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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65B
管理番号 1073228
異議申立番号 異議2002-70550  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-03-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-02-28 
確定日 2002-12-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3205912号「バンド式梱包機」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3205912号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3205912号に係る発明についての出願は、平成3年8月29日に特願平3-244554号として出願され、平成13年7月6日にその特許の設定登録がなされ、その後特許異議申立人ストラパック株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成14年5月15日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成14年7月23日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア. 訂正事項a
平成12年9月11日の本件請求人提出に係る手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に係る記載
「【請求項1】バンド案内アーチ内に運ばれた梱包物をプレスバーで圧縮するプレス装置が設けられたバンド式梱包機において、
前記プレス装置の前記プレスバーは、左右両側に各々設けられたピストン式ロッドレスシリンダに取り付けられて上下動し、
前記バンド案内アーチの後側には、梱包物を停止させるための左右一対のストップ部材が、左右に移動して開閉するように設けられ、
このストップ部材の開閉作動は、外側が後方に傾斜して設けられたシリンダの作動によって行われる、ことを特徴とするバンド式梱包機。」を、
「【請求項1】 バンド案内アーチ内に運ばれた梱包物をプレスバーで圧縮するプレス装置が設けられたバンド式梱包機において、前記プレス装置の前記プレスバーは、左右両側に各々設けられたピストン式ロッドレスシリンダに取り付けられて上下動し、前記バンド案内アーチの後側には、梱包物を停止させるための左右一対のストップ部材が、左右に移動して開閉するように設けられ、このストップ部材の開閉作動は、外側が後方に傾斜して取り付けプレートに取り付けられたシリンダの作動によって行われ、そして、前記取り付けプレートはそれぞれ、ガイドバーに固定され、かつこのガイドバーに沿って左右に移動でき、前記ガイドバーは、ガイド部材に沿って前後に移動できる取り付け部材に固定されていて、前記ストップ部材が前後左右に移動調整することができるように構成されている、ことを特徴とするバンド式梱包機。」と訂正する。
イ. 訂正事項b
発明の詳細な説明の段落番号0008の記載「また、本発明は、バンド案内アーチの後側に、梱包物を停止させるための左右一対のストップ部材を、左右に移動して開閉するように設け、このストップ部材の開閉作動を、外側が後方に傾斜して設けられたシリンダの作動によって行うという手段を採用している。」を「また、本発明は、バンド案内アーチの後側に、梱包物を停止させるための左右一対のストップ部材を、左右に移動して開閉するように設け、このストップ部材の開閉作動を、外側が後方に傾斜して取り付けプレートに取り付けられたシリンダの作動によって行い、そして、取り付けプレートをそれぞれ、ガイドバーに固定し、かっこのガイドバーに沿って左右に移動できるように構成し、ガイドバーを、ガイド部材に沿って前後に移動できる取り付け部材に固定することにより、ストップ部材を前後左右に移動調整することができるようにするという手段を採用している。」と訂正する。

ウ. 訂正事項c
発明の詳細な説明の段落番号0011の記載「ストップ部材を設けているので、梱包物をプレスバー及びバンド案内アーチに対して適正な位置に停止させることができる。また、ストップ部材を、左右に移動して開閉する左右一対のものとして構成し、外側が後方に傾斜して設けられたシリンダの作動によって開閉させているので、梱包物を搬出するときに、それぞれのストップ部材は、梱包物から離れるように斜め後方に向って作動する。」を「ストップ部材を設けているので、梱包物をプレスバー及びバンド案内アーチに対して適正な位置に停止させることができる。また、ストップ部材を、左右に移動して開閉する左右一対のものとして構成し、外側が後方に傾斜して設けられたシリンダの作動によって開閉させているので、梱包物を搬出するときに、それぞれのストップ部材は、梱包物から離れるように斜め後方に向って作動する。さらに、ストップ部材が前後左右に移動調整することができるように構成されているので、梱包物の大きさに合わせた調整が可能となる。」と訂正する。

エ. 訂正事項d
発明の詳細な説明の段落番号0013の記載「図1は本発明に係る第1のバンド式梱包機の正面図である。」を「図1は第1のバンド式梱包機であって本発明の理解に有用なものの正面図である。」と訂正する。

オ. 訂正事項e
発明の詳細な説明の段落番号0020の記載「図4は本発明に係る第2のバンド式梱包機の正面図である。」を「図4は第2のバンド式梱包機であって本発明に係るものの正面図である。」と訂正する。

カ. 訂正事項f
発明の詳細な説明の段落番号0032の記載「また、本発明ではバンド案内アーチの後側にストップ部材を設けているので、梱包物を適正な位置に停止させて、よりしっかりした梱包を行うことができ、しかも、ストッパ部材は開くときに梱包物から離れるように移動するので、梱包物をひっかけてずらしてしまい、その結果、梱包物の搬出等に支障が生じるといったことなどを効果的に防止できる。」を「また、本発明ではバンド案内アーチの後側にストップ部材を設けているので、梱包物を適正な位置に停止させて、よりしっかりした梱包を行うことができ、しかも、ストッパ部材は開くときに梱包物から離れるように移動するので、梱包物をひっかけてずらしてしまい、その結果、梱包物の搬出等に支障が生じるといったことなどを効果的に防止できる。さらに、ストップ部材が前後左右に移動調整することができるように構成されているので、梱包物の大きさに合わせた調整が可能となるといった効果も有している。」と訂正する。

キ. 訂正事項g
特許明細書の図面の簡単な説明の第1行から第2行の記載「【図1】本発明に係る第1のバンド式梱包機の正面図である。」を「【図1】第1のバンド式梱包機の正面図である。」と訂正する。

ク. 訂正事項h
特許明細書の図面の簡単な説明の第5行から第6行の記載「【図4】本発明に係る第2のバンド式梱包機の正面図である。」を「【図4】第2のバンド式梱包機の正面図である。」と訂正する。


(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、「シリンダ」の取り付け態様を「外側が後方に傾斜して取り付けプレートに取り付けられた」と限定し、取り付けプレートの取付を「前記取り付けプレートはそれぞれ、ガイドバーに固定され、かつこのガイドバーに沿って左右に移動でき、」、及び、ガイドバーの取付を「前記ガイドバーは、ガイド部材に沿って前後に移動できる取り付け部材に固定されていて、」と限定し、「ストップ部材」の移動態様を「前後左右に移動調整することができるように構成されている」と限定しようとするものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、この「シリンダ」の取り付け態様は、特許明細書の段落【0025】、【0027】及び、段落【0029】に記載されており、「ストップ部材」の移動態様は、特許明細書の段落【0028】に記載されているから、訂正事項aは、特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
次に、上記訂正事項b〜hは、上記訂正事項aで示す特許請求の範囲の訂正に伴って整合性をとるため【発明の詳細な説明】を訂正するものであり、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、上記訂正事項b〜hは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内での訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立について
(1)申立の理由の概要
特許異議申立人ストラパック株式会社は、請求項1に係る発明は、甲第1号証の発明に甲第2号証の発明、甲第3号証の発明、および甲第4号証の発明を適用することにより当業者が容易になし得たものにすぎないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものであると主張している。

甲第1号証:実願昭62-068338号(実開昭63-177203号)のマイクロフィルム
甲第2号証:実願平01-099960号(実開平03-040906号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実願昭59-47483号(実開昭60-161009号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実願昭54-105621号(実開昭56-24410号)のマイクロフィルム

(2)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明」という。)は、以下のものである。(説明の便宜上、(a)〜(d)に分説する。)
「【請求項1】 (a)バンド案内アーチ内に運ばれた梱包物をプレスバーで圧縮するプレス装置が設けられたバンド式梱包機において、
(b)前記プレス装置の前記プレスバーは、左右両側に各々設けられたピストン式ロッドレスシリンダに取り付けられて上下動し、
(c)前記バンド案内アーチの後側には、梱包物を停止させるための左右一対のストップ部材が、左右に移動して開閉するように設けられ、
(d)このストップ部材の開閉作動は、外側が後方に傾斜して取り付けプレートに取り付けられたシリンダの作動によって行われ、そして、前記取り付けプレートはそれぞれ、ガイドバーに固定され、かつこのガイドバーに沿って左右に移動でき、前記ガイドバーは、ガイド部材に沿って前後に移動できる取り付け部材に固定されていて、前記ストップ部材が前後左右に移動調整することができるように構成されている、ことを特徴とするバンド式梱包機。」

(3)刊行物
異議申立人が証拠として提出した刊行物には以下の事項が記載されている。
甲第1号証(実願昭62-068338号(実開昭63-177203号)のマイクロフィルム):(以下、刊行物1という。)
梱包機における紐を使ったプレス装置に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
記載事項1-1;「 梱包機3の方に紐7を張設し紐7はロッドレスシリンダなどの加圧機8で梱包物をプレスする梱包機における紐を使ったプレス装置。」実用新案登録請求の範囲)
記載事項1-2;「従来の梱包機のプレス装置はバンドを掛ける前にプレスバーを使って予めプレスするが、プレスバーは一般的には木材とか金属製の剛体を使っている。・・・・、手あるいは指とか人体の一部がプレスバーと梱包物、あるいはプレスバーと梱包機のテーブルとの間に挟まれた場合に怪我をすることがあり甚だ危険である。・・・・・。本考案はこのような問題を簡単に解決せんとするものであり、梱包機の上辺に紐を張設し、この紐はロッドレスシリンダなどの加圧機で強力に下方に圧送でき、これで梱包物をプレスするものである。「作用」梱包物は梱包機のバンドガイド内に挿入される。その上方に張った紐はロッドレスシリンダで下方に移行し梱包物を強力に押圧する。」(第1頁14行〜第2頁18行)
以上のことから、刊行物1には、梱包物を押圧するプレスバーを用いない紐で押圧するプレス装置に関して、梱包物に紐を掛け、その紐を(左右の一対の)ロッドレスシリンダ等の加圧機8,8で下方に強力に押圧・移行して梱包物を押圧・圧縮し梱包する梱包装置が記載されている。

甲第2号証(実願平01-099960号(実開平03-040906号)のマイクロフィルム):(以下、刊行物2という。)
プレス梱包機用プレス装置に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
記載事項2-1;「設置される梱包機上に張り出して架設された支持板と、該支持坂上に垂設されたシリンダによって昇降駆動されるプレス板が前記支持板の下方に設けられ、前記梱包機が所定位置に定直された状態において前記プレス板が梱包機のバンドガイドアーチに近接して位置されると共に前記梱包機の荷台面には前記シリンダのプレス圧力に耐える受板手段が前記梱包機の荷台とは別個に設けられてなるプレス梱包機用プレス装置。」(実用新案登録請求の範囲)
以上のことから、刊行物2には、バンドガイドアーチを用いる型のプレス装置に関して、支持坂上に垂設されたシリンダによって昇降駆動されるプレス板を有するプレス梱包機が記載されている。

甲第3号証(実願昭59-47483号(実開昭60-161009号)のマイクロフィルム):(以下、刊行物3という。)
ベルトコンベア上を運ばれてきたワークを、ワーク移動機構を具備する自動回転装置で自動回転して梱包する装置に関して、
記載事項3-1;「段ボール箱詰製品又は金属製箱詰製品であるワーク1が、例えばポリプロ自動梱包機のアーチ2によって、ポリプロピレンバンドあるいは紐3で自動的に梱包、結束される。」(第3頁3行〜6行)
記載事項3-2;「その指令により入口アーム9が上方待機し、出口アーム10が寸法に応じた指定位置で下方待機する。ワーク1が梱包機まで移動すると、入口アーム9が下方に降りてワーク1をアーム10に当てるまで移動し出口アーム10と共にワーク1を所定位置に固定する。その後、例えば十字掛けの場合には、まず第2図(1)の結束を行ない、次に入口アーム9及び出口アーム10に取り付けてある回転装置11によりワーク1を90度回転し、2回目の結束を行なうことによって第2図(3)に示す十字掛けでワーク1が自動梱包される。その終了後に出口アーム10が上昇し、入口アーム9によりワーク1を自動梱包機の外の出口側に送り出す。・・・・。入口アーム9及び出口アーム10の往復方向の移動は、夫々ブレーキモートル12及び13により移動される往復動作チェ-ン14に固着されたノッチ20及び21により行われる。ノッチ20及び21は、夫々入口アーム及び出口アームの支持軸に、該支持軸が回転可能に、かつ往復移動が可能に取り付けられている。出口アーム10の支持軸の回りの上下方向の回転は、出口アーム回転駆動部16により出口アーム回転レバー15を回転することによって行なわれる。」(第6頁7行〜第7頁11行)
以上のことから、刊行物3には、ベルトコンベア上を運ばれてきてワーク1(本件の梱包物に相当)を2段階で十字掛け梱包する自動梱包機の、十字掛け梱包位置において、梱包物を所定位置に固定させるために入口アーム9がワークを出口アーム10に当接するまで移動させ結束がなされ、次に、入口アームと出口アームとこれらに取り付けられている回転装置11を作動させることにより梱包物を90度回転させた後、十字掛けの結束がなされ、出口アームを上昇させた後、入口アーム9で梱包物を自動梱包機外に送り出される装置であって、入口アーム9及び出口アーム10の往復方向移動は、往復動作チェ-ン14に固着されたノッチ20及び21の駆動により行われる梱包機が記載されている。

甲第4号証(実願昭54-105621号(実開昭56-24410号)のマイクロフィルム):(以下、刊行物4という。)
結束装置に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
記載事項4-1;「結束機と、この結束機に設置され結束すべき積層体の搬入搬出を行うコンベアと、前記積層体を結束位置に抑止すべきストッパと、抑止された積層体のコバ揃えを行うコバ揃え装置と、結束機の入口側に設けられ次回に結束される積層体を入口側に抑止するストッパとを有するものにおいて、各ストッパのストッパバーを駆動するエアシリンダの出力軸を積層体の進行方向に向ってハ字状となる如く傾斜させ、ストッパバーにはガイドによって案内され駆動エアシリンダの出力軸に平行な主部と、搬送面搬送方向に垂直な先端部とを有せしめたことを特徴とする結束装置。」(実用新案登録請求の範囲)
記載事項4-2;「結束機1の出口側の両側には、出力軸と搬送方向のなす出口側の角が鈍角となるように傾斜させてエアシリンダ16がそれぞれ設けられており、それらの出力軸には出力軸に平行な主部と搬送面、搬送方向に垂直な先端部をそなえたストッパバー17がそれぞれ連結されている。すなわち、各エアシリンダ13、13:16、16の出力軸は積層体7の進行方向に向かって開くハ字状をなすように傾斜されている。上記構成の本考案装置では、ストッパのストッパバー14は従来のストッパの如く観音開き式に作動するのではなく、搬送方向の両側から搬送中心線に対し進退されるものであるから、コバ揃えバー12との干渉を防ぐための空間は従来の装置におけるよりも著しく少くてすみ、結束機1の積層体搬入待時間も少くできるので結束装置の稼働率が向上される。 なお、各ストツパバーは、搬送方向に垂直ではなく前記したように傾斜した進退方向とされているため、それらの先端部が積層体に対し摺動することはなく、従つてストッパバーの接離によって積層体のコバが損傷されるおそれはない。」(第5頁6行〜19行)
以上のことから、刊行物4には、ベルトコンベア上を運ばれてくる週刊誌等の書物の積層体(本件の梱包物に相当)を結束する装置に関して、結束機の入口位置で積層体を抑止するストッパバー14,14を有する駆動エアシリンダ13,13と、結束機の結束位置で積層体の後面からコバ揃えをするバー12,12と、積層体の搬送面、搬送方向に垂直な先端部を備えたストッパバー17,17を有する駆動エアシリンダ16,16とを有し、積層体に対して駆動シリンダ13,13,16,16を積層体の搬送方向に対してハ字状をなすように傾斜した方向に進退させることでストッパバーの先端部が積層体のコバを損傷する恐れがないように進退するように工夫したことを特徴とする梱包物の結束装置が記載されている。

<対比・判断>
刊行物1記載の発明と訂正発明とを対比する。
刊行物1には、「バンド案内アーチ6内に運ばれた梱包物3を紐7で圧縮するプレス装置が設けられた紐プレス式梱包機において、紐プレス装置は左右両側に設けられたロッドレスシリンダ8,8に取り付けられて上下動する梱包機。」が記載されているから、刊行物1記載の発明と訂正発明とは、次の各点で相違し、それ以外の点では一致する。
相違点1;訂正発明は、プレスバーで圧縮するプレス装置を用いているのに対して、刊行物1記載の発明は、紐で圧縮するプレス装置を用いている点。
相違点2;訂正発明は、ピストン式ロッドレスシリンダを用いているのに対して、刊行物1記載の発明は、単にロッドレスシリンダを用いるとしている点。
相違点3;訂正発明は、バンド案内アーチの後側には、梱包物を梱包位置で停止させるための左右一対のストップ部材が、左右に移動して開閉するように設けられ、このストップ部材の開閉作動は、外側が後方に傾斜して取り付けプレートに取り付けられたシリンダの作動によって行われ、そして、取り付けプレートはそれぞれ、ガイドバーに固定され、かつこのガイドバーに沿って左右に移動でき、ガイドバーは、ガイド部材に沿って前後に移動できる取り付け部材に固定されていて、ストップ部材が前後左右に移動調整することができるように構成されている(請求項1の分説(c)、(d))特徴を有しているとしているのに対して、刊行物1記載の発明は、そのようなストップ部材を有すると明記していない点。
相違点について検討する。
相違点3について検討すると、
刊行物2には、左右一対のストップ部材を有するという記載は無い。
刊行物3には、別個にあるいは連動して横方向運動及び揺動、旋回又は上下運動可能な入口アーム及び出口アームから構成されてなる訂正発明の一対のストップ部材に類似した2つのアームが記載されているだけであって、刊行物3には該アームが本件の訂正発明の一対のストップ部材のように「外側が後方に傾斜して取り付けプレートに取り付けられたシリンダの作動によって行われ、取り付けプレートはそれぞれ、ガイドバーに固定され、かつこのガイドバーに沿って左右に移動でき、ガイドバーは、ガイド部材に沿って前後に移動できる取り付け部材に固定されていて、ストップ部材が前後左右に移動調整することができる」という開閉作動を行なうという構成までは記載されていないし、それを示唆するものもない。
また、刊行物4には、ベルトコンベア上を運ばれてくる週刊誌等の書物の積層体(本件の梱包物に相当)を結束する装置に関し、結束機の入口位置で積層体を抑止するストッパバー14,14を有する駆動エアシリンダ13,13と、結束機の結束位置で積層体の後面からコバ揃えをするバー12,12と、積層体の搬送面、搬送方向に垂直な先端部を備えたストッパバー17,17を有する駆動エアシリンダ16,16とを有することが記載されていて、このストッパバー17が、左右連動して梱包物を梱包位置で停止させて結束装置を作動させ、梱包するという点で訂正発明の一対のストップ部材の作動に近似しているが、刊行物4には該ストッパーが訂正発明のストップ部材の開閉作動のように「外側が後方に傾斜して取り付けプレートに取り付けられたシリンダの作動によって行われ、取り付けプレートはそれぞれ、ガイドバーに固定され、かつこのガイドバーに沿って左右に移動でき、ガイドバーは、ガイド部材に沿って前後に移動できる取り付け部材に固定されていて、ストップ部材が前後左右に移動調整することができる」という開閉作動を行なうという構成までは記載されていないし、それを示唆するものもない。
以上のことから、相違点3については、上記刊行物2乃至4の何れにも記載されておらず、また、上記刊行物2乃至4に記載された発明から当業者が容易に想到することができるとも認められない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、訂正発明は上記刊行物1乃至4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことができない。
また、他に特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
バンド式梱包機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 バンド案内アーチ内に運ばれた梱包物をプレスバーで圧縮するプレス装置が設けられたバンド式梱包機において、
前記プレス装置の前記プレスバーは、左右両側に各々設けられたピストン式ロッドレスシリンダに取り付けられて上下動し、
前記バンド案内アーチの後側には、梱包物を停止させるための左右一対のストップ部材が、左右に移動して開閉するように設けられ、このストップ部材の開閉作動は、外側が後方に傾斜して取り付けプレートに取り付けられたシリンダの作動によって行われ、
そして、前記取り付けプレートはそれぞれ、ガイドバーに固定され、かつこのガイドバーに沿って左右に移動でき、前記ガイドバーは、ガイド部材に沿って前後に移動できる取り付け部材に固定されていて、前記ストップ部材が前後左右に移動調整することができるように構成されている、ことを特徴とするバンド式梱包機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、バンド案内アーチ内に運ばれた梱包物をプレスバーで圧縮するプレス装置が設けられたバンド式梱包機に関する。
【0002】
【従来の技術】
バンド式梱包機では、きついしっかりとした梱包が行われるように、バンド案内アーチ内に運ばれた新聞紙等の梱包物をまずプレスバーで圧縮する。圧縮のためのプレスバーの上下動は通常のロッドシリンダで行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、プレスバーを水平に保って上下動させるためには、プレスバーの左右両端をそれぞれロッドシリンダで支え、この各々のロッドシリンダを同期作動させることが必要となる。ところが、左右両側のロッドシリンダを正確に同期作動させることは困難なのである。なぜならば、ロッドシリンダは、大型化を避けるためにピストンの長さを短く設定せざるを得ないこと、及びシリンダチューブからピストンロッドが長く突出することから作動が比較的不安定であり、それゆえ、各々のロッドシリンダのピストン速度に差がでてしまうのである。その結果、プレスバーに変形が生じるという事態も発生し、適正な圧縮が行われなくなってしまう。
【0004】
このような事態の発生を避けるためにロッドシリンダを1本にすれば、プレスバーを水平に保つための複雑な装置が必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、簡単な構成で適正な圧縮を行うことができるプレス装置を備えたバンド式梱包機の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本発明は、バンド案内アーチ内に運ばれた梱包物をプレスバーで圧縮するプレス装置が設けられたバンド式梱包機に関し、前記プレス装置の前記プレスバーを左右両側に各々設けられたピストン式ロッドレスシリンダに取り付けて上下動させるという手段を採用する。
【0007】
前記プレスバーの下側に圧縮用パッドを固定するという手段を採用することもある。
【0008】
また、本発明は、バンド案内アーチの後側に、梱包物を停止させるための左右一対のストップ部材を、左右に移動して開閉するように設け、このストップ部材の開閉作動を、外側が後方に傾斜して取り付けプレートに取り付けたシリンダの作動によって行い、そして、取り付けプレートをそれぞれ、ガイドバーに固定し、かつこのガイドバーに沿って左右に移動できるように構成し、ガイドバーを、ガイド部材に沿って前後に移動できる取り付け部材に固定することにより、左右一対のストップ部材を前後左右に移動調整できるようにするという手段を採用している。
【0009】
【作用】
ピストン式ロッドレスシリンダは、ピストン速度を不安定にするピストンロッドを有さず、またピストンの長さを長く設定できるので、同期作動が可能となる。
【0010】
圧縮用パッドを固定すれば誤って指などをはさんでも大事には至らない。
【0011】
ストップ部材を設けているので、梱包物をプレスバー及びバンド案内アーチに対し適正な位置に停止させることができる。また、ストップ部材を、左右に移動して開閉する左右一対のものとして構成し、外側が後方に傾斜して設けられたシリンダの作動によって開閉させているので、梱包物を搬出するときに、それぞれのストップ部材は、梱包物から離れるように斜め後方に向って作動する。さらに、ストップ部材が前後左右に移動調整することができるように構成されているので、梱包物の大きさに合わせた調整が可能となる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0013】
図1は第1のバンド式梱包機であって本発明の理解に有用なものの正面図である。
【0014】
第1のバンド式梱包機1のバンド案内アーチ3左右両端には、それぞれピストン式ロッドレスシリンダ5,7が固定されている。ピストン式ロッドレスシリンダ5,7のテーブル9,11には、取り付け金具13,15を介し、プレスバー17が取り付けられている。したがって、プレスバー17は仮想線で示す位置を最下端として上下動を行う。プレスバー17の下側には梱包物を広い範囲で押圧するための押圧プレート19が取り付けられている。
【0015】
なお、図中21はベルトコンベア、23はバンド案内アーチ3内に案内するためのバンドを巻いたリールである。
【0016】
図2は第1のバンド式梱包機1の平面図である。
【0017】
取り付け金具13,15はコ字形の形状を有し、両側にそれぞれプレスバー17,17が取り付けられている。したがって、プレスバー17,17はバンド案内アーチ3をはさんだ状態で上下動を行うこととなる。
【0018】
図3は押圧プレート19を示す側面図である。
【0019】
押圧プレート19,19はプレスバー17,17よりかなり大きな幅を有し、梱包物を広い範囲で押圧して適正な圧縮を行う。
【0020】
図4は第2のバンド式梱包機であって本発明に係るものの正面図である。
【0021】
第2のバンド式梱包機25のバンド案内アーチ3左右両側正面にはそれぞれピストン式ロッドレスシリンダ27,29が固定され、このピストン式ロッドレスシリンダ27,29のテーブル31,33にはプレスバー35が取り付けられている。プレスバー35の下側には弾性材製の圧縮用パッド37が固定されている。
【0022】
バンド案内アーチ3の後側には梱包物を停止させるためのストップ部材39,39が配置され、梱包物を搬出するときにはこのストップ部材39,39が開くように構成されている。
【0023】
なお、図中41,41及び43,43はストップ部材39,39を適当な位置に配置するための固定部材である。
【0024】
図5は第2のバンド式梱包機の背面図である。
【0025】
ストップ部材39,39は取り付けプレート45,45に固定されたシリンダ47、47に取り付けられ、このシリンダ47、47によって開閉する。取り付けプレート45,45は、固定部材41,41によってガイドバー49に固定されているが、固定部材41,41のレバーを回して緩めると取り付けプレート45,45はガイドバー49に沿って移動できるように構成されている。
【0026】
図6は第2のバンド式梱包機25の平面図である。
【0027】
ガイドバー49は取り付け部材51,51に固定され、この取り付け部材51,51は固定部材43,43によってガイド部材53,53に固定されているが、固定部材43,43のレバーを回して緩めると取り付け部材51,51はガイド部材53,53に沿って移動できるように構成されている。
【0028】
したがって、梱包物の大きさに合わせてストップ部材39,39を前後左右に移動調整することができる。
【0029】
シリンダ47,47は、外側が後方に傾斜するように取り付けプレート45,45に取り付けられている。したがって、ストップ部材39,39が開くときに、矢印X方向に搬出される梱包物をひっかけてずらしてしまうことがない。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るバンド式梱包機は、プレスバーが変形するおそれのない、したがって適正な圧縮を行える簡単な構成のプレス装置を備えたものとなる。
【0031】
プレスバーの下側に圧縮用パッドを固定すれば、誤って指などをはさんだ場合にも大事に至ることがない安全性にすぐれたものとなる。
【0032】
バンド案内アーチの後側にストップ部材を設けているので、梱包物の大きさに合わせて、梱包物を適正な位置に停止させることができ、よりしっかりした梱包を行うことが可能となる。しかも、ストップ部材を開くときに梱包物から離れるように移動するので、梱包物をひっかけてずらしてしまい、その結果、梱包物の搬出等に支障が生じるといったことなどを効果的に防止できる。さらに、ストップ部材は前後左右に移動調整できるので、梱包物の大きさに合わせた調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
第1のバンド式梱包機の正面図である。
【図2】
第1のバンド式梱包機の平面図である。
【図3】
押圧プレートを示す側面図である。
【図4】
第2のバンド式梱包機の正面図である。
【図5】
第2のバンド式梱包機の背面図である。
【図6】
第2のバンド式梱包機の平面図である。
【符号の説明】
1 第1のバンド式梱包機
3 バンド案内アーチ
5,7、27,29 ピストン式ロッドレスシリンダ
17,35 プレスバー
37 圧縮用パッド
39 ストップ部材
 
訂正の要旨 訂正事項
A.特許請求の範囲の請求項1の「バンド案内アーチ内に運ばれた梱包物をプレスバーで圧縮するプレス装置が設けられたバンド式梱包機において、前記プレス装置の前記プレスバーは、左右両側に各々設けられたピストン式ロッドレスシリンダに取り付けられて上下動し、前記バンド案内アーチの後側には、梱包物を停止させるための左右一対のストップ部材が、左右に移動して開閉するように設けられ、このストップ部材の開閉作動は、外側が後方に傾斜して設けられたシリンダの作動によって行われる、ことを特徴とするバンド式梱包機。」との記載を「バンド案内アーチ内に運ばれた梱包物をプレスバーで圧縮するプレス装置が設けられたバンド式梱包機において、前記プレス装置の前記プレスバーは、左右両側に各々設けられたピストン式ロッドレスシリンダに取り付けられて上下動し、前記バンド案内アーチの後側には、梱包物を停止させるための左右一対のストップ部材が、左右に移動して開閉するように設けられ、このストップ部材の開閉作動は、外側が後方に傾斜して取り付けプレートに取り付けられたシリンダの作動によって行われ、そして、前記取り付けプレートはそれぞれ、ガイドバーに固定され、かつこのガイドバーに沿って左右に移動でき、前記ガイドバーは、ガイド部材に沿って前後に移動できる取り付け部材に固定されていて、前記ストップ部材が前後左右に移動調整することができるように構成されている、ことを特徴とするバンド式梱包機。」と訂正する。
B.発明の詳細な説明の段落番号0008の「また、本発明は、バンド案内アーチの後側に、梱包物を停止させるための左右一対のストップ部材を、左右に移動して開閉するように設け、このストップ部材の開閉作動を、外側が後方に傾斜して設けられたシリンダの作動によって行うという手段を採用している。」との記載を「また、本発明は、バンド案内アーチの後側に、梱包物を停止させるための左右一対のストップ部材を、左右に移動して開閉するように設け、このストップ部材の開閉作動を、外側が後方に傾斜して取り付けプレートに取り付けられたシリンダの作動によって行い、そして、取り付けプレートをそれぞれ、ガイドバーに固定し、かつこのガイドバーに沿って左右に移動できるように構成し、ガイドバーを、ガイド部材に沿って前後に移動できる取り付け部材に固定することにより、ストップ部材を前後左右に移動調整することができるようにするという手段を採用している。」と訂正する。
C.発明の詳細な説明の段落番号0011の「ストップ部材を設けているので、梱包物をプレスバー及びバンド案内アーチに対して適正な位置に停止させることができる。また、ストップ部材を、左右に移動して開閉する左右一対のものとして構成し、外側が後方に傾斜して設けられたシリンダの作動によって開閉させているので、梱包物を搬出するときに、それぞれのストップ部材は、梱包物から離れるように斜め後方に向って作動する。」との記載を「ストップ部材を設けているので、梱包物をプレスバー及びバンド案内アーチに対して適正な位置に停止させることができる。また、ストップ部材を、左右に移動して開閉する左右一対のものとして構成し、外側が後方に傾斜して設けられたシリンダの作動によって開閉させているので、梱包物を搬出するときに、それぞれのストップ部材は、梱包物から離れるように斜め後方に向って作動する。さらに、ストップ部材が前後左右に移動調整することができるように構成されているので、梱包物の大きさに合わせた調整が可能となる。」と訂正する。
D.発明の詳細な説明の段落番号0013の「図1は本発明に係る第1のバンド式梱包機の正面図である。」との記載を「図1は第1のバンド式梱包機であって本発明の理解に有用なものの正面図である。」と訂正する。
E.発明の詳細な説明の段落番号0020の「図4は本発明に係る第2のバンド式梱包機の正面図である。」との記載を「図4は第2のバンド式梱包機であって本発明に係るものの正面図である。」と訂正する。
F.発明の詳細な説明の段落番号0032の「また、本発明ではバンド案内アーチの後側にストップ部材を設けているので、梱包物を適正な位置に停止させて、よりしっかりした梱包を行うことができ、しかも、ストッパ部材は開くときに梱包物から離れるように移動するので、梱包物をひっかけてずらしてしまい、その結果、梱包物の搬出等に支障が生じるといったことなどを効果的に防止できる。」との記載を「また、本発明ではバンド案内アーチの後側にストップ部材を設けているので、梱包物を適正な位置に停止させて、よりしっかりした梱包を行うことができ、しかも、ストッパ部材は開くときに梱包物から離れるように移動するので、梱包物をひっかけてずらしてしまい、その結果、梱包物の搬出等に支障が生じるといったことなどを効果的に防止できる。さらに、ストップ部材が前後左右に移動調整することができるように構成されているので、梱包物の大きさに合わせた調整が可能となるといった効果も有している。」と訂正する。
G.特許明細書の図面の簡単な説明の第1行から第2行の「【図1】本発明に係る第1のバンド式梱包機の正面図である。」との記載を「【図1】第1のバンド式梱包機の正面図である。」と訂正する。
H.特許明細書の図面の簡単な説明の第5行から第6行の「【図4】本発明に係る第2のバンド式梱包機の正面図である。」との記載を「【図4】第2のバンド式梱包機の正面図である。」と訂正する。
異議決定日 2002-12-06 
出願番号 特願平3-244554
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B65B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 幸雄  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 市野 要助
山崎 豊
登録日 2001-07-06 
登録番号 特許第3205912号(P3205912)
権利者 ニチロ工業株式会社
発明の名称 バンド式梱包機  
代理人 澁谷 啓朗  
代理人 澁谷 啓朗  
代理人 藁科 孝雄  

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