• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60K
管理番号 1073086
審判番号 審判1999-18154  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-12-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-11-18 
確定日 2002-12-18 
事件の表示 平成3年特許願第144248号「ブレーキシステム」拒絶査定に対する審判事件[平成4年12月1日出願公開、特開平4-345541]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年5月21日に出願され、平成11年4月6日に拒絶理由通知が発送され、平成11年6月3日に補正書及び意見書が提出され、平成11年10月19日に拒絶査定が発送された。
そして、平成11年11月18日に審判請求書が提出され、平成11年12月17日に補正書が提出され、平成13年3月30日に拒絶理由が発送され、平成13年5月24日に補正書及び意見書が提出され、平成14年7月16日に上記平成13年5月24日付けの補正を却下する決定が発送され、平成14年8月16日に確定した。
それゆえ、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成11年6月3日及び平成11年12月17日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項3に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項3】ブレーキ踏力の検出結果こ基づいてブレーキ力を演算するブレーキ力演算手段と、前記ブレーキ力演算手段の演算結果に基づいて制御されるブレーキ装置を有し、前記ブレーキ力は前記ブレーキ力演算手段の出力のみによって制御されるブレーキシステム。」
II.刊行物記載の発明
これに対して、平成13年3月30日に発送された拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された「特開昭62-137256号公報」(以下、「刊行物1」という。)には、「本発明は車両の制動を制御する装置に関し、特にその減速の程度を好適に制御する車両減速制御装置に関する。[従来の技術] 車両の走行を制動する上で、車輪と路面との摩擦係数μは重要な投割を果す。即ち、μが大きければ、わずかなブレーキ踏み込みでも大きな制動力が得られるが、μが小さい場合は同じ制動力を得るためには、より大きなブレーキ踏み込みをしてブレーキ圧を上げる必要がある。このため、路面によっては、ブレーキ踏み込みのフィーリングが異なり、運転者は制動操作に違和感を生じ、不適切なブレーキ操作をする場合がある。」(第1頁下右欄第15行〜第2頁上左欄第8行)、「上記アンチスキッド制御は、最大の制動力は与えるが、その中間における制動力、特に運転者の制動操作自体の違和感を解消するまでに至っていなかった。」(第2頁上左欄第16〜19行)、「本発明は制動操作の同一性を目的として完成されたものである。[問題点を解決するための手段] 上記問題点を解決する手段として、次のように2つの発明を構威した。即ち、第1発明は、第1図(イ)に例示するごとく、車両運転者のブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段M1と、車両の加速度を検出する加速度検出手段M2と、車輪を制動するブレーキ圧を調整するブレーキ圧調整手段M3と、上記加速度検出手段M2により検出された加速度が、上記ブレーキ操作量検出手段M1により検出されたブレーキ操作量に対して所定パターンにて対応した値となるよう上記ブレーキ圧調整手段M3を制御する制御手段M4と、を備えることを特徴とする車両減速制御装置を要旨とする。」(第2頁上右欄第4行〜同頁下左欄第2行)、「ここでブレーキ操作量検出手段M1,M11とは、例えば、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するものであり、ポテンショメータ、差動トランス等でペダルの位置を検出するものである。加速度検出手段M2,M12とは、車両にかかる加速度を検出するもので、いわゆるGセンサである。制動制御であるので、加速度は負の値となる。ブレーキ圧調整手段M3,M13とは、ブレーキ圧伝達系統の圧力を加圧・減圧ないし保持するよう調整するものであって、例えばブレーキ圧伝達系統にとって有効な所定体積を有し、減圧時には、この体積を膨脹させて制動部材に伝達される力を低下し、加圧時にはこの逆の制御を行う構成や、圧力源となるポンプとリザーバ及び切換弁を有し、直接ブレーキ圧伝達系統の圧力を増減ないし保持制御する構成など種々のものが考えられる。第1発明の制御手段M4とは、ブレーキ操作量と車両加速度との関係の所定パターンを記憶しており、ブレーキ操作量検出手M1により検出された操作量に基づき、上記所定パターンに応じて目標加速度を算出し、該目標加速度に、加速度検出手段M2より検出された実際の加速度が一致する方向に、ブレーキ圧調整手段M3を制御する。制御手段M4はディスクリートな電子回路として構成することもできるし、マイクロコンピュータ等を用いた論理演算回路としても構成できる。また、車速検出手段M14とは、ドップラ効果等を利用した対地速度センサや、制動開始直前の遊動輪回転速度から求められに速度をベースとしてこれに加速度検出手段M12によって求められた車両の加速度(制動時には減速度)を逐次積分してゆくことによって検出する等、如何なる手法によって検出することも何ら差支えない。回転速度検出手段M15とは、車輪の回転速度を検出するものである。車輪の回転速度は、車輪に設けられた回転速度センサによって求めてもよいし、車輪回転トルクに対して車輪のイナーシャを考慮して積分することによって求める等、種々の手法により検出することができる。」(第2頁下右欄第6行〜第3頁上右欄第5行)、及び「第3図は第1発明の一実施例として4輪の車両に搭載された車両減速制御装置の全体の構成を示す概略構成図、第4図は右前輪に関する制御系統を電子制御ユニットのブロック図と共に示す制御系統図である。まず全体の構成及び油圧系統・電気系統の概略について説明する。図示する如く、車両の各車輪1,2,3,4には油圧ブレーキ装置11,12,13,14が設けられており、右左の前輪1,2には各々、その回転角速度を検出する電磁ピックアップ方式の回転角速度センサ15,16が取付けられている。またトランスミッション18の主力軸19の回転をディファレンシャルギア21を介して受けて回転する後輪3,4の回転角速度は、トランスミッション18に設けられた回転角速度センサ22によって検出される。各車輪に設けられた油圧ブレーキ装置11ないし14は、油圧ポンプ24が発生する高い油圧をブレーキ油圧として、各車輪1ないし4の回転を制動するが、このブレーキ油圧はアクチュエータ31,32,33によって調整される。アクチュエータ31,32,33は各々右前輪1,左前輪2,左右後輪3及び4のブレーキ油圧を独立に制動するものであって、電子制御ユニット(ECU)40によって制御されている。アクチュエータ31ないし33の構成については後で詳述するが、各車輪1ないし4のブレーキ圧を調整するブレーキ圧調整手段M3,M13として機能している。右前輪1へのブレーキ油圧の油圧系統RHSの油圧は油圧センサ51によって、左前輪2の油圧系統LHSの油圧は油圧センサ52によって、後輪3,4の油圧系統BHSの油圧は油圧センサ53によって、各々検出される。ECU40は、これらの油圧センサ51,52,53からの油圧に応じた信号の他、回転角速度センサ15,16,22からの回転角速度信号、更には、車両の加速度(減速度も含む)を検出する加速度センサ54からの信号やブレーキペダル24の操作量を検出するブレーキセンサ25及びブレーキスイッチ26からの信号等を入力し、アクチュエータ31,32,33を各々制御して、各車輪1ないし4の回転角速度ωの制御を行う。右前輪1,左前輪2,後輪3及び4の制動力の制御は各々独立に行なわれているので、以下、右前輪1の制御について説明する。第4図は右前輪1の制動を制御する系を中心に表わした構成図である。図示するように、ECU40は、イグニッションキー56を介してバッテリ57より電源電圧の供給を受けてユニット全体に定電圧を供給する電源部58を備え、周知のCPU61,ROM63,RAM65等を中心に、出力ポート67,アナログ入力ポート69,パルス入力ポート71,レベル入力ポート72等をバス73で相互に接続し、論理演算回路として構成されている。ECU40は、所定条件が成立すると、アクチュエータ31内のスプリングオフセット形3ポート3位置弁75を駆動することによって、油圧ポンプ24から制動部材である油圧ブレーキ装置11に伝連されるブレーキ油圧を制御する。ブレーキ油圧が上昇すると、油圧ブレーキ装置11は、車輪1と共に回転するディスク82に摩擦パッド83を押し付けて、車輪1の回転を止めるように働く。即ちECU40は、制御手段M4に該当する。アクチュエータ31は油圧ポンプ24から油圧が伝達される。該油圧は上記3ポート3位置弁75を介して油圧ブレーキ装置11に導かれる。他のアクチュエータ32,33も同様な構成である。圧油は逆止弁24aを介して圧送され、排出はリザーバ24bになされる。スプリングオフセット形3ポート3位置弁75は、ソレノイドに給電されないときには第4図の位置a(以下第1の位置という)にあり、右側のソレノイドに給電されると第4図の右側切換位置b(以下第2の位置という)にあり、左側のソレノイドに給電されると第4図の左側切換位置c(以下第3の位置という)にあるように構成されている。アクチュエータ31は上記のごとく構成されているので、弁75のaの位置では油圧が保持され、bの位置では油圧が上昇し、cの位置では油圧は下降する。次に上述した構成において、実行されるECU40における処理を第5図に示す。まず処理が開始されると、ステップ100にて各種変数やフラグの初期設定がなされる。次にステップ110にてブレーキスイッチ26がオンか否かがチェックされる。オンであればステップ120にて、ブレーキセンサ25よりブレーキペダルの踏み込み量Bfが読み込まれる。続いてステップ130にて目標加速度βtが上記踏み込み量Bfから演算式又はテーブルにより求められる。例えば第6図に示すような関係に踏み込み量Bfと目標加速度βtとが表わされる。ただし、制動による加速度であるから、βtは負の値である。次にステップ140にて加速度センサ54から実際の車両の加速度βを読み込む。次にステップ150にて上記目標加速度βtと実加速度βとを比較する。ここで、βtの方が大きい場合は、3ポート3位置弁75に信号を出力して、その弁位置を位置bに設定する。このことにより、油圧ポンプ24からの圧力が加わり、油圧ブレーキ装置11に加わる油圧が上昇し、ブレーキ力が大きくなる。βtとβとが等しい場合には、弁位置は位置aとなり、油圧ブレーキ装置11の油圧は一定化し、ブレーキ力も変化しなくなる。βtがβより小さい場合は、ステップ180にて弁位置は位置cとなり油圧ブレーキ装置11から圧油が減少し、ブレーキ力は小さくなる。こうして、弁位置の操作が終了すれば、再度、ステップ110から処理がはじまる。上記したステップ110にてブレーキスイッチ26がオフであった場合、ステップ180にて弁位置はやはり位置cとなる。本実施例は、上述のごとく構成されているため、ブレーキの踏み込み量に対応した負の加速度が常に同程度にて得られるものである。」(第4頁上左欄第8行〜第5頁下左欄第4行)、及び「第1発明は、ブレーキの操作量と加速度変化とが常に1:1に対応しているため、いかなる路面での走行においても同一の制動のパターンを得ることができ、運転者の操作が安定する。」(第8頁上右欄第1〜4行)との記載、並びに第1図(イ)(ロ)の基本的構成例示図、第3図の概略構成図、第4図の構成図、第5図のフローチャート及び第6図のテーブルを示すグラフの記載からみて、
「ブレーキ操作量の検出結果に基づいてブレーキ力を演算する制御手段M4、M16又は電子制御ユニット(ECU)40と、前記制御手段M4、M16又は電子制御ユニット(ECU)40の演算結果に基づいて制御されるブレーキ圧調整手段M3、M13又はアクチュエータ31、32、33、及び油圧ブレーキ装置11、12、13、14を有し、前記ブレーキ力は前記制御手段M4、M16又は電子制御ユニット(ECU)40の出力のみによって制御されるブレーキシステム。」という発明
が記載されている。
III.対比
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「制御手段M4、M16又は電子制御ユニット(ECU)40」、「ブレーキ圧調整手段M3、M13又はアクチュエータ31、32、33、及び油圧ブレーキ装置11、12、13、14」は、それぞれ、本願発明の「ブレーキ力演算手段」(平成11年12月17日付け手続補正書により補正された段落【0007】には「ここで、加減速度演算比較手段6と変速位置演算手段7、エンジントルク演算手段8及びブレーキ圧演算手段9をそれぞれ別のブロックで示しているが、これらはマイコンなどによる制御装置Cからなるものであり、この制御装置Cが全体としてブレーキ力演算手段を構成しているものである。」と記載されている。)、「ブレーキ装置」に相当するから、両者は、
「検出結果に基づいてブレーキ力を演算するブレーキ力演算手段と、前記ブレーキ力演算手段の演算結果に基づいて制御されるブレーキ装置を有し、前記ブレーキ力は前記ブレーキ力演算手段の出力のみによって制御されるブレーキシステム。」
の点で一致し、
(イ)本願発明では、ブレーキ踏力の検出結果であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、ブレーキ操作量の検出結果である点、
で相違する。
IV.当審の判断
上記相違点(イ)について検討する。
本願の明細書には、「そこで、本発明の目的は、ドライバ意図通りの目標加減速度を演算し、」(本願明細書段落【0004】)、「また、上記目的は、ブレーキ踏力の検出結果に基づいてブレーキ力を演算するブレーキ力演算手段」(平成11年12月17日付け手続補正書により補正された本願明細書段落【0005】)、「従って、この実施例によれば、ドライバによるアクセルペダルやブレーキペダルの操作状態からドライバが意図している加減速度を推定演算し、」(本願明細書段落【0015】)、「ブレーキ踏力などの減速度要求手段21」(本願明細書段落【0026】)、及び【図14】には符号「21」として示される長方形内に「減速度要求手段(ブレーキ踏力)」と記載されており、刊行物1には、「上記アンチスキッド制御は、最大の制動力は与えるが、その中間における制動力、特に運転者の制動操作自体の違和感を解消するまでに至っていなかった。」(第2頁上左欄第16〜19行)、及び「本発明は制動操作の同一性を目的として完成されたものである。」(第2頁上右欄第4〜5行)と記載されている。
したがって、ブレーキ操作量及びブレーキ踏力は、いずれも、ドライバが意図し要求する減速度を検出するためのものであり、いずれもどの程度の減速度を意図し要求しているかを、例えば、ブレーキペダルの操作状態から検出しており、しかもブレーキ操作量とは、ブレーキ踏力に対応関係にあるものであるので、ブレーキ操作量の検出結果をブレーキ踏力の検出結果にすることは、当業者が容易になしえたことである。
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、刊行物1に記載された発明から当業者であれば予測できる程度のものである。
V.むすび
したがって本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-10-08 
結審通知日 2002-10-18 
審決日 2002-10-29 
出願番号 特願平3-144248
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 貴雄村上 哲  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 亀井 孝志
氏原 康宏
発明の名称 ブレーキシステム  
代理人 武 顕次郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ