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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1071840
異議申立番号 異議2001-72778  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-07-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-10-09 
確定日 2002-11-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3154980号「シート状化粧料」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3154980号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 理 由
1.手続の経緯
本件特許第3154980号の発明については、平成10年12月28日に出願され、平成13年2月2日にその特許権の設定登録がなされ、その後、林 國治より特許異議の申し立てがなされ、当審により取り消し理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年10月30日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
(i)訂正事項1
特許請求の範囲における請求項1の
「【請求項1】伸縮性を有する基布上に貼付剤組成物層を形成した、連続的に供給される原反シートから、左右一対で顔面に貼着される略L字型の凹部を有する形状であって、顔面に貼着したときの縦方向及び横方向の伸長率を、それぞれ50mm巾の短冊状試料について1ニュートン荷重時に測定した場合に、それぞれの伸長率の比の値が1/4〜4であるシート状化粧料を、シート状化粧料の使用状態を基準にして一方のシートを他方のシートに対して略90°回転させ、互いに凹部に嵌合するようにした状態で、左右一対のシート状化粧料を連続的にカッティングする工程を含む、シート状化粧料の製造方法。」を、
「【請求項1】伸縮性を有する基布上に貼付剤組成物層を形成した、連続的に供給される原反シートから、左右一対で顔面に貼着される略L字型の凹部を有する形状であって、顔面に貼着したときの縦方向及び横方向の伸長率を、それぞれ50mm巾の短冊状試料について1ニュートン荷重時に測定した場合に、縦方向及び横方向の伸長率がそれぞれ2〜30%でありかつそれぞれの伸長率の比の値が1/4〜4であるシート状化粧料を、シート状化粧料の使用状態を基準にして一方のシートを他方のシートに対して略90°回転させ、互いに凹部に嵌合するようにした状態で、左右一対のシート状化粧料を連続的にカッティングする工程を含む、シート状化粧料の製造方法。」
と訂正する。
(ii)訂正事項2
特許請求の範囲における請求頃2を削除し、請求項3を繰り上げて請求項2とするとともに、同項中「請求項1又は2に記載の」を「請求項1に記載の」と訂正する。
(iii)訂正事項3
明細書の段落番号【0004】の第4行「それぞれの伸長率の比の値が」の前に、「縦方向及び横方向の伸長率がそれぞれ2〜30%でありかつ」を加入する。

イ.訂正の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記の訂正事項(i)及び(ii)は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、訂正事項(iii)は上記訂正事項(i)及び(ii)に付随して生じる記載の不備を解消するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
そして、上記の訂正事項は、特許明細書に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
ア.本件発明
特許第3154980号の請求項1及び2に係る発明は、訂正明細書の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】伸縮性を有する基布上に貼付剤組成物層を形成した、連続的に供給される原反シートから、左右一対で顔面に貼着される略L字型の凹部を有する形状であって、顔面に貼着したときの縦方向及び横方向の伸長率を、それぞれ50mm巾の短冊状試料について1ニュートン荷重時に測定した場合に、縦方向及び横方向の伸長率がそれぞれ2〜30%でありかつそれぞれの伸長率の比の値が1/4〜4であるシート状化粧料を、シート状化粧料の使用状態を基準にして一方のシートを他方のシートに対して略90°回転させ、互いに凹部に嵌合するようにした状態で、左右一対のシート状化粧料を連続的にカッティングする工程を含む、シート状化粧料の製造方法。
【請求項2】原反シートが、伸縮性を有する基布上に貼付剤組成物層及び剥離性シートを形成したものである請求項1に記載のシート状化粧料の製造方法。」

イ.申立の理由の概要
特許異議申立人林 國治(以下、「申立人」という。)は、証拠として甲第1号証(特開平3-86806号公報)、甲第2号証(特開平10-16109号公報)、甲第3号証(実用新案登録第3053730号公報)、甲第4号証(特許第2623330号公報)、甲第5号証(特開昭61-201060号公報)及び甲第6号証(実用新案登録第3037460号公報)を提出し、訂正前の本件請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証〜甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、その特許を取り消すべき旨主張する。

ウ.申立人が提出した甲各号証記載の発明
甲第1号証は、「美容、美顔、治療などに用いるための透明で皮膚へのフィット感に優れたシート状パック剤およびその製造方法に関する」もの(甲第1号証第1頁右下欄第13〜15行)であり、そのシート状パック剤は「ゼラチンとアルデヒド類または多価金属イオン化合物とを反応させて得られるゲルからなる支持体層に、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩およびカルボキシビニルポリマーからなる群から選ばれる1種または2種以上のポリマーと、多価金属イオン化合物とを反応させて得られるゲルからなる粘着層が一体的に形成されている」(特許請求の範囲の請求項1)ものであることが記載され、さらに「柔軟性があって突っ張り感がなく、伸び縮みへの追従性があり、収れん性に富んだシート状パック剤」であることが記載(公報第2頁右上欄第7〜10行)されている。
甲第2号証は、ピールオフタイプのシート状パックに用いられるシート状パック用基材に関するもので、その段落【0022】には、「上記シート状パック用基材1は、該基材を用いたシート状パックを皮膚へ貼付する際の皮膚とのなじみ性の向上の観点から、伸縮性を有することが好ましい。この場合、伸縮性が高すぎると被覆の強度が低下して、その剥離性に影響がでるので、伸縮率が100%以下程度の伸縮性であることが好ましい。上記シート状パック用基材1に伸縮性を付与するためには、例えば、上記不織布を構成する繊維として、弾性繊維を用いればよい。そのような弾性繊維としては、例えば、・・・が挙げられる。・・・。なお、上記シート状パック用基材1に伸縮性を付与する場合、その弾性は等方的でもよく、又は特定の方向に異方的であってもよい。」と記載され、段落【0035】には、「上記シート状パックは、その外形状について特に制限はなく、所定の幅のシート状とし、皮膚への貼付時に適宜カットして使用することができる。また、予め、顔全体を覆う全顔パックに滴した形状にカットしておいてもよく、あるいは額、頬、鼻等の部分パックに適する形状にカットしておいてもよい。・・・」と記載されている。
甲第3号証には、「シート基材と、該シート基材の少なくとも一方の面に担持され、クレイ成分を含有するパック組成物とで構成されてなるシート状泥パック」が記載(実用新案登録請求の範囲の請求項1)され、段落【0016】には、「・・・上記透湿性シート基材としては、例えば、綿、麻、羊毛等の天然繊維、ナイロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、・・・等の合成繊維、レーヨン、アセテート等のセルロース繊維等の繊維からなる織布・不織布・編み物等の布等が挙げられる。」と記載され、さらに段落【0017】には、「上記シート基材は、更に柔軟性・伸縮性を有するものも皮膚外面の形状に無理無く沿って皮膚との密着性を高める点から好ましい。・・・」と記載され、段落【0027】には、「なお本例は顔面全体用であるが、別段これに限定されず、顔面の要部、又は・・・、等の意図する部位に適用可能な形状に変形して使用できることはいうまでもない。」と記載されている。
甲第4号証は、経緯共に9%以上の伸縮性を有する経緯伸縮性布帛及びその製造方法に関するもので、その用途として「・・・、或いは各種の薬品をコーティングして使用する伸縮性ある湿布剤ベース基布用布帛として使用できる。」と記載(公報第6頁右欄下から19行〜17行)されている。
甲第5号証は、伸縮性を有する不織布に関するもので、「・・・たてよこの双方に伸縮性を有する不織布を得ることを目的とし、更には、使用時、身体に添付した時、身体の運動によく追従し、常に身体に密着するとともに、薬剤の裏通りがなく、しかも、通気性にもすぐれており、特に、医療用基布に適している不織布を得ることを目的とする。」ものであることが記載(公報第2頁左上欄第8〜13行)されている。
甲第6号証には、「保持体と化粧料からなり、鼻の皮膚に適用されるシート状の鼻用パックにおいて、該パックの上縁部の中央部に凹部が形成されると共に該パックの下縁部の中央部に凸部が形成され、これら凹部と凸部とが互いに嵌合する形状であることを特徴とする鼻用パック」が記載(特許請求の範囲の請求項1)され、段落【0013】には、「・・・、かつラインで製造する際の製品の歩留まりも向上させることのできる鼻用パックを提供する・・・」ことが記載されている。

エ.判断
訂正後の請求項1に係る発明と、甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は、「伸縮性を有する基布上に貼付剤組成物層を形成したシート状化粧料の製造方法」である点で一致するが、前者はそのシート状化粧料が「左右一対で顔面に貼着される略L字型の凹部を有する形状であって、顔面に貼着したときの縦方向及び横方向の伸長率を、それぞれ50mm巾の短冊状試料について1ニュートン荷重時に測定した場合に、縦方向及び横方向の伸長率がそれぞれ2〜30%でありかつそれぞれの伸長率の比の値が1/4〜4であるシート状化粧料」であるのに対して、後者のシ-ト状化粧料は「美容、美顔・・・に用いる」(上記3.ウ.)ための「柔軟性があって突っ張り感がなく、伸び縮みへの追従性があり、収れん性に富んだシート状パック剤」(上記3.ウ.)と記載されるに止まる点(相違点1)、及び前者が、「伸縮性を有する基布上に貼付剤組成物層を形成した、連続的に供給される原反シートから、・・・シート状化粧料の使用状態を基準にして一方のシートを他方のシートに対して略90°回転させ、互いに凹部に嵌合するようにした状態で、左右一対のシート状化粧料を連続的にカッティングする工程を含む、シート状化粧料の製造方法。」であるのに対して、後者においては、伸縮性を有する支持体層(前者における基布に相当)上に粘着剤層(前者における貼付剤組成物層に相当)を一体的に形成するシート状化粧料の製造方法を記載するに止まる点(相違点2)で相違する。
そこで、これらの相違点について検討する。
申立人は、相違点1について、「特定の縦横の伸長率の比を有するシート状化粧料」自体には何等特徴はないと主張し、同じようなシート状化粧料については、甲第2及び3号証にも開示されていると主張する。
甲第1号証には、特定のゲルからなる支持体上に他の特定のゲルからなる粘着層を一体的に形成したシート状化粧料が、突っ張り感がなく、伸び縮みへの追従性があることは記載されているが、そのシート状化粧料がどのような縦方向及び横方向の伸長率及びそれら伸長率の比を有するものであるかは記載されていない。この点について、甲第2号証には、皮膚とのなじみ性の向上の観点から、伸縮性を有することが好ましく、伸縮率は100%以下程度の伸縮性であることが好ましいこと、その弾性は等方的でもよく、特定の方向に異方的でもよいことが記載され、そのような基材の具体例として不織布が記載されており、甲第3号証にも同様な基布又は基材として不織布が記載されている。
前者、すなわち訂正後の請求項1に係る発明において用いられる基布も、具体的には、通常の製法による不織布が用いられているのであるから、甲第1号証における基布に代えて、甲第2及び3号証において、シート状化粧料用の伸縮性のある基布として同様な効果を奏することが知られているもの(不織布については甲第4号証及び甲第5号証にも開示されている。)のなかから、前者の縦方向及び横方向の伸長率及びそれら伸長率の比を有するものを選択することは、前者におけるこれらの広範な数値範囲を考慮すれば、当業者が適宜なし得るものであって、そこに格別の困難性は認められない。
つぎに、相違点2について検討する。
前者において採用されている原反シートのカッティング法、すなわち、「シート状化粧料の使用状態を基準にして一方のシートを他方のシートに対して略90°回転させ、互いに凹部に嵌合するようにした状態で、左右一対のシート状化粧料を連続的にカッティングする」ことについては、後者及び甲第2〜6号証には何も記載するところがない。
この点について申立人は、特許異議申立書において、「甲第6号証には、種々の形状の鼻に、鼻尖も含めて容易にフィットさせることができる鼻用パックが記載されており、その鼻用パックは該パックの上縁部の中央部に凹部が形成されると共に該パックの下縁部の中央部に凸部が形成され、これら凹部と凸部とが互いに嵌合する形状であることが記載されている(同号証、実用新案登録請求の範囲)。」とし、このような形状であることから、「原反廃棄率を低くし、製品の歩留まりを向上させる点が記載されている(同号証、段落【0023】・・・)。すなわち、甲第6号証には、シート状化粧料製造におけるカッティングに際して、廃棄部分が最も少なくなるようにカッティングすることが具体的に記載されて」いるので、「かかる考え方をごくあたりまえに応用し、既に公知である略L字型形状のシート状化粧料を製造する際に、廃棄率を少なくするために凹部に嵌合するようにその嵌合角度を適宜調製することは、当業者が当然なし得る技術でしかない。」と主張するが、単に歩留まりの向上のみを企図するのであれば、略90°回転させるのではなく、同じ向きのものを略180°回転させる(例えば、本件特許明細書の図3(B)に示される)ほうがより廃棄部分は少なくできるのであるから、前者におけるような「シート状化粧料の使用状態を基準にして一方のシートを他方のシートに対して略90°回転させ、互いに凹部に嵌合するようにした状態で、左右一対のシート状化粧料を連続的にカッティングする」ことを甲第6号証の記載から当業者が容易に想到することはできないものである。
そして、前者、すなわち本件請求項1に係る発明は、上記のような構成を採用することにより、原反シートの積層工程、カッティング工程、包装工程、熟成工程等を連続的に行うことができ、作業効率が向上する、などの本件特許明細書に記載された顕著な効果を奏するものである。
したがって、請求項1に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をし得なかったものであり、申立人の主張は採用できない。
なお、申立人は、平成14年4月15日付の上申書を提出し、参考資料1(特開平10-316557号公報)に開示される剥離ライナー付き貼付剤は、本件特許にいう「シート状化粧料の使用状態を基準にして一方のシートを他方のシートに対して略90°回転させ、互いに凹部に嵌合するようにした状態で左右一対のシート状化粧料を連続的にカッティングする」ものとなっていると主張するが、申立人の主張と異なり、参考資料1に記載されているのは、上で述べたような、同じ向きのものを180°回転させたものの例にすぎず、申立人のこの主張も採用できない。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明を更に技術的に限定するものであるから、上記と同様の理由で、甲第1号証〜甲第6号証に記載された発明から、当業者が容易に発明をし得なかったものであり、申立人の主張は採用できない。

オ.むすび
したがって、本件特許は、特許異議申立ての理由及び証拠によっては取り消すことができない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
シート状化粧料
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 伸縮性を有する基布上に貼付剤組成物層を形成した、連続的に供給される原反シートから、左右一対で顔面に貼着される略L字型の凹部を有する形状であって、顔面に貼着したときの縦方向及び横方向の伸長率を、それぞれ50mm巾の短冊状試料について1ニュートン荷重時に測定した場合に、縦方向及び横方向の伸長率がそれぞれ2〜30%でありかつそれぞれの伸長率の比の値が1/4〜4であるシート状化粧料を、シート状化粧料の使用状態を基準にして一方のシートを他方のシートに対して略90°回転させ、互いに凹部に嵌合するようにした状態で、左右一対のシート状化粧料を連続的にカッティングする工程を含む、シート状化粧料の製造方法。
【請求項2】 原反シートが、伸縮性を有する基布上に貼付剤組成物層及び剥離性シートを形成したものである請求項1に記載のシート状化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、目元ケア用等の目的で顔面に貼着して使用されるシート状化粧料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
顔面に貼着される、伸縮性を有する不織布等の基布上に美白成分や保湿剤等を含有する貼付剤組成物層を形成したシート状化粧料が種々提案されている。例えば、目元部分への使用を意図した略L字型の凹部を有する形状をしたものが知られている。これらのシート状化粧料は、皮膚のかさつき、小じわやくま、くすみ等を改善する目的で使用されるが、顔面は身体の他の部分に比べて複雑な凹凸を有し多様な動きをするので、貼着する際の装着感は必ずしも充分なものではなく、また使用時につっぱり感等の違和感を与える場合があった。特に、左右のシートで伸縮の仕方が異なる場合には、違和感は一層大きいものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、顔面に貼着する際のフィット性を向上させるとともに、使用時につっぱり感等の違和感がなく、特に左右一対で使用する場合にそれらの間での使用感の差が少ないシート状化粧料、ならびに原材料の無駄をなくし効率よく該シート状化粧料を製造する方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明では、伸縮性を有する基布と貼付剤組成物とからなるシート状化粧料において、該シート状化粧料が左右一対で顔面に貼着される形状であって、顔面に貼着したときの縦方向及び横方向の伸長率を、それぞれ50mm巾の短冊状試料について1ニュートン荷重時に測定した場合に、縦方向及び横方向の伸長率がそれぞれ2〜30%でありかつそれぞれの伸長率の比の値が1/4〜4となるようにシート状化粧料を構成する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明では、シート状化粧料の基布を構成する材料として伸縮性を有する材料を使用する。この基布を構成する材料としては、基布上に含浸又は塗布等により貼付剤組成物層を形成して得られるシート状化粧料が、上記特定の縦方向と横方向の伸長率の比が上記特定の値を有するものであれば特に制限はない。例えば、ネルやスフモフのような編物、織物、種々の不織布類、紙、プラスチック等いずれも使用することができる。
【0006】
基布を構成する好ましい材料としては、伸縮性を有する不織布が挙げられる。不織布の素材は特に限定されないが、熱可塑性繊維単独または熱可塑性繊維と非熱可塑性繊維の混紡であることが望ましい。
熱可塑性繊維としては、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリビニルアルコール繊維などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上混合して用いられる。非熱可塑性繊維としては、レーヨン、キュポラ、麻、絹などが挙げられる。
これらの繊維を用いて不織布を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、熱収縮率の異なる2種の樹脂を組み合せた繊維を、ニードルパンチ法、水流交絡法などにより交絡一体化し、加熱処理により熱収縮を起こさせて伸縮性とする方法がある。
【0007】
なかでも、熱収縮率の異なる2種の樹脂を組み合せた熱収縮性繊維を水流交絡法により一体化し、加熱により熱収縮させて伸縮性を付与した不織布は、本発明のシート状化粧料に必要な伸長性を有するとともに、毛羽立ちもなく、適度な厚さで貼付剤組成物層(ゲル)形成時及び保存時のゲルのしみ出しを抑制することができるので特に好ましい。
基布として使用する不織布としては、通常は目付が60〜200g/m2程度、好ましくは70〜110g/m2のものを使用する。不織布の目付が小さいものは貼付剤組成物層がしみ出すおそれがあり、一方目付が大きすぎると顔面に貼着した際に厚ぼったなり、うっとうしい感触を与える。
【0008】
従来のシート状化粧料は、通常、伸縮性を有さない材料により構成された基布が使用されており、顔面に貼着した場合に、顔面につっぱり感などの違和感を生じる。
また、伸縮性を有する基布を使用したシート状化粧料においても、縦方向及び横方向の伸長率に差異のあるものが使用されており、顔面に貼着した際に伸縮性に差異があることから違和感を与える。ここで、縦横の伸長率の差は、原反シートの移動方向とそれと直交する方向とで生じやすい。
例えば、左右一対で顔面に貼着されるシート状化粧料を製造するにあたって、原反シートを構成する材料の無駄を少なくし、しかも作業効率を高めるには、後述の図3(A)に示すカッティング工程を採用することが好ましい。この場合、得られる左用シート2と右用シート3は、図2にみられるように斜線部を横方向下として顔面に貼着されるが、左用シートと右用シートでは原反シートにおける縦、横方向の関係が逆になる。したがって、原反シートを基準として、図中に矢印で示したシートの移動方向を縦方向、これに直交する方向を横方向とした場合に、原反シートでみた伸長率の比が縦方向/横方向=1/5のときに、左用シートの伸長率の比は縦方向/横方向=1/5であるが、右用シートの伸長率の比は縦方向/横方向=5となるので、左右の使用感に差異が生じ違和感を与える。
これに対して、本発明では、シート状化粧料を顔面に貼着したときの縦方向及び横方向の伸長率を、それぞれ50mm巾の短冊状試料について1ニュートン荷重時に測定した場合に、それぞれの伸長率の比の値が1/4〜4、好ましくは1/3〜3とすることによって、シート状化粧料の両方向における伸縮性の差を小さくし、顔面に貼着する際のフィット性を向上させるとともに、使用時の違和感を解消することができる。
【0009】
特に、シート状化粧料を顔面に貼着したときの縦方向及び横方向の伸長率がそれぞれ2〜30%となるようにシート状化粧料を構成した場合には、シート状化粧料に適度の伸縮性を持たせて貼着時のフィット性と使用感をさらに改善できる。
【0010】
伸縮性基布上に膏体部を有する公知の伸縮性貼付剤(例えば、特開平3-161431号公報)は、本発明のシート状化粧料とは異なり、肘、膝などの関節部に鎮痛、消炎などの治療目的で適用される。これらは、特定方向への伸縮性がきわめて高く、また腕や脚の動きにより大きな荷重のかかる部位に貼着されるものであり、本発明のシート状化粧料とは全く異なる伸縮の仕方をするものである。
これに対して、本発明のシート状化粧料はスキンケア等の目的で顔面に貼着するものであり、シート状化粧料を顔面に貼着したときの縦方向及び横方向の伸長率の比を特定のものとすることによって、はじめて所期の目的を達成することができるものである。
【0011】
以下、この点について図面に基づいてさらに説明する。
図1は、本発明のシート状化粧料における縦方向の伸長率と横方向の伸長率について示す図である。
図1において、縦軸はシート状化粧料を顔面に貼着する際に縦となる方向への伸長率(%)を表し、横軸は同じく横方向への伸長率(%)を表す。それぞれの伸長率は、下記に示すように50mm巾の短冊状試料について1N荷重にて測定したものを標準とする。また、A線は縦伸長率/横伸長率=4、B線は縦伸長率/横伸長率=1、そしてC線は縦伸長率/横伸長率=1/4を表すものである。本発明のシート状化粧料は、図1においてA線及びC線ではさまれた範囲内の縦、横方向の伸長率の関係を有するものであり、特に斜線で示される範囲内のものが好ましい。
【0012】
本発明において、シート状化粧料の伸長率は、つぎのようにして測定する。
(測定方法)
シート状化粧料を構成する原反シートから巾50mm、長さ200mmの長方形試験片をカットし、剥離シートを剥がした状態で、温度20℃で抗張力試験機(テンシロン)を用いて伸長率を測定する。シート状化粧料の縦方向の伸長率を測定する試験片は、シート状化粧料を顔面に貼着する際に、縦方向となる辺が試験片の長辺(200mm)となるように、原反シートからカットする。また、シート状化粧料の横方向の伸長率を測定する試験片は、上記縦方向となる試験片と90°角度を変えて、シート状化粧料を顔面に貼着する際に、横方向となる辺が試験片の長辺となるように、原反シートからカットする。このようにして形成した試験片の長辺の両端を、測定部の長さ(試長)が150mmとなるようにチャックで挟み、引張り速度300mm/分で引き伸ばして1N荷重時の試長(mm)を測定し、縦、横方向の伸長率をそれぞれ次式によって算出する。
伸長率(%)=(1N荷重時の試長-150)÷150×100
実際のシート状粧料製品からサンプリングするような場合、上記50mm×200mmの試験片が採取できないことがある。その場合は、可能な範囲で短冊状試料を切り出して、各々のサンプル巾及び試長(チャック間距離)に応じた測定時荷重(50mmあたり1Nに対応する荷重)及び引張り速度(伸長速度200%/分)にて測定する。
【0013】
図2は、本発明のシート状化粧料の1例の使用状態を示す図である。
この略L字型の凹部を有する形状のシート状化粧料1は、左用シート2と右用シート3の一対で構成されており、例えば図2にみられるように目の下から目尻周辺部にかけて貼着される。顔面への貼着に際しては、片側のシート2又は3を両手又は片手で持つが、両手で持った場合にシート2又は3にかかる荷重(引張り力)は通常1N程度である。本発明では、シート状化粧料の横方向の伸長率と縦方向の伸長率の比を1/4〜4、好ましくは1/3〜3とすることによって、シート状化粧料の両方向における伸縮性の差を小さくし、顔面に貼着する際のフィット性を向上させるとともに、使用時の違和感を解消するものである。両方向の伸長率の比は、できるだけ1に近くなるように、すなわち図1におけるB線に近づくようにすることが好ましい。
【0014】
また本発明では、50mm巾のシート状化粧料の1N荷重時の縦方向及び横方向の伸長率を2〜30%とするのが好ましい。顔面は、身体の他の部分にはみられない複雑な凹凸を有し、多様な動きをするとともにきわめて敏感である。シート状化粧料の1N荷重時の縦方向及び横方向の伸長率を上記の範囲にした場合に、貼着時のフィット性、密着性がよく、また伸びすぎず、貼着中につっぱり感などの違和感を生じさせず、使用後も顔面からはがし易い。また、シート状化粧料を製造する際にも、シート状化粧料の積層工程、カッティング工程、熟成工程等での作業性が向上するとともに、カッティング後に基布、貼付剤組成物層及び剥離性シート層のずれをほとんど生じない。
【0015】
図3は、図2のシート状化粧料のカッティング工程を説明する図である。図3の(A)は本発明の好ましいカッティング工程を示す図であり、(B)は対照例を示す図である。
図3において符号1、11は左右一対のシート状化粧料、符号2、12は左用シート、符号3、13は右用シート、そして符号4、14はシート状化粧料を構成する原反シートを表し、また矢印は原反シートの移動方向を表す。これらのシート状化粧料は、使用時には斜線部を横方向下として顔面に貼着される。
【0016】
図3の(A)では、シート状化粧料1は、基布上に貼付剤組成物層を形成した原反シート4から、図2にみられるようなシート状化粧料1の使用状態を基準にして左用シート2を右用シート3に対して略90°回転させ、互いにL字型の凹部に嵌合するようにした状態でカッティングされる。
シート状化粧料は、通常カッティングした左用シート2及び右用シート3を1枚ずつ対として小袋に入れた状態で架橋、熟成させるが、図3の(A)の状態で各シートをカッティングした場合には、隣接する左用シート2及び右用シート3を原反シートの移動方向に沿って順次小袋中に包装することが可能となり、原反シートの積層工程、カッティング工程、包装工程、熟成工程等を連続的に行うことができ、作業効率が向上する。
【0017】
これに対して、図3の(B)の状態でシート状化粧料11をカッティングした場合には、カッティングした左右一対のシートを小袋中に包装するには、原反シート14の上側に位置する左用シート12と右用シート13を一対とし、原反シート14の下側に位置する左用シート12と右用シート13を一対として包装することが必要となるので、カッティング工程から包装工程にかけての作業が複雑なものとなり、作業効率が著しく低下する。
したがって、原反シートを構成する材料の無駄を少なくし、しかも作業効率を高めるには、図3の(A)のカッティング工程を採用することが好ましい。
【0018】
伸縮性を有する基布を使用して、シート状化粧料の原反シートを構成した場合には、上記のカッティング工程で矢印で示した原反シートの移動方向に張力がかかるために、後の架橋、熟成工程で原反シートの移動方向に収縮変形しようとする。本発明のシート状化粧料では、シート状化粧料の横方向の伸長率と縦方向の伸長率の比や伸長率を特定の範囲とすることによって、この収縮変形をきわめて小さくすることができ、架橋、熟成後の左右のシートの形状にほとんど差のないシート状化粧料を得ることができる。したがって、シート状化粧料の外観が良好で商品価値は低下せず、しかも顔面への貼着時のフィット性や使用感等が優れたものとなる。
【0019】
本発明で基布上に含浸又は塗布する貼付剤組成物には特に制はなく、例えばカオリン、タルク、ベントナイト、二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機粉体を賦形剤とし、これに水溶性高分子化合物:グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の保湿剤:水及び美肌成分やその他の薬効成分、油剤成分等を加え練合して得られるペースト状の膏体等、通常のものが用いられる。
【0020】
本発明のシート状化粧料は、上記成分を混合して得た貼付剤組成物を不織布等の基布上に含浸又は塗布し、更に必要に応じてフェイシング(剥離性シート)を施す方法、又は剥離性シート上に貼付剤組成物を塗布し、不織布を併せる方法等により構成した原反を、所定の寸法にカットすることによって製造することができる。ここに剥離性シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等のプラスチックフイルムを用いることができる。
【0021】
本発明のシート状化粧料を、左右一対で顔面に貼着するタイプのものとする場合は、図2のようなそら豆型、図3のようなL字型、その他、水滴様、半月様の形状等とするのが好ましい。このような形状を採用した場合には、シートの目の下から目尻周辺部にかけてのフィット性が向上するので好ましい。また、本発明のシート状化粧料は、目元ケア用としてのみならず鼻唇溝等にも適用することができる。
【0022】
本発明のシート状化粧料は、通常は洗顔後に必要に応じ化粧水で肌を整えた後に、15分〜1時間程度顔面に貼着して使用する。また、就寝時に本発明のシート状化粧料を顔面に貼着し、起床時に剥離するようにしてもよい。
本発明のシート状化粧料を顔面に貼着することによって、乾燥などによる皮膚のかさつき、小じわやくま、くすみなどを改善し、顔面にうるおいとハリを集中して与えることができる。
【0023】
【実施例】
以下の例では、次に示す処方及び製法により貼付剤組成物を調製した。
<貼付剤組成物の製法>

【0024】
<貼付剤組成物の製法>
ニーダーを使用し、上記成分1)、4)、5)、6)及び10)の一部を均一に混合し、成分2)、3)及び7)を添加後均一に練合し、成分8)、9)及び10)の残部を加え、さらに均一に練合することにより、貼付剤組成物を製造した。
【0025】
(実施例1〜4、比較例1〜4)
上記の組成物をポリエステル製剥離フイルム上に塗布し、不織布を上からかぶせ、熟成後に図3(A)に示す形状にカットした。不織布として表1に記載の製法、組成ならびに性状のものを用い、表2に記載の伸長率を示す略L字型の形状を有するシート状化粧料を得た。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
得られた各シート状化粧料の伸長特性を図示すると、図4のとおりとなる。図4において、斜線部は本発明のシート状化粧料の範囲を示し、A線、B線、C線は図1と同じ意味を有する。
また、各シート状化粧料の性状は、次のようにして評価した。
(使用評価)
20〜35才の日本人女性20人をパネラーとして、各シート状化粧料を図2のように使用したときの密着性、違和感の無さをパネルテストにより評価した。それぞれ優れたものを○、やや劣るものを△、劣るものを×とする3段階で評価し、その平均値を表2に記載した。
(製造評価)
また、製造に関して、製造後のシート状化粧料層と剥離シート層のずれについても評価した。問題の無い場合を○、ややずれを生じる場合を△、大きくずれが生じる場合を×とする3段階で評価し、その結果を表2に記載した。
【0029】
これらの結果によれば、実施例1〜4の本発明のシート状化粧料は、顔面に貼着したときの密着性も良好で違和感の無いものであった。また、製造時にシートを構成する各材料のずれも生じなかった。
【0030】
【発明の効果】
本発明のシート状化粧料は、顔面に貼着した際のフィット性に優れるとともに、顔面への密着性が良好でつっぱり感などの違和感がなく、使用後のはがれ性にも優れるとともに、左右のシートの形状及び使用感にほとんど差を生じない。また、本発明のシート状化粧料の製造方法によれば、シート状化粧料を構成する材料の無駄を防止するとともに、シート状化粧料製造時の積層工程、カッティング工程、熟成工程等での作業性も良好であり、カッティング後に基布、貼付剤組成物層及び剥離シート層のずれや変形等も生じない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のシート状化粧料における縦方向の伸長率と横方向の伸長率について示す図である。
【図2】
本発明のシート状化粧料の1例を示すもので、シート状化粧料の使用状態を示す図である。
【図3】
本発明のシート状化粧料を原反シートからカッティングする工程を説明する図である。
【図4】
実施例及び比較例のシート状化粧料の伸長特性を示す図である。
【符号の説明】
1、11 シート状化粧料
2、12 左用シート
3、13 右用シート
4、14 原反シート
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(i)訂正事項1
特許請求の範囲における請求項1の
「【請求項1】伸縮性を有する基布上に貼付剤組成物層を形成した、連続的に供給される原反シートから、左右一対で顔面に貼着される略L字型の凹部を有する形状であって、顔面に貼着したときの縦方向及び横方向の伸長率を、それぞれ50mm巾の短冊状試料について1ニュートン荷重時に測定した場合に、それぞれの伸長率の比の値が1/4〜4であるシート状化粧料を、シート状化粧料の使用状態を基準にして一方のシートを他方のシートに対して略90°回転させ、互いに凹部に嵌合するようにした状態で、左右一対のシート状化粧料を連続的にカッティングする工程を含む、シート状化粧料の製造方法。」を、
「 【請求項1】伸縮性を有する基布上に貼付剤組成物層を形成した、連続的に供給される原反シートから、左右一対で顔面に貼着される略L字型の凹部を有する形状であって、顔面に貼着したときの縦方向及び横方向の伸長率を、それぞれ50mm巾の短冊状試料について1ニュートン荷重時に測定した場合に、縦方向及び横方向の伸長率がそれぞれ2〜30%でありかつそれぞれの伸長率の比の値が1/4〜4であるシート状化粧料を、シート状化粧料の使用状態を基準にして一方のシートを他方のシートに対して略90°回転させ、互いに凹部に嵌合するようにした状態で、左右一対のシート状化粧料を連続的にカッティングする工程を含む、シート状化粧料の製造方法。」
と訂正する。
(ii)訂正事項2
特許請求の範囲における請求頃2を削除し、請求項3を繰り上げて請求項2とするとともに、同項中「請求項1又は2に記載の」を「請求項1に記載の」と訂正する。
(iii)訂正事項3
明細書の段落番号【0004】の第4行「それぞれの伸長率の比の値が」の前に、「縦方向及び横方向の伸長率がそれぞれ2〜30%でありかつ」を加入する。
異議決定日 2002-11-07 
出願番号 特願平10-373059
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田村 聖子  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 小柳 正之
深津 弘
登録日 2001-02-02 
登録番号 特許第3154980号(P3154980)
権利者 花王株式会社
発明の名称 シート状化粧料  
代理人 芳村 武彦  
代理人 草間 攻  
代理人 芳村 武彦  

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