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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04C
管理番号 1074582
審判番号 審判1999-16787  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-10-14 
確定日 2003-04-11 
事件の表示 平成8年特許願第256466号「木造家屋」拒絶査定に対する審判事件[平成10年4月21日出願公開、特開平10-102680]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
平成 8年 9月27日:出願
平成11年 8月31日:拒絶査定
平成11年10月14日:本件審判請求
平成11年11月15日:手続補正
平成14年 7月18日:平成11年11月15日の手続補正の却下の決定
平成14年 7月18日:拒絶理由通知
平成14年 9月30日:意見書提出
平成14年 9月30日:手続補正
平成14年11月 5日:最後の拒絶理由通知
平成15年 1月14日:意見書提出
平成15年 1月14日:手続補正

II.平成15年1月14日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年1月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容、補正後の本願発明
本件手続補正には、特許請求の範囲の請求項1を次のとおりに補正する補正事項が含まれている。
「【請求項1】 柱,土台,鴨居,梁,束,母屋,垂木,棟木,軒桁等の骨材に囲まれた空間部に該空間部を閉塞するパネルを嵌合して構築された木造家屋であって、前記パネルとして壁部分の空間部に嵌合されて該壁部を形成する木造家屋構築用パネルと屋根部分の空間部に嵌合されて該屋根部分を形成する屋根構築用パネルとを採用し、前記木造家屋構築用パネルは、4本の角材を釘等で連結し且つ補強材で補強することで形成された枠体の片面に合板等の平板が釘や接着剤を用いて設けられ、前記枠体に囲まれた内側には前記平板との間に所定の空隙を有するように断熱材が設けられ、枠体の上下には該空隙と連通する通気孔が設けられ、前記平板の上下は前記枠体に設けられた通気孔の外側に突出せしめられた構成で、該木造家屋構築用パネルが嵌合される空間部の上下に位置する骨材には、前記空隙と連通される凹部を形成した通気胴縁が夫々設けられ、前記木造家屋構築用パネルの平板の前記上下への突出部分が前記通気胴縁に当接せしめられることで、骨材と平板との間にして木造家屋構築用パネルの上下には空隙が夫々設けられ、且つ、この上下の空隙が前記平板と断熱材との間の空隙を介して連通することにより、空気が家屋の壁内の上下方向に流れるように構成され、一方、屋根構築用パネルは、4本の角材を釘等で連結し且つ補強材で補強された枠体の片面に平板が釘や接着剤を用いて設けられ、前記枠体に囲まれた内側には平板との間に所定の空隙を有するように断熱材が一端部のみ残して設けられ、該枠体の他端部には前記空隙と連通する通気孔が設けられ、前記断熱材が存在しない部分は枠体と平板と補強材のみにより囲まれた開口部に設定され、他端側には前記空隙と連通する通気孔が設けられ、前記開口部と前記空隙とは連通するように設けられ、この屋根構築用パネルは、木造家屋の棟から軒までの長さを有し且つ所定巾を有するように形成され、この屋根構築用パネルを横方向にのみ複数枚並設することで木造家屋の屋根を形成せしめる構成とし、断熱材が家屋の内側に位置する状態で且つ前記開口部が軒に位置する状態で前記屋根部分の空間部に配設されて該軒には該開口部により空気導入口が形成され、該空気導入口から導入された軒下の外気がそのまま空隙へ導入され、該外気は屋根の棟部に位置する通気孔を通過して空隙外へ導出されるように構成されていることを特徴とする木造家屋。」

上記補正事項は、補正前の請求項1に係る発明を特定する「木造家屋構築用パネル」及び「屋根構築用パネル」の構造を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件手続補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2.引用例
(1)先の拒絶理由で引用した刊行物1(実願平4-46603号(実開平6-8540号)のCD-ROM)には、「屋根パネルを用いて形成した木造家屋の屋根構造」に関して次の事項が記載されている。
「垂木間に配設された板状の断熱材と、この断熱材との間に形成された空間部を介して対向設置されかつ両端部が垂木に固定された野地板とを具備する屋根パネル相互を、母屋、軒桁、棟木などの躯体上に面方向に連続するように載置してなる屋根構造」(実用新案登録請求の範囲)、
「本考案に係る屋根構造は、所定の屋根パネル21を、母屋107、軒桁104、棟木108などの躯体上に面方向に連続するように載置して形成している。
一般に、木造建築Hは、図1に示すように、基礎で土台が支持され(図示せず)、この土台の上に通し柱101および管柱102が立設され、この通し柱101、および管柱102の上部に設置された胴差103上に立設された管柱102の上部が軒桁104で連結されている。この軒桁104の側部と他の軒桁104とは小屋梁105で連結され、この小屋梁105の上には小屋柄106が立設され、この小屋柄106の上部は母屋107または棟木108(図2参照)で連結されている。母屋107および棟木108は、階段状に設けられているが、屋根パネル21は、軒桁104、母屋107および棟木108の上部に配設される。」(段落【0011】)、
「屋根パネル21は、図1,2に示すように、垂木23,27,23間に配設された後述する板状の断熱材28と、この断熱材28との間に形成された空間部19を介して対向設置されかつ両端部が垂木23,23に固定された野地板29とから構成されている。この屋根パネル21は、垂木23が軒桁104、母屋107および棟木108の少なくとも2本の上部に接するように設置され、釘などにより固定されている。」(段落【0012】)、
「木造建築物は、建築物の高断熱化を図るために、たとえば図6に示すように、建築物の外壁材1の室内側に包括的に断熱材2を張設し、外壁材1と断熱材2との間に外側通気層3aを、断熱材2と各部屋Rとの間に内側通気層3bを形成している。これら通気層3内の空気は、移動することなく封止状態としてもよいが、床下空間4あるいは外壁材1等の内面に結露しないようにするには、通気層3内の空気を積極的に流通させる換気装置(図示せず)を設けることが好ましい。・・・このようにして形成した木造建築物は、日中高温時には、通気層3内の空気が対流を起こし、これにより自然換気が行なわれ、建築物内の通気性が向上するとともに床下空間4の結露が防止され、建築物の耐久性が向上する。また、自然換気により通気層3内の高温の空気を外部に排出することができ、室内の高温化を防止することができ、冷暖房効率を高めることができる。」(段落【0017】、【0018】)。
さらに、図1、図2には、屋根パネル21の軒先部には、断熱材28が設けられていない部分が存在し、この部分は軒先下方に向かって開口していること、図1、図3には、断面角形の左右の垂木23と中間部の垂木27及びこれらを連結する2本の角型断面部材で枠体が形成されていること、垂木を連結する角型断面部材には、上方に通気路が形成されていることが示され、図4には、枠体に囲まれた内側に野地板29と所定の空間部19を有するように断熱材28が全面に設けられた屋根パネル21において、垂木を連結する角型断面部材に切り欠き部が形成されていることが示され、図2、図3には、屋根パネルの空間部19は、切り欠き部を介して棟まで連通していることが示され、図6には、屋根の棟に、空気が外部に導出される開口が設けられていることが示されている。
これらの記載及び図面の記載からみて、刊行物1には、
「柱,土台,梁,母屋,垂木,棟木,軒桁等の骨材に囲まれた空間部を閉塞して構築された木造家屋であって、屋根部分の空間部に嵌合されて該屋根部分を形成する屋根パネルを採用し、壁部分の空間部には、外壁材1と断熱材2が設けられ、断熱材2は、外壁材1との間に上下方向に連通する空隙を有するように設けられ、外壁材1と断熱材2との間の空隙を介して、空気が家屋の壁内の上下方向に流れるように構成され、一方、屋根パネルは、断面角形の2本の垂木23及びこれを連結する2本の角型断面部材で枠組され、且つ垂木27で補強することで形成された枠体の片面に野地板29が設けられ、前記枠体に囲まれた内側には平板との間に所定の空間部19を有するように断熱材28が一端部のみ残して設けられ、該枠体の他端部には前記空間部19と連通する通気孔が設けられ、前記断熱材28が存在しない部分は枠体と野地板29と垂木27のみにより囲まれた開口部に設定され、他端側には前記空間部19と連通する通気孔が設けられ、前記開口部と前記空間部19とは連通するように設けられ、この屋根パネルは、断熱材28が家屋の内側に位置する状態で且つ前記開口部が軒に位置する状態で前記屋根部分の空間部に配設されて該軒には該開口部により空気導入口が形成され、該空気導入口から導入された軒下の外気がそのまま空間部19へ導入され、該外気は通気孔を通過して空間部19外へ導出されるように構成されている木造家屋。」の発明が記載されていると認められる。
(2)同じく刊行物2(実願昭56-27780号(実開昭57-140509号)のマイクロフイルム)には、「合板などでなる方形の外壁板1の内面に、四周縁部1a〜1dを残して複数の縦桟2を設けると共に取付基端側に複数の通孔4を有する横桟3を、少なくとも上記各縦桟2の上下両端から夫々僅か離れた位置の2個所に夫々組み設け、前記外壁板1との間に上記の各通孔4を通じて上下方に連通する一連の空気流路Sを形成するように上記各縦桟2及び各横桟3にて囲繞される気泡コンクリートを含む断熱壁層5を設けてなる断熱外壁パネル。」(実用新案登録請求の範囲)が記載され、「この考案の断熱外壁パネルAは図面第4図に示すように、建物一階では外壁板1の上縁部1cを梁8外面にまた同下縁部1dを土台7外面に夫々当て打付け固定して空気流路Sが断熱壁層5の外側に配されるように取付けられるものである。……また建物二階では外壁板1の上下縁部1c,1dを夫々二階の梁及び一階の梁8に夫々打付けて上記同様に取付けられるものである。」(明細書4頁10行〜5頁2行)ことが記載され、図面には、縦桟2及び横桟3は断面角形の角材であることが記載されている。
(3)同じく刊行物3(特開昭56-41942号公報)には、「土台、梁、主柱および間柱からなる枠組体の両面に内壁板と外壁板を貼合せ、前記外壁板の内側に断熱材を配した壁体において、前記梁と外壁板の間に通気可能なスペーサを設けたことを特徴とする通気性壁体。」(特許請求の範囲)が図面とともに記載され、第4図には、スペーサとして長尺材で幅方向に溝aを設けたもの6’または透孔bを設けたもの6''が記載されている。
(4)同じく刊行物4(実願昭63-16437号(実開平1-119710号)のマイクロフイルム)には、「内壁パネルと外壁パネル……との間に適宜間隔を有して配設される胴縁の長手方向に複数の通気孔を設けたことを特徴とする通気胴縁。」(実用新案登録請求の範囲)が記載され、第1図、第2図には、通気胴縁が土台2、軒桁5に設けられ、これら土台2、軒桁5と外壁パネル間に通気用の空隙が形成されることが記載されている。

3.対比・判断
補正発明と刊行物1記載の発明を比較すると、刊行物1記載の発明の「屋根パネル」、「垂木27」、「野地板29」、「空間部19」は、補正発明の「屋根構築用パネル」、「補強材」、「平板」、「空隙」に相当し、刊行物1記載の発明の枠体を形成する「断面角形の2本の垂木23及びこれを連結する2本の角型断面部材」は、「4本の角材」に相当するから、両者は、
「柱,土台,梁,母屋,垂木,棟木,軒桁等の骨材に囲まれた空間部を閉塞して構築された木造家屋であって、屋根部分の空間部に嵌合されて該屋根部分を形成する屋根構築用パネルを採用し、壁部分の空間部には、外壁材と断熱材が設けられ、外壁材と断熱材との間の空隙を介して、空気が家屋の壁内の上下方向に流れるように構成され、一方、屋根構築用パネルは、4本の角材を連結し且つ補強材で補強された枠体の片面に平板が設けられ、前記枠体に囲まれた内側には平板との間に所定の空隙を有するように断熱材が一端部のみ残して設けられ、該枠体の他端部には前記空隙と連通する通気孔が設けられ、前記断熱材が存在しない部分は枠体と平板と補強材のみにより囲まれた開口部に設定され、他端側には前記空隙と連通する通気孔が設けられ、前記開口部と前記空隙とは連通するように設けられ、この屋根パネルは、断熱材が家屋の内側に位置する状態で且つ前記開口部が軒に位置する状態で前記屋根部分の空間部に配設されて該軒には該開口部により空気導入口が形成され、該空気導入口から導入された軒下の外気がそのまま空隙へ導入され、該外気は通気孔を通過して空隙外へ導出されるように構成されている木造家屋。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:補正発明は、壁部分の空間部に嵌合されて該壁部を形成する木造家屋構築用パネルを採用し、該木造家屋構築用パネルは、4本の角材を釘等で連結し且つ補強材で補強することで形成された枠体の片面に合板等の平板が釘や接着剤を用いて設けられ、前記枠体に囲まれた内側には前記平板との間に所定の空隙を有するように断熱材が設けられ、枠体の上下には該空隙と連通する通気孔が設けられ、前記平板の上下は前記枠体の外側に突出せしめられた構成で、該木造家屋構築用パネルが嵌合される空間部の上下に位置する骨材には、前記空隙と連通される凹部を形成した通気胴縁が夫々設けられ、前記木造家屋構築用パネルの平板の前記上下への突出部分が前記通気胴縁に当接せしめられることで、骨材と平板との間にして木造家屋構築用パネルの上下には空隙が夫々設けられ、この上下の空隙が平板と断熱材との間の空隙を介して連通するものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、壁部分には、外壁材1と断熱材2が設けられ、断熱材2は、外壁材1との間に通気用の空隙を有するものではあるが、上記のような特定な構造でない点。
相違点2:補正発明の「屋根構築用パネル」の枠体は、「4本の角材を釘等で連結して形成されたものであり、枠体の片面に平板が釘や接着剤を用いて設けられたものであるのに対し、刊行物1記載の発明の「屋根構築用パネル」は、枠体や平板が具体的にどのようにして連結されて形成されているか明らかでない点。
相違点3:補正発明は、「屋根構築用パネル」が、木造家屋の棟から軒までの長さを有し且つ所定巾を有するように形成され、この屋根構築用パネルを横方向にのみ複数枚並設することで木造家屋の屋根を形成せしめる構成とし空気導入口から導入された軒下の外気がそのまま空隙へ導入され、該外気は屋根の棟部に位置する通気孔を通過して空隙外へ導出されるように構成されているのに対し、刊行物1記載の発明においては、屋根構築用パネルが、断熱材が一端側のみ残して設けられ開口部が設けられたパネルと枠体の片面に野地板が設けられ、該枠体に囲まれた内側には野地板と所定の空間部を有するように断熱材が全面に設けられたパネルとで形成され、軒先側に開口部が設けられたパネルを、それに隣接する棟側には、断熱材が全面に設けられた屋根パネルを載置し、通気が軒側のパネルの開口部,平板と断熱材の間の空隙,通気孔の順で通過し、さらに隣接する、断熱材が全面に設けられた屋根パネルの平板と断熱材の間の空隙、通気孔を通過して、屋根の棟下開口部から外へ流出するように構成されている点。
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
壁部分のパネルとして、補強材で補強された枠体の片面に合板等の平板が設けられ、前記枠体に囲まれた内側には前記平板との間に所定の空隙を有するように断熱材が設けられ、枠体の上下には該空隙と連通する通気孔が設けられ、平板の上下は枠体の外側に突出せしめられた構成で、平板の上下の突出部を介して骨材等に取り付けられる家屋構築用パネルは上記刊行物2に記載されているように本願出願前周知であり、パネルの枠体を4本の角材を釘等で連結して形成すること、平板を釘や接着剤を用いて枠体に取り付けることも、普通に行われていることにすぎない。
また、空気が外壁材と断熱材間を上下方向に流れるように構成する壁体において、土台、梁、軒桁等の骨材に、凹部や通気孔のある部材を取り付け、外壁材との間に通気路を形成することも、刊行物3、4に記載されているように周知の技術である。
そして、一般的に、屋根にパネルを採用する構造の木造家屋においては壁部分にもパネルを採用することが普通に行われていることから、刊行物1記載の発明の木造家屋において壁部分にパネルを採用し、外壁材と断熱材との間の空隙を空気が流れるようにするために、上記引用例2ないし4に記載の技術を適用し、上記相違点1に係る事項とすることは当業者が容易になし得ることである。
(2)相違点2について
上記(1)で述べたとおり、パネルの枠体を構成する4本の角材を釘等で連結すること、平板を釘や接着剤を用いて枠体に取り付けることは普通に行われていることにすぎず、この点は実質的な差異ではない。
(3)相違点3について
軒先から棟までを、一つの屋根パネルとし、このような屋根パネルを横方向にのみ複数枚並設することで木造家屋の屋根を形成することは、本願出願前周知の技術であり(例えば平成14年7月18日付け拒絶理由通知書で引用した特開平3-169946号公報、実開平5-73111号公報参照)、断熱材が一端側のみ残して設けられ開口部が設けられたパネルを、軒先から棟までを閉塞しうる長さとし、通気が該パネルの開口部、平板と断熱材の間の空隙、更に通気孔の順で通過して屋根の棟から外へ流出するように構成することは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
また、補正発明の効果は、全体として刊行物1ないし4記載の発明及び上記周知技術から予測しうる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、補正発明は、本願出願前に頒布された上記刊行物1ないし4に記載された発明及びに上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

III.本願発明について
1.本願発明
平成15年1月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成14年9月30日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「柱,土台,鴨居,梁,束,母屋,垂木,棟木,軒桁等の骨材に囲まれた空間部に該空間部を閉塞するパネルを嵌合して構築された木造家屋であって、前記パネルとして壁部分の空間部に嵌合されて該壁部を形成する木造家屋構築用パネルと屋根部分の空間部に嵌合されて該屋根部分を形成する屋根構築用パネルとを採用し、前記木造家屋構築用パネルは、補強材で補強された枠体の片面に合板等の平板が設けられ、前記枠体に囲まれた内側には前記平板との間に所定の空隙を有するように断熱材が設けられ、枠体の上下には該空隙と連通する通気孔が設けられ、前記平板の上下は前記枠体の外側に突出せしめられた構成で、該木造家屋構築用パネルが嵌合される空間部の上下に位置する骨材には、前記空隙と連通される凹部を形成した通気胴縁が夫々設けられ、前記木造家屋構築用パネルの平板の前記上下への突出部分が前記通気胴縁に当接せしめられることで、骨材と平板との間にして木造家屋構築用パネルの上下には空隙が夫々設けられ、且つ、この上下の空隙が前記平板と断熱材との間の空隙を介して連通することにより、空気が家屋の壁内の上下方向に流れるように構成され、一方、屋根構築用パネルは、補強材で補強された枠体の片面に平板が設けられ、前記枠体に囲まれた内側には平板との間に所定の空隙を有するように断熱材が一端部のみ残して設けられ、該枠体の他端部には前記空隙と連通する通気孔が設けられ、前記断熱材が存在しない部分は枠体と平板と補強材のみにより囲まれた開口部に設定され、他端側には前記空隙と連通する通気孔が設けられ、前記開口部と前記空隙とは連通するように設けられ、この屋根構築用パネルは、断熱材が家屋の内側に位置する状態で且つ前記開口部が軒に位置する状態で前記屋根部分の空間部に配設されて該軒には該開口部により空気導入口が形成され、該空気導入口から導入された軒下の外気がそのまま空隙へ導入され、該外気は通気孔を通過して空隙外へ導出されるように構成されていることを特徴とする木造家屋。」

2.引用例
平成14年11月5日付けの拒絶理由で引用した刊行物1ないし4には、前記「II.2」に記載したとおりの発明が記載されていると認められる。

3.対比・判断
本願請求項1に係る発明は、前記II.で検討した本願補正発明から、木造家屋構築用パネル及び屋根構築用パネルの「枠体」は、「4本の角材を釘等で連結して形成された」ものであり、枠体の片面に平板が「釘や接着剤を用いて」設けられたものであるとの特定事項、及び「屋根構築用パネル」が、「木造家屋の棟から軒までの長さを有し且つ所定巾を有するように形成され、この屋根構築用パネルを横方向にのみ複数枚並設することで木造家屋の屋根を形成せしめる構成とした」との特定事項を省いたものである。
そうすると、請求項1に係る発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「II.3」に記載したとおり、刊行物1ないし4に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明も、同様の理由により、刊行物1ないし4に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、刊行物1ないし4に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-02-03 
結審通知日 2003-02-14 
審決日 2003-02-27 
出願番号 特願平8-256466
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 鈴木 憲子
山口 由木
発明の名称 木造家屋  
代理人 吉井 雅栄  
代理人 吉井 剛  

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