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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04F
管理番号 1074005
審判番号 不服2001-18104  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-08-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-10 
確定日 2003-03-12 
事件の表示 特願2001-18245「床シート」拒絶査定に対する審判事件[平成13年8月24日出願公開、特開2001-227127]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成8年12月28日に出願した特願平8-357556号の一部を平成13年1月26日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1、2に係る発明は、平成14年11月25日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載され事項により特定されるものと認められ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は次のとおりのものである。
「階段に貼付ける床シートであって、裏面側に略90°曲折した合成樹脂製の基材シートの曲折部の表面に、基材シートと同系色で基材シートとの明度差が5水準以上である、基材シートの合成樹脂よりも耐摩耗性に優れた合成樹脂製の帯体を基材シートに埋設される形で一体に配設してなることを特徴とする床シート。」

2.刊行物
(1)当審における拒絶の理由で引用し、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭55-64198号(実開昭56-165828号)のマイクロフイルム(以下「刊行物1」という)には、「階段用ノンスリップシート」に関し、
「階段の踏段における踏面の少なくとも前縁所要範囲を覆うノンスリップシートの、主板部における前縁所要範囲部分に形成される複数条平行のスリップ防止用各突条間の凹条底に、蛍光塗料又は発光塗料の層を形成したことを特徴とする階段用ノンスリップシート」(実用新案登録請求の範囲)、
「この考案は、夜間消灯状態でも階段の踏段特に前縁部(鼻づら部)が識別でき、且つその機能を長期にわたり維持できるノンスリップシートを提供しようとするものである。」(明細書1頁19行〜2頁2行)、
「ノンスリップシートBは踏段部Aの踏面1に対応する主板部2の前縁に、踏段部のけこみ3側にわたる係止縁4が直角に屈曲形成されている。」(同2頁7〜9行)と記載されている。
これらの記載及び図面の記載からみて、刊行物1には、「階段に取付けらけるノンスリップシートであって、裏面側に略90°曲折したシートの前縁所要範囲の表面に、蛍光塗料又は発光塗料の層を形成したノンスリップシート。」の発明が記載されていると認められる。
(2)同じく、実願平5-71559号(実開平7-34132号)のCD-ROM(以下「刊行物2」という)には、「歩道橋用ゴムタイル」に関し、
「歩道橋の階段に貼設されるゴム製タイルであって、該ゴムタイルは、前記階段の踏面上に貼着される踏板部と、階段の段鼻部に貼着される段鼻板部と、階段の蹴込面に貼着される蹴込板部とが連続状に一体形成されているとともに、前記段鼻板部の表面には他の部分と色彩の異なるカラー板が貼設一体化されていることを特徴とする歩道橋用ゴムタイル。」(実用新案登録請求の範囲)、
「段鼻板部の表面には色彩の異なるカラー板が一体化されているため、このカラー板が他の部分とコントラストを生じ、足を掛ける位置が認識し易くなり、階段の安全性が向上し」(段落【0004】)、
「段鼻板部3は踏板部2よりも薄肉状に形成されて折り曲げ可能なものとなっており、さらに、これに連続する蹴込板部4は前記踏板部2と同等な肉厚の平板状に形成されている。また、前記段鼻板部3の表面にはカラー板6が貼着一体化されており」(段落【0007】〜【0008】)と記載され、第2図には、カラー板は薄肉状の段鼻板部に一体化され、ゴムタイルに埋込まれた状態となることが示されている。
(3)同じく、実願平5-202192号(実開平7-54462号)のCD-ROM(以下「刊行物3」という)には、「役物タイル」に関し、
「一対の平板状タイル部と、前記一対の平板状タイル部を角度をもって一体に結合する角部と、前記角部の表面及び前記各平板状タイル部の角部に近接する表面のうちのいずれか少なくとも一つの表面に形成された角部識別用の着色模様部とを具備することを特徴とする役物タイル」(請求項1)、
「本発明は、階段、道路等の段違い部分、・・・に使用する」(段落【0001】)、
「本実施例の役物タイル1は、・・・平板状タイル部2a,2bには角部識別用の着色模様部4がそれぞれ形成されている。・・・これらの平板状タイル部2a,2b及び角部3の表面は全体が均一に着色されており、白色地に淡黒色の着色粉粒体が斑点状に混在する淡い灰白色の色調の斑点模様とされている。これに対して、角部識別用の着色模様部4は、同色の斑点模様ではあるが、白色地に淡黒色の着色粉粒体がより多く混在するやや暗い色調の斑点模様とされ、この明度の違いによって識別されるようになっている。」(段落【0065】、図8参照)、
「角部またはそれに近接した表面に角部識別用の着色模様部を備えるので、・・・着色模様部によって歩行者の注意が喚起され、階段等の歩行時に誤って角部に突き当たり、つまずくなどの危険性を回避することができ、もって歩行時の安全性を向上することができる。」(段落【0100】)と記載されている。
(4)同じく、特開平8-209880号公報(以下「刊行物4」という)には、「シート基材の表面の所定位置に線状に耐磨耗性合成樹脂層を形成したことを特徴とする耐磨耗性化粧シート。」(請求項1)、
「請求項1記載の耐磨耗性化粧シートは、シート基材の表面の所定位置に線状に耐磨耗性合成樹脂層を形成して構成されている。ここで所定位置とは、耐磨耗性を必要とする個所(例えば、階段のコーナー部に貼着する部分)をいい、線状には1又は2以上の細い線が並ぶ場合の他、1又は2以上の太い帯状の線が並ぶ場合も含む。」(段落【0004】)、
「耐磨耗性化粧シート10は図3に示すように、階段の踏板15に貼着する場合には、階段の踏板と横幅が同じで縦幅がやや長い長いものを使用し、踏板上面と、踏板前部側面を包み込むように貼着し、耐磨耗性合成樹脂層12の部分を踏板15のコーナー部にかかるように位置させて貼着する。これにより、踏板の前部の一番摩擦の激しい個所にのみ耐磨耗性を付与でき、しかも線状に形成された耐磨耗性合成樹脂層12が階段の全幅にわたっているので無駄なく踏板に耐磨耗性を付与することができる。」(段落【0008】、図3参照)
と記載されている。

3.対比・判断
本願発明と刊行物1記載の発明を比較すると、刊行物1記載の発明の「ノンスリップシート」は、本願発明の「床シート」に相当し、シートの材質は具体的に記載されていないが、このようなシートが合成樹脂で形成されることは周知であり、また、刊行物1記載の発明の「シートの前縁所要範囲」は、本願発明の「曲折部」に相当し、刊行物1記載の発明の「蛍光塗料又は発光塗料の層」及び、本願発明の「明度差が5水準以上である合成樹脂製の帯体」はいずれも、階段の曲折部を識別する手段である点で共通するから、両者は、
「階段に貼付ける床シートであって、裏面側に略90°曲折した合成樹脂製の基材シートの曲折部の表面に、曲折部を識別する手段を設けてなる床シート。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点:曲折部を識別する手段が、本願発明は、「基材シートの曲折部の表面に、基材シートと同系色で基材シートとの明度差が5水準以上である、基材シートの合成樹脂よりも耐摩耗性に優れた合成樹脂製の帯体を基材シートに埋設される形で一体に配設した」ものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、「基材シートの表面に蛍光塗料又は発光塗料層を設けた」ものである点。
上記相違点について検討すると、刊行物2には、階段の段鼻板部(本願発明の曲折部に相当する)を識別するために、階段に貼設されるゴムタイル(本願発明の基材シートに相当する)の表面に色彩の異なる帯状のカラー板をゴムタイルに埋込むように貼設一体化することが記載されており、また、刊行物3には、階段の角部(本願発明の曲折部に相当する)を識別するために、角部に近接する表面を、他の部分と同系色で異なる明度とすることが記載されており、刊行物1記載の発明において、階段の曲折部を識別するために、曲折部に、基材シートと同系色で明度の異なる帯体を一体に埋設することは、刊行物2、3に記載の発明に基いて当業者が容易になしうることであり、その際、基材シートと帯体の明度差を5水準以上とすることは、階段の色合いや、階段付近の明るさ等に応じ適宜決めうる程度のことである。
さらに、刊行物4には、階段の曲折部に設ける帯体を耐摩耗性に優れた合成樹脂製とすることが記載されており、曲折部に設ける識別用の帯体を、耐摩耗性に優れた合成樹脂製とすることも、刊行物4記載の発明に基いて当業者が容易になしうることである。
そして、全体として本願発明の作用効果は、上記刊行物1乃至4記載の発明から、当業者が容易に想到しうる程度のものであって格別顕著なものとは認められない。
したがって、本願発明は、刊行物1乃至4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-12-11 
結審通知日 2002-12-17 
審決日 2003-01-16 
出願番号 特願2001-18245(P2001-18245)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 山田 忠夫
特許庁審判官 新井 夕起子
山口 由木
発明の名称 床シート  
代理人 林 清明  
代理人 森 治  

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