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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B02C
管理番号 1074143
審判番号 不服2002-9292  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-06-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-23 
確定日 2003-03-20 
事件の表示 平成5年特許願第301592号「シュレッダ」の拒絶の査定に対する審判事件[平成7年6月20日出願公開、特開平7-155629号]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
(1)本願は、平成5年12月1日の特許出願であって、平成13年12月5日に拒絶の理由の通知がなされ、その指定期間内である平成14年1月30日に願書に添付した明細書を補正すべく手続補正書が提出され、平成14年4月18日に拒絶をすべき旨の査定がなされた。
(2)その査定の謄本の送達があった日(発送日:平成14年4月23日)から30日以内である平成14年5月23日に、その査定を不服として審判の請求がなされた。
(3)そして、その審判の請求の日から30日以内である平成14年5月23日に、願書に添付した明細書を補正すべく手続補正書が提出された。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成14年1月30日付け及び平成14年5月23日付けの手続補正書により補正された願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】 上面に紙挿入用のスリットが開口された本体ケースと、このスリットの下方に互いに平行に配設された回転軸と、この回転軸を回転させるモータと、この回転軸にピッチをおいて設けられたカッタと、このカッタとカッタの間に配設されてこれらのカッタに裁断された紙片を下方へ案内するガイドプレートとを備えたシュレッダであって、
前記回転軸の周方向に、前記カッタにより裁断された紙片の巾よりも巾狭の溝を形成し、該溝との間にわずかな間隙を確保して前記回転軸を抱持するように前記ガイドプレートの内端縁を前記溝に嵌合させ(カッタ間に回転軸と交差しない方向で且つ平行に薄板を挿入するガイドプレートであって、エッジ近傍の薄板側面を回転軸に接近させたガイドプレートを除く)、
前記ガイドプレートのエッジからのガイド面をカッタ軸面に対して鈍角に設定したことを特徴とするシュレッダ。」

3.拒絶の査定の理由の概要
拒絶の査定の理由の概要は、平成13年12月5日付けの拒絶理由通知書及び平成14年4月18日付けの拒絶査定書の記載からみて、次のとおりである。
「本願発明は、本願の出願より前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶の査定をすべきものである。
引用例1:実願昭63-138110号(実開平2-61442号)のマイクロフィルム
周知例1:特開平5-220418号公報
周知例2:実願昭58-158015号(実開昭60-67145号)のマイクロフィルム 」

4.引用例に記載された発明及び周知発明
(1)引用例1
引用例1には、以下のような事項が記載されている。
イ.「この考案は文書を細断するシュレッダーに関する。」(明細書2頁6〜7行目)
ロ.「細断された帯状の細断片は、時として、組ロールの回転につれて回転し、スペーサ外周に巻付くという問題が発生する。
このスペーサへの細断片の巻付きを防止するため、組ロールに相対して巻込防止板を設け、更にスペーサ外周部へ付着した細断片を掻取る掻取板を設けたシュレッダーが提案されている…しかし、このような構成…においては、巻込防止板、掻取板がスペーサに接触するため、作動時に異音が発生するおそれが…あった。
この考案…の目的は、作動時の異音発生を防止するとともに、簡潔な構成の巻込防止板を備えたシュレッダーを提供しようとするものである。」(同3頁17行目〜4頁16行目)
ハ.「巻付防止板は、その櫛歯部先端部がスペーサの環状溝内にあって、細断された細断片を組ロールの回転とともに、すくい上げるようにしてスペーサ外周から引離し、細断片のスペーサへの付着,巻付きの防止が行われる。」(6頁6〜10行目)
ニ.「図において1はシュレッダー本体であり、シュレッダー本体1の上部には、第1,第2の組ロール10,20が水平方向に相対して配設されており,第1,第2の組ロール10,20には、それぞれ巻付防止板35が相対して配設されている。
シュレッダー本体1は、上面に文書の投入口2を有し、…下部には…屑箱5が配設されている。
第1の組ロール10は、…第1の回転軸11に多数のロール12が、外周中央部に所定幅の環状溝14を有するスペーサ13を介して交互に固定されており、…。
第2の組ロール20は、第2の回転軸21に多数のロール12がスペーサ13を介して交互に固定されて、第1の組ロール10のロール12群に相噛合うように形成されている。…
そして、第1,第2の回転軸11,21は、…所定の間隔をおいて相対して…取付けられている。
更に、第1の組ロール10…は、モータ30…と…連結されている。
巻付防止板35は、…櫛歯状に延びた多数の櫛歯部36を備えて形成されている。櫛歯部36は、スペーサ13の環状溝14の幅よりも狭く、また、その深さよりも薄い寸法が付与されて形成されている。そして、巻付防止板35が…固定されたとき、スペーサ13の外周面と櫛歯部36表面…とが略同一面となるとともに、櫛歯部36の先端部が、環状溝14と間隔をおいて環状溝14内に収容されるように配設されている。」(同6頁14行目〜9頁1行目)
ホ.「第1,第2の組ロール10,20の噛合い部に挿入された文書60は、…噛合い部に食い込まれる。これにより、文書60を送り方向に引き裂いて、帯状の切り口が、不定形な破断線状を呈する細断片60aとして下方へ排出する。」(同9頁15行目〜10頁3行目)
これらの記載事項からみて、引用例1には、次のとおりの発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「【引用発明1】 上面に文書60の投入口2が開口されたシュレッダー本体1と、この投入口2の下方に所定の間隔をおいて相対して取付けられた第1,第2の回転軸11,21と、この第1,第2の回転軸11,21を回転させるモータ30と、この第1,第2の回転軸11,21にスペーサ13を介して固定されたロール12と、このロール12とロール12の間に配設されてこれらのロール12に引き裂かれた細断片60をすくい上げるようにして引離してスペーサ13への巻付きを防止する巻付防止板35の櫛歯部36とを備えたシュレッダーであって、
前記第1,第2の回転軸11,21に設けられたスペーサ13の周方向に、前記環状溝14を形成し、該環状溝14と間隔をおいて環状溝14内に収容されるように前記巻付防止板35の櫛歯部36の先端部を環状溝14内に収容されるように配設させたシュレッダー。」
(2)周知発明
本件の出願日より10年以上も前に頒布された刊行物である実願昭57-53094号(実開昭58-156535号)のマイクロフィルム(以下、「周知刊行物1」という。)には、以下のような事項が記載されている。
イ.「本考案は廃棄書類を細断するシュレッダーのカッターローラに関するものである。」(明細書2頁1〜2行目)
ロ.「図において、10,11は平行に設けた回転軸である。12,14,16,18,……は回転軸10に取付けたブロックカッターであり、13,15,17,19,……は回転軸11に取付けたブロックカッターである。…
20,21はブロックカッター12,13の軸筒であって、回転軸10,11に取付けるように形成してある。22,23は円板状刃体であって、軸筒20,21の外周面に該軸筒の長手方向において該円板状刃体22,23の厚さと同じ間隔に複数個突設してある。」(同4頁4行目〜5頁1行目)
ハ.「30,31はそれぞれブロックカッター12,14,16……の円板状刃体22,……の間隔内とブロックカッター13,15,17,……の円板状刃体23,……の間隔内とに側方から挿入した細断屑分離板である。」(同6頁9〜13行目)
ニ.「本考案のシュレッダーのカッターローラは、…シュレッダー駆動モーター…によって一方の回転軸を回転するように…使用するものものである。」(同6頁17行目〜7頁3行目)
ホ.「紙Pが下方向に送り出される過程において…短冊状に細断されるのである。ブロックカッターに巻付く細断屑は細断屑分離板30,31によって分離される。」(同7頁16〜20行目)
これらの記載事項からみて、上記周知刊行物1には、次のとおりの事項から特定される発明(以下、「周知発明」という。)が記載されていると認められる。
「【周知発明】 平行に設けた回転軸10,11と、この回転軸10,11を回転させるシュレッダー駆動モーターと、この回転軸10,11と一体回転するように取付けられた軸筒20,21にその刃の厚さと同じ間隔に一体に設けられた円板状刃体22,23と、この円板状刃体22,23と円板状刃体22,23の間に配設されてこれらの円板状刃体22,23に切断された紙Pの細断屑をブロックカッターへ巻付くのを分離する細断屑分離板30,31とを備えたシュレッダーであって、
前記細断屑分離板30,31は、その内端縁が軸筒20,21の周方向にわたって接近させて配置されているシュレッダー。」

5.本願発明と周知発明及び引用発明1の対比
(1)本願発明と周知発明の対比
本願発明と周知発明を対比すると、周知発明の「平行に設けた」は、その技術的意義において、本願発明の「互いに平行に配設された」に相当し、以下同様に、「回転軸10,11」は「回転軸」に、「シュレッダー駆動モーター」は「モータ」に、「その刃の厚さと同じ間隔に」は「ピッチをおいて」に、「切断された紙Pの細断屑」は「裁断された紙片」に、「シュレッダー」は「シュレッダ」に、それぞれ相当すると認められる。
また、本願発明の「回転軸に設けられたカッタ」と周知発明の「回転軸10,11と一体回転するように取付けられた軸筒20,21に設けられた円板状刃体22,23」は、直接的か間接的かの差異があるものの、「回転軸に結果的に設けられたカッタ」の限度で一致し、本願発明の「紙片を下方へ案内するガイドプレート」は、「回転する軸から紙片を剥離しながら案内する」機能を有し、周知発明の「切断された紙Pの細断屑をブロックカッターへ巻付くのを分離する細断屑分離板30,31」は、「回転するブロックカッターの軸筒20,21から紙Pの細断屑を剥離する」機能を有するものであるから、両者は、「紙片を剥離する部材」の限度で一致していると認められる。
してみると、本願発明と周知発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
互いに平行に配設された回転軸と、この回転軸を回転させるモータと、この回転軸にピッチをおいて結果的に設けられたカッタと、このカッタとカッタの間に配設されてこれらのカッタに裁断された紙片を剥離する部材とを備えたシュレッダ。
<相違点>
チ.装置のケース及びそれと機械部の態様について、本願発明では、「上面に紙挿入用のスリットが開口された本体ケースと、このスリットの下方に回転軸を配設」となっているのに対し、周知発明では、そのような構成が特定されていない点(以下、「相違点チ」という。)。
リ.カッタと回転軸の態様について、本願発明では、「回転軸に設けられたカッタ」となっているのに対し、周知発明では、「回転軸10,11(回転軸)と一体回転するように取付けられた軸筒20,21に一体に設けられた円板状刃体22,23(カッタ)」となっている点(以下、「相違点リ」という。)。
ヌ.紙片を剥離する部材の態様について、本願発明では、「紙片を下方へ案内するガイドプレート」であって、「前記ガイドプレートのエッジからのガイド面をカッタ軸面に対して鈍角に設定した」となっているのに対し、周知発明では、「切断された紙Pの細断屑(紙片)をブロックカッターへ巻付くのを分離する細断屑分離板30,31」となっている点(以下、「相違点ヌ」という。)。
ル.紙片を剥離する部材と回転周面との関係について、本願発明では、「前記回転軸の周方向に、前記カッタにより裁断された紙片の巾よりも巾狭の溝を形成し、該溝との間にわずかな間隙を確保して前記回転軸を抱持するように前記ガイドプレートの内端縁を前記溝に嵌合させ(カッタ間に回転軸と交差しない方向で且つ平行に薄板を挿入するガイドプレートであって、エッジ近傍の薄板側面を回転軸に接近させたガイドプレートを除く)」となっているのに対し、周知発明では、「前記細断屑分離板30,31は、その内端縁が軸筒20,21の周方向にわたって接近させて配置されている」となっている点(以下、「相違点ル」という。)。
(2)本願発明と引用発明1の対比
本願発明と引用発明1を対比すると、引用発明1の「文書60の投入口2」は、その技術的意義において、本願発明の「紙挿入用のスリット」に相当し、以下同様に、「シュレッダー本体1」は「本体ケース」に、「所定の間隔をおいて相対して取付けられた」は「互いに平行に配設された」に、「第1,第2の回転軸11,21」は「回転軸」に、「モータ30」は「モータ」に、「スペーサ13を介して」は「ピッチをおいて」に、「シュレッダー」は「シュレッダ」に、それぞれ相当すると認められる。
また、本願発明の「回転軸に設けられた」と引用発明1の「第1,第2の回転軸11,12に固定された」は、「回転軸に備えられた」の限度で一致し、本願発明の「カッタ」は、「紙を裁断巾Lで裁断する」機能を有し、引用発明1の「ロール12」は、「文書を送り方向に引き裂いて、不定形な破断線状を呈する帯状の細断片を形成する」機能を有するものであるから、両者は、「紙分断刃」の限度で一致し、本願発明の「裁断された紙片」と引用発明1の「引き裂かれた細断片60」は、「分断された紙片」の限度で一致し、本願発明の「紙片を下方へ案内するガイドプレート」は、「回転する軸から紙片を剥離しながら案内する」機能を有し、引用発明1の「細断片60をすくい上げるようにして引離してスペーサ13への巻付きを防止する巻付防止板35の櫛歯部36」は、「回転するスペーサ13から細断片60を剥離する」機能を有するものであるから、両者は、「紙片を剥離する部材」の限度で一致し、本願発明の「前記回転軸の周方向に、前記カッタにより裁断された紙片の巾よりも巾狭の溝を形成し、該溝との間にわずかな間隙を確保して前記回転軸を抱持するようにガイドプレートの内端縁を前記溝に嵌合させ(カッタ間に回転軸と交差しない方向で且つ平行に薄板を挿入するガイドプレートであって、エッジ近傍の薄板側面を回転軸に接近させたガイドプレートを除く)」と引用発明1の「前記第1,第2の回転軸11,21に設けられたスペーサ13の周方向に、環状溝14を形成し、該環状溝14と間隔をおいて巻付防止板35の櫛歯部36の先端部を前記環状溝14内に収容されるように配設させ」は、「紙分断刃と一体的に回転する円柱状部材の周方向に、紙分断刃と紙分断刃の間隔よりも巾狭の溝を形成し、該溝との間に間隙を確保して紙片を剥離する部材の先端縁部分を前記溝内に収容させ」の限度で一致していると認められる。
してみると、本願発明と引用発明1の一致点は、次のとおりである。
<一致点>
上面に紙挿入用のスリットが開口された本体ケースと、このスリットの下方に互いに平行に配設された回転軸と、この回転軸を回転させるモータと、この回転軸に備えられた紙分断刃と、この紙分断刃と紙分断刃の間に配設されてこれらの紙分断刃に分断された紙片を剥離する部材とを備えたシュレッダであって、
前記紙分断刃と一体的に回転する円柱状部材の周方向に、紙分断刃と紙分断刃の間隔よりも巾狭の溝を形成し、該溝との間に間隙を確保して紙片を剥離する部材の先端縁部分を前記溝内に収容させたシュレッダ。

6.本願発明と周知発明の対比における相違点の検討及び判断
(1)相違点チについて
上記「4.(1)引用例1」における【引用発明1】及び上記「5.(2)本願発明と引用発明1の対比」における<一致点>からみて、引用発明1は、「上面に紙挿入用のスリットが開口された本体ケースと、このスリットの下方に回転軸を配設する」技術思想を含むことは、明らかである。
そして、周知刊行物1の第1図に紙Pが上方から供給されていることが記載されていることからみて、周知発明に上記本体ケース等に係る技術思想を適用することを妨げる特段の事情もない。
してみると、相違点チに係る本願発明の構成要件は、周知発明に引用発明1の上記本体ケース等に係る技術思想を適用することにより、当業者にとって容易に想到することができたものというべきである。
(2)相違点リについて
複雑な形状の部材を一体に形成して構成するか、複数の部分に分けて形成して一体的に構成するかは、製造の容易性、組立作業の容易性や修理作業の容易性等を考慮し、適宜選択して実施されていることにすぎない。
そして、周知発明において、軸筒20,21と円板状刃体22,23を分けて形成して一体的に構成することも可能であると解されるにもかかわらず、一体に形成して構成していることも、製造の容易性、組立作業の容易性や修理作業の容易性等を考慮して、実施された例と解される。
してみると、相違点リに係る本願発明の構成要件は、周知発明の実施に際し、当業者にとって必要に応じ適宜採用することができた設計的事項であるというべきである。
(3)相違点ヌについて
本願に係る明細書の記載「図7は従来のシュレッダのカッタ付近の断面図、図8は同部分拡大断面図である。…またカッタ2とカッタ2の間には、カッタ2で裁断された紙片を下方へ案内するガイドプレート3が配設されている。ガイドプレート3はその内端縁が回転軸1を抱持するように回転軸1に嵌合されており、そのエッジ4を回転軸1の周面に極力近接させることにより、紙片は回転軸1から剥離され、矢印A方向へ落下するようになっている。」(段落【0003】)、本願に係る図面の図7及び図8の記載と上記周知刊行物1の第1図の記載を対比してみると、周知刊行物1の第1図の記載の「細断屑分離板30,31」は、下方に拡がる傾斜面を有することから、紙片を下方へ案内する機能を有するものと解することができる。
また、回転体から物を剥離して排除する場合、スクレーパー等にみられるようにナイフエッジ部等の内端縁に連なる鋭角状の傾斜面を設けることが周知の技術的事項にすぎない。
さらに、紙片を下方へ案内する機能を有する傾斜面において、該傾斜面と回転体の接線とのなす角度を大きくすれば、流れが円滑にならないことも自明のことにすぎない。
してみると、相違点ヌに係る本願発明の構成要件は、周知発明の実施に際し、当業者にとって必要に応じ適宜採用することができた設計的事項であるというべきである。
(4)相違点ルについて
本願発明の構成要件「前記回転軸の周方向に、前記カッタにより裁断された紙片の巾よりも巾狭の溝を形成し、該溝との間にわずかな間隙を確保して前記回転軸を抱持するように前記ガイドプレートの内端縁を前記溝に嵌合させ(カッタ間に回転軸と交差しない方向で且つ平行に薄板を挿入するガイドプレートであって、エッジ近傍の薄板側面を回転軸に接近させたガイドプレートを除く)」の技術的意義は、本願に係る明細書の記載「紙は裁断巾L(図5)で裁断されるが、溝33はこの裁断巾Lよりも巾狭であるので、裁断された紙片が溝33の内部に入り込むことはなく、したがって回転軸14とガイドプレート16の間に紙くずが入り込むことはない。また図4に示すように、ガイドプレート16のエッジ34は溝33内にあるので、この周面上を送られてきた紙片は必然的にガイドプレート16のガイド面35に沿って落下することとなり、エッジ34が紙片の流れを阻害することもない。」(段落【0012】)及び「上記構成によれば、ガイドプレートの内端縁が回転軸を抱持して溝に嵌合しているため、カッタで裁断されてガイドプレートに沿って下降する紙片が回転軸とガイドプレートの間に入り込むのを解消できる。ガイド面をカッタ軸面に対して鈍角に設定したため、裁断された紙片のカッタ軸面からの剥離効果を大きくすることができる。」(段落【0007】)からみて、「ガイドプレート16のエッジ34を、裁断された紙片が巻き付く恐れのある周面、すなわち、回転軸14の周面より軸心側に位置させることにより、該ガイドプレート16のエッジ34を裁断された紙片より確実に軸心側に位置させて、該裁断された紙片を回転軸14の周面から確実に剥離して下方に落下させること」と解される。
これに対し、周知発明においては、細断屑分離板30,31の内端縁を、裁断された紙片が巻き付く恐れのある周面、すなわち、軸筒20,21の周面に接近させても、軸筒20,21の周面より軸心側に位置させることができないから、該細断屑分離板30,31の内端縁を細断屑より確実に軸心側に位置させることごできないので、該細断屑を軸筒20,21の周面から確実に剥離することができないと解される。
しかしながら、引用発明1の構成要件「前記第1,第2の回転軸11,12に設けられたスペーサ13の周方向に、環状溝14を形成し、該環状溝14と間隔をおいて巻付防止板35の櫛歯部36の先端部を前記環状溝14内に収容されるように配設させ」は、本願発明との対比において、「前記紙分断刃と一体的に回転する円柱状部材の周方向に、紙分断刃と紙分断刃の間隔よりも巾狭の溝を形成し、該溝との間に間隙を確保して紙片を剥離する部材の先端縁部分を前記溝内に収容させ」の限度で一致していることは、前示のとおりであり、引用発明1は、引用例1の上記記載事項ロ〜ニ及び技術常識からみて、該構成要件の技術的意義は、「巻付防止板35の櫛歯部36の先端部を、細断された細断片が巻き付く恐れのある周面、すなわち、スペーサ13の外周より軸心側に位置させることにより、該巻付防止板35の櫛歯部36の先端部を細断された細断片より確実に軸心側に位置させて、該細断された細断片をスペーサ13の外周から確実に剥離して、剥離した細断片を下部の屑箱5の方向に落下させること」と解され、「溝との間にわずかな間隙を確保して回転軸を抱持するようにガイドプレートの内端縁を前記溝に嵌合させること」を除いて、相違点ルに係る本願発明の構成要件の上記技術的意義と実質的変わるところがない。
また、本願発明と引用発明1の対比における一致点からみて、引用発明1は、「シュレッダにおいて、紙分断刃と一体的に回転する円柱状部材の周方向に、紙分断刃と紙分断刃の間隔よりも巾狭の溝を形成し、該溝との間に間隙を確保して紙片を剥離する部材の先端縁部分を前記溝内に収容させること」といった、紙片を回転する円柱状部材の周方向から剥離することに関する技術思想を含むことは、明らかである。
そうすると、周知発明において、細断屑を軸筒20,21の周面から確実に剥離することができるようにするために、引用発明1の上記技術思想を適用することは、当業者にとって容易に想到することができたものということができる。
そして、周知発明の構成要件「細断屑分離板30,31は、その内端縁が軸筒20,21の周方向にわたって接近させて配置されている」は、本願発明の構成要件「回転軸を抱持するようにガイドプレートの内端縁」を設けることに相当すると解されるから、周知発明に引用発明1の上記技術思想を適用して、ガイドプレートのエッジを軸筒20,21に設けた溝内に位置させた際、ガイドプレートのエッジ以外の内端縁を該溝内に位置させないことは、不自然である。
また、ガイドプレートのエッジ及びそれ以外の内端縁を溝内に位置させれば、ガイドプレートのエッジ及びそれ以外の内端縁と軸筒20,21の周面の間に細断屑が入り込み難くことも、当業者にとって容易に予測できることにすぎない。
してみると、相違点ルに係る本願発明の構成要件は、周知発明に引用発明1の紙片を回転する円柱状部材の周方向から剥離することに関する技術思想を適用することにより、当業者にとって容易に想到することができたものというべきである。

さらに、本願発明が奏する効果は、周知発明及び引用発明1に基づいて当業者が予測できる範囲を超えるものではない。
したがって、本願発明は、周知発明及び引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

7.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶の査定をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-01-20 
結審通知日 2003-01-21 
審決日 2003-02-03 
出願番号 特願平5-301592
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒石 孝志  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 松下 聡
清田 栄章
発明の名称 シュレッダ  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

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