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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C01B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C01B
管理番号 1074764
異議申立番号 異議2000-71964  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-11-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-09 
確定日 2002-11-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2976299号「リチウム二次電池用負極材料」の請求項1ないし11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2976299号の訂正後の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2976299号の請求項1〜11に係る発明についての出願は、1996年11月14日(平成8年11月14日)(優先権主張 平成7年11月14日 日本)を国際出願日とする特願平9-518742号の一部を平成11年3月29日に新たに特許出願したものであって、平成11年9月10日にその発明について特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、請求項1〜11に係る特許について三菱化学株式会社(以下、申立人Aという)から、請求項1〜5に係る特許について樋口富子(以下、申立人Bという)から、請求項1〜11に係る特許について相田典子(以下、申立人Cという)から、それぞれ特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成12年11月6日付けで訂正請求がなされ、その後再度取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成14年5月14日付けで上記平成12年11月6日付け訂正請求が取り下げられると共に同日付けで新たな訂正請求がなされ、その後再々度取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成14年9月17日付けで上記平成14年5月14日付け訂正請求が取り下げられると共に同日付けで新たな訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち次の訂正事項a〜訂正事項dのとおり訂正するものである。
(1)訂正事項a
請求項1の記載に「二次電池用の炭素材料であって、」、「被覆後にトルエンによって洗浄された石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチを焼成した」及び「焼成前の被覆比が0.01〜0.2であり、石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチの一次QIが3%以下であり、かつトルエン不溶分が7.8〜30%であり、」という技術的な事項を追加すると共に、「芯材炭素材料」を「芯材黒鉛材料」と訂正して、請求項1を「二次電池用の炭素材料であって、芯材黒鉛材料の結晶のエッジ部分の一部または全部が、被覆後にトルエンによって洗浄された石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチを焼成した被覆形成用炭素材料により被覆されており、焼成前の被覆比が0.01〜0.2であり、石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチの一次QIが3%以下であり、かつトルエン不溶分が7.8〜30%であり、ほぼ球状乃至楕円体状であり、粉砕面を有しないことを特徴とする焼成した二層炭素材料。」と訂正する。
(2)訂正事項b
請求項2〜6を削除する。
(3)訂正事項c
請求項7〜11の項番をそれぞれ請求項2〜6とすると共に、新請求項2〜3中の「〜6のいずれか」を削除し、新請求項3の「負極材料とする」(本件特許掲載公報第1頁第2欄第11行)を、「負極を構成要素とする」に訂正し、新請求項4〜5の「請求項7または8」を「ことを特徴とする請求項2または3」と訂正し、新請求項6の「請求項7〜10」を「ことを特徴とする請求項2〜4」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書の段落の【0025】の「粒子状(鱗片状乃至塊状、繊維状、ウイスカー状、球状、破砕状など)の天然黒鉛」(本件特許掲載公報第4頁第7欄第29、30行)を、「粒子状(鱗片状乃至塊状、繊維状、ウイスカー状、球状など)の天然黒鉛」と訂正する。
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無について
(1) 上記訂正事項aについて
上記訂正事項aの内容は、次の(a-1)〜(a-3)に示すとおりのものである。
(a-1)「二次電池用の炭素材料であって、」を挿入する、
(a-2)訂正前の「被覆形成用炭素材料」に「被覆後にトルエンによって洗浄された石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチを焼成した」及び「焼成前の被覆比が0.01〜0.2であり、石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチの一次QIが3%以下であり、かつトルエン不溶分が7.8〜30%であり、」という技術的な事項を付加する、
(a-3)訂正前の「芯材炭素材料」を「芯材黒鉛材料」と訂正する。
そこで、これら訂正事項について検討すると、上記訂正事項(a-1)は、二層炭素材料の用途を「二次電池用の炭素材料であって、」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、明細書中に「この様な炭素材料をリチウム二次電池の負極材料として採用・・・」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第25〜26行)と記載されているからことからみて、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項(a-2)は、「被覆形成用炭素材料」を、「トルエンによって洗浄された石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチを焼成した」という原料及び製造方法で限定し、また、「焼成前の被覆比が0.01〜0.2であり、石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチの一次QIが3%以下であり、かつトルエン不溶分が7.8〜30%であり」という焼成前の状態を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、「トルエンで洗浄」することは、明細書中の「洗浄に用いる有機溶媒としては、トルエン・・・」(本件特許掲載公報第5頁第10欄第35、36行)の記載から、また「石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチで被覆」することは、明細書中の「芯材となる炭素材料をタール、ピッチなどの石炭系或は石油系の重質油・・・で被覆し」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29〜32行)の記載から、また「焼成した」は「炭化焼成する・・・」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第36行)の記載から、また「焼成前の被覆比が0.01〜0.2」であることは「被覆形成用炭素材料/(芯材炭素材料+被覆形成用炭素材料・・・0.01〜0.2であることが好ましい。・・・{(被覆後の粒径)-(被覆前原料の粒径)}/2として算出した値である。」(本件特許掲載公報第4頁第8欄第17〜35行)の記載から、また「一次QIが3%以下」であることは、明細書中の「原料中に存在する一次QIの少なくとも一部を除去し、残存する一次QIを3%以下(好ましくは1%以下)としたタールまたはピッチを用いることが好ましい。」(本件特許掲載公報第5頁第9欄第35〜38行)の記載から、それぞれ導き出せる事項である。
さらに「トルエン不溶分が7.8〜30%」であることは、明細書中の実施例(但し実施例12を除く)のトルエン不溶分の数値に基づくものであるから、上記訂正事項(a-2)は、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項(a-3)は、「芯材炭素材料」を「「芯材黒鉛材料」に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当するし、明細書には、「本発明においては・・・黒鉛材料を使用する。」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第12〜18行)と記載されているから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
(2)上記訂正事項bについて
上記訂正事項bは、請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当するし、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
(3)上記訂正事項cについて
上記訂正事項cは、請求項の削除に伴って項番を繰り上げると共に、「負極材料とする」を、「負極を構成要素とする」と訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するし、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
(d)上記訂正事項dについて
上記訂正事項dは、特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるために、明細書中の「粒子状(鱗片状乃至塊状、繊維状、ウイスカー状、球状、破砕状など)の天然黒鉛」の記載から「破砕状」を削除したものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するし、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
2-3.拡張・変更の存否
上記訂正事項のうち、上記訂正事項(a-1)、(a-3)及び訂正事項b〜dは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないと云えるから、訂正事項aのうちの上記訂正事項(a-2)について、その拡張・変更の存否を以下検討する。
訂正事項(a-2)は、本件発明の「被覆形成用炭素材料」について、「被覆後にトルエンによって洗浄された石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチを焼成した」及び「焼成前の被覆比が0.01〜0.2であり、石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチの一次QIが3%以下であり、かつトルエン不溶分が7.8〜30%であり、」という技術的な事項を付加するものであり、換言すれば、これは、本件発明の「被覆形成用炭素材料」をその原料と被覆比でさらに限定するものであるから、これら技術的な事項の目的について検討すると、本件特許明細書には、被覆形成用炭素材料の原料に関し、次のとおり記載されている。
(イ)「本発明は、・・・特に表面が重質油など成分で被覆された炭素粉末とその製造方法に関し、」(本件特許掲載公報第2頁第3欄第8行〜第9行)
(ロ)「本発明者は、上記の様な従来技術の問題点を解消乃至軽減すべく、鋭意研究を行った結果、芯材となる粒子状炭素材料(以下「芯材炭素材料」乃至「芯材となる炭素材料」或いは単に「芯材」ということもある)を被覆形成用炭素材料用原料(例えば、タール、ピッチなどの石炭系重質油或いは石油系重質油;以下単に「重質油など」ともいう)に浸漬させた後、これを重質油などから分離するに際し、特定の手段を採用する場合には、芯材表面がピッチで均一に覆われている炭素材料を製造し得ることを見出した。そして、この様にして得られた二層構造の炭素材料粒子は、球状乃至楕円体状或いはそれに近似する形状をしており、炭素結晶のエッジ部分が丸くなった様な形状をしていることが判明した。」(本件特許掲載公報第2頁第4欄第35〜47行)
(ハ)「本発明において、炭素材料、特に結晶度の高い黒鉛系の材料をタール、ピッチなどの石炭系あるいは石油系重質油などに浸漬し、被覆された炭素材料を重質油などから分離した後、有機溶媒で洗浄し、乾燥することにより、芯材としての炭素材料の表面が重質油などで覆われた新規な炭素材料を得ることができる。」(本件特許掲載公報第8頁第15欄第9〜14行)
(ニ)「本願発明の製造方法によれば、芯材である炭素材料をピッチ、タールなどの重質油で被覆した後、洗浄、乾燥および焼成を行った場合でも、粒子同士の融着乃至凝集を生じないので、得られた炭素材料を粉砕する必要はなく、いわゆる「角の取れた」球状に近い粒子が得られる。」(本件特許掲載公報第8頁第15欄第20〜26行)
以上の記載によれば、本件発明の目的は、当初から被覆用炭素材料として、「タール、ピッチなどの石炭系あるいは石油系重質油」を原料としたものを使用することであり、重質油を使用した場合の効果も、「粒子同士の融着乃至凝集を生じないので、得られた炭素材料を粉砕する必要はなく、いわゆる「角の取れた」球状に近い粒子が得られる」ことであるから、上記訂正事項(a-2)の技術的な事項を付加しても、訂正前と訂正後では、本件発明の目的及び効果に実質的な変更がないことは明らかである。
してみると、上記訂正事項(a-2)も、実質上特許請求の範囲を変更するものではないと云える。
2-4.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項、第3項の規定に適合するので、本件訂正を認める。
3.本件訂正発明
特許権者が請求した上記訂正は、上述したとおり、認容することができるから、訂正後の本件請求項1〜6に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件訂正発明1〜6」という)。
「【請求項1】二次電池用の炭素材料であって、芯材黒鉛材料の結晶のエッジ部分の一部または全部が、被覆後にトルエンによって洗浄された石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチを焼成した被覆形成用炭素材料により被覆されており、焼成前の被覆比が0.01〜0.2であり、石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチの一次QIが3%以下であり、かつトルエン不溶分が7.8〜30%であり、ほぼ球状乃至楕円体状であり、粉砕面を有しないことを特徴とする焼成した二層炭素材料。
【請求項2】請求項1に記載の焼成した二層炭素材料を構成要素とすることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項3】請求項1に記載の焼成した二層炭素材料からなる負極を構成要素とすることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項4】リチウム二次電池が非水系リチウム二次電池であることを特徴とする請求項2または3に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】リチウム二次電池が固体電解質リチウム二次電池であることを特徴とする請求項2または3に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】リチウム二次電池の電解質が有機電解液であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のリチウム二次電池。
4.特許異議申立てについて
4-1.申立人Aの特許異議申立てについて
(1)特許異議申立ての理由の概要
申立人Aは、証拠方法として甲第1〜5号証を提出して、次のとおり主張している。
(i)本件特許の出願日は分割出願の日であるから、請求項1〜11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、また甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜11に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号、第2項の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものである。
(ii)仮に優先権主張が認められたとしても、請求項1〜11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に同一であるから、請求項1〜11に係る発明の特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものである。
4-1-2.甲各号証の記載内容
(1)甲第1号証:特開平8-222218号公報(特願平7-22037号(出願日 平成7年(1995)2月9日)の公開公報、公開日:平成8年(1996)8月30日):平成14年7月3日付け取消理由通知の刊行物3
(a)「本発明は、非水溶媒二次電池に適した電極材料の製造方法に関し、特に多相構造を有する炭素電極材料の製造方法に関する。(第2頁第1欄第14〜16行)
(b)「しかしながら、炭素系電極材料を円筒型電池に使用する場合には通常は電極をシート状に成形するために炭素系電極材料を粉末状にする必要があり、特開平4-171677号公報に記載の多相構造を有する炭素質物の場合でも、焼成後に粉砕しなければならないため、被覆が破壊され核が露出してしまい電極性能が低下するという問題があった。本発明は、結晶化度の高い炭素質物を比較的結晶化度の低い炭素質物で被覆してなる多相構造を有する炭素質物を、高品質で連続的に焼成する方法を提供するものである。」(第2頁第1欄第38〜47行)
(c)「本発明は、結晶化度の高い炭素質物を縮合多環炭化水素化合物を主成分とする炭素質物で被覆し、熱処理してなる粉体状の原料を、不活性ガス中で回転運動を与えながら700〜1800℃で焼結させることなく焼成することによって表層の炭素質物の相を炭化し.多相構造の炭素電極材料を得ることを特徴とする二次電池炭素電極材料製造方法である。」(第2頁第1欄第49行〜第2欄第5行)
(d)「核となる炭素質物は、・・・(3)人造黒鉛、天然黒鉛、気相成長黒鉛ウイスカーを用いる。等により得ることができる。」(第2頁第2欄第16〜24行)
(e)「一方、表層を構成する炭素質物の原料としては、・・・上述のピッチについてさらに詳述すると、ナフサの分解の際に生成するエチレンヘビーエンドピッチ、原油の分解の時に生成する原油ピッチ、石炭の熱分解の際に生成するコールピッチ、アスファルトの分解によって生成するアスファルト分解ピッチ、ポリ塩化ビニル等を熱分解して生成するピッチなどを例として挙げることができる。」(第2頁第2欄第46行〜第3頁第3欄第11行)
(f)「【実施例】内容積20リットルのステンレスタンクに人造黒鉛粉末(LONZA社製KS-44を3kg投入し、更にナフサ分解時に得られるエチレンヘビーエンドタール(三菱化学社製)7kgを加えて、ハンドミキサーにて20分撹拌した。ここで得られたスラリー状の混合物を・・・リアクタ1台に1kg/hrで供給し、被覆原料の熱処理ピッチ化反応を行った。・・・脱気及び脱揮を行い、エチレンヘビーエンドタールの軽質留分の除去を行った。高粘性を示す半固溶体である生成物を、KRCリアクタ出口より、ストランド状で0.5kg/hrで回収した。こうして炭素質物粒子と熱処理ピッチの複合物を得た。さらに粉砕を行い粉体状の焼成原料を得た。次に、ロータリーキルン(・・・)を用いて、窒素気流下1200℃で焼成して電極材料を得た。・・・得られた炭素質物は、ほとんど焼結しておらず、塊状あるいは顆粒状のものも手で簡単に解砕できる程度であった。」(第3頁第4欄第14〜37行)
(g)「この多相構造炭素質物の電極性能をリチウムを対極とした充放電試験で評価した。」(第3頁第4欄第46、47行)
(h)「上記実施例および比較例から明らかなように本発明の方法によれば、多相構造を有する炭素質物を被覆破壊により核を露出させることなく製造でき、優れた電極性能を実現できる。」(第4頁第5欄第30行〜第6欄第30行)
(2)甲第2号証:三菱化学株式会社筑波研究所 林学、シーエーシーズ株式会社 筑波分析センター 古田土美和、シーエーシーズ株式会社横浜分析センター 高島正樹作成、平成12年3月16日付け「実験報告書」
(a)結果の考察の欄に「(1)多相構造炭素質物(追試品)のラマン分光のR値は0.72であり、原料黒鉛のR値は0.14であったので(原文のまま)、また多相構造炭素質物(追試品)の平均粒径が27.0μmであり、原料黒鉛の平均粒径が18.7μmであったので(原文のまま)、黒鉛の表面が被覆されていると判断される。(2)比表面積測定結果から、特開平8-222218号公報実施例で得られた多相構造炭素質物(追試品)は、エチレンヘビーエンドタールによる原料黒鉛の表面被覆処理により、BET法による比表面積に関与する細孔が塞がれて、比表面積の値が小さくなっていると考えられる。(3)SEM観察の結果は、多相構造炭素質物(追試品)は、原料黒鉛に比較して角がなくなった様な粒子が存在していることを示している。(4)TEM観察の結果は、原料黒鉛では、エッジまで結晶格子由来の規則的な縞模様の黒鉛層が観察されるが、多相構造炭素質物(追試品)では、エッジ部分にエチレンヘビーエンドメタールの炭素化によって生じた不規則な模様の非結晶質炭素が付着して被覆されている様子が観察された。」と記載されている。
(3)甲第3号証:国際公開第97/18160号パンフレット(国際出願番号PCT/JP96/03344、国際出願日:平成8年(1996)11月14日、優先権主張日:平成7年(1995)11月14日、優先権主張番号:特願平7-295462号)
(4)甲第4号証:特願平7-295462号の願書に最初に添付された明細書
(5)甲第5号証:「LONZA Carbons.」ロンザ社のカーボン製品に関するカタログ
(a)第11頁にKS44は、Typical particle size distribution graphsによれば、1μm以下の粒子が1%以下であることが示されている。
4-1-3.当審の判断
(1)本件特許の優先権主張について
本件訂正発明1に記載された事項のうち、二層炭素材料が「粉砕面を有しない」という点や、石炭系のタールまたはピッチの「一次QIが3%以下である」という点は本件特許の優先権主張の基礎となる出願である特願平7-295462号の願書に最初に添付された明細書に記載されていないので、これら事項を構成要件とする発明については、その出願日は国際出願日である平成8年11月14日と認められる。
(2)本件訂正発明1について
甲第1号証は、本件出願日を上記(1)のとおりと認定したから、本件出願日前に頒布された刊行物であり、したがって、以下、申立人Aの上記4-1.(1)(i)の主張について検討する。
甲第1号証の上記4-1-2.(1)(a)には、二次電池用の多相構造を有する炭素電極材料が、上記4-1-2.(1)(d)には、核が黒鉛であることが、上記4-1-2.(1)(b)には、比較的結晶化度の低い炭素質物で被覆されていることがそれぞれ記載されている。また上記4-1-2.(f)(h)には、得られる炭素材料がほとんど焼結しておらず、塊状あるいは顆粒状のものも手で簡単に解砕できる程度で核が露出していないことが、上記4-1-2.(1)(e)(f)には、表層を構成するのは石炭系、石油系のピッチを焼成したものであることがそれぞれ記載されているから、これら記載事項を本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には「二次電池用の炭素電極材料であって、核が黒鉛であり、核が比較的結晶化度の低い炭素質物で被覆されており、該比較的結晶化度の低い炭素質物が石炭系、石油系のピッチの焼成したものであり、ほとんど焼結しておらず、塊状あるいは顆粒状のものも手で簡単に解砕できる程度で核を露出させていない焼成した炭素材料。」という発明(以下、「甲1A発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明1と甲1A発明とを対比すると、甲1A発明の「炭素材料」、「核」、「比較的結晶化度の低い炭素質物」は、本件訂正発明1の「二層炭素材料」、「芯材黒鉛材料」、「被覆形成用炭素材料」にそれぞれ相当するから、両者は「二次電池用の炭素材料であって、石炭系あるいは石油系のピッチを焼成した被覆形成用炭素材料により被覆されている焼成した二層炭素材料。」という点で一致し、次の点で相違していると云える。
相違点(イ):本件訂正発明1では、「石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチ」が「被覆後にトルエンによって洗浄され」かつ「焼成前の被覆比が0.01〜0.2であり、一次QIが3%以下でトルエン不溶分が7.8〜30%」であるのに対して、甲1A発明では、石炭系、石油系のピッチであるがトルエン不溶分等の点が明らかでない点
相違点(ロ):本件訂正発明1では、「ほぼ球状乃至楕円体状であり、粉砕面を有しない」のに対し、甲1A発明では、、「塊状あるいは顆粒状のものも手で簡単に解砕できる程度で核を露出させていない」点
次に、これら相違点のうち特に上記相違点(イ)について、甲第1号証のその余の記載を検討すると、、甲第1号証の上記4-1-2(1)(f)には、被覆後の石炭系あるいは石油系ピッチに関し、「熱処理ピッチ化反応」、「脱気及び脱揮」処理を施すことが記載されているものの、これら処理は、「トルエン」による洗浄ではなく、そこには、「石炭系あるいは石油系のピッチ」の「一次QI」や「トルエン不溶分」については何ら記載も示唆もされていない。
また、甲第1、2、5号証にも、「トルエン」による洗浄、「一次QI」及び「トルエン不溶分」については何も示唆されていない。
なお、甲第3号証は、本件の国際公開パンフレットであり、また甲第4号証は、本件の優先権主張の願書に最初に添付された明細書である。
してみると、本件訂正発明1の上記相違点(イ)は、甲第1、2、5号証の記載から当業者が容易に想到することができないと云うべきである。
したがって、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明とすることはできないし、また甲第1、2、5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。
(2)本件訂正発明2〜6について
本件訂正発明2〜6は、請求項1を引用しさらに限定した発明であるから、上記(1)と同じ理由で、本件訂正発明2〜6は、甲第1号証に記載された発明とすることはできないし、また甲第1、2、5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。
4-2.申立人Bの特許異議申立てについて
4-2-1.特許異議申立ての理由の概要
申立人Bは、証拠方法として甲第1号証を提出し、請求項1〜5に係る発明は甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1〜5に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものであると主張している。
4-2-2.甲各号証の記載内容
(1)甲第1号証:特開平5-94838号公報:平成14年7月3日付け取消理由通知の刊行物1
(a)「再充電可能な正極と、再充電可能な負極とを備えた二次電池であって、該正極が金属カルコゲン化合物を含み、該負極が、下記(A)の要件を満たす炭素質物の粒子状ないし繊維状の核の表面に、下記(B)の要件を満たす炭素質物の表層を形成させた複層構造の炭素質材料を主成分として構成されていることを特徴とする二次電池。・・・」」(請求項1)
(b)「上記のようにして得られた炭素質物を核として、有機化合物を不活性ガス流下に加熱して分解し、炭素化して、上記の核の表面上に新しい炭素質物の表層を形成させる。あるいは、天然黒鉛又は人造黒鉛の粒子を核として用い、同様な方法で表層を形成させてもよい。」(第4頁第5欄第41〜46行)
(c)「第2の方法は、核となる炭素質物の表面で、有機化合物を液相から炭素化させて、表層の炭素質物を形成させる方法である。この方法に用いられる有機化合物としては、・・・ならびに上記各化合物の混合物を主成分とするピッチが挙げられる。ピッチとしては、原油ピッチ、ナフサピッチ、アスファルトピッチ、コールタールピッチのほか、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンの分解によって得られる分解ピッチが挙げられる。」(第4頁第6欄第20〜34行)
(d)「縮合多環炭化水素化合物の混合物であるピッチ300mgをトルエン1,000mlに溶解させて得た溶液に、上記の炭素質物粒子を浸漬し、混合しつつ500℃に加熱して、ピッチを該炭素質物粒子の表面にコーテイングした。これを窒素気流中、20℃/minの昇温速度で1,000℃まで昇温し、その温度に30分間保持した後、軽く粉砕した。このようにして、上記の炭素質物粒子を核とし、その表面に炭素質物からなる表層が形成された複層構造を有し、平均粒径が7.1μmの粒子状の炭素質材料が得られた。」(第6頁第10欄第39〜48行)
(e)第7頁図1(a)には、球状の核を表層が包囲した多相構造の炭素質材料が示されている。
4-2-3.当審の判断
(1)刊行物1を主引用例とする対比・判断
甲第1号証の上記4-2-2.(1)(a)、(b)には、「二次電池用の炭素質材料であって、黒鉛の粒子状の核の表面に炭素質物の表層を形成させた複層構造の炭素質材料」が記載されていると云える。また、上記4-2-2.(1)(c)、(d)には、「液相の、原油ピッチ、コールタールピッチをトルエンに溶解させて得た溶液に、炭素質物粒子を浸漬し、炭素質物粒子表面にピッチをコーテイングし、1,000℃で保持し、平均粒径7.1μmの炭素質材料を得た」ことが記載されており、この場合「原油ピッチ、コールタールピッチ」は石油系、石炭系のピッチであり、「1000℃で保持する」ことは焼成と云えるし、また上記4-2-2.(1)(e)には、球状の炭素質材料が示されているから、これら記載事項を本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には「二次電池用の炭素質材料であって、芯材黒鉛材料の粒子状の核の表面に、トルエンに溶解した石油系、石炭系のピッチを原料としたコーテイング層を被覆し焼成した炭素質物の表層により被覆されており、球状であり、焼成した複層構造の炭素質材料。」という発明(以下、「甲1B発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明1と甲1B発明とを対比すると、甲1B発明の「炭素質物の表層」、「複層構造の炭素質材料」は、本件訂正発明1の「被覆形成用炭素材料」、「二層炭素材料」にそれぞれ相当するから、両者は「二次電池用の炭素材料であって、芯材黒鉛材料が、石油系、石炭系のピッチを焼成した被覆形成用炭素材料により被覆されている、球状の焼成した二層炭素材料。」という点で一致し、次の点で相違していると云える。
相違点(イ):本件訂正発明1では、「芯材炭素材料の結晶のエッジ部分の一部または全部が被覆形成用炭素材料により被覆されており」、「粉砕面を有しない」のに対して、甲1B発明では、「炭素質物の表層により被覆されている」点
相違点(ロ):本件訂正発明1では、「石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチ」が「被覆後にトルエンによって洗浄され」かつ「焼成前の被覆比が0.01〜0.2であり、一次QIが3%以下でトルエン不溶分が7.8〜30%」であるのに対して、甲1B発明では、石炭系、石油系のピッチであるがトルエン不溶分等の点が明らかでない点
次に、これら相違点のうち特に、相違点(ロ)について検討すると、甲1B発明では、ピッチをトルエンに溶解させたものを被覆しているのであるから、被覆された「石炭系、石油系のピッチ」には「トルエン可溶分」のみが含まれており、「トルエン不溶分」が含まれていないことは明らかである。
してみると、本件訂正発明1は、上記相違点(ロ)の少なくとも「トルエン不溶分」の点で甲1B発明と相違していると云える。
したがって、本件訂正発明1は甲第1号証に記載された発明とすることはできない。
(2)本件訂正発明2〜6について
本件訂正発明2〜6は、請求項1を引用しさらに限定した発明であるから、上記(1)と同じ理由で、本件訂正発明2〜6は甲第1号証に記載された発明とすることはできない。
4-3.申立人Cの特許異議申立てについて
4-3-1.特許異議申立ての理由の概要
申立人Cは、証拠方法として甲第1、2号証を提出して、次のとおり主張している。
(i)請求項1〜3、5、7〜11に係る発明は甲第1号証に記載された発明であるか、または甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になしえたものであるから、請求項1〜3、5、7〜11に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号、第2項の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものである。
(ii)請求項4〜11に係る発明は甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になしえたものであるから、請求項4〜11に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものである。
(iii)請求項6に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になしえたものであるから、請求項6に係る発明の特許は特許法第2項の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものである。
4-3-2.甲各号証の記載内容
(1)甲第1号証:特開平4-370662号公報
(a)「多相構造を有し、下記(1)及び(2)を満足する炭素質物を主成分とする担持体に、活物質であるアルカリ金属を担持させた二次電池用電極。(1)真密度が1.80g/cm3以上である。(2)・・・」(請求項1)
(b)「本発明は、高容量で充放電特性に優れた二次電池用の電極に関する。さらには、活物質がアルカリ金属、好ましくはリチウム金属である二次電池の負極電極に関する。」(第2頁第1欄第14〜17行)
(c)「あるいは、天然黒鉛又は人造黒鉛の粒子を核として用い、同様の方法で表層を形成させてもよい。」(第4頁第5欄第32〜33行)
(d)「核となる炭素質物の表面に、表層を形成させる方法としては、次のような方法があり、任意に選択することができる。・・・(3)縮合多環式炭化水素を加熱し、液相で核となる炭素質物に接触させながら熱分解して、表層の炭素質物を形成させる。」(第4頁第5欄第34〜44行)
(e)「上述のピッチについてさらに・・・原油ピッチ・・・コールピッチ、・・・アスファルト分解ピッチなどを例として挙げることができる。」(第4頁第6欄第50行〜第5頁第7欄第5行)
(f)「縮合多環式炭化水素の混合物であるピッチをトルエンに溶解させた溶液に、比較例1で合成した炭素質物の粒子を浸漬して、該炭化水素の表面をピッチで被覆した。これを・・・1,100℃まで昇温し・・・このようにして、核が65重量部、表層が35重量部からなる炭素質物の粒子が得られた。」(第8頁第14欄第19〜25行)
(g)第9頁図1(a)には、球状の多相構造の炭素質物が示されている。
(2)甲第2号証:持田勲著「現代応用化学シリーズ3 炭素材の化学と工学」株式会社朝倉書店 第10〜12頁(1990年9月10日)
(a)「2.2黒鉛の微細構造 ・・・基底面間距離は3.354Åである。・・・X線回折の(002)回折線の線幅から精度よく計算される結晶子の大きさは,1000Å程度が限界である。通常の人工黒鉛でも層高(La),層面の広がり(Lc)ともに,これ以上の値をとることが多い。」(第10頁第1行〜第12頁第2行)
4-3-3.当審の判断
(1)本件訂正発明1について
甲第1号証には、「二次電池用の炭素質物であって、黒鉛の核の表面に、トルエンに溶解した石油系、石炭系ピッチを被覆し焼成した表層を持つ、球状の多相構造の炭素質物。」という発明(以下、「甲1C発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明1と甲1C発明とを対比すると、甲1C発明の「表層」、「多層構造の炭素質物」は、本件訂正発明1の「被覆形成用炭素材料」、「二層炭素材料」に相当するから、両者は「二次電池用の炭素材料であって、芯材黒鉛材料が、石油系、石炭系のピッチを焼成した被覆形成用炭素材料により被覆されている、球状の焼成した二層炭素材料。」という点で一致し、次の点で相違していると云える。
相違点(イ):本件訂正発明1では、「芯材炭素材料の結晶のエッジ部分の一部または全部が被覆形成用炭素材料により被覆されており」、「粉砕面を有しない」のに対して、甲1C発明では、「炭素質物の表層により被覆されている」点
相違点(ロ):本件訂正発明1では、「石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチ」が「被覆後にトルエンによって洗浄され」かつ「焼成前の被覆比が0.01〜0.2であり、一次QIが3%以下でトルエン不溶分が7.8〜30%」であるのに対して、甲1C発明では、石炭系、石油系のピッチであるがトルエン不溶分等の点が明らかでない点
次に、これら相違点のうち特に、相違点(ロ)について検討すると、甲1C発明では、ピッチをトルエンに溶解させたものを被覆しているのであるから、被覆された「石炭系、石油系のピッチ」には「トルエン可溶分」のみが含まれており、「トルエン不溶分」が含まれていないことは明らかである。
してみると、本件訂正発明1は、上記相違点(ロ)の少なくとも「トルエン不溶分」の点で甲1B発明と相違していると云える。
また、甲第2号証にも、「トルエン」による洗浄や「一次QI」及び「トルエン不溶分」については何も示唆されていない。
してみると、本件訂正発明1の上記相違点(ロ)は、甲第1、2号証の記載から当業者が容易に想到することができないと云うべきである。
したがって、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明とすることはできないし、また甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。
(2)本件訂正発明2〜6について
本件訂正発明2〜6は、請求項1を引用しさらに限定したものであるから、上記(1)と同じ理由で、本件訂正発明2〜6は、甲第1号証に記載された発明とすることはできないしず、また甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。
5.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、訂正後の本件請求項1〜6に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の本件請求項1〜6に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
リチウム二次電池用負極材料
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】二次電池用の炭素材料であって、芯材黒鉛材料の結晶のエッジ部分の一部または全部が、被覆後にトルエンによって洗浄された石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチを焼成した被覆形成用炭素材料により被覆されており、焼成前の被覆比が0.01〜0.2であり、石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチの一次QIが3%以下であり、かつトルエン不溶分が7.8〜30%であり、ほぼ球状乃至楕円体状であり、粉砕面を有しないことを特徴とする焼成した二層炭素材料。
【請求項2】請求項1に記載の焼成した二層炭素材料を構成要素とすることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項3】請求項1に記載の焼成した二層炭素材料からなる負極を構成要素とすることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項4】リチウム二次電池が非水系リチウム二次電池であることを特徴とする請求項2または3に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】リチウム二次電池が固体電解質リチウム二次電池であることを特徴とする請求項2または3に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】リチウム二次電池の電解質が有機電解液であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
技術分野
本発明は、炭素材料とその製造方法、特に表面が重質油など成分で被覆された炭素粉末とその製造方法に関し、より詳細には、等方性黒鉛材原料、リチウム二次電池負極材料などして有用な炭素材料およびその製造方法ならびにこの様な炭素材料を用いたリチウム二次電池に関する。
【0001】背 景 技 術
近年電子機器、情報機器などの携帯用機器類(以下「携帯機器」という)の小型化および軽量化が目覚ましく進行しつつあり、それらを駆動する二次電池が非常に重要な部品となってきている。リチウム二次電池は、軽量かつ高エネルギー密度を有するため、携帯機器の駆動用電源として有望視され、研究開発が活発に進められている。しかしながら、リチウム金属を負極に用いた場合には、充放電サイクルを繰り返すことにより金属リチウム上にデンドライトが生成・成長して、内部短絡を引き起こすため、二次電池化が困難である。また、リチウム金属に代えてリチウム・アルミニウム合金の様なリチウム合金の使用が提案されているが、この場合には、充放電サイクル或いは深い充放電を行うと、合金の偏析などがおこるため、長期的に十分な特性は得られない。
【0002】そこで、炭素材料をホスト材料とし、リチウムイオンの挿入脱離反応を利用した負極を用いた電池が提案され、研究開発が進められ、実用化されてきている。炭素材料を負極に用いるリチウム二次電池は、サイクル特性、安全性などに優れている。
【0003】しかしながら、炭素材料は、黒鉛から無定形炭素までの幅広い構造乃至形態を有するとともに、それらの物性値或いは炭素の六角網面が形成する微細組織が電極の性能を大きく左右するため、物性値或いは微細組織を規定した種々の炭素材料が提案されている。
【0004】現在使用されているリチウム二次電池用の負極材料には、大きく分けて1000℃前後で焼成された炭素系のものと2800℃前後で焼成された黒鉛系のものがある。前者はリチウム二次電池の負極として用いた場合、電解液との反応が少なく、電解液の分解が起きがたいという利点を有するが、リチウムイオンの放出に伴う電位の変化が大きいという欠点がある。これに対し、後者はリチウム二次電池の負極として用いた場合、リチウムイオンの放出に伴う電位の変化が小さいという利点を有するが、電解液と反応して、電解液の分解が生じ、さらには炭素材料が破壊されるという欠点がある(J.Electrochem.Soc.117,222(1970))。その結果、後者では、充放電効率の低下、サイクル特性の低下、電池の安全性低下などの問題が生じる。特定の電解液を用いる場合には、黒鉛系の材料も使用可能であることが報告されているが(J.Electrochem.Soc.137,2009(1990))、電解液が限定されるため、電池を作製した場合に、電池の温度特性、サイクル特性などの改善が、電解液の種類によりかなり制限されるという問題点がある。
【0005】この問題を解決すべく、特開平4-368778号公報、特開平4-370662号公報、特開平5-94838号公報、特開平5-121066号公報などは、黒鉛粒子の表面を低結晶性炭素で被覆した炭素材料を提案している。これらの表面改質炭素材料は、電解液の分解を押さえるので、電池容量の増加、サイクル特性の改善などに対して、有効である。
【0006】しかしながら、特開平4-368778号公報記載の技術によれば、炭素粒子表面に気相法により炭素被覆層を形成しているため、各炭素粒子の融着、凝集などは起こらず、性能の優れた材料が得られるが、コスト面、量産性などの面で、実用上大きな問題点がある。
【0007】特開平4-370662号公報、特開平5-94838号公報、特開平5-121066号公報などには、コスト面および量産性から有望である液相炭素化を利用した手法が記載されている。しかしながら、単に液相の有機化合物と黒鉛粒子とを混合して焼成するのみでは、炭素化の際に黒鉛粒子同士が融着・凝集するので、電極作製の際に材料を粉砕する必要があり、粉砕により黒鉛の活性な面が新たに露出する、粉砕時に不純物が混入する、さらには工程が複雑となるなどの問題点を生ずる。
【0008】発 明 の 開 示
本発明は、電解液についての選択性乃至制約がなく、且つリチウムイオンの放出の電位変化が小さい炭素材料を使用する負極を作製することにより、サイクル性、安全性などの諸特性に優れたリチウム二次電池を得ることを主な目的とする。
【0009】本発明者は、上記の様な従来技術の問題点を解消乃至軽減すべく、鋭意研究を行った結果、芯材となる粒子状炭素材料(以下「芯材炭素材料」乃至「芯材となる炭素材料」或いは単に「芯材」ということもある)を被覆形成用炭素材料用原料(例えば、タール、ピッチなどの石炭系重質油或いは石油系重質油;以下単に「重質油など」ともいう)に浸漬させた後、これを重質油などから分離するに際し、特定の手段を採用する場合には、芯材表面がピッチで均一に覆われている炭素材料を製造し得ることを見出した。そして、この様にして得られた二層構造の炭素材料粒子は、球状乃至楕円体状或いはそれに近似する形状をしており、炭素結晶のエッジ部分が丸くなった様な形状をしていることが判明した。さらに、BET法による測定の結果、処理前の芯材炭素材料に比べて、粒子の比表面積の値が小さくなっており、BET法による比表面積に関与する細孔が、何らかの様式で塞がれていることも明らかとなった。
【0010】本発明によれば、芯材となる炭素材料のエッジおよび基底面の一部または全部に重質油などに由来する炭素材料が付着するか、或いはエッジおよび基底面の一部または全部が該炭素材料により被覆されており、ほぼ球状乃至楕円体状であることを特徴とする粒子状被覆炭素材料が提供される。この炭素材料においては、BET法により測定される比表面積に関与する細孔が、重質油などに由来する炭素の付着或いは被覆により塞がれており、比表面積が5m2/g以下(好ましくは1〜5m2/g程度)である。
【0011】本発明においては、芯材となる炭素材料として、X線広角回折法による(002)面の平均面間隔(d002)が0.335〜0.340nm、(002)面方向の結晶子厚み(Lc)が10nm以上(より好ましくは、40nm以上)、(110)面方向の結晶子厚み(La)が10nm以上(より好ましくは、50nm以上)である結晶性の高い黒鉛材料を使用する。
【0012】本発明による炭素材料においては、上記の芯材の結晶化度に比べ、芯材表面に付着し或いは芯材表面を被覆している炭素材料(以下、被覆形成用炭素材料ともいう)の結晶化度が低いことが特徴である。
【0013】また、本発明による炭素材料の真比重の値は、1.50〜2.26g/cm3の範囲にある。
【0014】この様な炭素材料をリチウム二次電池の負極材料として採用する場合には、高容量で且つ安全性の高いリチウム二次電池を得ることができる。
【0015】本発明による上記の様な被覆炭素材料は、以下の様にして製造される。まず、芯材となる炭素材料をタール、ピッチなどの石炭系或いは石油系の重質油などに好ましくは10〜300℃程度で浸漬し、重質油などで被覆し、次いでこの被覆芯材炭素材料を重質油などから分離した後、分離した被覆炭素材料に有機溶媒を加え、好ましくは10〜300℃程度で洗浄した後、乾燥する。
【0016】また、本発明は、上記の様にして得られた重質油などで被覆された被覆炭素材料を炭化焼成する炭素材料の製造方法、および上記の様にして得られた重質油で被覆された被覆炭素材料を黒鉛化焼成する炭素材料の製造方法をも提供する。
【0017】本発明においては、上記の製造方法によって得られた炭素材料において、レーザー回折式粒度分布測定による1μm以下の粒子が、体積基準の積算値で全体の10%以下となるようにすることが好ましい。
【0018】さらに、本発明においては、炭素材料を浸漬する重質油として、一次QIの少なくとも一部を除去し、残存する一次QIが3%以下(好ましくは1%以下)としたタールまたはピッチを用いることが好ましい。
【0019】また、本発明は、上述の炭化或いは黒鉛化炭素材料を構成要素とすることを特徴とするリチウム二次電池用負極材料、および該負極材料を用いたリチウム二次電池用負極、さらには該負極を用いた非水系リチウム二次電池および固体電解質二次電池を提供する。
【0020】本発明において「ほぼ球状或いは楕円体状である」炭素材料とは、SEMなどにより観察した際に、芯材である炭素材料粒子の形状は継承しているが、芯材である炭素材料のエッジおよび基底面の全部または一部に重油などに由来する炭素成分が付着して、角がなくなっている様な状態の炭素材料をも含む。この様な炭素材料は、被覆および焼成後に粉砕工程を含まない本願発明の製造方法において効率よく製造されるものであるが、本製造方法により作製された材料に限定されるものではない
本発明において、「BET法により測定される比表面積に関与する細孔が、被覆形成用炭素材料用原料、すなわち、タールやピッチなどの石炭系或いは石油系重質油などに由来する炭素材料が付着して、あるいはこの様な炭素材料により被覆されて、塞がれている」炭素材料とは、BET法により測定される比表面積に関与する細孔が、被覆形成用炭素材料用原料の焼成物(これを被覆形成用炭素材料という)で少なくとも部分的に塞がれている状態を含む。すなわち、細孔が、重質油などに由来する炭素材料で完全に埋まっている必要はなく、例えば、細孔の入り口付近のみに炭素材料が付着して、入り口が塞がれた細孔を有する炭素材料をも含む。このような状態は、BET法により比表面積を測定した際に比表面積が小さくなっていることにより、確認される。
【0021】本発明により得られる炭素材料においては、低結晶性炭素材料+低結晶性炭素材料;低結晶性炭素材料+高結晶性炭素材料;高結晶性炭素材料+低結晶性炭素材料;高結晶性炭素材料+高結晶性炭素材料という4つの組み合わせが可能であり、すべての場合において電解液の分解などを低減する効果が得られる。
【0022】本発明において、低結晶性炭素とは、「黒鉛化するために必要とされる処理(例えば、高温処理)をしても黒鉛結晶とはなり得ない炭素」を意味し、この様な炭素は、通常ハードカーボンと称される。また、高結晶性炭素とは、「黒鉛化するために処理とされる処理をすることにより黒鉛結晶となる炭素」を意味し、この様な炭素は、通常ソフトカーボンと称される。
【0023】本発明においては、芯材と芯材に付着し或いは芯材を被覆している重質油などに由来する外装炭素材料(「被覆形成用炭素材料」、「表面改質用炭素材料」、「被覆材」などということがある)との組合せならびに最終焼成温度の調整により、以下の8通りの構成を有する炭素材料が得られる。即ち、
▲1▼炭素化処理された、芯材が低結晶性炭素材料からなり被覆形成用炭素材料が低結晶性炭素材料からなる炭素材料;
▲2▼炭素化処理された、芯材が低結晶性炭素材料からなり被覆形成用炭素材料が高結晶性炭素材料からなる炭素材料;
▲3▼黒鉛化処理された、芯材が低結晶性炭素材料からなり被覆形成用炭素材料が低結晶性炭素材料からなる炭素材料;
▲4▼黒鉛化処理された、芯材が低結晶性炭素材料からなり被覆形成用炭素材料が高結晶性炭素材料からなる炭素材料;
▲5▼炭素化処理された、芯材が高結晶性炭素材料からなり被覆形成用炭素材料が低結晶性炭素材料からなる炭素材料;
▲6▼炭素化処理された、芯材が高結晶性炭素材料からなり被覆形成用炭素材料が高結晶性炭素材料からなる炭素材料;
▲7▼黒鉛化処理された、芯材が高結晶性炭素材料からなり被覆形成用炭素材料が低結晶性炭素材料からなる炭素材料;および
▲8▼黒鉛化処理された、芯材が高結晶性炭素材料からなり被覆形成用炭素材料が高結晶性炭素材料からなる炭素材料
である。
【0024】本発明によれば、芯材を外装炭素材料により被覆することにより、比表面積が小さく、且つ充放電性に優れた二次電池用炭素材料を効率良く得ることができる。特に、上記の▲5▼、▲6▼および▲7▼に示す芯材と被覆材との組合せによれば、充放電性に著しく優れた電池用炭素材料が得られ、また、▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼および▲8▼に示す芯材と被覆材との組合せによれば、比表面積が小さく、電池の安全性を改善しうる電池用炭素材料が得られる。
【0025】本発明において、芯材となる炭素材料としては、粒子状(鱗片状乃至塊状、繊維状、ウイスカー状、球状など)の天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ粉末、等方性ピッチ粉末、樹脂炭、およびそれぞれの炭化品および黒鉛化品の1種または2種以上が使用できる。これらの中でも、鱗片状乃至塊状の天然黒鉛および人造黒鉛は、非常に安価であるので、コストの面から好ましい。また、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)の炭化品および黒鉛化品は、非常に比表面積の小さい材料であるので、芯材として使用する場合には、より比表面積の小さい材料が得ることができるため、二次電池の安全性の面から好ましい。
【0026】芯材となる炭素材料としては、さらに好ましくは、X線広角回折法による(002)面の平均面間隔(d002)が0.335〜0.340nm、(002)面方向の結晶子厚み(Lc)が10nm以上(より好ましくは、40nm以上)、(110)面方向の結晶子厚み(La)が10nm以上(より好ましくは、50nm以上)、またアルゴンレーザーラマンによる1580cm-1付近のピーク強度比に対する1360cm-1付近のピーク強度比(以後R値と記す)が0.5以下(より好ましくは、0.4以下)であることが好ましい。平均面間隔が0.340nmより大きい場合、或いはLc、Laが10nmより小さい場合、或いはR値が0.5を超える場合には、炭素材料の結晶性が充分ではなく、被覆炭素材料を作製した際に、リチウムの溶解析出に近い低い電位部分(Liの電位基準で0〜300mV)の容量が十分ではなくなるので、好ましくない。
【0027】芯材となる炭素材料の粒径分布は、0.1〜150μm程度であることが好ましい。重質油などに由来する被覆形成用炭素材料を含む最終生成物の粒径は、実質的に芯材である炭素材料の粒径に依存するため、芯材の粒径により、最終生成物の粒径もほぼ規定されることになる。芯材の粒径が、0.1μmよりも小さい場合には、電池のセパレーターの空孔を通して内部短絡を引き起こす危険性が高くなるのに対し、150μmよりも大きくなる場合には、電極の均一性、活物質の充填密度、電極を作製する工程上でのハンドリング性などが低下するので、いずれも好ましくない。
【0028】また、重質油に由来する被覆形成用炭素材料の重量比、すなわち被覆形成用炭素材料/(芯材炭素材料+被覆形成用炭素材料)(:以下、この比を「被覆比」という)は、0よりは大きく0.3以下であることが好ましく、0.01〜0.2であることがより好ましい。この場合被覆炭素の膜厚は、0.01〜10μm程度の範囲となり、さらに好ましい膜厚は、0.05〜5μm程度である。
【0029】被覆比が0.3を超えると、芯材に由来する低電位部分での容量が減少するために電池を作製した場合に、十分な容量を得ることが困難になる。ここでいう被覆炭素の量は、焼成前の芯材の周囲を覆っている重質油などに由来する炭素成分について溶剤分析を行って、キノリン可溶分の量を測定した値である。また、被覆形成用炭素材料の厚みは、レーザー回折式粒度分布計にて、芯材となる被覆前の炭素材料の中心粒径(D50)と焼成前のピッチ成分被覆炭素材料の中心粒径(D50)とを測定するとともに、炭素材料は球体であり、焼成後もピッチ成分の被覆層の形状は維持されていると仮定して、{(被覆後の粒径)-(被覆前原料の粒径)}/2として算出した値である。
【0030】本発明においては、表面の被覆形成用炭素材料が、芯材の炭素材料よりも低結晶性である組み合わせが好ましい。さらに、広角X線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)が0.335〜0.340nm、(002)面方向の結晶子厚み(Lc)が10nm以上(より好ましくは、40nm以上)、(110)面方向の結晶子厚み(La)が10nm以上(より好ましくは、50nm以上)、またアルゴンレーザーラマン分光法によるR値が0.5以上(より好ましくは、0.5〜1.5程度)であることが好ましい。面間隔およびR値は、一般的な黒鉛の結晶化度の指標であるが、それら測定方法の性質上、X線回折法では物性値にバルクの性質が反映されるのに対し、ラマン分光法では材料の表面の物性が反映される。つまり、上記物性値を満たす材料は、バルクの性質としては高結晶な材料でありながら、表面は低結晶性であることを意味する。焼成後の材料R値が0.5よりも小さい場合には、表面の結晶性が高いため、溶媒の選択性は完全にはなくならない。またバルクとしての性質である平均面間隔(d002)が0.335〜0.340nmの範囲を逸脱する場合には、リチウムイオンの吸蔵・放出に伴う電位の変化が大きくなり、好ましくない。
【0031】また得られた二層構造の被覆炭素材料の真密度は、1.50〜2.26g/cm3程度、好ましくは1.8〜2.26g/cm3程度、より好ましくは2.0〜2.26g/cm3程度である。真密度が低い材料を使用して電極を作製する場合には、電極中の活物質密度を上げることができないため、重量あたりの特性が優れた材料であっても、高容量の電池を得ることは困難である。
【0032】被覆炭素材料の粒径は、0.1〜150μmの範囲に粒度分布を有するものが好ましく、さらにこの粒度分布において1μm以下の粒子が体積基準で10%以下であることがより好ましい。粒径が1μm以下の粒子が体積基準で10%を超える場合には、比表面積の増大により、電池特性が低下するので、好ましくない。
【0033】本発明で得られた被覆炭素材料は、粉末の状態で金型充填し、加圧成型した後、焼成することにより、均一な組成を有する炭素ブロック或いは黒鉛ブロックを得ることも、可能である。
【0034】被覆形成用炭素材料用原料としては、ナフタレン、フェナントレン、アセナフチレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ペリレンなどの芳香族炭化水素、これらを加熱加圧下で重縮合して得られたタール或いはピッチ類、あるいはこれらの芳香族炭化水素の混合物を主成分とするタール、ピッチ、アスファルト、油類があげられ、その由来は、石油系および石炭系を問わない。本明細書においては、これらの被覆形成用炭素材料用原料を単に「(石油系或いは石炭系)重質油など」ということがある。また、コスト的には不利となるが、各種の熱硬化性樹脂を被覆形成用原料として用いることも、可能である。
【0035】石炭系重質油を使用する場合には、原料中に存在する一次QIの少なくとも一部を除去し、残存する一次QIを3%以下(好ましくは1%以下)としたタールまたはピッチを用いることが好ましい。ここで一次QIとは、コールタールに元来含まれているフリ-カ-ボンを意味する。原料中に一次QIが存在すると、焼成の際に炭素化を阻害したり、また1μm程度の球状の炭素粒として最終生成物中に混入したりするなど、電極の製造工程上問題を引き起こしたり、あるいは電極とした際の特性の低下を招く場合がある。
【0036】通常、重質油は、常温で固体であるが、加熱することにより、軟化溶融する。この軟化し始める温度を軟化点(SP)という。また、重質油の品質を規定するには、通常トルエンにより溶媒分別した場合のトルエン不溶分が用いられる。これらが重質油を規定する代表的な方法であるが、本発明では、重質油の品質を規定するに当たって、任意の方法を適宜選択することができる。
【0037】本発明においては、上記の芯材となる炭素材料と重質油などとを混合し、攪拌処理する。攪拌方法としては、特に限定されず、例えば、リボンミキサー、スクリュー型ニーダー、万能ミキサーなどを使用する機械的攪拌方法が挙げられる。
【0038】撹拌処理条件(温度および時間)は、原料(芯材と被覆用重質油)の成分、混合物の粘度などに応じて適宜選択されるが、通常10〜300℃程度であり、50〜200℃程度の範囲とすること、或いは混合物の粘度が5000Pa・s以下になるように時間をも併せて調整することが、より好ましい。この様に、攪拌時の処理温度と時間とを調整することにより、被覆形成用原料の被覆層(単に、被覆層ともいう)の厚さをコントロールすることが可能である。すなわち、温度を高くすることおよび/または時間を短くすることにより、被覆層の厚さを小さくすることができ、逆に温度を低くすることにより、被覆層の厚さはを大きくすることができる。撹拌が十分でないと被覆層が均一にならないので、好ましくない。攪拌時間は、一般に製品の性状には悪影響を及ぼさないものの、長すぎる場合には、実用的には量産性が低くなり、好ましくないので、適宜選択すればよい。
【0039】また、撹拌時の雰囲気としては、大気圧下、加圧下、減圧下のいずれであってもよいが、減圧下で撹拌する場合には、芯材と重質油とのなじみが向上するので、好ましい。
【0040】本発明においては、芯材と被覆層とのなじみを改善する、被覆層の厚さを均一とする、被覆層の厚さを大きくするなどのために、必要ならば、上記の混合攪拌工程を複数回繰り返すことも可能である。また、引き続く洗浄工程に先立って、被覆された芯材を一旦分離した後、洗浄工程に供しても良い。
【0041】次いで、上記の様にして得られた重質油などで覆われた被覆炭素材料は、洗浄工程に供される。洗浄に用いる有機溶媒としては、トルエン、キノリン、アセトン、ヘキサン、ベンゼン、キシレン、メチルナフタレン、アルコール類、石炭系油、石油系油などが挙げられる。これらの中では、トルエン、キノリン、アセトン、ベンゼン、キシレン、メタノール、石炭系軽油・中油、石油系軽油・中油などがより好ましい。これらの有機溶媒を適宜選択する場合には、洗浄溶媒中の不溶分を新たに被覆層に付与することができるので、被覆層の重質油成分をコントロールすることも、可能である。
【0042】洗浄温度は、最終的に得られる被覆炭素材料、特にその表面被覆層の性状などを考慮して定めればよく、特に限定されないが、10〜300℃程度が好ましい。
【0043】洗浄の際の固形物{=芯材+被覆層乃至含浸層(以下単に被覆層とする)}と有機溶剤との割合は、重量比で1:0.1〜10の範囲であることが好ましい。
【0044】なお洗浄工程においては、溶媒の種類、洗浄時間、洗浄温度などを選択することにより、被覆層の厚み、残存する重質油成分などを調整することが、可能である。例えば、洗浄力の強い溶媒を用いる、洗浄温度を高くするなどの条件を適宜を組み合わせる場合には、被覆層の厚さは薄くなるのに対し、洗浄力の弱い溶媒を用いる、洗浄温度を低くするなどの条件を適宜組み合わせる場合には、被覆層の厚さを厚くすることが可能となる。洗浄時間は、上記の各条件を考慮して、適宜選択すればよい。
【0045】次いで、被覆炭素材料と有機溶媒との分離工程は、遠心分離、圧搾濾過、重力沈降などの手法により行われる。分離する際の温度は、通常10〜300℃程度の範囲にある。
【0046】分離された被覆炭素材料の乾燥は、通常100〜400℃の範囲で行われる。
【0047】このようにして得られた乾燥被覆炭素材料は、炭化処理、さらには黒鉛化処理を行っても、芯材粒子周囲のピッチ成分は維持され、粒子同士が融着乃至凝集することはない。
【0048】次いで、上記で乾燥された被覆炭素材料は、焼成される。被覆炭素材料を炭化する場合には、600〜2000℃程度の温度において焼成することが可能であり、900〜1300℃程度の温度で焼成することがより好ましい。また黒鉛化する場合には、2000〜3000℃程度の温度において、焼成することが可能であり。2500〜3000℃程度の温度で焼成することがより好ましい。
【0049】炭化或いは黒鉛化条件における高温で焼成しつつ低結晶性を保つために、被覆炭素材料の焼成に先立ち、被覆した重質油層に対し、低温度域(50〜400℃程度)で酸素、オゾン、一酸化炭素、イオウ酸化物などの酸化性ガスで難黒鉛化処理を行い、その後高温で焼成することも可能である。例えば、高結晶性の芯材に高結晶性の被覆層を形成させた後、酸化処理を行うことにより、被覆層を低結晶性炭素に変換することも可能である。逆に、この様な酸化処理を行わない場合には、被覆層を高結晶性の状態に維持することも可能である。この様な酸化処理は、被覆炭素材料の炭化焼成に先立って行う。この場合に得られる炭素材料は、リチウム二次電池負極材として有用である。
【0050】被覆炭素材料の焼成時の雰囲気としては、還元雰囲気中、不活性ガス気流中、不活性ガスの密閉状態、真空状態などの非酸化性雰囲気が挙げられる。焼成温度にかかわらず、昇温速度は、1〜300℃/hr程度の範囲から適宜選択され、焼成時間は、6時間〜1ケ月程度である。昇温は、被覆層の厚みなどに応じて、段階的に行うことも可能である。
【0051】真空炭化を行う場合には、常温から最高到達温度まで減圧状態を継続するか、適当な温度域(好ましくは、500℃以上)で減圧状態とすることが好ましい。真空炭化は、被覆炭素材料の表面官能基を除去する効果があり、電池の不可逆容量を低減することができる。
【0052】一般に、速い昇温速度においては量産性の向上が期待できるのに対し、遅い昇温速度(10℃/hr以下)においては緻密な被覆層の形成が期待できる。また昇温時および焼成時の温度プロファイルとしては、直線的な昇温、一定間隔で温度をホールドする段階的な昇温などの様々な形態をとることが可能である。
【0053】このようして得られた周囲が被覆形成用炭素材料で覆われている炭素材料をリチウム二次電池負極として用いる場合には、電解液の有機溶媒との反応性が低いので、電解液の分解や炭素材料の破壊などが起こりにくい。その結果、電池の充放電効率が向上し、またその安全性が改善されるという利点を有している。一般に、黒鉛系の材料は、活性な結晶子の端面(edge plane)が外側に配向しているため、電解液と反応しやすい。本発明においては、炭素の縮合多環網目である基底面(basal plane)が外側に配向しているピッチ成分がこの活性な結晶子端面を覆っているので、電解液の有機溶媒との反応が制御されるものと考えられる。
【0054】本発明によれば、芯材である炭素材料を重質油などに浸漬する温度と時間、或いは被覆された炭素材料を洗浄する際の有機溶媒の種類と洗浄条件(時間、温度)などを調整することにより、炭素材料周囲の被覆重質油の量乃至被覆層の厚さを制御できるので、炭素の縮合多環網目である基底面が炭素材料の表面方向に配向しているピッチ成分により、表面を覆われた炭素材料を製造することができる。
【0055】また、これらの炭素材料を炭化或いはさらには黒鉛化しても、芯材表面の被覆においては、基底面が炭素材料の表面方向に配向した状態が、維持される。従って、この炭素材料をリチウム二次電池負極に用いる場合には、電解液の有機溶媒と反応しにくいので、電解液の分解や炭素材料の破壊は、起こらない。その結果、電池の充放電効率が高い値となり、電池の安全性にも優れているという顕著な効果が得られる。
【0056】本願発明によるリチウム二次電池を作製する場合には、上述の様にして得られた被覆炭素材料を必要ならば分散、解砕、分級などの処理に供した後、適当な粒度に調整し、電極材料とする。
【0057】電極は、公知のバインダーなとと混合した後 集電体上に活物質層を形成する。バインダーとしては、特に限定されず、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系ポリマー;合成ゴム類などを用いることができる。この場合のバインダーの量としては、活物質100重量部に対して、通常3〜50重量部程度の範囲であり、より好ましくは5〜20重量部程度であり、さらに好ましくは5〜15重量部程度である。バインダーの量が多すぎると、電極中の活物質の密度が低下するため、好ましくない。また、バインダーが少なすぎると、電極中の活物質を保持する能力が十分得られず、電極の安定性が低下するため、好ましくない。また、電極を形成する方法としては、活物質とバインダーとを混合したペーストを作製し、ドクターブレード、バーコーターなどにより集電体上に活物質層を形成する方法、或いは活物質とバインダーとを混合したものを成型器などに入れ、プレスなどにより成形体とする方法などが挙げられる。
【0058】また、本願発明によるリチウム二次電池の電解質としては、公知の有機電解液、無機固体電解質、高分子固体電解質などを用いることができる。
【0059】これらの中でも、イオン伝導度の観点から、有機電解液が特に好ましい。有機電解液用の溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどの置換テトラヒドロフラン;ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタンなどのエーテル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチルなどが例示され、これらを単独でまたは混合して使用することができる。また電解質としては、過塩素酸リチウム、ホウフッ化リチウム、6フッ化燐酸リチウム、6フッ化砒酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ハロゲン化リチウム、塩化アルミン酸リチウムなどのリチウム塩などが例示され、これらの1種或いは2種以上を使用することができる。有機電解液は、上記の溶媒に電解質を溶解することにより、調製される。なお、電解液を調製する際に使用する溶媒および電解質は、上記に掲げたものに限定されないことはいうまでもない。
【0060】無機固体電解質としては、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩、硫化リン化合物などが挙げられ、より具体的には、Li3N、LiI、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li4SiO4、Li2SiS3などが例示される。
【0061】有機固体電解質には、上記の電解質と電解質の解離を行う高分子とから構成された物質、高分子にイオン解離基を持たせた物質などがある。電解質の解離を行う高分子としては、例えば、ポリエチレンオキサイド誘導体および該誘導体を含むポリマー、ポリプロピレンオキサイド誘導体および該誘導体を含むポリマー、リン酸エステルポリマーなどがある。上記の非プロトン性極性溶媒を含有させた高分子マトリックス材料、イオン解離基を含むポリマーと上記非プロトン性極性溶媒との混合物、電解液にポリアクリロニトリルを添加した材料も、使用可能である。さらに、無機固体電解質と有機固体電解質とを併用することも、可能である。
【0062】本発明のリチウム二次電池における正極としては、常法に従って、例えばリチウムを含有する酸化物を正極活物質として用いることができる。正極活物質の具体的な例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiFeO2、LiMnO2、これらの類縁化合物であるLixMyNzO2(ここでMはFe、Co、NiおよびMnのいずれかであり、Nは遷移金属、4B族金属或いは5B族金属を表す)、LiMn2O4、その類縁化合物であるLiMn2-xNyO4(ここでNは遷移金属、4B族金属或いは5B族金属を表す)、LiVO2などが挙げられ、これに導電材、バインダーおよび場合によっては、固体電解質などを混合して、正極が形成される。これら各材料の混合比は、活物質100重量部に対して、導電材5〜50重量部程度、バインダー1〜30重量部程度とすることができる。この様な導電材としては、特に制限されず、公知のカーボンブラック(アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなど)などの炭素類、グラファイト粉末、金属粉末などを用いることができ。また、バインダーとしても、特に限定されず、公知のポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系ポリマー;合成ゴム類などを用いることができる。導電材の配合量が5重量部より小さいか、或いはバインダーの配合量が30重量部より大きい場合には、電極の抵抗あるいは分極などが大きくなり、放電容量が小さくなるため、実用的なリチウム二次電池が作製できない。導電材が50重量部より多い(混合する導電材の種類により、その相対的な割合は変わる)場合には、電極内に含まれる活物質量が減るため、正極としての放電容量が小さくなる。バインダーは、1重量部より小さいと結着能力がなくなってしまうのに対し、30重量部より大きいと、導電材の場合と同様に、電極内に含まれる活物質量が減り、さらに、上記に記載のごとく、電極の抵抗あるいは分極などが大きくなり、放電容量が小さくなるため、実用的ではない。正極の作製に際しては、結着性を上げるために、それぞれのバインダーの融点近傍の温度で熱処理を行うことが好ましい。
【0063】また電解液を保持するためのセパレーターとしては、公知の電気絶縁性の合成樹脂繊維、ガラス繊維、天然繊維などの不織布あるいは織布、アルミナなどの粉末の成形体などが挙げられる。これらの中でも、合成樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレンなどの不織布が品質の安定性などの点から好ましい。これら合成樹脂の不織布には、電池が異常発熱した場合に、セパレーターが熱により溶解して、正極と負極との間を遮断する機能を付加したものがあり、安全性の観点から、これらも好適に使用することができる。セパレーターの厚みは、特に限定されず、必要量の電解液を保持することが可能であり、かつ正極と負極との短絡を防ぐことができればよく、通常0.01〜1mm程度であり、好ましくは0.02〜0.05mm程度である。
【0064】集電体としては、公知の銅、ニッケル、ステンレス、アルミ、チタンなどの金属の箔状、メッシュ、多孔質体などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0065】発 明 の 効 果
本発明において、炭素材料、特に結晶度の高い黒鉛系の材料をタール、ピッチなどの石炭系あるいは石油系重質油などに浸漬し、被覆された炭素材料を重質油などから分離した後、有機溶媒で洗浄し、乾燥することにより、芯材としての炭素材料の表面が重質油などで覆われた新規な炭素材料を得ることができる。
【0066】また、表面がピッチで均一に覆われている黒鉛系の炭素材料を600℃〜2000℃で炭化することにより、芯材が結晶化度の高い黒鉛系の材料からなり、表面が結晶化度の低い炭素系の材料で覆われているという特異な構造の炭素材料を製造することができる。
【0067】本願発明の製造方法によれば、芯材である炭素材料をピッチ、タールなどの重質油で被覆した後、洗浄、乾燥および焼成を行った場合でも、粒子同士の融着乃至凝集を生じないので、得られた炭素材料を粉砕する必要はなく、いわゆる「角の取れた」球状に近い粒子が得られる。また、粉砕に伴う不純物の混入という材料の劣化要因も存在しない。
【0068】本発明により得られた被覆炭素材料、特に黒鉛材料の表面を重質油など若しくはそれらの焼成物で被覆した炭素材料を用いて、非水系二次電池或いは固体電解質電池を作製する場合には、充放電特性と安全性の両方に優れた電池を製造することが可能となる。
【0069】本発明方法は、芯材として安価な天然黒鉛、人造黒鉛などを使用し、被覆材料としても安価なピッチ、タールなどを使用し、その製造方法も簡単であり、量産性にも非常に優れた製造方法であるため、安価な高性能リチウム二次電池用負極材料を得ることができる。
【0070】また、本発明においては、芯材と表面材との組み合わせは、低結晶性炭素材料+低結晶性炭素材料、低結晶性炭素材料+高結晶性炭素材料、高結晶性炭素材料+低結晶性炭素材料および高結晶性炭素材料+高結晶性炭素材料という4通りの組合せが可能であり、さらに2つの焼成工程(炭素化焼成および黒鉛化焼成)を考慮すれば、8種の炭素材料が得られる。このうち、炭素化処理された高結晶性炭素材料+低結晶性炭素材料および高結晶性炭素材料+高結晶性炭素材料、黒鉛化処理された高結晶性炭素材料+低結晶性炭素材料などの組合せからなる炭素材料を用いる場合には、電解液との反応性が低く、優れた充放電特性を発揮するので、特にリチウム二次電池用負極材料として有用である。
【0071】発明を実施するための最良の形態
以下実施例により、発明を具体的に説明する。なお、以下の各実施例における各種の測定は、以下の様にして行った。
1.粒径の測定
日機装株式会社製「FRA9220マイクロトラック」を用いて、粒子の中心粒径および粒度分布を測定した。
2.被覆比および被覆厚さの測定
焼成前の芯材周囲を覆っている重質油由来の炭素成分については、JIS K2425に規定されている方法に準じて溶剤分析を行って、キノリン不溶分(%)を測定し、「100-(キノリン不溶分)」によりキノリン可溶分(%)を算出した。このキノリン可溶分の量が、被覆形成用炭素材料の量である。
【0072】被覆形成用炭素材料/(芯材炭素材料+被覆形成用炭素材料)の重量比(先に定義した被覆比)は、前述の方法で算出した。
3.比表面積の測定
マイクロメリテックス社製「ASAP2400/窒素吸着BET比表面積測定装置」を用いて比表面積を測定した。
4.真比重の測定
JIS R7212に規定されている方法に準じて、真比重を測定した。
5.X線広角回折法による結晶子の大きさの測定
X線広角回折法による結晶子の大きさ(Lc、La)の測定は、公知の方法、すなわち”炭素材料実験技術1 pp55〜63 炭素材料学会編(科学技術社)”に記載された方法によって行った。結晶子の大きさを求める形状因子Kは、0.9を用いた。
6.ラマン分光測定
さらに、炭素材料の表面物性として、514.5nmのアルゴンレーザーを用いたラマン分光測定により観察される2本のピークより、R値を1360cm-1/1580cm-1のピーク強度比として求めた。
7.電解液に負極を浸し、高温で保持した際のガス発生量の測定
ピッチ被覆炭素材料(ピッチ被覆黒鉛)を窒素雰囲気中2800℃で1時間焼成することにより、黒鉛化した。黒鉛化ピッチ被覆黒鉛95重量部とディスパージョンタイプのPTFE(ダイキン工業株式会社製「D-1」)5重量部とを混合し、液相で均一に攪拌した後、乾燥させ、ペースト状とした。この負極用物質0.25gをプレス機により成型し、直径2cmの負極体を作製した後、200℃で6時間真空乾燥した。
【0073】次いで、この負極を電解液中で電位が0Vになるまで充電し、充電状態の負極を電解液25mlの入ったビーカーセルに入れ、60℃で6時間加熱して黒鉛化ピッチ被覆黒鉛1gあたりのガス発生量を測定した。
【0074】なお、電解液としては、1moldm-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとメチルプロピオネートの混合溶媒(体積比で3:3:4)を用いた。
8.非水系電池の作製及び電池特性の測定
正極は、一般的には正極材料と導電材およびバインダーとを混合することにより作製される。この場合、導電材としては、カーボンブラック、黒鉛などの炭素材料類または金属粉末、金属ウールなどの金属材料などが適宜使用される。バインダーは、粉末のまま混合することもできるが、分散性をより高め、結着性を向上するために、溶液に分散させたものや、溶解したものを混合する場合もある。また、このようにして溶液に分散或いは溶解したものを用いた場合には、真空処理あるいは熱処理などの手段によって溶液を取り除く必要がある。さらにバインダーの種類によっては、融点付近の温度で熱処理することにより、さらに結着性を高めることも可能である。
【0075】本願実施例では、正極材料にLiCoO2100重量部を用い、導電材としてのアセチレンブラックを10重量部およびバインダーとしてPTFE粉末を10重量部混合したものを直径10mmの電極に成形し、正極体を得た。
【0076】負極体は、本願実施例では、次の様にして作製した。
【0077】まず、ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中1000℃で1時間焼成し、炭化した。この炭化ピッチ被覆黒鉛95重量部とディスパージョンタイプのPTFE(ダイキン工業株式会社製「D-1」)5重量部とを混合し、液相で均一に攪拌した後、乾燥させ、ペースト状とした。さらに、この負極用物質30mgをプレス機により成型し、直径10mmの負極体を作製した後、200℃で6時間真空乾燥した。
【0078】また、ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中2800℃で1時間焼成し、黒鉛化した。この黒鉛化ピッチ被覆黒鉛95重量部とディスパージョンタイプのPTFE(ダイキン工業株式会社製「D-1」)5重量部とを混合し、液相で均一に攪拌した後、乾燥させ、ペ-スト状とした。この負極用物質30mgをプレス機により成型し、直径10mmの負極体を作製した後、200℃で6時間真空乾燥した。
【0079】セパレーターとしては、ポリプロピレン不繊布を用いた。
【0080】電解液は、負極体として炭化ピッチ被覆黒鉛を用いる場合には、1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いた。また、黒鉛化ピッチ被覆黒鉛を用いる場合には、1moldm-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとメチルプロピオネートの混合溶媒(体積比で3:3:4)を用いた。
【0081】上記のようにして得られた正極体、負極体、セパレーターおよび電解液を用いて作製したコイン型リチウム二次電池の放電特性を測定した。測定は1mA/cm2の定電流充放電下で実施し、放電容量は電池電圧が1.2Vに低下するまでの容量とした。
9.固体電解質電池の作製および電池特性の測定
非水系電池の作製の項(上記8.)と同様にして作製したペ-スト状負極物質を厚さ0.02mmの銅箔の両面に塗着し、乾燥し、圧延して、厚さ0.10mm、幅55mm、長さ90mmの負極板とした。
【0082】ポリエチレンオキシド(分子量60万)とLiClO4とをアセトニトリルに溶解させ、この溶液をアルゴン雰囲気のグロ-ブボックス中でPTFE膜(デュポン社製「テフロン」)上にキャスティングした後、グローブボックス中25℃で放置して溶媒を蒸発させ、さらに乾燥して固体電解質の(PFO)8・LiClO4を調製した。
【0083】上記で得られた負極体としての炭化ピッチ被覆黒鉛または黒鉛化ピッチ被覆黒鉛、固体電解質および正極体としてのLiCoO2を用い、固体電解質としての(PFO)8・LiClO4を用いてフィルム型リチウム二次電池を作製した。
【0084】上記で得られたリチウム二次電池の放電特性を測定した。測定は、1mA/cm2の定電流充放電下で実施し、放電容量は電池電圧が1.2Vに低下するまでの容量とした。
実施例1
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重=2.25g/cm2)50gとあらかじめ一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)100gとを500mlのセパレルフラスコに入れ、200℃、常圧で2時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してトルエン1部を加え、撹拌下に80℃で1時間洗浄処理した後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ、7.7μmであった。芯材としての黒鉛の中心粒径D50は、7.5μmであったので、ピッチ層の厚みは0.1μmである。
【0085】得られた精製ピッチ被覆黒鉛のキノリン可溶分、比表面積および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の値が9.6%であることから、この精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比は、0.096である。
【0086】この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中、1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に示す。また、この精製ピッチ被覆黒鉛の粒度分布測定の結果、芯材と同様に0.1〜150μmに分布を有することが確認され、また、X線回折測定結果も、芯材と同様であった。さらに、芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆層を形成する炭化ピッチは、芯材よりも結晶化度が低いことが判った。さらに、SEM観測の結果、芯材である人造黒鉛は、被覆層を形成する炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0087】この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して、負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に示す。
【0088】また、炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して、負極を作製し、固体電解質リチウム二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表3に示す。
実施例2
実施例1と同様にして得られた精製ピッチ被覆黒鉛を10torrの真空下1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、真空炭化した。得られた真空炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に併せて示す。この真空炭化ピッチ被覆黒鉛の粒度分布測定の結果、芯材と同様に0.1〜150μmに分布を有することが確認され、また、X線回折測定結果も、芯材と同様であった。さらに、芯材と真空炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆層を形成する炭化ピッチは、芯材よりも結晶化度が低いことが判った。さらに、SEM観測の結果、芯材である人造黒鉛は、被覆層を形成する真空炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0089】この真空炭化ピッチ被覆黒鉛を用いて負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に併せて示す。
実施例3
実施例1と同様にして得られた精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中2800℃で1時間焼成し、黒鉛化した。得られた黒鉛化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に併せて示す。この黒鉛化ピッチ被覆黒鉛の粒度分布測定の結果、芯材と同様に0.1〜150μmに分布を有することが確認され、また、X線回折測定結果も、芯材と同様であった。さらに、芯材と黒鉛化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆層を形成する黒鉛化ピッチは、芯材よりも結晶化度が低いことが判った。さらに、SEM観測の結果、芯材である人造黒鉛は、被覆層を形成する黒鉛化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0090】この黒鉛化ピッチ被覆黒鉛を用いて負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとメチルプロピオネートの混合溶媒(3:3:4)を用いて、非水系二次電池を作製した。
【0091】また、この黒鉛化ピッチ被覆黒鉛の電解液中でのガス発生量を測定した。その充放電特性測定結果とガス発生量を表2に併せて示す。
実施例4
実施例1と同様にして得られた精製ピッチ被覆黒鉛を非常に緩慢な昇温のできるリ-ドハンマ-炉において1000℃(還元雰囲気、昇温速度5℃/hr以下)で焼成し、炭化した。この炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に併せて示す。この炭化ピッチ被覆黒鉛の粒度分布測定の結果、芯材と同様に0.1〜150μmに分布を有することが確認され、また、X線回折測定結果も、芯材と同様であった。さらに、芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆層を形成する炭化ピッチは、芯材よりも結晶化度が低いことが判った。さらに、SEM観測の結果、芯材である人造黒鉛は、被覆層を形成する炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0092】この炭化ピッチ被覆黒鉛を用いて負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。充放電特性測定結果を表2に併せて示す。
実施例5
実施例1と同様にして得られた精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中1300℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。この炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に併せて示す。この炭化ピッチ被覆黒鉛の粒度分布測定の結果、芯材と同様に0.1〜150μmに分布を有することが確認され、また、X線回折測定結果も、芯材と同様であった。さらに、芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆層を形成する炭化ピッチは、芯材よりも結晶化度が低いことが判った。さらに、SEM観測の結果、芯材である人造黒鉛は、被覆層を形成する炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0093】この炭化ピッチ被覆黒鉛を用いて、負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に併せて示す。
実施例6
実施例1と同様にして得られた精製ピッチ被覆黒鉛を恒温恒湿槽において空気雰囲気中300℃で8時間酸化処理した。得られた酸化精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積および真比重を表1に示す。この酸化精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に併せて示す。この炭化ピッチ被覆黒鉛の粒度分布測定の結果、芯材と同様に0.1〜150μmに分布を有することが確認され、また、X線回折測定結果も、芯材と同様であった。さらに、芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆層を形成する炭化ピッチは、芯材よりも結晶化度が低いことが判った。さらに、SEM観測の結果、芯材である人造黒鉛は、被覆層を形成する炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0094】この炭化ピッチ被覆黒鉛を用いて、負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に併せて示す。
実施例7
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布=0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重=2.25g/cm3)50gと予め一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)100gとを500mlのセパレルフラスコにいれ、200℃にて2時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。
【0095】得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してトルエン1部を加え、撹拌下に20℃で1時間洗浄処理をした後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ7.9μmであった。芯材としての人造黒鉛の中心粒径D50は7.5μmであったので、ピッチ層の厚みは0.2μmである。
【0096】得られた精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の値が20.4%であることから、この精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比は、0.204である。
【0097】得られた精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。この炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に併せて示す。この炭化ピッチ被覆黒鉛の粒度分布測定の結果、芯材と同様に0.1〜150μmに分布を有することが確認され、また、X線回折測定結果も、芯材と同様であった。さらに、芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆層を形成する炭化ピッチは、芯材よりも結晶化度が低いことが判った。さらに、SEM観測の結果、芯材である人造黒鉛は、被覆層を形成する炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0098】この炭化ピッチ被覆黒鉛を用いて負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に併せて示す。
実施例8
実施例7と同様にして得られた精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中2800℃で1時間焼成し、黒鉛化した。得られた黒鉛化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に併せて示す。この黒鉛化ピッチ被覆黒鉛の粒度分布測定の結果、芯材と同様に0.1〜150μmに分布を有することが確認され、また、X線回折測定結果も、芯材と同様であった。さらに、芯材と黒鉛化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆層を形成する黒鉛化ピッチは、芯材よりも結晶化度が低いことが判った。さらに、SEM観測の結果、芯材である人造黒鉛は、被覆層を形成する黒鉛化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0099】この黒鉛化ピッチ被覆黒鉛を用いて負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとメチルプロピオネートとの混合溶媒(3:3:4)を用いて、非水系二次電池を作製した。また、この黒鉛化ピッチ被覆黒鉛の電解液中でのガス発生量を測定した。その充放電特性測定結果とガス発生量を表2に併せて示す。
実施例9
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布=0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重=2.25g/cm3)50gとあらかじめ一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)100gとを500mlのセパレルフラスコにいれ、減圧下(真空ポンプで吸引、減圧度50torr)200℃にて2時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。
【0100】得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してトルエン1部を加え、撹拌下に80℃で1時間洗浄処理した後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ7.7μmであった。芯材である人造黒鉛の中心粒径D50は7.5μmであったので、ピッチ層の厚みは0.1μmである。
【0101】 この精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の値が10.4%であることから、この精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比は、0.104である。
【0102】 この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に併せて示す。この黒鉛化ピッチ被覆黒鉛の粒度分布測定の結果、芯材と同様に0.1〜150μmに分布を有することが確認され、また、X線回折測定結果も、芯材と同様であった。さらに、芯材と黒鉛化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆層を形成する黒鉛化ピッチは、芯材よりも結晶化度が低いことが判った。さらに、SEM観測の結果、芯材である人造黒鉛は、被覆層を形成する黒鉛化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0103】この炭化ピッチ被覆黒鉛を用いて負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に併せて示す。
実施例10
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布=0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重=2.25g/cm3)50gとあらかじめ一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)100gとを500mlのセパレルフラスコにいれ、200℃にて2時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。
【0104】得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してタ-ル中油1部を加え、撹拌下に20℃で1時間洗浄処理した後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ、7.6μmであった。芯材の黒鉛の中心粒径D50は7.5μmであったので、ピッチ層の厚みは0.05μmである。
【0105】この精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の値が、8.8%であることから、この精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比は、0.088である。
【0106】この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。この炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に併せて示す。この黒鉛化ピッチ被覆黒鉛の粒度分布測定の結果、芯材と同様に0.1〜150μmに分布を有することが確認され、また、X線回折測定結果も、芯材と同様であった。さらに、芯材と黒鉛化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆層を形成する黒鉛化ピッチは、芯材よりも結晶化度が低いことが判った。さらに、SEM観測の結果、芯材である人造黒鉛は、被覆層を形成する黒鉛化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0107】この炭化ピッチ被覆黒鉛を用いて負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に併せて示す。
実施例11
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布=0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重=2.25g/cm3)50gとあらかじめ一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)200gとを1000mlのセパレルフラスコにいれ、200℃にて2時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。
【0108】得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してトルエン1部を加え、撹拌下に80℃で1時間洗浄処理をした後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ7.9μmであった。芯材の黒鉛の中心粒径D50は7.5μmであったので、ピッチ層の厚みは0.2μmである。
【0109】この精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の値が17.3%であることから、その被覆比は、0.173である。
【0110】この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。この炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に併せて示す。この炭化ピッチ被覆黒鉛の粒度分布測定の結果、芯材と同様に0.1〜150μmに分布を有することが確認され、また、X線回折測定結果も、芯材と同様であった。さらに、芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆層を形成する炭化ピッチは、芯材よりも結晶化度が低いことが判った。さらに、SEM観測の結果、芯材である人造黒鉛は、被覆層を形成する炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0111】この炭化ピッチ被覆黒鉛を用いて負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に併せて示す。
実施例12
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布=0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重=2.25g/cm3)50gと一次QIを除去していない軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分3.9%、トルエン不溶分34%)100gとを500mlのセパレルフラスコにいれ、常圧下200℃にて2時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。
【0112】得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してトルエン1部を加え、撹拌下に80℃で1時間洗浄処理した後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ7.9μmであった。芯材の黒鉛の中心粒径D50は7.5μmであったので、ピッチ層の厚みは0.2μmである。
【0113】この精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積、および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の値が7.5%であることから、被覆比は、0.075である。
【0114】この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。この炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に併せて示す。この炭化ピッチ被覆黒鉛の粒度分布測定の結果、芯材と同様に0.1〜150μmに分布を有することが確認され、また、X線回折測定結果も、芯材と同様であった。さらに、芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆層を形成する炭化ピッチは、芯材よりも結晶化度が低いことが判った。さらに、SEM観測の結果、芯材である人造黒鉛は、被覆層を形成する炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0115】この炭化ピッチ被覆黒鉛を用いて負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に併せて示す。
実施例13
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布=0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重=2.25g/cm3)50gとあらかじめ一次QIを除去した軟化点10℃のコールタール(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分8%)100gとを500mlのセパレルフラスコにいれ、常圧下200℃にて2時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。
【0116】得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してトルエン1部を加え、撹拌下に80℃で1時間洗浄処理した後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ、7.6μmであった。芯材の黒鉛の中心粒径D50が7.5μmであったので、ピッチ層の厚みは、0.05μmである。
【0117】得られた精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積および真比重を表1に併せて示す。キノリン可溶分の測定値が7.8%であることから、この精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比は、0.078である。
【0118】この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。この炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に併せて示す。この炭化ピッチ被覆黒鉛の粒度分布測定の結果、芯材と同様に0.1〜150μmに分布を有することが確認され、また、X線回折測定結果も、芯材と同様であった。さらに、芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆層を形成する炭化ピッチは、芯材よりも結晶化度が低いことが判った。さらに、SEM観測の結果、芯材である人造黒鉛は、被覆層を形成する炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0119】この炭化ピッチ被覆黒鉛を用いて負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に併せて示す。
【0120】また、炭化ピッチ被覆黒鉛を用いて負極を作製し、次いで固体電解質リチウム二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表3に併せて示す。
実施例14
球状のメソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品(大阪ガス(株)製「MCMB-6-28」、中心粒径D50=6.0mm、粒度分布=0.1〜50μm、d002=0.336nm、Lc=50nm、La=90nm、比表面積=3.0m2/g、R値=0.42、真比重=2.20g/cm3)50gとあらかじめ一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)100gとを500mlのセパレルフラスコにいれ、常圧下200℃にて2時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆メソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品を得た。
【0121】得られた粗製ピッチ被覆メソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品1部に対してトルエン1部を加え、撹拌下に80℃で1時間洗浄処理した後、濾過して、精製ピッチ被覆メソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品を得た。この精製ピッチ被覆メソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品の中心粒径D50を測定したところ、6.2μmであった。芯材としての黒鉛の中心粒径D50は6.0μmであったので、ピッチ層の厚みは0.1μmである。
【0122】この精製ピッチ被覆メソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品の被覆比、比表面積および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の値が9.8%であることから、被覆比は、0.098である。
【0123】この精製ピッチ被覆メソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品を窒素雰囲気中1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。この炭化ピッチ被覆メソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に併せて示す。この炭化ピッチ被覆メソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品の粒度分布測定の結果、芯材と同様に0.1〜50μmに分布を有することが確認された。さらに、芯材と炭化ピッチ被覆メソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品のR値の比較により、被覆層を形成する炭化ピッチは、芯材よりも結晶化度が低いことが判った。
【0124】この炭化ピッチ被覆メソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品を用いて負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に示す。
実施例15
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=16.2μm、粒度分布0.1〜120μm、d002=0.337nm、Lc=100nm、La=71nm、比表面積=14.4m2/g、R値=0.31、真比重1.96g/cm3)50gと予め一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)100gとを1000mlのセパレルフラスコに入れ、250℃常圧で5時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。
【0125】得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してトルエン3部を加え、撹拌下に50℃で5時間洗浄処理をした後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ、16.6μmであった。芯材としての黒鉛の中心粒径D50は、16.2μmであったので、ピッチ層の厚みは0.2μmである。
【0126】得られた精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積、および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の測定値が11.3%であることから、被覆形成用炭素材料の被覆比は0.113である。
【0127】この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中、1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値及び1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に示す。また、粒度分布測定の結果、0.1〜120μmに分布を有するものであり、X線回折測定結果は芯材と同様であった。芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆形成用炭素材料である炭化ピッチは芯材より結晶化度の低いことがわかった。さらに、SEM観察の結果、芯材の人造黒鉛は被覆形成用炭素材料である炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0128】この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して、負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製し
た。その充放電特性測定結果を表2に示す。
実施例16
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=16.2μm、粒度分布1〜80μm、d002=0.338nm、Lc=83nm、La=63nm、比表面積=6.8m2/g、R値=0.38、真比重2.02g/cm3)50gと予め一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)100gとを1000mlのセパレルフラスコに入れ、250℃常圧で5時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してトルエン3部を加え、撹拌下に50℃で5時間洗浄処理をした後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ、12.0μmであった。芯材としての黒鉛の中心粒径D50は、11.6μmであったので、ピッチ層の厚みは0.2μmである。
【0129】得られた精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積、および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の測定値が12.3%であることから、被覆比は0.123である。
【0130】この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中、1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値及び1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に示す。また、粒度分布測定の結果、1〜80μmに分布を有するものであり、X線回折測定結果は芯材と同様であった。芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆形成用炭素材料である炭化ピッチは芯材より結晶化度の低いことがわかった。さらに、SEM観察の結果、芯材の人造黒鉛は被覆形成用炭素材料である炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0131】この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して、負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に示す。
実施例17
鱗片状の人造黒鉛(中心粒径D50=18.9μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.340nm、Lc=42nm、La=50nm、比表面積=9.2m2/g、R値=0.49、真比重1.82g/cm3)50gと予め一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)100gとを1000mlのセパレルフラスコに入れ、250℃常圧で5時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してトルエン3部を加え、撹拌下に50℃で5時間洗浄処理をした後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ、19.3μmであった。芯材としての黒鉛の中心粒径D50は、18.9μmであったので、ピッチ層の厚みは0.2μmである。
【0132】得られた精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積、および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の測定値が10.6%であることから、被覆比は0.106である。
【0133】この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中、1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値及び1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に示す。また、粒度分布測定の結果、0.1〜150μmに分布を有するものであり、X線回折測定結果は芯材と同様であった。芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆形成用炭素材料である炭化ピッチは芯材より結晶化度の低いことがわかった。さらに、SEM観察の結果、芯材の人造黒鉛は被覆形成用炭素材料である炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0134】この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して、負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製し
た。その充放電特性測定結果を表2に示す。
実施例18
ウイスカー状の人造黒鉛(中心粒径D50=23.8μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.347nm、Lc=25nm、La=15nm、比表面積=13.5m2/g、R値=0.68、真比重1.60g/cm3)50gと予め一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)100gとを1000mlのセパレルフラスコに入れ、250℃常圧で5時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してトルエン3部を加え、撹拌下に50℃で5時間洗浄処理をした後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ、24.2μmであった。芯材としての黒鉛の中心粒径D50は、23.8μmであったので、ピッチ層の厚みは0.2μmである。
【0135】得られた精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積、および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の測定値が13.1%であることから、被覆形成用炭素材料の被覆比は0.131である。
【0136】この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中、1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値及び1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に示す。また、粒度分布測定の結果、0.1〜150μmに分布を有するものであり、X線回折測定結果は芯材と同様であった。芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆形成用炭素材料である炭化ピッチは芯材より結晶化度の低いことがわかった。さらに、SEM観察の結果、芯材の人造黒鉛は被覆形成用炭素材料である炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0137】この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して、負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に示す。
実施例19
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重2.25g/cm3)50gと予め一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)100gとを500mlのセパレルフラスコに入れ、300℃常圧で1時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してキノリン0.1部を加え、撹拌下に150℃で10時間洗浄処理した後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ、8.1μmであった。芯材としての黒鉛の中心粒径D50は、7.5μmであったので、ピッチ層の厚みは0.3μmである。
【0138】得られた精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の測定値が29.0%であることから、被覆比は0.290である。
【0139】この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中、1000℃で1時間(昇温速度100℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に示す。また、粒度分布測定の結果、0.1〜150μmに分布を有するものであり、X線回折測定結果は芯材と同様であった。芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆形成用炭素材料である炭化ピッチは芯材より結晶化度の低いことがわかった。さらに、SEM観察の結果、芯材の人造黒鉛は被覆形成用炭素材料である炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0140】この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して、負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に示す。
実施例20
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重2.25g/cm3)25gと予め一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)50gとを1000mlのセパレルフラスコに入れ、30℃常圧で3時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してアセトン10部を加え、撹拌下に30℃で5時間洗浄処理をした後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ、7.8μmであった。芯材としての黒鉛の中心粒径D50は、7.5μmであったので、ピッチ層の厚みは0.15μmである。
【0141】得られた精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の測定値が15.0%であることから、被覆比は0.150である。
【0142】この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中、1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に示す。また、粒度分布測定の結果、0.1〜150μmに分布を有するものであり、X線回折測定結果は芯材と同様であった。芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆形成用炭素材料である炭化ピッチは芯材より結晶化度の低いことがわかった。さらに、SEM観察の結果、芯材の人造黒鉛は被覆形成用炭素材料である炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0143】この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して、負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に示す。
実施例21
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重2.25g/cm3)50gと予め一次QIを除去した軟化点10℃のコールタール(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分8%)50gとを500mlのセパレルフラスコに入れ、250℃常圧で3時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してタール中油10部を加え、撹拌下に200℃で1時間洗浄処理をした後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ、7.5μmであった。
【0144】得られた精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の測定値が2.0%であることから、被覆比は0.020である。
【0145】この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中、1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に示す。また、粒度分布測定の結果、0.1〜150μmに分布を有するものであり、X線回折測定結果は芯材と同様であった。芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆形成用炭素材料である炭化ピッチは芯材より結晶化度の低いことがわかった。さらに、SEM観察の結果、芯材の人造黒鉛は被覆形成用炭素材料である炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0146】この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して、負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に示す。
実施例22
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重2.25g/cm3)50gと予め一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)100gとを1000mlのセパレルフラスコに入れ、250℃常圧で3時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してトルエン4部を加え、撹拌下に80℃で1時間洗浄処理した後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ、7.6μmであった。芯材としての黒鉛の中心粒径D50は、7.5μmであったので、ピッチ層の厚みは0.05μmである。
【0147】得られた精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の測定値が8.2%であることから、被覆比は0.082である。
【0148】この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中、700℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に示す。また、粒度分布測定の結果、0.1〜150μmに分布を有するものであり、X線回折測定結果は芯材と同様であった。芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆形成用炭素材料である炭化ピッチは芯材より結晶化度の低いことがわかった。さらに、SEM観察の結果、芯材の人造黒鉛は被覆形成用炭素材料である炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0149】この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して、負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に示す。
実施例23
実施例22と同様にして得られた精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中、1500℃で2時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に示す。また、粒度分布測定の結果、0.1〜150μmに分布を有するものであり、X線回折測定結果は芯材と同様であった。芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆形成用炭素材料である炭化ピッチは芯材より結晶化度の低いことがわかった。さらに、SEM観察の結果、芯材の人造黒鉛は被覆形成用炭素材料である炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0150】この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して、負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に示す。
実施例24
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重2.25g/cm3)50gと予め一次QI量を調整した軟化点10℃のコールタール(キノリン不溶分2.9%、トルエン不溶分7.8%)100gとを1000mlのセパレルフラスコに入れ、200℃常圧で2時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。得られた粗製ピッチ被覆黒鉛1部に対してトルエン4部を加え、撹拌下に80℃で1時間洗浄処理をした後、濾過して、精製ピッチ被覆黒鉛を得た。この精製ピッチ被覆黒鉛の中心粒径D50を測定したところ、7.6μmであった。芯材としての黒鉛の中心粒径D50は、7.5μmであったので、ピッチ層の厚みは0.05μmである。
【0151】得られた精製ピッチ被覆黒鉛の被覆比、比表面積および真比重を表1に示す。キノリン可溶分の測定値が8.7%であることから、被覆比は0.087である。
【0152】この精製ピッチ被覆黒鉛を窒素雰囲気中、1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に示す。また、粒度分布測定の結果、0.1〜150μmに分布を有するものであり、X線回折測定結果は芯材と同様であった。芯材と炭化ピッチ被覆黒鉛のR値の比較により、被覆形成用炭素材料である炭化ピッチは芯材より結晶化度の低いことがわかった。さらに、SEM観察の結果、芯材の人造黒鉛は被覆形成用炭素材料である炭化ピッチにより被覆され、エッジ部分が丸くなっていることが確認された。
【0153】この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して、負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に示す。
比較例1
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重2.25g/cm3)をそのまま用いて負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。
【0154】しかしながら、この電池は、電解液の分解により充放電がほとんどできなかった。
【0155】なお、使用した人工黒鉛の被覆比、比表面積および真比重を表1に示す。
比較例2
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重2.25g/cm3)をそのまま用いて負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカ-ボネ-トとメチルプロピオネ-トの混合溶媒(3:3:4)を用いて、非水系二次電池を作製した。また、この黒鉛の電解液中でのガス発生量を測定した。充放電特性測定結果とガス発生量を表2に併せて示す。
比較例3
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重2.25g/cm3)をそのまま用いて負極を作製し、固体電解質リチウム二次電池を作製した。その充放電特性測定結果とガス発生量を表2に併せて示す。
比較例4
球状のメソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品(大阪ガス(株)製「MCMB-6-28」、中心粒径D50=6.0μm、粒度分布0.1〜50μm、d002=0.336nm、Lc=50nm、La=90nm、比表面積=3.0m2/g、R値=0.42、真比重2.20g/cm3)をそのまま用いて負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとメチルプロピオネートの混合溶媒(3:3:4)を用いて、非水系二次電池を作製した。充放電特性測定結果を表2に示す。
比較例5
塊状の人造黒鉛(中心粒径D50=7.5μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=100nm、La=97nm、比表面積=10.8m2/g、R値=0.26、真比重2.25g/cm3)50gと予め一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)100gとを1000mlのセパレルフラスコに入れ、200℃常圧で2時間撹拌混合し、粗製ピッチ被覆黒鉛を得た。得られた粗製ピッチ被覆黒鉛を有機溶剤で洗浄することなく、窒素雰囲気中1000℃で1時間(昇温速度25℃/hr)焼成し、炭化した。焼成後、試料を取り出したところ、人造黒鉛粉末は塊となっていた。得られた炭素材料の塊をコーヒーミルで粉砕し、粉末状の炭素材料を得た。得られた炭素材料の比表面積、真比重、R値および1μm以下の粒子の体積基準積算値を表1に示す。R値が小さいこと、さらにSEM観察の結果、本願発明の製造法にて得られた炭素材料に比較し、角の多い形状をしていることがわかったが、これは粉砕により、黒鉛の面があらたに露出したことに起因するものと思われる。
【0156】この炭素材料を使用して、負極を作製し、電解液として1moldm-3のLiClO4を溶解させたプロピレンカーボネートを用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に示す。
【0157】
【表1】

【0158】
【表2】

【0159】
【表3】

【0160】表1から明かな様に、黒鉛の表面をピッチ或いはタールで被覆することにより、その比表面積を低減することができる。また、被覆された黒鉛を焼成することにより、比表面積は、さらに低減する。
【0161】表2から明かな様に、黒鉛の表面をピッチ或いはタールで被覆することにより、非水系リチウム二次電池の放電容量および充放電効率が、大幅に改善される。また、黒鉛の表面をピッチで被覆することにより、電解液との反応が抑制され、ガス発生量も低減する。さらに、MCMB黒鉛化品の表面をピッチで被覆することにより、電池の放電容量および充放電特性をより一層改善することができる。
【0162】表3から明らかなように、黒鉛の表面をピッチ或いはタールで被覆することにより、固体電解質リチウム二次電池においても、放電容量および充放電効率が大幅に改善される。
 
訂正の要旨 訂正事項
a.特許請求の範囲の請求項1において、「二次電池用の炭素材料であって、」、「被覆後にトルエンによって洗浄された石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチを焼成した」及び「被覆炭素材料の焼成前の被覆比が0.01〜0.2であり、石炭系あるいは石油系のタールまたはピッチの一次QIが3%以下であり、かつトルエン不溶分が7.8〜30%であり、」を挿入し、「芯材炭素材料」を「芯材黒鉛材料」に訂正する。
b.請求項2〜6を削除する。
c.請求項7〜11を新たな請求項2〜6とし、かつ、新請求項3の「負極材料とする」とあるのを「負極を構成要素とする」に訂正する。
d.明細書の【0025】において、「粒子状(鱗片状乃至塊状、繊維状、ウイスカー状、球状、破砕状など)の天然黒鉛」とあるのを、「粒子状(鱗片状乃至塊状、繊維状、ウイスカー状、球状など)の天然黒鉛」と訂正する。
異議決定日 2002-10-31 
出願番号 特願平11-86511
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C01B)
P 1 651・ 121- YA (C01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安齋 美佐子  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 唐戸 光雄
野田 直人
登録日 1999-09-10 
登録番号 特許第2976299号(P2976299)
権利者 シャープ株式会社 大阪瓦斯株式会社
発明の名称 リチウム二次電池用負極材料  
代理人 関 仁志  
代理人 中川 博司  
代理人 舘 泰光  
代理人 小原 健志  
代理人 藤井 淳  
代理人 舘 泰光  
代理人 中野 睦子  
代理人 三枝 英二  
代理人 中川 博司  
代理人 金谷 宥  
代理人 中川 博司  
代理人 中野 睦子  
代理人 掛樋 悠路  
代理人 掛樋 悠路  
代理人 藤井 淳  
代理人 中野 睦子  
代理人 藤井 淳  
代理人 小原 健志  
代理人 三枝 英二  
代理人 関 仁志  
代理人 齋藤 健治  
代理人 舘 泰光  
代理人 中川 博司  
代理人 大月 伸介  
代理人 齋藤 健治  
代理人 掛樋 悠路  
代理人 関 仁士  
代理人 大月 伸介  
代理人 齋藤 健治  
代理人 関 仁士  
代理人 齋藤 健治  
代理人 掛樋 悠路  
代理人 中野 睦子  
代理人 藤井 淳  
代理人 三枝 英二  
代理人 小原 健志  
代理人 小原 健志  
代理人 舘 泰光  
代理人 三枝 英二  

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