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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A62B |
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管理番号 | 1071928 |
判定請求番号 | 判定2002-60098 |
総通号数 | 39 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 1989-11-02 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2002-11-06 |
確定日 | 2003-01-31 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2565739号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号写真ならびにイ号図面示す「ロ―プ固定金具」は、特許第2565739号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、イ号写真(請求人が提出した甲第1号証)ならびにそのイ号図面(同甲第2号証)に示すロープ固定金具(被請求人の製作に係る型式番号「KS-00」のロープ固定金具、以下、「イ号物件」という。)が請求人所有の特許第2565739号発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属するとの判定を求めたものである。 2.本件特許発明 本件特許発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであって、その構成要件を分説すると次のとおりである。 「A.本体に設けたロープ支承体に対してカム体を対向状態に回動自在に設け、このロープ支承体の円弧状の支承面とカム体の円弧状の圧接面とでロープを挾持圧接して固定する固定金具において、(以下、「構成要件A」という。) B.前記ロープ支承体の支承面と前記カム体の圧接面との間に、略水平に架設張設したロープの一端を前記支承面の上部から下方へ略90度折曲して垂下配設しその垂下先端を前記支承面の下部から引き出し垂下し得るように構成し、(以下、「構成要件B」という。) C.前記カム体の形状を略扇形形状に設定し、このカム体の扇形の中心基部位置を本体に枢着して少なくとも下方へ回動可能に設け、(以下、「構成要件C」という。) D.この枢着部分に常時カム体を上方へ戻り回動付勢するバネ体を設けると共に、このカム体の圧接面である円弧外周面と枢着部との距離が上方から下方へ行く程長くなる扇形状に設定し、(以下、「構成要件D」という。) E.ロープの撚り合わせ凹凸などの外周面の凹凸形状に合致してロープが嵌合する嵌合凹凸部をカム体の圧接面に形成した(以下、「構成要件E」という。) F.ことを特徴とするロープ固定金具。(以下、「構成要件F」という。)」 3.イ号物件 一方、イ号物件は、請求人が提出したイ号写真ならびにそのイ号図面の内容、および、判定請求書中の「(4)イ号物件の説明」の記載に基いて分説すると次のとおりであると認める。 「a.本体に設けたロープ支承体(10)に対してカム体(11)を対向状態に回動自在に設け、このロープ支承体(10)の円弧状の支承面(10a)とカム体(11)の円弧状の圧接面(11a)とでロープ(12)を挾持圧接して固定する固定金具において、(以下、「構成a」という。) b.前記ロープ支承体(10)の支承面(10a)と前記カム体(11)の圧接面(11a)との間に、略水平に架設張設したロープ(12)の一端を前記支承面(10a)の上部から下方へ略90度折曲して垂下配設しその垂下先端を前記支承面(10a)の下部から引き出し垂下し得るように構成し、(以下、「構成b」という。) c.前記カム体(11)の形状を略扇形形状に設定し、このカム体(11)の扇形の中心基部位置を本体に枢着して少なくとも下方へ回動可能に設け、(以下、「構成c」という。) d.この枢着部分に常時カム体(11)を上方へ戻り回動付勢するバネ体(16)を設けると共に、このカム体(11)の圧接面(11a)である円弧外周面と枢着部(15)との距離が上方から下方へ行く程長くなる扇形状に設定し、(以下、「構成d」という。) e.カム体(11)の圧接面(11a)中央に所定間隔を置いて横長でやや中央の突出高さの高い凸部(T)を形成し、この中央の凸部(T)間の左右にも横方向の長さがやや短い凸部(T)を形成した(以下、「構成e」という。) f.ロープ固定金具。(以下、「構成f」という。)」 4.対比・判断 本件特許発明とイ号物件とを対比すると、イ号物件の「構成a」、「構成b」、「構成c」、「構成d」および「構成f」は、それぞれ本件特許発明の「構成要件A」、「構成要件B」、「構成要件C」、「構成要件D」および「構成要件F」を充足している。 しかしながら、本件特許発明では、「構成要件E」として、カム体の圧接面に「ロープの撚り合わせ凹凸などの外周面の凹凸形状に合致してロープが嵌合する嵌合凹凸部を形成した」のに対し、イ号物件では、「構成e」として、カム体(11)の圧接面(11a)中央に「所定間隔を置いて横長でやや中央の突出高さの高い凸部(T)を形成し、この中央の凸部(T)間の左右にも横方向の長さがやや短い凸部(T)を形成した」点で、「構成e」は「構成要件E」と相違している。 ところで、本件特許発明における上記「構成要件E」の技術的意義は、従来の固定金具が有していた「固定金具3はロープ支承体にカム体を圧接したもので、このロープ支承体とカム体の円弧状の圧接面とでロープを圧接してロープを固定しているものであるが、カム体の圧接面にはロープが滑らないようにノコギリ歯状の滑止歯を設けたり、滑止突起を散在したりしている。ところが、ロープに強い張力が働くとロープが滑ってしまう欠点があり、と云って強く圧接し過ぎるとロープ表面を滑止歯や滑止突起で切断(つぶし切り)したり、摩耗させたりするからロープの張力が低下して切断してしまうこともあり、安全性に大きく欠け、非常に危険であった。」(特許明細書の〔従来の技術〕の項参照。)との欠点を解消し、「圧接面はロープの撚り部分などの外周凹凸になじんで嵌合圧接されるため、ロープの滑りを完全に止めることが出来る上、いくら圧接面でロープを強く圧接しても嵌合状態で圧接するものであるから、ロープの摩耗や損傷が少なく、このためロープが摩耗したり、切れたりすることがないから安全に使用することが出来ると共に耐久性に使用出来るから経済的でもある。」(特許明細書の〔発明の効果〕の項参照。)という作用効果を奏することにあると認められる。 そうすると、上記「構成要件E」において、カム体の圧接面に形成した嵌合凹凸部に対しロープが「合致し」あるいは「嵌合する」とは、ロープが「なじむ」という意味であると捉えられる。 一方、イ号物件の「構成e」における、カム体(11)の圧接面(11a)に形成された複数の「凸部(T)」は、単に「横長でやや中央の突出高さの高い凸部」や「中央の凸部間の左右に横方向の長さがやや短い凸部」が設けられただけのものであり、ロープの撚り合わせ凹凸などの外周面の凹凸形状に基づく傾斜角度やピッチとの関係を規定しているものでもないから、ロープが「なじむ」形状とはなっていないため、ロープが「合致し」あるいは「嵌合する」ものとはいえず、むしろ上記従来の固定金具における、カム体の圧接面に散在させた「滑止突起」に近似するものというべきである。また、イ号写真並びにそのイ号図面を参酌しても、イ号物件の「構成e」により「圧接面はロープの撚り部分などの外周凹凸になじんで嵌合圧接される」ことになるとは到底いえない。 したがって、イ号物件の「構成e」は、本件特許発明の「構成要件E」を充足しない。 5.請求人の主張に対して 請求人は、「イ号物件では、中央の凸部(T)と左右の凸部(T)とが、いずれもロープ(12)の撚り部分の凹部のピッチに略合致する間隔を置いてカム体(11)の外周縁の円弧方向に間隔を置いて並置されており、更に、この中央及び左右の凸部(T)は、カム体(11)の厚み方向に横一列に並ぶものではなく、上記したように中央の凸部(T)間に左右の凸部(T)が位置するものであるから、斜めに三つの凸部(T)が並ぶように配置されており、この斜めに並ぶ三つの凸部(T)が螺旋状にロープ(12)表面に表れる撚り部分の凹部に沿って嵌合し得るものであるから、本件特許と比較して実質的な差異はない。」(判定請求書第8頁第8〜16行)と主張している。 しかしながら、イ号物件において、「斜めに並ぶ三つの凸部」のそれぞれが、ロープ表面の螺旋方向に不連続的かつ部分的に当接することは認められるとしても、「横長でやや中央の突出高さの高い凸部」や「中央の凸部間の左右に横方向の長さがやや短い凸部」からなる前記「斜めに並ぶ三つの凸部」が「螺旋状にロープ表面に表れる撚り部分の凹部に沿って嵌合し得る」形状をしているとは認められないから、請求人の上記主張は採用できない。 また、請求人は、イ号物件の「構成e」と本件特許発明の「構成要件E」との間には実質的な差異はない旨主張する。 この主張は、本件特許発明とイ号物件とは、均等であるとの主張と解されるが、イ号物件の「構成e」と本件特許発明の「構成要件E」とが圧接面の凹凸構造において相違することは前記のとおりであり、しかもこの相違点は本質的な部分についての相違というべきであるから、最高裁平成6年(オ)第1083号判決に示される均等についてのその他の要件について検討するまでもなく、本件特許発明とイ号物件とは均等なものということもできない。 6.むすび 以上のとおりであって、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2003-01-21 |
出願番号 | 特願昭63-104984 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(A62B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 篁 悟、本郷 徹 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
藤原 直欣 千壽 哲郎 |
登録日 | 1996-10-03 |
登録番号 | 特許第2565739号(P2565739) |
発明の名称 | ロ―プ固定金具 |
代理人 | 吉井 剛 |
代理人 | 吉井 雅栄 |