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審決分類 審判 査定不服 判示事項別分類コード:なし 取り消して特許、登録 B62D
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B21C
管理番号 1072487
審判番号 不服2001-5129  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-05 
確定日 2003-03-04 
事件の表示 平成6年特許願第330046号「中空形材」拒絶査定に対する審判事件〔平成8年6月18日出願公開、特開平8-155534、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年12月5日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成15年1月23日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 複数の矩形断面の中空部を軸方向に有するように、横設壁と縦設壁とを備えた外壁内に中間壁が設けられていると共に、外荷重で上記外壁に対して上記軸方向に荷重が作用するように配置され、所定以上の強度に形成された直線状の中空形材であって、
上記縦設壁と横設壁との接続および/または上記外壁と中間壁との接続は、壁幅を減少させるように、傾斜壁により行われており、該傾斜壁は、上記中間壁を中心として上下対称に配置されていることを特徴とする中空形材。」(以下、「本願発明」という。)

2.原査定の概要
原査定の拒絶理由の概要は、本願発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物である特開平6-32246号公報(以下、「引用例1」という。)及び特開平5-178144号公報(以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用例記載の発明
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用例1には次の事項が記載されている。
(1-a)「【作用】請求項1の発明によれば、車体衝突等により車体フレーム部材に軸方向の衝突荷重が入力されると、特定方向への伸びを許容する割れ抑制手段の存在により屈曲部が伸び変形して該屈曲部の割れを抑制し、衝突エネルギの吸収が安定する。」(【0023】)
(1-b)「図1は第1実施例に係り、例えば図23で示す車体フレーム部材19と全体形状が同様な車体フレーム部材20の屈曲部(車体フレーム部材19の屈曲部15に相当し、以下同じ番号を用いる。)における縦断面を示すもので、アルミニウム合金等の軽金属製押し出し材により形成され、上下壁部3、5及び左右壁部7、9を有する閉断面構造となっており、この閉断面内には屈曲部15の屈曲方向に対し側方となる両側壁である左右壁部7、9間を連結するように渡されたリブ11が設けられ、このリブ11を互いに共有する二つの矩形状閉断面部20a、20bが形成されている。
前記リブ11が連結された左右壁部7、9外面には一対のノッチ21a、21bが設けられ、これらノッチ21a、21bはリブ11にまで到り、リブ11の端部はリブ11a、11a′及び11b、11b′の二又状に形成されている。」(【0036】【0037】)
(1-c)「車両の前面衝突等により車体フレーム部材20(例えばフロントサイドメンバー)に軸方向の衝突荷重が入力されると、ノッチ21a、21bにより形成された二つの閉断面部20a、20bの左右壁部7、9をそれぞれ個別に連結するリブ11a、11a′と11b、11b′の存在により、図1において鎖線で示すように左右壁部7、9の変形が促進され、屈曲部15の外側B(下壁部5)を支点にして二つの閉断面部20a、20bが潰れ変形しフロントサイドメンバーの曲率が増加する方向に変形する。この潰れ変形により、屈曲部15の外側B(下壁部5)に割れが発生し難くなり、衝突エネルギの吸収が安定する。」(【0040】)

原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用例2には次の事項が記載されている。
(2-a)「本発明は、車両のバンパ装置に採用されるリインフオースメントに関するものである。」(【0002】)
(2-b)「【作用】上記技術的手段は次のように作用する。中間壁は段差部分の後部分側に連結されて後壁と前壁とを連結しているので、中間壁と前壁との連結部分に鋭角な部分が生じない。これにより、成形型にも鋭利な部分が存在しないこととなつて異常な摩耗や破損等が少なくなり、型寿命が向上され得る。」(【0008】)
(2-c)「図1及び図2に示されるように、リインフオースメント2は、車両ボデー5に保持されるブラケツトが固定される後壁6,前壁7,上壁8及び下壁9よりなる断面矩形形状を呈してアルミ材等の押し出しや引き抜きによつて一体に成形される。後壁6は車両ボデーに保持されるブラケツト7に固定され、前壁7は後壁6に対向して配置され且つウレタン3を保持しており、この両前後壁6,7は上壁8及び下壁9によつて連結されている。前壁7には斜めに形成された段差部分7aが形成されており、その上方に後壁6に対して所定の間隔Aを持つた前部分7bが形成され且つ下方に後壁6に対して間隔Aより短い所定の間隔Bを持つた後部分7cが形成されている。又、上壁8と下壁9との間には後壁6と前壁7とを連結する中間壁10が一体に設けられている。この中間壁10は段差部分7aの後部分側7dにて前壁7に連結されている。」(【0011】)
(2-d)「上記したように、中間壁10は、段差部分7aの後部分側7dにて前壁7に連結されており、この連結された部分において鋭角を形成しない。これにより、リインフオースメント2の成形において、成形型に鋭利な部分が存在せず、異常な摩耗や破損等が少なくなる。この結果、型寿命が向上する。」(【0013】)

4.当審の判断
本願発明と引用例1記載の発明とを対比する。
引用例1の図1は、摘記事項(1-b)に記載のとおり縦断面を示すものであり、引用例1の図1及びそれについての摘記事項である「上下壁部3、5及び左右壁部7、9を有する閉断面構造となっており、この閉断面内には屈曲部15の屈曲方向に対し側方となる両側壁である左右壁部7、9間を連結するように渡されたリブ11が設けられ、このリブ11を互いに共有する二つの矩形状閉断面部20a、20bが形成されている。
前記リブ11が連結された左右壁部7、9外面には一対のノッチ21a、21bが設けられ、これらノッチ21a、21bはリブ11にまで到り、リブ11の端部はリブ11a、11a′及び11b、11b′の二又状に形成されている。」を参酌すれば、その縦断面については、本願発明の「複数の矩形断面の中空部を軸方向に有するように、横設壁と縦設壁とを備えた外壁内に中間壁が設けられていると共に、上記縦設壁と横設壁との接続および/または上記外壁と中間壁との接続は、壁幅を減少させるように、傾斜壁により行われており、該傾斜壁は、上記中間壁を中心として上下対称に配置されている中空形材」である点で一致している。しかしながら、引用例1の図1は摘記事項(1-b)に記載されているとおり、「屈曲部」の縦断面であり、本願発明の「直線状」の中空部材ではない。
引用例1記載の発明は、摘記事項(1-a)の【作用】で示されているように、部材に軸方向の衝突荷重が入力された場合、その割れを抑制するために、屈曲部に特定方向への伸びを許容する割れ抑制手段を存在させることにより、屈曲部を伸び変形させ、衝突エネルギを吸収し安定化させるものであり、引用例1の図1の縦断面をもつ屈曲部の作用としても、摘記事項(1-c)に「車両の前面衝突等により車体フレーム部材20(例えばフロントサイドメンバー)に軸方向の衝突荷重が入力されると、ノッチ21a、21bにより形成された二つの閉断面部20a、20bの左右壁部7、9をそれぞれ個別に連結するリブ11a、11a′と11b、11b′の存在により、図1において鎖線で示すように左右壁部7、9の変形が促進され、屈曲部15の外側B(下壁部5)を支点にして二つの閉断面部20a、20bが潰れ変形しフロントサイドメンバーの曲率が増加する方向に変形する。この潰れ変形により、屈曲部15の外側B(下壁部5)に割れが発生し難くなり、衝突エネルギの吸収が安定する。」と記載されている。これに対し、本願発明は「直線状」の中空部材の軽量化と所定以上の強度の確保を図ったものであり、引用例1の「屈曲部」を積極的に変形させることにより割れを抑制する発明とは技術思想が根本的に異なるものであり、単に縦断面の形状が同一であるからといって、直線上の中空部材において、その軽量化及び所定以上の強度の確保を図るために、「複数の矩形断面の中空部を軸方向に有するように、横設壁と縦設壁とを備えた外壁内に中間壁が設けられていると共に、上記縦設壁と横設壁との接続および/または上記外壁と中間壁との接続は、壁幅を減少させるように、傾斜壁により行われており、該傾斜壁は、上記中間壁を中心として上下対称に配置されている」との構成は導き出せない。

本願発明と引用例2記載の発明とを対比する。
引用例2記載の発明は、摘記事項(2-a)のとおり、車両のバンパ装置に採用されるリインフオースメントに関するものであるから、その部材は直線状でもある。したがって、引用例2の図2で示される部材は、それについての摘記事項(2-c)を参酌すれば、本願発明とは、「複数の矩形断面の中空部を軸方向に有するように、横設壁と縦設壁とを備えた外壁内に中間壁が設けられていると共に、上記縦設壁と横設壁との接続および/または上記外壁と中間壁との接続は、壁幅を減少させるように、傾斜壁により行われている直線状の中空形材」である点で一致しているが、「該傾斜壁は、上記中間壁を中心として上下対称に配置されている」点で相違する。
上記相違点について検討するに、引用例2記載の発明は、摘記事項(2-b)で記載されているように、壁と壁との連結部分に鋭角な部分を設けないことにより、成形型にも鋭利な部分が存在しないこととなつて異常な摩耗や破損等が少なくなり、型寿命が向上され得るというものであるのに対し、本願発明は中空部材の軽量化と所定以上の強度の確保を図ったものであり、その目的、効果が明らかに異なっている。壁と壁との連結部分に鋭角な部分を設けないことと、傾斜壁を上記中間壁を中心として上下対称に配置することとは何ら関連がないため、引用例2記載の発明において、「該傾斜壁は、上記中間壁を中心として上下対称に配置されている」ことは導き出せない。

また、上記のとおり、引用例1記載の発明は、部材に軸方向の衝突荷重が入力された場合、その割れを抑制するために、屈曲部に特定方向への伸びを許容する割れ抑制手段を存在させることにより、屈曲部を伸び変形させ、衝突エネルギを吸収し安定化させるものであり、引用例2記載の発明は、壁と壁との連結部分に鋭角な部分を設けないことにより、成形型にも鋭利な部分が存在しないこととなつて異常な摩耗や破損等が少なくなり、型寿命が向上され得るというものであり、両者はその目的において明らかに異なっているため、単に両発明が中空部材に対するものという観点だけで組み合わせることはできない。そして、本願発明は、明細書に記載された「傾斜壁がパネル要素の有効な縦設壁や横設壁、中間壁の壁幅を減少させて幅厚比を減少させ、且つ支持剛性を高めて座屈応力を増大させることから、壁厚を従来の中空形材の壁厚よりも小さな値としても、従来の中空形材と同等の外荷重に対する抵抗力を維持させることが可能になっており、結果として十分な軽量化を達成させることができる程度にまで、薄肉化することが可能である」という、引用例1、2からは予期し得ない顕著な効果を奏するものである。
したがって、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

5.むすび
したがって、請求項1に係る発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではなく、原査定の拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2003-02-21 
出願番号 特願平6-330046
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B21C)
P 1 8・ - WY (B62D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 國方 康伸  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 三崎 仁
池田 正人
発明の名称 中空形材  
代理人 梶 良之  

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