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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1074065 |
審判番号 | 不服2001-20644 |
総通号数 | 41 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-09-07 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-11-19 |
確定日 | 2003-03-18 |
事件の表示 | 平成4年特許願第216474号「押圧装置」拒絶査定に対する審判事件[平成5年9月7日出願公開、特開平5-229123]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年7月22日(パリ条約による優先権主張1991年7月30日、アメリカ合衆国)の出願であって、その請求項1に係る発明は、審判請求書の補正時に補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、「本願発明」という)。 「押圧対象に接触する押圧平面を有する押圧部と、前記押圧部をジンバル構造で支持する支持部と、前記支持部を押圧する押圧部を設けた押圧装置。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である昭和61年9月17日に頒布された特開昭61-209165号公報(以下、「引用例」という)には、次の事項が記載されている(記載中、「・・・」は中略を示す)。 a.「インクジエツトヘツドの製造方法」(発明の名称) b.「本発明は・・・電気熱変換体より生じる熱エネルギーを利用したサーマル式のインクジエツトヘツドに関する」(1頁右下欄8〜14行)、 c.「第1図は本発明によるインクジエツトヘツドを示す組立分解図であり、図において1は・・・基板、2は・・・発熱抵抗体、3は・・・選択電極、4は共通電極である。5は・・・絶縁保護層、6は・・・隔壁、7は・・・インク供給孔である。10はポリイミド等の耐熱樹脂を基材とし、その表面層に所定の銅箔パターンが形成されたFPCであり、・・・絶縁保護層5と同一形状であつて記録媒体室となる角穴10aが形成されている。20は・・・半田メツキを施されたオリフイス板であり、・・・複数個のオリフイス21を有し、前記基板1と外形を等しくした長方形部20aと・・・小長方形部20cにより構成されるものである。」(2頁左下欄7行〜右下欄11行)、 d.「第2図(a),(b)は、FPCのパターン図であり、第2図(a)はその裏面(基板接合側)・・・第2図(b)は、表面(オリフイス板接合側)を示す平面図である。第2図(a)において11は選択電極パターン、12は共通電極パターンであり、該2つのパターン11,12は基板1に設けられた選択電極3及び共通電極4と対応している。又、FPC10は銅箔パターン上に半田メツキ処理された第1エリア10bと、銅箔パターン上にポリイミド等の保護層を施した第2エリア10cとから形成されている。第2図(b)に示される13は、オリフイス板20と接合されるエリアであり、第1、第2のエリア10b,10cの範囲は第2図(a)と同様の処理が施されている。」(2頁右下欄15行〜3頁左上欄9行)、 e.「第3図は・・・接合工程を示す・・・斜視図である。図において30は基板1を保持するヘツドホルダーであり、・・・40はFPC10を保持するFPCホルダーであり、・・・50はオリフイス板20を小長方形部20cで保持するオリフイス板ホルダーであり、・・・60は基板1とFPC10、基板1とオリフイス板20を位置合わせするための顕微鏡、70は基板1とFPC10とオリフイス板20とを半田溶着するための溶着治具、80は・・・カツターである。以上の構成から成る接合装置を用いたときの接合方法について説明する。基板1を基板ホルダー30にセツトした後、FPC10をFPCホルダー40にセツトする。・・・その後に顕微鏡60を用い・・・精密アライメントを行なう。次に、オリフイス板20をオリフイス板ホルダー50にセツトし、・・・顕微鏡60を用い・・・精密アライメントを行なつて、一連の位置合わせ作業を完了する。次に基板ホルダー30をY2方向へ移動して30aの位置にセットする。・・・ここで、中央部が中空となった溶着治具70をZ方向に、オリフイス板20を加圧するまで移動させる。・・・溶着治具70の表面温度は350〜400°C程度に加温されているため、溶着による接合工程は約5秒程度で完了する。」(3頁左上欄10行〜左下欄15行)、 f.「第4図は基板1と、FPC10と、オリフイス板20との接合状態を示す断面図であり、図において溶着治具70の加圧により、基板1と、FPC10とオリフイス板20との各界面即ち接合部100で半田溶着がおこり各部品が接合されるものである。」(3頁右下欄4〜9行)、 等が図面第1乃至4図と共に記載され、特に第3,4図には、溶着治具70の加圧作用面がオリフイス板20の長方形部20aの表面周囲に接触する長方形枠状の平面である様子が記載されている。 これらの記載を対比のためにまとめると、「溶着治具70をZ方向に、オリフイス板20を加圧するまで移動させる」ための機構が存することは明らかであるから、引用例には次の発明が記載されている。 「基板1とFPC10とオリフイス板20とを順に重ねて位置合わせしたものにおける、最上部のオリフイス板20の長方形部20aの表面周囲に接触する長方形枠状の平面からなる加圧作用面を有する溶着治具70と、溶着治具70をオリフイス板20を加圧するまで移動させる機構を設けた、基板1とFPC10とオリフイス板20とを半田溶着接合するために加温された溶着治具70により加圧する装置。」(以下、「引用発明」という)。 3.対比 本願発明と引用発明とを対比するに、引用発明における溶着治具70により加圧することは、重ねられた基板1とFPC10とオリフイス板20とをオリフイス板20側から加圧して結果的に押圧することであるから、引用発明の「基板1とFPC10とオリフイス板20とを順に重ねて位置合わせしたもの」及び「長方形枠状の平面からなる加圧作用面を有する溶着治具70」は、それぞれ、本願発明の「押圧対象」及び「押圧平面を有する押圧部」に対応し、引用発明の「基板1とFPC10とオリフイス板20とを半田溶着接合するために加温された溶着治具70により加圧する装置」は「押圧装置」ということができる。 また、引用発明の「溶着治具70をオリフイス板20を加圧するまで移動させる機構」は、溶着治具70を支持してオリフイス板20に向けて押圧する押圧部であるから、「前記押圧部を支持して押圧対象に向けて押圧する押圧部」といえる点で、本願発明の「前記押圧部をジンバル構造で支持する支持部と、前記支持部を押圧する押圧部」と共通する。 これらのことから、本願発明と引用発明とは、「押圧対象に接触する押圧平面を有する押圧部と、前記押圧部を支持して押圧対象に向けて押圧する押圧部を設けた押圧装置。」である点において一致し、次の点で相違する。 <相違点>「前記押圧部を支持して押圧対象に向けて押圧する押圧部」について、本願発明が、「前記押圧部をジンバル構造で支持する支持部と、前記支持部を押圧する押圧部」とにより構成しているのに対して、引用発明では、「前記押圧部」と「押圧する押圧部」との間の構成が不明である点。 4.当審の判断 上記相違点について検討するに、ジンバルは直交する二つの軸回りの回転構造に係る周知の工学用語であって、押圧面を有する押圧部をジンバル構造で支持し、その支持部を介して押圧することは、種々の技術分野で普通一般に採用されている周知技術である(例えば、実願昭63-62974号(実開平1-167041号)のマイクロフイルム、特開昭63-275169号公報、特開昭59-126241号公報(以下、それぞれ「周知例1」,「周知例2」,「周知例3」という)等参照)。 上記例示した周知例1乃至3について簡単に説明しておくならば、周知例1の第1図記載のものは、リード押さえ面2のある部分を頸部3〜6とスリット73〜76とからなるジンバル機構で支持し、ジンバル機構を介してリードフレーム9に向けて押圧するものであり、周知例2の第1図記載のものは、その表面がフィルタ5へ押圧される固体撮像素子1をジンバル機構3で支持し、ジンバル機構3を介してフィルタ5に向けて押圧するものであり、周知例3の第3図記載のものは、その探触面が配管10へ押圧される探触子19をリング104と軸105,106とからなるジンバル機構で支持し、ジンバル機構を介して配管10に向けて押圧するものであり、このようなものにおいて、ジンバル機構は押圧面を押圧対象の面に倣わせることができて一様均一に押圧するために採用されているものである。 引用発明は、実施例において、加温された溶着治具70の加圧により基板1とFPC10とオリフイス板20との各界面即ち接合部100(第2図に示す角穴10aを取囲むエリア13に対応する領域)で半田溶着をおこして各部品を接合するものであるが、接合領域全体に亘って半田溶着がむらなく行われることが望ましいことは当然のことであり、そのために溶着治具70の押圧平面をオリフイス板20の表面に倣わせて一様均一に押圧すべきことは当業者において容易に想起できることであるから、引用発明に上記周知技術を適用して本願発明の如くなすことは、当業者ならば必要に応じて適宜なし得たことである。 そして、本願発明の作用効果にも引用発明と上記周知技術から容易に予測できる以上の格別のものは認められない。 なお、本願発明の実施例としてインクジェットペンに関するものが示されているが、本願発明はインクジェットペンに係るものに特定すべき構成要件を備えておらず、さらにいえば、本願明細書は、前示のとおり、審判請求書の補正時に補正され、補正前の明細書においては、発明の名称も特許請求の範囲の全請求項の記載内容も、発明の名称が「インクジェットペン及びインクジェットペンの可撓回路取り付け方法」であり、例えば請求項1が「導電トレースを備えたプラスチックのストリップ部材をインクジェットペン本体のプラスチックからなる取り付け部へ取り付ける方法であって、圧力及び熱を加えながら前記ストリップ部材を前記取り付け部へかしめるステップを設けたことを特徴とする方法。」であったように、インクジェットペンに関するものであったところ、この補正により、特許請求の範囲の記載からインクジェットペンに係るものに特定する記載が除かれ、かつ、発明の名称も単に「押圧装置」に補正されたものであり、その補正の趣旨からみても、本願発明の作用効果はインクジェットペンに係るものに特定されるものではない。 請求人は、審判請求書において、引用例には押圧を行うための具体的な手法や装置が示されていないから本願発明とは何の関係もないものである旨主張しているが、上述したように、引用例には押圧平面を有する押圧部(即ち溶着治具70)を移動させて押圧対象に押圧することが記載されており、押圧部を移動させて押圧を行うための機構が存することは明らかであるから、引用例が本願発明とは何の関係もないものであるとするこの主張は採用できない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-10-16 |
結審通知日 | 2002-10-21 |
審決日 | 2002-11-01 |
出願番号 | 特願平4-216474 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤本 義仁 |
特許庁審判長 |
小沢 和英 |
特許庁審判官 |
渡辺 努 番場 得造 |
発明の名称 | 押圧装置 |
代理人 | 上野 英夫 |