• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45D
管理番号 1074256
審判番号 不服2000-14383  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-09-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-08-03 
確定日 2003-03-24 
事件の表示 平成 8年特許願第320961号「泡状毛髪脱色剤」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 9月 9日出願公開、特開平 9-234112]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1] 手続きの経緯、本願発明
本願は、平成8年11月14日(優先権主張平成7年12月27日)の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年9月4日付け手続補正書(明細書の全文補正書)及び平成13年3月22日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
(本願発明)
「液剤がポンプ機構を持つ容器に収納されてなる泡状毛髪脱色剤であって、この液剤が過酸化水素水、起泡剤であるアニオン系界面活性剤、5〜20重量%の泡質改良剤である低級アルコール及び/又は低級多価アルコール、過酸化水素の安定剤であるpH調整剤、過酸化水素の安定剤であるキレート剤及び溶剤からなり、前記容器がガス透過性の高い容器本体とこの容器本体に密閉一体に設けられたポンプ機構とからなり、このポンプ機構は液体吸い上げポンプの外周に同一中心軸で空気吸い上げポンプが一体化され吐出ノズルの直前の混合室で液体吸い上げポンプと空気吸い上げポンプが一体化されて気液混合されてネットパイプを介してノズルに連通してなるポンプ機構であることを特徴とする泡状毛髪脱色剤。」

[2]引用発明
前置審査における平成13年1月11日付け拒絶理由通知書(「最後の拒絶理由」を通知したもの)に引用された下記刊行物には、それぞれ次の事項が記載されているものと認められる。
(1)引用刊行物
刊行物1:特開昭62-167504号公報
刊行物2:特開平5-132700号公報
(2)従来技術及び刊行物1、2記載の発明
本願明細書の「発明の詳細な説明」における従来技術に関する記載事項から把握される発明(以下、「従来発明」という。)及び上記刊行物1乃至2に記載された発明(以下、「引用発明1乃至2」という。)は、それぞれ、次のものと認められる。
(i)従来発明
本願明細書には、従来技術に関して次の事項が記載されている。
(イ)(発明の詳細な説明における「従来技術」の欄)
「一般に、毛髪脱色剤としては、使用時に二剤を混合使用する二剤タイプと、使用時に二剤と脱色補助剤を混合使用する三剤タイプと、一剤を容器内に内填し密閉加圧状態で容器から取り出す一剤エアゾルタイプ、一剤を容器内に内填しポンプ式ノズルで容器からとりだす一剤ディスペンサータイプが存在する。
…(中略)…
一剤エアゾルタイプは、過酸化水素水に起泡剤、pH調整剤、安定剤を溶剤に混合して噴出ガスとともに密閉容器内に充填してなるものである。
一剤ディスペンサータイプは、過酸化水素水に湿潤剤、pH調整剤、安定剤を溶剤に混合して容器内に充填してなるものである。
一剤タイプは、二剤タイプに比して脱色効果が穏やかであり、その取扱が容易なこと等により毛髪脱色剤として広く汎用されている。」(上記平成12年9月4日付け手続補正書の明細書1頁23行〜2頁11行、段落【0002】及び本願の願書に最初に添付された明細書の2頁4〜21行、段落【0002】)
(ロ)(発明の詳細な説明における「発明が課題しようとする課題」の欄)
「一方、一剤ディスペンサータイプは、ポンプ式ノズルで容器外へ液剤を取り出し噴霧するため、液剤が目的の毛髪のみに的確に供給されず、使用者の衣服やその周辺にまで飛び散り、使用者の周りを汚損する欠点があった。」(同上手続補正書の明細書2頁19〜21行、段落【0004】及び本願の願書に最初に添付された明細書の2頁29〜3頁2行、段落【0004】)
これら(イ)及び(ロ)の記載事項を総合すると、本願出願の優先日前に、次の従来発明が当業者において周知乃至公知であったと認められる。
(従来発明)
「液剤がポンプ機構を持つ容器に収納されてなる毛髪脱色剤であって、この液剤が過酸化水素水、湿潤剤、pH調整剤、安定剤及び溶剤からなり、前記容器が容器本体とポンプ機構とからなる毛髪脱色剤。」

(ii)引用発明1
上記刊行物1には次のように記載されている。
(イ)(「発明の詳細な説明」の欄)
「本発明は塩基性酸化染料を含む染毛剤を対象とし、その経時的に安定を保持する容器構造に発明の主点があり、とくに第2剤に使用する過酸化水素水のクリーム状製品に関するものである。
一般に染毛剤は塩基性酸化染料からなる第1剤を毛髪に塗布浸透させ、酸化剤としての過酸化水素を含有する第2剤で以って発色固定させることを原理としている。染毛剤は…(中略)…化粧品的性格が強いために、その製品としては使用に便なる形態にすることが望ましく、粉末式に代わって現在ではシャンプー式、泡式、クリーム式等の製品剤型が実用化されている。」(公報1頁1欄19行〜2欄11行)
(ロ)(同上「発明の詳細な説明」の欄)
「従来化粧品分野での過酸化水素の応用は広範囲に凡り、その安定化に種々考案があるがそれらは液状品ないし乳液製品を対象としており…見当たらない。過酸化水素水を水、油ならびに界面活性剤の存在において乳化させてクリーム状とすることは、その配合割合ならびに製造条件を検討すれば若干のノウハウはあるとしても業界の通常技術水準を以って解決できるでことあろう。しかしここにおいて問題となるのは、…(中略)…ことと、過酸化水素の分解によって発生する酸素ガスがクリームの乳化状態を劣化させること、更にこの製品を密閉容器内においたとき発生ガスが充満加圧し容器の破裂事故を惹起すことである。」(公報2頁3欄9行〜4欄3行)
(ハ)(同上「発明の詳細な説明」の欄)
「斯様に過酸化水素の分解をおさえたクリームであっても、長時間経過後には微量とはいえ分解は避けられないものであり、発生したガスは本製品の容器内に充満しクリームの性状を劣化させ、また遂には容器を破裂させる危険がある。
本発明者は、この容器についても種々研究し本発明品を収容するに好適な容器を考案したので、その一例を以下に説明する。
本発明品は酸性度の高いクリームである故に容器の耐食材質についても留意しなければならず、この点プラスチック容器は液体は通さないが極微の通気孔を有しガス体を徐々に通過させる特性があるので極めて都合がよいことを見いだした。
…(中略)…、また徐々に発生するガスはポリエチレンシート層を通してアルミ層との間の間隙に放出しチューブ口より出るので、容器は破裂することは避けられる。
この発明容器の必要条件として内層は気体を通すが液体を通さない性質のある材料を用い、…ことである。」(公報3頁7欄14行〜9欄11行)
これら(イ)乃至(ハ)の記載を総合すると、上記刊行物1には、次の引用発明1が記載されていると認められる。
(引用発明1)
「酸化剤としての過酸化水素を含有する染毛剤を収容する容器において、過酸化水素の分解により発生したガスが容器を破裂させることを防止する目的で、当該容器を形成する素材として、気体を通すが液体を通さない性質のあるポリエチレンを採用すること。」

(iii)引用発明2
上記刊行物2には次のように記載されている。
(イ)(「発明の詳細な説明」における「産業上の利用分野」の欄)
「本発明は、起泡性洗浄剤に関し、特に、空気と混合して多孔体を通過させることにより泡沫状として吐出する泡噴出ポンプ容器用の起泡性洗浄剤に関する。」(公報2頁1欄40行〜43行、段落【0001】)
(ロ)(「発明の詳細な説明」における「従来技術」の欄)
「従来から、泡噴出ポンプ容器から吐出させ、発泡させて用いる、いわゆる、起泡性洗浄剤が開発され、浴用、洗顔用、洗髪用などの用途に広く用いられている。かかる容器として、安定な泡沫を得るために種々の改良が行われ、例えば、特公昭52-16567号には、より安定な泡を発生させるための泡噴出ポンプ容器が開示されている。この泡噴出ポンプ容器は、洗浄剤を空気と混合し、泡生成手段(例えば、多孔体)を通過させることにより、泡沫状として吐出するものである。」(公報2頁1欄45行〜2欄36行、段落【0002】)
(ハ)(「発明の詳細な説明」における「発明が解決しようとする課題」の欄)
「しかしながら、従来の泡噴出ポンプ容器に用いられる洗浄剤は、きめ細かい良質かつ安定な泡を得ることが困難であり、容器の改良のみでは良質な泡を得るのに限界がある。
本発明は、このような従来の問題点を解決するものであり、その目的とするところは、きめ細かい泡質を有すると共に吐出後の保持性に優れた泡を生成する起泡性洗浄剤を提供することにある。」(公報2頁2欄44行〜3頁3欄1行、段落【0003】)
(ニ)(「発明の詳細な説明」における「課題を解決するための手段」の欄)
「本発明者らは、洗浄に最適な特性を有する泡、すなわち、きめ細かい泡質を有すると共に吐出後の保持性に優れた泡を生成するには、泡噴出ポンプ容器の構造設計や泡発生条件だけでなく、洗浄剤自身の性質にも留意する必要がある点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、特定割合の成分を配合することにより、きめ細かい泡質を有すると共に吐出後の保持性に優れた泡を生成する起泡性洗浄剤が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、界面活性剤5〜30重量%、一価アルコール1〜7重量%および多価アルコール3〜20重量%を配合してなる起泡性洗浄剤を提供するものである。本発明の洗浄剤は泡噴出ポンプ容器に入れ、吐出することにより、空気と混合され、きめ細かい、安定な泡沫を生じる。
用いる界面活性剤としては、…アルキルリン酸塩(3欄24〜25行)、…、ラウリル硫酸ナトリウム(3欄40〜41行)…、アルキルスルホン酸塩(4欄31行)、…が挙げられる。」(公報3頁3欄3行〜4頁5欄10行、段落【0004】及び【0005】。注:括弧内は当審により付記したものであり、界面活性剤の具体例として本願発明の実施例と同一のアニオン系のものを抽出して示した。)
(ホ)(同上「発明の詳細な説明」における「課題を解決するための手段」の欄)
「本発明の起泡性洗浄剤には、一価アルコールおよび多価アルコールが粘度調整剤として配合される。一価アルコールとしては、…、エチルアルコール、…、イソプロピルアルコールなどが挙げられ、特にエチルアルコールが好ましい。多価アルコールとしては、…、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、…などが挙げられる。これらのアルコールは、界面活性剤の濃度に応じて添加されるが、洗浄剤全量に対し、一価アルコールは1〜7重量%の範囲内で配合され、多価アルコールは3〜20重量%の範囲内で配合される。アルコールの添加量が上記範囲を下回ると、洗浄剤の粘度が上昇し、発泡が阻害される。逆に、アルコールの添加量が上記範囲を上回ると、洗浄剤の粘度が低下し、起泡性も低下する。」(公報4頁6欄39行〜5頁7欄6行、段落【0010】。注:下線は当審により付記した。また、アルコールの具体例は、本願発明の実施例と同一のものを抽出して示した。)
(ヘ)(同上「発明の詳細な説明」における「課題を解決するための手段」の欄)
「本発明の起泡性洗浄剤は、従来の起泡性洗浄剤と同様にして使用でき、例えば、洗髪用シャンプー、浴用ボディシャンプー、ハンドソープ、洗顔剤、台所用洗剤、漂白洗剤などとして用いられる。」(公報5頁7欄16行〜19行、段落【0013】)
(ト)(「発明の詳細な説明」における「実施例」の欄)
「表1および表2から明らかなように、実施例1〜22の起泡性洗浄剤は、いずれも、25℃での粘度が100cpsを越えることはなく、きめ細かい泡質を有すると共に吐出後の保持性に優れた泡を生成した。…(中略)…
これに対して、表3および表4から明らかなように、界面活性剤の添加量が少ない比較例1、7および13では、洗浄剤の粘度が低くすぎるので、きめが粗く保持性に劣る泡しか得られなかった。逆に、界面活性剤の添加量が多い比較例2、8および14では、洗浄剤の粘度が高すぎるので、泡の生成およびを吐出が困難であった。また、一価アルコールの添加量が少ない比較例3、9および15では、やはり粘度が高く、泡の生成および吐出が困難であった。逆に、一価アルコールの添加量が多い比較例4、10および16では、泡の保持性を阻害して、良質の泡は得られなかった。さらに、多価アルコールの添加量が少ない比較例5、11および17では、やはり粘度が高く、泡の生成および吐出が困難であった。逆に、多価アルコールの添加量が多い比較例6、12および18では、洗浄剤の粘度は適度であるものの、きめが粗く保持性に劣る泡しか得られなかった。」(公報9頁15欄41行〜10頁17欄8行、段落【0020】及び【0021】)
これら(イ)乃至(ト)の記載及びこれと対応する表1乃至表4の記載事項を総合すると、上記刊行物2には、次の引用発明2が記載されていると認められる。
(引用発明2)
「泡噴出ポンプ容器から吐出・発泡させ、洗髪用シャンプーとして用いられる起泡性洗浄剤において、きめ細かい泡質を有すると共に吐出後の保持性に優れた泡を生成するために、洗浄剤と起泡剤としての作用を為すところのアニオン系界面活性剤を5〜30重量%含有した起泡性洗浄剤に、当該起泡性洗浄剤の粘度調整剤としての作用を為すところの低級アルコールおよび低級多価アルコールを、それぞれ1〜7重量%、3〜20重量%という上限値及び下限値を設け、この範囲内で適宜配合することを特徴とする起泡性洗浄剤。」

[3] 対比・判断
本願発明と従来発明とを対比すると、両者は、
「液剤がポンプ機構を持つ容器に収納されてなる毛髪脱色剤であって、この液剤が過酸化水素水、pH調整剤、安定剤及び溶剤を含有し、前記容器が容器本体とポンプ機構とからなる毛髪脱色剤。」である点で一致し、
(A)容器本体の素材に関して、前者においては、「ガス透過性の高い容器本体」で構成しているのに対し、後者においては、このような素材を使用して構成されていない点(以下、「相違点(A)」という。)、
(B)容器のポンプ機構に関して、前者においては、「容器本体に密閉一体に設けられたポンプ機構とからなり、このポンプ機構は液体吸い上げポンプの外周に同一中心軸で空気吸い上げポンプが一体化され吐出ノズルの直前の混合室で液体吸い上げポンプと空気吸い上げポンプが一体化されて気液混合されてネットパイプを介してノズルに連通してなるポンプ機構である」のに対して、後者においては、その具体的構成が明らかでない点(以下「相違点(B)」という。)、で相違している。
(C)容器に収納される液剤のうちの「泡」形成に関する組成につき、前者においては、「起泡剤であるアニオン系界面活性剤」に加えて「泡質改良剤」としての「5〜20重量%の」「低級アルコール及び/又は低級多価アルコール」が配合されているのに対し、後者においては、このような「泡」形成のための素材を配合していない点(以下、「相違点(C)」という。)、
(D)容器に収納される液剤のうちの上記「泡」形成に関する組成を除いた他の組成につき、前者においては、「過酸化水素の安定剤」として「pH調整剤」及び「キレート剤」を配合しているのに対し、後者においては、このような素材を配合しているか否かが明らかでない点(以下、「相違点(D)」という。)、で相違している。
そこで、これらの相違点について検討する。
(相違点(A)について)
酸化剤としての過酸化水素を含有する染毛剤を収容する容器において、過酸化水素の分解により発生したガスが容器を破裂させることを防止する目的で、当該容器を形成する素材として、気体を通すが液体を通さない性質のあるポリエチレンを採用することは、上記引用発明1により本願出願の優先日前に公知である。
そして、染毛剤と毛髪脱色剤とは、毛髪に対する化粧品的機能において相互に類似するばかりでなく、酸化剤としての過酸化水素を含有するという組成においても、さらには、髪の必要な部分への部分的適用も想定されているというその使用態様においても、両者は極めて類似するものといえる。
してみると、上記相違点(A)は、上記引用発明1と同様の目的で、その容器構成を従来発明である毛髪脱色剤のものに転用することにより、当業者が容易に採用し得た設計上の変更であるといえる。
(相違点(B)について)
発泡性内容液を収容した容器から泡を放出するポンプ機構として「容器本体に密閉一体に設けられたポンプ機構とからなり、このポンプ機構は液体吸い上げポンプの外周に同一中心軸で空気吸い上げポンプが一体化され吐出ノズルの直前の混合室で液体吸い上げポンプと空気吸い上げポンプが一体化されて気液混合されてネットパイプを介してノズルに連通してなるポンプ機構」を採用した容器(「ポンプフォーマー」とも称される容器)は、毛髪に対する化粧品類を取り扱う分野においても、従来より周知であったと解される(例えば、前置審査における最後の拒絶の理由に引用された周知例である実願平5-50115号(実開平7-15558号)のCD-ROM、本願に対して提出された平成10年5月7日付け刊行物提出書(以下、「刊行物提出書1」という。)に示された刊行物4であって平成5年8月1日に缶詰技術研究会により発行された雑誌である「食品と容器」、第34巻第8号の第467〜471頁に掲載された「ブームを呼ぶかノンガス容器(その2)」、あるいは、本願に対して提出された平成10年7月2日付け刊行物提出書に示された刊行物1であって平成7年3月1日に、同じく缶詰技術研究会により発行された雑誌である「食品と容器」、第36巻第3号の第154〜158頁に掲載された「完成度を高めたノンガス容器(その3)」参照)。
してみると、上記相違点(B)は、当業者が適宜選択して採用し得る設計的事項であるといえる。
(相違点(C)について)
毛髪脱色剤を毛髪への塗布性が容易な泡状で使用できるものとするために、界面活性剤で代表される発泡剤を配合することは、従来より周知の配合手法であったといえる(例えば、上記刊行物提出書1に示された刊行物2である特開平7-258045号公報の2頁1〜2欄の段落【0005】【0006】及び【0010】参照)。
そして、泡噴出ポンプ容器から吐出・発泡させ、洗髪用シャンプーとして用いられる起泡性洗浄剤において、きめ細かい泡質を有すると共に吐出後の保持性に優れた泡を生成するために、洗浄剤と起泡剤としての作用を為すところのアニオン系界面活性剤を5〜30重量%含有した起泡性洗浄剤に、当該起泡性洗浄剤の粘度調整剤としての作用を為すところの低級アルコールおよび低級多価アルコールを、それぞれ1〜7重量%、3〜20重量%という上限値及び下限値を設け、この範囲内で適宜配合することは、上記引用発明2により本願出願の優先日前に公知である。
さらに、洗髪用シャンプーと毛髪脱色剤とは、毛髪に適用される商品として共通性を有するものであり、また、これら商品間において、相互に共通して使用できる技術的事項を一方から他方へ転用することを妨げるような格別な事情が存在するものともいえない。
してみると、上記相違点(C)は、従来発明における毛髪脱色剤を上記従来周知の泡状で使用できるものに変更する際に、その「泡」形成に関する組成につき、上記引用発明2と同様のきめ細かい泡質を有すると共に吐出後の保持性に優れた泡を生成するという目的で、アニオン系界面活性剤に加えて低級アルコールおよび低級多価アルコールを適宜重量%の範囲内で配合するという組成構成を、従来発明である毛髪脱色剤のものに転用することにより、当業者が容易に実施し得た設計上の変更であるといえる。
なお、上記相違点(C)における「泡質改良剤」としての「低級アルコール及び/又は低級多価アルコール」を「5〜20重量%」配合した点につき、審判請求人は、上記配合されたアルコールが「泡質改良剤」として作用することを証明するために、平成13年3月22日付け意見書においては、その実験結果を当該意見書と同日付けの手続補足書に添付された資料第1号の表1(以下、「資料1の表1」という。)を用いて、並びに、審判請求書においては、その実験結果を表1(以下、「審判請求書の表1」という。)として、それぞれ示している。
しかしながら、上記資料1の表1に実施例1及び2として示された泡状毛髪脱色剤の組成は、平成12年9月4日付け手続補正書(明細書の全文補正書)によって補正され、本願発明の唯一の実施例となった「実施例1」における組成とは異なる(ちなみに、資料1の表1の実施例1及び2における過酸化水素水及び起泡剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムの配合量は、それぞれ、10重量%、0.4重量%であるのに対して、本願発明の実施例1のそれは、それぞれ、17.0重量%、0.005重量%である)といえるし、また、上記審判請求書の表1に実施例1乃至5として示された泡状毛髪脱色剤の組成も、同上平成12年9月4日付け手続補正書により本願発明の唯一の実施例となった「実施例1」における組成とは異なる(ちなみに、審判請求書の表1の実施例1及び2における過酸化水素水及びキレート剤であるジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム(40%)の配合量は、それぞれ、10重量%、0.1重量%であるのに対して、本願発明の実施例1のそれは17.0重量%、0.5重量%であり、また、同審判請求書の表1の実施例3乃至5における過酸化水素水、キレート剤であるジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム(40%)及び起泡剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムの配合量は、それぞれ10重量%、0.1重量%、0.1重量%であるのに対して、本願発明の実施例1のそれは17.0重量%、0.5重量%、0.005重量%である)といえるから、本願発明の実験結果を示したものとはいえない(ちなみに、上記審判請求書の表1の実施例1、2の組成を、実施例3、4の組成とそれぞれ対比すると、起泡剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムの配合量においてのみ両者は異なっているにすぎないにもかかわらず、両者の「泡の持ち」の結果は異なっていることから、本願発明のアルコールの配合量は、それ単独で格別な技術的意義乃至臨界的意義を有するものではなく、起泡剤等の他の成分との配合量と相互に関連することにより、「泡質改良剤」として作用するものと推測せざるを得ない)。
以上のことを踏まえると、上記相違点(C)における「泡質改良剤」としての「低級アルコール及び/又は低級多価アルコール」を「5〜20重量%」配合した点に、すなわち、泡状毛髪脱色剤における組成の内、「低級アルコール及び/又は低級多価アルコール」の配合量のみを、「5〜20重量%」と規定した点に、格別な技術的意義乃至臨界的意義があると解することができないので、相違点(C)につき、上記したように、当業者が容易に実施し得た設計上の変更であると判断した。
(相違点(D)について)
毛髪脱色剤に含有された過酸化水素の保存安定性を考慮して「pH調整剤」を配合することは従来より周知の配合手法であり、また、当該毛髪脱色剤における過酸化水素含有組成物に、「EDTA」(エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム)に例示される金属封鎖剤(「キレート剤」に相当する)を添加剤として適宜配合することも従来より周知の配合態様であったといえる(例えば、同上刊行物提出書1に示された刊行物2である特開平7-258045号公報の2頁2欄の段落【0006】及び【0010】参照)。
そして、上記キレート剤の一つである「EDTA」が過酸化水素の安定剤として使用できることも、毛髪に適用する化粧品類を取り扱う分野において、従来より周知であったといえる(例えば、上記引用刊行物1である特開昭62-167504号公報の2頁4欄15〜17行参照)。
してみると、上記相違点(D)は、当業者が適宜選択して採用し得る設計的事項であるといえる。

[4] むすび
したがって、本願発明は、従来発明及び引用発明1乃至2並びに従来より周知の技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-01-22 
結審通知日 2003-01-27 
審決日 2003-02-07 
出願番号 特願平8-320961
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松縄 正登大河原 裕  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 門前 浩一
和泉 等
発明の名称 泡状毛髪脱色剤  
代理人 清原 義博  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ