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審判番号(事件番号) データベース 権利
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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1073335
異議申立番号 異議2001-72580  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-10-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-09-18 
確定日 2003-02-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第3147710号「防汚性部材」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3147710号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由
I.手続の経緯
本件特許第3147710号は、平成7年3月30日に出願され、平成13年1月12日にその特許権の設定登録がされ、その後、木村順子より特許異議の申立てがされたものである。

II.特許異議の申立てについての判断

1.特許異議の申立ての概要
「本件の請求項1に係る発明」(以下、「本件発明」という。)は甲第1号証に記載された発明であって特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するから、「本件の請求項1に係る特許」(以下、「本件特許」という。)は同条第1項の規定に違反してされたものであるか、或いは、本件発明は甲第1乃至3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は同条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証:特開平6-293519号公報
甲第2号証:特開昭63-100042号公報
甲第3号証:特開昭63-5301号公報

2.本件発明
本件発明は、本件特許明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された次のとおりのものである。

「タイル基材表面に、光触媒機能を有する酸化チタンからなる層が高温で焼成することにより形成されており、かつ前記光触媒機能を有する無機質の親水性物質は、0.6μm以上の厚さで存在することを特徴とする防汚性タイル。」

ここで、本件発明における「タイル」の技術的意味について検討するに、タイルとは、この出願当時、その構成材料としては陶磁器材料が一般的な、壁又は床などに張る小片状の薄板を意味していることは技術常識であって(広辞苑 第五版、1998年11月11日、株式会社岩波書店発行、タイルの項目、参照)、本件特許明細書の記載からは、この技術的意味と異なって解釈すべき理由は見当たらない。
本件特許明細書には、「従来より、水のある環境下で使用される部材には、ステンレス等の金属材料、FRPやABS等のプラスチック材料、ホーロー、タイル、衛生陶器等の無機材料などが使用されている。」(段落番号【0002】2〜4行)の記載が認められ、この記載によれば、タイルをホーローと並んで無機材料の例示として挙げられていることがうかがえるが、この記載において衛生陶器をも併せて前記例示として挙げていること及び上記技術常識に照らせば、この記載はタイルを構成する材料として一般的な陶磁器材料を、タイルと記述することにより、無機材料の例として示していると考えるのが自然であって、やはり、本件特許明細書の記載からは、タイルを上述した技術的意味と異なって解釈すべき理由は見当たらない。
したがって、本件発明における「タイル」は、その構成材料としては陶磁器材料が一般的な、壁又は床などに張る小片状の薄板を意味していると認められる。

3.甲号各証に記載された事項

甲第1乃至3号証には、以下の記載が認められる。

イ.「【特許請求の範囲】
【請求項1】酸化チタン微粒子を結晶成長させて酸化チタン粒子を得、得られた酸化チタン粒子を支持体に塗布し、塗布した支持体を焼成して支持体上に粒子を固着せしめることを特徴とする、酸化チタン膜の製造方法。」(甲第1号証2頁1欄1〜5行)

ロ.「本発明の酸化チタン膜は光学的特性、光電変換特性、触媒特性などにも優れており、光学材料、電子材料、光電変換材料、装飾用材料、触媒、光触媒、触媒担体、吸着剤あるいはバイオリアクターなどに有用である。特に、本発明の酸化チタン膜は光触媒特性に優れており、その光触媒活性を利用して有害物質を迅速、かつ、効率よく除去することができるので、工業用途ばかりでなく一般家庭用の脱臭体などとして極めて有用なものである。」(甲第1号証9頁16欄22〜30行)

ハ.「2.特許請求の範囲
(1)微量のPt、RhないしPdを添加した2酸化チタニウム薄膜が表面に形成されたことを特徴とする汚れ難いガラス物品。
3.発明に詳細な説明
【産業上の利用分野】
本発明は、ガラス物品、特に建物ないし車両の窓その他に使用される汚れ難いガラス物品に関する。」(甲第2号証1頁左下欄4〜12行)

ニ.「上記目的を達成するために、本発明はガラス物品の表面にPt、RhないしPdを微量添加した2酸化チタニウム薄膜を形成することを特徴とする。
上記薄膜を形成させる方法としては、CVD法、スプレー法、ゾルゲル法、浸漬法、真空蒸着法ないしスッパター法等の公知の技術を用いて行うことが出来る。」(甲第2号証2頁左上欄1〜7行)

ホ.「2.特許請求の範囲
(1)鏡面を有する反射鏡であって、前記鏡面上の最上層に、透明な光触媒層が形成されていることを特徴とする反射鏡。
(2)光触媒層が、TiO2、Fe2O3、In2O3およびWO2からなる群より選ばれた少なくとも1つである特許請求の範囲第1項記載の反射鏡。」(甲第3号証1頁左下欄4〜10行)

ヘ.「このような光触媒層7に使用される物資としては、TiO2、Fe2O3、In2O3およびWO2からなる群より選ばれた少なくとも1つ化合物を挙げることができる。このような化合物を前記光触媒層とする方法は、この発明では特に限定されないが、たとえば、以下の方法によることができる。
抵抗加熱による真空蒸着法、スパッタリング法、電子銃による電子ビーム蒸着法およびイオンプレーティング法等の真空プロセス、
前記化合物中の金属(Ti、Fe、In、W等)を含む有機金属化合物溶液を、鏡面5上に塗布し、乾燥したあと、それを高温で焼き付ける方法、」(甲第3号証2頁左下欄9〜末行)

4.判断
甲第1号証には防汚性タイルについての記載すらないから、本件発明が甲第1号証に記載された発明ということはできない。また、甲第1乃至3号証には、防汚性タイルについての記載すらないから、当然のこととして、タイル基材表面に光触媒機能を有する酸化チタンからなる層が高温で焼成することにより形成された防汚性タイルについての記載はなく、また、甲第1乃至3号証に記載された発明から、前記のように形成された防汚性タイルが容易に想到し得たとする理由も見当たらず、この点をもってしても、本件発明が甲第1乃至3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
そして、本件発明は、請求項1に記載された事項によって特定されたものとすることにより、本件特許明細書に記載の効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1乃至3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

III.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由並びに証拠によっては本件特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-01-15 
出願番号 特願平7-109915
審決分類 P 1 651・ 113- Y (B32B)
P 1 651・ 121- Y (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 高梨 操
石井 克彦
登録日 2001-01-12 
登録番号 特許第3147710号(P3147710)
権利者 東陶機器株式会社
発明の名称 防汚性部材  

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