22を挿入することにより装着できるようにしている。そして、このように構成されたドレンホース20の一端をドレンパン24の排出用パイプ25に外嵌することにより、ドレンホース20を排出用パイプ25に接続することができるようにしている。
【0003】
上記構成の収容部23は、一端側が開口された形状であるため、図11に示す矢印方向にPの外力が作用すると、この矢印方向と反対側のシール材22の部位が圧縮変形され、ついには、そのシール材22を接当支持している第2壁部21Bの部位が反力を受けて外拡がり方向、図の矢印R方向に変形してしまい、開口部21Kの径が局部的に大きくなる結果、ドレンホース20が排出用パイプ25から外れてしまうことがあった。
又、一端が開放された収容部23であることから、排出用パイプ25に外嵌されているシール材22に対してドレンホース20が容易に外れてしまうことがないようにするために、接着剤等を用いてシール材22をドレンホース20に固定する必要があり、その接着作業が手間のかかる煩わしい作業になるだけでなく、接着むら等による接着不良により早期にシール材22に対してドレンホース20が外れてしまうことがあり、改善の余地があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、シール材を接着剤等により収容部に固定しなくても、シール材に対してドレンホースが容易に外れてしまうことを回避することができるとともに、ドレンホースが排出用パイプから外れることを長期間に渡って回避することができるドレンホースの接続部構造を提供する点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題解決のために、室内用空調機内に備えるドレンパンにて受ける水滴を該ドレンパンの排出用パイプに接続されるドレンホースを介して外部に排出可能に構成し、前記ドレンホースの接続側端部に環状の凹部を形成するために、該ドレンホースをそれの径方向外方側に突出させ、その凹部にシール材を収容し、前記ドレンホースの接続側端部を前記排出用パイプに外嵌した状態において、前記ドレンホースの接続側先端部を前記排出用パイプに接触又は接触に近い状態に構成している。
従って、ドレンホースの環状の凹部にシール材をドレンホースの一端から挿入して収容することによって、接着剤等を使用しなくても、ドレンホース内にシール材を常に収容した状態に維持することができるから、排出用パイプに外嵌されているシール材に対してドレンホースが外れるようなことがない。しかも、前記凹部の接続側先端部を排出用パイプに接触又は接触に近い状態に構成しているから、図2(ロ)及び図3(ロ)に示すように、ドレンホース3に矢印方向にPの外力が作用すると、ドレンホース3の接続側先端部、つまり後述する口縁部6Dの内面6dの一部が排出用パイプ2に接当し、その部分の先端部が外拡がり方向、図の矢印R方向に変形することを回避することができ、ドレンホース3が排出用パイプ2から外れ難くすることができる。
前記のようにドレンホース3が、図の矢印R方向に変形することを回避することによりドレンホース3が排出用パイプ2から外れ難くできる理由を考察してみると、例えば図10に示すように、α°をドレンホース3が初期姿勢(図に2点鎖線で示す水平姿勢)から変形したときの変形姿勢(図に2点鎖線で示す角度αのみ傾斜した傾斜姿勢)に変化したときの傾斜角度とし、Pnをドレンホース3引抜方向の力とし、前記外力Pを一定とすると、
Pn=sinα・P、Pm=cosα・Pとなり、αの値が大きくなればなるほど、Pnが大きくなることから、前記のようにドレンホース3の変形を回避することで、ドレンホース3引抜方向の力が大きくなることを抑制することができるのである。
【0006】
具体的には、前記凹部を、ドレンホースの接続側端部が径方向外方側に突出され、かつ、前記シール材のホース長手方向の一端を受け止める受部となる第1壁部と、この第1壁部の外側端部から径方向と直交する方向に延出され、かつ、前記シール材の厚み方向外面を受け止める受部となる第2壁部と、この第2壁部の遊端部から径方向内方側に延出され、かつ、前記シール材のホース長手方向の他端を受け止める受部となる第3壁部とからなる断面形状ほぼコの字状の環状部から構成し、前記第3壁部の径方向内方側端部から径方向と直交する方向に口縁部を延出している。
3つの壁部にてシール材を確実に収容保持することができながらも、延出された広い接当面積を有する口縁部にて前述のようにドレンホースに矢印方向に作用する外力Pを確実に受け止めることができる。
【0007】
前記第2壁部のドレンホース外嵌方向の寸法を前記排出用パイプの長手方向の寸法よりも小さく設定し、前記第1壁部の内方側端部を前記排出用パイプに接触又は接触に近い状態に構成することによって、図8(ロ)に示すように、前述のようにドレンホース3に矢印方向にPの外力が作用した場合に、ドレンホース3の先端部、つまり後述する口縁部6Dの内面6dの一部が排出用パイプ2に接当するだけでなく、ドレンホース3の第1壁部6Aの内方側端部6aの一部が排出用パイプ2に接当することにより、ドレンホース3が図の矢印R方向に変形することをより一層回避することができる。
【0008】
前記第2壁部の第3壁部側端部を径方向外側に突出して該第2壁部の他の部位よりも大径となる大径部を形成し、前記排出用パイプに前記ドレンホースの接続側端部を外嵌することによりシール材の接続側端部を前記大径部側に入り込ませるようにしている。
排出用パイプにドレンホースの接続側端部を外嵌すると、排出用パイプがシール材を拡径方向に押圧してシール材の接続側端部が大径部側に入り込み、シール材がドレンホースの接続側端部側に移動してドレンホースから外れてしまうことを確実に回避することができる。
【0009】
前記シール材を前記凹部内に収容した状態において、該シール材の一部が前記大径部に入り込むための突出部を該シール材に備えさせることによって、大径部へのシール材の入り込み度合いを大きくすることができ、ドレンホースからシール材が外れてしまうことをより一層確実に回避することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1に、室内用空調機内に備えるドレンパン1に貯留される水滴を外部に排出するために、該ドレンパン1の排出用パイプ2に接続されるドレンホース3が示されている。前記ドレンホース3の外面には、断熱チューブ4が装着されているが、この断熱チューブ4は省略してもよい。又、前記ドレンホース3は、合成樹脂でなり、環状の凸部5Aと環状の凹部5Bとを交互に備えた波形状のホース本体5と、このホース本体5の両端に一体形成された端部6,7とからなっている。これら端部のうちの一方の端部6が、前記排出用パイプ2に接続される接続側端部であり、他方の端部7が、別のホース(図示せず)を接続してホースを延長可能とするために備えさせたものであるが、前記他方の端部7は、無くてもよい。又、前記ホース本体5の形状は、図に示すもの以外、例えば凸部と凹部とが螺旋状に形成されたものや、波形ではなくストレートなものでもよい。又、ホース本体5の断面形状が円形のものの他、楕円状又は矩形状あるいは多角形状等どのような形状のものでもよい。尚、図では、前記ドレンパン1を前記排出用パイプ2やドレンホース3の左側に書いているが、実際には、ドレンパン1が最上方に位置するものであり、図において左側が上方になり、右側が下方になるものであるが、以下においてもドレンパン1を排出用パイプ2やドレンホース3の左側に書くものとする。
【0011】
前記接続側端部6には、ゴムや合成樹脂等の弾性力を有する材料で作製された環状のシール材9を収容するための環状の凹部10が形成されており、この凹部10は、図2(イ),(ロ)及び図3(イ),(ロ)に示すように、前記ホース本体5の一端に延出された該ホース本体5の凹部5Bよりも大径な環状部8の端部から径方向外方側に突出され、かつ、シール材9の一端面9Aを受け止める受部となる第1壁部6Aと、この第1壁部6Aの外側端部から径方向と直交する方向に延出され、かつ、前記シール材9の厚み方向外面9Bを受け止める受部となる第2壁部6Bと、この第2壁部6Bの遊端部から径方向内方側に延出され、かつ、前記シール材9のホース長手方向の他端面9Cを受け止める受部となる第3壁部6Cとからなる断面形状ほぼコの字状の環状部から構成し、前記第3壁部の径方向内方側端部から径方向と直交する方向に口縁部6Dを延出し、口縁部6Dの内面6dにて形成される開口部を通してシール材9をホース内に挿入することにより、シール材9を凹部10に収容させるようにしている。
又、前記口縁部6Dの内面6dが排出用パイプ2に接触した状態に近い状態になるように該口縁部6Dを構成している。この接触に近い状態というのは、図2(ロ)に示すようにドレンホース3に矢印方向にPの外力が作用した場合に、口縁部6Dの内面6dの一部が直ちに接当して、ドレンホース3が図の矢印R方向に変形することを回避することができる範囲である。前記排出用パイプ2は、ドレンホース3側の端部ほど細い直径となるテーパー面2Aを備えており、ドレンホース3の一端を排出用パイプ2に外嵌した場合に、ドレンホース3の端部側ほどシール材9を圧縮変形させてシール性能が高くなるようにしている。前記凹部10を断面形状ほぼ矩形状に構成して、シール材9を確実に受け止めることができるようにした。この場合、凹部10の形状に合わせてシール材9の形状を考慮する必要がある。図3(ロ)に示したように、前記ドレンホース3の口縁部6Dの内面6dと排出用パイプ2のテーパー面2Aとの間に隙間が発生するように口縁部6Dの径寸法を設定したが、図8(ロ)及び図9に示すように、ドレンホース3の口縁部6Dの内面6dと排出用パイプ2のテーパー面2Aとが接当した状態になるように口縁部6Dの径寸法を設定してもよい。
【0012】
前記ドレンホース3の接続側端部6を前記排出用パイプ2に外嵌した状態において、前記シール材9の弾性変形に伴い該シール材9の一部が前記凹部10から嵌合方向のドレンホース3の接続側に食み出すことがないようにシール材9の角部の形状を、図2(イ),(ロ)及び図3(イ),(ロ)に示すように形成している。つまり、シール材9の嵌合方向一側、つまりドレンパン1側に傾斜面9Fを形成して、シール材9の一部がドレンホース3の接続側に食み出すことがないようにしている。従って、シール材9の一部がドレンホース3の接続側に食み出し、その食み出したシール材9の一部がドレンホース3の口縁部6Dの内面6dと排出用パイプ2のテーパー面2Aとの間に入り込んでシール不良等を起こすことがないようにしている。しかも、奥側に行くほど内径側に突出する傾斜面9Fとすることによって、シール材9のシール作用が入口部で急激に発揮されることなく、徐々に発揮されることになり、入口部付近でのシール不良が発生することがないようにしている。
【0013】
図2(イ),(ロ)及び図3(イ),(ロ)では、前記ドレンホース3の接続側端部6の長手方向の寸法が前記排出用パイプ2の長手方向の寸法よりも長い場合であり、これとは逆に、例えば図7〜図9では、前記ドレンホース3の接続側端部6の長手方向の寸法が前記排出用パイプ2の長手方向の寸法よりも短い場合が示されており、この場合には、シール材9の嵌合方向他側、つまりドレンパン1から離間する側にも傾斜面9Gを形成して、シール材9がホース本体側に食み出すことがないようにしている。尚、前記傾斜面9F,9Gの形状は、図に示されるもの以外でもよい。図7、図8(ロ)及び図9では、第1壁部6Aの内方側端部6aが、排出用パイプ2のテーパー面2Aに接当しない状態になるように、第1壁部6Aの内方側端部6aの径寸法を設定しているが、第1壁部6Aの内方側端部6aが、排出用パイプ2のテーパー面2Aに接当した状態になるように、第1壁部6Aの内方側端部6aの径寸法を設定してもよい。
【0014】
図3(イ),(ロ)にも示すように、前記第2壁部6Bの第3壁部6C側端部を径方向外側に突出して該第2壁部6Bの他の部位よりも大径となる大径部6Eを形成し、シール材9を凹部10内に収容した状態においては、図3(イ)に示すように大径部6E内に空間6eが形成されており、この状態から図2(ロ)及び図3(ロ)に示すように前記排出用パイプ2に前記ドレンホース3の接続側端部を外嵌することにより、シール材9の接続側端部の一部が前記大径部6E内の空間6eに入り込んで、シール材9がドレンホース3から外れることがないようにしている。前記大径部6Eの無いドレンホース3であってもよく、これを図8(イ),(ロ)及び図9に示している。そして、図8(イ),(ロ)及び図9では、ホース本体5の形状等が多少異なる程度で、他の構成は、図2(イ),(ロ)と同様であるため、同一符号を付すとともに、説明を省略する。又、図9では、図8(イ),(ロ)で示したドレンホース3を長手方向同一径のストレートな排出用パイプ2に外嵌した状態を示している。
【0015】
前記大径部6Eの突出度合いを、図4(イ),(ロ)及び図5(イ),(ロ)に示すように、大きくするとともに、前記シール材9を凹部10内に収容した状態において、シール材9の一部が大径部6Eで形成される空間6e内に入り込むための突出部9T(図6参照)を一体形成して、シール材9を構成してもよい。このように突出部9Tを形成することによって、第3壁部6Cに対する大径部6Eの他端面9Cの接当面積を図3(イ),(ロ)に比べて増大させることができ、その分シール材9に対してドレンホース3が外れ難くすることができる。
【0016】
【発明の効果】
請求項1によれば、ドレンホースに形成した環状の凹部にシール材を収容するだけで、従来のようにシール材を接着剤等により収容部に固定しなくても、シール材に対してドレンホースが外れることがなく、長期間に渡ってドレンパンに貯留される水滴を外部に良好に排出することができるものでありながら、製造面及びコスト面のいずれにおいても有利にすることができる。しかも、前記凹部の接続側先端部を排出用パイプに接触又は接触に近い状態に構成しているから、ドレンホースに外力が作用した場合でも、ドレンホースの接続側先端部が外拡がり方向に変形することを回避することができ、ドレンホースが排出用パイプから外れることを長期間に渡って回避することができるドレンホースの接続部構造を提供することができる。また、第1壁部〜第3壁部までの3つの壁部にてシール材を確実に収容保持することができる。
【0017】
請求項2によれば、延出された広い接当面積を有する口縁部にて前述のようにドレンホースに矢印方向に作用する外力Pを確実に受け止めて、ドレンホースの変形をより一層抑制することができる。
【0018】
請求項3によれば、第2壁部のドレンホース外嵌方向の寸法を排出用パイプの長手方向の寸法よりも小さく設定し、第1壁部の内方側端部を排出用パイプに接触又は接触に近い状態に構成することによって、前述のようにドレンホースに外力が作用した場合に、ドレンホースの接続側先端部が外拡がり方向に変形することをより一層回避することができ、より一層信頼性の高いドレンホースの接続部構造を提供することができる。
【0019】
請求項4によれば、第2壁部の第3壁部側端部を径方向外側に突出して第2壁部の他の部位よりも大径となる大径部を形成することによって、排出用パイプにドレンホースの接続側端部を外嵌するに伴い、排出用パイプがシール材を拡径方向に押圧してシール材の接続側端部が大径部側に入り込み、シール材がドレンホースの接続側端部側に移動してドレンホースから外れてしまうことを確実に回避することができ、シール性能を確実に発揮させることができる。
【0020】
請求項5によれば、シール材を凹部内に収容した状態において、シール材の一部が前記大径部に入り込むための突出部をシール材に備えさせることによって、大径部へのシール材の入り込み度合いを大きくすることができ、ドレンホースからシール材が外れてしまうことをより一層確実に回避することができ、より一層信頼性の高いドレンホースの接続部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
ドレンホースを排出用パイプに外嵌した状態を示す一部切り欠き断面図。
【図2】
(イ)はドレンホースを排出用パイプに外嵌する直前の状態を示す説明図、(ロ)はドレンホースを排出用パイプに外嵌した状態を示す説明図。
【図3】
(イ)はドレンホースの要部を示す断面図、(ロ)はドレンホースを排出用パイプに外嵌した状態の要部を示す説明図。
【図4】
別の形状のドレンホースを示し、(イ)はドレンホースを排出用パイプに外嵌する直前の状態を示す説明図、(ロ)はドレンホースを排出用パイプに外嵌した状態を示す説明図。
【図5】
(イ)は図4のドレンホースの要部を示す断面図、(ロ)は図4のドレンホースを排出用パイプに外嵌した状態の要部を示す説明図。
【図6】
図4及び図5で示したシール材の一部断面にした側面図。
【図7】
別の形状のドレンホースを排出用パイプに外嵌した状態を示す説明図。
【図8】
別の形状のドレンホースを示し、(イ)はドレンホースを排出用パイプに外嵌する直前の状態を示す説明図、(ロ)はドレンホースを排出用パイプに外嵌した状態を示す説明図。
【図9】
別の形状のドレンホースを排出用パイプに外嵌した状態を示す説明図。
【図10】
ドレンホースが変形する原理を示す説明図。
【図11】
従来のドレンホースを示し、ドレンホースを排出用パイプに外嵌した状態を示す説明図。
【符号の説明】
1 ドレンパン 2 排出用パイプ
2A テーパー面 3 ドレンホース
4 断熱チューブ 5 ホース本体
5A 凸部 5B 凹部
6,7 接続側端部 6A 第1壁部
6B 第2壁部 6C 第3壁部
6D 口縁部 6E 大径部
6a 内方側端部 6d 内面
6e 空間 8 環状部
9 シール材 9A 一端面
9B 外面 9C 他端面
9F,9G 傾斜面 9T 突出部
10 凹部 20 ドレンホース
21A 第1壁部 21B 第2壁部
21K 開口部 22 シール材
22A 一端 22B 外面
23 収容部 24 ドレンパン
25 排出用パイプ
 
訂正の要旨 ア.特許請求の範囲の請求項1を、
「室内用空調機内に備えるドレンパンにて受ける水滴を該ドレンパンの排出パイプに接続されるドレンホースを介して外部に排出可能に構成し、前記ドレンホースの接続側端部にシール材を収容するための環状の凹部を形成し、その凹部を、前記ドレンホースの接続側端部が径方向外方側に突出され、かつ、前記シール材のホース長手方向の一端面を受け止める受部となる第1壁部と、この第1壁部の外側端部から径方向と直交する方向に延出され、かつ、前記シール材の厚み方向外面を受け止める受部となる第2壁部と、この第2壁部の遊端部から径方向内方側に延出され、かつ、前記シール材のホース長手方向の他端面を受け止める受部となる第3壁部とからなる断面形状ほぼ短形状に構成し、前記凹部に該凹部の形状に合わせたシール材を収容し、前記ドレンホースの接続側端部を前記排出用パイプに外嵌した状態において、前記ドレンホースの接続側先端部を前記排出用パイプに接触又は接触に近い状態に構成したことを特徴とするドレンホースの接続部構造。」
と訂正する。
イ.特許請求の範囲の請求項2を、
「前記第3壁部の径方向内方側端部から径方向と直交する方向に口縁部を延出してなる請求項1記載のドレンホースの接続部構造。」
と訂正する。
ウ.発明の詳細な説明の段落番号0011中、「が、円弧状や台形状等どのような形状にしてもよい」を削除する。
エ.発明の詳細な説明の段落番号0016中、「することができる。」の後に、「また、第1壁部〜第3壁部までの3つの壁部にてシール材を確実に収容保持することができる。」との記載を追加する。
オ.発明の詳細な説明の段落番号0017中、「第1壁部〜第3壁部までの3つの壁部にてシール材を確実に収容保持することができながらも、」を削除する。
異議決定日 2002-11-13 
出願番号 特願平11-35211
審決分類 P 1 651・ 121- YA (F24F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長崎 洋一  
特許庁審判長 青山 紘一
特許庁審判官 櫻井 康平
久保 克彦
登録日 2001-09-14 
登録番号 特許第3231285号(P3231285)
権利者 カナフレックスコーポレーション株式会社
発明の名称 ドレンホースの接続部構造  
代理人 柳野 隆生  
代理人 柳野 隆生  
復代理人 樽本 久幸  
代理人 板谷 康夫  

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