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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01J
管理番号 1074403
審判番号 不服2001-7704  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-10 
確定日 2003-04-03 
事件の表示 平成 6年特許願第163830号「酸素吸収剤」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 1月30日出願公開、特開平 8- 24639]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年7月15日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明2」という)は、平成12年12月22日付手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】没食子酸とアルカリ化合物とからなる酸素吸収剤であって、水分の介在によりpH8以上となるように前記アルカリ化合物が配合されていることを特徴とする酸素吸収剤。
【請求項2】アルカリ化合物が炭酸ナトリウムである、請求項1に記載の酸素吸収剤。」

2.各引用例記載の発明
(1)これに対して、平成12年10月13日付けで通知した拒絶の理由に引用した本件出願前に頒布された刊行物1(特開昭57-21912号公報)には、以下の記載がある。
ア-1.「亜硫酸アルカリ金属塩の100重量部に対し、3個以上の水酸基を有する芳香族化合物の0.01〜10重量部を添加して水溶液としたことを特徴とする安定な水性脱酸素剤組成物。」(特許請求の範囲第1項)
ア-2.「3個以上の水酸基を有する芳香族化合物がピロガロール、没食子酸またはタンニンである特許請求の範囲第1〜3項のいずれかに記載の脱酸素剤組成物。」(特許請求の範囲第4項)
ア-3.「通常、これらの水溶液のpHは10以上であることが一般的であるが、無論それ以下でも使用可能である。」(第2頁左下欄19行〜右下欄1行)
(2)同じく刊行物2(特開昭51-117991号公報)には、以下の記載がある。
イ-1.「焦性没食子酸または没食子酸に無水炭酸カリ、無水炭酸ソーダ、水酸化カルシューム等のアルカリ粉体及び活性炭を混合し、これを通気性包装材で包装する直前に微量の水を添加することを特徴とする酸素吸収剤の製法。」(特許請求の範囲)
イ-2.「なおこれらの混合物に反応を促進するため微量の水を添加して紙または微孔フィルムなどの通気性包装材で包装し、さらにその表面を気密性包装材で密封しておき使用時に取出せば直ちに酸素吸収をはじめる。」(第2頁左上欄8〜12行)
イ-3.「実施例2.焦性没食子酸 1.0部 無水炭酸ソーダ 1.0部 水酸化カルシューム 1.0部 活性炭 2.0部」(第2頁左上欄20行〜右上欄4行)

3.本願発明と刊行物記載の発明との対比、判断
(1)本願発明と刊行物2記載の発明との対比
記載イ-1における「無水炭酸カリ、無水炭酸ソーダ、水酸化カルシューム等のアルカリ粉体」は本願発明1における「アルカリ化合物」に相当するから、本願発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は「没食子酸とアルカリ化合物とからなる酸素吸収剤」の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点:本願発明1では、水分の介在によりpH8以上となるように前記アルカリ化合物が配合されていることを限定しているのに対し、刊行物2には、水分の介在によりpHがどの程度になるのか記載がない点
(2)判断
記載ア-1における「亜硫酸アルカリ金属塩」は本願発明1おける「アルカリ化合物」に相当するから、記載ア-2を参酌すれば、刊行物1には、同じく没食子酸とアルカリ化合物とからなる脱酸素剤が記載されていると認められる。
そして、記載ア-3には、該脱酸素剤は水溶液のpHが10以上であることが一般的であるとされているのであるから、刊行物2記載の酸素吸収剤における没食子酸とアルカリ化合物の配合割合を、水分の介在によりpHが8以上である10程度となるようにすることは、当業者は容易になし得たことである。
本願発明2は、本願発明1における「アルカリ化合物」を「炭酸ナトリウム」に限定するものであるが、刊行物2には、アルカリ化合物として炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)を使用する実施例(記載イ-3)が記載されているのであるから、本願発明2と刊行物2記載の発明との相違点は、本願発明1と対比した場合と同じとなり、本願発明2は、本願発明1で検討したのと同じ理由で、刊行物1及び刊行物2の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

なお、出願人は審判請求書において、次のような補正案を提示しているので、一応、補正案の請求項に係る発明についても、以下検討する。

特許請求の範囲の補正案文
【請求項1】少なくとの没食子酸と炭酸ナトリウム等のアルカリ化合物と水分を得るための塩化カルシウム等の潮解性物質とからなる酸素吸収剤であって、水分の介在によりpH8以上となるように前記アルカリ化合物が配合されていて、通気性包装材料にて包装されていることを特徴とする酸素吸収剤。
【請求項2】前記酸素吸収剤は、濾紙、厚紙等に含浸されているか、若しくは樹脂に練り込まれている請求項1に記載の酸素吸収剤。

上記補正案の請求項1は、補正前の請求項1に「水分を得るための塩化カルシウム等の潮解性物質」を更に配合し、「通気性包装材料にて包装されていること」を限定した発明であるが、反応のために水分が必要な酸素吸収剤に潮解性物質を配合し、大気中の水分を利用することは、当該技術分野で従来から採用されている周知技術(特開昭54-132246号公報、特開平5-7773号公報)であるから、刊行物2記載の酸素吸収剤において、包装直前に反応に必要な水分を添加するかわりに、潮解性物質を配合することは、当業者が、係る周知技術に基づいて容易に想到することができたものであり、更に酸素吸収剤を通気性包装材料にて包装することも、刊行物2に記載されるように普通のことである。
また、補正案の請求項2は、請求項1に記載の酸素吸収剤を、濾紙、厚紙等に含浸させたり、樹脂に練り込まれていることを限定したものであるが、潮解性物質を配合した酸素吸収剤が水分を吸っても固体状態を保つよう、樹脂などと混合することは、例えば特開昭52-107042号公報(第1頁右欄7〜16行)に見られるように、本願出願前知られた技術である。
以上のとおりであるから、補正案の請求項1及び2に係る発明も、本願出願前に頒布された刊行物に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
したがって、本願発明1及び2は、刊行物1ないし2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-01-28 
結審通知日 2003-02-04 
審決日 2003-02-17 
出願番号 特願平6-163830
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新居田 知生  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 唐戸 光雄
野田 直人
発明の名称 酸素吸収剤  

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