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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 一部申し立て 発明同一  B32B
管理番号 1073186
異議申立番号 異議2001-72084  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-12-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-30 
確定日 2002-12-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3128736号「擬似接着面を有する複合シ-ト」の請求項1ないし5、7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3128736号の請求項1ないし5、7に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3128736号は、出願日が平成10年6月4日である実願平10-4440号を平成10年7月30日に特許出願(特願平10-229278号)に変更したものであって、平成12年11月17日に、請求項1〜7に係る発明について特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1〜5、7に係る特許に対して、リンテック株式会社から特許異議の申立があり、取消理由を通知したところ、その指定期間内である平成14年9月13日に特許異議意見書とともに訂正請求書が提出された。
II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
訂正事項は次のとおりである。
a.特許請求の範囲の【請求項1】中の「該ポリエチレン樹脂層の上に粘着剤層を設け、」の次に「該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている、」を加入する。
b.特許請求の範囲の【請求項5】中の「上記ポリエチレン樹脂ラミネート層の上に粘着剤層を設け、」の次に「該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている、」を加入する。
c.段落【0008】及び【0009】の記載を「【0008】【課題を解決するためのい手段】本発明は、薄葉紙の一面に確実な接着性と軽い剥離性を得るように軽く剥離性処理を行い若しくは行わずにその上にポリエチレン樹脂層を形成し、この薄葉紙の処理面若しくは薄葉紙とポリエチレン樹脂層の間を擬似接着面とするもので、該ポリエチレン樹脂層の上に粘着剤層を設け、この粘着剤層は表面をクレーター状に形成したもので、そのクレーター状の表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせるようにし、上記ポリエチレン樹脂層に対する粘着が部分的で不均一になるようにして、上記薄葉紙を擬似接着面から剥がした際にこれがカールして丸まったりすることがないようにするものである。」と訂正する。
d.段落【0010】〜【0035】の段落番号を【0009】〜【0034】と訂正する。
e.図1及び図5において、符号9を加入する。
f.図3において、図中の引き出し線5で表記される層5について、層であることを示す斜線を加入する、また、符号9を加入する。
g.図4において、面2及びその符号2を削除する。
2.判断
(1)訂正事項a及びbについて
訂正事項aにおける、粘着剤層についての限定である「該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている、」を加入する訂正及び訂正事項bにおける「該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている、」を加入する訂正は、特許明細書の段落0030における記載「こうした粘着剤層のクレーター化によるカール防止は、上記してきた薄葉紙1の一面に対し剥離処理を行った後でポリエチレン樹脂層を形成するもの等と種々に組み合わせることによって、一層のこと薄葉紙であってもカールし難いものを得ることができる」を根拠とするものであるから、訂正事項a及びbによる訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項cによる訂正について
訂正事項cによる段落0008及び0009記載の訂正は、表面をクレーター状に形成した粘着剤層が貼り合わされるべき、ポリエチレン樹脂層の形成されている薄葉紙について、「剥離性処理を行い若しくは行わずに」とするものである。ポリエチレン樹脂層の形成について、訂正前の請求項1及び5では、薄葉紙の一面に軽く剥離処理を施したものの上に形成されることを特定し、それに対応した記載が、段落0008にされ、訂正前の請求項6では、薄葉紙の一面に(直接、すなわち剥離処理は行わずに)形成することが特定され、それに対応した記載が、段落0009、0026にされているから、訂正事項cによる訂正は、訂正事項a及びbによる訂正に伴う、明細書の記載の不整合を正すもので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項dによる訂正について
訂正事項dによる段落番号の訂正は、訂正事項cによる訂正に伴う、明細書の記載の不整合を正すものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項eによる訂正について
訂正事項eによる符号9を加入する訂正は、訂正事項a及びbによる訂正に伴う、明細書の記載の不整合を正すものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項fによる訂正について
訂正事項fによる符号9を加入する訂正は、訂正事項a及びbによる訂正に伴う、明細書の記載の不整合を正すものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する、また、図中の引き出し線5で表記される層5について、層であることを示す斜線を加入することは、誤記の訂正を目的とするものに該当する、そして、訂正事項fによる訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項gによる訂正について
訂正事項gによる訂正は、段落0026における図4の記載の説明にない面2及びその符号2を削除するものであるから、誤記の訂正を目的とするものに該当する、そして、訂正事項gによる訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する同法第126条第2から第4項までの規定に適合するので、訂正請求を認める。
III.本件発明
訂正は認められるので、本件の請求項1〜5、7に係る発明は、訂正後の請求項1〜5、7に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。
「【請求項1】 薄い上質紙その他の表示可能な薄葉紙の一面に軽く剥離性処理を施し、該剥離処理面の上にポリエチレン樹脂層を形成し、該ポリエチレン樹脂層の上に粘着剤層を設け、該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている、上記薄葉紙の剥離処理面とポリエチレン樹脂層の間を擬似接着面とした擬似接着面を有する複合シ-ト。
【請求項2】 上記薄葉紙の剥離性処理面と、ポリエチレン樹脂層の間の擬似接着面の剥離接着力が10〜50g/cm(JIS Z 0237準拠) である請求項1記載の擬似接着面を有する複合シ-ト。
【請求項3】 上記薄葉紙は10〜80g/m2の紙である請求項1または2記載の擬似接着面を有する複合シ-ト。
【請求項4】 上記薄葉紙の剥離処理面は剥離剤が塗布されている区帯と塗布されていない区帯が併存している請求項1〜3のいずれかに記載の擬似接着面を有する複合シ-ト。
【請求項5】 薄い上質紙その他の表示可能な薄葉紙の一面に軽く剥離性処理を施し、該剥離処理面の上にポリエチレン樹脂ラミネート層を形成し、該ポリエチレン樹脂ラミネート層は上記剥離処理面に対する接着力を分散模様状に変化させ、上記ポリエチレン樹脂ラミネート層の上に粘着剤層を設け、該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている、上記薄葉紙の剥離処理面とポリエチレン樹脂ラミネート層の間を擬似接着面とした擬似接着面を有する複合シ-ト。
【請求項7】 上記粘着剤層のポリエチレン樹脂層とは反対面に更に表示部を設けている請求項1〜6のいずれかに記載の擬似接着面を有する複合シ-ト。」
IV.特許異議申立人の主張の概要
特許異議申立人は、甲第1号証〜甲第8号証を提出して、(1)本件特許請求の範囲の請求項1、3及び4に係る発明は、先願明細書(甲第3号証参照)に記載された発明と同一であるから、また、請求項5に係る発明は、先願明細書(甲第5号証参照)に記載された発明と同一であるから、請求項1、3、4及び5係る発明の特許は、特許法第29条の2第1項の規定に違反して特許されたものである、(2)本件特許請求の範囲の請求項1、2、3及び4に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載されたものであるから、本件請求項1、2、3及び4に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。(3)本件特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、また本件特許請求の範囲の請求項5及び7に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、甲第6号証及び甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項2、5及び7係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである、旨の主張をしている。
証拠方法:
甲第1号証 特開平7-134554号公報(以下、刊行物1という)
甲第2号証 特開昭7-237372号公報(以下、刊行物2という)
甲第3号証 特願平10-66885号(特開平11-263945号公報参照)(以下、先願明細書1という)
甲第4号証 特開平8-305289号公報(以下、刊行物3という)
甲第5号証 特願平9-285085号(特開平11-116915号公報参照)(以下、先願明細書2という)
甲第6号証 実願昭60-172740号(実開昭62-81976号公報)のマイクロフィルム(以下、刊行物4という)
甲第7号証 特開昭55-73080号公報(以下、刊行物5という)
甲第8号証 JIS Z0237-1991 第201〜204頁(以下、刊行物6という
V.先願明細書1、2及び刊行物1〜6の記載
a.先願明細書1には、擬似接着シートに関して次の記載がなされている。
a-1「主原料がセルロースパルプからなるシートの裏面に樹脂溶液または水系エマルジョン樹脂を塗布乾燥した樹脂処理面を有する表面基材と、該樹脂処理面に熱可塑性樹脂のエクストルージョンラミネート法により設けた熱可塑性樹脂層を有し、表面基材と熱可塑性樹脂層の間で剥離可能である擬似接着シートであって、該樹脂処理面のその一部が、樹脂未塗布領域を有することを特徴とする擬似接着シート。」(特許請求の範囲請求項1)
a-2「樹脂系塗料の塗布目的は、基材の擬似接着加工面を該樹脂系塗料により被覆して擬似接着加工時の熱可塑性樹脂の浸透を防ぎ剥離力を軽くすることに有る」(段落【0022】参照)、
a-3.「熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体または共重合体やポリスチレン、酢酸ビニル共重合体、エチレン?酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂を1種または数種を混合したものが使用されるが、勿論これらに限定されるものではなく、擬似接着の効果が得られる熱可塑性樹脂であれば何れでも良い」(段落【0026】参照)、
a-4.「このようにして得られた擬似接着シートの裏面には粘着剤層及び剥離シートを積層する所謂粘着加工を施すことができる。使用できる粘着剤としては、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の公知の粘着剤が使用される」(段落【0027】参照)
a-5.実施例1(段落【0030】〜【0032】参照)の擬似接着粘着シートは、感熱紙(米坪78g/m2)/ポリエステル樹脂層/ポリエチレン樹脂/アクリル系粘着剤層/剥離紙であること。
b.先願明細書2には、擬似接着シートに関して、次の記載がなされている。
b-1.「【請求項1】表面基材の裏面に熱可塑性樹脂を押し出し、冷却ロールと圧着ロールにより冷却圧着することにより得られる、表面基材と熱可塑性樹脂層との間で剥離可能な擬似接着シートにおいて、圧着ロールとして表面の一部にロール回転方向の凹部を有するロールを用いることにより、擬似接着部として積層された表面基材と熱可塑性樹脂層の一部に未圧着部を作ることを特徴とする擬似接着シート。
【請求項2】熱可塑性樹脂層上に粘着剤層および剥離シートを積層した擬似接着粘着シートである請求項1記載の擬似接着シート。」(特許請求の範囲請求項1、2)
b-2.「本発明は、熱可塑性樹脂により擬似接着された層を含む擬似接着シートに関し、さらに詳しくは裏面に粘着加工を施すことにより物流管理に用いる荷札や配送伝票、工程管理に用いる表示ラベルなどとして適した擬似接着シートに関する。」(段落【0010】)
b-3.「熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体または共重合体やポリスチレン、酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂を1種または数種を混合したものが使用される」(段落【0018参照】)
b-4.実施例1(段落【0022】参照)の擬似接着シートは、感熱紙(米坪78g/m2)/ポリエチレン樹脂/アクリル系粘着剤層/剥離紙であること。
c.刊行物1には、物流管理シートに関して、次の記載がなされている。
c-1.「表示基材と、熱可塑性樹脂層と、粘着剤層と、剥離基材とがこの順に積層されてなり、前記表示基材の厚みと略同一深さの切込みまたはミシン目の枠を表示基材に設けることで形成された工程管理部と、熱可塑性樹脂層に対応する工程管理部の片面に形成された離型処理部とを備え、該工程管理部の片面に形成された離型処理部が、前記熱可塑性樹脂層に対して擬似接着されており、該工程管理部が剥離可能であることを特徴とする物流管理用シート。」(特許請求の範囲請求項1)、
c-2.「表示基材1としては、一般的には、クラフト紙、上質紙、グラシン紙、パーチメント紙、レーヨン紙、コート紙、合成紙、樹脂フィルムによりラミネートされた紙等の紙が用いられる」(段落【0012】参照)、
c-3.「表示基材1には、その厚みと略同一の深さを有する切込みまたはミシン目により、枠5が形成されている。この枠5に囲まれた部分が工程管理部として使用される。工程管理部6の下面、すなわち熱可塑性樹脂層2と対応する側の面には、離型処理が施され、離型処理部7が形成されている。離型処理部7は、表示基材1の片面に離型剤を塗布することによって形成されている。離型剤としては、シリコーン系離型剤、ポリブタジエンゴム系離型剤、スチレン-ブタジエン共重合体系離型剤、アルキド-シリコーン共重合体系離型剤などが用いられる」(段落【0013】参照)、
c-4.「熱可塑性樹脂層2としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のオレフィン系(共)重合体、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、セルロース樹脂等の熱可塑性樹脂およびこれらの混合物からなるフィルムが用いられる」(段落【0014】参照)、
c-5.「粘着剤層3は、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の従来より公知の粘着剤から形成されている」(段落【0015】参照)、
c-6.「このような本発明に係る第1の物流管理用シート10において、離型処理部7と熱可塑性樹脂層2とは、擬似接着されており、その接着強度は、通常3〜100g/25mm程度であり、好ましくは5〜30g/25mmである。一方、離型処理部7を除く表示基材面と熱可塑性樹脂層2と間は、強固に接着しており、無理に剥離しようとすると、基材が破壊する程度である。したがって、図3に示すように、切込みまたはミシン目の枠5によって形成された工程管理部6を剥離することができる。剥離後の工程管理部6および熱可塑性樹脂層2は、粘接着性を有しないため、工程管理部6を再び貼付することはできない。また、熱可塑性樹脂層2の表面にホコリ等が付着することもない。」(段落【0017】)
c-7.実施例1(段落【0037】参照)の物流管理用シートは、コート紙(坪量64g/m2)/シリコーン剥離剤塗布層/ポリエチレン樹脂層/アクリル系粘着層/剥離紙であること。
d.刊行物2には、配送伝票に関して、次の記載がされている。
d-1「支持体の一方の面に接着剤層を介して情報が表示される表葉紙が接着されており、該支持体の他面には粘着剤層を介して剥離シートが接合されている配送伝票において、少なくとも二つ以上に分割された該表葉紙の少なくとも一つの裏面に剥離剤層が設けられて、支持体から剥離し得るように構成されていることを特徴とする配送伝票。」(特許請求の範囲請求項1)、
d-2.「この配送伝票の表葉紙としては、耐水紙、上質紙、アート紙、コート紙、金属箔紙、含浸紙、顕色剤を塗布した感圧複写紙の下葉紙、感熱紙等の紙類、合成紙、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム類、金属フォイル類、ラミネート類等が使用され得る。」(段落【0011】)、
d-3.「剥離剤層を一部に形成した表葉紙と支持体とを張り合わせる接着剤層としてはポリエチレン樹脂層、ポリプロピレン樹脂層、ポリエステル樹脂層、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂層、ナイロン樹脂層、エチレン・アクリル酸共重合樹脂層、ポリウレタン樹脂層、アクリル酸エステル共重合体樹脂層、ポリ酢酸ビニル樹脂層、ゴム系接着剤層等の接着性樹脂層が使用される。」(段落【0014】)、
d-4.実施例1(段落0024〜26)の配送伝票は、上質紙(坪量64/m2)/一部に剥離剤層/接着剤層(低密度ポリエチレン)/上質紙(坪量36g/m2)/粘着剤層/剥離紙であること。
e.刊行物3には、剥離可能な複合シートに関して、次の記載がなされている。
e-1.「平滑な表面および細密な紙質を有する薄葉紙と、前記薄葉紙に対して約290〜310℃の溶融温度で熱押出され冷却固化により剥離可能に組合されたポリエチレン層と、薄葉紙およびポリエチレン樹脂層の少なくともいずれか一方の外表面に形成された接着剤層とからなる剥離可能な複合シート。」(特許請求の範囲請求項1)
e-2.「本発明の複合シートにおいては薄葉紙に対して剥離可能に結合されているポリエチレン樹脂フイルムの外表面に感圧性接着剤層を形成し、これに適宜な剥離紙を組合せてたとえばロール状に巻上げておくことにより、装飾用ないしは保護用のラミネートを必要とする物品の表面に透明なフィルムラミネーションを施すための手段として利用することもできる」(段落【0018】)、
e-3.「この場合ロールから剥離紙を除去し、ラミネーション加工の対象とする物品の表面に対して複合シートをポリエチレン樹脂フィルム側の感圧性接着剤により連続的に巻出しながら接着させ、次いで薄葉紙の側を剥離させることにより、物品の表面に薄いポリエチレン樹脂層が円滑に接着されて残り、従来のラミネータ等を用いることによるラミネーション法によるものと変わりのない透明なフィルムラミネーションが形成される」(段落【0019】)、
e-4.「この剥離の際には、薄葉紙のロール端部をポリエチレン樹脂層から指先によってはぎ起こすと両層間は前記のように約100g/2.5cm程度の弱いリード接着で結合されているので、両層は容易に分離して透明な薄いポリエチレン樹脂層のみが物品の表面に密着して残される。こゝで薄葉紙とポリエチレン樹脂との間の接着強度が前記のように低い値であることにより、両層間に加えられる剥離作用によって必ず薄葉紙側が剥離し、ポリエチレン樹脂層が接着剤層の接着強度に抗して物品の表面からはがされることはない」 (段落【0020】)、
e-5.「この剥離可能な複合シートの製造工程において薄葉紙とポリエチレン樹脂フィルムとは冷却圧着ローラの間の通過により互いに接着されるが、この場合ローラ表面に適宜な形状の微細な凹凸パターンを設けておくことによりラミネーションフィルムに所望のマッティングやエンボス模様を与えることができる」(段落【0021】)。
f.刊行物4には、「種々の印刷を施した紙と透明の合成樹脂フイルムと感圧性粘着剤及び剥離紙を順に積層し、透明の合成樹脂フイルムのみを被着物に残存するようにした表示紙において、前記の紙、合成樹脂フイルムあるいは感圧性粘着剤の層の下面(裏面)に、前記印刷と異なる種々の印刷を施したことを特徴とする一枚の表示紙で異なる表示ができる表示紙。」(実用新案登録請求の範囲)が記載されている。
g.刊行物5には、「1.剥離紙上の文字、図柄などを印刷し、その上より粘着剤、接着剤などを有する表示基材を貼り合わせて、表示基材の裏面にその印刷文字などを転移させ付着させたラベル、シールなどの表示および封緘材。2.封緘紙上に文字、図柄などを印刷し、その上側に、裏面に粘着剤、接着剤などを塗布した表示基材を貼り合わせることにとって前記文字、図柄などを表示基材の裏面に転移させることを特徴とするラベル、シールなどの表示および封緘材の製法。」(特許請求の範囲第1〜2項)が記載されている。
h.刊行物6には、粘着テープ・粘着シート試験方法について記載されている。
VI.特許異議申立についての判断
1.申立理由(1)について
1-1.先願明細書1に記載された発明について
(1)請求項1に係る発明は、「ポリエチレン樹脂層の上に粘着剤層を設け、該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている、」を粘着剤層の表面状態として特定するものであり、請求項1に係る発明と先願明細書1に記載された発明の疑似接着粘着シートとを対比すると、この点で相違するから、両者は同一とはいえない。
(2)請求項3、4に係る発明は、請求項1を引用して、それぞれ限定を付すものであり、請求項1に係る発明で述べた理由と同様の理由で相違するから、それぞれ、先願明細書1に記載された発明と同一とはいえない。
1-2.先願明細書2に記載された発明について
請求項5に係る発明は、「ポリエチレン樹脂層の上に粘着剤層を設け、該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている、」を粘着剤層の表面状態として特定するものであり、請求項5に係る発明と先願明細書2に記載された発明の擬似接着シートとを対比すると、この点で相違するから、両者は同一とはいえない。
2.申立理由(2)について
(1)請求項1に係る発明は、「ポリエチレン樹脂層の上に粘着剤層を設け、該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている、」を粘着剤層の表面状態として特定するものであり、請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明の物流管理用シートとを対比すると、この点で相違するから、両者は同一とはいえない。
請求項1に係る発明と刊行物2に記載された発明の配送伝票とを対比すると、同様に、この点で相違するから、両者は同一とはいえない。
(2)請求項2〜4に係る発明は、請求項1を引用して、それぞれ限定を付すものであり、請求項1に係る発明で述べた理由と同様の理由で相違するから、それぞれ、刊行物1、2に記載された発明と同一とはいえない。
3.申立理由(3)について
(1)請求項2に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、ポリエチレン樹脂層の上に設ける粘着剤層の表面状態として、請求項2に係る発明は、「粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている」を実質的に特定しているのに対して、刊行物1には、粘着剤層の表面状態に関しては何も記載がない点で相違する。
刊行物2には、粘着剤層に関して、「ポリエチレン樹脂層の上に粘着剤層を設け、該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている」ことは記載されていない。
請求項2に係る発明は、特許明細書の段落0009に記載されるように、「そのクレーター状の表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせるようにし、上記ポリエチレン樹脂層に対する粘着が部分的で不均一になるようにして、上記薄葉紙を擬似接着面から剥がした際にこれがカールして丸まったりすることがない」という効果を奏したものといえる。
したがって、請求項2に係る発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(2)請求項5に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、ポリエチレン樹脂層の上に設ける粘着剤層の表面状態として、請求項5に係る発明は、「粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている」を特定しているのに対して、刊行物1には、粘着剤層の表面状態に関しては何も記載がない点で相違する。
刊行物2〜6には、粘着剤層に関して、「ポリエチレン樹脂層の上に粘着剤層を設け、該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている」ことは記載されていない。
請求項5に係る発明は、特許明細書の段落0009に記載されるように、「そのクレーター状の表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせるようにし、上記ポリエチレン樹脂層に対する粘着が部分的で不均一になるようにして、上記薄葉紙を擬似接着面から剥がした際にこれがカールして丸まったりすることがない」という効果を奏したものといえる。
したがって、請求項5に係る発明は、刊行物1〜6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(3)請求項7に係る発明は、請求項1〜6を引用して、それぞれ限定を付すものであり、請求項5に係る発明で述べた理由と同様の理由で、請求項7に係る発明は、刊行物1〜6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
VII.結び
以上のとおりであるから、特許異議申立人の理由および証拠によって請求項1〜5、7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜5、7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
擬似接着面を有する複合シート
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 薄い上質紙その他の表示可能な薄葉紙の一面に軽く剥離性処理を施し、該剥離処理面の上にポリエチレン樹脂層を形成し、該ポリエチレン樹脂層の上に粘着剤層を設け、該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている、上記薄葉紙の剥離処理面とポリエチレン樹脂層の間を擬似接着面とした擬似接着面を有する複合シ-ト。
【請求項2】 上記薄葉紙の剥離性処理面と、ポリエチレン樹脂層の間の擬似接着面の剥離接着力が10〜50g/cm(JIS Z 0237準拠)である請求項1記載の擬似接着面を有する複合シ-ト。
【請求項3】 上記薄葉紙は10〜80g/m2の紙である請求項1または2記載の擬似接着面を有する複合シ-ト。
【請求項4】 上記薄葉紙の剥離処理面は剥離剤が塗布されている区帯と塗布されていない区帯が併存している請求項1〜3のいずれかに記載の擬似接着面を有する複合シ-ト。
【請求項5】 薄い上質紙その他の表示可能な薄葉紙の一面に軽く剥離性処理を施し、該剥離処理面の上にポリエチレン樹脂ラミネート層を形成し、該ポリエチレン樹脂ラミネート層は上記剥離処理面に対する接着力を分散模様状に変化させ、上記ポリエチレン樹脂ラミネート層の上に粘着剤層を設け、該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂ラミネート層に貼り合わせられている、上記薄葉紙の剥離処理面とポリエチレン樹脂ラミネート層の間を擬似接着面とした擬似接着面を有する複合シ-ト。
【請求項6】 薄い上質紙その他の表示可能な薄葉紙の一面にポリエチレン樹脂層を形成し、該ポリエチレン樹脂層の上に粘着剤層を設け、該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている、上記薄葉紙とポリエチレン樹脂層の間を擬似接着面とした擬似接着面を有する複合シ-ト。
【請求項7】 上記粘着剤層のポリエチレン樹脂層とは反対面に更に表示部を設けている請求項1〜6のいずれかに記載の擬似接着面を有する複合シ-ト。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、擬似接着面すなわち手作業によって容易に引き剥すことができ、一度剥がしたら再度の貼付けができない接着面を有する複合シ-トに関する。
【0002】
【従来の技術】
擬似接着面を有する複合シ-トは、これを被着面に記載されている表示の上に貼付けて、その表示を隠蔽するために多く使用されている。
この場合、上記複合シ-トの擬似接着面から上のシ-トを剥すと、隠蔽されている表示が現われて読むことができ、剥したシ-トはカ-ルして丸まってしまうけれども、再度貼付けるものではなくそのまま廃棄されてしまうので、隠蔽性に優れていれば特に不都合は生じていない。
【0003】
最近、この擬似接着面を有する複合シ-トを、隠蔽性のシートとしてだけではなく、配達票や伝票類として使用しようとする提案が為されている。
こうしたものでは、表面から配送先や、品名等の必要な表示を記載することができ、この記載に従って配達した配送先で、擬似接着面から剥したシ-トに受領印をもらった上で配送記録票として持ち帰って来る。しかし、こうしたシ-トは擬似接着面から剥すとカ-ルして丸まってしまうので、途中で紛失したりすることがあるし、カ-ルしたくせを無くして平らな状態にするのに大変な手間を要し、またこれらをきちんと束ねておくことが難しい。
【0004】
又、配送先が留守の場合には、配送された荷物等があることを、同じく擬似接着面から剥したシ-トを配達伝言票として、郵便受等に投入して知らせるが、このシ-トも剥がしたときにカ-ルして丸まってしまうために、郵便受等の隅に入り込んだりして配送先の人が見落してしまったりすることもあるし、そのシートに書かれている内容も見難い。
【0005】
こうした剥離シ-トがカ-ルすることは、剥離シ-トの紙の厚みを厚くすることによって防ぐことができるが、その場合には葉書程度の厚味にもなってしまい、却って嵩張って取扱いが不便になるし、コストも高くなってしまうので、大量に使用するものでは実用的でなくなる。
【0006】
また、薄葉紙の一面に直接ポリエチレン樹脂層を設けて擬似接着面を形成したものを試作したところ、上記ポリエチレン樹脂層の全面に被着体に貼付するための粘着剤層を形成すると、薄葉紙を擬似接着面から剥がしたときにこれがカールしてしまうが、隅部にのみ粘着剤層を設けると、隅部はカールするが粘着剤層の無い部分ではカールしないことが判った。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、剥離シ-トに薄葉紙を使用しながら、剥離したときにカ-ルしないような擬似接着面を有する複合シ-トを得ようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、薄葉紙の一面に確実な接着性と軽い剥離性を得るように軽く剥離性処理を行い若しくは行わずにその上にポリエチレン樹脂層を形成し、この薄葉紙の処理面若しくは薄葉紙とポリエチレン樹脂層の間を擬似接着面とするもので、該ポリエチレン樹脂層の上に粘着剤層を設け、この粘着剤層は表面をクレイター状に形成したもので、そのクレイター状の表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせるようにし、上記ポリエチレン樹脂層に対する粘着が部分的で不均一になるようにして、上記薄葉紙を擬似接着面から剥がした際にこれがカ-ルして丸まったりすることがないようにするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
薄葉紙1はコ-ト紙、上質紙、クラフト紙、微塗工紙、サ-マル紙その他の紙類が使用できるが、紙の薄さの程度としては約10〜80g/m2程度、好ましくは約10〜50g/m2程度にするとよい。
通常はコ-ト紙を使用するとよいけれども、上質紙、クラフト紙を使用すると一層のこと経済的に作ることができ、押印を必要とするような場合には微塗工紙を使用すると都合がよい。
【0010】
上記薄葉紙1の一面には剥離性処理を軽く施して処理面2を設けている。
この剥離処理は、剥離作用の低い非シリコン系剥離剤を使用するとよく、ワックス樹脂、ニス、低極性樹脂、印刷インキなどが使用され、この処理によって同時に薄葉紙の紙面のピッキング(毛羽立ち)やブロッキング(破れ)を抑えることができる。
上記剥離性処理は、剥離剤の濃度を薄くして塗布するとよく、薄葉紙の全面に塗布したり、塗布した区帯と塗布していない区帯が水玉模様、市松模様、縞模様その他の各種のパターン状に併存しているようにすることができ、上記塗布した区帯の割合によって剥離性を調節することができる。
【0011】
こうした剥離性処理層は、剥離剤の種類によって異なるけども、乾燥量換算にして約0.05〜10g/m2程度の量で使用するとよい。
この剥離性処理は、グラビア印刷、ロ-ルコ-タ-、ダイコ-タ-その他の技法によって形成することができる。
【0012】
上記薄葉紙1の処理面2の上にはポリエチレン樹脂層3が形成され、この間が擬似接着面4とされる。
このポリエチレン樹脂層は、上記薄葉紙の処理面2の上にラミネ-ティング技法によって形成するとよく、通常押出コ-ティングラミネ-ションによって形成されるが、ドライラミネ-ションその他によって形成することもできる。
このポリエチレン樹脂層の厚味は約10μ〜50μ程度にするとよく、好ましくは約10〜20μ程度にするとよい。
【0013】
上記ポリエチレン樹脂層は、単品のポリエチレン樹脂を使用する他、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンの混合樹脂、ポリエチレン樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)との混合樹脂その他の混合樹脂を適宜使用することができる。
【0014】
上記薄葉紙1の処理面2とポリエチレン樹脂層3の間に形成された擬似接着面4の接着力は、JIS Z0237に準拠して180度引きはがし法によって測定した場合に約10〜50g/cm程度に、特に好ましくは約15〜30g/cm程度にするとよい。
【0015】
こうして多層にされたものは、通常被着物に貼付けるために、上記ポリエチレン樹脂層の上に粘着剤層5を形成し、該粘着剤層の表面を剥離面6を有する剥離紙7によって覆うようにする。
この粘着剤には、アクリル系、ゴム系その他のものが適宜使用できる。
【0016】
図2、図3に示すものは、荷物の配送伝票10に形成したもので、微塗工紙の薄葉紙1の裏面に、白色の印刷インクをグラビア技法により塗布して、剥離性処理層2を形成し、その上にポリエチレン樹脂層のラミネ-ト層3を15μの厚味に設けている。
【0017】
この場合、上記ポリエチレン樹脂ラミネ-ト層は、ポリエチレン樹脂を押し出した後で、ポリエチレン樹脂層側からローレット加工、エンボス加工を施すようなローラー類によって、薄葉紙1の剥離性処理層2側に向かって強く押圧する部分と弱く押圧する部分が分散して分散模様状に混在しているようにすると更に好ましい。こうすると、上記強く押圧された部分は強く接着され、弱く押圧された部分は弱く接着され、全体としては弱く接着されていても所々で強く接着されているようになるので、後に述べる粘着剤層をポリエチレン樹脂層の全面に形成したときにも、擬似接着面から剥ぎ取ったシートが一層カールしなくなる。
上記押圧操作は、ラミネ-ト加工における冷却ローラーによって行うようにすると都合がよい。
【0018】
上記ポリエチレン樹脂層3の上には、アクリル系粘着剤層5を形成しており、図示のものでは、その全面に形成された粘着剤層の上を少し大きめの剥離面6を有する剥離紙7で覆っている。
【0019】
この配送伝票10を使用する場合、荷物の発送者に、薄葉紙の表面に印刷してある表示11に従って配達票12と貼付票13中の「お届け先」「ご依頼主」「品名」の欄に必要事項を記載してもらい、配送業者において「受付日」を記入する。
常時多量の荷物を一定の相手に発送する者には、配送業者において予め「お届け先」「ご依頼主」の欄に所要の事項を記載したものを用意して渡しておけば発送者は一層使用しやすくなる。
【0020】
配送業者は、上記記入済の配送伝票10の剥離紙7を剥がし、荷物の見易い場所に、上記粘着剤層5によって貼付けて荷物を受取る。そして、この伝票の表示に従って配送を行う。
【0021】
配送した先において、配送業者はお届け先に荷物を届け、配達票12の薄葉紙1を摘んで引っ張ると、ポリエチレン樹脂層3との間の擬似接着面4から剥がれるので薄葉紙の配達票12の「受領印」の個所に捺印してもらってこの配達票を受取り、荷物を渡して配送が終わる。
このとき上記配達票は擬似接着面から容易に剥がされてカ-ルするようなことがないので、受領印も押してもらい易いし、受け取った配達票を重ねたり、綴っておくにも便利である。
【0022】
配送先が留守の場合には、配送伝票10の下方の貼付票13を、その擬似接着面4から剥がし、郵便受等に入れて帰る。
留守にしていた人が帰って、郵便受等に入っている貼付票13を見ると荷物が配送されて来ていることが判るが、この引剥がされた貼付票13は上記の如くカ-ルもしていないので、郵便受等の隅に隠れて配送先の人が見なかったりするようなことは起らないし、記載されている内容も読み易い。
この貼付票13を見た留守先から配送業者に連絡があれば、再び配送し、上記と同様にして配達票12を剥し取り、受領印をもらって前記したとおりに配達を終える。
【0023】
これまで荷物の配送について述べてきたが、上記と同様にして書留便の配達、その他種々の用途に広く応用することができる。
また、この複合シ-トは、被着面に記載した表示を覆うように粘着剤層によって貼付ければ、上記の被着面の表示を隠蔽することができ、擬似接着面から薄葉紙を剥がせば、隠蔽されていた表示が現れて見ることができる。
【0024】
また、薄葉紙1、剥離性処理面2(擬似接着面)ポリエチレン樹脂層3、粘着剤層5で構成された多層シ-トを、複数枚重ねて上記粘着剤層5で貼り合わせるようにすれば、各薄葉紙1の表面に表わされた表示を、上から順次に擬似接着面から剥がして見るようにすることができるので、種々の表示に応用することができる。
【0025】
図4に示すものは、薄葉紙1の一面に直接ポリエチレン樹脂層3を形成し、この間を擬似接着面4としているもので、上記ポリエチレン樹脂層3の上には粘着剤層5が形成されている。
この粘着剤層5は、ポリエチレン樹脂層3に貼り合わせられている面が不均一なクレイター状9をしており、上記ポリエチレン樹脂層3と部分的に、不均一に貼り合わせられている。
【0026】
このようなポリエチレン樹脂層3と粘着剤層5の貼り合わせによって、理由は良く判らないけれども、上記薄葉紙1を擬似接着面4から剥がすと、この薄葉紙1はカールして丸まってしまうようなことが無く、きれいなシート状に剥離することができる。
【0027】
このような粘着剤層5は、次のようにして形成することができる。例えば溶媒系のアクリル粘着剤では、一般に、粘着成分50重量部に対して有機溶媒50重量部が混合されているが、これに水50重量部と少量のポリアクリル酸を加えて攪拌し、加えた水が一時的に分散した状態を作る。
こうした粘着剤を、剥離紙7の剥離面6上に必要な厚みに塗布して乾燥すると、最初に有機溶媒が揮散し、分散している水は気化して膨張し、粘着剤層を破り、破裂して逃げてゆく。これによって粘着剤層5の表面は不均一に凸凹としたクレイター状に形成される。
また、溶媒系のアクリル粘着剤を必要な厚みに塗布した後に、その上から水を散布するようにすれば、同様に粘着剤層の表面をクレイター状に形成することができる。
【0028】
このような粘着剤層のクレイター状の表面を、上記ポリエチレン樹脂層3に貼り合わせて転写すれば、上記したポリエチレン樹脂層3と粘着剤層5とは部分的に、不均一に貼り合わせられた状態を作ることができる。
また、水系の粘着剤層の場合には、上記とは逆に有機溶媒を分散させることによって、同様の状態に形成することができる。
【0029】
こうした粘着剤層のクレイター化によるカールの防止は、上記してきた薄葉紙1の一面に対して剥離性処理を行った後でポリエチレン樹脂層を形成するもの等と種々に組み合わせることによって、一層のこと薄葉紙であってもカールし難いものを得ることができる。
【0030】
図5に示すものは、上記と同様に薄葉紙1の一面に剥離性処理を行い、その処理面2の上にポリエチレン樹脂層3を設けて擬似接着面4を形成し、その上に粘着剤層5を設け、その上に予め表示部8が設けてある。そして、その上を剥離面6を有する剥離紙7が覆っている。
【0031】
このものは、薄葉紙1の一面に剥離性処理面2を設け、その上にポリエチレン樹脂層3を設けて擬似接着面4を形成したものを用意し、一方、剥離紙7の剥離面6の上に粘着剤層5を設け、この粘着剤層5を上記ポリエチレン樹脂層3に貼着して一体化する。その後で、再び剥離紙7を剥がしてその剥離面6の上に適宜印刷等によって表示を表し、この表示部8から上記粘着剤層5の上に貼り戻せば、上記表示部8は粘着剤層5側に転写されるので、容易に形成することができる。
【0032】
このものは、上記したものと同様に配達票、伝票類などとして使用することができ、薄葉紙1の表面に必要な記事を表示し、上記剥離紙7を剥がして被着体に貼付して使用する。このとき、上記表示部8は粘着剤層5側に転写されているので、この表示部8と共に被着体に貼り付けられる。
【0033】
上記に従って薄葉紙1をその擬似接着面4から剥がすと、表示部8の表示を透視してみることができる。従って、この表示部8には、上記例の場合には配送会社の広告、お知らせ、営業案内等を表示しておけば、一層有効に使用することができる。
上記した図4に示す粘着剤層の表面をクレイター状にしたものでも、同様にして表示部を設けることができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明は上記したように、薄い薄葉紙を使用しても、これをカールさせることもなく擬似接着面からスム-ズに剥がすことができ、剥し取った薄葉紙の保管も容易であるし、全体を薄く形成できるので嵩ばることもなく、更に経済的に製造することができる。また、本発明の基本構成は種々の変形例に展開することができ、その応用分野が広い。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例を示す一部省略断面図である。
【図2】
本発明の他の実施例を示す平面図である。
【図3】
図2の拡大断面図である。
【図4】
本発明の更に他の実施例の一部省略断面図である。
【図5】
本発明の他例の実施例の一部省略断面図である。
【符号の説明】
1 薄葉紙
2 剥離性処理面
3 ポリエチレン樹脂層
4 擬似接着面
5 粘着剤層
6 剥離紙の剥離面
7 剥離紙
8 表示部
9 粘着剤層の表面のクレイター状部
【図面】





 
訂正の要旨 訂正の内容
訂正事項は次のとおりである。
a.特許請求の範囲の【請求項1】中の「該ポリエチレン樹脂層の上に粘着剤層を設け、」の次に「該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている、」を加入する。
b.特許請求の範囲の【請求項5】中の「上記ポリエチレン樹脂ラミネート層の上に粘着剤層を設け、」の次に「該粘着剤層は表面をクレイター状に形成したその表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせられている、」を加入する。
c.段落【0008】及び【0009】の記載を「【0008】【課題を解決するためのい手段】本発明は、薄葉紙の一面に確実な接着性と軽い剥離性を得るように軽く剥離性処理を行い若しくは行わずにその上にポリエチレン樹脂層を形成し、この薄葉紙の処理面若しくは薄葉紙とポリエチレン樹脂層の間を擬似接着面とするもので、該ポリエチレン樹脂層の上に粘着剤層を設け、この粘着剤層は表面をクレーター状に形成したもので、そのクレーター状の表面でポリエチレン樹脂層に貼り合わせるようにし、上記ポリエチレン樹脂層に対する粘着が部分的で不均一になるようにして、上記薄葉紙を擬似接着面から剥がした際にこれがカールして丸まったりすることがないようにするものである。」と訂正する。
d.段落【0010】〜【0035】の段落番号を【0009】〜【0034】と訂正する。
e.図1及び図5において、符号9を加入する。
f.図3において、図中の引き出し線5で表記される層5について、層であることを示す斜線を加入する、また、符号9を加入する。
g.図4において、面2及びその符号2を削除する。
異議決定日 2002-11-21 
出願番号 特願平10-229278
審決分類 P 1 652・ 161- YA (B32B)
P 1 652・ 121- YA (B32B)
P 1 652・ 113- YA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 須藤 康洋
石井 克彦
登録日 2000-11-17 
登録番号 特許第3128736号(P3128736)
権利者 株式会社ユニークテープ
発明の名称 擬似接着面を有する複合シ-ト  
代理人 亀川 義示  
代理人 内山 充  
代理人 亀川 義示  

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