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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  B41M
審判 全部申し立て 2項進歩性  B41M
管理番号 1073192
異議申立番号 異議2001-71483  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-02-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-05-21 
確定日 2002-12-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3109857号「安全積層品及び熱転写レシーバーシート」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3109857号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。 同請求項7、8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3109857号は、特許法第41条に基づく優先権を主張して平成3年5月15日(優先日平成2年5月15日)に出願され、平成12年9月14日にその発明について特許の設定登録がなされた後、小山喜洋より特許異議の申立てがなされ、その後、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年2月15日に訂正請求がなされた。

2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の「レシーバー層に接着されたプラスチック材料のカバーシート」を「レシーバー層に100〜140℃の温度で接着されたプラスチック材料のカバーシート」に訂正する。
訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1の「安全性積層品」を「安全積層品」に訂正する(2カ所)。
訂正事項c
特許請求の範囲の請求項7の「二軸遠心ポリエチレンテレフタレートフィルム」を「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」に訂正する。
訂正事項d
段落【0008】の「レシーバー層に接着されたプラスチック材料のカバーシート」を「レシーバー層に100〜140℃の温度で接着されたプラスチック材料のカバーシート 」に訂正する。
訂正事項e
段落【0008】、【0011】の「安全性積層品」を「安全積層品」に訂正する。
訂正事項f
段落【0016】の「二軸遠心ポリエチレンテレフタレートフィルム」を「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」に訂正する。
訂正事項g
段落【0011】、【0012】の「熱化塑性フィルム」を「熱可塑性フィルム」に訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項aは、願書に添付された明細書の、例3、4に、印刷後のレシーバーを、積層温度100、110、120、130、140℃と温度を変化させてつや艶消しポリ塩化ビニル、ポリカーボネートのカバーシートで積層したこと(段落【0028】〜【0031】)の記載に基づいて、接着温度を100〜140℃に限定するものである。
したがって、訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。そして、該訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項bは、願書に最初に添付された明細書には「安全積層体」とあったものが、まず「安全積層品」に補正され、さらに、【請求項1】、段落【0008】、【0011】の「安全積層品」が「安全性積層品」に再度補正されたものであるが、これは「安全積層品」と同じ用語を用いるべきところを「安全性積層品」と誤記したものと認められる(【請求項2】〜【請求項7】では「安全積層品」のままである)。
したがって、訂正事項bは、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。そして、該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項cは、フィルム製造において二軸延伸が周知技術であるので、「二軸遠心ポリエチレンテレフタレートフィルム」が「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」を誤記したものと認められるから、誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当する。そして、該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項d、e、fは、それぞれ訂正事項a、b、cの特許請求の範囲の訂正にあわせて発明の詳細な説明の該当箇所に生じた不整合な記載を訂正して、特許請求の範囲の記載との整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする。そして、該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項gは、「熱化塑性」の「化塑」が「可塑」を誤記したものと認められるので、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。そして、該訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4項第3項において準用する平成6年法律116号による改正前の特許法126条第1項ただし書き及び第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立ての概要
(1)特許異議申立人は、証拠として、
甲第1号証:特開平1-123794号公報〈刊行物1〉
甲第2号証:特開平1-237193号公報〈刊行物2〉
甲第3号証:特開平1-122485号公報〈刊行物3〉
甲第4号証:特開昭59-76298号公報
甲第5号証:特開昭59-85793号公報
を提出して、訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、また、本件明細書には記載に不備があるので、特許法第36条第4項の規定に違反するものであるので、その特許は取り消されるべきであるというものである。

4.請求項1〜8に係る発明
上記したように訂正が認められるから、本件の請求項1〜8に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲請求項1〜8に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】a)架橋結合させたシリコーン含有剥離剤系をドープした熱可塑性、染料受容性重合体からなるかつ熱転写印刷体を担持するレシーバー層であって、全シリコーン含有量が熱可塑性、染料受容性重合体の重量に基づいて0.01〜1重量%でありかつその少なくとも一部中に、1種又はそれ以上の熱転写性染料が拡散されて印刷体が形成されているレシーバー層と、このレシーバーを担持しているシート状支持体とからなる熱転写レシーバーシート;及び
b)上記印刷されたレシーバー層に100〜140℃の温度で接着されたプラスチック材料のカバーシート;
からなる安全積層品であって、かつ、上記支持体とカバーシートの少なくとも一方は、積層品の外側から印刷物を目視するのに十分な透明性を有するものである安全積層品。
【請求項2】カバーシートは支持性のカード状シートであり、積層品の全体の厚さの大部分を構成する、請求項1に記載の安全積層品。
【請求項3】カバーシートは不透明である、請求項2に記載の安全積層品。
【請求項4】カバーシートは、レシーバーシートのレシーバー層に直接接着されており、これらの層の間に、接着剤の層が存在しない、請求項1に記載の安全積層品。
【請求項5】カバーシートは、白色の充填剤入りポリ塩化ビニル又はポリカーボネート組成物から製造されたものである、請求項4に記載の安全積層品。
【請求項6】支持体、レシーバー層及びカバーシートは、全ての端部に沿って重なっている、請求項1に記載の安全積層品。
【請求項7】架橋させたシリコーン含有剥離剤系をドープした、熱可塑性、染料受容性重合体からなる、かつ、全シリコーン含有量が熱可塑性染料受容性重合体の重量に基づいて0.01〜1重量%であるレシーバー層と、このレシーバーを担持しているシート状支持体とからなる安全積層品製造用熱転写レシーバーシートであって、上記支持体は透明な品種の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、レシーバー層を担持している表面は、レシーバー層組成物を被覆する前に、レシーバー層を施す前のその接着能力を増大させるために予備処理されており、そして、上記予備処理は支持体の表面構造を変性するための化学的エッチングであることを特徴とする熱転写レシーバーシート。
【請求項8】エッチングを行うための処理用組成物は、p-クロロ-m-クレゾール、2,4-ジクロロフェノール、2,4,6-又は2,4,5-トリクロロフェノール又は4-クロロレゾルシノールを有機溶剤に溶解させた溶液であるか、又は、これらの物質の混合物を共通溶剤に溶解させた溶液である、請求項7に記載の熱転写レシーバーシート。」

4.証拠方法の記載事項
当審が通知した取消しの理由において引用した刊行物1〜4及び甲第4、5号証には次の事項が記載されている。
刊行物1(特開平1-123794号公報)には、
(1a)「基材の上に水酸基を有する樹脂を主体とする染料受容層が積層され、上記染料受容層に含まれる樹脂とアルコール変成シリコンオイルとが多官能イソシアナートにより架橋されていることを特徴とする昇華転写用転写紙」(特許請求の範囲)、
(1b)「このアルコール変成シリコンオイルは、後述の水酸基を有する樹脂100重量部に対して0.05〜10重量部の割合で添加することが望ましい。
また、水酸基を有する樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール等が挙げられる。」(第2頁右上欄第16行〜左下欄第3行)、
(1c)「本発明にかかる昇華転写用転写紙においては、染料受容層に含まれる樹脂の水酸基と、滑剤として添加されるアルコール変成シリコンオイルの水酸基とが、多官能イソシアネートのイソシアン基とそれぞれウレタン結合を形成することにより架橋される。このように、滑剤が染料受容層を構成する材料に化学的に結合されていると、滑剤が単に染料受容層中に分散されている場合と異なり、滑剤が経時的に浸出を起こす等の問題がなくなり、昇華転写用被転写紙の保存性、信頼性が向上する。」(第2頁右下欄第14行〜第3頁左上欄第4行)、
(1d)「実施例1
まず、以下の組成にしたがって昇華転写用被転写紙の染料受容層塗料組成物を調製した。
ポリエステル樹脂
(バイロン #200,東洋紡績社製) 100重量部
イソシアナート(コロネート L75,日本ポリウレタン社製)5重量部
アルコール変成シリコンオイル
(SF8427,東レシリコーン社製) 1重量部
メチルエチルケトン 100重量部
トルエン 230重量部
上記染料受容層塗料組成物を、合成紙(ユポFPG150,王子油化社製)の片面に乾燥時の膜厚が15μmとなるように塗布し、昇華転写用被転写紙を作成した。
一方、以下の組成にしたがってインクリボンのインク層塗料組成物を調製した。
昇華性染料
(スミプラスレッドFPB,住友化学工業社製) 5重量部
エチルセルロース
(N-7,米国ハーキュリーズ社製) 5重量部
エタノール 63重量部
ブタノール 27重量部
上記インク層染料組成物を6μm厚のポリエチレンテレフタレート・フィルムの片面に乾燥時に膜厚が2μmとなるようにグラビア印刷機で塗布し、熱転写インクリボンを作成した。
以上の昇華転写用被転写紙および熱転写インクリボンを熱転写プリンタにセットし、80mJ/mm2の熱エネルギーを印加して印字試験を行ったところ、融着は見られず、良好な印字品質が得られた。このときのマクベス反射濃度は1.8であった。
さらに、上記昇華転写用被転写紙をA4判に裁断して重ねた状態、あるいはロール状に巻取った状態で温度40℃で、相対湿度90%の環境下に1週間放置した(エージング)後に同様に印字品質が得られた。
なお、上記染料受容層塗料組成物中におけるアルコール変成シリコンオイルSF8427の含有量を0.1重量部あるいは5重量部としても同様に良好な結果が得られた。」(第3頁左上欄第7行〜左下欄第13行)、
と記載されている。

刊行物2(特開平1-237193号公報)には、
(2a)「(1)熱移行性染料を有する熱転写シートから移行された染料により画像が形成された画像形成層の表面をラミネートするラミネートフィルムであって、シート状基材の一方の面に熱で接着性が発現する接着層を設けてなることを特徴とするラミネートフィルム。」(特許請求の範囲第1項)、
(2b)「第1図において1はラミネートフィルムを示し、該ラミネートフィルム1はシート状基材2の一方の面に接着層3が設けられて構成されている。
上記シート状基材としは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、アイオノマー等のプラスチックフィルムのうち、透明もしくは半透明のもの(これらは有色透明もしくは有色半透明でもよい)等が挙げられ、」(第2頁左上欄第15行〜右上欄第8行)
(2c)「具体的実施例
紫外線吸収剤を含有する厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人製:HBタイプ)に斜線リバースコートによりナイロン樹脂(FS 175 SV 10)を乾燥塗膜4μmになるようにコーティングしてラミネートフィルムを形成した。
このラミネートフィルムを用いて昇華転写印刷物に140℃、5秒の条件で加熱ラミネートした。得られた積層体は剥離強度が強く、転写後の画像の滲も生じることはなく、又、日光堅牢度も高い優れた積層体が得られた。」(第3頁右上欄第18行〜左下欄第9行)、
と記載されている。
(2d)第2図(第4頁)には、基材、画像形成層、およびラミネートフィルムが端部が重なっている断面の状態が示されている。

刊行物3(特開平1-122485号公報)には、
(3a)「(1)基材フィルムの一方の表面に熱移行性染料層を形成してなる熱転写シートにおいて、同一側表面に転写可能な保護層を形成したことを特徴とする熱転写シート。
(8)熱移行性染料層を有する熱転写シート及び被熱転写シートを組み合わせて用い、該染料層中の染料を移行させて被熱転写シート上に転写画像を形成する熱転写方法において、上記画像を形成した後、熱転写シートに設けられた保護層を被熱転写シートに転写することを特徴とする熱転写方法。」(特許請求の範囲第1、8項)、
(3b)「本発明における保護層3は熱転写により転写されるもので、転写画像を傷や汚染等から保護し、且つ転写時に画像を乱さない性質等を有するものであればよく、該保護層3を形成するために使用される材質としては例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー;ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル等のビニルポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマ-との共重合体系樹脂;アイオノマー、エチルセルロース、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂;ポリカーボネート等が挙げられる。」(第3頁右下欄第15行〜第4頁左上欄第9行)、
(3c)「上記の如き構成からなる本発明熱転写シートを用いて熱転写を行うに当たっては、被熱転写シート(ここでは受像層を有するシート)に重ね、所定の染料層を受像層と対峙させて重ね合わせ、所定の熱エネルギー付加手段にて熱転写シートの基材フィルム側から加熱して上記染料層より画像を形成し、多色画像の場合はその後、さらに次の所定染料層を同様に重ね合わせて各々の染料層により画像を整合しながら順次形成し、所望の画像を転写形成した後、保護層を全面或いは部分的に転写する工程を経て、第6図に示す如くシート基材7上に設けられた受像層8上に転写画像9が形成された、該画像9上に保護層3が転写形成された、熱転写完了の被熱転写シート10が得られる。」(第4頁右下欄第6〜19行)、
(3d)「実施例1
下記組成の3種の染料層形成用インキ組成物を調製した。これらをそれぞれ背面に耐熱処理を施した幅25.5cm及び厚さ6μmのポリエチレンテレフタレート連続フィルム(東レ製:ルミラー6CF53)上に、乾燥塗布量が各々1.0g/m2になるように25.50cm×18.2cmの面積で第2図に図示した染料層に準じてイエロー、アゼンタ及びシアンの順序で塗布し、次いで25.5cm×18.2cmの面積の間隔をおいて再度イエロー、マゼンタ及びシアンを塗布し、この操作を繰り返して空白領域を挟んでイエロー、マゼンタ及びシアンの3色のそれぞれの染料を連続して有する連続フィルム状の熱転写フィルムを得た。以下に記載する「部」は重量部を意味する。
イエロー色用インキ組成物
C.I.ソルベントイエロー14-1 6.00部
ポリビニルブチラール樹脂 4.60部
メチルエメルケトン 44.80部
トルエン 44.80部
マゼンタ色用インキ組成物
C.I.ディスパーズレッド50 4.42部
ポリビニルブチラール樹脂 4.32部
メチルエメルケトン 43.34部
トルエン 42.92部
シクロヘキサン 5.0部
シアン色用インキ組成物
C.I.ディスパーズブルー241 5.48部
ポリビニルブチラール樹脂 4.52部
メチルエメルケトン 43.99部
トルエン 40.99部
シクロヘキサン 4.50部
次に、上記熱転写フィルムの空白領域の面に下記組成からなる塗工液を乾燥時塗布量が1.0g/m2となるように塗布し、100℃で30分間乾燥して保護層を形成した。
保護層形成用塗工液
ポリアクリル樹脂 10部
(三菱レーヨン製:BR-80)
メチルエチルケトン 90部
更に、上記保護層の表面にエチレン-酢酸ビニル共重合体系感熱接着剤(東洋モートン製:AD-1790-15)の10%メチルエチルケトン溶液を乾燥時塗布量が2g/m2となるように塗布及び乾燥させて、本発明熱転写シートを得た。
前記の3色の染料層を、A4版の上質紙(受像層を有する)に重ね、熱転写シートのイエロー染料層を対向させて重ね合わせ、熱転写シートの背面から下記の条件でサーマルヘッドにて熱転写を行い、イエローの画像を得た。次に同様にしてマゼンタ及びシアンの画像を上記イエローの画像と整合させて形成し、フルカラー画像を形成した。次いで、画像形成面の全面に熱転写シートの保護層をサーマルヘッドにより熱転写を行った。
熱転写条件
ドット密度 6dots/mm
発熱体抵抗値 640Ω
印加エネルギー 2.0mJ/dot
シート送り速度 5mm/sec.
こうして得られた保護層を有する画像形成面は、保護層を有しない画像形成面に比べ、光沢を持ち、摩擦堅牢度等に優れていた。

実施例2
実施例1において熱転写シートの保護層をサーマルヘッドに代えて、100℃の熱ロールにより全面熱転写を行った他は、実施例1と同様にして熱転写シートを得、しかる後、上質紙にフルカラー画像を形成し、保護層を転写した。
得られた画像は実施例1と同様に優れた物性を有するもので保存安定性に優れていた。」(第5頁左上欄第18行〜第6頁左上欄第7行)、
と記載され、また、
(3e)第6図(第6頁)には、シート基材7、受像層8、転写画像9、保護層3が順次積層した熱転写完了の被熱転写シート10の断面が示されている。

刊行物4(特開昭62-240588号公報)には、
(4a)「本発明の装飾方法は、以上の通り、特定の被転写シートを使用し、且つ画像を反転させて貼着する以外は、その画像形成方法や被装飾物品に対する貼着方法はいずれも従来公知の方法でよいものであり、また、本発明の装飾方法の対象となる被装飾物品もその材質、形状等特には限定されず、例えば、カートン・・・キャッシュカード、クレジットカード、メンバーズカード、グリーティングカード、ハガキ、名刺、ICカード等のカード類・・・いずれの材質或いは形状のものでもよい。」(第7頁右下欄第6行〜第8頁左上欄第6行)、
(4b)「実施例1
基材としてポリエステルフィルム(厚み6μm)を用い、その片面にポリエステル樹脂系プライマーを塗布、乾燥し、更にその上に下記組成の受像層形成用インキを用い、乾燥後重量が7g/m2となるように塗布、乾燥した。
受像層形成用インキ
ポリエステル樹脂(東洋紡製、Vylon200) 100部
アミノ変性シリコーン(信越化学工業製、KF-393) 5部
エボキシ変性シリコーン(信越化学工業製、X-22-343) 5部
溶剤(メチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノン=4/2/2)
900部
上記インキを塗布、乾燥後、1日放置し、その後100℃の温度で30分間加熱し、シリコーンを表面にブリードさせ、表面に硬化したシリコーン層を有する受像層とした。
得られた受像層の上に、シアンの昇華性染料(分子量は250以上)をバインダー樹脂で担持させた昇華転写フィルムを重ね、顔写真を色分解して得たシアン成分の電気信号に連結したサーマルヘッドで熱エネルギーを付与し、シアン画像を得た。次いで、マゼンタの昇華性染料(分子量は250以上)を用いた昇華転写フィルムおよびイエローの昇華性染料(分子量は250以上)を用いた昇華転写フィルムにより同様にして昇華転写を行い、フルカラーの顔写真とその他の文字、図形からなる表示画像を形成した。
表示画像の形成されたフィルムの受像層側を、厚さ100μmの白色不透明の硬質塩化ビニル樹脂シートからなるカード基体上に重ねて200℃の熱ローラーで圧着し、表示画像を有する受像層が貼合されたカードを得た。
このカードの表面は、全体的に平滑であり、画像部分に何ら盛り上がりもなかった。更にこのカードの画像は40℃の雰囲気に3ケ月間保持した促進試験においても、画像の乱れや層間剥離は全く生じなかった。また、カーボンブラック灯によるJISの耐光試験をしたところ、結果はJIS4〜5級であり、良好な性能を示した。表面の引っ掻き等についても良好な耐久性を示した。」(第8頁右上欄第4行〜右下欄第6行)、
と記載されている。

甲第4号証(特開昭59-76298号公報)には、
(5a)「この第1図において、(1)はカバー材を示し、このカバー材(1)は基材(2)により支持され全体として昇華転写式カラーハードコピー用カバーフイルム(3)を形成する如くなされている。ここで、カバー材(1)は約5μの熱融着性を持つポリエステル樹脂(バイロン#200.東洋紡社製)よりなり、基材(2)は12μのポリエステルフイルムよりなり、カバー材(1)が基材(2)表面に塗布される如くなされている。」(第1頁右下欄第9〜16行)、
(5b)「先ず、第1の実験としては昇華転写カラーハードコピー用の印画紙を内部可塑化した飽和ポリエステル樹脂(バイロン#200.東洋紡社製)24重量部、超微粒子シリカ(NIPSIL E220A、日本シリカ工業社製)6重量、メチルエチルケトン溶剤70重量部よりなる処理液を坪量170g/m2の上質紙の片面に乾燥後の塗布重量が約5g/m2となるように塗布して形成した。また一方、試料となるカラーハードコピーを得るための転写紙を昇華性を持つ赤味のアントラキノン系の分散染料(PTR63,三菱化学社製)6重量部、エチルセルロース6重量部、イソプロピルアルコール溶剤88重量部よりなるマゼンダ色インクを坪量40g/m2の薄葉紙にグラビアコーターを用いて乾燥塗布重量5g/m2となるように塗布して形成した。次に、かかる転写紙の裏側より300℃前後の温度で感熱ヘッドを用いて印画紙上にマゼンダ色による画像を印画し、試料としての昇華転写式カラーハードコピーを得た。そして、この昇華転写式カラーハードコピー上に前述第1図例のカバーフイルム(3)を150℃に加熱したプレス板を用いて圧着しカラープリントを得た。」(第2頁右上欄第12行〜左下欄第13行)、
と記載されている。

甲第5号証(特開昭59-85793号公報)には、
(6a)「先ず、ポリビニルピロリドン(ゼネラル・アニリン&フイルム社製)、ポリエステル樹脂(バイロナールMD-1200東洋紡社製)、炭酸カルシウム(日東粉化工業社製)より成る印画紙処理水溶液を、画像形成用に特に漂白していない坪量170g/m2の上質紙に5g/m2塗布して、白色度91.2の印画紙を得る。そして、第1図に示すように15μのポリエステルフイルムよりなる基材(1a)上に線状ポリエステル(バイロン#200.東洋紡社製)よりなるカバーフイルム層(1b)を塗布して成る昇華転写式ハードコピー用カバーフィルム(1)を作成しこれと上述の印画紙を約150℃の熱プレスにて加熱圧着して、印画紙上にこの例のカバーフイルムを融着させカラープリント試料を得る。」(第2頁左上欄第10行〜右上欄第4行)、
(6b)「また、従来技術の実験2は次の如きである。先ず昇華性を持つシアン染料(カヤロンフアストブル-BR日本化薬社製)6重量部、エチルセルロース6重量部、イソプロピルアルコール溶剤88重量部より成るシアン色インクを作成し、坪量40g/m2の紙面上にグラビアコーターを用いて乾燥塗布量5g/m2となる様に塗布し、転写紙を形成する。次に、この転写紙と上述した従来技術の実験1同様に用意した印画紙とをあわせて、転写紙側より200℃に加熱されたホットプレスで5秒間プレスし、転写紙より染料を昇華させ印画紙上に画像を転写する。そして、このカラープリント上に上述した従来技術の実験1で用意したカバーフイルム(1)を加熱圧着し発色したカラープリントを作成する。」(第2頁右上欄第11行〜左下欄第4行)、
と記載されている。

5.対比・判断
5-1.請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という)と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1の、基材の上に水酸基を有する樹脂を主体とする染料受容層が積層され、染料受容層に含まれる樹脂とアルコール変成シリコンオイルとが多官能イソシアナートにより架橋されている昇華転写用被転写紙〈記載事項(1a)参照〉においては、樹脂の水酸基と、アルコール変成シリコンオイルの水酸基とが、多官能イソシアネートのイソシアン基とそれぞれウレタン結合を形成することにより架橋するものであり〈記載事項(1c)参照〉、アルコール変成シリコンオイルは、水酸基を有する樹脂100重量部に対して0.05〜10重量部の割合で添加するのであるから〈記載事項(1b)参照〉、シリコーンの含有量は0.05〜10重量%である。
さらに、水酸基を有する樹脂として、ポリエステル樹脂〈記載事項(1b)参照〉が例示され、実施例1において、ポリエステル樹脂100重量部に対してアルコール変性シリコンオイルを0.1重量部、1重量部それぞれ添加した染料受容層を積層した熱転写用被転写紙及び熱転写インクリボンを熱転写プリンタにセットし、印字試験を行ったところ、融着は見られず、良好な印字品質が得られたことは、熱転写インクリボンの染料が染料受容層に昇華転写して「印刷体」になったことである〈記載事項(1d)参照〉。
よって、後者の、「水酸基を有する樹脂とアルコール変成シリコンオイルとが多官能イソシアナートにより架橋されていること」、「水酸基を有する樹脂」、「染料受容層」、「昇華転写用被転写紙」は、前者の、「架橋結合させたシリコーン含有剥離剤系」、「熱可塑性、染料受容性重合体」、「レシーバー層」、「熱転写レシーバーシート」にそれぞれ相当するから、
両者は、「a)架橋結合させたシリコーン含有剥離剤系をドープした熱可塑性、染料受容性重合体からなるかつ熱転写印刷体を担持するレシーバー層であって、全シリコーン含有量が熱可塑性、染料受容性重合体の重量に基づいて0.05〜1重量%でありかつその少なくとも一部中に、1種又はそれ以上の熱転写性染料が拡散されて印刷体が形成されているレシーバー層と、このレシーバーを担持しているシート状支持体とからなる熱転写レシーバーシート」である点で一致し、
前者は、「b)上記印刷されたレシーバー層に100〜140℃の温度で接着されたプラスチック材料のカバーシート;からなる安全積層品であって、かつ、上記支持体とカバーシートの少なくとも一方は、積層品の外側から印刷物を目視するのに十分な透明性を有するものである安全積層品」であるのに対して、後者は、この点の記載がない点で相違する。

そこで上記相違点について検討すると、刊行物2には、熱移行性染料を有する熱転写シートから移行された染料により画像が形成された画像形成層の表面をラミネートするラミネートフィルムであって、シート状基材の一方の面に熱で接着性が発現する接着層を設けてなるラミネートフィルム〈記載事項(2a)参照〉、シート状基材としては、ポリ塩化ビニルフィルム、・・・ポリエチレンテレフタレートフィルム、・・・等のプラスチックフィルムのうち、透明もしくは半透明のものであること〈記載事項(2b)参照〉、及び実施例において、ラミネートフィルムを用いて昇華転写印刷物に140℃、5秒の条件で加熱ラミネートして、積層体としたところ、得られた積層体は剥離強度が強いものであったこと〈記載事項(2c)参照〉が記載されているが、このことは、透明プラスチックフィルムのラミネートフィルムを、昇華転写印刷物に140℃で接着すると、剥離強度の強い積層体となることである。
また、刊行物3には、基材フィルムの一方の表面に熱移行性染料層を形成してなる熱転写シートにおいて、同一側表面に転写可能な保護層を形成した熱転写シート、及び熱移行性染料層を有する熱転写シート及び被熱転写シートを組み合わせて用い、該染料層中の染料を移行させて被熱転写シート上に転写画像を形成する熱転写方法において、上記画像を形成した後、熱転写シートに設けられた保護層を被熱転写シートに転写すること〈記載事項(3a)参照〉、保護層に使用する材質としては、ポリ塩化ビニル、・・・ポリエチレンテレフタレート、・・・ポリカーボネート等があり〈記載事項(3b)参照〉、また、実施例1には、染料層をA4版の受像層を有する上質紙に重ね・・・サーマルヘッドにて熱転写を行い・・・フルカラー画像を形成し・・・画像形成面の全面に熱転写シートの保護層をサーマルヘッドにより熱転写を行った・・・得られた保護層を有する画像形成面は、保護層を有しない画像形成面に比べ、光沢を持ち、摩擦堅牢度等に優れていたことが、続く実施例2には、保護層をサーマルヘッドに代えて、100℃の熱ロールにより全面熱転写を行って保護層を転写したこと〈記載事項(3d)参照〉が記載されている。
このことは、熱転写シート上に形成した保護層を、染料画像を形成した被熱転写シートに接着することで、その接着を100℃で行うことであり、保護層を有する画像形成面は、保護層を有しない画像形成面に比べ、光沢を持ち、摩擦堅牢度等に優れているのであって、形成した画像を保護層を透して見るものであるから、保護層が透明で、画像を保護するものであるといえる。
ところで、本件明細書において、本件発明1の安全積層品はレシーバー層を保護用カバーシートと積層して強く接着させて、レシーバー層に印刷された情報を変造から保護するためのものであるから(段落【0001】、【0002】、【0006】、【0007】参照)、刊行物2の、ラミネートフィルムを、昇華転写印刷物に140℃で接着したもの、及び刊行物3の、保護層を被熱転写シートに100℃で熱転写したものは、それぞれ本件発明1の、「印刷されたレシーバー層に100〜140℃の温度で接着されたプラスチック材料のカバーシート;からなる安全性層品であって、かつ、上記支持体とカバーシートの少なくとも一方は、積層品の外側から印刷物を目視するのに十分な透明性を有するものである安全積層品」に相当するものであるといえる。
したがって、刊行物1に記載される、熱転写レシーバーシートに熱転写性染料が拡散して印刷体としたものに、刊行物2、3に記載されるようにカバーシートを接着して安全積層品にすることが当業者にとって特に困難であったとすることはできない。
そして、本件発明1による効果も、刊行物1〜3の記載に基づいて予測し得る程度のもので格別なものとは認められない。
よって、本件発明1は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-2.請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明(以下「本件発明2」という)は、本件発明1の構成をすべて引用して、さらに「カバーシートが支持性のカード状シートであり、積層品の全体の厚さの大部分を構成するものである」という限定を加えるものである。
この点について検討すると、刊行物4には、本発明の装飾方法の対象となる被装飾物品・・・キャッシュカード、クレジットカード、メンバーズカード、グリーティングカード、ハガキ、名刺、ICカード等のカード類・・・いずれの材質或いは形状のものでもよいこと〈記載事項(4a)参照〉、及び実施例1では、ポリエステルフィルム(厚み6μm)を用い、その片面にポリエステル樹脂系プライマーを塗布、乾燥し、更にその上に下記組成の受像層形成用インキを用い、乾燥後重量が7g/m2となるように塗布、乾燥し・・・得られた受像層の上に、・・・昇華転写を行い、フルカラーの顔写真とその他の文字、図形からなる表示画像を形成し・・・表示画像の形成されたフィルムの受像層側を、厚さ100μmの白色不透明の硬質塩化ビニル樹脂シートからなるカード基体上に重ねて200℃の熱ローラーで圧着し、表示画像を有する受像層が貼合されたカードを得た・・・表面の引っ掻き等についても良好な耐久性を示した〈記載事項(4b)参照〉ことが記載されているが、これは表示画像の形成された受像層に、厚さ100μmの白色不透明の硬質塩化ビニル樹脂シートからなるカード基体を積層して被装飾物品としていることである。
積層品の全体の厚さの大部分という点について、本件明細書には、明確な定義は特になく、カバーシートが約200μmでレシーバーシートが約50μmの例をあげている(段落【0009】参照)ことからみて、刊行物4の、厚さ100μmの白色不透明の硬質塩化ビニル樹脂シートと、受像層形成用インキを乾燥後重量が7g/m2となるように塗布したポリエステルフィルム(厚み6μm)とを積層した被装飾物品も、カード状シートが積層品の全体の厚さの大部分を構成するものといえる。
したがって、刊行物1〜3の記載にさらに、刊行物4に記載のカード基体を積層することを適用して、本件発明2の、カバーシートが支持性のカード状シートであり、積層品の全体の厚さの大部分を構成するようにすることが当業者にとって特に困難であったとすることはできない。
よって、本件発明2は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-3.請求項3に係る発明について
請求項3に係る発明(以下「本件発明3」という)は本件発明2の構成をすべて引用して、さらに「カバーシートが不透明である」という限定を加えるものである。
この点について検討すると、上記5-2.で述べたように、刊行物4の、厚さ100μmの白色不透明の硬質塩化ビニル樹脂シートからなるカード基体は不透明であるから、これをカバーシートとして安全積層品に用いることが当業者にとって特に困難であったとすることはできない。
したがって、本件発明3は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-4.請求項4に係る発明について
請求項4に係る発明(以下「本件発明4」という)は、本件発明1の構成をすべて引用して、さらに「カバーシートがレシーバーシートのレシーバー層に直接接着されており、これらの層の間に接着剤の層が存在しない」という限定を加えるものである。
この点について検討すると、刊行物3には、被熱転写シートに画像を転写形成した後、保護層を転写する工程を経て、第6図に示される、シート基材7、受像層8、転写画像9、保護層3が順次積層した被熱転写シート10〈記載事項(3c)参照〉が記載されているが、第6図には、転写画像9と保護層3の間には層が図示されていないから〈記載事項(3e)参照〉、転写画像と保護層の間は直接接着したものである。
また、刊行物4の、実施例1・・・表示画像の形成されたフィルムの受像層側を、厚さ100μmの白色不透明の硬質塩化ビニル樹脂シートからなるカード基体上に重ねて200℃の熱ローラーで圧着し、表示画像を有する受像層が貼合されたカードを得た〈記載事項(4b)参照〉との記載も、カバーシートとレシーバーシートのレシーバー層が直接接着されていることである。
したがって、刊行物3、4には、カバーシートがレシーバーシートのレシーバー層に直接接着されており、これらの層の間に接着剤の層が存在しない、ことに相当することが記載されているのであるから、刊行物1〜3の記載にさらにカバーシートとレシーバー層との接着に、刊行物3、4に記載の直接接着を用いることも当業者にとって特に困難であったとすることはできない。
よって、本件発明4は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-5.請求項5に係る発明について
請求項5に係る発明(以下「本件発明5」という)は、本件発明4の構成をすべて引用して、さらに「カバーシートが、白色の充填剤入りポリ塩化ビニル又はポリカーボネート組成物から製造されたものである」という限定を加えるものである。
この点について検討すると、刊行物3に、保護層に使用する材質としては、ポリ塩化ビニル、・・・ポリエチレンテレフタレート、・・・ポリカーボネート等が挙げられ〈記載事項(3b)参照〉ているように、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートはカバーシート用として例示されている樹脂であり、さらに刊行物4の、実施例1の、フィルムの受像層側を、厚さ100μmの白色不透明の硬質塩化ビニル樹脂シートからなるカード基体上に重ねて200℃の熱ローラーで圧着し・・・との記載〈記載事項(4b)参照〉は、塩化ビニル樹脂自体が透明な樹脂であるにもかかわらず、該カバーシートは不透明であるのであるから、カード基体であるカバーシートは何らかの白色の充填剤を含有しているポリ塩化ビニル組成物から製造されたものということである。
したがって、カバーシートとして、刊行物4に記載される、白色の充填剤入りポリ塩化ビニル又はポリカーボネート組成物から製造されたものを用いることも当業者にとって特に困難であったとすることはできない。
よって、本件発明5は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-6.請求項6に係る発明について
請求項6に係る発明(以下「本件発明6」という)は、本件発明1の構成をすべて引用して、さらに「支持体、レシーバー層及びカバーシートは、全ての端部に沿って重なっている」という限定を加えるものである。
この点について検討すると、刊行物2の第2図には、基材、画像形成層、及びラミネートフィルムが積層して、その端部が重なっている断面の状態〈記載事項(2d)参照〉が示されている。
したがって、刊行物2の第2図で示されるところから、支持体、レシーバー層及びカバーシートの、全ての端部に沿って重なるようにする、すなわち安全積層品の各層の端部がすべてそろって積層させることも、当業者にとって特に困難であったとすることはできない。
よって、本件発明6は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-7.請求項7に係る発明について
請求項7に係る発明(以下「本件発明7」という)は、本件発明1の、熱転写レシーバーシートのシート状支持体について、さらに「支持体は透明な品種の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、レシーバー層を担持している表面は、レシーバー層組成物を被覆する前に、レシーバー層を施す前のその接着能力を増大させるために予備処理されており、そして、上記予備処理は支持体の表面構造を変性するための化学的エッチングである」ことを限定するものである。
この点について検討すると、刊行物4の、実施例1において、ポリエステルフィルム(厚み6μm)を用い、その片面にポリエステル樹脂系プライマーを塗布、乾燥し、更にその上に受像層形成用インキを塗布、乾燥し受像層としているが〈記載事項(4b)参照〉、このポリエステル樹脂系プライマーを塗布することが、ポリエステルフィルムの表面構造を変性させるための化学的エッチングであることを示す記載も示唆もない。
また、刊行物1〜3及び甲第4、5号証には、レシーバー層を担持しているポリエステル表面を予備処理をすることについてなんら記載されておらず、示唆もない。
そして、本件発明7は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとレシーバー層との接着力を増大するという効果を奏している。
したがって、本件発明7が、刊行物1〜4及び甲第4、5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5-8.請求項8に係る発明について
請求項8に係る発明(以下「本件発明8」という)は、本件発明7の、熱転写レシーバーシートのエッチングについて、さらに「エッチングを行うための処理用組成物は、p-クロロ-m-クレゾール、2,4-ジクロロフェノール、2,4,6-又は2,4,5-トリクロロフェノール又は4-クロロレゾルシノールを有機溶剤に溶解させた溶液であるか、又は、これらの物質の混合物を共通溶剤に溶解させた溶液である」ことを限定するものであるが、刊行物1〜4及び甲第4、5号証には、エッチングについても、ましてやエッチングを行うための処理用組成物についてなんら記載されておらず、示唆もない。
そして、本件発明8は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとレシーバー層との接着力を増大するという効果を奏している。
したがって、本件発明8が、刊行物1〜4及び甲第4、5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5-9.特許法第36条第4項違反について
異議申立人は、請求項1の「印刷物を目視するに十分な透明性を有する」の「十分な透明性」、請求項3の「カバーシートは不透明」の「不透明」、請求項2の「積層品の全体の厚さの大部分」の「大部分」について、本件特許明細書には説明が一切なく、当業者が容易に実施できる程度に記載されていないと主張する。
しかしながら、請求項1の、「印刷物を目視するに十分な透明性を有する」とは安全積層品の印刷物の情報を容易に視認できるということであり、請求項3の、不透明ということは、「十分な透明性」とは逆に安全積層品の印刷物の情報を視認できないということであるので、その透明、不透明の程度については適宜調整することができることであって、記載として特に不備であるとするまでのものではない。
また、請求項3の「積層品の全体の厚さの大部分」の「大部分」も、安全積層品がカード状シートであるカバーシートは、クレジットカード、保障カード及びカードキーなどのカードにするもので、その使用に耐える厚さを、熱転写レシーバーシートと対比して規定したものであるから(段落【0009】参照)、「大部分」の程度も適宜決定することができることであるので、記載として特に不備であるとするまでのものではない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1ないし6に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件の請求項7、8に係る発明の特許ついては、取消理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
安全積層品及び熱転写レシーバーシート
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 a)架橋結合させたシリコーン含有剥離剤系をドープした熱可塑性、染料受容性重合体からなるかつ熱転写印刷体を担持するレシーバー層であって、全シリコーン含有量が熱可塑性、染料受容性重合体の重量に基づいて0.01〜1重量%でありかつその少なくとも一部中に、1種又はそれ以上の熱転写性染料が拡散されて印刷体が形成されているレシーバー層と、このレシーバーを担持しているシート状支持体とからなる熱転写レシーバーシート;及び
b)上記印刷されたレシーバー層に100〜140℃の温度で接着されたプラスチック材料のカバーシート;
からなる安全積層品であって、かつ、上記支持体とカバーシートの少なくとも一方は、積層品の外側から印刷物を目視するのに十分な透明性を有するものである安全積層品。
【請求項2】 カバーシートは支持性のカード状シートであり、積層品の全体の厚さの大部分を構成する、請求項1に記載の安全積層品。
【請求項3】 カバーシートは不透明である、請求項2に記載の安全積層品。
【請求項4】 カバーシートは、レシーバーシートのレシーバー層に直接接着されており、これらの層の間に、接着剤の層が存在しない、請求項1に記載の安全積層品。
【請求項5】 カバーシートは、白色の充填剤入りポリ塩化ビニル又はポリカーボネート組成物から製造されたものである、請求項4に記載の安全積層品。
【請求項6】 支持体、レシーバー層及びカバーシートは、全ての端部に沿って重なっている、請求項1に記載の安全積層品。
【請求項7】 架橋させたシリコーン含有剥離剤系をドープした、熱可塑性、染料受容性有機重合体からなる、かつ、全シリコーン含有量が熱可塑性染料受容性重合体の重量に基づいて0.01〜1重量%であるレシーバー層と、このレシーバー層を担持しているシート状支持体とからなる安全積層品製造用熱転写レシーバーシートであって、上記支持体は透明な品種の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、レシーバー層を担持している表面は、レシーバー層組成物を被覆する前に、レシーバー層を施す前のその接着能力を増大させるために予備処理されており、そして、上記予備処理は支持体の表面構造を変性するための化学的エッチングであることを特徴とする熱転写レシーバーシート。
【請求項8】 エッチングを行うための処理用組成物は、p-クロロ-m-クレゾール、2,4-ジクロロフェノール、2,4,6-又は2,4,5-トリクロロフェノール又は4-クロロレゾルシノールを有機溶剤に溶解させた溶液であるか、又は、これらの物質の混合物を共通溶剤に溶解させた溶液である、請求項7に記載の熱転写レシーバーシート。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報保持シートが、情報を読み取ることはできるが積層品は変化しないような方法で保護用カバーシートに積層されている、かつ情報保持シートが熱転写印刷体を保持している安全積層品に関する。本発明は、更に、安全積層品用の情報保持シートを製造するのに適当な熱転写レシーバーシートに関する。
【従来の技術及びその解決すべき課題】
安全積層品は種々の用途に使用されているが、ある種の用途においては、機械により判読可能な情報(例えばバーコード)、又は、より一般的には、人間が判読可能な情報(例えば、署名及び関連する字句を伴った写真)又はこれらの混合体が必要とされる。安全積層品の用途範囲は安全度(保証度)の低い用途から、高い用途に亘っておりそして本発明は後者において特別な利点を有するものであるが、低い安全度しか要求されない、単純な用途にも使用し得る。
低安全度(保証度)積層品では、単に、熱転写印刷体の表面を保護すること、或いは、例えば、情報として名前、住所及び、恐らくは、その所有者の写真を保持している荷物用ラベルのごとく、判読可能な情報を、物品を識別するために該物品に付着させ得る形で保持する手段を提供することを要求されるに過ぎない。高い保証度を要求される用途の例としてはカードキー及び保証用パスが挙げられるが、これらの場合、積層品は保持されている情報の変更を防止するために、改ざん防止性のものであるか、又は、積層品の情報の改ざんを試みた場合に情報が破壊されるようなものでなければならない。
【0002】
現在、かかる用途のための情報保持シートは、典型的には、適当な場合にはタイプされた活字及び/又は署名を含めて、通常の光学的写真の形で絵画的情報を保持している少なくとも一方の面と、適当な接着剤を使用して熱可塑性フィルムのカバーシートに積層させた写真のエマルジョン面を有している。写真とカバーシートの少なくとも一方は、積層した後に写真が見えるようにするために、十分に透明でなけらばならない。写真の他方の面に第2のカバーシートを設けて、2枚のカバーシートにより、適当な接着剤を使用して写真が接着されているパウチが形成されるようにすることもできる。
人物、署名、グラフィック又は他のかかる形式の情報の絵画的な表現を生じさせる手段としての光学写真の代替物は熱転写印刷物である。しかしながら、この技術により、特に、その融通性において幾つかの利点が提供され得るが、積層を行う場合に困難性も提供される。
【0003】
熱転写印刷は1種又はそれ以上の熱転写性染料を熱的刺激に応答してダイシート(染料含有シート)(dyesheet)からレシーバー(被転写体)(receiver)へ移行させる印刷法の総称である。ダイシートの全印刷帯域に亘って均一に分散された1種又はそれ以上の熱転写性染料を含有するダイコート(染料含有被膜)(dyecoat)とこれを支持している薄い支持体とからなるダイシートを使用して、ダイコートをレシーバーシート(被転写シート)の染料受容表面に圧着させながらダイシートの選択された、不連続帯域を加熱し、それによって、染料をレシーバーの対応する帯域に移行(転写)させることにより印刷を行い得る。従って、転写されるパターンの形は、加熱を受ける不連続帯域の数と位置によって決定される。多色染料含有被膜(different coloured dyecoat)を使用して、同じ方法で連続的に印刷を行うことにより全色印刷物(full colourprint)を製造することができ、そして、上記多色染料担持被膜は、通常、同一のダイシート上の、反複して繰返される不連続の均一な印刷サイズの帯域として提供される。
【0004】
高解像写真状印刷物は適当な印刷装置、例えば、ビデオ、コンピューター、電子静止カメラ又は同様の信号発生装置から誘導される電子信号によって制御されるプログラム可能熱印刷ヘッド又はレーザープリンターのごとき適当な印刷装置を使用する熱転写印刷により製造し得る。典型的な熱印刷ヘッドは、1mm当り、6個又はそれ以上のピクセル(画素)を印刷する小型ヒーターの列、通常、ピクセル1個当り、2個のヒーターを有する。ピクセルの密度が高ければ高い程、潜在的な解像性が大きくなるが、現在、入手し得るプリンターは一回に一列しか印刷することができないので、高速度でかつ短い熱パルス、通常、零付近から、約10msの長さで、但し、ある種のプリンターでは15msという長さで印刷することが望ましい;この際、各々のピクセルの温度は、通常、最長のパルスの間に約350℃まで上昇する。
【0005】
レシーバーシートは、印刷時に加熱したとき、染料分子が容易に拡散し得る染料受容性重合体からなるレシーバー層と、このレシーバー層を担持しているシート状支持体とからなる。染料受容性重合体の例としては、共通溶剤に可溶性であって、該重合体を塗料組成物として支持体に塗布することを可能にする飽和ポリポリエステルが挙げられる。しかしながら、この重合体は、印刷時に使用される温度以下の軟化点を有する熱可塑性重合体であり、従って、印刷パルスは非常に短いが、ダイコートとレシーバー層との間にある程度の溶融結合を生起させるのに十分なものであり、その結果として、加熱された単一のピクセルの部分だけでなしに、ダイコートの全領域の、レシーバーへの全域転写が生起する。全域転写の量は、数個のピクセルであるが、要求されるものの他に転写される量から、2枚のシートが全印刷帯域に亘って溶接される量の間で変動し得る。
【0006】
印刷時に発生するかかる全域転写の問題を克服するために、剥離剤(release agent)をレシーバー層上に塗料として添加するか、或いは、より一般的には、レシーバー層それ自体中に添加するための種々の提案がなされている。特に効果的な剥離剤系(release system)はシリコーンと、被膜を安定化しかつシリコーンのマイグレーションを防止するための架橋剤とを包含している。反応部分の両者がシリコーンを含有し得るが、一般的ではない。遊離のシリコーンそれ自体が全域転写の問題を招来し得るので、全シリコーン含有量は、典型的には、染料受容性重合体及び少なくともシリコーン含有分子の実質的に全てと反応するのに十分な架橋剤の2〜8重量%である。残念ながら、印刷時に必要なこの剥離特性そのものが、かかる剥離剤系を含有するレシーバー層を安全積層品に必要とされる保護用カバーシートに接着させることを困難にしている。実際に、従来、かかる目的に提案されている種々の接着剤の多くについては、明らかに接着が達成された場合においても、カバーシートは印刷されたレシーバー層から剥離し(特に高温において)、その結果、レシーバー層に印刷された情報は変造に対して無防備な状態にあり、変造から保護されないものとなる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、今般、下記のことを知見した;即ち、剥離特性に対する老化の影響を考慮した場合には、シリコーンをかかる高水準で使用することが、通常、望ましいが、老化していないレシーバー層においては、印刷時の良好な剥離性はシリコーンを非常に低い濃度で用いた場合に得られ得ることを知見した;本発明者は、更に、シリコーンをかかる低いかつ効果的な量で使用した場合にだけ、非常に効果的でかつ安全な接着を達成することができ、接着剤層の使用を必ずしも必要としないことを知見した。
【0008】
従って、本発明の第1の要旨によれば、
a)架橋させたシリコーン含有剥離剤系をドープした熱可塑性、染料受容性重合体からなるかつ熱転写印刷体を担持するレシーバー層であって、全シリコーン含有量が熱可塑性、染料受容性重合体の重量に基づいて0.01〜1重量%でありかつその少なくとも一部中に、1種又はそれ以上の熱転写性染料が拡散されて印刷体が形成されているレシーバー層と、このレシーバー層を担持しているシート状支持体とからなる熱転写レシーバーシート;及び
b)上記印刷されたレシーバー層に100〜140℃の温度で接着されたプラスチック材料のカバーシート;
からなる安全積層品であって、上記支持体とカバーシートの少なくとも一方は、積層品の外側から印刷体を目視するのに十分な透明性を有するものである安全積層品が提供される。
【0009】
カバーシートは最終積層品の全体の厚さの大部分を構成する支持性カード状シートであり得る。かかるカバーシートは、独立した用途(stand-alone uses)に特に適するものであり、クレジットカード、保証カード及びカードキーがその例である;この場合、適当な厚さは、例えば、カバーシートについては約200μm、レシーバーシートについては約50μmである。レシーバー層及び該レシーバー層中に含有される印刷体に対する保護は、支持体により提供される他に、レシーバー層がレシーバー支持体とカバーシートとの間にサンドイッチされるので、カバーシートによっても提供される。一般的には、かかる用途については、より厚いカバーシートは不透明であることが好ましい;この場合、例えば、白色顔料を充填したプラスチックシート(例えばポリ塩化ビニル又はポリカーボネート)と、透明なである比較的薄い、透明レシーバー支持体を使用して、レシーバー層によって担持されているかつレシーバー支持体と不透明なカバーシートとの間にサンドイッチされている印刷体を見ることができるようにすることができる。
【0010】
情報は、例えば、支持カバー(supporting cover)の片面での慣用の印刷と、他方の面での結合熱転写印刷体とにより、かかる積層品の両面に提供し得る。この積層品の変形は完全両面熱転写積層品であり、この積層品では一枚のカバーシートの両面に、印刷されたレシーバーシートが結合されている。かかる変形では、多くの用途について、レシーバーの両者について透明な支持体を使用し、そしてカバーシート(これはレシーバーの間にサンドイッチされている)は不透明であることが好ましい;従って、印刷体は見ることはできるが、但し、一方からだけである。しかしながら、特定の効果について適当である場合には、透明なカバーシートも使用し得る。
支持カバーシートは、それ自体、積層品であることができるが、このことは、例えば、積層品の裏面について特定の表面組織又はデザインが要求される場合、或いは、ある種の機能的な特徴(例えば、カードキーのキー機能)が積層カバーシートの層間に隠されている場合に有用である。
【0011】
安全積層品はレシーバーシートの裏面、即ち、レシーバー層と反対側の面に第2のカバーシートを有することができ、この場合、レシーバーシートは2枚のカバーシートの間にサンドイッチされる。かかる用途については、透明な熱可塑性フィルムのごとき、非常に薄いシートが一般的に好ましい。これらの安全積層品は、2枚のカバーシートが、レシーバーシートの辺縁より広がっているかつ相互に結合されている周辺部分を有するポーチ状積層品(pouch laminate)を包含している。このポーチ状積層品の内部に、印刷されたレシーバーシートが内臓されており、そのレシーバー層は、重なっているカバーシートに結合されている。
かかる形態においては、レシーバーシートの裏面が、これと重なっているカバーシートに結合されていることは必ずしも必要ではないが、このことは、一般的には、これらのシートの間に薄い空気膜(air film)を存在させるためには好ましい;但し、結合方法は印刷されたレシーバーシートの2つの面について同一である必要はない。しかしながら、第2のカバーシートが拡大している周辺部分を有していない場合には、第2のカバーシートをレシーバーシートの裏面に結合させて、該シートをその場に保持することが必要である;但し、その方法は又は手段は、同様に、レシーバーシートを第1のカバーシートに結合させるのに使用した方法と異なるものであり得る。
【0012】
前記したごとく、本発明者はシリコーンを低い量で使用することにより、非常に効果的なかつ安全な結合を達成することができ、接着剤層を設けることが必ずしも必要でないことを知見した。実際に、本発明による好ましい積層品はカバーシートがレシーバーシートのレシーバー層に直接結合しており、これらの層の間に、付加された接着剤層が存在しない積層品である。本発明者はある種の熱可塑性カバーシート、特に、充填剤入り、白色ポリ塩化ビニル又はポリカーボネート組成物からなるカバーシートを使用した場合には、積層プレス内で単に加熱することにより、かかる直接結合が容易に行われることを知見した。レシーバー層とカバーシートとを直接、結合させるこの驚くべき能力は、積層品の製造を単純化し得るばかりでなしに、多くの普通の接着剤層は、それ自体、特に高温では、しばしば流動して、接着した層を剥離させ、損傷させるので、より大きな安全性を提供し得る。
【0013】
この方法で直接結合を行わせるのに必要な最低温度は、レシーバーのシリコーン含有量により変動することが認められた。前記範囲の下限では、例えば、100℃付近で(他の成分の化学的性質に応じて)結合を良好に行わせ得るが、その他の点では対応する系において、約1%の高いシリコーン含有量の場合には、非常に高い積層温度、例えば150℃を必要とし得る(これらの特定の数値は、市販の熱ロール式貼り合せ機の一種について使用して好結果が得られた温度の一例を示すものであるが、他の貼り合せ機については修正を必要とし得る)。
【0014】
前記したごとく、接着剤を使用しない積層品は小量のシリコーンを使用することにより最も容易に得ることができるが、特に少ない量、例えば、0.05%又はそれ以下の量で使用した場合には、印刷を行う前にレシーバー層の不都合な老化を生じさせないことが次第に重要になる。従って、実際には(後記実施例で示すごとく)、調製したばかりのレシーバー層を使用することにより、上記したごとき特に低いシリコーン含有量のレシーバー用組成物を使用した場合でも、トラブルを生じることなしに印刷が行われる。老化の速度はレシーバーを保存する条件に大きく影響される。その条件が特に湿度の高いかつ特に温暖なものでない場合には、シリコーン含有量が極めて低い材料でも数か月間、十分、使用可能である。しかしながら、レシーバーを製造した後、直ぐに老化が開始するように思われ、従って、老化速度に対する貯蔵条件の影響から見て、かかるレシーバーは、製造後、直ぐに使用することが好ましい。シリコーン含有量の特に低いかつ古いレシーバーを使用した場合には、印刷時に、全域転写の発生が次第に増大するように思われる。
【0015】
製造の面から考慮した場合、印刷されたレシーバーシートと単一のカバーシートとからなる積層品において、支持体とレシーバー層とカバーシートとが全ての辺縁部で重なっていることが一般的に好ましいが、このことは必須ではない。例えばレシーバー層は他の2枚のシートより小さいものであり得るが、この場合、カバーシートと、レシーバー層によって被覆されていないレシーバー支持体の部分とを接着させるために、他の接着手段、例えば接着剤を使用することが必要であり得る。支持体の全帯域がレシーバー層で被覆されているが、レシーバーシートがカバーシートの一部だけを被覆している形式の積層品が最も容易に提供される。
【0016】
本発明の第2の要旨によれば、架橋させたシリコーン含有剥離剤系をドープした、熱可塑性、染料受容性有機重合体からなるかつ全シリコーン含有量が熱可塑性染料受容性重合体の重量に基づいて0.01〜1重量%であるレシーバー層と、このレシーバー層を担持しているシート状支持体とからなる安全積層品製造用の熱転写レシーバーシートであって、上記支持体は透明な品種の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、レシーバー層を担持している表面は、レシーバー層組成物を被覆する前に、レシーバー層を施す前のその接着能力を増大させるために予備処理されており、そして、上記予備処理は支持体の表面構造を変性するための化学的エッチングであることを特徴とする熱転写レシーバーシートが提供される。
【0017】
染料受容性有機重合体はレシーバー層組成物の大部分を形成する。この重合体は単一の種類の重合体からなるか又は重合体の混合物であり得る。特に適当な染料受容性有機重合体は飽和ポリエステルである(その理由は、反応性エチレン性不飽和に関連して、かかる適当なポリエステルの多くは、反復単位1個当り、1個又は以上の芳香族基を含有しているからである)。商業的に入手されるこれらの重合体の例としては、バイテル(Vitel)200(Goodyear製品)及びバイロン(Vylon)ポリエステル(東洋紡製品)が挙げられ、103と200の銘柄が特に適当である。有機重合体組成物は、例えばポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合体のごとき追加の重合体も含有し得る。
【0018】
好ましい剥離剤系は、1分子当り、多数のヒドロキシル基を有するシリコーンの少なくとも1種と、触媒された条件下でかかるヒドロキシル基と反応し得る有機多官能性N-(アルコキシメチル)アミン樹脂の少なくとも1種との熱硬化性反応生成物である。シリコーンは分岐鎖状であるか又は線状でることができるが、後者のシリコーンは、支持体の被覆プロセスで有用な、良好な流動特性を提供することができる。ヒドロキシル基はシリコーン部分と、ポリオキシアルキレンとを共重合させて、末端ヒドロキシル基を有する重合体を形成させることにより提供され得る;これらのヒドロキシル基はアミノ樹脂との反応に利用し得る。かかるシリコーン共重合体であって、二官能性のものの例はポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体である。これらの共重合体は、1分子当り、2個の末端ヒドロキシル基を有する線状分子を有しており、熱硬化性生成物について多数の架橋結合を得るためには、これらの共重合体は、少なくとも3の官能性を有するN-(アルコキシメチル)アミン樹脂を必要とする。ヒドロキシオルガノ官能基を、直接、シリコーン主鎖にグラフトさせて、本発明の組成物に適当な架橋結合し得るシリコーンを製造することもできる。これらの例として、テゴマー(Tegomer)HSi 2210、即ちビス-ヒドロキシアルキルポリジメチルシロキサンが挙げられる。同様に、官能性が2である場合には、熱硬化を行わせるためには、より大きな官能価を有する架橋剤を必要とする。
【0019】
好ましい多官能性N-(アルコキシメチル)アミン樹脂としては尿素、グアナミン及びメラミン樹脂のアルコキシメチル誘導体が挙げられる。低級アルキル化合物(即ち、C4ブトキシ誘導体まで)は商業的に入手することができ、全て効果的に使用し得るが、メトキシ誘導体は、そのより揮発性の副生物(メタノール)を後に容易に除去し得るという理由で非常に好ましい。American Cyanamid社からサイメル(Cymel)の名称で種々の銘柄のものが販売されている後者の例は、ヘキサメトキシメチルメラミンであり、適当な粘度を得るために部分的に予備重合させて使用するのに好適である。ヘキサメトキシメチルメラミンは置換基による立体障害に応じて3〜6官能性であり、適当な酸触媒、例えばp-トルエンスルホン酸(PTSA)を使用して、高度に架橋した材料を形成することができる。しかしながら、塗料組成物の保存期間を増大させるために、上記酸を、最初に添加するとき、ブロックすることが好ましい;その例としてはアミンブロックPTSA(例えばナキュア(Nacure)2530)及びアンモニウムトシレートが挙げられる。
【0020】
遊離のシリコーンは全域転写の問題を発生させることがあり、従って、少なくとも当量のアミン樹脂を使用することが好ましいことが認められた。
【0021】
多官能性シリコーンと架橋剤とを染料受容性重合体組成物に添加し、触媒を混合し、ついで混合物を支持体又は該支持体に予め施し得るアンダーコート上に塗料として塗布した後、剥離剤系を硬化させる。
【0022】
本発明の積層品で使用するのに好ましいレシーバーは、線状ポリエステル、特に、延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムのごとき平滑な熱可塑性フィルムの支持体を有するものである。これらは前記したごとき積層プロセスにおいても寸法安定性であり、不透明な形及び透明な形で製造することができ、平滑で光沢のある表面を有する。
【0023】
本発明でシリコーン含有量の低い組成物を使用することの第1の目的は、積層を行う際に効果的な接着を可能にすることにあるので、レシーバー層と支持体との接着は、少なくとも、積層の際に行われるカバーシートへの結合と同様に強いものであることが好ましく、さもないと、支持体/レシーバー層界面での接着不良により層剥離が生じることがあり、かかる低水準の剥離剤を使用することにおける危険性は、全て、利用できないなものになるであろう。このことは、繊維及び合成紙のごときより目の粗い支持体については問題となり得ないが、平滑な熱可塑性フィルムについては、支持体にレシーバー層を施す前に、支持体表面を予備処理してその接着能力を増大させることが好ましい。特に、この処理により、好ましい支持体である透明な等級の支持体、即ち、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用して製造した積層品の安全性について顕著な改善が提供される。
【0024】
予備処理においては、前記した通り、支持体の表面構造を変性させるために化学的エッチングが行われる。プラスチックフィルムがポリエチレンテレフタレートのごとき線状ポリエステルである場合には、予備処理は、フィルム表面にフィルムに対して膨潤又は溶剤作用を有する組成物を適用することにより行い得る。好ましい予備処理用組成物は、p-クロロ-m-クレゾール、2,4-ジクロロフェノール、2,4,6-又は2,4,5-トリクロロフェノール又は4-クロロレゾルシノールを、アセトン又はメタノールのごとき有機溶剤に溶解させた溶液であるか、又はこれらの物質の混合物を共通溶剤に溶解させた溶液である。所望ならば、予備処理用組成物は重合体状成分、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を含有し得る。かかる組成物をフィルム状支持体表面に施した後、これを高温で数分間乾燥させ、その後、レシーバー層用組成物を施す。
【0025】
単独で使用されるか又はエッチング処理と併用される接着促進用二次層(subbing layer)は、レシーバー層中で使用されるものと同一の染料受容性重合体(例えば、飽和ポリエステル)を含有する重合体層であるか、又は、レシーバー層と反応性の成分(例えば、過剰の架橋剤がレシーバー層の剥離剤系中で使用されている架橋重合体)を含有する重合体層であり得る。通常、一方又はそれ以上の方向に伸長させることにより達成される分子配向によりフィルムを製造した場合には、重合体二次層をフィルムの製造時に施すことが好都合である。通常、配向されたフィルムを、2つの相互に垂直な方向に延伸することにより二軸的に延伸する。二次層は延伸を開始する前に施すか又は、好ましくは、2つの方向での連続的延伸の間に施し得る。
【0026】
レシーバーシートは、そのレシーバー層と二次層の他に、印刷時及び印刷前の取扱いを容易にするために、粘着防止用裏面被膜及び/又は帯電防止被膜又は処理剤のごとき他の被膜を有し得る。
【0027】
本発明の第2の要旨によるレシーバーシートは、カセット内に充填された長いストリップの形で販売され、使用されるか、又は、個々にプリントサイズ部分にカットされるか、又は、本発明のレシーバーシートによって提供される利点を完全に利用するために、このレシーバーシートをどのようなプリンターにおいて使用すべきかという要件(このプリンターが熱プリントヘッドを組込まれているか又は他のプリントシステムを組込まれているかに拘りなく)に適合させ得る。
【0028】
以下においては、添付図面に示されている、特定の態様を参照して本発明を例示する;図面には本発明による積層品の断面が略図で示されており、その一部は理解を容易にするために、若干、開裂されている。
【0029】
例示されている積層品においてはレシーバーシート1にカバーシート2が結合されている。レシーバーは透明な二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム11[例えば、ICI社製、メリネックス(Melinex)、銘柄OHP]の支持体を有する。下方表面12(図面に示す位置)は、前記したごときクロロフェノールエッチングにより予備処理されておりかつレシーバー層13が設けられている。このレシーバー層は染料受容性重合体とシリコーン剥離剤系の両者を含有している;この層は、有機溶剤溶液として塗布し、ついで、乾燥させ、硬化させて図面に示すごとき被膜を形成させることにより施されたものである。カバーシート2は艶消し面を有するPVCの白色、不透明シートであり、このシートに、レシーバー層が加熱と加圧により、これらの層の間に接着剤の層を設けることなしに結合されている。
【0030】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。
【0031】
実施例 1
本発明を更に例示するために、図1に実質的に示されている安全性積層品を作成した。厚さが50μmの透明二軸延伸ポリエステルフィルムの大きなウエブの片面をクロロフェノールエッチングにより予備処理しついで下記の成分からなり、シリコーン含有量だけが異なる一連のレシーバー層被覆剤組成物を被覆した:

【0032】
バイロン 200は染料受容性線状ポリエステルである。テゴマーHsi 2210はGoldshmidt社から販売されている、ビス-ヒドロキシルアルキルシロキサンであり、これは酸性条件下でサイメル 303により架橋して、印刷時に効果的な剥離剤系を提供する。ナキュア 2530はアミンブロックp-トルエンスルホン酸触媒であり、チヌビン(Tinuvin)900は紫外線吸収剤である。
【0033】
これらの被覆剤組成物は3種の機能性溶液を混合することにより調製した:第1の溶液は染料受容性重合体のバイロンと紫外線吸収剤のチヌビンとを含有する溶液であり、第2の溶液は架橋剤のサイメルを含有する溶液でありそして第3の溶液はシリコーン剥離剤系のテゴマーと、テゴマーとサイメルとの間の架橋重合を触媒するためのナキュア溶液とを含有する溶液である。これらの溶液は塗布する直前に混合し、溶剤の量を調節することにより全固形分が約12%の最終溶液を調製した。
【0034】
インライン機械塗装を使用して、レシーバー層組成物をポリエステルフィルムのクロロフェノール-下塗表面に塗布し、乾燥させついで硬化させて、厚さ約4μmの染料受容性層を得た。
【0035】
レシーバー層は曇りがなくかつ透明であり、主としてこの層にアトランテック(Atlantek)熱転写プリンターにより、単色ダイシートを使用して印刷した場合、頭上投影に適する高品質の透明性が得られ、しかも印刷時に全域転写が発生した証拠は認められなかった。数個の小さい試験片に、より小型の試験室用プリンターを使用して印刷した場合にも同様の結果が得られた。
【0036】
ついで、印刷されたレシーバーシートの試料を、厚さ200μmのポリ塩化ビニル(“PVC”)カバーシート[シュタウフェン フォイレン(Staufen Foilen)PVC等級24.4及び27.4]上に載置した;その際、レシーバーシートのレシーバー層とPVCとを直接、接触させた。オザテック(Ozatec)HLR 350熱ロール式貼合わせ機を使用し、ロール速度を0.5m/minに設定し、温度を200℃、操作空気圧を5気圧として(ローラーに偏りをつけるため)、積層を2つの経路で行った;即ち、前進させて貼合わせ機に供給しついで(同一の速度と圧力で)後退させて、積層された材料を貼合わせ機の前方から取出した。追加的な形での接着剤は使用しなかった。
【0037】
ついで、積層品の試料を、支持体とカバーシートとを剥離させることにより安全性について試験した。全ての積層品が、メリネックス支持体が剥離するのではなしに、破れてしまうような良好な接着性を有していることが認められた。
【0038】
更に、驚くべきことは、最終印刷物の品質であった。積層品の製造に使用した温度は高温であるにも拘らず、染料分子の横方向への拡散は極めて少ないことが認められた。積層された印刷物は、積層される前と同様の良好な解像度を有しており、検知され得る相違として、粒状性(graininess)が、若干、減少する可能性があることが認められたに過ぎなかった。
【0039】
実施例 2
より低い、種々の積層温度を使用して、上記実施例を繰返した。0.13%のシリコーン含有量を使用した場合には、120℃という低い積層温度を使用した場合にも実施例1と同様の結果が得られることが認められた。しかしながら、より高いシリコーン含有量を使用した場合には、同様の結果を得るのに、より高い温度を必要とした。例えば、シリコーン含有量が0.8%の場合、積層を200℃で行った場合に、前記したごとき良好な結果が得られるのに対し、積層をより低い温度で行った場合には、得られる結果は次第に不良なものになる。120℃で積層を行った場合、シリコーン含有量が0.8%のレシーバーでは、メリネックス支持体が破れる前に剥離した。同様に、中間のシリコーン含有量の場合、これに対応する中間の積層品強度が得られることが認められた。
【0040】
実施例 3
最低の実際の積層温度とシリコーン含有量との関係を調べるために、シリコーン(テゴマー Hsi 2210)を種々の量で使用して、種々のレシーバー層被覆剤組成物を調製し、対応するレシーバーを作成しそして前記実施例で記載した方法で印刷した。印刷後、これらのレシーバーの各々を、積層温度を100℃から出発して、変化させたこと以外、前記したごとき条件下で、艶消しPVCに積層した。接着の水準が、積層品が剥離するよりもメリネックス支持体が破れるようなものになるまで、積層温度を後続の時間において10℃だけ上昇させた。その結果は、実施例4の結果と共に後記の表に示されている。
【0041】
実施例 4
PVC カバーシートの代わりにポリカーボネート(“PC”)シートを使用したこと以外、前記実施例で記載した温度で、一連の積層を繰返した。PCシートの一方の面は艶消しされており、他方の面は光沢があった。両方の面をその積層特性について試験したが、変化は認められず、従って、PCの一つのセットについての結果だけを下記の表に示した。
【0042】

【0043】
上記の表において、シリコーン濃度は染料受容性重合体の重量に基づく%として表されており、積層温度は上記したシリコーン濃度での積層基準を満足させる最低温度である。これらの調製直後の低シリコーンレシーバーシートについては全域転写の問題は生じなかった。
【0044】
上記の結果は、本発明による非常に安全な積層品を製造するのに(添加された接着層を使用しない場合でも)異なる重合体シートを使用し得ること及びかかる異なる重合体シートについて必要される非常に異なる温度を使用し得ることを明らかに示している。しかしながら、共通の要因として、異なる重合体を使用した場合には、必要とされるシリコーンの適当な量は同一の範囲内にあるということが認められた。
【0045】
実施例 5
接着剤の層を介在させた場合に、低シリコーン含有量のレシーバー層を使用することができ、有益であり得る。
【0046】
最初に、硬質の白色ポリエステルシート(メリネックス 990、ICI社製品)に熱溶融接着剤(バイロン 200)を被覆することによりカバーシートを作成した。この接着剤をトルエン/MEK溶液としてK-バーを使用して被覆し、乾燥させた。(恐らく熱溶融塗料が好ましく、この時点で上記装置を利用し得る)。
【0047】
前記実施例に記載の方法で印刷物を作成し、ついで、その上に、作成したばかりのカバーシートを載せ、その際、接着剤塗膜を印刷されたレシーバー層と対向させた。ついで、前記したごとき熱ロール式ラミネーターを使用して積層を行った。このプロセスを、全て、シリコーン剥離剤系を非常に高い濃度で含有すると考えられる、種々の製造業者からのレシーバーシートを使用して繰返した。
【0048】
加熱した場合には、得られた積層品を剥離させることは不可能ではなかった。しかしながら、周囲温度では、本発明による低シリコーン含有量の積層品は剥離させることが困難であり、他の積層品と比べて著しく困難であった。
【0049】
実施例 6
この実施例においては、接着剤層を同様に使用したが、この場合、接着剤と支持体とを同時押出積層品として形成して、これらの間で特に良好な結合を形成させた。カバーシートは二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、同時押出被膜はエチレンテレフタレートとエチレン-イソフタレートとの比率が82:12の共重合体(メリネックス 343、ICI社製品)であった。前記と同様の積層条件を使用した場合、同様に、低シリコーン含有量のレシーバーシートとの結合が非常に良好であることが認められた。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、本発明による積層品の断面図である。
【符号の説明】
1 レシーバーシート
2 カバーシート
11 二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム
12 下方表面
13 レシーバー層.
 
訂正の要旨 訂正要旨
特許第3109857号発明の特許明細書を下記のように訂正する。
a.特許請求の範囲の請求項1の「レシーバー層に接着されたプラスチック材料のカバーシート」を特許請求の範囲の減縮を目的として、「レシーバー層に100〜140℃の温度で接着されたプラスチック材料のカバーシート」に訂正する。
b.特許請求の範囲の請求項1の「安全性積層品」を誤記の訂正を目的として、「安全積層品」に訂正する(2カ所)。
c.特許請求の範囲の請求項7の「二軸遠心ポリエチレンテレフタレートフィルム」を誤記の訂正を目的として、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」に訂正する。
d.特許公報の段落【0008】の「レシーバー層に接着されたプラスチック材料のカバーシート」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「レシーバー層に100〜140℃の温度で接着されたプラスチック材料のカバーシート」に訂正する。
e.特許公報の段落【0008】、【0011】の「安全性積層品」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「安全積層品」に訂正する。
f.特許公報の段落【0016】の「二軸遠心ポリエチレンテレフタレートフィルム」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」に訂正する。
g.特許公報の段落【0011】、【0012】の「熱化塑性フィルム」を誤記の訂正を目的として、「熱可塑性フィルム」に訂正する。
異議決定日 2002-07-19 
出願番号 特願平3-110249
審決分類 P 1 651・ 531- ZD (B41M)
P 1 651・ 121- ZD (B41M)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 野田 定文  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 植野 浩志
阿久津 弘
登録日 2000-09-14 
登録番号 特許第3109857号(P3109857)
権利者 インペリアル・ケミカル・インダストリーズ・ピーエルシー
発明の名称 安全積層品及び熱転写レシーバーシート  
代理人 八木田 茂  
代理人 八木田 茂  
代理人 森田 哲二  
代理人 高島 一  
代理人 平井 輝一  
代理人 浜野 孝雄  
代理人 平井 輝一  
代理人 浜野 孝雄  
代理人 森田 哲二  

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