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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1072602
審判番号 不服2001-3848  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-11-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-14 
確定日 2003-02-14 
事件の表示 平成 4年特許願第 85593号「ファクシミリ装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年11月 5日出願公開、特開平 5-292284]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.[本願出願日・本願発明]
本願は、平成4年4月7日の出願であって、明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成12年11月27日付け手続補正書で補正された明細書並びに図面の記載からみて、請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
「 【請求項1】 原稿上のイメージを光学的に読込み、電気信号に変換して入力するイメージ入力手段と、
前記原稿上で少なくとも2色以上の色を検出する色検出手段と、
前記色検出手段の出力により、前記原稿の特定の領域を判別する色領域判別手段と、
前記特定の領域に対して前記入力されたイメージにより文字を認識する文字認識手段と、
送信相手先名及び電話番号を記憶する手段と、
文字認識手段により認識された文字が送信相手先名または電話番号であった場合、当該送信相手先名または電話番号を前記記憶手段に記憶すると共に、当該電話番号に従って自動発呼する自動登録・発呼手段とを有する、ファクシミリ装置。 」

2.[引用刊行物に記載された発明]
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用例1として引用された実願昭60-013328号(実開昭61-131167号)のマイクロフィルムには、
(a)「〔産業上の利用分野〕
本考案はファクシミリ装置、特に,原稿をあらかじめ指定した電話番号へ自動送信する機能を有するファクシミリ装置に関する。」
(b)「〔考案が解決しようとする問題点〕
上述した従来の自動送信機能を持つファクシミリ装置では、送信先の電話番号を人間が原稿等から読み手で入力する必要があるので手間がかかると同時に聞違いも起り易いという欠点があった。」
(c)「〔問題点を解決するための手段〕
本考案のファクシミリ装置は、送信用原稿紙上の濃淡を等間隔の直線状に順次検出し濃淡信号を検出する検出部と、前記濃淡信号のうち原稿用紙上のあらかじめ定められた区域に対応する文字部分濃淡信号を取出す文字部分取出部と、前記文字部分濃淡信号を処理しあらかじめ登録された文字パターンデータと比較し文字を認識し文字コード信号を出力する文字認識部と、前記文字コード信号にもとづいて、電話回線上に認識された文字列に対応する電話番号の回線制御信号を出力する回線制御部とを含んで構成される。」
(d)「〔考案の効果〕
本考案のファクシミリ装置は、送信先電話番号の入力を人手(入手は誤記と認められる。)でキーボード等より行う手段を設ける代りに、原稿用紙の特定部分の手書き文字を認識しそれを送信電話番号と解釈し自動的に認識した電話番号へ送信する手段を設けることにより、人手を介さず送信できるため、手間を省き誤りを防ぐことができるという効果がある。」
という記載があり、実施例が図面を参照して説明されている。
引用例2として引用された特開昭63-191290号公報には、帳票に記載されたもののうちその一部の文字列を読取認識するために、帳票上の読取対象部を赤鉛筆等のマーカで囲むことにより、囲むことによって指定された文字列の認識を可能とした文字読取装置、が開示されており、明細書の特許請求の範囲には、「所定の波長域を遮断する第1の光学系と、前記波長域をも透過する第2の光学系と、前記第1及び第2の光学系を通過した各像を、夫々、第1及び第2の画像信号に変換する第1及び第2の光電変換部と、該第1及び第2の光電変換部により得た前記第1及び第2の画像信号の差分を第3の画像信号としてとして出力する引算器と、該第3の画像信号に基づいて、前記第2の画像信号から認識文字信号を抽出し出力する文字検出部とを有し、前記第3の画像信号により仕切られた前記第2の画像信号を認識対象として抽出し、認識文字信号として出力する文字読取装置。」という記載がある。
引用例3として引用された特開昭63-115456号公報には、回線を利用して原稿や図面の送受信を行う例えばファクシミリ装置等の配線端末装置に関する技術が開示されており、原稿から読み取った情報を用いて自動送信できるようにするために実施例に関して、「比較部13では記憶部15内の情報と読み取った情報とを比較し、即ち、例えば読み取った情報が「特許庁」であったら、記憶部15内に「特許庁」なる情報が格納されているか否かが判断される。そして、格納されていればその「特許庁」の情報と関係づけられて格納されている「035811101」という電話番号情報を読みだして、、通信制御部18へ出力する。通信制御部18では前述した動作と同様、回線スイッチ16を駆動して、回線を捕捉し(ステップ(d))、その後ダイヤル信号送出部14を駆動して、「035011101」なるダイヤル番号を回線へ送出し(ステップ(e))、相手先と回線を確立する(ステップ(f))、そして確立後データ処理部19によりファクシミリ通信を行う(ステップ(g))」(3頁左上欄14行〜右上欄9行)という記載がある。
引用例4として引用された特開昭58-007973号公報には、「ファクシミリ装置利用者が、送信する全ての宛先を予め宛先記憶部に登録しておき、数字または文字により記憶された原稿上の宛先をパターン認識手段により認識後、この認識手段により認識された結果が、前述の宛先記憶部に登録されているか否かを調べ、登録されていたなら、原稿をその宛先に送ることを開始する」(2頁右上欄18行〜左下欄4行)という技術が開示されている。

3.[対比]
そこで、本願発明と引用例1に記載された上記発明(以下「引用例1発明」という。)とを対比する。
引用例1発明の「送信用原稿紙上の濃淡を等間隔の直線状に順次検出し濃淡信号を検出する検出部」、「前記文字部分濃淡信号を処理しあらかじめ登録された文字パターンデータと比較し文字を認識し文字コード信号を出力する文字認識部」及び「前記文字コード信号にもとづいて、電話回線上に認識された文字列に対応する電話番号の回線制御信号を出力する回線制御部」が、
それぞれ本願発明の「原稿上のイメージを光学的に読込み、電気信号に変換して入力するイメージ入力手段」、「前記特定の領域に対して前記入力されたイメージにより文字を認識する文字認識手段」及び「文字認識手段により認識された文字が電話番号であった場合に、当該電話番号に従って自動発呼する発呼手段」に相当することは明らかである。
したがって、引用例1発明と本願発明とは
「原稿上のイメージを光学的に読込み、電気信号に変換して入力するイメージ入力手段と、
特定の領域に対して前記入力されたイメージにより文字を認識する文字認識手段と、
文字認識手段により認識された文字が電話番号であった場合、当該電話番号に従って自動発呼する自動発呼手段とを有する、ファクシミリ装置。」の点で一致し、次の(a)、(b)点で相違すると認められる。
(a)本願発明が「原稿上で少なくとも2色以上の色を検出する色検出手段と、前記色検出手段の出力により、前記原稿の特定の領域を判別する色領域判別手段」を有していてこれで特定領域を判別しているのに対して、引用例1発明では、そのような手段を有せず、実施例の記載を見ると原稿の文字用枠内の信号を取り出すようにしている点。
(b)本願発明が「送信相手先名及び電話番号を記憶する手段」を有していて「文字認識手段により認識された文字が送信相手先名または電話番号であった場合、当該送信相手先名または電話番号を前記記憶手段に記憶する」ようにしているのに対して、引用例1発明では、そのような手段を有せず、「送信相手先名または電話番号を前記記憶手段に記憶する」ようにしていない点。

4.[相違点についての当審の判断]
そこで、これらの相違点について検討する。
相違点1について:
本願発明は、OCRシートに電話番号を記入すればファクシミリ装置がそれを読み取って自動的に発呼されるものにおいて、電話番号を決められた位置に書き込む必要があるため汎用性がないという従来技術の課題を解決する手段として請求項1に記載の構成を採用したものと認められるが、引用例2に、記入された文字列などを読み取る装置において、読み取らせる文字列を所定のフォーマット(これは位置や記入枠も含むと解される。)に従って記入しなければならない使い勝手の悪さを改善することを目的に、所定の波長域を遮断させる光学系と通過させる光学系のそれぞれで得た信号を引き算することによって、所定の波長域をもつ記載、実施例でいえば赤鉛筆等のマーカの位置を識別しそれに囲まれた枠内を認識対象領域とすることにより、使い勝手を向上させるようにすることが記載されており、その手段である「第1,第2の光学系と第1,第2の光電変換部」が本願発明における「原稿上で2色の色を検出する色検出手段」に、「引算部」が本願発明の「原稿の特定の領域を判別する色領域判別手段」に相当することは明らかであるから、引用例1の発明を改良することを意図して引用例2の上記技術を採用することにより本願発明の上記手段と作用の如くなすことは当業者ならば容易に想到できるものと認められる。
相違点2について:
本願発明が「送信相手先名及び電話番号を記憶する手段」を有していて「文字認識手段により認識された文字が送信相手先名または電話番号であった場合、当該送信相手先名または電話番号を前記記憶手段に記憶する」ようにしているのは、次回に発呼するときに原稿上の送信相手先名が認識されたときは記憶手段に記憶されているその送信相手先名の者の電話番号を利用してその電話番号に自動発呼するようにするためであるが、同様のことをするために送信相手先名及び電話番号を記憶する手段を有するようにしたものが、引用例3、引用例4に開示されている。
ところで本願特許請求の範囲の記載においては、認識された文字が送信相手先名だけであった場合にも当該送信相手先名を前記記憶手段に記憶することが限定されているが、送信相手先名だけ記憶するようにしてもそれに対応する電話番号がなければ自動発呼に利用できないから、次回以降の自動発呼に利用するためには送信相手先名だけ認識されたものを記憶するようにしても意味がなく、送信相手先名とその送信相手先名の者の電話番号をセットにして記憶することが必要不可欠であると考えられる。
そこで、本願特許請求の範囲に記載の発明が送信相手先名とその送信相手先名の者の電話番号の両方が同時に認識された場合のことを限定しているとすると、私人のみならず企業などにおいても、後に連絡する必要があると考える相手先の住所氏名電話番号等は、住所録などに記録しておき、後に連絡するときはそれを利用して連絡するようにすることが普通に行われており、また、引用例3、引用例4に送信相手先名とその送信相手先名の者の電話番号とがセットにして記憶されることを前提に、これらを予め入力しておくようにして後の利用に備えることが記載されている。そして、入力方法として、オペレータがその都度入力するようにするのに代え文字認識装置を利用して記載事項を読み取って入力するようにすることは上記引用例1の記載をまつまでもなく周知技術にすぎないものと認められるから、引用例1のものに「送信相手先名及び電話番号を記憶する手段」を設け「文字認識手段により認識された文字が送信相手先名及び電話番号であった場合、当該送信相手先名及び電話番号を前記記憶手段に記憶する」ようにすることは、当業者が引用例1、引用例3、引用例4及び周知技術に基づいて容易に推考できるものの域を出ない。

5.[むすび]
以上のとおりであるので、本願発明は、引用例1ないし引用例4に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-11-27 
結審通知日 2002-12-03 
審決日 2002-12-17 
出願番号 特願平4-85593
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 伸芳  
特許庁審判長 東 次男
特許庁審判官 佐藤 聡史
江頭 信彦
発明の名称 ファクシミリ装置  

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