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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04H
管理番号 1074322
審判番号 不服2001-11581  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-05-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-05 
確定日 2003-03-28 
事件の表示 平成10年特許願第325941号「移動観覧席」拒絶査定に対する審判事件[平成12年5月16日出願公開、特開2000-136646]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成10年10月30日の出願であって、平成13年5月28日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年7月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月6日付で手続補正がなされた。

【2】平成13年8月6日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年8月6日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のとおりに補正することを含むものである。
「高さの異なる複数の段床をそれぞれ前後移動可能で相互に厚み方向に重合可能な複数の脚構造体により支持してなり、各脚構造体を移動させて使用位置で各段床を雛段状に展開し、収納位置で各段床を相互に重合させるように構成されてなる移動観覧席において、
前記脚構造体が、下端部に下向チャネル状のフレームを具備するベースを備えるものであり、前記フレーム内に、上下揺動可能な車輪ユニット及び水平に軸支した固定車輪を収容して、該車輪ユニットを、側片を有しその側片を前記フレームの側片に水平に軸支した天秤部材と、該天秤部材の前端及び後端に軸支した一対の可動車輪とから構成していることを特徴とする移動観覧席。」(以下、「補正発明」という。)

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された、実願昭59-173208号(実開昭61-87837号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
「下面の前後に車輪を備えた下部フレームと、下部フレームの後部上面から起立し上端部に滑合ローラを備えた支柱と、支柱の高さの途中から前方に向け水平に延設し前記ローラに滑合される上部フレームと、上部フレームの上方に位置した左右の支柱の間に渡設される框材と、框材に並行して左右の上部フレーム間に水平に渡されるデッキとから前後に並べられる複数個の観覧席単体を構成すると共に、これら単体は後位の単体が前位の単体より支柱並びにデッキの高さを大にし、且つ左右支柱間の間隔を大にして前位の単体を後位の単体の下に次々収納し、また前方に引き出して階段状に展開可能にする・・・階段式移動観覧席。」(1頁5〜末行)
「各単体は下向きに開口した断面コ字形をなすフレームであって前後に設ける車軸に車輪4を各回転自由に軸装する下部フレーム5と、この下部フレームの上面に固定される側方に開口したチャンネル形のガイド枠6と、このガイド枠の後部上面に起立される高さを異にした前記支柱3A,3B,3C……3Fと、各支柱の高さの途中から前方に向けて水平に延設される上部フレーム7と、左右上部フレームの先端間と左右の支柱の上部前面間にそれぞれ渡される框8,9と、左右の上部フレーム7,7間に渡されるデッキ2A,2B,2C……2Fとを主たる構成要素として形成されている。」(4頁11行〜5頁3行)
そして、第1,4,5図の記載から、車輪4は、下部フレーム5の前部に1個、後部に2個設けられていることが当業者に明らかである。
したがって、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。
「下面の前部に1個、後部に2個の車輪4を備えた下部フレーム5と、下部フレームの後部上面から起立した支柱3A〜3Fと、支柱の高さの途中から前方に向け水平に延設した上部フレーム7と、上部フレームの上方に位置した左右の支柱の間に渡設される框材8,9と、框材に並行して左右の上部フレーム間に水平に渡されるデッキ2A〜2Fとから前後に並べられる複数個の観覧席単体を構成すると共に、これら単体は後位の単体が前位の単体より支柱並びにデッキの高さを大にし、且つ左右支柱間の間隔を大にして前位の単体を後位の単体の下に次々収納し、また前方に引き出して階段状に展開可能にした、階段式移動観覧席。」

同じく、原査定の拒絶の理由で引用された、特開平7-127293号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
「本発明は、体育館等の多目的ホールにおいて、ステージの床下に設けた収納室に移動観覧席を収納し、必要に応じてフロア上に円滑に引き出しうるようにした、移動観覧席の走行装置に関するものである。」(1欄36〜40行)
「【0018】図4と図5は第2実施例を示すもので……
【0019】本実施例においては、図5に示すように、前実施例の長寸の脚杆(3)に代えて、その脚杆(3)を長さ方向に複数に分割したのと同様の複数の短脚杆(13)をもって平台(1)を支持している。
【0020】各短脚杆(13)は、断面が下向きコ字状をなし、その前後部に車輪(5)の車輪軸(5a)を枢支している。
……
【0022】最後部の短脚杆(13)は、平台(1)の下面に固着された下向コ字状のブラケット(15)に、左右方向を向く軸(16)をもって中央部が枢着されている。」(3欄34〜49行)
「【発明の効果】本発明によると、次のような効果を奏することができる。
(a) 平台が走行するとき、フロアに凹凸があっても・・・前後に車輪を備える短脚杆のうちの少なくともいずれかのもの・・・が、フロアの凹凸に追従して、平台に対して独立して上下方向に移動したり傾動したりし、車輪がフロアから浮き上がることなく、平台の荷重をほぼ均等に分散して支承することができる。
したがって、平台の荷重が一部の車輪に集中することがなく、耐久性を向上しうるとともに、フロア面に対する追従性がよいので、斜行することなく直進することができるとともに、平台の上下の振動を吸収して、円滑に走行することができる。」(4欄26〜39行)
したがって、刊行物2には以下の発明が記載されていると認められる。
「移動観覧席の走行装置に関し、フロアの凹凸に追従して、上下の振動を吸収して円滑に走行することができるように、断面が下向きコ字状をなし、その前後部に車輪(5)の車輪軸(5a)を枢支している短脚杆(13)は、平台(1)の下面に固着された下向コ字状のブラケット(15)に、左右方向を向く軸(16)をもって中央部が枢着されている、移動観覧席の走行装置。」

(3)対比・判断
補正発明と、上記刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「デッキ2A(〜2F)」、「下部フレーム5と支柱3A(〜3F)と上部フレーム7と框材8,9」、「階段状」、「下部フレーム」、「下部フレーム後部の2個の車輪」、及び「下部フレーム前部の1個の車輪」は、補正発明の「段床」、「脚構造体」、「雛壇状」、「フレーム(ベース)」、「車輪ユニット」、及び「固定車輪」にそれぞれ相当するから、両者は、
「高さの異なる複数の段床をそれぞれ前後移動可能で相互に厚み方向に重合可能な複数の脚構造体により支持してなり、各脚構造体を移動させて使用位置で各段床を雛段状に展開し、収納位置で各段床を相互に重合させるように構成されてなる移動観覧席において、
前記脚構造体が、下端部に下向チャネル状のフレームを具備するベースを備えるものであり、前記フレーム内に、車輪ユニット及び水平に軸支した固定車輪を収容した、移動観覧席。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:「車輪ユニット」が、補正発明では、「側片を有しその側片をフレームの側片に水平に軸支した天秤部材と、該天秤部材の前端及び後端に軸支した一対の可動車輪とから構成」しているのに対し、刊行物1記載の発明では、フレームに直接軸支された2個の車輪である点

上記相違点について検討する。
刊行物2には、上記のとおり、その前後部に車輪(補正発明の「一対の可動車輪」に相当する。)を枢支している断面下向きコ字状の短脚杆(同「天秤部材」)の中央部を、下向コ字状のブラケットに枢着させることにより、フロアの凹凸に追従して、上下の振動を吸収して円滑に走行することができるようにした移動観覧席の走行装置が記載されており、刊行物1記載の発明のように一対の車輪を直接脚構造体のフレームに設けることに換えて、刊行物2記載の短脚杆の中央部を脚構造体のフレームに枢着させることにより補正発明を当業者がなすことに格別困難性は認められず、また、補正発明が奏する作用効果も、当業者が予期し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、補正発明は、上記刊行物1,2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によりその特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のように、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
(1)本願発明
本願の各請求項に係る発明は、平成13年8月6日付手続補正が上記のとおり却下されたので、平成13年2月5日付手続補正書により補正された明細書、及び、図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定されるとおりの次のものと認める。
「【請求項1】高さの異なる複数の段床をそれぞれ前後移動可能で相互に厚み方向に重合可能な複数の脚構造体により支持してなり、各脚構造体を移動させて使用位置で各段床を雛段状に展開し、収納位置で各段床を相互に重合させるように構成されてなる移動観覧席において、
前記脚構造体が、下端部にフレームを具備するベースを備えるものであり、前記フレーム内に、上下揺動可能な車輪ユニット及び水平に軸支した固定車輪を収容して、該車輪ユニットを、前記脚構造体に水平に軸支した天秤部材と、該天秤部材の前端及び後端に軸支した一対の可動車輪とから構成していることを特徴とする移動観覧席。
【請求項2】〜【請求項5】(記載を省略)」
(以下、請求項1記載の発明を「本願発明」という。)

(2)引用刊行物
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された各刊行物、及び、その記載事項は、上記【2】(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、本願発明は、上記【2】で検討した補正発明から「フレーム」の限定事項である「下向きチャネル状の(フレーム)」との構成を省き、「天秤部材」に関する限定事項である「(天秤部材が)側片を有しその側片を(脚構造体の)フレームの側片に(水平に軸支した天秤部材)」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が上記【2】(3)に記載したとおり、刊行物1,2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1,2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-01-15 
結審通知日 2003-01-21 
審決日 2003-02-05 
出願番号 特願平10-325941
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E04H)
P 1 8・ 121- Z (E04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩田 裕介五十幡 直子土屋 真理子  
特許庁審判長 山田 忠夫
特許庁審判官 新井夕起子
長島 和子
発明の名称 移動観覧席  
代理人 久留 徹  
代理人 井上 敬子  
代理人 赤澤 一博  

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