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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H05B |
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管理番号 | 1074818 |
異議申立番号 | 異議2001-73497 |
総通号数 | 41 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-08-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-12-21 |
確定日 | 2003-02-05 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3181620号「金属要素加熱用の電磁装置」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3181620号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3181620号の請求項1ないし6に係る発明についての出願は、平成3年6月1日(優先権主張1990年6月1日、米国)に特許出願され、平成13年4月20日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、異議申立人トクデン株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年10月21日に訂正請求(平成14年12月27日に取り下げられた。)がなされた後、再度取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年12月27日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 特許権者の求めている訂正の内容は、以下の訂正事項a.〜e.のとおりである。 訂正事項a. 特許請求の範囲の請求項1中の「複数のコアエリアと、前記プレートは」を「複数のコアエリアと、金属加工品は、前記磁気ループの一部となり、磁束が該金属加工品の断面全体を通過するように前記コアエリア間に置かれ、前記プレートは」と訂正する。 訂正事項b. 特許請求の範囲の請求項1中の「交流源」を「商用周波数の交流源」と訂正する。 訂正事項c. 特許請求の範囲の請求項2、4、6を削除する。 訂正事項d. 特許請求の範囲の請求項3を請求項2に繰り上げるとともに、「請求項1または2に記載の」を「請求項1に記載の」と訂正する。 訂正事項e. 特許請求の範囲の請求項5を請求項3に繰り上げるとともに、「請求項1または2に記載の」を「請求項1に記載の」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項a.は、金属加熱用の装置における金属加工品の配置構成を、明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、特定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項b.は、交流源の技術内容を、明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、特定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項c.は、特許請求の範囲の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。 訂正事項d.は、訂正事項c.の訂正に伴って明りょうでなくなった記載を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項e.は、訂正事項c.の訂正に伴って明りょうでなくなった記載を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、上記訂正事項a.〜e.は、いずれも新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 (1)申立ての理由の概要 申立人トクデン株式会社は、甲第1号証(米国特許第4673781号明細書)、甲第2号証(室町康蔵著、最新高級電験講座第7巻「直流機・同期機」、昭和53年2月28日株式会社電気書院発行、p34)、及び参考資料(大岡登、前川定雄著、標準電気機器講座「変圧器」、昭和43年1月20日、東京電機大学出版局発行、p18〜19)を提出し、本件請求項1〜6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一または、甲第1号証に記載された発明および甲第2号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1ないし6に係る発明の特許は、取り消されるべきであると主張している。 (2)本件発明 上記2.で示したように、上記訂正は、認められるから、本件の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】2つの互いに向合うループ端面の間に開空間を有する磁気ループと、前記磁気ループは、前記互いに向合うループ端面を有する複数の平行な高透磁率導電材料の薄いプレートを含み、前記ループ端面の面積より大きい面積を有しかつ前記磁気ループの薄いプレートに対して直角であるコア端面を有する第2の複数の平行な高透磁率導電材料の薄いプレートを含む、前記ループ端面のそれぞれに隣接した複数のコアエリアと、金属加工品は、前記磁気ループの一部となり、磁束が該金属加工品の断面全体を通過するように前記コアエリア間に置かれ、前記プレートは互いに密接に離間されかつ絶縁されており、巻線が前記ループ端面に隣接するコアエリアのそれぞれに巻回され、商用周波数の交流源に接続されて該交流源の周波数で前記磁界を反転する、導電性巻線により形成された複数の巻線と、を含む金属加熱用の装置。 【請求項2】前記複数のプレートのそれぞれは1.00mmから0.0001mmの間の厚さを有する請求項1に記載の金属加熱用の装置。 【請求項3】前記コアエリアのひとつは他のコアエリアに対して直角に移動可能であり、前記コア端面の間の開空間の寸法を調整することを特徴とする請求項1に記載の金属加熱用の装置。」 (3)引用刊行物記載の発明等 当審が通知した取消しの理由に引用した刊行物1(特開昭61-19095号公報)には、「両端(3)、(4)が対面している、開いた、平面状の環の形をなす少くとも一箇の磁気回路(2)、この磁気回路上に巻かれたインダクタ(5,6)を有し、加熱される部品(1)は、環の両端(3,4)の間のエアギャップ(7)中に置かれ、かつ、上記のインダクタは、磁気回路(2)上に巻かれた二つのコイル(5,6)から成り、コイルの各々は環の端部(3,4)の近傍に位置し、コイルの各々は同位相の交流電流によって励磁され、環の各端部はギャップに向かって隅落としの形で細くなっており、・・・(中略)・・・、金属部品(1)の加熱のための、電磁誘導装置。」(特許請求の範囲(1))に関して、「本発明は、金属部品の加熱のための電磁誘導装置に関するものである。・・・(中略)・・・。本発明の目的とするところは、上に述べた欠点を改良し、特に、熱的な損失と渦電流損を極限した、高い効率を持つ、金属部品の加熱のための電磁誘導装置を実現することにある」(第2頁左上欄第18行〜同左下欄第10行)、「コイル5,6は、例えば交流電源8から供給される同位相の交流電流によって励磁される。」(第3頁右上欄第9〜10行)、「磁気回路は、軟鉄の薄板またはフェライトのブロックで作ることができる。」(第3頁左下欄第10〜11行)、「更に確実にそれを誘導できるように、誘導部品11がギャップ7の中に置かれている:この誘導部品は、例えば、断熱材によって作ることができ、刻み目9,10に嵌め込まれて、磁気回路2を成す環の両端に固定される。」(第3頁右下欄第5〜10行)、「これらの水箱は、磁気回路の板の幾枚かをくり抜いて作ることができる。磁気回路を構成する鉄板またはフェライトのブロックは現在の技術で既に知られている方法で組み上げられるので、図には示されていない。これらの板は、環の形に、かつ、組み上げた時に両端が隅落としの形になるように切り抜かれる。」(第4頁左欄第16行〜同右欄第2行)との記載が図面とともに示されている。 したがって、刊行物1には、2つの互いに向合う磁気回路端面にエアギャップを有する磁気回路と前記磁気回路は、前記互いに向合う端面を有する複数の平行な導電材料の薄板を含み、コイルが前記磁気回路端面に隣接するエリアのそれぞれに巻回され、交流電源に接続されて該交流電源の周波数で磁界を反転する、導電性コイルにより形成された複数のコイルとを含む電磁誘導装置が記載されている。 同じく、当審が通知した取消しの理由に引用した仏国特許出願公開第2489645号明細書(1982年)(以下、「刊行物2」という。)には、金属の誘導加熱装置に関し、その例として、第4図及び対応箇所に、対向端面の面積を、磁気ループの端部面積よりも大きいものとした技術が記載されている。 同じく、室町康蔵著、最新高級電験講座第7巻「直流機・同期機」、昭和53年2月28日株式会社電気書院発行、p34(以下、「刊行物3」という。)には、「2?2?2電機子鉄心 電機子鉄心は、スロットに導体を収めて、磁界中に回転するため、鉄心中にヒステリシス損、およびうず電流損を生ずる。したがって、これらの鉄損を減らすため0.35mm、まれに0.5mmのけい素鋼板を表面絶縁処理をして成層鉄心とする。」との記載がある。 同じく、大岡登、前川定雄著、標準電気機器講座「変圧器」、昭和43年1月20日、東京電機大学出版局発行、p18〜19(以下、「刊行物4」という。)には、「[1]鉄心材料」一般に、表面に無機質の絶縁皮膜を施した厚さ0.3mmおよび0.35mmの薄いけい素鋼板(帯)が使用される。」との記載がある (4)対比・判断 [本件発明1について] 本件発明1(前者)と刊行物1記載の発明(後者)とを対比すると、後者の「エアギャップ」、「磁気回路」、「薄板」、「コイル」、「交流電源」、「電磁誘導装置」は、それぞれ、前者の「開空間」、「磁気ループ」、「プレート」、「巻線」、「交流源」、「金属加熱用の装置」に相当している。 したがって、両者は、2つの互いに向合うループ端面の間に開空間を有する磁気ループと、前記磁気ループは、前記互いに向合うループ端面を有する複数の平行な高透磁率導電材料の薄いプレートを含み、前記ループ端面の面積より大きい面積を有しかつ前記磁気ループの薄いプレートに対して直角であるコア端面を有するループ端面のそれぞれに隣接した複数のエリアと、金属加工品は、上記エリア間に置かれ、前記プレートは互いに密接に離間されかつ絶縁されており、巻線が前記ループ端面に隣接するエリアのそれぞれに巻回され、交流源に接続されて該交流源の周波数で前記磁界を反転する、導電性巻線により形成された複数の巻線と、を含む金属加熱用の装置の点で一致し、次の点で相違している。 相違点イ. 前者が、ループ端面の面積より大きい面積を有しかつ前記磁気ループの薄いプレートに対して直角であるコア端面を有する第2の複数の平行な高透磁率導電材料の薄いプレートを含む、前記ループ端面のそれぞれに隣接した複数のコアエリアを具備しているのに対し、後者には、ループ端面の面積より大きい面積を有する誘導部品を備えている点。 相違点ロ. 前者が、金属加工品は、前記磁気ループの一部となり、磁束が該金属加工品の断面全体を通過するように前記コアエリア間に置かれるものであるのに対し、後者では、該構成についての記載がない点。 相違点ハ. 前者が、巻線がループ端面に隣接するコアエリアのそれぞれに巻回されるものであるのに対し、後者では、ループ端面に隣接するエリアのそれぞれに巻回されるものである点。 相違点ニ. 前者が、交流源を商用周波数の交流源としているのに対し、後者では、該構成を具備していない点。 そこで、上記相違点について検討する。 まず、相違点イ.、ハについて検討する。 上記刊行物2には、ループ(「circuit30」)端面の面積より大きい面積を有し、かつ磁気ループに対して直角である端面を有する複数のエリア(「extremites opposees(38、39)」)を端面に隣接して設けたものが記載されている。 しかし、上記刊行物2において、上記端部部材(38、39)は、複数の平行な高透磁率導電材料の薄いプレートからなるものとの記載はないし、それらに巻線が巻回されるものではない。さらには、商用周波数の交流源に接続されるものでもないことから、本件発明1におけるコアエリアと同一機能を有する部材とはいえない。 他の刊行物をみても、異議申立人の提出した甲第1号証は、上記刊行物1にかかる出願の米国における出願の特許公報であって、上記相違点イ.〜ニ.のいずれの技術事項も開示していない。また、同甲第2号証、参考資料は、それぞれ、上記刊行物3、4に対応するものであって、珪素鋼板に関する一般的技術を開示しているに過ぎない。 そして、本件発明1は、上記相違点にかかる構成を具備することにより、特許明細書記載の作用・効果を奏するものである。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物1記載のものと同一ではなく、刊行物1〜4記載のものから当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 なお、異議申立人は、特許異議申立書において、「(a)本件請求項1に係る発明は、ループ端面の面積より大きい面積のコア端面を有する第2の複数の平行な高透磁率導電材料の薄いプレート(構成B)を有するのに対して、甲第1号証に記載された発明は、ループ端面の面積より大きい面積のコア端面でない点で相違する。しかしながら、ループ端面の面積より大きい面積のコア端面とすることは、本件明細書の段落0010で説明しているように加工品の外側に適合させるものに過ぎず、斯かる構成は当業者が実施において適宜に採用される事項であり、この相違点に格別の発明力を要するものではない。」(第9頁第25行〜第10頁第3行)と主張している。 しかし、ループ端面より大きな面積を有するコア端面に導電性巻線を形成したものが本件出願前、公知でない以上、当業者が適宜なしえたものということはできず、上記主張は、採用できない。 [本件発明2,3について] 本件発明2,3は、それぞれ、本件発明1に、「前記複数のプレートのそれぞれは1.00mmから0.0001mmの間の厚さを有する」および「前記コアエリアのひとつは他のコアエリアに対して直角に移動可能であり、前記コア端面の間の開空間の寸法を調整することを特徴とする」との技術構成を付加し、限定したものである。 そして、本件発明1が、刊行物1〜4、甲第1、2号証記載のものから当業者が、容易に発明をすることができないものである以上、本件発明2,3も、[本件発明1について]で示したのと同様の理由により、申立人が提出した証拠から当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 金属要素加熱用の電磁装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 2つの互いに向合うループ端面の間に開空間を有する磁気ループと、 前記磁気ループは、前記互いに向合うループ端面を有する複数の平行な高透磁率導電材料の薄いプレートを含み、 前記ループ端面の面積より大きい面積を有しかつ前記薄いプレートに対して直角であるコア端面を有する第2の複数の平行な高透磁率導電材料の薄いプレートを含む、前記ループ端面のそれぞれに隣接した複数のコアエリアと、 金属加工品は、前記磁気ループの一部となり、磁束が該金属加工品の断面全体を通過するように前記コアエリア間に置かれ、 前記プレートは互いに密接に離間されかつ絶縁されており、 巻線が前記ループ端面に隣接するコアエリアのそれぞれに巻回され、商用周波数の交流源に接続されて該交流源の周波数で前記磁界を反転する、導電性巻線により形成された複数の巻線と、 を含む金属加熱用の装置。 【請求項2】 前記複数のプレートのそれぞれは1.00mmから0.0001mmの間の厚さを有する請求項1に記載の金属加熱用の装置。 【請求項3】 前記コア端面の間の前記開空間の寸法は、前記コア端面の最小の寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の金属加熱用の装置。 【請求項4】 前記コアエリアのひとつは他のコアエリアに対して直角に移動可能であり、前記コア端面の間の開空間の寸法を調整することを特徴とする請求項1に記載の金属加熱用の装置。 【請求項5】 前記巻線はコアの誘導加熱が最小になるような巻線の巻数と巻線の幅と長さと間の関係を有することを特徴とする請求項1に記載の金属加熱用の装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 この発明は、金属部品を加熱するための新規な装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 金属部品に熱を発生させるための基本的な機構、システム又は方法はほんの少ししかないことが知られている。直接炎、浸せき(immersion)、放射、抵抗加熱を含む従来の加熱を用いることができ、金属の加熱は電気の流れによって生じ、熱は機械的な応力又は摩擦によって作られる。これらの中には、熱が磁界の使用によって発生される誘導加熱が含まれている。誘導加熱の分野で良く知られているように、金属の加工品は交流が供給されるコイルの中に置かれ、加工品とコイルとは誘導電流が金属に存在するように磁界によって結合される。この誘導電流が電気的抵抗加熱と同様の抵抗損失によって金属を加熱する。通常、コイルは加熱されるので、加工品の加熱をできるだけ効率的にするために冷却する必要がある。誘導電流の密度は加工品の表面で最大であり、表面からの距離の増大とともに減少する。この現象は表皮効果として知られており、これが重要なのは、全エネルギの大部分が誘導され加熱に利用されるのはこの深さのみであるからである。典型的な表皮厚さは低周波数の分野では3-4インチである。全ての誘導加熱の分野では、加熱は渦電流のために表面で始まり、加工品の本体へ熱が伝導される。磁界を利用する他の金属加熱法は移転磁束(transfer flux)加熱と呼ばれる。この方法は、比較的薄い金属片の加熱に共通に使用されており、誘導コイルの再配置によって磁束熱を移転し、磁束は通常の誘導加熱の場合のように加工品の周囲ではなく加工品に垂直に加工品を通過する。加工品を通過する磁束は金属片の面内で循環する磁束線を誘導し、これによって、同じ渦電流損失及び加工品の加熱を生じる。 【0003】 直流を使用する別の誘導加熱法は「工業加熱マガジン」1990年5月号、第24ページのグレン・R・ムーアの論文に記載されている。この新たな加熱法においては、直流が利用され、加工品に関する磁界の回転ではなく加工品の回転のために、加工品の軸方向に電流が流れる。また、この方法は金属スラブを加熱することができるものとしても記載されており、移転磁束加熱の直流法である。この方法も、前記の論文に記載されているような直流磁界の浸透を決定する方法と表皮効果とを利用している。 【0004】 しかしながら、これらの加熱システムのいづれも、磁界において又は直接炎及びその関連方法において伝導率を変化させることなく外部から加工品を均一に加熱することはできない。 【0005】 したがって、従来技術の欠点を克服する新規な磁界技術を利用すること、及び、加工品をその断面全体にわたって均一に加熱する効率を改善することが望ましい。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 この発明の目的は、金属加工品をその断面及び長さ全体にわたって均一に加熱する方法を提供することである。この発明の他の目的は、こうした加熱を、伝導を利用することなく、コイルでの及び部品の表皮効果での最小の熱損失で達成することである。 【0007】 【課題を解決するための手段】 この発明のこれらの及びその他の目的は新規な磁界システムによって達成され、この新規な磁界システムは、これによって発生された磁界の中に置かれた金属部品の均一な加熱を許容し達成する。磁界は磁気ループによって発生され、この磁気ループは複数の薄い板と加工品を置くことができるエアーギャップとを含む。次いで、加工品は囲まれ、磁気ループの一部となる。システムによって発生された磁界は加工品を通過し、ループの残りの部分を通過する。この磁界システムは50-60サイクルで最も良く動作するが、これは、このシステムが全ての商用設備での利用可能なコンセントによって分配される通常の電力を利用することができることを意味する。 【0008】 また、この発明は、磁気ループのエアーギャップ内に置かれた非磁性金属をも均一に加熱する。多数の実験を行った結果、規則的な部品及び不規則的な部品の断面全体が所望の温度まで均一に上昇され、しかもこれらの部品が迅速に加熱されたことがわかった。 【0009】 【実施例】 図1に示すように、磁気ループシステムが10に示されている。この磁気ループ10は磁気ループ薄片構造へと形成される複数の金属片から成る。磁気片11は何らかの高透磁率材料が使用されるが好適な実施例においては高透磁率けい素鋼である。金属片11は該金属片に取付けられるか付着された絶縁体12を有する。この絶縁は通常は金属片の製造者によりされるが、どのような周知の方法で達成されても良い。如何なる良好な絶縁材料でも使用され得る。金属片11は最大1.0ミリメートルの厚さを有し、製造され得る最も薄い可能なシートの最小厚さを有しても良い。高透磁率材料のシートが薄ければ薄いほどシステムの性能は良くなる。最大効率の材料は0.0001ミリメートルかまたはより薄いものである。しかし、それは現在商業的に利用できない。新規なシステムにおいて、磁気ループは金属片11用に0.30ミリメートルで構成された。これらの金属片11は図1に示されるような通常は方形の形で所望の形状に形成される。片はそれからエポキシまたはゴムのり13を有する真空室に置かれ、そこでそれは絶縁体12の一部になる。真空が室の中に生成され、そして全ての外部の材料は除去される。それからエポキシまたはゴムのりは真空が除かれた時に片にボンデイングする。これはこの磁気ループを製作する現在最も周知な方法である。しかし、薄片を製作するためにを片と共に結合するため金属片、絶縁体そして幾分のゴムのりそして/または機械的手段を使用することは満足のいくものである。 【0010】 図1に示されるように、2つのコアエリア15がある。このコアエリアは正方形から矩形、円形または円筒形に至る大きさまたは形状であっても良い。コアエリアは加熱されるべき加工品に外側に適合するように選択されて良い。もし、大きな加工品が加熱されるならば、大きなコアエリア15が使用されるべきである。磁界システム即ちループは、磁力線が加工品を介して直接にコアから他方のコアへ通過するように2つのコア間に加工品が確実に含まれる時に最大効率で動作する。コアエリア15は加工品に適合するために移動されても良い。最適の実施となるコイルの長さと該コイルの密度または重量の間にはひとつの関係がある。現在まで、重大な関係が唯一経験的に見いだされた。加えて、各コア15の上にはコイル14が巻かれている。コイル巻きの形状は均一の加熱には重大である。コイルの巻数および寸法は、システム中の発生された表皮効果および損失により誘導加熱を妨げるために重大である。また、コアの面の間の距離に関係するコアの巻数と高さが重要であることが見いだされた。 【0011】 図1に示されるように、コアエリア15は、コアから異なる大きさを有する薄片エリア17へコアシステム10内の磁力の伝達のためにある。この薄片エリアはABに等しい。AおよびBはコアエリア15の長さと幅である。システム内の薄片のエリアにおける端部の大きさの変更は、加工品を介してコアの間で増加した磁気伝達を生じる。しかし、この大きさを変更することは必要なく、そして全コアシステム薄片は、加熱が十分に通じないけれど、コアエリアと同じ大きさであり得る。 【0012】 A/C接続が16に示され、コイルに接続されている。コイルは並列または直列19にワイヤにより接続される。動作において交流電流が図示されてない交流電流源から接続16に供給され、該電流は60サイクルまたは特定エリアのラインのどのような周波数でもある。この交流電圧はコイル14の両端に供給されるので磁力線はコアエリア15に誘起されそしてループ10を介して2つのコア間に注がれる。磁束はワイヤの電流またはパイプの液流に類似している。起磁力は磁束流の発生源でこの特定の例では均一コア密度のコアは平方メートル当たりのウエーバ数の測定可能な磁束密度を有する。交流電流がコイル14に供給される時に、コア中に起磁力を生じて正および負の値の間を交番する。これは通常ヒステリシスループと呼ばれる磁化曲線により供給される。鉄合金は磁化され、そして磁区と呼ばれる微小領域から成る。各磁区の原子の電子は原子核の回りに回転しそして自らの軸の回りをスピンする。支配的な動きは電子スピンにより生成され、そして磁区の各原子の正味の磁気運動は同じ方向に組織される。交流電流がコイルに供給されるそして加工品がその間に置かれる時に、加工品の磁区の境界は原子核等の回転の結果として歪が生じる。この結果が加工品内に摩擦または機械的熱の発生となる。磁区は通常均一に材料全体に配列されており、そして磁束は断面を通して均一なので熱は均一に加工品に発生される。この磁界が加工品を均一に加熱するために、ループ材料は被加熱材料よりも高い透磁性があることが必要である。スチールブロックは中央および表面上に埋込まれた熱電対を有する。挿入された加工品とともに周囲のエリアへの有効な熱損失を最小にするために、加工品はループの中に置かれ、そして加工品の全断面が急速に(約4分以内に)そして均一に500度Cの温度に加熱される。加熱効果は、加熱される金属の融解温度以下のあらゆる望ましい温度まで継続することができる。特定の加工品を加熱するために要求される時間は加工品の大きさおよび磁界の強さの関数である。 【0013】 磁界ループのコア部分の材料は、磁界の方向の変化中にヒステリシスループの最大の大きさを越えないように該材料が選択されるので、コア部分は加熱されることはない。それに比して小さいヒステリシスループを有する加工品部分は各交番サイクル中に磁力線の強さがヒステリシス曲線を超えてしまうので、加工品の加熱を生じる。 【0014】 この同様な磁界加熱装置はまた、金属が磁性材料のドメインの動作と同様な動作によって整列されている結晶構造を有する限り非磁性材料に作用する。結晶構造は、該構造がその融点かまたはその近くまで整列されるであろう。アルミニュウムの結晶構造に同様な効果がそれが突き入れられ時にみられる。熱は結晶構造の強力な機械的な転覆により発生される。 【0015】 好ましい実施例の別の面で変更が本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者に可能であろう。特許請求の範囲の記載において、図1を参照することにより明らかなように、磁気ループのエアギャップを間にして互いに向き合うエアコリア15の端面をコア端面と称している。また、磁気ループのエアギャップを間にして互いに向き合う薄片エリア17の端面(コリア15を除去した場合の薄片エリア17の端面)、例えばコリア15においてコア端面の裏面のうち薄片エリア17が占有する面(裏面の一部と一致している)、をループ端面と称している。 【図面の簡単な説明】 【図1】 図1はこの発明の磁気システムの1例である。 【図2】 図2は薄片の詳細を示す2-2線に沿った図1の断面図である。 【符号の説明】 10 磁気ループシステム 11 金属片 12 絶縁体 14 コイル 15 コアエリア |
訂正の要旨 |
訂正事項a. 特許請求の範囲の請求項1中の「複数のコアエリアと、前記プレートは」を「複数のコアエリアと、金属加工品は、前記磁気ループの一部となり、磁束が該金属加工品の断面全体を通過するように前記コアエリア間に置かれ、前記プレートは」と訂正する。 訂正事項b. 特許請求の範囲の請求項1中の「交流源」を「商用周波数の交流源」と訂正する。 訂正事項c. 特許請求の範囲の請求項2、4、6を削除する。 訂正事項d. 特許請求の範囲の請求項3を請求項2に繰り上げるとともに、「請求項1または2に記載の」を「請求項1に記載の」と訂正する。 訂正事項e. 特許請求の範囲の請求項5を請求項3に繰り上げるとともに、「請求項1または2に記載の」を「請求項1に記載の」と訂正する。 |
異議決定日 | 2003-01-17 |
出願番号 | 特願平3-130108 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(H05B)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 鈴木 敏史 |
特許庁審判長 |
粟津 憲一 |
特許庁審判官 |
岡本 昌直 長浜 義憲 |
登録日 | 2001-04-20 |
登録番号 | 特許第3181620号(P3181620) |
権利者 | ゲイルスバーグ テクノロジー エルエルシー |
発明の名称 | 金属要素加熱用の電磁装置 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 川崎 勝弘 |
代理人 | 増井 忠弐 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 西山 文俊 |
代理人 | 西山 文俊 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 増井 忠弐 |
代理人 | 今井 庄亮 |
代理人 | 今井 庄亮 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 小林 泰 |