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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1073359 |
異議申立番号 | 異議2002-71936 |
総通号数 | 40 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-03-11 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-08-05 |
確定日 | 2003-02-26 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3253734号「半導体装置製造用の石英製装置」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3253734号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)手続きの経緯 本件特許第3253734号の請求項1乃至8に係る発明についての特許は、平成5年3月19日(優先権主張、平成4年6月19日)に特許出願され、平成13年11月22日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議の申立てがなされたものである。 (2)本件発明 本件発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至8に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】半導体ウェハの周囲の雰囲気に触れる第一の石英層と、 前記第一の石英層に含有される量よりも少ない量の水酸基を含み、前記雰囲気に接しない部分に形成される第二の石英層と、 前記第一の石英層に含有される量よりも多い量の水酸基を含み、前記第一の石英層と前記第二の石英層の間に挿入された第三の石英層とを有すことを特徴とする半導体装置製造用の石英製装置。(以下、「本件発明1」という。) 【請求項2】半導体ウェハに接触する部分に形成される第一の石英層と、 前記半導体ウェハに接触しない部分に形成され、水酸基の含有量が前記第一の石英層よりも少ない第二の石英層と、 前記第一の石英層に含有される量よりも多い量の水酸基を含み、前記第一の石英層と前記第二の石英層の間に挿入された第三の石英層とを有することを特徴とする半導体装置製造用の石英製装置。(以下、「本件発明2」という。) 【請求項3】前記第一の石英層に含まれる水酸基は100ppm 以上であって、前記第二の石英層に含まれる水酸基は30ppm 以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置製造用の石英製装置。(以下、「本件発明3」という。) 【請求項4】前記第一の石英層は酸素水素炎熔融法により形成され、前記第二の石英層は電気熔融法により形成され、前記第三の石英層は気相成長法により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置製造用の石英製装置。(以下、「本件発明4」という。) 【請求項5】前記第二の石英層は管状に形成され、前記第一の石英層は前記第二の石英層の内周面側に形成されていることを特徴とする請求項1、3又は4に記載の半導体装置製造用の石英製装置。(以下、「本件発明5」という。) 【請求項6】前記第二の石英層は、半導体ウェハを搭載する形状を有し、その表面が前記第一の石英層により覆われていることを特徴とする請求項2、3又は4に記載の半導体装置製造用の石英製装置。(以下、「本件発明6」という。) 【請求項7】前記第二の石英層は棒状に形成され、その表面が前記第一の石英層により覆われていることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の半導体装置製造用の石英製装置。(以下、「本件発明7」という。) 【請求項8】前記第三の石英層の水酸基が200ppm 以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置製造用の石英製装置。(以下、「本件発明8」という。)」 (3)特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人服部和子は、証拠として甲第1乃至3号証を提出し、本件発明1乃至8は、甲第1乃至3号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1乃至8は、特許法第29条第2項の規定に違反して、特許を受けることができないものであると主張している。 (4)甲各号証記載の発明 甲第1号証として提出された、特開昭48-92410号公報には、「多層石英ガラス物体」が図面とともに開示されている。そしてその特許請求の範囲には、「処理室の方に向いている合成石英ガラス製の層と、その上の水晶粒子から溶融された石英ガラス層とを有する固体工学における利用に対する石英ガラス物体、特に、石英ガラス製の中空物体において、溶融された石英ガラス層(2)が合成石英ガラス層(1)を包囲する分割層(3)を有し、その中に拡散阻止部材が設けられるようにしたことを特徴とする多層石英ガラス物体。」と記載され、同公報2頁左下欄3行〜11行には、「拡散の阻止のために、分割層の中間格子部分を拡散阻止部材で形成することが有効であることが実証された。特に、OHイオン・・・の石英ガラス部分層の中間格子部分の上への形成が、拡散阻止に対して適している。2価の陽イオンの形の拡散阻止部材として、例えば、バリウム、カルシウム及びベリリウムが上げられる。」と記載され、3頁左下欄7行〜18行には、「この分割層3の中に、撒布された水晶粒子に2価の陽イオンを形成する添加物を混合し、好都合には、高性能バーナによって生成される熱の中で分解される2価の陽イオンの化合物と混合することによって、中間格子部分が形成される。焔による石英ガラス層2の形成の際に、同時に、OHイオンが形成される。同様に、3価のイオンの格子部分の上への形成のために、水晶結晶粒子に相当する添加物、例えば、ガリウムイオン及び(又は)アルミニウムイオンを供給する化合物が混合される。」と記載されている。 甲第2号証として提出された、「高純度シリカの応用技術」(株式会社シーエムシー1991年3月1日発行)の175頁の「表2.3.11石英ガラスの分類」には、透明石英ガラスについて、その製法毎にOH基含有量の多寡が記載されている。 甲第3号証として提出された、特開昭62-268129号公報の2頁左上欄12行〜17行には、「一般に透明な天然石英ガラスは均熱効果が悪く、しかもOH基の含有量はあまり多くないので、不純物の拡散防止効果も少ない。また合成石英ガラスは、不純物の含有量は非常に小さいのでウエーハを汚染するおそれは少なく、OH基の含有量が多いため、不純物の拡散防止効果は大きい」と記載されている。 (5)対比・当審の判断 <本件発明1について> 甲第1号証記載の発明と本件発明1とを対比すると、甲第1号証には、半導体ウェハの周囲の雰囲気に触れる第一の石英層(合成石英ガラス層1)と、前記第一の石英層に含有される量よりも少ない量の水酸基を含み、前記雰囲気に接しない部分に形成される第二の石英層(石英ガラス層2)と、前記第一の石英層と前記第二の石英層の間に挿入された第三の石英層(その中に拡散阻止部材が設けられた分割層3)とを有する半導体装置製造用の石英製装置については記載されているが、本件発明1の必須の構成要件である「第一の石英層に含有される量よりも多い量の水酸基を含み、前記第一の石英層と前記第二の石英層の間に挿入された第三の石英層とを有す」る点について記載も示唆もされていない。 また甲第2乃至3号証を参酌しても上記の点を裏付ける確証は得られない。 そして本件発明1は、上記の点の構成を有することにより、「第一の石英層と第二の石英層との間に、第三の石英層を介在させ、そのOH基の量を第一の石英層よりも多くしている。これにより、外部から侵入して第一の石英層に到達する不純物の量を第三の石英層により捕捉させる。これにより第一の石英層への不純物の拡散が防止され、不純物の放出量がさらに低減する。」(段落0015参照)という、明細書記載の作用効果を奏するものである。 よって、本件発明1が甲第1乃至3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 <本件発明2について> 甲第1号証記載の発明と本件発明2とを対比すると、甲第1号証には、半導体ウェハの周囲の雰囲気に触れる第一の石英層(合成石英ガラス層1)と、前記雰囲気に接しない部分に形成される第二の石英層(石英ガラス層2)と、前記第一の石英層に含有される量よりも少ない量の水酸基を含み、前記第一の石英層と前記第二の石英層の間に挿入された第三の石英層(その中に拡散阻止部材が設けられた分割層3)とを有する半導体装置製造用の石英製装置については記載されているが、本件発明2の必須の構成要件である「第一の石英層に含有される量よりも多い量の水酸基を含み、前記第一の石英層と前記第二の石英層の間に挿入された第三の石英層とを有す」る点について記載も示唆もされていないばかりでなく、本件発明2が前提とし、必須の構成要件である「半導体ウェハに接触する部分に形成される第一の石英層」の点について記載も示唆もされていない。 また甲第2乃至3号証を参酌しても上記の各点を裏付ける確証は得られない。 そして本件発明2は、上記の前者の点の構成を有することにより、「第一の石英層と第二の石英層との間に、第三の石英層を介在させ、そのOH基の量を第一の石英層よりも多くしている。これにより、外部から侵入して第一の石英層に到達する不純物の量を第三の石英層により捕捉させる。これにより第一の石英層への不純物の拡散が防止され、不純物の放出量がさらに低減する。」(段落0015参照)という、明細書記載の作用効果を奏するものである。 よって、本件発明2が甲第1乃至3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 <本件発明3乃至8について> 本件発明3乃至8は、本件発明1又は2を直接又は間接に引用し、本件発明1又は2の構成を前提とするものであるから、本件発明1又は2の場合と同様の理由により、本件発明3乃至8が甲第1乃至3号証に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (6)むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1乃至8に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1乃至8に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2003-02-07 |
出願番号 | 特願平5-60342 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H01L)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 宮崎 園子 |
特許庁審判長 |
内野 春喜 |
特許庁審判官 |
朽名 一夫 池渕 立 |
登録日 | 2001-11-22 |
登録番号 | 特許第3253734号(P3253734) |
権利者 | 富士通株式会社 |
発明の名称 | 半導体装置製造用の石英製装置 |
代理人 | 岡本 啓三 |