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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1073184
異議申立番号 異議2001-71967  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-10-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-20 
確定日 2003-01-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3126697号「高強度薄壁ハニカム構造体」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3126697号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許3126697号の請求項1〜8に係る発明は、平成10年3月31日に特許出願され、平成12年11月2日に特許の設定登録がなされたものである。
その後、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年2月19日に訂正請求がなされたものである。
(1)訂正の内容
(i)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を特許請求の範囲の減縮を目的として、以下の通りに訂正する。
「【請求項1】複数のセル通路を有するセラミック製の押出成形ハニカム構造体であって、該ハニカム構造体を構成するセル隔壁の基本セル隔壁厚さ(tc)がtc≦0.11mm、外壁厚さ(ts)がts≧0.2mmであり、該基本セル隔壁厚さ部分の開口率が80%以上であるとともに、最外周セル隔壁厚さ(tr1)と該外壁厚さ(ts)が、0.3≦tr1/ts≦0.7の関係を有し、さらに、ハニカム構造体の最外周から内側に向かって3セルまで、内部セルから最外周セルに向けて順次隔壁厚さ(tr3〜tr1)を、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9の比率で厚くしたことを特徴とする高強度薄壁ハニカム構造体。」
(ii)訂正事項b
「特許請求の範囲」の請求項2を削除する。
(iii)訂正事項c
「特許請求の範囲」の請求項3〜8に係る記載、
「【請求項3】ハニカム構造体の最外周セル隔壁と外壁とが接する個所を肉盛りした請求項1又は2に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項4】隣接する隔壁が、隔壁間が狭まりながら外壁と接する個所で、少なくともそれらの隔壁間において外壁の内側に肉盛りした請求項1又は2に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項5】ハニカム構造体のセル形状が、正方形、長方形、菱形及び六角形のいずれかである請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項6】ハニカム構造体が、コージェライト、アルミナ、ムライト、窒化珪素、及び炭化珪素からなる群から選ばれた少なくとも1種のセラミック材料で形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項7】自動車排気ガス浄化触媒用担体に用いられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項8】そのセル隔壁表面に触媒成分が担持され、その構造体の外周面で把持されて、触媒コンバーターに組み込まれる請求項1〜7のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。」を、
「【請求項2】ハニカム構造体の最外周セル隔壁と外壁とが接する個所を肉盛りした請求項1に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項3】隣接する隔壁が、隔壁間が狭まりながら外壁と接する個所で、少なくともそれらの隔壁間において外壁の内側に肉盛りした請求項1に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項4】ハニカム構造体のセル形状が、正方形、長方形、菱形及び六角形のいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項5】ハニカム構造体が、コージェライト、アルミナ、ムライト、窒化珪素、及び炭化珪素からなる群から選ばれた少なくとも1種のセラミック材料で形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項6】自動車排気ガス浄化触媒用担体に用いられる請求項1〜5のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項7】そのセル隔壁表面に触媒成分が担持され、その構造体の外周面で把持されて、触媒コンバーターに組み込まれる請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。」に訂正する。
(iv)訂正事項d
明細書の段落番号[0009]を、
「【課題を解決するための手段】すなわち、本発明によれば、複数のセル通路を有するセラミック製の押出成形ハニカム構造体であって、該ハニカム構造体を構成するセル隔壁の基本セル隔壁厚さ(tc)がtc≦0.11mm、外壁厚さ(ts)がts≧0.2mmであり、該基本セル隔壁厚さ部分の開口率が80%以上であるとともに、最外周セル隔壁厚さ(tr1)と該外壁厚さ(ts)が、0.3≦tr1/ts≦0.7の関係を有し、さらに、ハニカム構造体の最外周から内側に向かって3セルまで、内部セルから最外周セルに向けて順次隔壁厚さ(tr3〜tr1)を、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr33/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9の比率で厚くしたことを特徴とする高強度薄壁ハニカム構造体が提供される。」に訂正する。
(v)訂正事項e
明細書の段落番号[0010]を、
「なお、上記の高強度隔壁ハニカム構造体においては、ハニカム構造体の最外周セル隔壁と外壁とが接する個所を肉盛りしたり、隣接する隔壁が、隔壁間が狭まりながら外壁と接する個所で、少なくともそれらの隔壁間において外壁の内側に肉盛りすることが、より好ましい。」に訂正する。
(vi)訂正事項f
明細書の段落番号[0023]を、
「以下、本発明において、ハニカム構造体を構成する基本セル隔壁厚さ、外壁厚さ、及び最外周セル隔壁厚さについて、詳しく説明する。
上記したように、本発明においては、ハニカム構造体を構成するセル隔壁の基本セル隔壁厚さ(tc)がtc≦0.11mm、 外壁厚さ(ts)がts≧0.2mmであり、該基本セル隔壁厚さ部分の開口率が80%以上であるとともに、最外周セル隔壁厚さ(tr1)と該外壁厚さ(ts)が、0.3≦tr1/ts≦0.7の関係を有し、さらに、ハニカム構造体の最外周から内側に向かって3セルまで、内部セルから最外周セルに向けて順次隔壁厚さ(tr3〜tr1)を、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9の比率で厚くして構成したものである。」に訂正する。
(vii)訂正事項g
明細書の段落番号[0024]を、
「上記のように、本発明のハニカム構造体は、ハニカム構造体を構成するセル隔壁の基本セル隔壁厚さtcが0.11mm以下という薄壁であって、外壁厚さtsが0.2mm以上、基本セル隔壁厚さ部分の開口率が80%以上という条件においては、最外周から内側に向かって3セルまでの隔壁厚さ(tr3〜tr1)と基本セル隔壁厚さtcとの関係を、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9とし、かつ、外壁厚さtsと最外周セル隔壁厚さtr1との関係を、0.3≦tr1/ts≦0.7という範囲に設定することにより、薄壁化したハニカム構造体の「アイソスタティック強度」、「耐熱衝撃性」、及び「外壁角部強度」をバランス良く満足させることができる。」に訂正する。
(viii )訂正事項h
明細書の段落番号[0026]を、
「図3(a)(b)は、高強度薄壁ハニカム構造体における最外周セル隔壁と基本セル隔壁の厚さの関係を示しており、ハニカム構造体1は複数のセル通路3を有するもので、基本的に、セル隔壁2と外壁4とからハニカム構造体1を構成している。そして、セル隔壁2を、基本セル隔壁2bと最外周セル隔壁2aとに分け、この基本セル隔壁2bと最外周セル隔壁2a,及び外壁4のそれぞれの厚さの関係を規定したものである。なお、5は最外周セル隔壁2aと基本セル隔壁2bとの境界線を示す。」に訂正する。
(ix)訂正事項i
明細書の段落番号[0027]を、
「すなわち、このようなハニカム構造体1においては、基本セル隔壁2bの厚さtcが最外周セル隔壁2aの厚さtrの0.7〜0.9倍の範囲としている。
これは、基本セル隔壁厚さtcが、最外周セル隔壁厚さtrの0.9倍を超過する場合、すなわち、基本セル隔壁厚さtcが、最外周セル隔壁厚さtrとほぼ同-である場合には、ハニカム構造体の外周面からの外圧による破壊強度(アイソスタティック強度)が十分に確保でてきないからである。
一方、基本セル隔壁厚さtcが、最外周セル隔壁厚さtrの0.7倍に満たない場合には、押出成形時に最外周部のセル隔壁(リブ)の変形が大きくなるとともに、変形リブの量も増加するため、ハニカム構造体の外周面からの外圧による破壊強度(アイソスタティック強度)が低下してしまうからである。」に訂正する
(x)訂正事項]j
明細書の段落番号[0030]を、
「例えば、外周から3セル目まで厚くした場合、内部セルと3セル目、3セル目と2セル目、2セル目と1セル目(最外周セル)の隔壁厚さの比は各々0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9の範囲内とし、上記のtc/trの比の範囲に合わせる。
厚くするセルは最外周から3セルまでが望ましい。これ以上、内部まで厚くすると担体の圧力損失性能に無視できない影響を及ぼす。また、担体の質量も所定以上に重くなることにより、熱容量が増えるので、コールドスタート時の触媒の暖機性能にも影響を及ぼしかねない。なお、最外周から3セル分の範囲であれば、実際上圧力損失に及ぼす影響はほとんどない。」に訂正する。
(xi)訂正事項k
明細書の段落番号[0041][表1]の上欄の「最外周セル隔厚さmmtr3-tr13-1セル目」を「3セルまでの隔壁厚さmmtr3-tr1」に訂正し、かつ「実施例1、3、4、5、7、8、9、12」を削除するとともに「実施例2、6、10、11、13」をそれぞれ「実施例1、2、3、4、5」に訂正する。
(xii)訂正事項l
明細書の段落番号[0042][表2]の上欄の「最外周セル隔厚さmmtr3-tr13-1セル目」を「3セルまでの隔壁厚さmmtr3-tr1」に訂正し、かつ「実施例14、16、17、18、20、24、26、28、32」を削除するとともに「実施例15、19、21、22、23、25、27、29、30、31、33」をそれぞれ「実施例6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16」に訂正する。
(xiii)訂正事項m
明細書の段落番号[0043]を、
「表1及び表2の結果から明らかなように、基本セル隔壁厚さが0.17mmでハニカム担体の開ロ率が80%未満の場合には、従来技術にみられるような外周部隔壁を厚くしなくても十分な「アイソスタティック強度」、「耐熱衝撃性」、「外壁角部強度」を有していたが、基本隔壁厚さが0.11mm以下となり担体開口率が80%以上となった場合には、外周部隔壁を厚くしない構造では十分な特性が得られない。
また、表1と2の結果から、「アイソスタティック強度」、「耐熱衝撃性」、「外壁角部強度」を全て満足するためには、基本セル隔壁厚さ(tc)と最外周から内側に向かって3セルまでの隔壁厚さ(tr1〜tr3)との間、および最外周セル隔壁厚さ(tr1)と外壁厚さ(ts)との間に、適切な比の範囲、即ち、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9、且つ0.3≦tr1/ts≦0.7が存在していることがわかる。」に訂正する。
(xiv)訂正事項n
明細書の段落番号[0044]を、
「また、表1と2に示されている通り、基本セル隔壁厚さtcと外壁厚さtsの組み合わせで、最外周セルを構成する隔壁のみでなく、最外周から3セル内部まで厚くすることで、上述の適切な比の範囲内にして、各性能特性を満足させることが出来る。
なお、実施例には示さなかったが、外壁厚さ0.3mmとほとんど同じ厚さまで最外周セル隔壁を厚くした場合には、外壁厚さを0.5mm以上に厚くした場合と同じように「耐熱衝撃性」が低下する傾向が見られた。これは、最外周セル隔壁厚さをあまり厚くすると、外周部の熱容量が大きくなり、担体内部と外周部との温度差が大きくなることに起因している考えられる。」に訂正する。
(xv)訂正事項o
明細書の図面の簡単な説明を、
「【図1】ハニカム構造体の一例を示しており、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図2】ハニカム構造体の部分拡大図である。
【図3】高強度薄壁ハニカム構造体における最外周セル隔壁と基本セル隔壁の厚さの関係を示す一例であり、(a)は、概略部分断面図であり、(b)は、(a)のA部詳細図である。
【図4】ハニカム構造体の最外周部のセル隔壁の変形を防止する構造の一例を示した部分断面説明図である。
【図5】ハニカム構造体に接点肉盛りを施した一実施例を示す部分断面説明図である。
【図6】ハニカム構造体に接点肉盛りを施した他の実施例を示す部分断面説明図である。
【図7】ハニカム構造体にV字接続肉盛りを施した一実施例を示す部分断面説明図である。
【図8】ハニカム構造体の外壁厚さとアイソスタティック強度の関係を示すグラフである。
【図9】ハニカム構造体の外壁厚さと耐熱衝撃性の関係を示すグラフである。
【図10】ハニカム構造体の外壁厚さと外壁角部強度の関係を示すグラフである。
【図11】最外周セル隔壁厚さと外壁厚さの関係を示す模式図である。
【図12】ハニカム担体がコンバーター容器に組み込まれた例を示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・ハニカム構造体、2・・・セル隔壁、2a・・・最外周セル隔壁、2b・・・基本セル隔壁、3・・・セル通路、4・・・外壁、5・・・最外周セル隔壁と基本セル隔壁との境界線、6・・・肉盛り、7・・・V字接続部、8・・・最外周セル、9・・・最外周から2番目のセル、10・・・外周部セルの隔壁、11・・・コンバーター容器、12・・・リング、13・・・ハニカム担体、14・・・緩衝部材。」に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項(a)は、本件発明に係る「セラミックハニカム構造体」を技術的に限定するものであり、訂正事項(b)は請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
上記訂正事項(c)〜(o)は、前記訂正事項(a)及び(b)に係る訂正に対応して他の請求項の記載及び明細書の発明の詳細な説明の欄の記載を上記訂正事項(a)及び(b)に伴って、該訂正に整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)特許異議申立人株式会社デンソーに対して
(特許異議申立ての理由の概要)
特許異議申立人株式会社デンソーは、以下の甲第1号証を提出して、本件請求項1〜3及び請求項5〜8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、また、本件請求項1〜8に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって本件請求項1〜8に係る発明の特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものであると主張している。
(証拠の記載内容)
甲第1号証(再公表特許公報WO98/05602):刊行物1
ア.「本願発明のハニカム構造体1は、円筒形状をなすとともに、カオリン,タルク,アルミナ等を焼成することによって得られるコージェライト材料よりなる。」(第8頁14〜16行)
イ.「 この隔壁3は、互いに隣接する断面四角形状の流路7を形成するとともに、厚さ0.104mmよりなる。」(第8頁21〜22行)
ウ.「 この粘土をスクリュー成形機により、あるいは他の成形機を用いて棒状に成形した後、プランジャー成形機により押し出し型を通して焼成前のハニカム構造体であるハニカム担体を成形する。」(第10頁4〜6行)
エ.「このハニカム構造体1は、直径103mm,長さ150mmで400メッシュの流路7を形成する気孔率35%である隔壁3が形成されている。」(第10頁11〜13行)
オ.「周壁3より、ハニカム構造体の中心方向に2セル分だけハニカム構造体の中心方向に伸びる領域において、隔壁3の平均厚さよりも大である厚さ0.2mmの隔壁補強部12が形成されている。」(第13頁下3〜6行)
カ.「図10においては、隔壁補強部12の厚さを0.15mmに固定するとともに、隔壁の厚さ0.104mm、アール部の半径を0.1mmとし、さらに気孔率35%のハニカム構造体を用いた。」(第15頁下6〜8行)
キ.「即ち、流路22,32の断面形状が断面六角形状であっても、本願発明の作用・効果を達成することができる。・・・隔壁厚さ(T)0.15mm、平均接触幅(w)0.25mmであるが、図14のように隔壁補強部31(厚さt)を含めた構造をとることもできる。」(第17頁3〜7行)
(当審の判断)
(i)本件訂正発明1について
本件訂正発明1は薄壁化したハニカム構造体の「アイソスタティック強度」、「耐熱衝撃性」及び「外壁角部強度」をバランス良く満足させることができる「セラミックハニカム構造体」(【0024】参照)の提供に関するものであり、具体的には、本件訂正発明1の特徴は、基本セル隔壁厚さ(tc)がtc≦0.11mmで外壁厚さ(ts)が(ts)≧0.2mmの条件の時、最外周セル隔壁厚さ(tr1)と外壁厚さ(ts)が、0.3≦tr1/ts≦0.7の関係を有するとともに、ハニカム構造体の最外周から内側に向かって3セルまで、内部セルから最外周セルに向けて順次隔壁厚さ(tr3〜tr1)を、特定比率で順次厚くしたことにあるものであり、そのことによって、特に、成形時における口金中の原料流動の流動特性を向上させ、流動特性のアンバランスに起因する隔壁変形に伴うアイソスタィック強度の低下を防止するという顕著な効果を奏した点にあると認められる。
そこで、このような観点から、上記引用刊行物1について検討すると、引用刊行物1には、本件訂正発明1の如き、「アイソスタティック強度」、「耐熱衝撃性」及び「外壁角部強度」をバランス良く満足させることができる薄壁化したハニカム構造体でかつ十分なアイソスタティック破壊強度を満足する「セラミックハニカム構造体」については何ら記載されていない。
すなわち、引用刊行物1には、接触幅を隔壁の平均厚さより大きく、かつ一定値以下とすることにより、縁欠けを防止することが示されているだけであり、本件訂正発明1の最外周から内側に向かって3セルまでの関係式及びその余の点については記載がない。
したがって、本件訂正発明1は、特許を受けることができるものであり、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
(ii)本件訂正発明2〜7について
本件訂正発明2〜7に係る発明は、本件訂正発明1にさらなる限定を加えたものであるから、それぞれ刊行物1に記載された発明と同一でもなければ、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)特許異議申立人日立金属株式会社に対して
(特許異議申立ての理由の概要)
特許異議申立人日立金属株式会社は、以下の甲第1〜2号証を提出して、本件請求項1、5,6,7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、また本件請求項1〜8に係る発明は、甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件請求項1〜8に係る発明の特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものであると主張している。
(証拠の記載内容)
甲第1号証:再公表特許公報WO98/05602(上記刊行物1と記載内容は同じ))
甲第2号証(特開昭55-155742号公報):刊行物2:
第1図には、ハニカム触媒が金属容器に把持された触媒コンバータが示されている。
(当審の判断)
甲第1号証は上記刊行物1と同じものであり、甲第2号証にも本件訂正発明1の主要な構成について何ら記載がないから、前記した(当審の判断)と同じ理由により、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
4.むすび
以上のとおり、特許異議申立の理由及び証拠によっては、訂正後の本件請求項1〜7に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明の特許を取り消すべき理由および証拠を発見しない。
よって、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高強度薄壁ハニカム構造体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のセル通路を有するセラミック製の押出成形ハニカム構造体であって、該ハニカム構造体を構成するセル隔壁の基本セル隔壁厚さ(tc)がtc≦0.11mm、外壁厚さ(ts)がts≧0.2mmであり、該基本セル隔壁厚さ部分の開口率が80%以上であるとともに、最外周セル隔壁厚さ(tr1)と該外壁厚さ(ts)が、0.3≦tr1/ts≦0.7の関係を有し、
さらに、ハニカム構造体の最外周から内側に向かって3セルまで、内部セルから最外周セルに向けて順次隔壁厚さ(tr3〜tr1)を、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9の比率で厚くしたことを特徴とする高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項2】 ハニカム構造体の最外周セル隔壁と外壁とが接する個所を肉盛りした請求項1に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項3】 隣接する隔壁が、隔壁間が狭まりながら外壁と接する個所で、少なくともそれらの隔壁間において外壁の内側に肉盛りした請求項1に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項4】 ハニカム構造体のセル形状が、正方形、長方形、菱形及び六角形のいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項5】 ハニカム構造体が、コージェライト、アルミナ、ムライト、窒化珪素、及び炭化珪素からなる群から選ばれた少なくとも1種のセラミック材料で形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項6】 自動車排気ガス浄化触媒用担体に用いられる請求項1〜5のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項7】 そのセル隔壁表面に触媒成分が担持され、その構造体の外周面で把持されて、触媒コンバーターに組み込まれる請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、自動車排気ガス浄化触媒用担体などとして、好適に用いることができる高強度薄壁ハニカム構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】 従来、自動車排気ガス浄化用ハニカム触媒は、ハニカム担体(ハニカム構造体)の軸方向強度が断面方向よりも高いことから、ハニカム担体の軸方向で把持する構造が採用されていたが、その軸方向に把持する際に外周部付近で破損することを防ぐため、外周部のセル隔壁(リブ)を内部よりも厚くして、ハニカム担体の軸方向の耐圧強度を高めていた。
【0003】 しかしながら、最近、エンジンの高出力化指向によるハニカム触媒での圧損の低減要求や、排ガス規制強化に伴う触媒担体全体の有効利用により、ハニカム触媒担体を軸方向把持するのではなく、ハニカム触媒担体の外周面で主に把持する構造が採用され始めた。これは、排ガス規制強化により触媒容積が増加して触媒質量が増加するため、エンジン振動に対して軸方向把持では把持面積が少なくて十分に把持できなくなったことも一因であった。
【0004】 また、一方では触媒の浄化性能を向上させるために、ハニカム担体のセル隔壁厚さを薄くしてハニカム担体を軽量化することにより、触媒の熱容量を低減して浄化性能の暖機特性を向上させる動きが始まっている。
【0005】 このため、セル隔壁の薄壁化でハニカム担体の外周面からの外圧による破壊強度は一層低下する傾向となっている。さらに、最近の排ガス規制の更なる強化のため、エンジン燃焼条件の改善、触媒浄化性能の向上を狙いとして、排気ガス温度が年々上昇してきており、ハニカム担体に要求される耐熱衝撃性も厳しくなってきている。このように、最近のセル隔壁の薄壁化やハニカム担体の外周面把持採用、および排ガス温度の上昇により、ハニカム担体の外周壁厚さが大きな問題となってきた。
【0006】 以上の点に鑑み、特公昭54-110189号公報において、ハニカム担体の横断面中心方向ヘリブ厚を規則的に薄くした構造が提案されているが、この構造ではハニカム担体全体にわたって隔壁を薄くできないため、ハニカム担体質量が重くなり、暖磯特性上問題となる。また、圧力損失上も好ましくない。
【0007】 また、特開昭54-150406号公報あるいは特開昭55-147154号公報において、外周部のセル隔壁を内部のセル隔壁よりも厚くした構造が提案されているが、ハニカム担体の外周壁厚さについては何ら触れられておらず、外周壁厚さとセル隔壁の関係についても何も記載されていない。更に、これらの従来技術においては、内部隔壁厚さが0.15mm以上と厚いハニカム構造体で、しかも軸方向把持であるため、外周壁厚さは問題とならなかった。しいて挙げれば、外周壁厚さが厚くなりすぎると耐熱衝撃特性が低下すると指摘されているに過ぎなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】 従って、本発明は上記した従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、薄壁化したハニカム構造体のアイソスタティック強度と耐熱衝撃性をバランス良く向上させるとともに、ハニカム構造体の外周壁及ぴ角部の損傷を防止することができる高強度薄壁ハニカム構造体を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】 すなわち、本発明によれば、複数のセル通路を有するセラミック製の押出成形ハニカム構造体であって、該ハニカム構造体を構成するセル隔壁の基本セル隔壁厚さ(tc)がtc≦0.11mm、外壁厚さ(ts)がts≧0.2mmであり、該基本セル隔壁厚さ部分の開口率が80%以上であるとともに、最外周セル隔壁厚さ(tr1)と該外壁厚さ(ts)が、0.3≦tr1/ts≦0.7の関係を有し、さらに、ハニカム構造体の最外周から内側に向かって3セルまで、内部セルから最外周セルに向けて順次隔壁厚さ(tr3〜tr1)を、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9の比率で厚くしたことを特徴とする高強度薄壁ハニカム構造体が提供される。
【0010】 なお、上記の高強度薄壁ハニカム構造体においては、ハニカム構造体の最外周セル隔壁と外壁とが接する個所を肉盛りしたり、隣接する隔壁が、隔壁間が狭まりながら外壁と接する個所で、少なくともそれらの隔壁間において外壁の内側に肉盛りすることが、より好ましい。
【0011】
【0012】 尚、本発明においては、ハニカム構造体のセル形状が、正方形、長方形、菱形及ぴ六角形のいずれかであることが好ましい。また、ハニカム構造体が、コージェライト、アルミナ、ムライト、窒化珪素、炭化珪素等のセラミック材科で形成されていることが好ましい。また、本発明の高強度薄壁ハニカム構造体は、自動車排気ガス浄化触媒用担体として好適に用いられるものであり、通常、そのセル隔壁表面に触媒成分が担持され、その構造体の外周面で把持されて、触媒コンバーターに組み込まれるものである。
【0013】
【発明の実施の形態】 以下、本発明を詳しく説明する。
ハニカム担体はコージェライト質セラミックス材料が主流であり、格子状のスリットが加工された口金を用いて押出し成形によってハニカム構造体に成形され、乾燥、焼成して製品となる。従来、隔壁厚さが0.15mm以上と厚かった時には問題にならなかったが、隔壁厚さが薄くなると、押出し成形時に隔壁が変形し易いため、得られた焼成体のアイソスタティック強度試験を行うと、隔壁の変形した個所において低い強度で破壊してしまう。隔壁が真っ直ぐに成形されていれば、外周面から圧力が作用した場合、理論上は圧縮応力場となり、ハニカム構造体の破壊は隔壁の座屈あるいは外壁の座屈によって起こるのであるが、隔壁が変形していたり、外周壁厚さが極端に薄いと、その個所で隔壁に曲げ応力、即ち引っ張り応力が発生する。一般に圧縮強度より引っ張り強度の方がかなり低く、特にセラミックス材料では圧縮強度に対する引っ張り強度の比がおよそ1/10と金属材料がおよそ1/3であるのに比べて極めて引っ張り強度が圧縮強度より低い。従って隔壁の変形があると通常よりもかなり低い強度で破壊してしまう。さらに、薄壁ハニカム構造となることで、ハニカム担体をコンバーター内に把持して収納する場合や担体の取り扱いあるいは搬送工程においてハニカムの角部が欠損するあるいは外壁が隔離するという不具合が発生した。
【0014】 自動車排ガス浄化触媒担体用のハニカム担体には、触媒の担持性能以外に、構造体として「アイソスタティック強度」、「耐熱衝撃性」、「外壁角部強度」の性能が要求される。
アイソスタティック強度は、通常、担体の外周面把持による構造を採用する場合、把持面圧は最低保証値0.5MPa、望ましくは1.0MPaとされており、このため、担体のアイソスタティック強度の平均レベルは3.0MPa以上、望ましくは4.0MPa以上が要求される。
耐熱衝撃性については、排気ガス温度が年々上昇してきており、ハニカム担体に要求される耐熱衝撃性も厳しくなっていきており、耐熱衝撃性は実用上、750℃差以上、望ましくは800℃差以上が要求される。
【0015】 また、ハニカム担体は触媒化工程で触媒を担持されてから、コンバーターの缶体内に把持されるが、最近の薄壁化に伴い担体を搬送中に担体角部が片当たりしたり、担体同士が接触したりして損傷する場合が出てきた。そこで、搬送中の担体強度を評価するため、厚ゴムの板に担体の端面を押し当てて、押し当て荷重を加えた時ゴムが外側に伸びる力で、担体の外壁角部に応力集中を発生させることで、外壁角部の強度を評価した。各強度の担体を工程に適用したところ、担体外壁角部強度が3.5kN以上であれば搬送中の損傷発生が少なく、4.0kN以上であればほとんど発生しないことがわかった。
【0016】 従来、外周壁厚さを厚くすれば外周面圧に対して高強度化できるものと考えられていたが、実際に外径がφ90mm、長さ110mmでセル形状が正方形、隔壁厚さ0.11mm、セル数600cpsi(隔壁間隔1.04mm)のコージェライト質薄壁ハニカム構造体で外壁厚さを0.1〜0.9mmまで変えた試料を製作してアイソスタティック強度試験を実施した結果、図8に示すように、0.4mmよりも外壁厚さを厚くしても強度が向上せず逆に低下する傾向であった。ここでセル数600cpsiとは1平方インチ当たり600個のセルが存在することを意味しており、cpsiはcells persquare inchの略である。また、外壁厚さが薄すぎると外壁の剛性不足により外周壁から破壊してしまう。
【0017】 そこで、単に外周壁厚さを厚くしてもアイソスタティック強度が向上しない原因を調査したところ、外壁厚さを厚くするに従って、押出し成形直後の成形体で外周セルの隔壁(リブ)の変形が大きく、また変形した隔壁の量も増えていく傾向にあることが判明した。これは、押出し成形時に原料が口金のスリットを通過する際、外壁厚さを厚くすると外周壁を形成するスリットを通る原料流量が増えるため、外周セルのリブが外壁の方に引きずられてしまうためで、外壁での原料流れと隔壁での原料流れのアンバランスの顕著化が原因であった。また、隔壁自身が薄くなったことで座屈変形し易くなったことも大きな要因である。押出し成形後にハニカム構造体をその外周面において治具で受け止めるが、その時にハニカム構造体の自重で外壁及び外周部隔壁が変形する場合もある。
【0018】 材料力学によれば、座屈強度は基本的に下式で与えられ、座屈強度は隔壁厚さの二乗に比例する。隔壁の薄壁化がハニカム担体の強度に非常に大きな影響を及ぼしていることが判る。
座屈強度P = ( kπ2 E ) x ( t/L )2
( k:係数、E:ヤング率、L:隔壁長さ、t:隔壁厚さ)
【0019】 従来においては、隔壁厚さが厚かったため、隔壁自身も座屈変形し難く、また、外壁厚さにも近い厚さであったため、成形時のアンバランスもあまり問題とはならなかった。コージェライトに限らず、アルミナ、ムライト、窒化珪素、炭化珪素、ジルコニア等のセラミック材料で押出し成形する場合には、原料の水、バインダーを混ぜて混練したものを使うので、押出し成形工程におけるハニカム構造体の隔壁の変形については全く同じ理屈が成り立つ。前述した通り、隔壁の変形は圧縮加重による座屈が主な原因なので、セル形状が正方形に限らず、長方形、三角形、六角形についても同様な問題が発生する。
また、従来技術に見られるように、外周部の隔壁厚さを内部の隔壁よりも厚くした担体の強度を測定したところ、確かに強度は向上するが、あまり厚いと強度が低下する傾向が見られた。最外周隔壁厚さをかなり厚くした担体を調べたところ、最外周部の隔壁が変形していることが判った。これは、外壁の厚さを厚くしたことと同じ理屈によるものと考えられる。
【0020】 また、隔壁厚さ0.11mmの担体を電気炉内で所定時間加熱して均一温度にした後、炉内から取り出す過冷却耐熱衝撃性試験を実施した結果、図9に示すように、外壁厚さを厚くするに従い耐熱衝撃性が低下することを確認したが、0.7mm以上の外壁厚さで耐熱衝撃性の低下傾向が大きくなった。これは外壁が厚くなることで外壁自身の熱容量の影響も大きくなり、外壁内外での温度差が拡大したためと考えられる。
上記した特開昭54-150406号公報に見られるように、外壁に切り欠きを設けて外壁の熱容量を下げようという考えも外壁が十分に厚ければ効果があるが、隔壁厚さが0.11mm以下という極めて薄い隔壁では、外壁をあまり厚くすることも出来ず、切り欠きの効果も期待できない。逆に、外壁の剛性を低下させる危険がある。
【0021】 図10は、外壁角部強度を評価した結果を示しているが、外壁厚さが薄くなる程、角部強度が低下する傾向が見られた。特に、外壁厚さが0.3mmより薄い場合に強度が低下している。外壁角部強度を強化するには、単純に外壁を厚くすることが効果があるが、前述したアイソスタティック強度では、過度の外壁肉厚化は逆に強度低下を招く傾向があり、また、耐熱衝撃性についても同様であり、単純に外壁を厚くすることは好ましくない。
【0022】 本発明者は、上記の各種試験結果から、最近のハニカム担体の隔壁薄壁化においては、従来技術にみられるように、ただ単にハニカム担体の使用上の問題点のみを考えて外周部セルを構成する隔壁を厚くすれば良いという訳ではなく、ハニカム構造体の押出し成形性も考慮しなければならず、そのためには、最外周セル隔壁厚さと内部の基本セル隔壁厚さの関係だけではなく、基本セル隔壁厚さを考慮しながら外壁厚さと最外周セル隔壁厚さの関係についても注意して、ハニカム構造体の設計を行う必要があるという考えに至り、本発明を完成したのである。
なお、最外周セル隔壁厚さ、外壁厚さと強度、耐熱衝撃性の関係を模式的に整理すると、図11に示すごとくなる。
【0023】 以下、本発明において、ハニカム構造体を構成する基本セル隔壁厚さ、外壁厚さ、及び最外周セル隔壁厚さについて、詳しく説明する。
上記したように、本発明においては、ハニカム構造体を構成するセル隔壁の基本セル隔壁厚さ(tc)がtc≦0.11mm、外壁厚さ(ts)がts≧0.2mmであり、該基本セル隔壁厚さ部分の開口率が80%以上であるとともに、最外周セル隔壁厚さ(tr1)と該外壁厚さ(ts)が、0.3≦tr1/ts≦0.7の関係を有し、さらに、ハニカム構造体の最外周から内側に向かって3セルまで、内部セルから最外周セルに向けて順次隔壁厚さ(tr3〜tr1)を、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9の比率で厚くして構成したものである。
【0024】 上記のように、本発明のハニカム構造体は、ハニカム構造体を構成するセル隔壁の基本セル隔壁厚さtcが0.11mm以下という薄壁であって、外壁厚さtsが0.2mm以上、基本セル隔壁厚さ部分の開口率が80%以上という条件においては、最外周から内側に向かって3セルまでの隔壁厚さ(tr3〜tr1)と基本セル隔壁厚さtcとの関係を、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9とし、かつ、外壁厚さtsと最外周セル隔壁厚さtr1との関係を、0.3≦tr1/ts≦0.7という範囲に設定することにより、薄壁化したハニカム構造体の「アイソスタティック強度」、「耐熱衝撃性」、及び「外壁角部強度」をバランス良く満足させることができる。
【0025】 以下、本発明の高強度薄壁ハニカム構造体について、更に詳細に説明する。
図1(a)(b)は、ハニカム構造体の一例を示しており、ハニカム構造体1は、セル隔壁2により仕切られた多数の貫通孔(セル通路)3を有している。なお、4は外壁である。
図2は、ハニカム構造体の部分拡大図で、本発明で用いる用語が表す部分を示しており、外壁4に最も近接して最外周セル8があり、9は最外周から2番目のセルを示す。また、10は外周部セルの隔壁を示す。
【0026】 図3(a)(b)は、高強度薄壁ハニカム構造体における最外周セル隔壁と基本セル隔壁の厚さの関係を示しており、ハニカム構造体1は複数のセル通路3を有するもので、基本的に、セル隔壁2と外壁4とからハニカム構造体1を構成している。そして、セル隔壁2を、基本セル隔壁2bと最外周セル隔壁2aとに分け、この基本セル隔壁2bと最外周セル隔壁2a、及び外壁4のそれぞれの厚さの関係を規定したものである。なお、5は最外周セル隔壁2aと基本セル隔壁2bとの境界線を示す。
【0027】 すなわち、このようなハニカム構造体1においては、基本セル隔壁2bの厚さtcが最外周セル隔壁2aの厚さtrの0.7〜0.9倍の範囲としている。
これは、基本セル隔壁厚さtcが、最外周セル隔壁厚さtrの0.9倍を超過する場合、すなわち、基本セル隔壁厚さtcが、最外周セル隔壁厚さtrとほぼ同一である場合には、ハニカム構造体の外周面からの外圧による破壊強度(アイソスタティック強度)が十分に確保できないからである。
一方、基本セル隔壁厚さtcが、最外周セル隔壁厚さtrの0.7倍に満たない場合には、押出成形時に最外周部のセル隔壁(リブ)の変形が大きくなるとともに、変形リブの量も増加するため、ハニカム構造体の外周面からの外圧による破壊強度(アイソスタティック強度)が低下してしまうからである。
【0028】 また、本発明のハニカム構造体においては、最外周セル隔壁2aの厚さtrがハニカム構造体の外壁4の厚さtsの0.3〜0.7倍の範囲とする。
これは、最外周セル隔壁厚さtrがハニカム構造体の外壁厚さtsの0.7倍を超過する場合には、ハニカム構造体の外周面からの外圧による破壊強度(アイソスタティック強度)が十分でないため、外壁およぴ角部が剥離・損傷しやすくなるからである。一方、最外周セル隔壁厚さtrがハニカム構造体の外壁厚さtsの0.3倍に満たない場合、押出成形時に最外周部のセル隔壁(リブ)の変形が大きくなるとともに、変形リブの量も増加するため、ハニカム構造体の外周面からの外圧による破壊強度(アイソスタティック強度)が低下してしまうからである。
【0029】 このとき、図4に示すように、ハニカム構造体の最外周から内側に向かって3セル分以内の範囲において、内部セルから最外周セルに向けて順次隔壁厚さを、0.7≦tc/tr≦0.9、の比率で厚くすることにより、上記の「アイソスタティック強度」、「耐熱衝撃性」、及び「外壁角部強度」を満足させることが出来る。
ハニカム構造体において、基本隔壁厚さと最外周セルの隔壁厚さの比が小さい領域、即ち最外周リブ厚さが比較的厚い領域では強度が低下する傾向がある。これは、前述したことと同様の考え方で説明され、最外周の隔壁と内部の隔壁での成形時での口金中原料流動のアンバランスに起因している。従って、最外周セルの内側のセルについても隔壁を厚くすることで強度が向上できる。この場合には、最外周から数セル分のみ内側に向かうに従ってリブ厚さを順次薄くして基本リブ厚さに一致させる。薄くする比率は先の基本隔壁厚さと最外周隔壁厚さの比の範囲に従えば良い。
【0030】 例えば、外周から3セル目まで厚くした場合、内部セルと3セル目、3セル目と2セル目、2セル目と1セル目(最外周セル)の隔壁厚さの比は各々0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9の範囲内とし、上記のtc/trの比の範囲に合わせる。
厚くするセルは最外周から3セルまでが望ましい。これ以上、内部まで厚くすると担体の圧力損失性能に無視できない影響を及ぼす。また、担体の質量も所定以上に重くなることにより、熱容量が増えるので、コールドスタート時の触媒の暖機性能にも影響を及ぼしかねない。なお、最外周から3セル分の範囲であれば、実際上圧力損失に及ぼす影響はほとんどない。
【0031】 以上、外壁及び最外周セル隔壁を所定の範囲で厚くしたハニカム構造体について説明したが、このような構成を有するハニカム構造体は、基本的にいうと、成形時の口金中原料流動のアンバランスを小さくしたものである。
しかしながら、この構成のハニカム構造体では、外周部の全体的な壁の厚肉化によりハニカム担体の重量が増加するという一面もある。そこで、この構成のハニカム構造体の特性をさらに向上させる手段として、ハニカム構造体の最外周セル隔壁と外壁とが接する個所を肉盛り(接点肉盛り)したり、隣接する隔壁が、隔壁間が狭まりながら外壁と接する個所で、少なくともそれらの隔壁間において外壁の内側に肉盛り(V字接続肉盛り)することを挙げることができる。
【0032】 図5は、ハニカム構造体に接点肉盛りを施した一実施例を示す部分断面説明図、図6は、ハニカム構造体に接点肉盛りを施した他の実施例を示す部分断面説明図であり、ハニカム構造体の最外周セル隔壁2aと外壁4とが接する個所を肉盛りした例を示している。このような構成により、外壁厚さの過剰な肉厚化を避け、セル隔壁の変形を抑制することができる。
また、図7は、ハニカム構造体にV字接続肉盛りを施した一実施例を示す部分断面説明図であり、最外周セル隔壁2aで隣接する隔壁間が狭まりながら外壁4と接する個所(V字接続部7)で、少なくともそれらの隔壁2a,2a間において外壁の内側に肉盛り6をして、外壁4を内側に肉厚化した。このような手段を採用することにより、隔壁(リブ)の変形を抑制でき、しかもアイソスタティック強度も向上する。
【0033】 なお、肉盛りの量としては、最外周セル隔壁2aの長さの1/4以上であることが好ましく、1/3以上であることがより好ましい。
本発明のハニカム構造体のセル形状としては、特に限定されないが、正方形、長方形、菱形及ぴ六角形のいずれかであることが好ましい。また、本発明のハニカム構造体は、コージェライト、アルミナ、ムライト、窒化珪素、炭化珪素等のセラミック材科で形成されていることが好ましい。
【0034】 また、本発明の高強度薄壁ハニカム構造体は、自動車排気ガス浄化触媒用担体として好適に用いられ、通常、そのセル隔壁表面に触媒成分が担持され、その担体の外周面で把持されて、触媒コンバーターに組み込まれる。
図12(a)(b)はハニカム担体がコンバーター容器に組み込まれた例を示す説明図で、ハニカム担体13がコンバーター容器11内において、その外周面でリング12により把持されて組み込まれている。リング12としては、通常、金属メッシュ製のものが使用されるが、これに限定されない。なお、14はコンバーター容器11とハニカム担体13の外周面との間に介在するマット、クロスなどの緩衝部材である。
【0035】
【実施例】 次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
なお、実施例で得られたハニカム構造体は、以下に示す方法により性能を評価した。
【0036】(アイソスタティック強度試験)
この試験は、ゴムの筒状容器に担体を入れてアルミ製板で蓋をして、水中で等方加圧圧縮を行う試験で、コンバーターの缶体に担体が外周面把持される場合の圧縮負荷加重を模擬した試験である。アイソスタティック強度は、担体が破壊した時の加圧圧力値で示され、社団法人自動車技術会発行の自動車規格JASO規格M505-87で規定されている。
【0037】(耐熱衝撃性試験)
この試験は、室温より所定温度高い温度に保った電気炉に室温のハニカム担体を入れて20分間保持後、耐火レンガ上へ担体を取り出し、外観を観察して金属棒で担体外周部を軽く叩く試験である。担体にクラックが観察されず、かつ打音が金属音で鈍い音がしなければ合格となり、電気炉内温度を50℃ステップで順次上げていく毎に同様の検査を不合格になるまで繰り返す。室温より950℃高い温度で不合格となる場合には、耐熱衝撃性は900℃差ということになる。
【0038】(外壁角部強度試験)
この試験は、厚さ3mmのネオプレンゴムの上にハニカム担体を置き、担体上部からウレタンシートを貼ったアルミ板を介して下方に荷重を負荷する試験で、強度はネオプレンゴムと接している担体外壁の破壊する時の荷重値で示される。
【0039】(実施例1〜33、比較例1〜37)
外周部強度を向上する目的で、表1及び表2に示すように、最外周セルを構成する隔壁厚さを内部の基本セル隔壁厚さよりも厚くし、さらに外壁厚さを変えた構造のハニカム担体を各種製作して「アイソスタティック強度試験」、「耐熱衝撃性試験」、「外壁角部強度試験」を実施した。その結果を表1及び表2に示す。
【0040】 なお、実施例に供した試料は、タルク、カオリン、アルミナ等の混練原料を押出成形し、焼成して得られた直径106mm、長さ155mmのコージェライト質ハニカム構造体(担体)で、表1及び表2に示すセル数、基本セル隔壁厚さ、最外周セル隔壁厚さ、外壁厚さを有する各種ハニカム担体を準備した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】 表1及び表2の結果から明らかなように、基本セル隔壁厚さが0.17mmでハニカム担体の開口率が80%未満の場合には、従来技術にみられるような外周部隔壁を厚くしなくても十分な「アイソスタティック強度」、「耐熱衝撃性」、「外壁角部強度」を有していたが、基本隔壁厚さが0.11mm以下となり担体開口率が80%以上となった場合には、外周部隔壁を厚くしない構造では十分な特性が得られない。
また、表1と2の結果から、「アイソスタティック強度」、「耐熱衝撃性」、「外壁角部強度」を全て満足するためには、基本セル隔壁厚さ(tc)と最外周から内側に向かって3セルまでの隔壁厚さ(tr1〜tr3)との間、および最外周セル隔壁厚さ(tr1)と外壁厚さ(ts)との間に、適切な比の範囲、即ち、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9、且つ0.3≦tr1/ts≦0.7が存在していることがわかる。
【0044】 また、表1と2に示されている通り、基本セル隔壁厚さtcと外壁厚さtsの組み合わせで、最外周セルを構成する隔壁のみでなく、最外周から3セル内部まで厚くすることで、上述の適切な比の範囲内にして、各性能特性を満足させることが出来る。
なお、実施例には示さなかったが、外壁厚さ0.3mmとほとんど同じ厚さまで最外周セル隔壁を厚くした場合には、外壁厚さを0.5mm以上に厚くした場合と同じように「耐熱衝撃性」が低下する傾向が見られた。これは、最外周セル隔壁厚さをあまり厚くすると、外周部の熱容量が大きくなり、担体内部と外周部との温度差が大きくなることに起因している考えられる。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【発明の効果】 以上説明したように、本発明の高強度薄壁ハニカム構造体によれば、薄壁化したハニカム構造体のアイソスタティック強度と耐熱衝撃性をバランス良く向上させるとともに、ハニカム構造体の外周壁及ぴ角部の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ハニカム構造体の一例を示しており、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図2】 ハニカム構造体の部分拡大図である。
【図3】 高強度薄壁ハニカム構造体における最外周セル隔壁と基本セル隔壁の厚さの関係を示す一例であり、(a)は、概略部分断面図であり、(b)は、(a)のA部詳細図である。
【図4】 ハニカム構造体の最外周部のセル隔壁の変形を防止する構造の一例を示した部分断面説明図である。
【図5】 ハニカム構造体に接点肉盛りを施した一実施例を示す部分断面説明図である。
【図6】 ハニカム構造体に接点肉盛りを施した他の実施例を示す部分断面説明図である。
【図7】 ハニカム構造体にV字接続肉盛りを施した一実施例を示す部分断面説明図である。
【図8】 ハニカム構造体の外壁厚さとアイソスタティック強度の関係を示すグラフである。
【図9】 ハニカム構造体の外壁厚さと耐熱衝撃性の関係を示すグラフである。
【図10】 ハニカム構造体の外壁厚さと外壁角部強度の関係を示すグラフである。
【図11】 最外周セル隔壁厚さと外壁厚さの関係を示す模式図である。
【図12】 ハニカム担体がコンバーター容器に組み込まれた例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…ハニカム構造体、2…セル隔壁、2a…最外周セル隔壁、2b…基本セル隔壁、3…セル通路、4…外壁、5…最外周セル隔壁と基本セル隔壁との境界線、6…肉盛り、7…V字接続部、8…最外周セル、9…最外周から2番目のセル、10…外周部セルの隔壁、11…コンバーター容器、12…リング、13…ハニカム担体、14…緩衝部材。
 
訂正の要旨 (i)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を特許請求の範囲の減縮を目的として、以下の通りに訂正する。
「【請求項1】複数のセル通路を有するセラミック製の押出成形ハニカム構造体であって、該ハニカム構造体を構成するセル隔壁の基本セル隔壁厚さ(tc)がtc≦0.11mm、外壁厚さ(ts)がts≧0.2mmであり、該基本セル隔壁厚さ部分の開口率が80%以上であるとともに、最外周セル隔壁厚さ(tr1)と該外壁厚さ(ts)が、0.3≦tr1/ts≦0.7の関係を有し、さらに、ハニカム構造体の最外周から内側に向かって3セルまで、内部セルから最外周セルに向けて順次隔壁厚さ(tr3〜tr1)を、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9の比率で厚くしたことを特徴とする高強度薄壁ハニカム構造体。」
(ii)訂正事項b
「特許請求の範囲」の請求項2を削除する。
(iii)訂正事項c
「特許請求の範囲」の請求項3〜8に係る記載、
「【請求項3】ハニカム構造体の最外周セル隔壁と外壁とが接する個所を肉盛りした請求項1又は2に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項4】隣接する隔壁が、隔壁間が狭まりながら外壁と接する個所で、少なくともそれらの隔壁間において外壁の内側に肉盛りした請求項1又は2に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項5】ハニカム構造体のセル形状が、正方形、長方形、菱形及び六角形のいずれかである請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項6】ハニカム構造体が、コージェライト、アルミナ、ムライト、窒化珪素、及び炭化珪素からなる群から選ばれた少なくとも1種のセラミック材料で形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項7】自動車排気ガス浄化触媒用担体に用いられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項8】そのセル隔壁表面に触媒成分が担持され、その構造体の外周面で把持されて、触媒コンバーターに組み込まれる請求項1〜7のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。」を、
「【請求項2】ハニカム構造体の最外周セル隔壁と外壁とが接する個所を肉盛りした請求項1に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項3】隣接する隔壁が、隔壁間が狭まりながら外壁と接する個所で、少なくともそれらの隔壁間において外壁の内側に肉盛りした請求項1に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項4】ハニカム構造体のセル形状が、正方形、長方形、菱形及び六角形のいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項5】ハニカム構造体が、コージェライト、アルミナ、ムライト、窒化珪素、及び炭化珪素からなる群から選ばれた少なくとも1種のセラミック材料で形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項6】自動車排気ガス浄化触媒用担体に用いられる請求項1〜5のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。
【請求項7】そのセル隔壁表面に触媒成分が担持され、その構造体の外周面で把持されて、触媒コンバーターに組み込まれる請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度薄壁ハニカム構造体。」に訂正する。
(iv)訂正事項d
明細書の段落番号[0009]を、
「【課題を解決するための手段】すなわち、本発明によれば、複数のセル通路を有するセラミック製の押出成形ハニカム構造体であって、該ハニカム構造体を構成するセル隔壁の基本セル隔壁厚さ(tc)がtc≦0.11mm、外壁厚さ(ts)がts≧0.2mmであり、該基本セル隔壁厚さ部分の開口率が80%以上であるとともに、最外周セル隔壁厚さ(tr1)と該外壁厚さ(ts)が、0.3≦tr1/ts≦0.7の関係を有し、さらに、ハニカム構造体の最外周から内側に向かって3セルまで、内部セルから最外周セルに向けて順次隔壁厚さ(tr3〜tr1)を、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr33/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9の比率で厚くしたことを特徴とする高強度薄壁ハニカム構造体が提供される。」に訂正する。
(v)訂正事項e
明細書の段落番号[0010]を、
「なお、上記の高強度隔壁ハニカム構造体においては、ハニカム構造体の最外周セル隔壁と外壁とが接する個所を肉盛りしたり、隣接する隔壁が、隔壁間が狭まりながら外壁と接する個所で、少なくともそれらの隔壁間において外壁の内側に肉盛りすることが、より好ましい。」に訂正する。
(vi)訂正事項f
明細書の段落番号[0023]を、
「以下、本発明において、ハニカム構造体を構成する基本セル隔壁厚さ、外壁厚さ、及び最外周セル隔壁厚さについて、詳しく説明する。
上記したように、本発明においては、ハニカム構造体を構成するセル隔壁の基本セル隔壁厚さ(tc)がtc≦0.11mm、 外壁厚さ(ts)がts≧0.2mmであり、該基本セル隔壁厚さ部分の開口率が80%以上であるとともに、最外周セル隔壁厚さ(tr1)と該外壁厚さ(ts)が、0.3≦tr1/ts≦0.7の関係を有し、さらに、ハニカム構造体の最外周から内側に向かって3セルまで、内部セルから最外周セルに向けて順次隔壁厚さ(tr3〜tr1)を、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9の比率で厚くして構成したものである。」に訂正する。
(vii)訂正事項g
明細書の段落番号[0024]を、
「上記のように、本発明のハニカム構造体は、ハニカム構造体を構成するセル隔壁の基本セル隔壁厚さtcが0.11mm以下という薄壁であって、外壁厚さtsが0.2mm以上、基本セル隔壁厚さ部分の開口率が80%以上という条件においては、最外周から内側に向かって3セルまての隔壁厚さ(tr3〜tr1)と基本セル隔壁厚さtcとの関係を、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦09とし、かつ、外壁厚さtsと最外周セル隔壁厚さtr1との関係を、0.3≦tr1/ts≦0.7という範囲に設定することにより、薄壁化したハニカム構造体の「アイソスタティック強度」、「耐熱衝撃性」、及び「外壁角部強度」をバランス良く満足させることができる。」に訂正する。
(viii)訂正事項h
明細書の段落番号[0026]を、
「図3(a)(b)は、高強度薄壁ハニカム構造体における最外周セル隔壁と基本セル隔壁の厚さの関係を示しており、ハニカム構造体1は複数のセル通路3を有するもので、基本的に、セル隔壁2と外壁4とからハニカム構造体1を構成している。そして、セル隔壁2を、基本セル隔壁2bと最外周セル隔壁2aとに分け、この基本セル隔壁2bと最外周セル隔壁2a,及び外壁4のそれぞれの厚さの関係を規定したものである。なお、5は最外周セル隔壁2aと基本セル隔壁2bとの境界線を示す。」に訂正する。
(ix)訂正事項i
明細書の段落番号[0027]を、
「すなわち、このようなハニカム構造体1においては、基本セル隔壁2bの厚さtcが最外周セル隔壁2aの厚さtrの0.7〜0.9倍の範囲としている。
これは、基本セル隔壁厚さtcが、最外周セル隔壁厚さtrの0.9倍を超過する場合、すなわち、基本セル隔壁厚さtcが、最外周セル隔壁厚さtrとほぼ同-である場合には、ハニカム構造体の外周面からの外圧による破壊強度(アイソスタティック強度)が十分に確保でてきないからである。
一方、基本セル隔壁厚さtcが、最外周セル隔壁厚さtrの0.7倍に満たない場合には、押出成形時に最外周部のセル隔壁(リブ)の変形が大きくなるとともに、変形リブの量も増加するため、ハニカム構造体の外周面からの外圧による破壊強度(アイソスタティック強度)が低下してしまうからである。」に訂正する
(x)訂正事項]j
明細書の段落番号[0030]を、
「例えば、外周から3セル目まで厚くした場合、内部セルと3セル目、3セル目と2セル目、2セル目と1セル目(最外周セル)の隔壁厚さの比は各々0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9の範囲内とし、上記のtc/trの比の範囲に合わせる。
厚くするセルは最外周から3セルまでが望ましい。これ以上、内部まで厚くすると担体の圧力損失性能に無視できない影響を及ぼす。また、担体の質量も所定以上に重くなることにより、熱容量が増えるので、コールドスタート時の触媒の暖機性能にも影響を及ぼしかねない。なお、最外周から3セル分の範囲であれば、実際上圧力損失に及ぼす影響はほとんどない。」に訂正する。
(xi)訂正事項k
明細書の段落番号[0041][表1]の上欄の「最外周セル隔厚さmmtr3-tr13-1セル目」を「3セルまでの隔壁厚さmmtr3-tr1」に訂正し、かつ「実施例1、3、4、5、7、8、9、12」を削除するとともに「実施例2、6、10、11、13」をそれぞれ「実施例1、2、3、4、5」に訂正する。
(xii)訂正事項l
明細書の段落番号[0042][表2]の上欄の「最外周セル隔厚さmmtr3-tr13-1セル目」を「3セルまでの隔壁厚さmmtr3-tr1」に訂正し、かつ「実施例14、16、17、18、20、24、26、28、32」を削除するとともに「実施例15、19、21、22、23、25、27、29、30、31、33」をそれぞれ「実施例6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16」に訂正する。
(xiii)訂正事項m
明細書の段落番号[0043]を、
「表1及び表2の結果から明らかなように、基本セル隔壁厚さが0.17mmでハニカム担体の開ロ率が80%未満の場合には、従来技術にみられるような外周部隔壁を厚くしなくても十分な「アイソスタティック強度」、「耐熱衝撃性」、「外壁角部強度」を有していたが、基本隔壁厚さが0.11mm以下となり担体開口率が80%以上となった場合には、外周部隔壁を厚くしない構造では十分な特性が得られない。
また、表1と2の結果から、「アイソスタティック強度」、「耐熱衝撃性」、「外壁角部強度」を全て満足するためには、基本セル隔壁厚さ(tc)と最外周から内側に向かって3セルまでの隔壁厚さ(tr1〜tr3)との間、および最外周セル隔壁厚さ(tr1)と外壁厚さ(ts)との間に、適切な比の範囲、即ち、0.7≦tc/tr3≦0.9、0.7≦tr3/tr2≦0.9、0.7≦tr2/tr1≦0.9、且つ0.3≦tr1/ts≦0.7が存在していることがわかる。」に訂正する。
(xiv)訂正事項n
明細書の段落番号[0044]を、
「また、表1と2に示されている通り、基本セル隔壁厚さtcと外壁厚さtsの組み合わせで、最外周セルを構成する隔壁のみでなく、最外周から3セル内部まで厚くすることで、上述の適切な比の範囲内にして、各性能特性を満足させることが出来る。
なお、実施例には示さなかったが、外壁厚さ0.3mmとほとんど同じ厚さまで最外周セル隔壁を厚くした場合には、外壁厚さを0.5mm以上に厚くした場合と同じように「耐熱衝撃性」が低下する傾向が見られた。これは、最外周セル隔壁厚さをあまり厚くすると、外周部の熱容量が大きくなり、担体内部と外周部との温度差が大きくなることに起因している考えられる。」に訂正する。
(xv)訂正事項o
明細書の図面の簡単な説明を、
「【図1】ハニカム構造体の一例を示しており、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図2】ハニカム構造体の部分拡大図である。
【図3】高強度薄壁ハニカム構造体における最外周セル隔壁と基本セル隔壁の厚さの関係を示す一例であり、(a)は、概略部分断面図であり、(b)は、(a)のA部詳細図である。
【図4】ハニカム構造体の最外周部のセル隔壁の変形を防止する構造の一例を示した部分断面説明図である。
【図5】ハニカム構造体に接点肉盛りを施した一実施例を示す部分断面説明図である。
【図6】ハニカム構造体に接点肉盛りを施した他の実施例を示す部分断面説明図である。
【図7】ハニカム構造体にV字接続肉盛りを施した一実施例を示す部分断面説明図である。
【図8】ハニカム構造体の外壁厚さとアイソスタティック強度の関係を示すグラフである。
【図9】ハニカム構造体の外壁厚さと耐熱衝撃性の関係を示すグラフである。
【図10】ハニカム構造体の外壁厚さと外壁角部強度の関係を示すグラフである。
【図11】最外周セル隔壁厚さと外壁厚さの関係を示す模式図である。
【図12】ハニカム担体がコンバーター容器に組み込まれた例を示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・ハニカム構造体、2・・・セル隔壁、2a・・・最外周セル隔壁、2b・・・基本セル隔壁、3・・・セル通路、4・・・外壁、5・・・最外周セル隔壁と基本セル隔壁との境界線、6・・・肉盛り、7・・・V字接続部、8・・・最外周セル、9・・・最外周から2番目のセル、10・・・外周部セルの隔壁、11・・・コンバーター容器、12・・・リング、13・・・ハニカム担体、14・・・緩衝部材。」に訂正する。
異議決定日 2002-12-11 
出願番号 特願平10-87704
審決分類 P 1 651・ 113- YA (B32B)
P 1 651・ 121- YA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川端 康之  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 山田 充
唐戸 光雄
登録日 2000-11-02 
登録番号 特許第3126697号(P3126697)
権利者 日本碍子株式会社
発明の名称 高強度薄壁ハニカム構造体  
代理人 矢作 和行  
代理人 木川 幸治  
代理人 樋口 武  
代理人 木川 幸治  
代理人 渡邉 一平  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 渡邉 一平  
代理人 樋口 武  
代理人 加藤 大登  

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