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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65H
管理番号 1073222
異議申立番号 異議2001-73206  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-12-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-11-26 
確定日 2003-01-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3170959号「紡糸巻取機」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3170959号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1. 手続の経緯
特許第3170959号の請求項1に係る発明についての出願は、平成5年6月8日に特許出願され、平成13年3月23日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、東レ株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年4月11日に訂正請求がなされたものである。
2. 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア. 訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1に記載の「糸を拾うための可動シフター」(特許公報の第1頁第2欄第2行目)の前に、「前記糸跳ねガイドで跳ね上げられた」を挿入する。
イ. 訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1の記載において、「横の位置にあるように構成した」(特許公報の第1頁第2欄第5〜6行目)とあるのを、「横の位置にあり、前記可動シフターが前記固定シフターの固定側から往復動して拾った糸を該固定側まで運ぶように構成した」と訂正する。
ウ. 訂正事項c
明細書の【0015】に記載の「糸を拾うための可動シフター」(特許公報の第3頁第5欄第45行目)の前に、「前記糸跳ねガイドで跳ね上げられた」を挿入する。
エ. 訂正事項d
明細書の【0015】に記載の「横の位置にあるように構成した」(特許公報の第3頁第5欄第48〜49行目)とあるのを、「横の位置にあり、前記可動シフターが前記固定シフターの固定側から往復動して拾った糸を該固定側まで運ぶように構成した」と訂正する。
オ. 訂正事項e
明細書の【0021】に記載の「大きくな」(特許公報の第3頁第6欄第37行目)とあるのを、「大きな」と訂正する。
カ.訂正事項f
明細書の【0025】に記載の「可動シスター」(特許公報の第4頁第7欄第30〜31行目)とあるのを、「可動シフター」と訂正する。
キ.訂正事項g
明細書の【0025】に記載の「(図6の符号29a)が図6」(特許公報の第4頁第7欄第37行目)とあるのを、「(図7の符号29a)が図7」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1に記載された「可動シフター」の拾う糸を「前記糸跳ねガイドで跳ね上げられた」ものに限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。そして、明細書の【0022】及び図2には、「可動シフター41は、区間Lの往復動から静止点であるX点まで跳ね上げられた糸Yを拾う」と記載され、明細書の【0025】及び図4には、「糸跳ねガイドがトラバース装置で往復動する糸を跳ね上げる。すると、満巻ボビンに至る糸はセンター棒巻を形成する。このセンター棒巻の途中で、同図(c)のa線のように、シフター装置の可動シフターが急速に移動し、ガイド溝に糸をキャッチする。」と記載されているので、特許請求の範囲の請求項1の記載を「前記糸跳ねガイドで跳ね上げられた糸を拾うための可動シフター」と訂正しても新規事項の追加には該当しない。また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
上記訂正事項bは、特許請求の範囲の請求項1に記載された「可動シフター」の動きを限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。そして、明細書の【0021】には、「固定された固定シフター40」、「可動シフター41は空圧シリンダ42で図2の矢印43の如く大きくな往復動43aと小さな往復動43bとのスライド移動をする。」と記載され、図2には、可動シフター41の往復動43aが固定シフター側からスタートして固定シフター側の元の位置へ戻ることが図示されており、これらのことから、可動シフターが固定シフターの固定側から往復動して該固定側まで戻ることが記載されている。また、明細書の【0022】には、「可動シフター41は、区間Lの往復動から静止点であるX点まで跳ね上げられた糸Yを拾うための傾斜部44と拾われた糸Yを止め置く凹形状のガイド溝45を有している。矢印43のうちの往復動43aで糸を拾い、次に述べる固定シフター40と共同で糸を空ボビンのスリットに相当する位置に保持する。」と記載され、可動シフターが往復動して糸を拾うことが記載されている。さらに、明細書の【0025】には、「このセンター棒巻の途中で、同図(c)のa線のように、シフター装置の可動シフターが急速に移動し、ガイド溝に糸をキャッチする。そして、可動シスターがb線のようにゆっくり元の位置に移動し、満巻ボビンの外周全長にわたるゆっくりした綾巻が形成される。」と記載され、可動シフターが拾った糸を該固定側まで運ぶことが記載されている。以上のことから、特許請求の範囲の請求項1の記載を「横の位置にあり、前記可動シフターが前記固定シフターの固定側から往復動して拾った糸を該固定側まで運ぶように構成した」と訂正しても新規事項の追加には該当しない。また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
上記訂正事項cは、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に伴って生じる発明の詳細な説明中の明りょうでない記載を釈明するもので、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。この訂正が新規事項の追加には該当しないことは、上記訂正事項aの段落で検討したとおりである。また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
上記訂正事項dは、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に伴って生じる発明の詳細な説明中の明りょうでない記載を釈明するもので、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。この訂正が新規事項の追加には該当しないことは、上記訂正事項bの段落で検討したとおりである。また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
上記訂正事項e、f、gは、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。これらの訂正は新規事項の追加には該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3. 特許異議の申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
申立人東レ株式会社は、請求項1に係る発明は、甲第1号証(特開平2-276771号公報)、甲第2号証(特開昭62-280172号公報)に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべきと主張している。
(2)本件の請求項1に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本件発明」という。)
「ボビンを挿着するボビンホルダを2本備え、これら2本のボビンホルダを、前記ボビンがタッチローラに転接しタッチローラに至った糸を前記ボビンに巻き取る巻取位置と、待機位置とに切り換え可能に配置した紡糸巻取機であって、前記ボビンに巻かれる糸を往復動させる羽根トラバース装置と、該羽根トラバース装置から糸を外す糸跳ねガイドと、糸をボビンの糸掛け位置まで運ぶと共に糸掛け後にテイル巻きを形成するシフター装置とを、前記タッチローラに至る糸に対して前記タッチローラが配置された側から作動可能に配設するとともに、前記待機位置に位置する満巻きボビンから前記巻取位置に位置する空ボビンに糸を移し替える糸渡し装置を、前記空ボビンと前記満巻ボビンとの間の糸に対して前記タッチローラが配列された側から進出するよう配設し、前記シフター装置が、前記糸跳ねガイドで跳ね上げられた糸を拾うための可動シフターとテイル巻きのための固定シフターとからなり、前記可動シフターと前記固定シフターとが糸の往復動区間と干渉しないように前記往復動区間の横の位置にあり、前記可動シフターが前記固定シフターの固定側から往復動して拾った糸を該固定側まで運ぶように構成した紡糸巻取機。」
(3)甲各号証の記載事項
甲第1号証(取消しの理由に引用した刊行物1)には、次のア.〜ケ.の事項が図面とともに記載されている。
ア.「連続的に送り込まれる糸のための巻取り装置であって、回転可能なボビンリボルバ(18)が設けられていて、該ボビンリボルバ(18)に2つの巻取りスピンドル(5.1及び5.2)が支承されており、糸走行方向で見てボビンリボルバ(18)の手前に切り替え装置と接触ローラが設けられており、該接触ローラの外周面が、作業位置にある一方の巻取りスピンドルに形成されたボビンの外周面に接触していて、……………………巻取り装置。」(第1頁左下欄第6行目〜第2頁左上欄第2行目)
イ.「切り換え装置の後ろで糸は、接触ローラ11で90°よりも大きい角度で変向せしめられ、次いでボビン6に巻上げられる。ボビン6は巻き管10.1に形成される。巻き管10.1は自由回転可能な巻取りスピンドル5.1(作業位置にある駆動されるスピンドル)で緊締される。巻取りスピンドル5.1は、この巻取りスピンドルで緊締された巻き管10.1及びこの巻き管で形成しようとするボビンと共に作業開始位置にある。この時点で、第2の巻取りスピンドル5.2(非作業位置にある)はこの第2の巻取りスピンドルに緊締された巻き管10.2(空管)と共に待機位置にある。2つの巻取りスピンドル5.1及び5.2は回転可能なボビンリボルバ18内で自由回転可能に支承されている。」(第10頁左上欄第14行目〜右上欄第9行目)
ウ.「切り換え装置はいわゆるウイング式切り換えである。この切り換え装置は、伝動装置22によって互いに接続されモータ14によって駆動せしめられる2つのローラ12及び13を有している。ロータ12及び13には、特に第2図及び第3図に示されているようにウイング7及び8が固定されている。ロータは種種異なる回転方向27,28で回転しながら糸をガイドライン9に沿ってガイドし、この時に一方のウイングが一方方向のガイドを行って、ガイドライン9の下側に侵入し、他方のウイングは他方方向のガイドを行ってガイドライン9の下側に侵入する。」(第11頁左下欄第8行目〜第20行目)
エ.「持ち上げ装置25を前方に旋回させることによって糸は、第4図に示されているように、接触が完全になくなるまで、切り替え装置4のウイング7,8の作用範囲から出される。従って、糸は斜めの一方の前縁部35に沿ってスライドし、ガイドノッチ36に達する。」(第16頁左下欄第18行目〜右下欄第3行目)
オ.「糸はまずV字状の前縁部35に沿ってスライドする。従って糸は同時に金属薄板39のスライド縁部42に沿ってもスライドする。この時に糸は持ち上げ装置25のガイドノッチ36内、及び糸巻き付け装置26の保持スリット43内に達する。またこの場合、ガイドノッチ36及び保持スリット43はまずほぼ同一の垂直面に位置する」(第17頁左上欄第19行目〜右上欄第6行目)
カ.「掴みスリットも存在する垂直面(掴み面)にガイドノッチ36がほぼ位置するまで、スライドせしめられる。この矢印45の方向の持ち上げ装置25の運動において、糸は保持スリット43内で保持される。」(第17頁右上欄第12行目〜第16行目)
キ.「掴みスリット37は、巻き管が普通に巻かれる切り換え行程Hの外に位置している。」(第16頁左下欄第7行目〜第9行目)
ク.「次いで持ち上げ装置25は再びその中立位置に走行せしめられる。従って糸は再び切り替え装置4によって掴まえられて往復運動せしめられる。」(第17頁右下欄第13行目〜第16行目)
ケ.「金属薄板(39)より形成された糸変向ガイド(26)が糸走行方向側で、空の巻き管を有する、作業位置にもたらさた巻取りスピンドル(5.2)と、満管のボビンを有する、まだ駆動されている巻取りスピンドル(5.1)との間に侵入旋回可能であって、」(第3頁左上欄第14行目〜第19行目)
そして、第2図には、糸が往復運動する範囲Hと掴みスリット37との間に間隔があることが示されており、上記記載事項キ.ク.を参照すると、糸はガイドノッチ36から外れるとともに掴みスリット37から範囲Hに移動するが、この間にボビンに糸が巻かれ、つまり、テイル巻きが形成されるものと認められる。
また、第1図に、ウイング及び持ち上げ装置は、接触ローラに至る糸に対して、接触ローラが配置された側から作動可能に配設されている点が示されており、
オ.及びカ.から、糸変向ガイドは、持ち上げ装置と共に、満巻きボビンから空ボビンに糸を移し替える働きをしているものと認められ、
第4図に、糸変向ガイドが、空ボビンと満巻ボビンとの間の糸に対して接触ローラが配列された側から進出するよう配設した点が示されている。
以上のことから、甲第1号証には、
ボビンを挿着する巻取りスピンドルを2本備え、これら2本の巻取りスピンドルを、前記ボビンが接触ローラに転接し接触ローラに至った糸を前記ボビンに巻き取る作業位置と、非作業位置とに切り換え可能に配置した紡糸巻取機であって、前記ボビンに巻かれる糸を往復動させるウイングと、該ウイングから糸を外し、糸をボビンの掴みスリットまで運ぶと共に糸掛け後にテイル巻きを形成する持ち上げ装置とを、前記接触ローラに至る糸に対して前記接触ローラが配置された側から作動可能に配設するとともに、前記非作業位置に位置する満巻きボビンから前記作業位置に位置する空ボビンに糸を移し替える糸変向ガイドを、前記空ボビンと前記満巻ボビンとの間の糸に対して前記接触ローラが配列された側から進出するよう配設し、持ち上げ装置がウイングから糸を外し、糸をボビンの掴みスリットまで運ぶと共に糸掛け後にテイル巻きを形成するよう構成した紡糸巻取機、が記載されているものと認められる。
甲第2号証(取消しの理由に引用した刊行物2)には、次のコ.〜ス.の事項が図面とともに記載されている。
コ.「ボビンホルダーの上方に設置されたトラバース装置と、該トラバース装置の近傍に設置され、糸条をボビン端部の糸掛け位置に案内するバンチ規制ガイド、及び糸条をボビンに巻き付けるための糸掛けガイドとからなる巻き取り機において、前記糸寄せガイド、及び糸掛けガイドを、糸掛け位置においてボビンに形成されている糸捕捉用溝に対して略平行な状態で同期させて移動せしめるようにしたことを特徴とする巻き取り機。」(第1頁左下欄第5行目〜第13行目)
サ.「12はバンチ規制ガイドであり、糸外しガイド8に対向するようボビンホルダー3と平行な状態で可動枠体4に取り付けられた軸13に沿って移動する可動ブラケット14に装着されている。該ブラケット14には継手16を介して液体シリンダー15のピストンロッドが連結されている。17は可動枠体4に取り付けられ、糸外しガイド8によりトラバースガイド6から外され、バンチ規制ガイド12により搬送された糸条をボビン端部で係止するための上部位置規制ガイドである。」(第2頁左下欄第3行目〜第13行目)
シ.「糸外しガイド8が(ハ)方向に回動され、第2図における破線のようにトラバースガイド6に係合している糸条が押し出される。次いで、液体シリンダー15の圧力液体供給路が切り替えられてピストンロッドが突出され、第3図、及び第4図における破線のようにトラバースガイド6から押し出された糸条を上部位置規制ガイド17の(チ)位置まで移動させる。」(第3頁右上欄第2行目〜第9行目)
ス.「バンチ規制ガイド12が待機位置に戻される。この時、空ボビン30B上にテールが形成される。さらに、糸条が上部位置規制ガイド17から外れることにより、糸条がトラバースガイド6に係合して綾振される。」(第3頁左下欄第11行目〜第15行目)
また、第4図には、バンチ規制ガイドと上部位置規制ガイドとが糸の往復動区間と干渉しないように往復動区間の横の位置にあるものが開示されている。
以上のことから、甲第2号証には、
シフター装置が、糸外しガイドで押し出された糸を拾うためのバンチ規制ガイドとテイル巻きのための上部位置規制ガイドとからなり、前記バンチ規制ガイドと前記上部位置規制ガイドとが糸の往復動区間と干渉しないように前記往復動区間の横の位置にあるように構成した巻き取り機、が記載されているものと認められる。
(4)対比・判断
本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明の「巻取りスピンドル」は本件発明の「ボビンホルダ」に相当し、以下同様に、「接触ローラ」は「タッチローラ」に相当し、「作業位置」は「巻取位置」に相当し、「非作業位置」は「待機位置」に相当し、「ウイング」は「羽根トラバース装置」に相当し、「掴みスリット」は「糸掛け位置」に相当し、「持ち上げ装置」はウイングから糸を外し、糸をボビンの掴みスリットまで運ぶと共に糸掛け後にテイル巻きを形成する構成であるから、「糸跳ねガイド」及び「シフター装置」に相当し、「糸変向ガイド」は「糸渡し装置」にそれぞれ相当するから、両者は、
ボビンを挿着するボビンホルダを2本備え、これら2本のボビンホルダを、前記ボビンがタッチローラに転接しタッチローラに至った糸を前記ボビンに巻き取る巻取位置と、待機位置とに切り換え可能に配置した紡糸巻取機であって、前記ボビンに巻かれる糸を往復動させる羽根トラバース装置と、該羽根トラバース装置から糸を外す糸跳ねガイドと、糸をボビンの糸掛け位置まで運ぶと共に糸掛け後にテイル巻きを形成するシフター装置とを、前記タッチローラに至る糸に対して前記タッチローラが配置された側から作動可能に配設するとともに、前記待機位置に位置する満巻きボビンから前記巻取位置に位置する空ボビンに糸を移し替える糸渡し装置を、前記空ボビンと前記満巻ボビンとの間の糸に対して前記タッチローラが配列された側から進出するよう配設した紡糸巻取機、
で一致し、以下の2点において相違する。
(イ) 本件発明は、シフター装置が、糸跳ねガイドで跳ね上げられた糸を拾うための可動シフターとテイル巻きのための固定シフターとからなり、前記可動シフターと前記固定シフターとが糸の往復動区間と干渉しないように前記往復動区間の横の位置にあるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、シフター装置が、可動シフターと固定シフターとからなるものではなく、糸の往復動区間の横の位置にない点。
(ロ) 本件発明では、シフター装置が、可動シフターが固定シフターの固定側から往復動して拾った糸を該固定側まで運ぶように構成されているのに対し、甲第1号証に記載された発明では、糸をシフター装置の斜めの一方の前縁部に沿ってスライドさせ、ボビンの糸掛け位置まで運ぶ点。
まず、上記相違点(イ)について検討する。
本件発明と甲第2号証に記載された発明を対比すると、甲第2号証に記載された発明の「糸外しガイド」は本件発明の「糸跳ねガイド」に、以下同様に、「バンチ規制ガイド」は「可動シフター」に、「上部位置規制ガイド」は「固定シフター」に、「巻き取り機」は「紡糸巻取機」にそれぞれ相当するから、甲第2号証には、
シフター装置が、糸跳ねガイドで跳ね上げられた糸を拾うための可動シフターとテイル巻きのための固定シフターとからなり、前記可動シフターと前記固定シフターとが糸の往復動区間と干渉しないように前記往復動区間の横の位置にあるように構成した紡糸巻取機、
が記載されている。そして、甲第1号証に記載された発明と、甲第2号証に記載された発明は、同じ巻き取り機の技術に関するものであるから、甲第1号証に記載された発明において、シフター装置を、甲第2号証に記載された発明のように、糸跳ねガイドで跳ね上げられた糸を拾うための可動シフターとテイル巻きのための固定シフターとからなり、前記可動シフターと前記固定シフターとが糸の往復動区間と干渉しないように前記往復動区間の横の位置にあるように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
次に、上記相違点(ロ)について検討する。
上記相違点(ロ)における本件発明の構成は、甲第2号証にも記載されておらず、当該構成は、シフター装置の構成にあたって、当業者が容易に想到し得たものではない。また、本件発明は、当該構成により、糸渡しが行われた後、糸が羽根による往復動に復帰したとき、糸が可動シフターに衝突しないという格別な効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
紡糸巻取機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ボビンを挿着するボビンホルダを2本備え、これら2本のボビンホルダを、前記ボビンがタッチローラに転接しタッチローラに至った糸を前記ボビンに巻き取る巻取位置と、待機位置とに切り換え可能に配置した紡糸巻取機であって、前記ボビンに巻かれる糸を往復動させる羽根トラバース装置と、該羽根トラバース装置から糸を外す糸跳ねガイドと、糸をボビンの糸掛け位置まで運ぶと共に糸掛け後にテイル巻きを形成するシフター装置とを、前記タッチローラに至る糸に対して前記タッチローラが配置された側から作動可能に配設するとともに、前記待機位置に位置する満巻きボビンから前記巻取位置に位置する空ボビンに糸を移し替える糸渡し装置を、前記空ボビンと前記満巻ボビンとの間の糸に対して前記タッチローラが配列された側から進出するよう配設し、前記シフター装置が、前記糸跳ねガイドで跳ね上げられた糸を拾うための可動シフターとテイル巻きのための固定シフターとからなり、前記可動シフターと前記固定シフターとが糸の往復動区間と干渉しないように前記往復動区間の横の位置にあり、前記可動シフターが前記固定シフターの固定側から往復動して拾った糸を該固定側まで運ぶように構成した紡糸巻取機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、タッチローラに転接して回転するボビンに、紡出機から紡出される糸を往復動させて巻取る紡糸巻取機に関する。
【0002】
【従来の技術】
まず、紡糸巻取機の全体を図6及び図7により説明する。図6は紡糸巻取機の正面図、図7は紡糸巻取機の側面図である。紡糸巻取機は、本体フレーム21の側面に回転自在に取り付けられたタレット円板22と、タレット円板22から突出し図示されない誘導モータで駆動される2本のボビンホルダ23,24と、本体フレーム21に対して垂直に昇降自在な昇降枠25と、昇降枠25に設けられたタッチローラ27と、同じく昇降枠25に設けられたトラバース装置26、上側シフター装置としての糸寄せガイド18及び糸跳ねガイド19と、本体フレーム側面の固定枠28内に収納されてボビンホルダ23,24間に進出自在な下側シフター装置としての糸渡し装置29とを主要部分として構成されている。
【0003】
ボビンホルダ23,24にはボビンBが4〜8個ずつ(図示例では簡単のため2個としている)挿着されていて、上記2本のボビンホルダ23,24は一方を巻取位置aに他方を待機位置bに配され、巻取位置aに位置しているボビンBに糸を巻取らせ、該ボビンBが満巻となるごとにタレット円板22を180度回転し、新たに巻取位置aにきた空ボビンBに糸の巻付けを開始するレボルビングタイプの紡糸巻取機2となっている。
【0004】
ところで、上記の紡糸巻取機2において、満巻ボビンB′から空ボビンBに糸を移し替えるボビンチェンジ時の糸の動作を簡単に説明すれば以下のようになる。つまり、巻取位置aのボビンBが満巻となった時点でタレット円板22が180度回転し、2つのボビンホルダ23,24の位置を切り換えて満巻ボビンB′は待機位置bに空ボビンBは巻取位置aに新たに位置される。しかし、各ボビンBが新たな位置に位置された時点では、供給される糸は依然として待機位置bにある満巻ボビンB′に連なっており、空ボビンBのスリット17に糸を捕捉させ巻取りを開始して始めて、満巻ボビンB′から空ボビンBへの糸の移し替えは終了する。この糸の移し換えは以下のように行われる。
【0005】
糸跳ねガイド19が実線位置の待機位置から二点鎖線位置の進出位置へと揺動し、糸Yをトラバース装置26から外れる位置まで押し出し、糸Yの往復動が止められる。そして、図7の糸寄せガイド18が実線位置から二点鎖線位置まで矢印20のように伸長し、糸Yを空ボビンBのスリット17の位置まで運ぶ。この後、糸渡し装置29の可動ガイド29aが満巻ボビンB′に至る糸Yを図7の左側に寄せ、スリット17に糸Yが食い込んで、満巻ボビンB′から空ボビンBに糸Yの移し替えが行われる。
【0006】
さらに、空ボビンBのスリット17の横にテイル巻と言われる糸継ぎのための糸を本来の往復動巾とは別に巻き付けることが行われる。そのため、糸寄せガイド18が二点鎖線位置から実線位置へとゆっくり戻りテイル巻を形成する。テイル巻が終わると、糸寄せガイド18が元の位置に戻り、糸Yはトラバース装置26のトラバースガイドに掛かって往復動を開始する。
【0007】
なお、上述したトラバース装置26は通常往復ラセン溝が刻設された回転するトラバースカムドラムを用い、ラセン溝と係合するトラバースガイドの往復運動によって糸のトラバースを行なわせていた。そのためトラバースガイドの折返し点において生ずる衝撃や、その場合に生ずる騒音がきわめて大きく、高速回転を円滑に行うには限界がある。そこで、このようなトラバースカムドラムによる欠点を解決するものとして、逆方向に回転する羽根を用いて糸を受け渡す図8の如き羽根トラバース装置が用いられることがある。
【0008】
図8において、1は羽根1aを有する上方右側糸案内部材、2は羽根2aを有する下方右側糸案内部材、3は羽根3aを有する上方左側糸案内部材、4は羽根4aを有する下方左側糸案内部材、5は案内ガイドである。上方右側糸案内部材1と下方右側糸案内部材2は第1軸6の回りで矢印方向に逆回転しており、上方左側糸案内部材3と下方左側糸案内部材4は第2軸7の回りで矢印方向に逆回転しており、第1軸6と第2軸7との間隔Mは所望値に設定されている。そして、第1軸6の90°の放射角度A,O1,Cに対応する案内ガイド5の部分に第1案内面5aが設けられ、第2軸7の90°の放射角度C,O2,Bに対応する案内ガイド5の部分に第2案内面5bが設けられている。
【0009】
また、羽根1a,2a,3a,4aの位相関係は重要であり、図示の位相に設定される。すなわち、第1軸6においては、A点で羽根1aから羽根2aに受け渡しされるように位相が設定され、第2軸7においては、B点の180°反対側の仮想点B′で羽根3aから羽根4aにあたかも糸が受け渡されるように位相が設定されている。
【0010】
つぎに、この羽根トラバース装置の糸の受け渡しを説明する。羽根1aで右向きに運ばれる糸Yは、A点において、左向きに回転する羽根2aに受け渡され、逆方向に反転する。そして、羽根2aによって、案内面5aに沿いつつ、左側のC点へと運ばれる。C点では、第1軸6の羽根2aと第2軸7の羽根3aが交差し、糸が羽根2aから羽根3aに受け渡される。そして、羽根3aによって、案内面5bに沿いつつ、左側のB点へと運ばれる。B点では、第2軸7の羽根3aと4aが交差し、糸が羽根3aから羽根4aに受け渡され、逆方向に反転する。そして、羽根4aによって、案内面5bに沿いつつ、右側のC点へと運ばれる。C点では、第2軸7の羽根4aと第1軸6の羽根1aが交差し、糸が羽根4aから羽根1aに受け渡される。そして、羽根1aによって、案内面5aに沿いつつ、右側のA点へと運ばれる。以上の繰り返しにより、糸はA点とB点との間の幅Lで往復動する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
トラバースカムドラムの往復ラセン溝に係合するトラバースガイドの往復運動によって糸のトラバースを行なわせるトラバース装置では、トラバースガイドからタッチローラに至る糸のフリーレングスを出来るだけ短くするために、図6のように、タッチローラ27の反対側にトラバース装置26を配置し、トラバース装置26の位置を下げている。しかしながら、羽根を用いた羽根トラバース装置では、羽根の先端は円弧軌跡で回転しており、タッチローラの反対側に羽根を位置させると、最も出っ張った状態の羽根の先端がタッチローラと干渉しないところまで羽根を上げる必要があり、結局羽根をタッチローラの上端付近まで上げることになる。すなわち、タッチローラの反対側に羽根を位置させても、羽根とタッチローラまでのフリーレングスを短くしたことにはならないため、タッチローラと同じ側に羽根トラバース装置を設置するようになっている。
【0012】
羽根トラバース装置をタッチローラ27の側に設置すると、糸跳ねガイド19もタッチローラ27の側に設置されるが、糸寄せガイド18は今まで通りタッチローラ27と反対側に設置されていた。
【0013】
しかしながら、糸寄せガイド18がタッチローラ27と反対側に設置されているため、糸Yは昇降枠25の中を通過する構成となり、糸通しの等の運転操作や機器の保守がやりにくい構造になっているという問題点を有している。
【0014】
本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、糸通しや機器の保守がし易い紡糸巻取機を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する紡糸巻取機は、ボビンを挿着するボビンホルダを2本備え、これら2本のボビンホルダを、前記ボビンがタッチローラに転接しタッチローラに至った糸を前記ボビンに巻き取る巻取位置と、待機位置とに切り換え可能に配置した紡糸巻取機であって、前記ボビンに巻かれる糸を往復動させる羽根トラバース装置と、該羽根トラバース装置から糸を外す糸跳ねガイドと、糸をボビンの糸掛け位置まで運ぶと共に糸掛け後にテイル巻きを形成するシフター装置とを、前記タッチローラに至る糸に対して前記タッチローラが配置された側から作動可能に配設するとともに、前記待機位置に位置する満巻きボビンから前記巻取位置に位置する空ボビンに糸を移し替える糸渡し装置を、前記空ボビンと前記満巻ボビンとの間の糸に対して前記タッチローラが配列された側から進出するよう配設し、前記シフター装置が、前記糸跳ねガイドで跳ね上げられた糸を拾うための可動シフターとテイル巻きのための固定シフターとからなり、前記可動シフターと前記固定シフターとが糸の往復動区間と干渉しないように前記往復動区間の横の位置にあり、前記可動シフターが前記固定シフターの固定側から往復動して拾った糸を該固定側まで運ぶように構成したものである。
【0016】
【作用】
トラバースカムドラムによるトラバース装置に代わり、羽根による羽根トラバース装置を用いると、羽根をタッチローラに接近して配設でき、更に糸跳ねガイド、シフター装置及び糸渡し装置もタッチローラ側で上下に配設すると、糸が往復動する面の片側がオープンスペースとなる。また、糸渡し装置はタッチローラの奥から進出して糸渡しを行う。さらに、シフター装置の可動シフターと固定シフターが糸の往復動区間と干渉しない横の位置にあって、糸拾いとテイル巻きとが行われる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の紡糸巻取機の要部の断面図、図2はシフター装置の上面図、図3はシフター装置の作動図である。
【0018】
図1において、B′は満巻ボビン、29は糸渡し装置、Bは空ボビン、27はタッチローラであり、図6で説明したものと同様である。そして、タッチローラ27と同じ側で更に上側に、羽根トラバース装置30と、糸跳ねガイド31と、シフター装置32とが順に配設されている。
【0019】
羽根トラバース装置30は、図8で説明したものと同様の羽根1a,2a,3a,4aと案内ガイド5を有し、タッチローラ27の上端に接近して位置している。上述した羽根1a〜4aは昇降枠33に内設された歯車機構34により回転駆動される。なお、モータ35は歯車機構34に対するものである。
【0020】
糸跳ねガイド31は、歯車機構34の紙面厚み方向の両端に設けられた軸36を支点として揺動するレバー37と、その先の紙面厚み方向に延びるバー38とからなっている。レバー37には空圧シリンダ39が連結され、実線の退避位置と二点鎖線の糸跳ね位置とで切換自在である。
【0021】
シフター装置32は、昇降枠33の四角材33aの側面に固定された固定シフター40と、四角枠33aの上面に紙面厚み方向でスライド自在に設けられた可動シフター41とからなっている。可動シフター41は空圧シリンダ42で図2の矢印43の如く大きな往復動43aと小さな往復動43bとのスライド移動をする。
【0022】
図2のように、固定シフター40及び可動シフター41は糸の往復動区間Lと干渉しない横の位置にあって、各往復動区間L毎に設けられている。可動シフター41は、区間Lの往復動から静止点であるX点まで跳ね上げられた糸Yを拾うための傾斜部44と拾われた糸Yを止め置く凹形状のガイド溝45を有している。矢印43のうちの往復動43aで糸を拾い、次に述べる固定シフター40と共同で糸を空ボビンのスリットに相当する位置に保持する。
【0023】
固定シフター40は、可動シフター41のガイド溝45内の糸Yの位置を決めるためのエンド部46と、ガイド溝45内の糸Yを保持するストレート部47と、テーパ部48とを有している。なお、固定シフター40及び可動シフター41の三角突起部49,50は、跳ね上げられる糸や糸通し時の糸を案内するためのものである。
【0024】
固定シフター40のストレート部47とテーパ部48はテイル巻を形成するためのものである。可動シフター41が矢印43の往復動43bをするとテイル巻が形成される。この状態を図3により説明する。凹形状のガイド溝45とエンド部46とストレート部47とで区画される矩形のなかに糸Yが閉じ込められ、ガイド溝45の右側辺45aで止まった状態になって位置決めされる。この状態から可動シフター41が図面右側にスライド移動すると、右側辺45aで止まった糸Yはストレート部47及びテーパ部48に沿って転がり、可動シフター41のスライド移動速度と同じ速度で矢印50,51のように移動し、空ボビンにテイル巻を形成する。糸Yがテーパ部48から外れると、自然な糸張力で矢印52のように戻り、図示されない羽根による往復動Lに復帰する。
【0025】
図4は上述したテイル巻を含むボビンチェンジ全体のタイムチャート図である。まず、同図(a)のように、タレット板22(図6参照)が180°回転し、満巻ボビンを待機位置へ空ボビンを巻取位置へと入れ換える。この180°回転の途中で、同図(b)のように、糸跳ねガイドがトラバース装置で往復動する糸を跳ね上げる。すると、満巻ボビンに至る糸はセンター棒巻を形成する。このセンター棒巻の途中で、同図(c)のa線のように、シフター装置の可動シフターが急速に移動し、ガイド溝に糸をキャッチする。そして、可動シフターがb線のようにゆっくり元の位置に移動し、満巻ボビンの外周全長にわたるゆっくりした綾巻が形成される。この綾巻の最終段階で、同図(a)のタレット板の180°回転が完了し、同図(b)の糸跳ねガイドが退避位置に戻り、同図(d)のように糸渡し装置が進出する(図6参照)。同図(e)のように、進出した糸渡し装置の可動ガイド(図7の符号29a)が図7の図面左側にスライド移動し、スリット17に糸を食い込ませて糸渡しが行われる。この糸渡しとゆっくりした綾巻との間は、満巻ボビンの端の棒巻となる。そして、同図(c)のように、可動シフターがc線のように移動すると、テイル巻が形成され、テイル巻後の可動シフターはd線のように戻る。満巻ボビンの端棒巻と空ボビンのテイル巻との間は空ボビンのスリットに対する棒巻となる。
【0026】
シフター装置の可動シフターは満巻ボビンに対するゆっくりした綾巻や空ボビンに対するテイル巻を形成するために、異なる速度で且つ調整可能に移動する必要がある。そのようにシフター装置に対する空気回路を図5により説明する。同図(a)は回路構成、同図(b)は作動組合せを示す。同図(a)において、可動シフターを移動させる空圧シリンダ42は空気源Pと排気Rに対して電磁弁SV1を介して接続される。電磁弁SV1とシリンダ側室42aは電磁弁SV2とスピードコントローラSC1,SC2の並列回路を介して接続され、電磁弁SV1とロッド側室42bはスピードコントローラSC3を介して接続されている。なお、マイクロスイッチMS1,MS2はロッド42cの折り返し位置を長短2箇所で決めるためのものである。
【0027】
同図(b)において、電磁弁SV1がオンで▲1▼ポジションにあり、電磁弁SV2がオフで▲3▼ポジションにあると、空気源Pからの圧空はスピードコントローラSC1を経てシリンダ側室42aに導入され、スピードコントローラSC1で決まる早い速度でロッド42cが伸長し、糸を拾いに行く。電磁弁SV1がオフで▲2▼ポジションにあり、電磁弁SV2がオフで▲3▼ポジションにあると、空気源Pからの圧空はスピードコントローラSC3を経てロッド側室42bに導入され、スピードコントローラSC3で決まるゆっくりした速度でロッド42cが短縮し、空ボビンのスリット位置に糸を移動させ、ゆっくりした綾巻を形成する。電磁弁SV1がオンで▲1▼ポジションにあり、電磁弁SV2がオンで▲4▼ポジションにあると、空気源Pからの圧空はスピードコントローラSC2を経てシリンダ側室42aに導入され、スピードコントローラSC2で決まる所定速度でロッド42cが伸長し、テイル巻が形成される。電磁弁SV1がオフで▲2▼ポジションにあり、電磁弁SV2がオフで▲3▼ポジションにあると、空気源Pからの圧空はスピードコントローラSC3を経てロッド側室42bに導入され、スピードコントローラSC3で決まるゆっくりした速度でロッド42cが短縮し、元の待機位置に戻る。
【0028】
【発明の効果】
本発明の紡糸巻取機は、羽根トラバース装置、糸跳ねガイド、シフター装置及び糸渡し装置をタッチローラの側に上下に配設し、糸が往復動する面の片側をオープンスペースにし、糸渡し装置がタッチローラの奥から進出して糸渡しを行い、シフター装置の可動シフターと固定シフターとが糸の往復動区間と干渉しない横の位置にあって、糸拾いとテイル巻きとが行われるようにしたので、このオープンスペースの側から糸通し等の運転操作や機器の保守が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の紡糸巻取機の要部の断面図
【図2】
シフター装置の上面図
【図3】
シフター装置の作動図
【図4】
ボビンチェンジ時のタイムチャート図
【図5】
シフター装置の空気回路図
【図6】
従来の紡糸巻取機の正面図
【図7】
従来の紡糸巻取機の側面図
【図8】
羽根トラバース装置の上面図
【符号の説明】
27 タッチローラ
B 空ボビン
30 羽根トラバース装置
31 糸跳ねガイド
32 シフター装置
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第3170959号発明の明細書中、次の訂正を行う。
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1に記載の「糸を拾うための可動シフター」(特許公報の第1頁第2欄第2行目)の前に、特許請求の範囲の減縮を目的として、「前記糸跳ねガイドで跳ね上げられた」を挿入する。
訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1の記載において、「横の位置にあるように構成した」(特許公報の第1頁第2欄第5〜6行目)とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として、「横の位置にあり、前記可動シフターが前記固定シフターの固定側から往復動して拾った糸を該固定側まで運ぶように構成した」と訂正する。
訂正事項c
明細書の【0015】に記載の「糸を拾うための可動シフター」(特許公報の第3頁第5欄第45行目)の前に、明りょうでない記載の釈明を目的として、「前記糸跳ねガイドで跳ね上げられた」を挿入する。
訂正事項d
明細書の【0015】に記載の「横の位置にあるように構成した」(特許公報の第3頁第5欄第48〜49行目)とあるのを、明りょうでない記載の釈明を目的として、「横の位置にあり、前記可動シフターが前記固定シフターの固定側から往復動して拾った糸を該固定側まで運ぶように構成した」と訂正する。
訂正事項e
明細書の【0021】に記載の「大きくな」(特許公報の第3頁第6欄第37行目)とあるのを、誤記の訂正を目的として、「大きな」と訂正する。
訂正事項f
明細書の【0025】に記載の「可動シスター」(特許公報の第4頁第7欄第30〜31行目)とあるのを、誤記の訂正を目的として、「可動シフター」と訂正する。
訂正事項g
明細書の【0025】に記載の「(図6の符号29a)が図6」(特許公報の第4頁第7欄第37行目)とあるのを、誤記の訂正を目的として、「(図7の符号29a)が図7」と訂正する。
異議決定日 2002-12-19 
出願番号 特願平5-163989
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B65H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 幸雄  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 山崎 豊
鈴木 公子
登録日 2001-03-23 
登録番号 特許第3170959号(P3170959)
権利者 村田機械株式会社
発明の名称 紡糸巻取機  
代理人 内田 敏彦  
代理人 内田 敏彦  

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