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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1074761
異議申立番号 異議2001-71511  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-03-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-05-28 
確定日 2003-01-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3111583号「再剥離性粘着シート」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3111583号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3111583号の請求項1〜3に係る発明の出願は、平成4年1月27日(優先権主張平成3年6月29日 日本)に出願され、平成12年9月22日にその特許権の設定登録がなされ、その後押谷泰紀より特許異議の申立てがされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年10月9日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求は、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである。
(ア)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項2の記載について、「ビデオカセット、オーディオカセット、フロッピーディスクの被着体に貼着使用する請求項1記載の再剥離性粘着シート。」を「前記粘着剤が、カルボキシル基及び/又は水酸基含有アクリル系共重合体に架橋剤としてポリイソシアネート化合物、又はポリエポキサイド化合物を配合し、カルボキシル基及び/又は水酸基とイソシアネート基、又はエポキシ基とを架橋反応させた2液架橋型粘着剤であり、かつ、ビデオカセット、オーディオカセット、フロッピーディスクの被着体に貼着使用する請求項1記載の再剥離性粘着シート。」と訂正する。
(イ)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1の記載について、「填量」を「填料」と訂正する。
(ウ)訂正事項c
特許請求の範囲の請求項1の記載について、「粘着層」を「粘着剤層」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)訂正事項aは再剥離性粘着シートにおける2液架橋型粘着剤を具体的に限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、明細書の段落番号【0024】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書に記載の範囲内の訂正である。
(イ)及び(ウ)の訂正事項b及び訂正事項cは明細書の段落番号【0007】の記載を根拠とするものであり、明らかな誤記を訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
そして、いずれの訂正事項も、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上の特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)むすび
以上のとおりであるから上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正は認められるから、 特許第3111583号の請求項1〜3に係る発明(以下、「本件発明1〜3」という)上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】 剥離シート、粘着剤層、表面基材を積層してなる再剥離性粘着シートにおいて、該表面基材が、下記(1)、(2)式を満たす針葉樹パルプ繊維を全パルプ繊維中の25重量%以上、填料を全パルプ繊維分に対して2〜10重量%含有してなる基紙の表面に、少なくとも澱粉及び合成サイズ剤を含有する塗被液を塗被、乾燥した表面基材であり、且つ該粘着剤層を形成する粘着剤が、エマルジョン系または溶剤系の2液架橋型粘着剤であって、JIS Z 0237に準拠するポリスチレン板に対する180°接着力が引張り速さ50mm/minにおいて200g/25mm以上であることを特徴とする再剥離性粘着シート。
1.0≦ L ≦3.0 (1)
0.4≦d/D≦0.8 (2)
L:J.TAPPI No.52に定める方法で測定した長さ加重平均繊維長(mm)
D:顕微鏡写真法にて測定した平均繊維径(μm)
d:顕微鏡写真法にて測定した平均ルーメン径(μm)
【請求項2】前記粘着剤が、カルボキシル基及び/又は水酸基含有アクリル系共重合体に架橋剤としてポリイソシアネート化合物、又はポリエポキサイド化合物を配合し、カルボキシル基及び/又は水酸基とイソシアネート基、又はエポキシ基とを架橋反応させた2液架橋型粘着剤であり、かつ、ビデオカセット、オーディオカセット、フロッピーディスクの被着体に貼着使用する請求項1記載の再剥離性粘着シート。
【請求項3】 表面基材として、その表面に高分子化合物と顔料を主成分とする塗被組成物を設けた後、平滑化処理を施してなる熱転写記録適性を有する塗被紙を用いる請求項1または2記載の再剥離性粘着シート。
(なお、本件訂正明細書原文においては、「(1)」及び「(2)」は丸数字の1及び丸数字の2で記載されている。)

(2)申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠として甲第1〜7号証を提出し、訂正前の請求項1〜3に係る発明は、甲第1〜7号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、当該請求項1〜3に係る特許は取り消されるべき旨主張している。
(3)各引用刊行物及びその記載内容
当審が通知した取消の理由に引用した刊行物1〜7には、以下の事項が記載されている。

刊行物1:特開昭63-15873号公報(異議申立人の提出した 甲第1号証)
刊行物1には、「剥離シートに粘着剤を塗布乾燥後、上紙を接合する粘着シートの製造法において、該粘着剤として炭素数4〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルをモノマー成分として90重量%以上用いて重合されたエマルジョン系の粘着剤を使用し、該上紙として紙層間強度・・・が200×1/1000ft・lb/in2以上で且つ紙層間強度と縦横方向の引張り強さ・・・の平均値の積が2.0kg・ft・lb/in2以上の繊維シートを使用することを特徴とする再剥離用粘着シートの製造法。」(特許請求の範囲の請求項1)、「特に再剥離適性を備えた粘着シート・・・一般に粘着剤層を中間層として表面基材と剥離シートを積層形態に接合させて構成したものである。」(第1頁右下欄3〜9行)、 「これまでの再剥離用粘着シートは、再剥離特性を備えた一液エマルジョン型の粘着剤が存在しなかったことから、2液(粘着性成分と硬化剤とよりなる)溶剤型の粘着剤が使用されており、・・・一液エマルジョン型の粘着剤を使用した再剥離用粘着シートの開発が待望されているのが現状である。」(第1頁右下欄19行〜第2頁左上欄6行)、 「実施例2 晒針葉樹クラフトパルプ(NBKP)40重量部、晒広葉樹クラフトパルプ(LBKP)55重量部、未晒広葉樹グラインドパルプ(LUGP)5重量部・・・抄紙した紙に、澱粉1.8重量部、スチレンマレイン酸コポリマー0.1重量部を表面サイズし、・・・粘着シート用上紙を得た。この上紙の紙層間強度は・・・であった。別に・・・を用いて乳化共重合粘着剤を得た。・・・再剥離用粘着シートを得た・・・再剥離したが、上紙が破壊したり、粘着剤が被着体に残ることはなく極めて優れた再剥離性を示した。」(第5頁左下欄9行〜同頁右下欄19行)
と記載されている。
刊行物2:「製紙科学」有限会社中外産業調査会、昭和57年6月25日 、284〜287頁(同甲第2号証)
刊行物2には、トウヒ、マツ、トガサワラの針葉樹の未晒パルプの繊維長が2.6mmである点が記載されている。(第287頁の第9-3表)

刊行物3:「化学・工業、セルロースハンドブック」株式会社朝倉書店、 昭和33年1月10日、24〜29、90、91、172 〜175頁(同甲第3号証)
刊行物3の第28頁下から7行〜第29頁5行、表2・4表、第90頁下から7行〜第91頁1行、第172頁下から10行〜第173頁5行には、針葉樹の大部分を構成する仮導管(通常繊維と称せられる)の寸法(長さ、幅、膜壁の厚さ)と共に一般に長い繊維のパルプから強い紙ができ、針葉樹材の繊維は平均3mm内外の長い繊維であるので製紙用パルプとして広葉樹材より優れて、叩解により繊維長は減少する旨記載されて、また、「紙料には、填料としてクレー、タルク、酸化チタン・・・などの鉱物質粉末を混入し、紙の不透明度及び白色度を増し、平滑度及び仕上げを向上させている。・・・填料の紙料に対する添加量は紙の種類により5・14表に示すように異なる。・・・填料の添加は紙の強さを減少させる傾向があって・・・」(第175頁18〜38行)と記載され、5・14表にはオフセット印刷用紙に対する填料の添加量が0〜10であることが記載されている。

刊行物4:特開昭61-89279号公報(同甲第4号証)
刊行物4には、「耐水性、層間強度および柔軟性の優れた原紙の表面に、・・・顔料および接着剤を主成分とする水性顔料塗料を塗被して上塗り層を設けてなる表面基材の裏面に再剥離性粘着剤層を設けたことを特徴とするタイトル表示ラベル用粘着シート。」(特許請求の範囲)、「タイトル表示ラベル用粘着シートに関するもので・・・特に、ビデオカセット、オーデイオカセット、フロツピーデイスク等の・・・タイトル表示ラベル用粘着シート」(第1頁左下欄14〜20行)、 「このようにして得られた表面基材は、・・・浮き、ひじわ、破れ、剥れが生じないように強接着力を有し、かつ剥がしたときに接着剤の糊残りや表面基材の破けや、被着体表面の汚染が起こらないような再剥離性粘着剤層が設けられ・・・接着力は、500〜2000g/25mm中で、このような接着力が得られる再剥離性粘着剤としては、アクリル系粘着剤を選択使用することが出来る。」(第3頁右上欄20行〜同頁左下欄10行)、 「表面基材の表面には、アクリル2液型粘着剤(東洋インキ製粘着剤オリパイン100部+硬化剤3部+トルエン30部)を30g/m2塗被し・・・タイトル表示ラベル用粘着シートを得た。」(第4頁右上欄20行〜同頁左下欄4行)と記載され、その実施例1又は2には原紙配合組成としてLBKP90重量部とNBKP10重量部、填料15重量部又は0重量部を含む原紙に塗装を施した表面基材にアクリル2液型粘着剤からなる粘着層を設けた粘着シートが記載されている。

刊行物5:特開昭55-75473号公報(同甲第5号証)
刊行物5には、「再剥離型粘着シートには通常架橋タイプの粘着剤が多く使用される」(第2頁左上欄9〜10行)と記載され、実施例4〜6、第2表には表面基紙としてキャストコーテッド紙を用いた、2液架橋型粘着剤層の表面が粗面状態にある粘着シートについて、粘着紙の試験法JISZ1523により測定した粘着力が記載されている。

刊行物6:実願昭60-69497号(実開昭61-185075号)の マイクロフィルム(同甲第6号証)
刊行物6には、「フロッピーディスクカートリッジのカートリッジケースに張り付け、その記憶内容の見出しなどを書き込む貼り替え可能なラベル」(第1頁18〜20行)と記載されている。

刊行物7:特開昭54-94003号公報(同甲第7号証)
刊行物7には、「レーベル用紙は・・・例えば上質紙、色上質紙、中質紙・・・にカオリン、クレー・・・等の顔料と・・・PVCラテックス等の接着剤を・・・塗布加工した紙まで各種の紙の使用が用いられる。」(第3頁左上欄2〜15行)と記載されている。

(4)対比・判断
(ア)本件発明1について
刊行物1には、粘着剤層を中間層として表面基材(上紙)と剥離シートを積層形態に接合させて構成した再剥離用粘着シートが記載され、粘着剤として一液エマルジョン型の粘着剤を使用すること、表面基材として特定の紙層間強度を有する繊維シートからなる上紙を使用すること、そして具体的に、実施例として、晒針葉樹クラフトパルプ(NBKP)40重量部、広葉樹クラフトパルプ60重量部の配合の繊維シート、また澱粉およびスチレンマレイン酸コポリマーを表面サイズしている例が記載されていることから、刊行物1には、表面基材に針葉樹を原料としたパルプを40重量%使用し、更に、澱粉及び合成サイズ剤を含有する塗被液を塗被した繊維シート(表面基材)を使用し、粘着剤に一液エマルジョン型の粘着剤を使用した再剥離性粘着シートが記載されていると認められる。
そこで、本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は以下の点で相違している。
(1)本件発明1が表面基材の基紙における針葉樹パルプ繊維の平均繊維長、平均繊維径に対するルーメン径の比及び填料の含有量を特定しているのに対し、刊行物1の発明が表面基材の基紙における針葉樹パルプの平均繊維長、平均繊維径に対するルーメン径の比及び填料については特に記載がない点
(2)本件発明が剥離性粘着剤として2液架橋型粘着剤で、特定の測定方法で測定した接着力を有する粘着剤であるのに対し、後者が一液エマルジョン型の粘着剤であり、その接着力については特に記載がない点
以下、上記相違点(1)及び(2)について検討する。

相違点(1)についてみると、刊行物2にはトウヒ、マツ、トガサワラの針葉樹パルプの繊維の長さが2.6mmである旨の記載があり、また刊行物3には針葉樹パルプについて中空管状の繊維の長さ(針葉樹材の繊維は平均3mm内外の長い繊維である)、幅、膜壁の厚さ等の寸法及び繊維の内腔(ルーメン径)の状態に関する記載がある。
しかし、針葉樹パルプの繊維の長さについては、刊行物3の2・4表に示されている針葉樹材の長さの記載によれば平均繊維長が3mm以上のものがみられるように、針葉樹パルプの繊維であるとしてもその平均繊維長が必ず本件発明1の3mm以内にあるとはいえない。
また、平均繊維径に対するルーメン径の比についても、刊行物3の2・4表に示されている針葉樹材中のトドマツは、異議申立人の主張のように、0.78(特許異議申立書の第10頁6〜17行の記載参照)と本件発明1の数値範囲(0.4≦d/D≦0.8)内にあるとしても、同表に示されている、例えば、カラマツは特許権者の主張のように、0.86(異議意見書の第11頁7〜14行に記載参照)と本件発明1の数値範囲外のものであるから、針葉樹パルプの繊維であればその平均繊維径に対するルーメン径の比が本件発明1の数値範囲内であるとはいえない。
してみれば、刊行物2及び3の記載からみると針葉樹パルプの平均繊維長及び平均繊維径に対するルーメン径の比が必ずしも本件発明の数値範囲内であるとは言い切れず、本件発明1の上記パルプ繊維の特定が針葉樹パルプが固有的に有する本来の性状を単に規定しているものとはいえず、しかも、刊行物2及び3には針葉樹パルプの平均繊維長、平均繊維径に対するルーメン径の比、その全パルプ繊維中の配合割合、全パルプ繊維中の填料の含有量、澱粉及び合成サイズ剤を含む塗被を用いた表面基材の構成の組み合わせに基づいて、浮きめくれ、再剥離性かつ印字効果を同時に奏する再剥離用粘着シートが得られる点については記載も示唆もされていないので、上記相違点(1)の構成を当業者が容易に想到し得るものと認められない。
次に、相違点(2)についてみると、刊行物4には原紙に層間強度及び柔軟性の優れた原紙に再剥離性粘着剤層を設けたタイトル表示ラベル用粘着シートにおいて浮き、剥れが生じないように強接着力を有し、剥がした時に接着剤の糊残りや表面基材の破けが起こらないような再剥離性粘着剤として接着力500〜2000g/25mmのアクリル系粘着剤用いることが記載されているが、接着力の測定方法については特に記載がなく、またその実施例にはアクリル2液粘着剤を用いる例が記載されているが、その表面基材における原紙配合組成は全パルプ繊維中NBKP(針葉樹パルプ)が10重量部であり、填料は全パルプ繊維に対し15重量部又は0重量部であるものしか例示されておらず、つまり本件発明1の表面基材の構成と異なる粘着シートに関するものであるから、刊行物4の粘着剤の接着力の程度は、粘着シートの浮き、剥れが生じないような強接着力であるといっても、本件発明1の接着力と同程度のものであるとはいえず、かつ、刊行物4には本件発明1で用いる2液架橋型粘着剤の特定の測定方法で測定した接着力とシートの浮きめくれ防止との関係については記載がなく、示唆もされていない。
刊行物5には、再剥離型粘着シートに通常架橋タイプの粘着剤が多く使用されること、実施例4〜6には表面基紙としてキャストコーテッド紙を用いた、2液架橋型粘着剤層をその表面が粗面状態にある粘着シートについて、粘着紙の試験法JIS Z1523により測定した粘着力(引張速度300mm/分でのスチレン板に対する180°接着力)が記載されているのみで、本件発明1の特定の測定方法で測定した粘着剤の接着力とシートの浮きめくれ防止との関係については記載がなく示唆もない。
さらに、刊行物4及び5には本件発明1の特定の針葉樹パルプ繊維を含む表面基材に適用して、シートの浮きめくれ防止と再剥離性を同時に得るために再剥離用粘着シート粘着剤として2液架橋型粘着剤の特定の測定方法で測定した接着力を有す2液架橋型粘着剤用いることは記載も示唆もされていなので、上記相違点(2)の構成を当業者が容易に想到し得るものと認められない。
また、刊行物6には、再剥離性粘着シートがフロッピーディスクカートリッジ用貼り替えラベルに使用されることが、刊行物7には、レコード盤等に融着されるレーベル用紙に顔料や高分子化合物を含む塗被組成物を塗布し平滑した紙を使用する点が記載されているにすぎず、本件発明1の特定のパルプ繊維を含む表面基材と特定の接着力を有する2液架橋型粘着剤を組み合わせることについては記載も示唆もないから、刊行物1に記載の発明に刊行物2〜7に記載の事項を合わせて勘案しても上記相違点(1)及び(2)の構成は容易に想到し得るとはいえない。
そして本件発明1は上記相違点(1)、(2)の構成を組合わせて採用することにより、貼付け時には不必要な浮きめくれが無く、且つ優れた再剥離性を有すると同時に、印字効果の優れた再剥離性粘着シートが得られるという明細書に記載の顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は刊行物1〜7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(イ)本件発明2及び3について
本件発明2は本件発明1を引用し、更に再剥離性粘着シートにおける2液架橋型粘着剤を特定のものに技術的に限定するものであり、また本件発明3は本件発明1を引用し、更に再剥離性粘着シートにおける表面基材を熱転写記録適性を有するものに技術的に限定するものであるから、本件発明2および3は上記本件発明1と同じ理由により、刊行物1〜7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜3についての特許を取り消すことはできない。

また、他に本件発明1〜3についての特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
再剥離性粘着シート
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 剥離シート、粘着剤層、表面基材を積層してなる再剥離性粘着シートにおいて、該表面基材が、下記▲1▼、▲2▼式を満たす針葉樹パルプ繊維を全パルプ繊維中の25重量%以上、填料を全パルプ繊維分に対して2〜10重量%含有してなる基紙の表面に、少なくとも澱粉及び合成サイズ剤を含有する塗被液を塗被、乾燥した表面基材であり、且つ該粘着剤層を形成する粘着剤が、エマルジョン系または溶剤系の2液架橋型粘着剤であって、JIS Z 0237に準拠するポリスチレン板に対する180°接着力が引張り速さ50mm/minにおいて200g/25mm以上であることを特徴とする再剥離性粘着シート。
1.0≦L≦3.0 ▲1▼
0.4≦d/D≦0.8 ▲2▼
L:J.TAPPI No.52に定める方法で測定した長さ加重平均繊維長(mm)
D:顕微鏡写真法にて測定した平均繊維径(μm)
d:顕微鏡写真法にて測定した平均ルーメン径(μm)
【請求項2】 前記粘着剤が、カルボキシル基及び/又は水酸基含有アクリル系共重合体に架橋剤としてポリイソシアネート化合物又はポリエポキサイド化合物を配合し、カルボキシル基及び/又は水酸基とイソシアネート基、又はエポキシ基とを架橋反応させた2液架橋型粘着剤であり、
かつ、ビデオカセット、オーディオカセット、フロッピーディスクの被着体に貼着使用する請求項1記載の再剥離性粘着シート。
【請求項3】 表面基材として、その表面に高分子化合物と顔料を主成分とする塗被組成物を設けた後、平滑化処理を施してなる熱転写記録適性を有する塗被紙を用いる請求項1または2記載の再剥離性粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は再剥離性粘着シートに関し、特にビデオカセット、オーディオカセット、フロッピーディスク等に対し優れた接着性を有すると共に、さらに印刷適正や印字効果に優れた再剥離性粘着シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
粘着シートは商業用、事務用、家庭用等非常に広範囲にわたってラベル、シール、ステッカー、ワッペン等に加工して使用されている。粘着シートの一般的な構成は、表面基材と剥離シートとの間に粘着剤層を形成したものであり、表面基材には紙、フィルム、金属フォイル等が用いられ、剥離シートとしてはグラシン紙のような高密度原紙、クレーコート紙、ポリエチレンラミネート原紙等にシリコーン化合物や弗素化合物の如き剥離剤を塗被したものが用いられる。また、粘着剤としては、ゴム系、アクリル系、ビニルエーテル系等のエマルジョン、溶剤又は無溶剤型の各種粘着剤が使用される。かかる粘着シートの構成成分の1つである表面基材はその表面に各種印刷や印字が施され、商品等に貼付けされた後は被着体に貼りついたまま永続的に利用される永久接着タイプのものと、商品等の関係から表示の目的を達成した後は剥離され破棄される再剥離タイプのものとがある。
【0003】
従来、画像や音楽等の記録が何度でも繰り返し行うことのできるビデオカセット、オーディオカセット、フロッピーディスク等の用途には再剥離タイプの粘着シートが広く使用されている。かかる用途の粘着シートには、ビデオカセットデッキ等の機器内でラベルの浮きめくれが生じると、それが機械の故障の原因となる為、貼付け期間中には不必要なラベルの浮きめくれの無いことが要求される。さらに、テープ、ディスク内の画像、音楽等を新たに記録しなおした場合、ラベルは剥離、破棄されるが、その際、上紙破れや被着体であるカセット、ディスクに糊残りが無く容易に剥離できることが必要である。
【0004】
しかし、現在ビデオカセット、オーディオカセット、フロッピーディスク等の用途に使用されている再剥離性粘着シートの多くは、貼付け期間中には不必要なラベルの浮きめくれを生じないが再剥離時に上紙破れや糊残りを生じたり、或いは、再剥離性は優れているが貼付け期間中には不必要なラベルの浮きめくれを生じる等の問題を有し、必ずしも満足のいくものが得られていないのが実情である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特にビデオカセット、オーディオカセット、フロッピーディスク等に対し貼り付け時にはラベルの不必要な浮きめくれが無く、且つ剥離時には優れた再剥離適性を有する再剥離性粘着シートを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を達成するために、本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、粘着シートを構成する表面基材に特定条件を満たすパルプ繊維を使用し、且つ粘着剤層に特定範囲の接着力を有する2液架橋型粘着剤を使用することにより、上記の如き相反する要求品質を満足する再剥離性粘着シートが極めて効率良く得られることを見出したのである。
【0007】
即ち、本発明は、剥離シート、粘着剤層、表面基材を積層してなる再剥離性粘着シートにおいて、該表面基材が、下記▲1▼、▲2▼式を満たす針葉樹パルプ繊維を全パルプ繊維中の25重量%以上、填料を全パルプ繊維分に対して2〜10重量%含有してなる基紙の表面に、少なくとも澱粉及び合成サイズ剤からなる塗被液を塗被、乾燥して得られる表面基材であり、且つ該粘着剤層を形成する粘着剤が、エマルジョン系または溶剤系の2液架橋型粘着剤であって、JIS Z0237に準拠するポリスチレン板に対する180°接着力が引張り速さ50mm/minにおいて200g/25mm以上であることを特徴とする再剥離性粘着シートである。
1.0≦L≦3.0 ▲1▼
0.4≦d/D≦0.8 ▲2▼
L:J.TAPPI No.52に定める方法で測定した長さ加重平均繊維長(mm)
D:顕微鏡写真法にて測定した平均繊維径(μm)
d:顕微鏡写真法にて測定した平均ルーメン径(μm)
【0008】
【作用】
再剥離性粘着シートの再剥離適性、特に上紙破れに関しては再剥離性粘着シートを構成する表面基材の紙層間強度が関係する。而して、本発明者等はラベルの再剥離時に上紙破れを生じない強い紙層間強度を有する表面基材について鋭意検討した結果、所望の効果を得るためには、特に紙層を構成する原料パルプの性質、配合量、及び填料、表面サイズ剤の添加量が重要であり、それらが相互に作用しあっていることを突き止めた。
【0009】
具体的には、表面基材の基紙は、下記▲1▼、▲2▼式を満たす針葉樹パルプ繊維を全パルプ繊維中の25重量%以上、且つ填料を全パルプ繊維分に対して2〜10重量%含有してなる基紙の表面に、少なくとも澱粉及び合成サイズ剤からなる塗被液を塗被することにより、ラベルの再剥離時に上紙破れを生じない強い紙層間強度を有する表面基材が得られるものである。
1.0≦L≦3.0 ▲1▼
0.4≦d/D≦0.8 ▲2▼
L:J.TAPPI No.52に定める方法で測定した長さ加重平均繊維長(mm)
D:顕微鏡写真法にて測定した平均繊維径(μm)
d:顕微鏡写真法にて測定した平均ルーメン径(μm)
【0010】
上記の条件式▲1▼及び▲2▼を満たすような針葉樹パルプ繊維としては、例えば針葉樹を原料としKP、SP、AP法等によって得る化学パルプの中から選択使用する。本発明で重要なことは、これらのパルプ繊維を基紙を構成する全パルプ繊維の25重量%以上含有することである。なお、上記のパルプ繊維を25重量%以上含有する限りにおいては、必要に応じ他の木材パルプ、ケナフ、竹、麻等の様な非木材パルプやポリエステルやポリオレフィン等の合成パルプ、或いは合成繊維、更にはガラス繊維、セラミック繊維等の無機質繊維も使用できる。
【0011】
而して、本発明の粘着シートを構成する表面基材の基紙において、25重量%以上を占めるパルプ繊維は上記の条件式▲1▼、▲2▼を満たす必要があるが、パルプ繊維の長さ加重平均繊維長(以下、L値)が3.0mmを越えると、抄紙工程での紙料の分散性が不良となり、良好な地合が得られず紙面の平滑性は低下する。一方、L値が1.0mm未満になると、紙層強度が極端に弱くなってしまう。その為、L値を1.0〜3.0mm、より好ましくは1.5〜2.5mmの範囲に特定するものである。また、上記条件式▲2▼のd/D比が0.8を越える場合、紙は潰れ易くなり、平滑性は向上するものの、不透明度が極端に低下し粘着シート加工後、貼付け時に被着体面の色、模様等が透けやすくなり隠蔽性に欠ける。他方、d/D比が0.4未満の場合は、繊維が硬くなりすぎて紙が潰れ難く、紙面の平滑性が低下し印刷効果が劣る。更に、紙層強度も弱くなる。その為、d/D比を0.4〜0.8、好ましくは0.45〜0.75の範囲に特定するものである。
【0012】
因みに、パルプ繊維長の測定方法には篩別法によるパルプ繊維長測定法(TAPPI STD T233hm-82)や投影法によるパルプ繊維長測定法(TAPPI STD T232hm-85)等があるが、本発明でいうJ.TAPPI No.52に定める方法で長さ加重平均繊維長を測定する方法は、これらの方法とは異なり高い検出力を持ち繊維の幅、繊維壁の厚み、繊維の柔軟性等の影響を受けることなく繊維長分布を自動的に測ることができるという特長を有している。なお、本発明の各実施例等における測定はフィンランドのKAJAANI社製のFS-100型機を用い測定したものである。
【0013】
また、平均繊維径と平均ルーメン径については顕微鏡写真から測定した。顕微鏡写真を撮る際は、パルプ繊維をアクリル樹脂で包埋しミクロトームで作った薄い切片を用いて行い、各々について200本の繊維を測り平均値を求めた。因みに、優れた再剥離適性を有する表面基材を得るためには、かくして調製したパルプ繊維を基紙中の全パルプ繊維中の25重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上含有せしめることが必要である。因みに、該パルプ繊維を使用した場合においても、その含有量が全パルプ繊維中の25重量%未満である基紙の場合には、十分な紙層間強度が得られず、従って満足できる再剥離適性は得られない。
【0014】
さらに、本発明の粘着シートを構成する表面基材の基紙は、填料を全パルプ繊維分に対して2〜10重量%、より好ましくは4〜6重量%含有せしめるものである。因みに、填料が2重量%未満では紙面の平滑性が低下し、一方、10重量%を越える場合にはパルプ繊維どうしの絡み合いが阻害されるため紙層間強度が極端に弱くなり、満足できる再剥離適性が得られない。
【0015】
本発明で使用される填料としては、特に限定するものではないが、例えばタルク、カオリン、クレー、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、硫酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム、ホワイトカーボン、アルミノ珪酸塩、シリカ、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト等の鉱物質填料やポリスチレン樹脂微粒子、尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機合成填料等が挙げられ、更に古紙やブローク等に含まれる填料も再生使用できる。なお、これらの各種填料の中でも平均粒子径が0.1〜9μm、より好ましくは0.3〜6μmの填料は、平滑性に優れた紙が得られるため、特に好ましく使用される。
【0016】
なお、紙料中にはパルプ繊維や填料の他に、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、従来から使用されている各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性或いは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤が必要に応じて適宜選択して使用される。例えばAl、Fe、Sn、Zn等の多価金属化合物(硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の塩基性アルミニウム化合物や水に易分散性のアルミナゾル等の水溶性アルミニウム化合物或いは硫酸第一鉄、塩化第二鉄等)や各種サイズ剤(アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン-アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤やロジン系のサイズ剤等)及び各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、植物ガム、ポリビニールアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー粒子分散物及びこれらの誘導体或いは変性物等、更にはコロイダルシリカ、ベントナイト等の各種化合物が例示できる。なお、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を紙の用途に応じて適宜添加することもできる。
【0017】
また、抄紙方法については特に限定されず、例えば抄紙pHが4.5付近である酸性抄紙法、炭酸カルシウム等のアルカリ性填料を主成分として含み、抄紙pHを約6の弱酸性〜約9の弱アルカリ性とする、所謂中性抄紙法等全ての抄紙方法に適用することができ、抄紙機も長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、丸網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を適宜使用できる。
【0018】
さらに優れた再剥離適性を有する表面基材を得るために、上記抄紙により得られた表面基材の基紙表面に澱粉を主成分とし、助剤として少なくとも合成サイズ剤を含有する塗被液を塗被することが必要である。表面基材の基紙表面に塗被される澱粉としては、例えば酸化変性澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉、アセチル化澱粉、エーテル化澱粉、アルデヒド化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、燐酸化澱粉、α化澱粉等が挙げられる。その澱粉塗被液は、濃度として5.0〜15.0重量%、好ましくは6.0〜10.0重量%の範囲に調製されて用いられるのが望ましい。因みに、5.0重量%未満であると紙層間強度の向上に対して十分な効果が得られず、一方、15.0重量%を越える場合、巻取り作成時に紙面どうしが接合する、いわゆるブロッキング現象をおこしてしまう。
【0019】
合成サイズ剤としては、例えばアルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン-アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤やロジン系のサイズ剤等が挙げられる。その添加量としては澱粉塗被液100重量%に対して、0.1〜1.0重量%、好ましくは0.3〜0.7重量%の範囲で用いられるのが望ましい。因みに、0.1重量%未満であると紙層間強度の向上に対して十分な効果が得られず、一方、1.0重量%を越えると紙層間強度の向上に対してより一層の効果は認められず経済的な面から必要性に乏しい。
【0020】
該塗被液は、ツーロール或いはメータリングブレード式のサイズプレス、グラビアコーター、ゲートロールコーター、ビルブレード及びショートドウェルコーター等の公知の塗被方法によって塗被される。塗被量は乾燥重量として両面で3.0〜8.0g/m2程度が望ましい。また、必要に応じてキャレンダー、スーパーキャレンダー等の平滑化装置により平滑性を付与してもよい。
【0021】
ところで、上記の如くして調製された表面基材は依然として、その表面はセルロース繊維を主体とするものであり、用途によってはそのまま使用することも勿論可能ではあるが、特に高品位の印刷や印字効果を必要とする、例えば熱転写記録やグラビア印刷等の場合には、印字の欠損が生じたり、シャープな画像や印字効果が得られず、印刷適性や記録適性の劣る表面基材となり易い。従って、上記の如き難点を解消するために、基紙表面に高分子化合物と顔料を主成分とする塗被組成物を設け、さらに平滑化処理を施した塗被紙を用いると一層優れた効果が得られるものである。
【0022】
因みに、高分子化合物としては、例えば澱粉、ポリビニルアルコール、ラテックス、カルボキシメチルセルロース、アルキルケテンダイマー、スチレン-アクリル系、オレフィン-無水マレイン酸系、高級脂肪酸系等が例示される。また、顔料としては、例えばカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、タルク等が適宜使用される。その他、必要に応じてエポキシ化合物等の耐水化剤、蛍光増白剤、消泡剤、帯電防止剤、染料等を添加することもできる。なお、塗被組成物の塗被量としては乾燥重量で片面当たり5〜25g/m2程度で調節される。また、塗被組成物の塗被方法としては、ツーロール或いはメータリングブレード式のサイズプレス、ゲートロール、ビルブレードやショートドウェルコーター、スプレー等の装置で原紙表面に塗被される。
【0023】
なお、かくして得られた塗被紙は、通常のスーパーキャレンダ、グロスキャレンダ、ソフトコンパクトキャレンダ等の加圧装置を用いて、適宜平滑化処理が施される。特に、金属ロールの表面温度が80℃以上で処理すれば、さらに望ましい結果が得られる。オンマシンやオフマシンで適宜用いられ、加圧装置の形態、加圧ニップの数等も通常の平滑化装置に準じて適宜調節される。
【0024】
一方、本発明の粘着シートの粘着剤層を構成する再剥離型粘着剤としては、凝集力が高く再剥離時に被着体に対する糊残りが抑制されるため、カルボキシル基及び/又は水酸基含有アクリル系共重合体に架橋剤としてポリイソシアネート化合物、又はポリエポキサイド化合物を配合し、カルボキシル基及び/又は水酸基とイソシアネート基、又はエポキシ基とを架橋反応させた2液架橋型の粘着剤が用いられるが、本発明においては、特にJIS Z0237に準拠するポリスチレン板に対する180°接着力が引張速さ50mm/minにおいて200g/25mm以上である必要がある。
【0025】
ビデオラベルのカセットケースにおける浮きめくれ現象は粘着シートを構成する粘着剤の接着力が大きく関係しているが、本発明者等は、特にその被着体の種類と測定時における引張速さが重要であることを突き止めた。即ち、JIS Z0237に規定される180°接着力測定方法においては、被着体にステンレス板が使用される。一方、本発明になる再剥離性粘着シートが使用されるビデオカセットケース、フロッピーディスク等はその多くがポリスチレン成形物であり、また接着力は被着体の種類によって大きく異なることより、本発明においてはポリスチレン板における接着力が非常に重要である。
【0026】
また本発明者等は鋭意研究を行った結果、ラベルの浮きめくれ現象は従来のJIS Z0237に規定される300mm/minにおける接着力よりも、さらに低速の引張速さである50mm/minにおける接着力がより密接に関係していることを見出した。因みに、ポリスチレン板に対する180°接着力が引張速さ50mm/minにおいて200g/25mm未満であるとビデオカセットケース、フロッピーディスク等にラベルを貼り付け使用した場合、ラベルのエッジ部に不必要な浮きめくれや、或いはラベル表面にふくれ等が生じやすく、それがカセットデッキ等の装置の故障の原因となる。
【0027】
かくして本発明の粘着シートは、このようにして得られた表面基材と粘着剤を組み合わせることにより、貼付け時には不必要な浮きめくれが無く、且つ再剥離時には上紙破れや被着体糊残り等が無く優れた再剥離性を有するものである。なお粘着シートを構成する方法については格別の限定は無く、常法に従って剥離シートの剥離剤層面上に粘着剤を塗被、乾燥することにより粘着剤層を形成し、表面基材を貼り合わせて仕上げられる。該剥離シートとしては、グラシン紙のような高密度原紙、クレーコート紙、又はクラフト紙、上質紙にポリエチレン等をラミネートしたポリラミ紙等に、溶剤型の弗素樹脂やシリコーン樹脂を乾燥重量で0.05〜3g/m2程度塗被し熱硬化、電離放射線硬化等によって剥離剤層を形成したものが使用される。また粘着剤は、アクリル酸エステルの分子量の調節、水又は溶剤による希釈、或いは増粘等の手段によって、通常3,000〜8,000センチポイズ程度の粘度に調節して剥離シートに塗被されるが、この場合の塗被装置としては、例えばロールコーター、ナイフコーター、バーコーター、スロットダイコーター等が使用され、塗被量は乾燥重量で5〜50g/m2程度の範囲で調節される。
【0028】
また本発明の再剥離性粘着シートにおいて、表面基材と粘着剤層との間に顔料を含有する下塗り層を設けると、被着体に対する糊残りが一層抑制されるため好ましい実施態様のひとつである。下塗り層に含有させる顔料としては通常の無機、又は有機の顔料が使用でき、例えば、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、鉛等の各種金属の酸化物、水酸化物、硫化物、炭酸塩、硫酸塩、又は珪酸塩化合物やポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の固体高分子微粉末が挙げられる。なかでも、カオリン、タルク、シリカ、石膏、バライト粉、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチンホワイト、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸性白土、活性白土等の無機顔料を使用すると該粘着剤層との間でイオン的相互作用が加わり、より効果的に投錨効果が発揮される。下塗り層中に含有される顔料の量は、下塗り層を構成する全固形分の90重量%以下、より好ましくは80重量%以下とするのが望ましい。因みに、90重量%を越えると、下塗り層と表面基材との接合力が不十分となり顔料が脱落するという恐れがある。
【0029】
下塗り層には、顔料どうし、又は下塗り層と表面基材を固着させるための材料としてバインダーを使用するが、かかるバインダーとしては、例えばカゼイン、デキストリン、デンプン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体、エチレン・塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の天然、又は合成の樹脂バインダーが水溶液、又は水分散液の形で使用される。なお、下塗り層には、顔料の他にその性質を阻害しない範囲で消泡剤、分散剤等、目的に応じて種々の助剤を添加することも可能である。
【0030】
顔料を含有する下塗り層用塗被液の表面基材への塗被方法については、通常の塗被装置、例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、バーコーター等で塗被でき、塗被量は乾燥重量で2g/m2以上、好ましくは5〜10g/m2の範囲で調節される。
【0031】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また例中の「部」及び「%」は特に断わらない限り、それぞれ「重量部」、「重量%」を示す。
【0032】
実施例1
「表面基材の製造」
パルプA(L値=0.67mm、d/D=0.51、カナディアン・スタンダード・フリーネス(以下C.S.F.と記す)500ml)60部、条件式▲1▼、▲2▼を満たすパルプB(原料:針葉樹、L値=1.90mm、d/D=0.74、C.S.F.500ml)40部を配合したパルプスラリーに、カオリンを紙灰分が4%になるように添加し、さらにサイズ剤としてロジンサイズを絶乾パルプに対して1.4%、硫酸バンド2.0%を添加した。このパルプスラリーを長網多筒式シリンダードライヤー抄紙機で抄紙し,濃度9.0%の酸化澱粉(商品名:SK-20、日本コーンスターチ(株)製)溶液に、合成サイズ剤(商品名:ハマーコートS-700、ミサワセラミックケミカル(株)製)0.5%を添加して得られた塗被液を乾燥重量で5g/m2となるようにサイズプレスで塗被、乾燥後、4段スーパーキャレンダーで処理して、84g/m2の表面基材を製造した。
【0033】
「粘着シートの製造」
米坪85g/m2のグラシン紙にシリコーン剥離剤(商品名:KS-770、信越化学(株)製)を乾燥重量で0.9g/m2となるようにバーコーターで塗被、乾燥し剥離シートを得た。この剥離シートの剥離剤層面上に2液架橋型アクリル系粘着剤(商品名:サイビノールX-388-429E、サイデン化学(株)製)を乾燥重量で25g/m2となるようにロールコーターで塗被、乾燥し粘着剤層を得た。次いで、この粘着剤層上面に前記表面基材を重ねてプレスロールで貼り合わせ再剥離性粘着シートを製造した。
【0034】
実施例2
「表面基材の製造」
実施例1において、パルプAを60部、条件式▲1▼、▲2▼を満たすパルプC(原料:針葉樹、L値=2.10mm、d/D=0.60、C.S.F.500ml)を40部使用した以外は、実施例1と同様にして表面基材を製造した。
「粘着シートの製造」
この表面基材を使用した以外は、実施例1と同様にして再剥離性粘着シートを製造した。
【0035】
実施例3
「表面基材の製造」
実施例1において、パルプAを70部、パルプBを30部とした以外は、実施例1と同様にして表面基材を製造した。
「粘着シートの製造」
この表面基材を使用した以外は、実施例1と同様にして再剥離性粘着シートを製造した。
【0036】
実施例4
「表面基材の製造」
実施例1において、カオリンを紙灰分が6%になるように添加した以外は、実施例1と同様にして表面基材を製造した。
「粘着シートの製造」
この表面基材を使用した以外は、実施例1と同様にして再剥離性粘着シートを製造した。
【0037】
実施例5
「表面基材の製造」
実施例1において、濃度6.0%の酸化澱粉溶液に合成サイズ剤0.3%を添加して得られた塗被液を、乾燥重量で3g/m2となるようにサイズプレスで塗被、乾燥した以外は、実施例1と同様にして表面基材を製造した。
「粘着シートの製造」
この表面基材を使用した以外は、実施例1と同様にして再剥離性粘着シートを製造した。
【0038】
実施例6
「表面基材の製造」
実施例1と同様にして表面基材を製造した。
「粘着シートの製造」
実施例1において、2液架橋型アクリル系粘着剤として、商品名:AE224、日本合成ゴム(株)製を乾燥重量で20g/m2となるようにロールコーターで塗被、乾燥し粘着剤層を得た以外は、実施例1と同様にして再剥離性粘着シートを製造した。
【0039】
実施例7
実施例1で得られた表面基材の表面に、重質炭酸カルシウム100部(商品名:FMT-MAT、(株)ファイマテック製)、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス6部(商品名:T-038、日本合成ゴム(株)製)、リン酸エステル化澱粉6部(商品名:ニールガムA-55、松谷化学(株)製)からなる塗被組成物(固形分濃度30%)を乾燥重量で10g/m2となるようにエアーナイフコータで塗被、乾燥した後、12段スーパーキャレンダーを使用して、線圧200Kg/cm、金属ロール温度50℃の条件下で加圧処理を施し、平滑化処理した塗被紙を表面基材として用いた以外は、実施例1と同様にして再剥離性粘着シートを得た。
【0040】
比較例1
「表面基材の製造」
実施例1において、パルプAを80部、パルプBを20部とした以外は、実施例1と同様にして表面基材を製造した。
「粘着シートの製造」
この表面基材を使用した以外は、実施例1と同様にして再剥離性粘着シートを製造した。
【0041】
比較例2
「表面基材の製造」
実施例1において、パルプAを90部、パルプBを10部とした以外は、実施例1と同様にして表面基材を製造した。
「粘着シートの製造」
この表面基材を使用した以外は、実施例1と同様にして再剥離性粘着シートを製造した。
【0042】
比較例3
「表面基材の製造」
実施例1において、カオリンを紙灰分が20%になるように添加した以外は、実施例1と同様にして表面基材を製造した。
「粘着シートの製造」
この表面基材を使用した以外は、実施例1と同様にして再剥離性粘着シートを製造した。
【0043】
比較例4
「表面基材の製造」
実施例1において、塗被液のかわりに、水をサイズプレスで塗被、乾燥した以外は、実施例1と同様にして表面基材を製造した。
「粘着シートの製造」
この表面基材を使用した以外は、実施例1と同様にして再剥離性粘着シートを製造した。
【0044】
比較例5
「表面基材の製造」
実施例1と同様にして表面基材を製造した。
「粘着シートの製造」
実施例1において、2液架橋型アクリル系粘着剤として、商品名:AE245、日本合成ゴム(株)製を乾燥重量で20g/m2となるようにロールコーターで塗被、乾燥し粘着剤層を得た以外は、実施例1と同様にして再剥離性粘着シートを製造した。
【0045】
比較例6
「表面基材の製造」
実施例1と同様にして表面基材を製造した。
「粘着シートの製造」
実施例1において、2液架橋型アクリル系粘着剤として、商品名:BPW-5464、東洋インキ製造(株)製を乾燥重量で18g/m2となるようにロールコーターで塗被、乾燥し粘着剤層を得た以外は、実施例1と同様にして再剥離性粘着シートを製造した。
【0046】
このようにして得られた13種類の粘着シートについて下記の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0047】
【表1】

【0048】
各評価項目の評価法は,下記の通りである。
〔L値(長さ加重平均繊維長)の測定〕
J.TAPPI No.52に定める方法でパルプ繊維の長さ加重平均繊維長(μm)を測定した。
〔d/Dの測定〕
ミクロト-ムで作られたパルプ繊維の薄い切片を顕微鏡写真で撮影し、その平均繊維径及び平均ル-メン径を測定し、d/Dを算出した。
【0049】
〔接着力の測定〕
JIS Z0237に準拠した方法で、ポリスチレン板に対する接着力を引張り速さ50mm/minで測定した。(単位:g/25mm)
【0050】
〔浮きめくれの測定〕
25mm×100mmの粘着シートサンプルをポリスチレン板に圧着し、70℃で7日間処理した後、試験片の浮きめくれを目視で判定した。
◎:浮きめくれは全くみられない。
○:やや浮きめくれがみられるが、実用上問題無い。
×:浮きめくれがみられ、実用上問題である。
【0051】
〔再剥離性の測定〕
25mm×100mmの粘着シートサンプルをポリスチレン板に圧着し、70℃で7日間処理した後、10m/minの速さで試験片を剥がした。
◎:上紙破れ、被着体糊残りが無く、楽に剥がせた。
○:やや上紙破れがあるが楽に剥がせ、実用上問題無い。
△:上紙破れがあり、やや苦労して剥がせた。
×:上紙破れがひどく、再剥離は困難である。
【0052】
〔熱転写記録時の印字のシャープさ評価〕
神鋼電機製熱転写プリンタを用いて格子、ベタ、網点を有するテストパターンを記録し、その記録面をドットアナライザー(DA-3000/KSシステムズ(株)販売)により、30倍に拡大し、目視により評価した。
◎:細線が非常にシャープで極めて優れている。
○:細線がシャープで良好である。
【0053】
【発明の効果】
表1の結果から明らかなように、本発明の再剥離性粘着シートは、貼付け時には不必要な浮きめくれが無く、且つ優れた再剥離性を有すると同時に、印字効果の優れたものであった。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
▲1▼訂正事項a
特許第3111583号発明の明細書(特許明細書)中、特許請求の範囲の請求項2において、特許請求の範囲の減縮を目的として
「ビデオカセット、オーディオカセット、フロッピーディスクの被着体に貼着使用する請求項1記載の再剥離性粘着シート。」とあるのを、
「前記粘着剤が、カルボキシル基及び/又は水酸基含有アクリル系共重合体に架橋剤としてポリイソシアネート化合物、又はポリエポキサイド化合物を配合し、カルボキシル基及び/又は水酸基とイソシアネート基、又はエポキシ基とを架橋反応させた2液架橋型粘着剤であり、
かつ、ビデオカセット、オーディオカセット、フロッピーディスクの被着体に貼着使用する請求項1記載の再剥離性粘着シート。」に訂正する。
▲2▼訂正事項b
特許第3111583号発明の明細書(特許明細書)中、特許請求の範囲の請求項1において、誤記の訂正を目的として
「填量」とあるのを、
「填料」に訂正する。
▲3▼訂正事項c
特許第3111583号発明の明細書(特許明細書)中、特許請求の範囲の請求項1において、誤記の訂正を目的として
「粘着層」とあるのを、
「粘着剤層」に訂正する。
異議決定日 2002-12-27 
出願番号 特願平4-11913
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大畑 通隆  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 井上 彌一
鈴木 紀子
登録日 2000-09-22 
登録番号 特許第3111583号(P3111583)
権利者 王子製紙株式会社
発明の名称 再剥離性粘着シート  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 坂野 史子  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  
代理人 坂野 史子  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  

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