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審決分類 |
審判 訂正 判示事項別分類コード:なし 訂正する C23C |
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管理番号 | 1073931 |
審判番号 | 訂正2002-39163 |
総通号数 | 41 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-06-07 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2002-07-30 |
確定日 | 2003-01-17 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3094702号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3094702号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1.請求の要旨 本件審判の請求の要旨は、特許第3094702号発明(平成4年11月19日出願、平成12年8月4日設定登録、平成13年10月22日特許を取り消す旨の異議の決定発送)の明細書を審判請求書(平成14年7月30日請求)に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、次のとおり訂正することを求めるものである。 (訂正事項A-1) 特許請求の範囲の請求項1及び請求項3に「有機金属化合物」(本件特許公報第1頁第1欄第4行及び本件特許公報第1頁第1欄第13行〜14行)とあるのを、「分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有しSi,Ti,Al,Bから選ばれる1種の金属元素を含む有機金属化合物」と訂正する。 (訂正事項A-2) 発明の詳細な説明の段落【0005】に「有機金属化合物」(本件特許公報第2頁第3欄第35行〜36行及び本件特許公報第2頁第3欄第41行)とあるのを、「分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有しSi,Ti,Al,Bから選ばれる1種の金属元素を含む有機金属化合物」と訂正する。 (訂正事項B) 特許請求の範囲の請求項2に「Si,Ti,Al,B,Zr,W,Taから選ばれる」(本件特許公報第1頁第1欄第8行〜9行)とあるのを、「Si,Bから選ばれる」と訂正する。 (訂正事項C-1) 特許請求の範囲の請求項3に「混合した溶液または該混合溶液をアルコールなどの有機溶媒に溶かして」(本件特許公報第1頁第1欄第14行〜15行)とあるのを、「混合しアルコールに溶かして」と訂正する。 (訂正事項C-2) 発明の詳細な説明の段落【0005】に「混合した溶液または該混合溶液をアルコールなどの有機溶媒に溶かして」(本件特許公報第2頁第3欄第42行〜43行)とあるのを、「混合しアルコールに溶かして」と訂正する。 (訂正事項C-3) 発明の詳細な説明の段落【0008】に「混合した溶液、または該混合溶液をエタノール等のアルコールに溶かし」(本件特許公報第2頁第4欄第20行〜21行)とあるのを、「混合しエタノール等のアルコールに溶かし」と訂正する。 2.当審の判断 (1)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び拡張・変更の存否 (訂正事項A-1)について この訂正は、段落【0008】(本件特許公報第2頁第4欄第17行〜第24行)の記載を根拠として、訂正前の請求項1に係る発明において「有機金属化合物」とあるのを、訂正前の請求項2における「分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有し、Si,Ti,Al,B,Zr,W,Taから選ばれる1種の金属元素を含む有機金属化合物」から択一的に記載されていた要素である「Zr,W,Ta」を削除することにより限定し、「分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有し、Si,Ti,Al,Bから選ばれる1種の金属元素を含む有機金属化合物」として、請求項1の発明特定事項とするものである。 したがって、(訂正事項A-1)は、特許法第126条第1項第1号の規定における特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項A-2)について この訂正は、特許請求の範囲に関する上記(訂正事項A-1)に伴う特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、(訂正事項A-2)は、特許法第126条第1項第3号の規定における明りようでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項B)について この訂正は、段落【0008】(本件特許公報第2頁第4欄第17行〜第24行)の記載を根拠として、訂正前の請求項2に係る発明において「Si,Ti,Al,B,Zr,W,Taから選ばれる」とあるのを、択一的に記載されていた要素である「Ti,Al,Zr,W,Ta」を削除することにより限定し、「Si,Bから選ばれる」とするものである。 したがって、(訂正事項B)は、特許法第126条第1項第1号の規定における特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項C-1)について この訂正は、段落【0005】(本件特許公報第2頁第3欄第32行〜第45行)の記載を根拠として、「混合した溶液または該混合溶液をアルコールなどの有機溶媒に溶かして」とあるのを、択一的に記載されていた要素である「該混合溶液をアルコールなどの有機溶媒に溶かして」に限定し、更に「アルコールなどの有機溶媒」を「アルコール」に限定して、「混合しアルコールに溶かして」としたものである。 したがって、(訂正事項C-1)は、特許法第126条第1項第1号の規定における特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項C-2)及び(訂正事項C-3)について 発明の詳細な説明に関する上記(訂正事項C-2)及び(訂正事項C-3)は、特許請求の範囲に関する上記(訂正事項C-1)に伴う特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、(訂正事項C-2)及び(訂正事項C-3)は、特許法第126条第1項第3号の規定における明りようでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)独立特許要件について (訂正事項A-1)、(訂正事項B)、(訂正事項C-1)は、上記のとおり、特許法第126条第1項第1号の規定における特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであるところ、以下、特許法第126条第4項に規定される要件(独立特許要件)について検討する。 (2-1)引用刊行物に記載された発明 異議2001-70981号において、当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物1(特開平3-239537号公報、特許異議申立人株式会社ディスクが提出した甲第1号証に該当。)には、以下の事項が記載されている。 (a)「透明なフイルム基材上に、珪素酸化物からなる透明な第一層と、シランカップリング剤からなる透明な第二層とが設けられていることを特徴とする透明耐透湿性フイルム。」(特許請求の範囲) (b)「この発明において使用する透明なフイルム基材としては、可撓性と透明性とを備えた厚さが通常5〜300μm程度のプラスチックフイルム、・・・などの各種プラスチックからなるフイルムが挙げられる。」(第2頁左上欄第15行目〜右上欄第4行目) (c)「この珪素酸化物の層は、真空蒸着法、・・・などの公知の各種方法で形成することができる。」(第2頁左下欄第1〜3行) (d)「一般式;X…Si(OR)3(Xは・・・エポキシ基などの官能基、ORはメトキシ基、エポキシ基などの加水分解可能な基である)で表されるシランカップリング剤、」(第2頁左下欄第1〜5行) (e)「この第二層は、上記のシランカップリング剤をトルエン、アセトンなどの溶剤で希釈し、これを、・・・などの方法で第一層の上に塗布したのち、乾燥し、被膜化することにより、形成することができる。」(第2頁右下欄第9〜14行) 同じく、刊行物2(「日本接着学会誌」Vol.27.No.6、246頁〜251頁、平成3年6月1日、日本接着学会発行、特許異議申立人株式会社ディスクが提出した甲第2号証に該当。)には、以下の事項が記載されている。 (f)第248頁の表3には、シランカップリング剤の各種無機材料に対する有効性という表題のもとで、「効果の優れるものの無機素材」として、「シリカ」が挙げられている。 (g)「乾式処理法は、・・・攪拌下シラン(稀釈液でも可)或いはシランの部分加水分解液をゆっくり滴下し、その後熱処理する方法である。」(第248頁左欄下第3行〜右欄第1行) 同じく、刊行物3(「Japan Energy & Technology Intelligence」Vol.39,No.12、95頁〜97頁、平成3年11月1日、株式会社ジェティ発行、特許異議申立人株式会社ディスクが提出した甲第3号証に該当。)には、以下の事項が記載されている。 (h)「シランカップリング剤は水分の存在下において反応、いわゆる加水分解を起こしてシラノール(珪酸)となり、これが脱水縮合して、2量体、3量体(オリゴマー)と大きくなりつつ、無機物表面とも反応ー結合して、高分子被膜を形成する。」(第95頁左欄第13行〜右欄第4行) (i)「シランカップリング剤がシリカ表面と反応する際の挙動を追跡した報告によれば、・・・。次にシラン同士の縮合が始まり、オリゴマーを形成した後に、シリカ表面と反応するというものである。・・・一方水溶液中でのシランカップリング剤の加水分解および縮合速度については、・・・。日本ユニカーがユーザーに対して、pH4の水溶液中でシランカップリング 剤を取扱うことを推めているのはこのためである。また、この水溶液も調製後すぐに使用するのではなく、2〜3日放置した後に使用した方が、シランの効果がより強く現れるといわれている。・・・溶液調製後2〜3日では、シランはかなりオリゴマー化していると考えられる。」(第96頁左欄第3〜右欄第9行) (2-2)独立特許要件についての判断 訂正明細書の請求項1〜3に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】プラスチックフィルムの少なくとも片面に、珪素酸化物または珪素酸化物を主成分とした蒸着薄膜層と、分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有しSi,Ti,Al,Bから選ばれる1種の金属元素を含む有機金属化合物の1種または2種以上を加水分解し部分縮合させたゾル溶液を用いて形成されたガラス質被膜とを順次積層してなる蒸着フィルム。」 「【請求項2】有機金属化合物が、分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有し、Si,Bから選ばれる1種の金属元素を含む化合物である請求項1記載の蒸着フィルム。」 「【請求項3】プラスチックフィルムの少なくとも片面に、珪素酸化物または珪素酸化物を主成分とした蒸着薄膜層を形成したのち、該蒸着薄膜層の上に、分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有しSi,Ti,Al,Bから選ばれる1種の金属元素を含む有機金属化合物の1種または2種以上を混合しアルコールに溶かして加水分解し部分縮合させたゾル溶液をコーティングし、熱処理を施すことでガラス質被膜を形成する蒸着フィルムの製造方法。」 (2-2-1)訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明1」という。)について 刊行物1には、(a)に「透明なフイルム基材上に、珪素酸化物からなる透明な第一層と、シランカップリング剤からなる透明な第二層とが設けられていることを特徴とする透明耐透湿性フイルム。」と記載されている。 また、同じく刊行物1の(b)には透明なフイルムとしてプラスチックが挙げられており、(c)には層の形成を蒸着法により行うとの記載がされており、(d)には金属元素として、Siを含み、分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシを有する有機金属化合物が一般式として示されており、(e)には第2層はシランカップリング剤を溶剤で希釈し塗布して形成することが記載されている。 更には、シランカップリング剤は、本件特許公報にも有機金属化合物としてシリコンカップリング剤であるシリコン3-アミノプロピルトリエトキシドが例示されているように(第2頁第4欄第35行〜36行)有機金属化合物であると云える。 よって、これらの記載を本件訂正発明1の記載振りに則って整理すると、刊行物1には「プラスチックフィルムの少なくとも片面に、珪素酸化物または珪素酸化物を主成分とした蒸着薄膜層と、分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有しSi金属元素を含む有機金属化合物を溶剤で希釈して形成した皮膜とを順次積層してなる蒸着フィルム。」の発明が記載されていると云える。 ここで、本件訂正発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、「プラスチックフィルムの少なくとも片面に、珪素酸化物または珪素酸化物を主成分とした蒸着薄膜層と、分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有しSi金属元素を含む有機金属化合物皮膜とを順次積層してなる蒸着フィルム。」である点で一致し、有機金属化合物被膜が、本件訂正発明1では、被膜が有機金属化合物を加水分解し部分縮合させたゾル溶液を用いて形成されたガラス質被膜であるのに対し、刊行物1に記載の発明においては、単に有機金属化合物を溶剤で希釈して形成した被膜である点で相違していると云える。 次に上記相違点について検討する。 刊行物3(h)(i)の記載によれば、シランカップリング剤は、水分の存在下において加水分解を起こし、次いで脱水縮合して、オリゴマーとなりつつ、シリカ表面と反応すること、通常使用の際は、溶液調製後2〜3日経過したオリゴマー化しているもの(本件訂正発明1でいう部分縮合したゾル溶液に相当)を使用することがシランの効果がより強く現れること、また、刊行物2(f)(g)の記載によれば、フィラー系材料やガラス繊維などの表面処理であるものの、シランカップリング剤の使用方法として、シランの希釈液でも部分加水分解液でも同様に使用できることが示唆されている。 しかしながら、本件訂正発明1は、「部分縮合させたゾル溶液を使用して形成したガラス質被膜」を積層することにより、黄色味を呈している蒸着膜を、そのガスバリア性や水蒸気バリア性を低下させることなく透明化でき、特に実施例に示されているように「ガラス質被膜」を積層するにも拘わらず、波長400nmにおける光透過率を高めることが出来るという、顕著な効果を奏するものであるところ、上記刊行物2〜3には、「部分縮合させたゾル溶液を使用して形成したガラス質被膜」を積層することにより、黄色味を呈している蒸着膜を、透明化することを示唆する記載はない。 したがって、本件訂正発明1は、上記刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 さらに、特許異議申立人株式会社ディスクが提出した甲第4号証に該当する刊行物4(特開昭62-295931号公報)、同じく特許異議申立人株式会社ディスクが提出した甲第5号証に該当する刊行物5(特開平2-160836号公報)には、上述の「部分縮合させたゾル溶液を使用して形成したガラス質被膜」を積層することにより、黄色味を呈している蒸着膜を、透明化することを示唆する記載はない。 また、刊行物6(「SOCIETY OF VACUUM COATERS」主催の「33rd ANNUAL TECHNICAL CONFERENCE PROCEEDINGS」における「TRANSPARENT BARRIERS FOR FOODPACKAGING」と題する論文集、163頁〜169頁、平成2年4月29日、特許異議申立人株式会社ディスクが提出した甲第6号証に該当。)には、「This yellowish appearance ・・・ is dependant on the content of oxygen and on the coating thickness.」(第166頁左欄第12〜17行)と記載されているが、これは膜の黄色現象がコーティングの厚さに依存していること、すなわち膜を厚くすると黄色現象が表れることを記述しているのみであり、上述の「部分縮合させたゾル溶液を使用して形成したガラス質被膜」を積層することにより、黄色味を呈している蒸着膜を、透明化することを示唆するものではない。 よって、本件訂正発明1は、上記刊行物1〜6から容易に推考しえたものとは云えない。 したがって、本件訂正発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 (2-2-2)訂正明細書の請求項2に係る発明(以下、「本件訂正発明2」という。)について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用することによりその発明特定事項を全て含むものであるから、前記(2-2-1)と同様の理由により、本件訂正発明2は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 (2-2-3)訂正明細書の請求項3に係る発明(以下、「本件訂正発明3」という。)について 本件訂正発明3と刊行物1に記載された発明とを対比すると、部分縮合したゾル溶液を使用することは、上記(2-2-1)に示したとおりであり、また、コーティング後、熱処理することは、刊行物2(g)に記載されている。 しかしながら、本件訂正発明3は、「部分縮合させたゾル溶液をコーティングし、熱処理を施すことでガラス質被膜を形成する」ことにより、黄色味を呈している蒸着膜を、そのガスバリア性や水蒸気バリア性を低下させることなく透明化でき、特に実施例に示されているように「ガラス質被膜」を積層形成するにも拘わらず、波長400nmにおける光透過率を高めることが出来るという、顕著な効果を奏するものであるところ、上記(2-2-1)に示したとおり、刊行物1〜6には、「部分縮合させたゾル溶液をコーティングし熱処理を施すことでガラス質被膜を形成すること」を示唆する記載はない。 よって、本件訂正発明3は、上記刊行物1〜6から容易に推考しえたものとは云えない。 したがって、本件訂正発明3は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項ないし第4項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 珪素酸化物系蒸着フィルムおよびその製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 プラスチックフィルムの少なくとも片面に、珪素酸化物または珪素酸化物を主成分とした蒸着薄膜層と、分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有しSi,Ti,Al,Bから選ばれる1種の金属元素を含む有機金属化合物の1種または2種以上を加水分解し部分縮合させたゾル溶液を用いて形成されたガラス質被膜とを順次積層してなる蒸着フィルム。 【請求項2】 有機金属化合物が、分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有し、Si,Bから選ばれる1種の金属元素を含む化合物である請求項1記載の蒸着フィルム。 【請求項3】 プラスチックフィルムの少なくとも片面に、珪素酸化物または珪素酸化物を主成分とした蒸着薄膜層を形成したのち、該蒸着薄膜層の上に、分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有しSi,Ti,Al,Bから選ばれる1種の金属元素を含む有機金属化合物の1種または2種以上を混合しアルコールに溶かして加水分解し部分縮合させたゾル溶液をコーティングし、熱処理を施すことでガラス質被膜を形成する蒸着フィルムの製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、酸素ガス、二酸化炭素ガスのガスバリア性、水蒸気バリア性、耐水性および耐薬品性にすぐれ、種々の厳しい環境下におかれてもその性能が安定しており、飲食品、医薬品などの包装材料分野、電気絶縁材料ないし導電材料などの電子分野、あるいは医療材料分野などの分野において、ほとんど無色透明性を必要とする用途に有用な蒸着フィルムに関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、プラスチックフィルムにアルミニウムを蒸着したフィルムは、食品包装などの材料として広く用いられている。これらのアルミニウム蒸着フィルムは、可撓性、ガスバリア性、水蒸気バリア性にすぐれるものの、耐酸性、耐アルカリ性などの耐薬品性、耐水性、透明性などに劣るため、煮沸殺菌処理したり、酸、アルカリなどに接触すると、蒸着層の一部が剥離し、ガスバリア性や水蒸気バリア性がかなり低下するという欠点があった。 【0003】 一方、特開昭49-41469号公報に開示されている、プラスチックフィルムに SixOy(x=1,2,y=1,2,3)なる組成の蒸着薄膜層を設けた蒸着フィルムは、耐薬品性は高いものの、若干黄色味を呈しており、特に蒸着面側に直接印刷した場合は黄色味を呈していることが大きな弊害となり、デザイン上または用途上、例えばエレクトルミネッセンスの構成材料等においては性能上大きな障害となっていた。また、黄色味を少なくするために蒸着膜の膜厚を薄くする方法もとられているが、その分、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性が劣るという弊害もおきている。なお、Siおよびその他の元素を含む蒸着薄膜を設けてなるフィルムも知られているが、特に透明化に有効な手段はほとんど知られていない。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 本発明者らは、上記欠点を解決すべく鋭意検討を行った結果、蒸着面上に有機金属化合物をコーティングしてガラス質被膜を形成してなる蒸着フィルムが、ガスバリア性、水蒸気バリア性、耐薬品性、及び耐水性にすぐれるのみならず、黄色味を低減するために蒸着膜の膜厚を薄くする必要がなく、煮沸殺菌処理を施しても剥離や亀裂を生じることがなく、また、ガスバリア性や水蒸気バリア性も低下することがなく、ほとんど無色透明であることを見出し、本発明に至った。 【0005】 【課題を解決するための手段】 すなわち、本発明は、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、珪素酸化物または珪素酸化物を主成分とした蒸着薄膜層と、分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有しSi,Ti,Al,Bから選ばれる1種の金属元素を含む有機金属化合物の1種または2種以上を加水分解し部分縮合させたゾル溶液から形成されたガラス質被膜とを順次積層してなる蒸着フィルムを提供する。また、本発明は、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、珪素酸化物または珪素酸化物を主成分とした蒸着薄膜層を形成したのち、該蒸着薄膜層の上に、分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有しSi,Ti,Al,Bから選ばれる1種の金属元素を含む有機金属化合物の1種または2種以上を混合しアルコールに溶かして加水分解し部分縮合させたゾル溶液をコーティングし、熱処理を施すことでガラス質被膜を形成する蒸着フィルムの製造方法を提供する。 【0006】 プラスチックフィルムとしては特に制限はなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物、芳香族ポリアミド、フッ素樹脂などを素材とするフィルム、あるいはこれらの2種以上を積層したフィルムが用いられ、その表面に印刷やシランカップリング剤、プライマーなどの塗布、コロナ放電処理、低温プラズマ処理などの表面処理が施されたもの、一軸延伸や二軸延伸されたものであってもよい。また、一般包装用途では光沢、強度の面から二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルムなどが好んで用いられる。 【0007】 蒸着層は、これらのプラスチックフィルムの片面または両面に設けられ、珪素酸化物 SiOx(x=1,2)の薄膜、または珪素酸化物を主成分としマグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、鉄、カルシウム、ホウ素、ニッケル、クロムでなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物を少なくとも1種含有する薄膜を示す。 【0008】 上記蒸着面には、分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有し、Si,Ti,Al,B,Zr,W,Taから選ばれる1種の金属元素を含む有機金属化合物を、1種または2種以上混合しエタノール等のアルコールに溶かし、必要に応じて塩酸、水を加え加水分解し部分縮合させたゾル溶液をコーティングし、熱処理を施すことでガラス質被膜を形成する。 【0009】 有機金属化合物としては、例えばシリコンテトラメトキシド、シリコンテトラプロポキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラブトキシド、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、タンタルペンタプロポキシド、タンタルペンタブトキシド、ボロントリメトキシド、ボロントリブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、タングステンヘキサメトキシド、タングステンヘキサエトキシド、シリコンジエトキシド、シリコントリエトキシド、シリコンフェニルトリメトキシド、シリコンジエトキシジメチル、シリコン3-アミノプロピルトリエトキシド、シリコンベンジルトリエトキシド、シリコン3-クロロプロピルジメトキシド、シリコンジエトキシジクロライド、チタンジメトキシド、チタンジエトキシジメチル、チタンジエトキシジフェニル、チタンジクロロジエトキシド、アルミニウムジメトキシド、アルミニウムジエトキシエチル、アルミニウムジエトキシフェニル、タンタルトリエトキシド、タンタルジエトキシトリメチル、ボロンジメトキシド、ボロンジエトキシメチル、ボロンクロロジエトキシド、ジルコニウムジエトキシド、ジルコニウムトリエトキシド、ジルコニウムフェニルトリメトキシド、ジルコニウムジエトキシジメチル、ジルコニウムジエトキシジクロライド、タングステントリメトキシド、タングステントリエトキシトリメチル、タングステンジクロロテトラエトキシド、タングステンジフェニルテトラエトキシド等が挙げられる。 【0010】 上記混合溶液は、溶媒 100重量部に対して有機金属化合物 0.5〜30重量部、好ましくは 1〜10重量部を溶かしたものである。有機金属化合物の混合溶液は、バーコーティング、グラビアコーティングなどにより均一に蒸着面に塗布し、その後加熱乾燥させてガラス質被膜とする。この際の膜厚は 0.1〜3 μmが適当であり、好ましくは 0.1〜0.5 μmである。膜厚が 0.1μm未満では蒸着フィルムを高透明化にするには不十分であり、3μmを越えると被膜の剥離を生じてしまう。本発明により得られる蒸着面にガラス質被膜を形成した蒸着フィルムには、必要に応じて、さらに印刷やコーティングを施したり、接着剤やラミネート接着剤を用いてまたは用いずにプラスチックフィルムを積層してもよい。そして、フィルムのまま、あるいは袋やチューブなどの形に加工して飲食品、医薬品、医療、電子材料などの分野で包装材料、ガス遮断材料、電気絶縁材料ないし導電材料などとして広く用いることができる。 【0011】 【実施例】 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中、OPは同圧法で測定した酸素ガス透過率であり、その単位はml/m2・24時間・1気圧・25℃・ 100%RHである。WVTは赤外線吸収法で測定した透湿度であり、その単位は ml/m2・24時間・40℃・90%RHである。T%は分光光度計による 400nmにおける透過率である。なお、それらの単位の表示は、例中すべて省略した。 【0012】 〔実施例1〕 エタノール 100部、テトラエトキシシラン 4部、トリメトキシボラン 1部、水5部、塩酸 0.3部よりなる混合液を24時間放置し塗液を得た。珪素酸化物蒸着フィルム(東洋インキ製造社製 GT1000N )の蒸着面に、バーコーター#20 を用いて上記塗液を塗布し、60℃で1時間乾燥させ、得られた蒸着フィルムのT%を測定して透明性を評価した。結果を表1に示す。次いで、ラミネート用ポリウレタン系接着剤(東洋モートン社製 アドコート#810)を用いて、常法により、塗膜処理した蒸着フィルムと厚さ50μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを接着した。OPおよびWTRをそれぞれ10点測定し、測定値の平均値を算出した。結果を表1に示す。 【0013】 〔比較例1〕 未処理の珪素酸化物蒸着フィルム(東洋インキ製造社製 GT1000N )のT%、OPおよびWTRを実施例1と同様にして測定した結果を表1に示す。 〔実施例2〕 エタノール 100部、テトラエトキシシラン 5部、水10部、塩酸 0.3部よりなる混合液を24時間放置し塗液を得た。珪素酸化物蒸着フィルム(東洋インキ製造社製 GT1000N )の蒸着面に、バーコーター#20 を用いて上記塗液を塗布し、60℃で1時間乾燥させた。塗膜処理した蒸着フィルムに、50μmの未延伸ポリプロピレンを接着した。得られた積層体を 100℃の水蒸気に3時間暴露させた。暴露前および暴露後のT%、OPおよびWVTを測定した。結果を表1に示す。 【0014】 【表1】 【0015】 【発明の効果】 本発明により、ガスバリア性、水蒸気バリア性、耐薬品性および耐水性にすぐれるのみならず、煮沸殺菌処理を施しても剥離や亀裂を生じることがなく、また、ガスバリア性、水蒸気バリア性も低下することがなく、ほとんど無色透明なフィルムが得られるようになった。 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 本件訂正の要旨は、本件特許第3094702号発明の特許明細書を平成14年7月30日付け訂正審判請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、次の訂正事項a乃至fのとおりに訂正するものである。 (1)訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1及び請求項3に「有機金属化合物」(本件特許公報第1頁第1欄第4行及び本件特許公報第1頁第1欄第13行〜14行)とあるのを、「分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有しSi,Ti,Al,Bから選ばれる1種の金属元素を含む有機金属化合物」と訂正する。 (2)訂正事項b:発明の詳細な説明の段落【0005】に「有機金属化合物」(本件特許公報第2頁第3欄第35行〜36行及び本件特許公報第2頁第3欄第41行)とあるのを、「分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有しSi,Ti,Al,Bから選ばれる1種の金属元素を含む有機金属化合物」と訂正する。 (3)訂正事項c:特許請求の範囲の請求項2に「Si,Ti,Al,B,Zr,W,Taから選ばれる」(本件特許公報第1頁第1欄第8行〜9行)とあるのを、「Si,Bから選ばれる」と訂正する。 (4)訂正事項d:特許請求の範囲の請求項3に「混合した溶液または該混合溶液をアルコールなどの有機溶媒に溶かして」(本件特許公報第1頁第1欄第14行〜15行)とあるのを、「混合しアルコールに溶かして」と訂正する。 (5)訂正事項e:発明の詳細な説明の段落【0005】に「混合した溶液または該混合溶液をアルコールなどの有機溶媒に溶かして」(本件特許公報第2頁第3欄第42行〜43行)とあるのを、「混合しアルコールに溶かして」と訂正する。 (6)訂正事項f:発明の詳細な説明の段落【0008】に「混合した溶液、または該混合溶液をエタノール等のアルコールに溶かし」(本件特許公報第2頁第4欄第20行〜21行)とあるのを、「混合しエタノール等のアルコールに溶かし」と訂正する。 |
審理終結日 | 2002-12-12 |
結審通知日 | 2002-12-17 |
審決日 | 2003-01-06 |
出願番号 | 特願平4-333653 |
審決分類 |
P
1
41・
-
Y
(C23C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 宮澤 尚之 |
特許庁審判長 |
沼沢 幸雄 |
特許庁審判官 |
後谷 陽一 大黒 浩之 石井 良夫 山田 充 |
登録日 | 2000-08-04 |
登録番号 | 特許第3094702号(P3094702) |
発明の名称 | 珪素酸化物系蒸着フィルムおよびその製造方法 |
代理人 | 岩崎 幸邦 |
代理人 | 三好 秀和 |
代理人 | 岩崎 幸邦 |
代理人 | 高久 浩一郎 |
代理人 | 三好 秀和 |
代理人 | 原 裕子 |
代理人 | 高久 浩一郎 |
代理人 | 原 裕子 |