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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B63B
管理番号 1074415
審判番号 不服2001-650  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-01-18 
確定日 2003-04-03 
事件の表示 平成10年特許願第220616号「小型滑走艇のカバー開閉構造」[平成12年2月22日出願公開(特開2000-53076号)]拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成10年8月4日の出願であって、平成12年12月14日付で拒絶査定がされて、これを不服として、平成13年1月18日に審判を請求するとともに、平成13年2月15日付で、特許法第17条の2第1項第4号の規定に係る補正(前置補正)がなされたものである。

【2】平成13年2月15日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年2月15日付の、願書に添付した明細書に係る手続補正を却下する。
<理由>
1.補正を却下すべき根拠
平成13年2月15日付でされた、願書に添付した明細書に係る手続補正(以下、「本件補正」という)は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含み、しかも、下記2.に掲げる本件補正に係る請求項の発明は、下記3.以下に詳述するとおり、本願の出願前に頒布された刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえるから、当該請求項の発明については特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定により準用される同第126条第4項の規定を満たすものとはいえないから、同第159条の規定により本件査定不服の審判において一部読み替えて準用される、同第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

2.本件補正に係る発明
本件補正に係る発明は、平成13年2月15日付手続補正書における特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 小型滑走艇の船体側に対して、カバーの一端部に配置されたヒンジ部材を介して開閉自在にカバーを取着するとともに、カバー側と船体側との間に伸長させる方向に作用する圧縮型のスプリングを備えたダンパーを介装した小型滑走艇のカバーの開閉構造において、
上記船体側に軸支するダンパーの一端の位置が、カバー側に軸支するダンパーの他端の位置より、上記ヒンジ部材のヒンジ軸側に近い位置に設けるとともに、上記船体側に軸支するダンパーの一端の位置が、上記カバー側に軸支するダンパーの他端の位置と、上記ヒンジ軸とを結んだ仮想線より、カバーを閉めた状態において、該仮想線から下方に離れた位置に設け、
上記カバーが開いた状態で、ダンパーがヒンジ軸近傍の位置で起立し、ストレージボックスへの荷物の出し入れに際し、ダンパーが邪魔にならないように構成したことを特徴とする小型滑走艇のカバー開閉構造。
【請求項2】 前記ダンパーを、ストレージボックスのセンターラインの中心位置あるいはその近傍に配置したことを特徴とする請求項1記載の小型滑走艇のカバー開閉構造。」

3.引用例とその記載事項の概要
原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-109793号公報(以下、「引用例」という)には、次のイ及びロのとおりの記載事項があり、また、当該イ、ロの記載事項を参酌すると、引用例の図面第9図(第8頁)には、ハの事項が図示されていると認められる。
(イ)「デッキ下方の機関室の上部の開口部に開閉可能な蓋を設けて、その蓋の上面をデッキ甲板面と同一面状としたことを特徴とするフラットデッキ式小型船舶。」(第1頁左下欄、特許請求の範囲1)
(ロ)「この蓋(41)は、第9図で示すように、その一端が蝶番(図示せず)等によって枢着され、これにより他端側が上方に開閉自在とされている。そして、蓋(41)の左右方向の両端部裏面と、開口部(40)左右両側のデッキ(50)に形成した凹状段部(52)とに跨がって、ガスダンパー(53)が連結され、それによって、蓋(41)の上方への開動作を容易にしている。ガスダンパー(53)は、蓋(41)を閉じた状態では図の2点鎖線のようにほぼ水平状態となり、蓋(41)を開くと、その蓋(41)及びデッキ(50)への枢着点を中心として回動するとともに伸張する。」(第4頁右上欄第14行〜同頁左下欄第7行)
(ハ)ガスダンパー(53)を、デッキ(50)(船体)側に軸支状態で「連結」される一端の位置が、蓋(41)側に同様に連結される他端の位置よりも、蝶番による枢着軸側に近い位置となるように設けること、
「蓋(41)を閉じた状態」では、デッキ(50)(船体)側に連結されるガスダンパー(53)の一端の位置は、蓋(41)側に連結されるガスダンパー(53)の他端の位置と蓋(41)が枢着される蝶番の枢着軸線とを結んだ仮想線(側面視での仮想線)と、略同じ高さ(「水平状態」)になること、
「蓋(41)を開くと」、ガスダンパー(53)が蝶番の枢着軸線近傍の位置で起立すること。

4.発明の対比
本件補正に係る上記請求項1の発明(以下、「本願補正発明」という)と引用例の記載事項とを対比する。
引用例記載の「蓋(41)」は、「デッキ甲板面」上部の「開口部に開閉可能」(イ)に設けられるものであるが、一方、本願補正発明でいう「カバー」も、「ストレージボックスの上面(開口面)」に「開閉が可能」に設けられるものである(【0003】、【0004】参照)。
上記のような対応関係から、引用例記載の上記「蓋(41)」は、本願補正発明でいう「カバー」に相当するものとみることができる。そうすると、引用例で、「蓋(41)」の「一端」を「枢着」している「蝶番」は、本願補正発明でいう「カバーの一端部に配置されたヒンジ部材」に相当するといえるし、また、「蓋(41)」の裏面と「デッキ(50)」(船体側)とに跨がって「連結」されて、「蓋を開くと」「伸張する」「ガスダンパー(53)」は、「カバー側と船体側との間に」介装された、「伸長させる方向に作用する圧縮型の」ダンパーといえる。
更に、「蝶番」の枢着軸が「ヒンジ部材のヒンジ軸」といえることは明らかであるし、本願補正発明でいう「小型滑走艇」は「小型船舶」の一態様とみることができる。
上記指摘の対比関係と、引用例第9図に関する上記ハの認定事項から、本願補正発明と引用例記載の発明との一致点と相違点とを次のとおりに認定できる。
<一致点> 「小型船舶の船体側に対して、カバーの一端部に配置されたヒンジ部材を介して開閉自在にカバーを取着するとともに、カバー側と船体側との間に伸長させる方向に作用するダンパーを介装した小型船舶のカバーの開閉構造において、
上記船体側に軸支するダンパーの一端の位置が、カバー側に軸支するダンパーの他端の位置より、上記ヒンジ部材のヒンジ軸側に近い位置に設けるとともに、
上記カバーが開いた状態で、ダンパーがヒンジ軸近傍の位置で起立するように構成した小型船舶のカバー開閉構造」の発明である点。
<相違点1> 本願補正発明における、カバー開閉構造が「小型滑走艇」のストレージボックスに係るものであって、「ストレージボックスへの荷物の出し入れに際し、ダンパーが邪魔にならないように構成した」ことについて、引用例には言及がない点。
<相違点2> カバー側と船体側との間に介装されたダンパーが、本願補正発明では「スプリング」を備えているのに対して、引用例はスプリングについての明確な言及を欠く点。
<相違点3> 船体側に軸支するダンパーの一端の位置が、本願補正発明では、「上記カバー側に軸支するダンパーの他端の位置と、上記ヒンジ軸とを結んだ仮想線より、カバーを閉めた状態において、該仮想線から下方に離れた位置」に設けられるのに対し、引用例記載の発明では、上記の仮想線と略同じ高さに設けられる点。

5.相違点の検討
(1)<相違点1>について
引用例記載の発明も、「開口部(40)」を設置するものである以上、当該開口部を介して荷物や人の出し入れをすることが想定されているとみるべきであって、当該出し入れに際しては、開口部(40)の蓋が開いた状態において、ガスダンパー(53)が、蝶番近傍の位置で起立することにより、荷物等の出し入れの邪魔になることが少ないことは明らかである。
一方、原査定の拒絶の理由でも引用された特開平8-207887号公報(【0018】参照)に記載されているように、物入れ用、即ち、ストレージボックス用のための開閉自在のカバー(上蓋)を備えた小型滑走艇自体は従来周知のものであって、上述のような荷物等の出し入れに際しての事情は当該周知のストレージボックスの開口についても同様であることは、当業者が容易に類推可能というべきであるから、引用例記載の開口部の構成を上記周知のものに採用して、相違点1における本願補正発明と同様にする点に格別の創意を見出すことができない。
(2)<相違点2>について
各種ダンパー類において、伸長させる方向に作用する圧縮型のスプリングを備えること自体は、例示するまでもなく従来周知の技術事項であり、引用例記載のガスダンパーに代えて、本願補正発明のように、上記周知のスプリングを備えるものを採用することは、当業者が通常行う設計変更の域を出るものではない。
(3)<相違点3>について
上述のように、引用例記載の発明においては、船体側に軸支するダンパーの一端の位置が、カバー(蓋)を閉めた状態において、カバー側に軸支するダンパーの他端の位置とヒンジ軸とを結んだ仮想線に対し略同じ高さの位置に設けられるために、本願補正発明におけるように、閉じた状態のカバーに対し常時開放しようとする分力が作用するというものではないが、引用例記載の発明においても、カバーを閉じた状態からほんの僅かでも開方向に動かせば、本願補正発明と同様に、カバーを開方向に動作させようとする分力が常時生じることになるのだから、両者の構成や機能に本質的な差異を認めることはできない。
しかも、本願補正発明のような構成をとることで、閉じた状態のカバーに対して、開放しようとする力を常時付与させておくことは、自動車のトランクリッド(カバー)等の開閉装置において従来周知の技術であることを考慮すれば、船体側に軸支するダンパーの一端の位置を、本願補正発明のような位置とすることは、当業者であれば容易に想到することができたものといえる。
(4)作用効果について
また、上記各相違点で指摘した構成を併せ備える本願補正発明の奏する効果についてみても、引用例の記載事項や上述の従来周知の技術から、当業者が容易に予測できる程度のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

【3】本願の発明について
1.本願の発明の認定
平成13年2月15日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成11年9月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 小型滑走艇の船体側に対して、カバーの一端部に配置されたヒンジ部材を介して開閉自在にカバーを取着するとともに、カバー側と船体側との間にスプリングを備えたダンパーを介装した小型滑走艇のカバーの開閉構造において、
上記船体側に軸支するダンパーの一端の位置が、カバー側に軸支するダンパーの他端の位置より、上記ヒンジ部材のヒンジ軸側に近い位置に設けるとともに、上記船体側に軸支するダンパーの一端の位置が、上記カバー側に軸支するダンパーの他端の位置と、上記ヒンジ軸とを結んだ仮想線より、カバーを閉めた状態において、該仮想線から下方に離れた位置に設け、
上記カバーが開いた状態で、ダンパーがヒンジ軸近傍の位置で起立し、ストレージボックスへの荷物の出し入れに際し、ダンパーが邪魔にならないように構成したことを特徴とする小型滑走艇のカバー開閉構造。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記【2】の3.に指摘したとおりである。

3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明は、前記【2】で検討した本願補正発明から、「伸長させる方向に作用する圧縮型の」という構成を除いたものである。
そうすると、本願の請求項1に係る発明の構成要件を全て含み、さらに、他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記【2】の4.以下のとおり、上記引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の請求項1に係る発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
(なお、本願の請求項2に係る発明に関して付言すると、ダンパーの配置をセンターラインの中心位置あるいはその近傍に配置することは、当業者がカバーの形状、重量、艇における配置等を考慮して、設計上適宜選択しうる程度の事項と認められる。)

【4】むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、上記の引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、当該請求項の発明については、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-01-28 
結審通知日 2003-02-04 
審決日 2003-02-17 
出願番号 特願平10-220616
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B63B)
P 1 8・ 575- Z (B63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 康史石原 正博常盤 務  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 ぬで島 慎二
出口 昌哉
発明の名称 小型滑走艇のカバー開閉構造  
代理人 西谷 俊男  
代理人 高石 ▲さとる▼  
代理人 阪本 英男  
代理人 角田 嘉宏  
代理人 古川 安航  

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