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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1074190 |
審判番号 | 不服2001-2770 |
総通号数 | 41 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-10-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-02-26 |
確定日 | 2003-03-20 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 78792号「携帯電話機の検索システム」拒絶査定に対する審判事件[平成12年10月 6日出願公開、特開2000-276473]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年3月24日の出願であって、特許法第17条の2第1項第3号に規定する期間内である平成13年3月28日付けで、請求項の削除を目的として明細書について補正をしたものであり、その請求項8に係る発明(以下、本願発明という。)は、その補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項8に記載された次のとおりのものと認める。 「 【請求項8】複数の登録内容に対する名前の中から1つを検索して前記登録内容を呼び出す携帯電話機の検索システムにおいて、 カナ文字を入力するカナ文字キーと、 前記登録内容の名前をカナ文字で50音順に登録内容別に保持する検索用の複数の検索テーブルと、 前記カナ文字キーから入力したカナ文字で前記検索テーブルを検索して目的とする前記名前が得られない場合にはさらに次のカナ文字を追加して検索する検索制御部と、 前記検索制御部により検索に用いられたカナ文字に属する名前の数を表示する表示部と、 前記表示部で表示される数が少ない場合に、前記検索制御部に前記表示部のスクロール表示を可能にさせるためのスクロールキーとを備えることを特徴とする携帯電話機の検索システム。 」 2.引用例記載の発明 (引用例の記載事項) これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-96647号公報(平成10年4月14日出願公開。以下、引用例1という。)には、文字列の入力による検索を容易にした車両用ナビゲーション装置について、図面と共に次の事項が記載されている。 (a)「 本発明は登録地点の名称の読み、または名称の文字列を入力して目的地や通過点等の登録地点を検索する車両用ナビゲーション装置に関する。 」(第3頁右欄第3行〜第6行) (b)「 本発明は、登録地点の名称の読みを入力して該当する登録地点を検索可能な車両用ナビゲーション装置において、登録地点情報として各登録地点の読みに関する情報と登録地点の存在する地域に関する情報とを格納する情報記憶手段と、前記登録地点の読みの一部または全部および登録地点を検索する地域を指定する情報を入力する入力手段と、前記入力手段により入力された読みの一部または全部に該当する登録地点を前記情報記憶手段に記憶された登録地点から検索する検索手段と、前記検索された登録地点をリスト表示する表示手段とを備え、前記検索手段は、前記入力手段により登録地点を検索する地域を指定する情報が入力されると、入力された地域に該当する登録地点を検索することを特徴とする。 」(第3頁右欄第42行〜第4頁左欄第5行) (c)「 この画面においては、「愛知県の情報より選択」の表示がなされるとともに、愛知県内の「市町村の選択」キーも表示される。この画面で先頭文字“ふ”、2番目の文字“じ”まで入力すると、図8に示すように、「ふじ」に続く50音が“い、う、か、き、こ、さ、そ、て、な、ほ、や、よ、り、わ”に限定されることが表示されるとともに、該当する登録地点として1950件あることが表示される。訂正キーは50音入力の訂正用であり、訂正キーを押すと読みを1字削除して再検索する。図示の状態で訂正キーを押すと“じ”が削除される。ここで画面の「リスト」キーを押すと、先頭から2文字までが“ふじ”のすべての登録名称がリストアップ表示され、画面更新して目標とする名称があればキー操作、リモコン操作等で選択・入力すると、選択された地点の登録地点座標(位置座標)を読み出し、その座標を中心として地図が表示される。また、残リスト数が多いためリストアップ表示画面上で目的とする名称または地点を探すのが大変な場合には、さらに入力文字数を増やしていけば、残リスト数は減っていくので、残リスト数が少なくなったところでリストアップ表示して目標名や地点を選択すればよい。 」(第7頁左欄第20行〜第40行) (d)「 図17は50音入力での残りリスト数表示処理を示している。入力画面において、50音により読みを入力すると、一字入力するごとに残りリスト数の検索処理が行われ、リスト数が1より多い場合には残りリスト数が画面に表示される。そしてリスト表示キーが操作されたか否かを判断し、リスト表示処理をするか、入力処理を続けるかを決定する。リスト表示キーが操作されていなければ入力処理が行われ、リスト表示キーが操作された場合には、リスト表示を指示してすべての該当する名称を表示させ、この中から目標名を探して選択すると、選択地点の周辺地図が表示される。また、リスト数が1つになった場合には、自動的またはキー操作により選択地点を中心とした地図が表示される。 」(第7頁右欄第31行〜第43行) (e)「 次いで、分割した単語の各々の先頭から検索可能であるとみて、単語の順番を入れ替えた全ての名称リストを作成する。(略) のように1つの正式名称に対して複数の読みを登録し、リスト化した名称リストをCD-ROMに格納する。1つの正式名称に対して複数の読みをCD-ROMに格納する際、読み順にソートする。このようにしてCD-ROMに格納した名称リストの例を図20に示す。 」(第8頁右欄第4行〜同頁左欄第15行) 上記記載事項(a),(b),(c)からみて、登録地点の名称が検索可能な引用例1の車両用ナビゲーション装置において、登録地点の名称をカナ文字で検索する際には、表示手段に表示される50音入力画面上のカナ文字の入力手段を用いて、検索のための文字列を入力していることは明らかであり、「残リスト数が多いためリストアップ表示画面上で目的とする名称または地点を探すのが大変な場合には、さらに入力文字数を増やしていけば、残リスト数は減っていく」の記載からみて、50音入力画面上のカナ文字入力手段で入力したカナ文字列では目的とする名称が得られない場合、入力カナ文字数を追加して検索手段により検索していることは明らかである。 また、上記記載事項(c),(d)によれば、登録地点の名称のリストアップ表示を行うか否かを決めるための指標として、車両用ナビゲーション装置の表示手段に残リスト数、即ち、入力したカナ文字列で検索された登録地点の名称の数を表示し、リスト表示キーの操作により、残リスト数が少なくなった場合に、すべての該当する名称を表示手段に表示するリストアップ表示を可能にしていると認められる。 さらに、上記記載事項(e)によれば、多数の登録地点の名称は名称リストを形成し、名称の読みの50音順に情報記憶手段に格納されていることは明らかである。 よって、引用例1には、 「 複数の登録地点に対する名称の中から1つを検索可能な車両用ナビゲーション装置において、 カナ文字を入力する画面上のカナ文字入力手段と、 前記登録地点の名称をカナ文字で50音順に保持する検索用の名称リストと、 前記カナ文字入力手段から入力したカナ文字で前記名称リストを検索して目的とする前記名称が得られない場合にはさらに次のカナ文字を追加して検索する検索手段と、 前記検索手段により検索に用いられたカナ文字に該当する名称の残リスト数を表示する表示手段と、 前記表示手段で表示される残リスト数が少ない場合に、前記検索手段に前記表示手段のリストアップ表示を可能にさせるためのリスト表示キーとを備えることを特徴とする車両用ナビゲーション装置。 」(以下、「引用例1に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。 また、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-186760号公報(平成9年7月15日出願公開。以下、引用例2という。)には、電話帳として登録した電話番号の呼出に好適な携帯電話機について、図面と共に次の事項が記載されている。 (f)「 本発明は、携帯電話機に係り、特に電話帳として登録した電話番号の呼出に好適な携帯電話機に関する。 」(第2頁左欄第15行〜第17行) (g)「 上記従来例の問題点を解決するための請求項1記載の発明は、電話番号を複数登録して記憶する電話番号帳機能を有する携帯電話機において、電話番号を検索する際に、文字のインデックスを表示し、前記インデックスに表示された特定文字が選択されると前記特定文字を先頭文字とする名前及び電話番号を表示することを特徴としており、希望する電話番号を少ないボタン操作及び少ないボタンの種類で容易に検索することのできる。 」(第2頁右欄第20行〜第28行) (h)「 また、上記例では、インデックステーブルの文字と名前が予め対応付けられていて、インデックス表示画面の文字が選択されると、ポインタで対応する名前に飛ぶようにしているが、インデックステーブルの文字と電話番号帳の名前との関連を予め持たせず、単にインデックスとして文字を表示しておき、ある文字が選択されると、その文字を先頭文字とする名前を電話番号帳から検索するようにしても構わない。 」(第3頁左欄第27行〜第34行) 上記記載事項(f),(g)からみて、携帯電話機が通常備えているボタンを用いて電話番号帳を検索するためのカナ文字を選択していることは明らかであり、また、上記記載事項(h)には、一実施例として、携帯電話機のボタンを用いて選択した文字を先頭文字とする名前を電話番号帳から検索することについて記載されている。 よって、引用例2には、 「 ボタン操作によりカナ文字を選択して、そのカナ文字を先頭文字とする名前及び電話番号を表示する電話番号帳検索機能を備えた携帯電話機 」(以下、「引用例2に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。 3.本願発明と引用例1に記載された発明との対比 本願発明と引用例1に記載された発明を対比する。 引用例1に記載された発明の「登録地点」,「名称」,「名称リスト」は、「登録地点」と「名称」が対応づけられ、その内、「名称」が検索の対象となっている情報であり、「名称リスト」は複数の「名称」をカナ文字で50音順に登録地点別に保持しているから、本願発明の「登録内容」,「名前」,「検索テーブル」に相当する。 また、引用例1に記載された発明の「検索手段」は、名称リストを検索して目的とする名称が得られない場合にはさらに次のカナ文字を追加して検索し、「表示手段」は、「検索手段」により検索に用いられたカナ文字に該当する名称の残リスト数を表示しているから、引用例1に記載された発明の「検索手段」,「表示手段」は、本願発明の「検索制御部」,「表示部」に相当する。 さらに、引用例1に記載された発明の「車両用ナビゲーション装置」は登録地点の名称を、50音入力画面から入力されたカナ文字で検索する機能を有するものであるから、引用例1に記載された発明の「車両用ナビゲーション装置」は一種の検索システムとみることができるから、引用例1に記載された発明と本願発明は検索システムという点で共通する。 よって、両者は 「 複数の登録内容に対する名前の中から1つを検索して前記登録内容を呼び出す検索システムにおいて、 カナ文字を入力するカナ文字入力手段と、 前記登録内容の名前をカナ文字で50音順に保持する検索用の検索テーブルと、 前記カナ文字入力手段から入力したカナ文字で前記検索テーブルを検索して目的とする前記名前が得られない場合にはさらに次のカナ文字を追加して検索する検索制御部と、 前記検索制御部により検索に用いられたカナ文字に属する名前の数を表示する表示部と、 を備えることを特徴とする検索システム。 」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) (1)本願発明の検索システムは、カナ文字入力手段としてカナ文字キーを用いた携帯電話の検索システムであるのに対して、引用例1に記載された発明の検索システムは、50音入力画面をカナ文字入力手段として用いた車両用ナビゲーション装置の検索システムである点。 (2)本願発明の携帯電話機の検索システムは、検索用の検索テーブルを登録内容別に複数個備えているのに対し、引用例1に記載された車両用ナビゲーション装置の検索用の名称リスト(本願発明の「検索テーブル」に相当)は登録地点に関するものである点。 (3)本願発明の携帯電話機の検索システムは、表示部で表示される数が少ない場合に、検索制御部に表示部のスクロール表示を可能にさせるためのスクロールキーを備えているのに対し、引用例1に記載された車両用ナビゲーション装置は、表示手段で表示される残リスト数が少ない場合に、検索手段に表示手段のリストアップ表示を可能にさせるためのリスト表示キーを備えている点。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 (1)引用例1に記載された発明の車両用ナビゲーション装置は、カナ文字を入力するための50音入力画面を備え、複数の登録地点に対する名称の中から1つを検索可能な装置であるが、カナ文字入力手段から入力するカナ文字に基づいて、複数の登録内容に対する名前の中から1つを検索可能な検索システムとみることができる。また、カナ文字入力手段から入力したカナ文字による検索機能を備えた電子機器としては、引用例1に記載された発明の車両用ナビゲーション装置の他に、引用例2に記載されているようなカナ文字入力可能なボタンを備えた携帯電話機が公知である。(引用例2に記載された発明の「ボタン」は本願発明の「カナ文字キー」に相当する。)そして、当業者であれば、引用例1に記載された発明の車両用ナビゲーション装置の検索機能を、適宜「登録地点」,「名称」情報を必要な検索情報に替えることにより、他の検索可能な電子機器に転用できたものと認められる。よって、引用例2に記載の発明に基づき引用例1に記載の発明をカナ文字入力手段としてカナ文字キーを用いた携帯電話機の検索システムに転用し、本願発明のようにすることは当業者が容易に推考できたものであるから、上記相違点(1)を格別のものとは認めることはできない。 (2)検索システムにおいて、複数の検索テーブルを記憶手段に保持して、複数の項目(例えば、住所、電話番号、スケジュール等)を文字で検索可能にすることは周知の技術である(必要とあれば、特開平10-303974号公報、特開昭62-151924号公報、特開平4-37955号公報を参照のこと)。そして、この周知技術を引用例1に記載された発明に適用して本願発明のようにすることは当業者が必要に応じて適宜になし得たものであるから、上記相違点(2)を格別のものとは認めることはできない。 (3)検索システムにおいて、検索を実行した結果、ヒットした件数が少ない場合等にヒットしたデータレコードをスクロール表示することは周知の技術である。そして、この周知技術を引用例1に記載された発明に適用し、適宜リスト表示キーをスクロルキーに替えて本願発明のようにスクロール表示できるよう変更することは当業者が容易に推考できたものであるから、上記相違点(3)を格別のものとは認めることはできない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例1,2に記載された発明および周知の技術手段に基いて、当業者が容易に推考できたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-12-25 |
結審通知日 | 2003-01-07 |
審決日 | 2003-01-31 |
出願番号 | 特願平11-78792 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平井 誠 |
特許庁審判長 |
徳永 民雄 |
特許庁審判官 |
辻本 泰隆 久保田 健 |
発明の名称 | 携帯電話機の検索システム |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 京本 直樹 |
代理人 | 河合 信明 |