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審決分類 |
審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1074439 |
審判番号 | 不服2000-9028 |
総通号数 | 41 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1990-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-06-15 |
確定日 | 2003-04-03 |
事件の表示 | 平成 1年特許願第 59390号「データ管理装置及び方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 2年10月26日出願公開、特開平 2-263233]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成元年3月10日(優先権主張 昭和63年12月14日)の出願であって、平成8年3月4日付け手続補正書による審査請求と同時の手続補正の後、平成10年4月6日付け拒絶理由通知書による拒絶の理由が通知され、平成10年6月29日付け手続補正書により手続補正されたものの、平成12年4月26日付け拒絶査定により拒絶された。 その後、平成12年6月15日付け審判請求書により査定不服審判請求がなされ、その手続猶予期間内の平成12年7月17日付け手続補正書が提出されたことにより、本願は、前置審査に付され、平成12年11月29日付けで、依然として特許できない旨の前置報告がなされた。 当審においては、平成14年10月23日付け拒絶理由通知書により拒絶の理由(以下、「当審で通知した拒絶理由」という。)を通知し、平成15年1月6日付けで意見書(以下、「最終意見書」という。)並びに手続補正書(以下、「最終補正書」という。)が提出された。 2.当審で通知した拒絶理由 当審で通知した拒絶理由では、特許法第36条第3項に規定する要件について、 「2.36条3項について リストアウトの対象とする1つのリスト構造単位を、具体的にどのような手順及びアルゴリズムによって決定するのか不明である。 本件特許出願明細書11頁16行〜13頁1行には、 「また、このシステムでは、上記実記憶空間(RM)上のフリーノードの数を監視しており、上記実記憶空間(RM)上のフリーノードが無くなると、不要なノードをフリーノードとして回収するガーベジコレクションを行い、このガーベジコレクションによりフリーノードの数が所定の閾値Sh以上になれば、本来のデータ処理に復帰する。上記ガーベジコレクションによりフリーノードの数が所定の閾値Sh以上にならない場合には、その時点で上記実記憶空間(RM)上に不要なリストデータへのポインタを抽出して、後述する手順に従って上記実記憶空間(RM)から上記仮想記憶空間(IM)へのリスト構造単位のデータ転送(Swap-out)するためのリストアウト動作を上記実記憶空間(RM)上で行う。上記実記憶空間(RM)上でリストアウトしたリスト構造単位のデータ数が少なく所定の閾値Ssに満たない場合には、上記実記憶空間(RM)上に不要なリストデータへのポインタをさらに抽出して、新たなリストデータのリストアウト動作を上記実記憶空間(RM)上で繰り返し行う。そして、上記実記憶空間(RM)上でリストアウトしたリスト構造単位のデータ数が上記閾値Ssに達すると、上記実記憶空間(RM)でリストアウトされたリスト構造単位のデータを上記実記憶空間(RM)から上記仮想記憶空間(IM)へのデータ転送(Swap-out)し、リストアウトの動作を終了して、本来のデータ処理に復帰する。」 というリストアウト動作の開始/終了の制御については記載されている。 又、同明細書13頁7行〜18頁6行には、 「例えば第5図に示すように、実記憶空間(RM)上の7個のノード(N10),(N11),(N12),(N13),(N20),(N21),(N22)間がポインタにてリンクされたリスト構造単位(U10)を上記実記憶空間(RM)から上記仮想記憶空間(IM)へリストアウトする場合に(中略)第6図A〜第6図Fに示すような手順でリストアウトする。 (中略)上記仮想記憶空間(RM)に効率よく迅速にリストアウトすることができる。」というリストアウトの手順についても記載されている。 しかしながら、上記リスト構造単位(例えばU10)について、実記憶空間(RM)上に存在する複数のノードの中から、具体的にどのような手順及びアルゴリズムによって、ノード(N10),(N11),(N12),(N13),(N20),(N21),(N22)をリストアウトの対象として選定するのか、同様に、具体的にどのような手順及びアルゴリズムによって、対象とするノードの個数を7個と決定するのか不明である。」と指摘し、 又、上記指摘と併せて、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件について、 「(6)請求項1及び請求項3の「動的に実記憶空間及び仮想記憶空間を利用して上記リンク情報を用いたリスト構造単位」という記載では、 まず、具体的にどのような構成を用いることで「動的に実記憶空間及び仮想記憶空間を利用」するのか不明であり、 又、上記「リンク情報」の定義も明確でなく、 又、上記「リスト構造単位」については、下記の「2.36条3項について」に記載した理由と併せ、その定義が明確でない。」と指摘し、 リスト構造単位を、具体的にどのような手順及びアルゴリズムによって決定するのかという点と、その具体的な手順及びアルゴリズムによって規定されるリスト構造単位の定義について釈明を求めたところである。 3.請求人の主張 これに対し請求人は、前記最終補正書により、本件明細書の特許請求の範囲の欄を、 「 【特許請求の範囲】 【請求項1】 実記憶空間を構成し、その実記憶空間におけるデータの記憶場所を番地付ける実記憶空間アドレスにより当該実記憶空間にあるノードから次のノードへのリンク情報としてポインタが表現される第1の記憶手段と、 仮想記憶空間を構成し、その仮想記憶空間におけるデータの記憶場所を番地付ける仮想記憶空間アドレスにより当該実記憶空間にあるノードから次のノードへのリンク情報としてポインタが表現されるとともに、当該仮想記憶空間にあるノードから上記実記憶空間にあるノードへのリンク情報として実記憶空間アドレスにてポインタが表現される第2の記憶手段と、 上記実記憶空間上のノードから仮想記憶空間アドレスで表現されるポインタにより仮想記憶空間上のノードを間接的に参照するようにして、各ノード間がポインタでリンクされたリスト構造のデータを実記憶空間と仮想記憶空間とに亘って表現し、上記ノード間がポインタでリンクされたリスト構造の動的に変化するデータを、そのリンク情報を用いたリスト構造単位で実記憶空間上の作業領域を介して実記憶空間と仮想記憶空間との間で移動させるとともに、上記リスト構造単位を構成しているの各ノード(審決注:「しているの各ノード」は「している各ノード」の誤記と認められる。以下、同様の記載については同様に扱う。)のリンク情報を書き換える制御手段とを備え、 動的に変化するリスト構造をそのまま反映させた状態で上記リスト構造のデータを管理することを特徴とするデータ管理装置。 【請求項2】 実記憶空間では、その実記憶空間におけるデータの記憶場所を番地付ける実記憶空間アドレスにより当該実記憶空間にあるノードから次のノードへのリンク情報としてポインタを表現し、 仮想記憶空間では、その仮想記憶空間におけるデータの記憶場所を番地付ける仮想記憶空間アドレスにより当該実記憶空間にあるノードから次のノードへのリンク情報としてポインタを表現するとともに、当該仮想記憶空間にあるノードから上記実記憶空間にあるノードへのリンク情報として実記憶空間アドレスにてポインタを表現し、 上記実記憶空間上のノードから仮想記憶空間アドレスで表現されるポインタにより仮想記憶空間上のノードを間接的に参照するようにして、各ノード間がポインタでリンクされたリスト構造のデータを実記憶空間と仮想記憶空間とに亘って表現し、 上記ノード間がポインタでリンクされたリスト構造の動的に変化するデータを、そのリンク情報を用いたリスト構造単位で実記憶空間上の作業領域を介して実記憶空間と仮想記憶空間との間で移動させるとともに、上記リスト構造単位を構成しているの各ノードのリンク情報を書き換えることにより、 動的に変化するリスト構造をそのまま反映させた状態で上記リスト構造のデータを管理することを特徴とするデータ管理方法。」と補正し、 又、本件明細書の第6頁第15行目から第8頁第7行目にわたる記載「E.課題を解決するための手段・・・G.実施例」を「E.課題を解決するための手段 本発明に係るデータ管理装置は、実記憶空間を構成し、その実記憶空間におけるデータの記憶場所を番地付ける実記憶空間アドレスにより当該実記憶空間にあるノードから次のノードへのリンク情報としてポインタが表現される第1の記憶手段と、仮想記憶空間を構成し、その仮想記憶空間におけるデータの記憶場所を番地付ける仮想記憶空間アドレスにより当該実記憶空間にあるノードから次のノードへのリンク情報としてポインタが表現されるとともに、当該仮想記憶空間にあるノードから上記実記憶空間にあるノードへのリンク情報として実記憶空間アドレスにてポインタが表現される第2の記憶手段と、上記実記憶空間上のノードから仮想記憶空間アドレスで表現されるポインタにより仮想記憶空間上のノードを間接的に参照するようにして、各ノード間がポインタでリンクされたリスト構造のデータを実記憶空間と仮想記憶空間とに亘って表現し、上記ノード間がポインタでリンクされたリスト構造の動的に変化するデータを、そのリンク情報を用いたリスト構造単位で実記憶空間上の作業領域を介して実記憶空間と仮想記憶空間との間で移動させるとともに、上記リスト構造単位を構成しているの各ノードのリンク情報を書き換える制御手段とを備え、動的に変化するリスト構造をそのまま反映させた状態で上記リスト構造のデータを管理することを特徴とする。 本発明に係るデータ管理方法は、実記憶空間では、その実記憶空間におけるデータの記憶場所を番地付ける実記憶空間アドレスにより当該実記憶空間にあるノードから次のノードへのリンク情報としてポインタを表現し、仮想記憶空間では、その仮想記憶空間におけるデータの記憶場所を番地付ける仮想記憶空間アドレスにより当該実記憶空間にあるノードから次のノードへのリンク情報としてポインタを表現するとともに、当該仮想記憶空間にあるノードから上記実記憶空間にあるノードへのリンク情報として実記憶空間アドレスにてポインタを表現し、上記実記憶空間上のノードから仮想記憶空間アドレスで表現されるポインタにより仮想記憶空間上のノードを間接的に参照するようにして、各ノード間がポインタでリンクされたリスト構造のデータを実記憶空間と仮想記憶空間とに亘って表現し、上記ノード間がポインタでリンクされたリスト構造の動的に変化するデータを、そのリンク情報を用いたリスト構造単位で実記憶空間上の作業領域を介して実記憶空間と仮想記憶空間との間で移動させるとともに、上記リスト構造単位を構成しているの各ノードのリンク情報を書き換えることにより、動的に変化するリスト構造をそのまま反映させた状態で上記リスト構造のデータを管理することを特徴とする。 F.作用 本発明では、実記憶空間上のノードから仮想記憶空間アドレスで表現されるポインタにより仮想記憶空間上のノードを間接的に参照するようにして、各ノード間がポインタでリンクされたリスト構造のデータを実記憶空間と仮想記憶空間とに亘って表現し、上記ノード間がポインタでリンクされたリスト構造の動的に変化するデータを、そのリンク情報を用いたリスト構造単位で実記憶空間上の作業領域を介して実記憶空間と仮想記憶空間との間で移動させるとともに、上記リスト構造単位を構成しているの各ノードのリンク情報を書き換えることにより、動的に変化するリスト構造をそのまま反映させた状態で上記リスト構造のデータを管理する。 G.実施例」と補正すると共に、 前記最終意見書により、 「(1) 審判長は、平成14年10月23日付け拒絶理由通知書において、この出願は特許法36条第3項、第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない旨の拒絶理由を指摘された。 (2) そこで、本件請求人は、本意見書と同時に手続補正書を提出して明細書の補正を行い、本願明細書における記載の不備な点を訂正した。 (中略) (3) ここで、ポインタは、1のノードから次のノードへのリンク情報として上記1のノードに与えられているもので、実記憶空間にあるノードから次のノードへのリンク情報としてポインタを表現し、実記憶空間上にあるノードへのリンク情報の場合には実記憶空間アドレスで表現され、仮想記憶空間上にあるノードへのリンク情報の場合には仮想記憶空間アドレスで表現される。 また、上記実記憶空間上のノードから仮想記憶空間上のノードを間接的に参照するには、仮想記憶空間アドレスで表現されるポインタが用いられる。 さらに、各ノード間がポインタでリンクされたリスト構造のデータは、そのリスト構造自体に意味をもので(審決注:「意味をもので」は、「意味を持つもので」の誤記と認められる。)、実記憶空間内だけで表現されていても、あるいは、実記憶空間と仮想記憶空間とに亘って表現されていてもよく、記憶空間を仮想記憶空間まで拡張して使用する必要のある場合に、実記憶空間と仮想記憶空間とに亘って表現される。 そして、本願発明では、実記憶空間上のフリーノードが不足した場合に、その時点で使用していない或いは使用頻度の低いノードで構成されるリスト構造単位を仮想記憶空間に移動させて、実記憶空間上のフリーノードを増やすことができるようにしている。 すなわち、本願発明では、ノード間がポインタでリンクされたリスト構造の動的に変化するデータを、そのリンク情報を用いたリスト構造単位で実記憶空間上の作業領域を介して実記憶空間と仮想記憶空間との間で移動させるとともに、上記リスト構造単位を構成しているの各ノードのリンク情報を書き換えることにより、動的に変化するリスト構造をそのまま反映させた状態で上記リスト構造のデータを管理するようにしている。 なお、補正前の請求項1及び請求項3に記載されていた「静的に区分する」とは、ページ単位でデータを取り扱うことに対応するものであるが、この点については今回の補正により削除した。 上記補正により特許法36条第4項及び第5項に関する拒絶理由は解消したもの思料する。 (4) また、本願発明は、リスト構造単位の決定の仕方に特徴があるのではなく、実記憶空間と仮想記憶空間との間で実記憶空間上の作業領域を介してリスト構造単位で移動する点に特徴があるのであって、本願発明では一般的な手法により決定されるリスト構造単位で移動する。 ここで、本願明細書において、リスト構造単位の決定の仕方については、具体的な記載がないが、マサチューセッツ工科大学(MIT)のJ.McCarthy教授等が考案したプログラミング言語であるLISPなどに代表されるリスト構造のデータを取り扱うリスト処理では、リスト同士の合併や分割などの演算が行われており、リスト構造単位という概念は本願出願前から一般的に知られていたことである。 実記憶空間上のフリーノードが不足した場合にリストアウトするリスト構造単位としては、マルチプロセッサシステムの場合、その時点で各プロセッサが同時に使用していないノード或いは使用頻度の低いノードで構成されるリスト構造単位を選択することになる。 使用していないノード或いは使用頻度の低いノードをリストアウトの対象とすることは、実記憶空間と仮想記憶空間との間でページ単位でデータ転送を行う従来の手法においても行われていたことである。 なお、LISPについての文献としては、J.McCarthy他「LISP 1.5 Programmer's Manual」,The M.I.T Press,1962やCQ出版社 マイコンピュータ 1984 No.15 「リスト処理とLISPの研究」等がある。 したがって、本願は、特許法36条第3項の規定に該当するものではないと思料する。」 と主張している。 4.当審で通知した拒絶理由並びに請求人の主張についての検討 (i)当審で通知した拒絶理由通知の「(6)(前略)、又、上記「リンク情報」の定義も明確でなく、(後略)」という指摘については、最終補正書による補正並びに最終意見書による「ポインタは、1のノードから次のノードへのリンク情報として上記1のノードに与えられているもの」という釈明により明確になったものと認められる。 (ii)しかしながら、請求人も最終意見書に「ここで、本願明細書において、リスト構造単位の決定の仕方については、具体的な記載がないが、」と記載しているとおり、リスト構造単位を、具体的にどのような手順及びアルゴリズムによって決定するのかという点については、本件明細書に記載されていない。 (iii)そして、請求人は最終意見書において文献を提示して、「ここで、本願明細書において、リスト構造単位の決定の仕方については、具体的な記載がないが、マサチューセッツ工科大学(MIT)のJ.McCarthy教授等が考案したプログラミング言語であるLISPなどに代表されるリスト構造のデータを取り扱うリスト処理では、リスト同士の合併や分割などの演算が行われており、リスト構造単位という概念は本願出願前から一般的に知られていたことである。」と主張している。 確かにリスト構造のデータを扱うリスト処理において、1つのまとまりのあるリストというものが存在し、かつ、そのような構成は本願出願日前に周知の技術であると認められる。 しかしながら、本件明細書第3図、第4図、並びに、第3図、第4図に関する記載であるところの本件明細書10頁2行〜11頁15行には、リスト構造単位が、ポインタでリンクされたノードからなり、リストの一部分を構成し、かつ連続したノードで構成される1つのまとまりのある単位として記載されている。 すなわち、本件明細書に記載された発明(以下、「本件発明」という。)を実施する際に問題になるのは、周知技術である上記リストの中から、リストアウトの対象として、当該リストの一部分であるリスト構造単位を、具体的にどのような手順及びアルゴリズムによって決定するのかという点にある。 したがって、請求人の主張するリスト構造単位、上述のリストという構成が周知の技術であったとしても、上述のごとくリストと本件発明におけるリスト構造単位が同一のものでない以上、それをもって、本件発明におけるリスト構造単位を、具体的にどのような手順及びアルゴリズムによって決定するのかという点が当業者にとって自明のことであるとは言えない。 (iv)さらに、請求人は、最終意見書において、「実記憶空間上のフリーノードが不足した場合にリストアウトするリスト構造単位としては、マルチプロセッサシステムの場合、その時点で各プロセッサが同時に使用していないノード或いは使用頻度の低いノードで構成されるリスト構造単位を選択することになる。 使用していないノード或いは使用頻度の低いノードをリストアウトの対象とすることは、実記憶空間と仮想記憶空間との間でページ単位でデータ転送を行う従来の手法においても行われていたことである。」と主張している。 上記主張の「使用していないノード或いは使用頻度の低いノードをリストアウトの対象とすることは、実記憶空間と仮想記憶空間との間でページ単位でデータ転送を行う従来の手法においても行われていたことである。」という主張は妥当であると認められるが、それはあくまでページ単位でデータ転送を行う技術に関してであって、本件発明のようなリスト構造単位でデータ転送を行うものではない。 そもそも、本件発明と従来技術との差が、データ転送の単位がリスト単位であるかページ単位であるかというだけであり、しかも、ページ単位でデータ転送を行う従来技術に用いられている構成が、本件明細書に記載がないにもかかわらず適用容易であるとするならば、本件発明の進歩性についても疑義の生じるところである。 仮に、使用していないノード或いは使用頻度の低いノードをリストアウトの対象とすることが、当業者にとって自明のものだとしても、本件明細書には、上記使用していないノード或いは使用頻度の低いノードをどのような構成を用いて認識するのか記載されていない。 しかも、本件発明のリスト構造単位は、上述したように、単一のノードから構成されるものだけではなく、ポインタでリンクされたノードからなり、リストの一部分を構成し、かつ連続したノードで構成される1つのまとまりのある単位であるから、上記使用していないノード或いは使用頻度の低いノードを認識しただけでは、そのノードを含む複数のノードからなるリスト構造単位全体が、スワップアウトの対象として適当であるか否かを判定することはできず、本件発明において当該判定のための何らかの構成が必要となると考えられる。 しかしながら、本件明細書には、リスト構造単位が、スワップアウトの対象として適当であるか否かを判定するための構成については、全く記載されていない。 (v)したがって、リストという概念が本願出願日前から一般的に知られていたことであって、使用していないノード或いは使用頻度の低いノードをリストアウトの対象とすることは、実記憶空間と仮想記憶空間との間でページ単位でデータ転送を行う従来の手法においても行われていたことであるとしても、それをもって、本件発明におけるリスト構造単位を、具体的にどのような手順及びアルゴリズムによって決定するのかという点が当業者にとって自明のことであるとは言えない。 5.むすび したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の欄には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果が記載されているとは認められず、特許法第36条第3項の規定を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-01-24 |
結審通知日 | 2003-01-28 |
審決日 | 2003-02-14 |
出願番号 | 特願平1-59390 |
審決分類 |
P
1
8・
531-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 漆原 孝治 |
特許庁審判長 |
井関 守三 |
特許庁審判官 |
新井 則和 大橋 隆夫 |
発明の名称 | データ管理装置及び方法 |
代理人 | 小池 晃 |
代理人 | 田村 榮一 |
代理人 | 伊賀 誠司 |