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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E04D |
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管理番号 | 1073090 |
異議申立番号 | 異議2000-71744 |
総通号数 | 40 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-09-09 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-04-26 |
確定日 | 2002-10-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2971149号「建築用防水シート施工法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2971149号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件特許第2971149号は、平成3年2月7日に出願され、平成11年8月27日にその特許権の設定登録がなされ、その後、平成12年4月26日に三菱化学エムケーブイ株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由がなされ、その指定期間内である平成12年11月27日に特許異議意見書とともに訂正請求書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 2-1.訂正請求の訂正の内容 特許権者が求めている訂正は、明細書の、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正および不明りょうな記載の釈明をすることを目的として、本件特許第2971149号に係る明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正しようとするものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。 訂正事項1:請求項1において、「この施工面を補う防水シート2を張り」を「この施工面を被う防水シート2を張り」と訂正する。 訂正事項2:請求項1において、「上記防水施工面1の所要位置に」を「上記防水施工面1の不連続な所要位置に」と訂正する。 訂正事項3:「上面に熱溶着材層5を有する」を「上面に工場等で前もって形成した熱溶着材層5を有する」と訂正する。 訂正事項4:段落【0008】において、「この施工面を補う防水シートを張り」を「この施工面を被う防水シートを張り」に訂正する。 訂正事項5:段落【0014】において、「防水シート2を固定できるだけの所要位置に導体片3を設けた」を「防水シート2を固定できるだけの不連続な所要位置に導体片3を設けた」に訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (1)上記訂正事項1、4は、誤字の訂正を目的とするものであり、訂正事項2、3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項5は、特許請求の範囲との整合をとるために、発明の詳細な説明の記載の明りょうでない記載の釈明を目的としたものである。 (2)また、上記訂正事項2、5に関連する記載として、願書に添付した明細書には、「なお、導体片3は、棧f状とする必要はなく、図4に示すように、防水シート2を固定できるだけの所要位置に導体片3を設けた簡便なものとすることもできる。」(訂正前の明細書段落【0014】)と記載され、その図4には、導体片3が不連続に配置された態様が示されており、上記訂正事項3に関連する記載として、願書に添付した明細書には、「熱溶着材層5は、工場等で前もって形成しておいても良いが、現場で形成するようにしても良い。」(明細書段落【0012】)と記載されており、また、本件特許に係る発明において、防水シート2は施工面を補うものではなく、被うものであることは明らかであるから、上記訂正事項1ないし5は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内において訂正したものであり、また、上記訂正事項1ないし5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものでもない。 2-3.まとめ したがって、特許権者が求めている上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する第126条第1項ただし書きおよび第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.本件特許異議の申立について 3-1.本件発明 本件の請求項1に係る発明は、上記訂正請求によって訂正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである(以下、「本件発明」という)。 【請求項1】防水施工面1の全面に亘ってこの施工面1を被う防水シート2を張り、この防水シート2の全周囲を前記防水施工面1に接着固定すると共に、その防水シート2の周囲内側の所要位置を前記防水施工面1に接着固定する建築用防水シート施工法であって、上記防水シート2の周囲内側の上記防水施工面1の不連続な所要位置に、上面に工場等で前もって形成した熱溶着材層5を有する導体片3をアンカー固着し、前記防水シート2上から電磁誘導加熱により、前記導体片3を加熱し、この熱により溶けた熱溶着材層5でもって前記防水シート2を導体片3に接着固定して、防水シート2を導体片3を介して防水施工面1に固定することを特徴とする建築用防水シート施工法。 3-2.引用刊行物記載の発明 刊行物1:特公昭58-36705号公報 刊行物2:特開昭63-303720号公報 (1)刊行物1には、防水シートを用いた構造物の防水工法および断熱防水工法に関して、 a.「構造物13の防水すべき表面Aの周縁にシート接合面19aを有する周縁接合片14を固定するとともに、防水すべき表面Aの内部所要部に、シート接合面19aを有する多数の中間接合片16,17を固定する工程と、構造物13の防水すべき表面Aに防水シート11を覆い被せるとともに、防水シート11の全周縁を周縁接合片14に接合する工程と、接着剤収容部28とこれの先端に連通状に取り付けられた針21とを備えかつ収容部28内の接着剤に圧力をかけることによって接着剤が針21の先端より押し出されるようになされた接着剤注入器20を用意し、防水シート11の、各中間接合片16,17の上に重なる部分に、接着剤注入器20の針21を突き通すとともに、接着剤注入器20内の接着剤を防水シート11と中間接合片16,17との間に注入し、その注入された接着剤を防水シート11の上から押えて中間接合片16,17のシート接合面19aに沿って押し拡げ、この接着剤により防水シート11を中間接着片16,17に接合する工程とよりなる防水シートを用いた構造物の防水工法。」(特許請求の範囲第1項)、 b.「まず立上がり壁12の上端外周部をめぐって、断面L字形の周縁接合片14を、カールプラグ15を利用して取付ける。それと共に、断面L字形の中間接合片16を、陸屋根13と立上がり壁12との隅部にカールプラグ15を利用して取付ける。さらに陸屋根13には、所定間隔で平板状の中間接合片17をカールプラグ15を利用して取付ける。これらの接合片14,16,17は、鋼板製の本体18にポリ塩化ビニル製防水シート11と同じポリ塩化ビニル製のフィルム19を接着剤で貼り付けたものであり、このフィルム19の上面がシート接合面19aとなされている。」(第3頁5欄第39行〜同頁6欄第6行)、 c.「接着剤には、防水シートと接合片のフィルムとを溶着しうるテトラヒドロフラン(THF)等の溶剤を使用する。」(第3頁5欄第27〜29行) と記載されている。 そして、刊行物1に記載された防水シートも、防水すべき表面の全面に亘って張ることは明らかであり、また、中間接合片17は、陸屋根に取付ける前に、鋼板製の本体18にフィルムが貼り付けられて形成されていると考えられる。 以上より、上記刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。 「防水すべき表面の全面に亘って防水シートを張り、構造物の防水すべき表面の周縁に周縁接合片を固定するとともに、防水すべき表面の内部所要部に多数の中間接合片を固定して、上記周縁接合片および中間接合片と防水シートとを接合して防水シートを防水施工面に接着固定する防水シートを用いた構造物の防水工法であって、防水すべき表面の内部所要部に、上面に前もってフィルムが張り付けられた中間接合片の鋼板製の本体をカールプラグを利用して取り付け、接着剤注入器によって接着剤を注入して防水シートとフィルムとを溶着することにより防水シートを中間接合片の鋼板製の本体に固定して、防水シートを中間接合片の鋼板製の本体を介して構造物の防水すべき表面に固定する防水シートを用いた構造物の防水工法」 (2)刊行物2には、シートの接合方法に関する発明が記載されており、 a.「本発明では、磁性金属と熱溶融性接着剤とからなる接合手段が積層体の場合には、例えば第1図に示すように実施できる。この接合方法では、合成樹脂シート1,2の端部を上下に重ね合わせ、その間に接着剤3と金属板4と接着剤5を順次積層した積層体6を挟み、シート1の上方から誘導加熱装置7によって積層体6の接着剤3,5を加熱、溶融させてシート1,2を接合する。(中略)第3図には、2枚のシート1,2を接合すると共にコンクリートスラブ8にシート1,2を接合する方法が示されている。この場合には、コンクリートスラブ8に前述した実施例と同様の積層体6を置き、この積層体6の上面にシート1,2の接合部が位置するようにシート1,2を置き、前述の実施例と同様にシート1,2を接合する。尚、この実施例において、金属板4を釘(図示せず)によってコンクリートスラブ8に予め固定しておき次いで接着剤3を塗布した積層体を用いることもできる。」(第2頁右上欄第18行〜右下欄第4行)、 b.「本発明のシートの接合方法によれば、磁性金属板接合手段または磁性金属と熱溶融性接着剤とからなる接合手段を誘導加熱装置によって加熱溶融させてシートを接着するので、加熱状態が一定でむらがないため接着力が均一で安定したものを得ることができ、また火気等を用いた場合のようにシートが過熱されるようなことはないため局部的な劣化を生ずることはない。さらには火気を用いないため火災等の心配がなく安全であり、作業も熟練を要することなく簡単に行うことができる等種々の利点を有するものである。」(第3頁左上欄第2〜13行)、 と図面とともに記載されている。 したがって、刊行物2には、シートを固定部材を介してシート施工面(コンクリートスラブ上)へ接合する施工法において、シートをシート施工面(コンクリートスラブ上)に固定された固定部材(金属板)に接着固定するために、固定部材の上面に熱溶融性接着剤を設け、シートを置き、シートの上から誘導加熱装置によって熱溶融性接着剤を溶融させてシートと固定部材とを接着固定する技術が記載されているものと認められる。 3-3.対比・判断 本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、本件発明の「防水施工面の全面」、「防水シートの全周囲」、「防水シートの周囲内側の所要位置」および「防水シート2の周囲内側の上記防水施工面1の不連続な所要位置」、「アンカー固着」、「建築用防水シート施工法」が、刊行物1に記載された発明の「防水すべき表面の全面」、「防水すべき表面の周縁」、「防水すべき表面の内部所要部」、「カールプラグを利用して取り付け」、「防水シートを用いた構造物の防水工法」にそれぞれ相当し、 本件発明の「上面に前もって形成した熱溶着材層を有する導体片」と刊行物1に記載された発明の「上面に前もってフィルムが張り付けられた中間接合片(周縁接合片)の鋼板製の本体」は共に、上面に前もって形成した接着部(本件発明においては「熱溶着材層」、刊行物1に記載された発明においては「フィルム」)を有する固定部材(本件発明においては「導体片」、刊行物1に記載された発明においては「鋼板製の本体」)であるから、 両者は、防水施工面の全面に亘ってこの施工面を被う防水シートを張り、この防水シートの全周囲を前記防水施工面に接着固定すると共に、その防水シートの周囲内側の所要位置を前記防水施工面に接着固定する建築用防水シート施工法であって、上記防水シートの周囲内側の上記防水施工面の不連続な所要位置に、上面に前もって形成した接着部を有する固定部材をアンカー固着し、前記防水シートを接着部でもって固定部材に接着固定して、防水シートを固定部材を介して防水施工面に固定する建築用防水シート施工法である点で一致しており、下記の点で相違している。 相違点1:上面に前もって形成した接着部を有する固定部材について、本件発明では、工場で前もって形成しているのに対して、刊行物1に記載された発明は、どこで形成しているかは明確には記載されていない点。 相違点2:防水シートを接着部でもって固定部材に接着固定するために、本件発明は防水シートの上から電磁誘導加熱により前記導体片を加熱してこの熱により溶けた熱溶着材層でもって接着固定しているのに対して、刊行物1に記載された発明は接着剤注入器によって接着剤を注入して防水シートと中間接合片のフィルムとを溶着することにより接着固定している点で相違している。 まず、相違点1について検討すると、本件発明や刊行物1、2に記載された発明のようなシートの施工に用いる固定部材をいつどこで形成するかは当業者が適宜決定できる設計的事項に過ぎず、本件明細書にも、「熱溶着材層5は、工場等で前もって形成しておいても良いが、現場で形成するようにしても良い。」(段落【0012】)と記載されている。 そして、製品や部品を工場でつくることは例をあげるまでもなく周知の事項であるから、上記相違点1に係る構成は、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。 次に、相違点2について検討すると、シートをシート施工面(コンクリートスラブ上)に固定された固定部材(金属板)に接着固定するために、固定部材の上面に熱溶融性接着剤を設け、シートを置き、シートの上から誘導加熱装置によって熱溶融性接着剤を溶融させて接着固定することは刊行物2に記載されており公知の技術である。 そして、上記刊行物2に記載された公知技術を刊行物1に記載された発明の防水シートを接着部でもって固定部材に接着固定するための手段に代えて適用することに格別困難な点が見あたらず、当業者が容易になし得たことである。 さらに、本件発明の効果も刊行物1に記載された発明の効果、および、刊行物2に記載された発明の効果(上記2ー2.(2)b)に比べて格別のものでもない。 なお、特許権者は、平成12年11月27日付け特許異議意見書において、刊行物2に記載されたシートが、刊行物1に記載された発明の防水シートなどの「屋外面のシート施工」であるのか、カーペットなどの「屋内面のシート施工」であるのかが不明であり、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とが単に建築の分野で共通するからといって技術の転用が容易であるとはいえない、また、刊行物1、2のものには、本件発明の「水密性を維持しつつ固定する」という考えがない以上、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された技術を採用することは当業者といえども容易ではない旨主張している。 しかしながら、防水シートであれば「水密性を維持しつつ固定する」ということは常に考慮する事項であって、刊行物1に記載された発明においても当然考慮されていると考えられ、また、シートの機能や種類が異なっていても、シートの施工面への固定方法に大きな差異があるものではなく、刊行物2に記載されたシートの固定技術を刊行物1に記載されたような防水シートの施工法に適用することによって、該防水シートに何ら不都合が生じるものでもないから、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された技術を採用することは当業者が容易に想到し得たことであると認められ、上記主張は採用できない。 3-4.まとめ 以上により、本件発明は上記刊行物1および2に記載されたものから当業者が容易に発明できたものであるから、本件発明の特許は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.むすび したがって、本件発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 建築用防水シート施工法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 防水施工面1の全面に亘ってこの施工面1を被う防水シート2を張り、この防水シート2の全周囲を前記防水施工面1に接着固定すると共に、その防水シート2の周囲内側の所要位置を前記防水施工面1に接着固定する建築用防水シート施工法であって、上記防水シート2の周囲内側の上記防水施工面1の不連続な所要位置に、上面に工場等で前もって形成した熱溶着材層5を有する導体片3をアンカー固着し、前記防水シート2上から電磁誘導加熱により、前記導体片3を加熱し、この熱により溶けた熱溶着材層5でもって前記防水シート2を導体片3に接着固定して、防水シート2を導体片3を介して防水施工面1に固定することを特徴とする建築用防水シート施工法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 この発明は、建築用の防水工事に用いる防水シートの施工法に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、建築工事の防水作業、例えば陸屋根等の防水工事において、ならしモルタル上に防水シートを張り、そのシートを目地材頂部に接着固定する施工法として、例えば特開昭56-20260号公報で開示の技術がある。 【0003】 この技術は、躯体コンクリート層上に防水シートの幅で目地材を配置して、この目地材の頂部全長に亘って熱溶着材層を形成し、目地材頂部までならしモルタル層を形成した後、その上に防水シートを張るとともに、隣接する両防水シートの対向する縁を目地材上で突き合せる。この状態で防水シートの突き合わせ部分に防水シート上から熱風を吹き付けて、内側の目地材頂部の熱溶着材層を溶融し、目地材と防水シート縁とを接着固定する。 【0004】 また、特開昭60-80650号公報には、目地材頂部ではなく、コンクリート下地又は断熱材の所要位置に、上面にホットメルト型接着剤を有する金属片の上から防水シートを張り、その防水シート上から電気ヒータによって加熱し、前記接着剤を溶融して、防水シートを金属片を介して下地等に固着する技術が開示されている。 【0005】 これらの施工法では、熱溶着材の溶融によって防水シートを接着固定するため、接着面は、糊接着のように、水気によって接着力が左右されることがなく、施工時に、モルタル層の乾燥を待つ必要がない。また、雨天時の施工も可能である等の利点がある。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記の施工法では、熱風又は電気ヒータにより防水シート上面から熱を加えるため、直接に熱にさらされる防水シート表面は、溶着材層の溶融温度よりかなり高温となり、如何せん前記溶融温度付近迄耐熱性を有する防水シートにあっても、シート表面は熱による損傷を受け、例えば表面が熱収縮を起こし、接着面に剥れを生じたり、ピンホール等が生じて、漏水の原因となる場合があった。 【0007】 そこで、この発明では、溶着材層加熱の際、防水シート表面に高温が加わらないようにすることを課題とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】 上記の課題を解決するため、この発明においては、防水施工面の全面に亘ってこの施工面を被う防水シートを張り、この防水シートの全周囲を前記防水施工面に接着固定すると共に、その防水シートの周囲内側の所要位置を前記防水施工面に接着固定する建築用防水シート施工法であって、上記防水シートの周囲内側の上記防水施工面の所要位置に、上面に熱溶着材層を有する導体片をアンカー固着し、前記防水シート上からその導体片に電磁誘導加熱を加えて、その導体片を発熱させ、その熱により、前記熱溶着材を溶融して前記シートを接着固定して、防水シートを導体片を介して防水施工面に固定する構成としたのである。 【0009】 【作用】 このように構成される建築用防水シート施工法は、防水シートの全周囲を防水施工面に接着固定するため、防水シート下面への水等の浸入が防止され、その内側は上面からの加熱のため何ら支障なく、接着固定を行い得る。そのとき、電磁誘導加熱によるため、防水シート表面が高温となることなく、導体が発熱して熱溶着材層が溶け、防水シートが接着固定される。 【0010】 【実施例1】 この実施例を図1乃至図4に示し、図1に示すように、まず防水施工面1の周縁を、2mm厚程度の長尺状の鉄片等の導体片3で囲み、その内側には所要位置に導体片3による棧fを設ける。 【0011】 これらの導体片3は、図2で示すように、アンカー釘4等で施工面1に止める。また、この導体片3を取り付ける施工面1は、建物の躯体コンクリート層やモルタル層等に限らず、直接断熱層に取り付けることもできる。 【0012】 一方、導体片3上には、熱溶着材層5が設けられている。熱溶着材層5は、ポリエステル樹脂等の溶けて接着性を発揮する熱可塑性合成樹脂等により、その樹脂粉末を直接導体片3上に所要厚み盛ってホットメルト法によって形成するか、予め、前記樹脂を塗布した、例えばアルミ接着テープを導体片3上に貼り付けて、導体片3上に熱溶着材層5を形成してもよい。この様に、アルミ製テープを使用すると、アルミ基材によって導体面が形成されるため、導体片3には、非導体のものも使用でき、また、アルミ基材を導体片3とすることもできる。熱溶着材層5は、工場等で前もって形成しておいても良いが、現場で形成するようにしても良い。さらに、導体片3には、被膜層に熱溶着性のある、例えば塩化ビニール被膜鋼板等も使用することができる。 【0013】 一方、前もって、工場又は現場で、所要幅のロール状シートをその側縁で接合して、施工面1と同形の防水シート2を作り、前記導体片3が取り付けられた施工面1に、その防水シート2を置いて十分な位置決めやカッティングによる微調整を行い、防水シート2上から棧fに、図3で示すアイロン型の溶着工具6を当てる。前記工具6は内部に誘導コイル7が設けられており、誘導コイル7は、交番電流により励磁され、その発生磁界の電磁誘導作用により、導体片3にうず電流を生じさせる。このため、導体片3はうず電流損により発熱し、上面の熱溶着材層5が溶けて、防水シート2を接着固定する。 【0014】 このように、この施工法は、溶着工具6で熱溶着材5を溶かす迄は、防水シート2が施工面1に固定されないため、防水シート2を施工面1上で何度でも動かし、ずれを直してから接着できる。このため、従来のごとく乾燥接着材を用いた施工法では、シート2を小分けにし、慎重に「ずれ」を生じないように少しずつ貼り付けていたのに対し、この施工法は、施工工程数も少なくて済み、しかも、特別な接着技術がなくてもきれいに仕上げることができる。なお、導体片3は、棧f状とする必要はなく、図4に示すように、防水シート2を固定できるだけの不連続な所要位置に導体片3を設けた簡便なものとすることもできる。 【0015】 一方、導体片3加熱時の工具本体6は、発熱せず、安全でしかも防水シート2内側の導体片3の発熱により熱溶着材層5を溶かすため、防水シート2表面は高温にならず、熱による損傷、すなわち、熱収縮やピンホール等を起さない。また、導体片3への直接加熱の為、熱風加熱に比して加熱効率も良い。しかも、熱溶着材5を用いて防水シート2を止めているため、従来の熱風を用いるのと同様、施工時に施工面1の乾燥を待つ必要もなく、雨天時の施工も可能である。 【0016】 さらに、溶着工具6は、熱溶着材層5に直接触れないので、工具6に溶着材5が付かず、いやな臭いや煙りに悩まされない。また、防水シート2の貼り直しや修正も、工具6を接着部に当てると簡単に溶着材5を再溶融できるため、その作業もし易く、防水シート2施工後の仕上りも導体片3が2mm厚と薄いため、防水シート2からの出っ張りも気にならない。なお、上記導体片3の厚さは2mm厚に限定されるものではなく、施工面に対応して適宜選ぶことができる(以下、同じ)。 【0017】 また、施工面1に前記の大きな防水シート2を持ち込めないような場合には、従来と同様に、ロール状シートを持ち込んで所要長さのシート片に切断して使用してもよいが、工場において、施工面1を2〜3片で被える持ち込める大きさの防水シート2を、ロール状シートを接合して作って使用してもよい。どちらにしろ、各防水シート片を導体片3に溶着工具6でもって固定すると共に、各シート片側縁を重ね合わせ、その重ね合わせ縁を、従来のごとく溶剤または温風等により、溶かして接着する。その接着は、棧f上で行う必要はないが、図5に示すように導体片3上で行なってもよい。このとき、従来と同様に防水シート片を突き合わせて行なってもよいが、その場合、その接合縁にはコーキング等の防水処理を行なうとよい。 【0018】 なお、施工面1に合せて前もって工場等で棧fを作っておくと施工のスピードアップを図ることができる。 【0019】 【実施例2】 この実施例は、図6に示すように、例えば陸屋根等の躯体コンクリート層8上に、目地材9を施工用防水シート2’のロール幅より少し狭い間隔、例えば目地材9幅分内側に配置する。この目地材9の頂部10は、全長に亘って図7に示すように、板状導体11が予め、溶接、ネジ止めまたは接着その他の方法によって設けられており、その導体面11上に、前記実施例と同様にして、熱溶着材層5が形成されている。上記導体11は、目地材9が導体の場合には、目地材9をそのまま利用すればよく、その頂部10に直接熱溶着材層5を形成する。 【0020】 一方、躯体コンクリート層8には、図8に示すように、ならしモルタルを打設して、モルタル層12を前記目地材9の高さに一致させ、このモルタル層12が硬化した所で防水シート2’を前記実施例と同様にして張る。 【0021】 なお、熱溶着材層5を粘着アルミテープの表面に形成したものを用いると、従来の目地材9に、貼り付けるだけでこの施工法を行なうこともできる。 【0022】 【効果】 この発明は、以上のように構成し、防水シート表面に高温を加えずに行なえるので、防水シート表面を熱損傷することが少なく、接着部分に剥れやピンホール等を生じさせ難く、施工も簡単で漏水等を起すことが少ない。 【図面の簡単な説明】 【図1】この発明に係る一実施例の斜視図 【図2】図1の要部断面図 【図3】溶着工具斜視図 【図4】他の実施例の斜視図 【図5】他の実施例の要部断面図 【図6】他の実施例の斜視図 【図7】目地材の一部断面斜視図 【図8】図6の要部断面図 【符号の説明】 1 防水施工面 2 防水シート 3 導体片 5 熱溶着材層 7 電磁誘導コイル |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2001-03-27 |
出願番号 | 特願平3-16357 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(E04D)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 青山 敏 |
特許庁審判長 |
幸長 保次郎 |
特許庁審判官 |
鈴木 公子 宮崎 恭 |
登録日 | 1999-08-27 |
登録番号 | 特許第2971149号(P2971149) |
権利者 | アーキヤマデ株式会社 |
発明の名称 | 建築用防水シート施工法 |
代理人 | 鳥居 和久 |
代理人 | 東尾 正博 |
代理人 | 長谷川 曉司 |
代理人 | 鎌田 文二 |
代理人 | 鳥居 和久 |
代理人 | 鎌田 文二 |
代理人 | 東尾 正博 |