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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1072970
審判番号 不服2002-16435  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-06-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-28 
確定日 2003-03-03 
事件の表示 平成 3年特許願第 62352号「画像読取装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 6月11日出願公開、特開平 5-145706]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年3月5日に出願されたものであって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成14年6月24日、及び平成14年9月26日の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 画像読取部が、定着器である発熱源を有する記録部に組み付け固定された状態で、配置してある画像読取装置において、前記画像読取部と前記発熱源とを分離する境界部を有し、前記境界部の内部に独立した空隙を具備するとともに、前記発熱源を冷却する手段を兼用する前記空隙を冷却する手段として前記空隙内部の空気を交換するファンを、前記空隙の端部であって、画像読み取りのための紙送り領域の外側に設け、前記ファンは、前記空気の流れる方向と略等しい方向の回転軸を有し、前記ファンの回転軸が紙送りローラの回転軸方向と略等しい方向であることを特徴とする画像読取装置。」
2 引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶理由で引用した実願平1-32278号(実開平2-123166号)の願書に添付された明細書および図面の内容を撮影したマイクロフィルム(平成2年10月9日出願公開。以下「引用例1」という。)には、
「ファクシミリ装置」の発明(考案)に関し、
ア 「原稿を読み取るスキャナ部と、感光体ドラム部を保持するとともに該感光体ドラムにトナーを供給する電子写真プロセス部と、画像に基づく光信号を前記電子写真プロセス部の感光体ドラムに照射する光信号発生部と、前記感光体ドラムにて記録紙に転写されたトナーを該記録紙上に定着する定着部とを備えたファクシミリ装置において、前記電子写真プロセス部および前記定着部を水平方向に並設し、前記光信号発生部を前記電子写真プロセス部の上方の(当審注:「上方に」の誤記)配置するとともに、前記スキャナ部を前記定着部の上方に配置したことを特徴とするファクシミリ装置」(実用新案登録請求の範囲)であること、
イ 「スキャナ部12を定着部35の上方に配置して構成される」(7頁4行〜6行)こと、が図面とともに記載されている。
同じく、原査定の拒絶理由で引用した特開平1-133462号公報(平成1年5月25日出願公開。以下「引用例2」という。)には、「画像形成装置」の発明に関し、
ウ 従来技術について「一般に、画像読取手段と画像形成手段とを組み合わせた画像形成装置においては、画像読取手段を画像形成手段の上方に配置する構成が一般的である。このような構成の場合、画像読取手段における底板部が、画像形成手段における発熱源としてのヒートローラの近傍に臨むことになり、このため、ヒートローラが発生する熱により画像読取手段の底板部が加熱され、さらにこの熱が画像読取手段における読取部のセンサ部や読取処理回路に伝達される。この結果、センサ部の特性変化を招いたり、読取処理回路の電気特性が変化し、読取部による画像情報読み取りの際、ノイズ等の影響が生じて安定した読取動作を妨げるという問題があった」(1頁右下欄11行〜2頁左上欄5行)こと、
エ 発明が解決しようとする問題点について、「上述したように従来装置においては、画像形成手段からの熱の影響で画像読取手段の読取機能が正常に発揮されないという問題があった。そこで本発明は、画像形成手段からの熱の影響を無くし安定した読取動作を実行することができる画像形成装置を提供することを目的とする」(2頁左上欄7行〜13行)こと、
オ 問題点を解決するための手段について、「本発明は、画像情報が付された原稿を保持する原稿保持部とこの原稿保持部により保持される原稿に対する読取走査を行う読取部とを有する画像読取手段と、前記読取部により読み取った画像情報を基に発熱を伴いつつ画像形成を行う画像形成手段とを有する画像形成装置において、前記画像形成手段の発熱源と画像読取手段の読取部とを熱的に遮断する断熱手段を備えたものである」(2頁左上欄16行〜右上欄3行)こと、が図面とともに記載されている。
3 対比・判断
そこで、本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、
引用例1に記載された発明は、原稿を読み取るスキャナ部12(画像読取部に相当)と、電子写真プロセス部と、光信号発生部と、感光体ドラムにて記録紙に転写されたトナーを該記録紙上に定着する定着部35(定着器に相当)を備えたファクシミリ装置において、前記スキャナ部を前記定着部の上方に配置したものであり(上記2ア、イ参照)、前記スキャナ部12は、第1図の記載から明らかなように、電子写真プロセス部、光信号発生部、定着部35等からなる記録部に組み付け固定され、また、前記スキャナ部12と前記定着部35である発熱源との間には、それらを分離する境界部(第1図中、矢印12で指示される略台形状の実線部分)が設けられており、更に、前記ファクシミリ装置は、スキャナ部12を備えていることから、全体として画像読取装置ともいうことができるから、「画像読取部が、定着器である発熱源を有する記録部に組み付け固定された状態で、配置してある画像読取装置において、前記画像読取部と前記発熱源とを分離する境界部を有した画像読取装置」である点で、本願発明と差異がない。
したがって、両者は、
「画像読取部が、定着器である発熱源を有する記録部に組み付け固定された状態で、配置してある画像読取装置において、前記画像読取部と前記発熱源とを分離する境界部を有した画像読取装置」である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
本願発明は、「前記境界部の内部に独立した空隙を具備するとともに、前記発熱源を冷却する手段を兼用する前記空隙を冷却する手段として前記空隙内部の空気を交換するファンを、前記空隙の端部であって、画像読み取りのための紙送り領域の外側に設け、前記ファンは、前記空気の流れる方向と略等しい方向の回転軸を有し、前記ファンの回転軸が紙送りローラの回転軸方向と略等しい方向である」のに対して、引用例1に記載された発明は、そのような構成を備えていない点。
そこで、前記相違点について検討すると、
引用例2に記載されているように、画像形成手段の上方に画像読取部を配置した構成のものにおいては、画像形成手段における発熱源としてのヒートローラ(定着器)が発生する熱により、画像読取部の安定した読取動作を妨げる問題点があり、この問題点を解決するためには、画像形成手段と画像読取部との間に、前記画像形成手段の発熱源と画像読取手段の読取部とを熱的に遮断する断熱手段を設ける必要がある(上記2ウ〜オ参照)から、「画像読取部が、定着器である発熱源を有する記録部に組み付け固定された状態で、配置してある画像読取装置」である引用例1記載の発明においても、発熱源である定着部35(定着器)とスキャナ部12(画像読取部)との境界部に、定着器35からスキャナ部12への熱伝達を遮断する何らかの断熱手段を設ける必要が有ることが当業者に明らかである。
本願発明は、この手段として、前記相違点で述べた「前記境界部の内部に独立した空隙を具備するとともに、前記発熱源を冷却する手段を兼用する前記空隙を冷却する手段として前記空隙内部の空気を交換するファンを、前記空隙の端部であって、画像読み取りのための紙送り領域の外側に設け、前記ファンは、前記空気の流れる方向と略等しい方向の回転軸を有し、前記ファンの回転軸が紙送りローラの回転軸方向と略等しい方向である」との構成を備えるものであるが、このような構成は、以下に示すように、当業者に周知の技術に基づいて、当業者が容易になし得る程度のことである。
即ち、発熱源と受熱部との間に設けた独立した空隙と、この空隙の端部に設けられ、前記空隙内部の空気を交換して冷却し前記発熱源を冷却する手段として兼用するファンとにより、前記発熱源から受熱部への熱伝達を遮断することは、特開昭59-136755号公報に例示されるように、当業者に周知と認められ、このような周知の断熱手段を引用例1に記載された発明に適用して、定着部からの熱がスキャナ部に伝達されないように構成することに、何ら困難性はない。
本願発明は、前記構成に加え、前記ファンを「画像読み取りの為の紙送り領域の外側に設け」、また、前記ファンは「前記空気の流れる方向と略等しい方向の回転軸を有し、前記ファンの回転軸が紙送りローラ回転軸方向と略等しい方向である」ものともしているが、このような構成は、いずれも当業者に周知であって(必要であれば、特開昭60-52839号公報、実願昭62-40409号(実開昭63-146842号)の願書に添付された明細書および図面の内容を撮影したマイクロフィルム参照)、前記周知の断熱手段を画像読取装置に適用するに際し、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないものである。
そして、本願発明の構成によりもたらされる効果も引用例1、2に記載された発明、及び周知技術から当業者が容易に予測し得る程度のものであり格別のものではない。
4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1、2に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-12-13 
結審通知日 2002-12-16 
審決日 2003-01-20 
出願番号 特願平3-62352
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮島 潤  
特許庁審判長 東 次男
特許庁審判官 佐藤 聡史
江頭 信彦
発明の名称 画像読取装置  
代理人 山下 穣平  

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