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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H04R
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04R
管理番号 1071891
異議申立番号 異議2002-72380  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-01-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-02 
確定日 2003-02-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第3270016号「表面実装用圧電型発音体及び圧電発音体の製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3270016号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 第1 【本件発明】
特許第3270016号(出願日が平成4年12月10日である実願平4-85051号の一部を平成11年1月25日に新たな実用新案登録出願とした実願平11-265号を平成11年2月3日に特許出願に変更した出願、平成14年1月18日設定登録。)の請求項1、2に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 振動板(3a)に圧電素子(3b)が設けられた圧電振動子(3)がケーシング(2)の内部に収納されている表面実装用圧電型発音体であって、
前記ケーシング(2)は、放音孔(8)、振動板(3a)及び圧電素子(3b)を有する筒体(6)と、該筒体(6)と組み合わされる底板(7)とから構成され、
前記ケーシングの外部には一対の半田接続用端子(5,5)が設けられ、
前記ケーシングの内部には、一端が前記振動板(3a)と接触し他端が前記一対の半田接続用端子(5,5)の一方に接続された第1の接触子(4)及び一端が前記圧電素子(3b)と接触し他端が前記一対の半田接続用端子(5,5)の他方に接続された第2の接触子(4)が配置され、
前記一対の半田接続用端子(5,5)と前記第1及び第2の接触子(4,4)とを連結する連結部分が前記筒体(6)と前記底板(7)との間に挟持され、
前記半田接続用端子(5,5)と前記連結部分とで前記底板(7)の周縁部の一部を挟んでいることを特徴とする表面実装用圧電型発音体。
【請求項2】 振動板(3a)に圧電素子(3b)が設けられた圧電振動子(3)がケーシング(2)の内部に収納されている圧電型発音体の製造方法であって、
前記ケーシング(2)は、放音孔(8)、振動板(3a)及び圧電素子(3b)を有する筒体(6)と、該筒体(6)と組み合わされる底板(7)とから構成され、
前記ケーシングの外部には一対の半田接続用端子(5,5)が設けられ、
前記ケーシングの内部には、一端が前記振動板(3a)と接触し他端が前記一対の半田接続用端子(5,5)の一方に接続された第1の接触子(4)及び一端が前記圧電素子(3b)と接触し他端が前記一対の半田接続用端子(5,5)の他方に接続された第2の接触子(4)が配置され、
前記一対の半田接続用端子(5,5)と前記第1及び第2の接触子(4,4)とを連結する連結部分が前記筒体(6)と前記底板(7)との間に挟持され、
前記半田接続用端子(5,5)と前記連結部分とが、前記底板(7)の周縁部の一部を挟む構造を構成しており、
前記半田接続用端子(5,5)と前記連結部分とで前記底板(7)の周縁部の一部を挟んだ状態で、前記底板に前記筒体を組み合わせることを特徴とする圧電発音体の製造方法。」

第2 【申立ての理由の概要】
申立人雨山範子は、証拠として甲第1号証:特開平2-215300号公報、甲第2号証:実願昭59-104323号(実開昭61-21199号公報)のマイクロフィルムを提出し、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証に記載された発明から容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、本件請求項2に係る発明の記載は不明瞭であるから、特許法第36条第6項に規定により特許を受けることができないものであり、取り消されるべき旨主張している。

第3 【甲各号証記載の発明】
1 甲第1号証には、「圧電発音体」(発明の名称)に関し、図面と共に次のとおりの記載がある。
「従来この種の圧電発音体は、第2図に示すように、樹脂ケース本体2と樹脂ケース裏蓋4とで形成された樹脂ケース内に収納された圧電振動板1と、樹脂ケース裏蓋4の取付け穴6に貫通保持させた金属端子5とから構成されていた。そして金属端子5の平板部5cの2箇所に形成した舌片5aを樹脂ケース裏蓋4の取付け穴6に固定し、接触部5bを圧電振動板1に接触させている。また接触部5bを通じて圧電振動板1に通電し、その音は放音孔3から放射するようになっていた。」(公報1頁左下欄18行ないし同頁右下欄7行)
2 甲第2号証には、「圧電発音体」(考案の名称)に関し、図面と共に次のとおりの記載がある。
「第2図は、本考案の一実施例を示す断面図、第3図は同じく半断面斜視図である。
圧電板2を貼り付けた金属振動板3は、共鳴室6を形成するケース5に固着して挟持する。そして振動板3と一体形成された一方のリード電極10をケースの外部に取り出し、ケースの外周に沿って折り曲げ、更に底面に沿って内方向へ折り曲げ固着する。この固着は接着剤又はケース5自体の樹脂の外周部のみの溶融による固着などを採用すると好適である。他方のリード電極は11は、ケース5の内部で圧電体2の他方の面と固着され、ケース5の外部で電極10と同様にケース5の外周に沿って折り曲げて底面まで延在させ固着されている。」(明細書3頁19行ないし4頁12行)

第4 【特許異議の申立てについての判断】
1 [本件請求項1に係る発明について]
(1)本件請求項1に係る発明は、特許明細書の記載によれば、従来は、表面実装される圧電型発音体はほとんどなく、また従来の構造では、圧電振動子に対してリード線を半田付けしなければならず、製造が面倒であったという問題点に鑑み、製造が容易な表面実装用圧電型発音体を提供することを目的として(特許明細書の【発明が解決しようとする課題】欄の記載参照)、本件請求項1に記載の構成、特に「前記一対の半田接続用端子(5,5)と前記第1及び第2の接触子(4,4)とを連結する連結部分が前記筒体(6)と前記底板(7)との間に挟持され、前記半田接続用端子(5,5)と前記連結部分とで前記底板(7)の周縁部の一部を挟んでいる」点の構成を採用したものであり、それによって、半田接続用端子と圧電振動子との電気的な接続に半田付けを用いる必要がなくなるため、製造が容易になり、特に、半田接続用端子と連結部分との間で底板の周縁部を挟む構造にしているので、製品の組立の際に端子を底板に仮固定することができ、製品の組立が容易になる利点があるものといえる(特許明細書の段落【0006】の記載参照)。
(2)これに対して、甲第1号証には、樹脂ケース本体2と樹脂ケース裏蓋4とで形成された樹脂ケース内に収納された圧電振動板1と、樹脂ケース裏蓋4の取付け穴6に貫通保持させた金属端子5とから構成されており、そして金属端子5の平板部5cの2箇所に形成した舌片5aを樹脂ケース裏蓋4の取付け穴6に固定し、接触部5bを圧電振動板1に接触させ、また接触部5bを通じて圧電振動板1に通電し、その音は放音孔3から放射することが記載されている(甲第1号証の上記記載参照)。
これらの記載によれば、本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載の発明とは、「振動板(3a)に圧電素子(3b)が設けられた圧電振動子(3)がケーシング(2)の内部に収納されている表面実装用圧電型発音体であって、前記ケーシング(2)は、放音孔(8)、振動板(3a)及び圧電素子(3b)を有する筒体(6)と、該筒体(6)と組み合わされる底板(7)とから構成され、前記ケーシングの外部には一対の半田接続用端子(5,5)が設けられ、前記ケーシングの内部には、一端が前記振動板(3a)と接触し他端が前記一対の半田接続用端子(5,5)の一方に接続された第1の接触子(4)及び一端が前記圧電素子(3b)と接触し他端が前記一対の半田接続用端子(5,5)の他方に接続された第2の接触子(4)が配置され」ている点で一致しているといえる。
しかしながら、甲第1号証に記載の発明は、金属端子5と接触部5bとを連結する部分は有するとしても、その連結する部分は、樹脂ケース裏蓋4の取付け穴6に貫通保持されるものであり、その連結する部分を、樹脂ケース本体2と樹脂ケース裏蓋4との間に挟持し、金属端子5とその連結する部分とで樹脂ケース裏蓋4の周縁部の一部を挟んで構成することは全く予定しておらず、示唆もない。すなわち、本件請求項1に係る発明の上記(1)で摘示した点の構成については何も記載がなく、示唆もない。
(3)また、甲第2号証には、圧電板2を貼り付けた金属振動板3は、共鳴室6を形成するケース5に固着して挟持し、そして振動板3と一体形成された一方のリード電極10をケースの外部に取り出し、ケースの外周に沿って折り曲げ、更に底面に沿って内方向へ折り曲げ固着することは記載されている(甲第2号の上記記載参照)。
しかしながら、甲第2号証に記載の発明は、接触子を有しておらず、本件請求項1に係る発明の圧電型発音体とは、その前提を異にしており、本件請求項1に係る発明でいう「前記一対の半田接続用端子(5,5)と前記第1及び第2の接触子(4,4)とを連結する連結部分」が存在せず、よって、「連結部分が前記筒体(6)と前記底板(7)との間に挟持され、前記半田接続用端子(5,5)と前記連結部分とで前記底板(7)の周縁部の一部を挟んでいる」点の構成も有していないといえる。すなわち、甲第2号証にも、本件請求項1に係る発明の上記(1)で摘示した点の構成については何も記載がなく、示唆もない。
(4)以上のように、上記甲各号証のいずれにも、本件請求項1に係る発明の上記(1)で摘示した点の構成については何も記載がなく、示唆もないのであるから、上記甲各号証を組み合わせても本件請求項1に係る発明が容易になし得るとはいえない。
そして、本件請求項1に係る発明は、上記(1)で摘示した点の構成を採用することによって、「半田接続用端子と圧電振動子との電気的な接続に半田付けを用いる必要がなくなるため、製造が容易になる。特に本発明では、半田接続用端子と連結部分との間で底板の周縁部の一部を挟む構造にしているので、製品の組立の際に端子を底板に仮固定することができ、製品の組立が容易になる利点がある。」(特許明細書の【発明の効果】の欄の記載)の明細書に記載の顕著な効果を奏するものと認められる。

2 [本件請求項2に係る発明について]
申立人は、本件請求項2に記載の「前記半田接続用端子(5,5)と前記連結部分とで前記底板(7)の周縁部の一部を挟んだ状態で、前記底板に前記筒体を組み合わせる」点は、本件出願当初の平成11年1月25日提出の実用新案登録願には、その段落【0006】に、「一対の接触子4,4の基部は、筒体6の周壁部6aの開口部側端面と底板7との間に挟持された状態になっていて、底板7に支持されている。そして半田接続用端子5は、底板7の外面に沿って折返されてその下面に沿って定着している。」と記載されているのみであり、また、発明の効果欄の「特に本発明では、半田接続用端子と連結部分との間で底板の周縁部の一部を挟む構造にしているので、製品の組立の際に端子を底板に仮固定することができ、製品の組立が容易になる利点がある。」の点についても、本件出願当初の平成11年1月25日提出の実用新案登録願に何ら記載されてなく、これら補正の根拠が共に不明瞭であり、記載が不備である旨主張しているので以下に検討する。
申立人も上記主張で摘示しているように平成11年1月25日提出の実用新案登録出願の明細書の段落【0006】には、「一対の接触子4,4の基部は、筒体6の周壁部6aの開口部側端面と底板7との間に挟持された状態になっていて、底板7に支持されている。そして半田接続用端子5は、底板7の外面に沿って折返されてその下面に沿って定着している。」と記載されており、これらの記載や図面を参酌すれば、圧電型発音体1において、その筒体6と底板7とを組み合わせてケーシング2を構成する際には、その半田接続用端子(5,5)と連結部分とで底板(7)の周縁部を挟んだ状態で組み合わせることが自然であり、また、そのように組み合わせることによって半田接続用端子(5,5)を底板(7)に仮固定することができ、製品の組立が容易になることも理解できる。してみると、本件請求項2に記載の「前記半田接続用端子(5,5)と前記連結部分とで前記底板(7)の周縁部の一部を挟んだ状態で、前記底板に前記筒体を組み合わせる」点の構成、および特許明細書の発明の効果欄に記載の「半田接続用端子と連結部分との間で底板の周縁部の一部を挟む構造にしているので、製品の組立の際に端子を底板に仮固定することができ、製品の組立が容易になる利点がある。」点について、平成11年1月25日提出の実用新案登録出願の明細書に何ら記載がなく、本件請求項2に記載の発明が不明瞭という申立人の主張は妥当でない。

第5 【むすび】
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-01-23 
出願番号 特願平11-25944
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H04R)
P 1 651・ 534- Y (H04R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 菅澤 洋二大野 弘  
特許庁審判長 谷川 洋
特許庁審判官 小松 正
橋本 恵一
登録日 2002-01-18 
登録番号 特許第3270016号(P3270016)
権利者 北陸電気工業株式会社
発明の名称 表面実装用圧電型発音体及び圧電発音体の製造方法  
代理人 西浦 嗣晴  

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