• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1074187
審判番号 不服2000-20606  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-27 
確定日 2003-03-20 
事件の表示 平成 8年特許願第323041号「画像送信装置、逆写像装置、および媒体」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 6月19日出願公開、特開平10-164376]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年12月3日の出願であって、平成11年5月18日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面の記載によれば、特許請求の範囲には請求項1ないし請求項8が記載されているところ、請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明1」という。)
「画像を入力するための画像入力手段と、該画像入力手段を通じて入力された画像を複数の画素に分解して画像データを生成する分解手段と、該分解手段によって生成された画像データを予め定められた手順に従って送信する送信制御手段と、を備えた画像送信装置において、
前記画像データの少なくとも一部に逆写像可能な写像を施して、当該画像送信装置の送信先である受信装置に出力させるための写像データ、を生成する写像手段
を備え、
前記送信制御手段が、該写像データを、圧縮し、変調して送信するもの
であることを特徴とする画像送信装置。」

2.引用刊行物記載の発明
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-65527号公報(平成8年3月8日発行。以下「刊行物1」という。)には、図面とともに次の各記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は文書伝送に係り、より具体的には、ファクシミリ伝送に係り、特に、伝送文書の機密保護及び配達証明に関する。」
「【0028】図1において、ヘッダーと、ユーザが受信者にのみ開示したい情報(例えば親展または秘密情報)とを含む文書101が、ファクシミリ装置102にセットされ、伝送のため読み取られる。ファクシミリ装置102は、文書101のデータを暗号化する、暗号化ブロック103のような暗号化機能を備えているかもしれない。・・・(中略)・・・ファクシミリ装置102の出力は、公衆電話回線または専用電話回線のような通信網に直接的または間接的に接続される。」
「【0034】図2において、まず第1の当事者(例えば発信者)が文書をファクシミリ装置102にセットし、そのキーパッドで秘密キーを入力する(処理ブロック201)。この秘密キーは、受信者が知っており、受信者に該ファクスのデコードを可能にする。ファクシミリ装置102は文書の情報を読み取って一連のデジタルデータ値にし、暗号化ブロック103を使用して、そのデジタルデータ値を暗号化する。そして、暗号化された情報は通信網(例えば電話網)によってファクシミリ装置106へ伝送される(処理ブロック202)。宛先地のファクシミリ装置106によって、受信された暗号化情報が印刷されて暗号化文書108が得られる(処理ブロック203)。」
「【0037】一実施例では、ヘッダーは暗号化されず操作者が判読できる。ヘッダー情報301及び暗号化情報303を持つそのようなファクシミリ再生文書の一例が図3に示されている。」
「【0084】この処理装置は、選択されたハードコピーの文書を当該ファクシミリ装置に読み込むための、バス701に接続されたスキャナ706も有する。このスキャナ706は、普通の画像はもとより、画像のデジタル表現(すなわちデジタルペーパー)を読み取ることができる。・・・(後略)・・・」
「【0085】・・・(前略)・・・スキャナ706は、スキャンした画像の各ピクチャーエレメント、すなわち画素をデジタル値に変換する。他の実施例では、スキャナ706はビットマップスキャナで、各ハードコピー入力文書の画像を、ある所定の空間分解能でスキャンしてデジタル値を出力する。これらのデジタル値が集まって、当業者に周知のビットマップと呼ばれるデータ構造を生成する。」
「【0098】データソース801がデジタル形式であり、かつ任意の必要な圧縮が行なわれると(処理ブロック802)、データは暗号化される(処理ブロック803)。・・・(後略)・・・」
「【0114】
所要のエラー訂正後、データが復号される(処理ブロック904)。この復号処理(処理ブロック904)は、エンコーディングプロセス(図8)に行なわれた暗号化の逆処理である。一実施例では、復号プロセスは、暗号化で用いられたものと同じキーを使用する必要がある。同一のキーを使うことによって、オリジナルデータが再生される。」

これらの記載事項によると、刊行物1には、「文書を読み込むためのスキャナを有し、このスキャナにより、文書の画像をある所定の空間分解能でスキャンしたりして、画像の画素をデジタル値に変換して、データ構造を生成し、生成した画像データを、公衆電話回線または専用電話回線のような通信網に直接的または間接的に接続して伝送する、ファクシミリ装置において、
ユーザが受信者にのみ開示したい情報(例えば親展または秘密情報)を含む文書が、ファクシミリ装置にセットされ、伝送のため読み取られ、ユーザが受信者にのみ開示したい情報のデータを圧縮した後に復号可能に暗号化して、これと暗号化されないヘッダーとを送信するファクシミリ装置」の発明(以下「刊行物1記載発明」という)が記載されていると認められる。

3.対比
そこで、本願発明1と刊行物1記載発明を対比すると、
刊行物1記載発明の「文書を読み込むためのスキャナ」が、本願発明1の「画像を入力するための画像入力手段」に、
刊行物1記載発明の「画像の画素をデジタル値に変換して、データ構造を生成する」ために用いられるものが、本願発明1の「画像データを生成する分解手段」に、
刊行物1記載発明の「公衆電話回線または専用電話回線のような通信網に直接的または間接的に接続して伝送する」ために用いられるものが、本願発明1の「送信制御手段」に、
刊行物1記載発明の「ファクシミリ装置」が、本願発明1の「画像送信装置」に、
それぞれ対応しているものと認められる。
また、本願発明1における「写像」とは、画像データを復元可能なこれと異なる画像データに変換する操作を意味し(本願明細書【0019】参照。)、これはいわゆるスクランブル処理なども含む一切の画像データの暗号化を含むものと認められるから、本願発明1の「画像データの少なくとも一部に逆写像可能な写像を施すこと」は、刊行物1記載発明における「スキャンした文書のユーザが受信者にのみ開示したい情報を暗号化すること」に相当すると認められ、したがって、刊行物1記載発明の「データを暗号化」するために用いられるものが、本願発明1の「写像データを生成する写像手段」に対応しているものと認められる。
また、ファクシミリ信号の送受信に際しては、CCITT勧告のG1,G2,G3いずれも、送信側で変調し受信側で復調するようにしている。
してみると、両発明は、
「画像を入力するための画像入力手段と、該画像入力手段を通じて入力された画像を複数の画素に分解して画像データを生成する分解手段と、該分解手段によって生成された画像データを送信する送信制御手段と、を備えた画像送信装置において、
前記画像データの少なくとも一部に逆写像可能な写像を施して、当該画像送信装置の送信先である受信装置に出力させるための写像データ、を生成する写像手段
を備える画像送信装置。」
である点で、一致しており、
次の点で、相違しているものと認められる。
相違点:送信制御手段によって変調して送信するものが、
本願発明1では、「写像データを、圧縮し」たものであるのに対して、
刊行物1記載発明では、「データを圧縮した後に暗号化すなわち写像し」たものである点。

4.当審の判断
そこで、この相違点について検討する。
刊行物1記載のものは、データを圧縮した後に暗号化するものであるが、原審において平成12年11月20日付け拒絶査定で例示している刊行物にはいずれにも、暗号化された情報を、圧縮してから送信することが開示されているように、そのようにすることも周知慣用技術ということができる。
ちなみに、その中の特開昭64-18371号公報には、ファクシミリ装置において、セキュリティを持たせるための画像データの圧縮と入れ換え(一種の暗号化ということができる。)の順序について、第1図のようにデータの入れ換えをしてから圧縮して送信すること、及び、第3図のように圧縮した後にデータの入れ換えをして送信すること、の両方が記載されている。
そして、このような順序の違いにより、刊行物1のように圧縮してから暗号化すれば、多くの場合圧縮効率を高くすることはできる長所はあるが、本件出願時に一般化していた既存の電話網に圧縮した画情報を伝送させる方式が採用されているG3ファクシミリ用の機器だけでは送受信できない短所があること、暗号化してから圧縮するようにすればそのできるできないの関係が反対となることは、当業者の技術常識的事項にすぎないから(G3ファクシミリが信号形式としてはデジタル冗長度抑圧符号化方式すなわち信号圧縮するものである点、および現状のファクシミリ装置をそのまま利用する場合には暗号化してから現状のファクシミリ装置をそのまま利用して既存のファクシミリ伝送方式即ちG3などで伝送するのが一番簡単な形態である点について、例えば画像電子学会編「新版 画像電子ハンドブック」1993年3月31日初版第1刷発行(発行所(株)コロナ社)351頁“表2.1電話網用ファクシミリのCCITT勧告の概要”のG3ファクシミリの欄、および261〜262頁“7.3.3 画像伝送への応用例”の項に示されている。)、刊行物1記載発明の欠点を避け、G3ファクシミリ用機器だけで画情報を送受信できるようにするために、画像データを暗号化してから圧縮し、変調して送信するようにする、即ち、写像データを、圧縮し、変調して送信するようにすることは、当業者ならば刊行物1記載発明の長所短所を勘案して適宜採択し得る程度のものと認められる。
そして、審判請求人が審判請求書において主張している、従来の受信装置に送信可能なときの利点として挙げている(i)〜(iii)の点は、当業者に自明の事項にすぎない。

5.むすび
以上から明らかなとおり、本願発明1は、刊行物1記載発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、請求項4及び請求項8に係るものがプログラムが記録された媒体に関するものであって本件出願当時においては特許対象発明とは認められていなかったものである等の難点があるが、これら請求項も含めて請求項2ないし請求項8についての判断を省略して、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-01-15 
結審通知日 2003-01-21 
審決日 2003-02-04 
出願番号 特願平8-323041
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 努  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 佐藤 聡史
江頭 信彦
発明の名称 画像送信装置、逆写像装置、および媒体  
代理人 田中 敏博  
代理人 足立 勉  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ