【重要】サービス終了について

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1074920
異議申立番号 異議2001-72250  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-02-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-08-17 
確定日 2003-04-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第3136029号「半導体装置」の請求項1〜15に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3136029号の請求項1〜15に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続の経緯
特許第3136029号(平成5年8月9日出願、平成12年12月1日設定登録。)は、訂正審判が請求され、訂正明細書のとおり訂正することを認めるとの審決がなされ、その後異義申立人安田 篤及び間脇八蔵により特許異議の申し立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年1月14日に意見書が提出されたものである。

[2]本件発明
本件特許の請求項1〜15に係る発明(以下、「本件発明1〜15」という。)は、本件特許に係る訂正審判請求(訂正2001-39073)の審決により確定した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜15に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】第1の面、該第1の面より面積が小さい第2の面及び4つの側面を有するパッケージ、複数のリード並びに複数のタブ吊りリードとを具備する樹脂封止型半導体装置において、該4つの側面のそれぞれは該パッケージの周縁を切断しないような長さで該パッケージの周縁からわずかに突出し且つ前記突出する部分の間がレジンで埋まっている該複数のリードを有し、該第1の面の周縁で該リードの外端部分が該第1の面で露出し、かつ、該タブ吊りリードの一部分が該第1の面で露出するように構成されてなる樹脂封止型半導体装置。
【請求項2】該リードの外端部分が該パッケージの該側面から露出していることを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項3】上記タブ吊りリードが支持するタブが樹脂封止されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項4】上記タブ吊りリードが支持するタブが樹脂封止され、上記第1の面で露出する上記各タブ吊りリードは上記4つの側面において相互に隣り合う側面によって形成される上記パッケージの隅部に位置していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項5】タブ吊りリードで支持されたタブ上に固定された半導体チップと、該半導体チップの上面の電極とリ一ドの内端部とを電気的に接続した導電性ワイヤと、該タブと、該リードの内端部とを封止したパッケージ並びに外部端子を具備する樹脂封止型半導体装置であって、該パッケージの周縁を切断しないような長さで該パッケージの周縁からわずかに突出し且つ前記突出する部分の間がレジンで埋まっている該外部端子は該パッケージの側面及び下面周縁に露出し、該タブ吊りリードの一部は該パッケージの下面で露出することを特徴とする樹脂封止型半導体装置。
【請求項6】タブ吊りリードで支持されたタブ上に固定された半導体チップと、前記半導体チップの上面の電極とリ-ドの内端部とを電気的に接続した導電性ワイヤと、前記導電性ワイヤ及び前記半導体チップを封止した封止樹脂と、該封止樹脂の周縁を切断しないような長さで該封止樹脂の周縁からわずかに突出し且つ前記突出する部分の間が樹脂で埋まっており前記封止樹脂の側面及び下面周縁に露出した外部端子とを具備する樹脂封止型半導体装置であって、前記タブを含む前記タブ吊りリードの先端側は屈曲によって一段高く形成され、前記タブ吊りリードの先端側が高くなった前記タブの下方の部分も前記封止樹脂が形成され、前記タブ吊りリードの一部は前記パッケージの下面で露出することを特徴とする樹脂封止型半導体装置。
【請求項7】タブ吊りリードで支持されたタブ上に固定された半導体チップと、前記半導体チップの上面の電極とリ-ドの内端部とを電気的に接続した導電性ワイヤと、前記導電性ワイヤ及び前記半導体チップを封止した封止樹脂と、該封止樹脂の周縁を切断しないような長さで該封止樹脂の周縁からわずかに突出し且つ前記突出する部分の間が樹脂で埋まっており前記封止樹脂の側面及び下面周縁に露出した外部端子とを具備する樹脂封止型半導体装置であって、前記タブを含む前記タブ吊りリードの先端側は屈曲によって一段高く形成され、前記タブ寄りのタブ吊りリードの下方には封止樹脂が設けられ、前記タブから遠くなる前記タブ吊りリードの外端部分の上方には封止樹脂が設けられていることを特徴とする樹脂封止型半導体装置。
【請求項8】第1の面、該第1の面より面積が小さい第2の面及び4つの側面を有するパッケージ、複数のリード並びに4本のタブ吊りリードとを具備する樹脂封止型半導体装置において、該4つの側面のそれぞれは該パッケージの周縁を切断しないような長さで該パッケージの周縁からわずかに突出し且つ前記突出する部分の間がレジンて埋まっている該複数のリードを有し、該第1の面の間縁で該リードの外端部分が該第1の面で露出し、かつ、該タブ吊りリードの一部分が該第1の面で露出するように構成されてなる樹脂封止型半導体装置。
【請求項9】第1の面、該第1の面より面積が小さい第2の面及び4つの側面を有するパッケージ、複数のリード、複数のタブ吊りリード並びに前記タブ吊りリードによって4箇所を支持されるタブとを具備する樹脂封止型半導体装置において、該4つの側面のそれぞれは該パッケージの周縁を切断しないような長さで該パッケージの周縁からわずかに突出し且つ前記突出する部分の間がレジンで埋まっている該複数のリードを有し、該第1の面の周縁で該リードの外端部分が該第1の面で露出し、かつ、該タブ吊りリードの一部分が該第1の面で露出するように構成されていることを特徴とする樹脂封止型半導体装置。
【請求項10】第1の面、該第1の面より面積が小さい第2の面及び4つの側面を有するパッケージ、複数のリード並びに複数のタブ吊りリードとを具備する樹脂封止型半導体装置において、該4つの側面のそれぞれは該パッケージの周縁を切断しないような長さで該パッケージの周縁からわずかに突出し且つ前記突出する部分の間がレジンで埋まっている該複数のリードを有し、該第1の面の周縁で該リードの外端部分が該第1の面で露出し、かつ、該タブ吊りリードの一部分が該第一の面の4箇所で露出するように構成されていることを特徴とする樹脂封止型半導体装置。
【請求項11】第1の面、該第1の面より面積が小さい第2の面及び4つの側面を有するパッケージ、該パッケージの周縁を切断しないような長さで該パッケージの周緑からわずかに突出し且つ前記突出する部分の間がレジンで埋まっており該第1の面の第1の辺に沿って外端部分が該第1の面で露出する第1のリード線群、該パッケージの周縁を切断しないような長さて該パッケージの周縁からわずかに突出し且つ前記突出する部分の間がレジンで埋まっており該第1の面の該第1の辺とは異なる第2の辺に沿って外端部分が該第1の面で露出する第2のリード線群、並びにタブ吊りリードとを具備し、該タブ吊りリードの一部分が該第1のリード線群の最外のリードと、該第2のリード線群の最外のリードとの間て該第1の面において露出することを特徴とする樹脂封止型半導体装置。
【請求項12】第1の面、該第1の面より面積が小さい第2の面及び4つの側面を有するパッケージ、複数のリード並びに複数のタブ吊りリートとを具備する樹脂封止型半導体装置において、該4つの側面のそれぞれは該パッケージの周縁を切断しないような長さて該パッケージの周縁からわずかに突出し且つ前記突出する部分の間がレジンで埋まっている該複数のリートを有し、該第1の面の周縁で該リードの外端部分が該第1の面で露出すること、並びに、該タブ吊りリードの一部分が該第1の面に埋め込むように張り付き、かつ該第1の面で露出することを特徴とする樹脂封止型半導体装置。
【請求項13】該リードの外端部分が該パッケージの該側面から露出していることを特徴とする請求項5乃至請求項12のいずれか1項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項14】上記タブ吊りリードが支持するタブが樹脂封止されていることを特徴とする請求項5乃至請求項13のいずれか1項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項15】上記タブ吊りリードは4本であることを特徴とする請求項5乃至請求項7、請求項9乃至請求項12のいずれか1項に記載の樹脂封止型半導体装置。」

[3]異議申立ての理由の概要
(1)異議申立人安田 篤は、証拠として、

甲第1号証:特開昭62-298146号公報
甲第2号証:特開昭63-15453号公報
甲第3号証:特開平5-190733号公報

を提出して、本件特許の訂正前の請求項1〜3、5〜7、12〜14に係る発明は甲第1号証に記載された発明であり、同請求項6に係る発明は甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものであり、同請求項4、8〜11、15に係る発明は甲第1、3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同請求項1〜15に係る発明を取消すべき旨主張している。

(2)異議申立人間脇八蔵は、証拠として、

甲第1号証:特開昭62-298146号公報
甲第2号証:特開昭58-162号公報
甲第2号証の1:特開昭62-105455号公報
甲第3号証:特開昭63-15453号公報
甲第4号証:特開平1-255259号公報

を提出して、本件特許の訂正前の請求項1〜15に係る発明は甲第1、3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項に規定に違反してされたものであり、同請求項1〜15に係る発明は甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、さらに同請求項1〜15に係る発明は同法第36条第5項の規定に違反してされたものであり、同請求項1〜15に係る発明を取消すべき旨主張している。

[4]取消理由の概要
平成14年10月31日付取消理由通知の概要は、訂正後の請求項1〜15に係る発明は、下記の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、というものである。

刊行物1:特開昭63-15453号公報(異議申立人安田 篤の提出した甲第2号証、異議申立人間脇八蔵の提出した甲第3号証)
刊行物2:特開昭58-162号公報(異議申立人間脇八蔵の提出した甲第2号証)

[5]証拠の記載事項
(1)異議申立人安田 篤(以下、「申立人1」という。)の提出した甲第1〜3号証
(1-1)甲第1号証
第1号証の特開昭62-298146号公報には、半導体装置(以下、「PPPIC」という。)の表面実装技術に関する発明が第1〜6図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
発明の概要について、「四方に配設されているリードをパッケージの下面における外周縁部に配するとともに、その下面がパッケージ下面と平坦面をなすように露出させたものである。」(2頁左上欄7〜10行)
PPPICのリードフレームについて(第4、5図参照)、「リードフレーム2は略正方形枠形状に形成された外枠3を備えており、外枠3には略長方形形状のタブ4が略中央部に配されて、タブ吊りリード5を介して外枠3よりも所定高さだけ差し上げられて吊持されている。タブ4の四方には複数本のリード6が略十字形状にそれぞれ配されて外枠3に連結されており、各リード5と外枠3との連結部には断面略V字形状の切断線7が・・・形成されている。リード6は外枠3から所定距離内側に隔たった部位において垂直上方向に屈曲されているとともに、さらにその上端部において水平方向に屈曲されており、その内側水平上面にはボンディングパッド7が形成されている。タブ4上には集積回路を作り込まれたペレット8が適当な手段によりボンディングされており、ペレット8の外周辺部には複数個の電極パッド9が環状に配されて形成されている。これら電極パッド9とリード6上のボンディングパッド7にはワイヤ10の両端がそれぞれボンディングされており、これにより、ペレット8の集積回路は電極パッド9,ワイヤ10及びボンディングパッド7を介してリード6に電気的に導出されるようになっている。」(2頁右上欄10行〜左下欄14行)
PPPICのパッケージの成形について(第6図参照)、「成形材料としての樹脂がゲート17を通じてキャビティ16内に圧送されることにより、パッケージ11が成形される。このとき、リード6の外周縁部下面が下型14上に当接されているため、リード6の当該箇所は樹脂により被覆されずに露出されることになる。」(2頁右下欄15〜末行)
PPPICの使用方法、作用効果について(第7図参照)、「このPPPIC1のリード6はパッケージ11の外周縁部下面において露出されているため、これをプリント配線基板等に実装する場合、リード6が配線基板20の表面に平面的に形成されている配線21に直接接触するように、PPPICを基板20上に載置するとともに、リード6と配線21とをはんだ付け等のような適当な手段により機械的かつ電気的に接続すればよい。」(3頁左上欄9〜17行)
効果について、「リードをパッケージの側方に突出させないことにより、不測の外力の不正によるリードの変形不良を回避することができる。」(3頁右上欄17〜19行)
さらに、第4図の記載からみて、リード6の他端部側における切断線7が外枠3の内側まで入り込んだ状態で記載されている。

(1-2)甲第2号証
甲第2号証の特開昭63-15453号公報には、表面実装型半導体装置に関する発明が第1〜5図、第8、9、13図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
第1〜5図について、「第1図乃至第5図は夫々本発明の一実施例である表面実装型半導体装置10を示す。各図中、11は半導体チップであり、ステージ12上に搭載固着してある。13は複数のリードである。半導体チップ11と各リード13の一端側13aとがワイヤ14により接続してある。15は樹脂パッケージであり、半導体チップ11、ステージ12、複数のリード13、ワイヤ14及びステージ12を支持するサポートバー16がこの内部に封止されている」(2頁左下欄10〜19行)
第2、5図について、「延出部13b-2は、実装の際には治具により押圧される部分として、実装後は応力吸収部として機能するが、必ずしも不可欠の部分ではなく、場合によっては省略してもよい」(3頁左上欄10〜13行)
第8図(A)及び第9図(A)〜(C)について、「金型より取り出されたリードフレーム20と樹脂パッケージ15とが一体化されたものに、第9図(A),(B)、(C)に示すようにリード13の他端側13bに半田揚げ(フェースボンド)してこの下面に半田を盛る。最後に、第8図(A)及び第9図(A),(B)、(C)に示すように、切断線42〜45に沿ってリード13及びサポートバー16を切断する。リード13については、タイバー33、34の内側の箇所で切断され」(4頁左下欄19行〜右上欄8行)、「リードのうち端子となる部分が樹脂パッケージの底面に露出した構成」(2頁左下欄2〜3行)、「リードの樹脂パッケージより側方への張り出しを極く短くし得、更にはこの張り出しを無くすることも出来」(4頁左下欄4〜6行)
従来技術について、第12図には2つの側面にリードを有する半導体装置1が記載され、第13図には4つの側面にリードを有する半導体装置4が記載され、さらに、第13図の説明として、「第13図に示す表面実装型半導体装置4に比べると、少ない加工工数で、しかも複雑なプレス金型を使用することなく安価に製造される」(3頁左上欄7〜9行)

(1-3)甲第3号証
甲第3号証の特開平5-190733号公報には、樹脂封止型半導体装置に関する発明が図8とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
図8について、「図8は、本発明の第6の実施例に用いるリードフレームの平面図である。リード4は4方向に配置されており、タブ吊りリード3は対角線上に配置されタブ2がその中心にある。この場合、リード数が多いために突起物8を設けることが出来ないので、その代わりとしてゲート位置12付近のタブ吊りリード3とリード4にテープ13を設置している。」(4頁右欄7〜13行)

(2)異議申立人間脇八蔵(以下、「申立人2」という。)の提出した甲第1〜3号証
(2-1)甲第1号証
甲第1号証の特開昭62-298146号公報は、申立人1の提出した上記甲第1号証と同一であるので、その記載事項は省略する。

(2-2)甲第2号証
甲第2号証の特開昭58-162号公報には、IC用リードフレームに関する発明であって、チップを固定するタブの各角部に接続してタブを支持する4本のタブ吊りリードが第1、2図とともに開示されている。

(2-3)甲第2号証の1
甲第2号証の1の特開昭62-105455号公報には、半導体装置用リードフレームに関する発明であって、4本以上のタブ吊りリードを有し、素子搭載部(タブ)の四隅を支持し、タブの辺の中央部で支持するタブが第1、2図とともに開示されている。

(2-4)甲第3号証
甲第3号証の特開昭63-15453号公報は、申立人1の提出した上記甲第2号証と同一であるので、その記載事項は省略する。

(2-5)甲第4号証
甲第4号証の特開平1-255259号公報には、表面実装型樹脂封止型半導体装置に関する発明が第1、2図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
「外部導出リードの最低部がパッケージの底面とほぼ同じ高さに形成されている表面実装型半導体装置・・・において、外部導出リードの先端部の平坦部分の下面のみがパッケージ基体底面にて露出している」(特許請求の範囲)

[6]対比・判断
<申立人1の主張に対して>
(1)本件発明1〜3と甲第1号証に記載の発明との対比
本件発明1と甲第1号証の特開昭62-298146号公報に記載の発明とを対比すると、甲第1号証には、リードフレームの外枠が上下型の合わせ面に挟み込まれた状態でパッケージが成形され、その後リードフレームの外枠が切断線に沿って剪断される旨が記載され、また、甲第1号証の第4図に記載された「切断線7」の状態からみて、パッケージが上下型から離形された状態では、リードの他端側の部分は外枠の内側の周縁まで樹脂で埋まっていることは明らかであるから、4つの側面の複数のリードのそれぞれはパッケージの周縁からわずかに突出しているものと認められる。
してみると、両者は、本件特許の訂正後の請求項1の構成に沿って記載すると、「第1の面、該第1の面より面積が小さい第2の面及び4つの側面を有するパッケージ、複数のリード並びに複数のタブ吊りリードとを具備する樹脂封止型半導体装置において、該第1の面の周縁で該リードの外端部分が該第1の面で露出し、かつ、該タブ吊りリードの一部分が該第1の面で露出するように構成されてなる樹脂封止型半導体装置」の点で一致するものの、本件発明1が「4つの側面のそれぞれは突出する部分の間がレジンで埋まっている複数のリードを有し」ているのに対し、甲第1号証に記載の発明はそのようなリードを有してはいない点で相違するから、本件発明1は甲第1号証に記載の発明であるとすることはできない。
また、本件発明2は本件発明1を引用する発明であり、本件発明3は本件発明1、2のいずれかを引用する発明であって、いずれも少なくとも本件発明1の構成要件を全て含むものであるから、本件発明1が甲第1号証に記載の発明であるとすることができない以上、本件発明2、3についても甲第1号証に記載の発明であるとすることはできない。

(2)本件発明5〜7と甲第1号証に記載の発明との対比
本件発明5〜7は、いずれも「突出する部分の間がレジンで埋まって」いる点を構成要件の一部としており、この点は本件発明1と甲第1号証に記載の発明との相違点の一部に相当するから、本件発明1が甲第1号証に記載の発明であるとすることができない以上、本件発明5〜7についても甲第1号証に記載の発明であるとすることはできない。

(3)本件発明12〜14と甲第1号証に記載の発明との対比
本件発明12は「突出する部分の間がレジンで埋まっている」点を構成要件の一部としており、この点は本件発明1と甲第1号証に記載の発明との相違点の一部に相当するから、本件発明1が甲第1号証に記載の発明であるとすることができない以上、本件発明12についても甲第1号証に記載の発明であるとすることはできない。
また、本件発明13は本件発明5〜12のいずれかを引用する発明であり、本件発明14は本件発明5〜13のいずれかを引用する発明であって、いずれも「突出する部分の間がレジンで埋まって」いる点を構成要件の一部としており、この点は本件発明1と甲第1号証に記載の発明との相違点の一部に相当するから、本件発明1が甲第1号証に記載の発明であるとすることができない以上、本件発明13、14についても甲第1号証に記載の発明であるとすることはできない。

(4)本件発明6と甲第2号証に記載の発明との対比
本件発明6と甲第2号証の特開昭63-15453号公報に記載に発明とを対比すると、両者は、本件特許の訂正後の請求項6の構成に沿って記載すると、「タブ吊りリードで支持されたタブ上に固定された半導体チップと、前記半導体チップの上面の電極とリ-ドの内端部とを電気的に接続した導電性ワイヤと、前記導電性ワイヤ及び前記半導体チップを封止した封止樹脂と、該封止樹脂の周縁を切断しないような長さで該封止樹脂の周縁からわずかに突出し前記封止樹脂の側面及び下面周縁に露出した外部端子とを具備する樹脂封止型半導体装置であって、前記タブを含む前記タブ吊りリードの先端側は屈曲によって一段高く形成され、前記タブ吊りリードの先端側が高くなった前記タブの下方の部分も前記封止樹脂が形成された樹脂封止型半導体装置」の点で一致するものの、本件発明6の外部端子の突出する部分の間が樹脂で埋まっているのに対し、甲第2号証に記載の発明はそのようなものではない点、本件発明6のタブ吊りリードの一部はパッケージの下面で露出しているのに対し、甲第2号証に記載の発明のサポートバーは樹脂パッケージの下面に露出していない点、でそれぞれ相違するから、本件発明6は第2号証に記載の発明であるとすることはできない。

(5)本件発明4、8〜11、15と甲第1、3号証に記載の発明との対比
(5-1)本件発明4について
本件発明4は本件発明1〜3のいずれかを引用する発明であって、少なくとも本件発明1の構成要件を全て含むものであるから、本件発明4は、本件発明1の複数のリードが「突出する部分の間がレジンで埋まっている」点を構成要件の一部としており、この点は本件発明1と甲第1号証に記載の発明との相違点の一部に対応するものであって、これは上記<申立人1の主張に対して>(1)においてすでに示したとおりである。
そして、甲第1号証に記載の発明において、突出する部分についての発明の課題は何もないから、本件発明1のようにリードの他端の突出する部分の間をレジンで埋まっている状態にすることは容易に想到することができるものではないし、また甲第3号証にも、上記の「突出する部分の間がレジンで埋まっている」点については何らの記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、リードが突出する部分の間がレジンで埋まっていることにより、リードが他のものに引っ掛かるおそれがなくリード曲がりが防止でき、また半田ブリッジ現象の発生も防止できるとの作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明1が甲第1、3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1〜3のいずれかを引用する発明であって、少なくとも本件発明1の構成要件を全て含む本件発明4についても、甲第1、3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5-2)本件発明8〜11について
本件発明8は、本件発明1の複数のタブ吊りリードとして4本のタブ吊りリードに限定したものであるが、本件発明1〜3のいずれかを引用する発明であって、少なくとも本件発明1の構成要件を全て含む本件発明4が、甲第1、3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができない以上、本件発明8についても甲第1、3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることはできない。
また、本件発明9は、本件発明1のタブ吊りリードによってタブの4箇所を支持される点を限定したものであるが、同様に本件発明4が甲第1、3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができない以上、本件発明9についても甲第1、3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることはできない。
また、本件発明10については、本件発明9のタブ吊りリードとして、複数のタブ吊りリードの一部分が第1の面の4箇所で露出するように限定したものであるが、本件発明9が甲第1、3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができない以上、本件発明10についても甲第1、3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることはできない。
さらに、本件発明11については、本件発明1に、第1の面の第1の辺に沿って外端部分が該第1の面で露出する第1のリード線群、該第1の面の該第1の辺とは異なる第2の辺に沿って外端部分が該第1の面で露出する第2のリード線群を有し、タブ吊りリードの1部分が第1のリード線群の最外のリードと、該第2のリード線群の最外のリードとの間で該第1の面において露出する点を附加して限定したものであるが、本件発明1が甲第1、3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができない以上、本件発明8についても甲第1、3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることはできない。

(5-3)本件発明15について
本件発明15については、本件発明5〜7、及び本件発明9〜12を引用して、複数のタブ吊りリードを4本に限定したものであるが、本件発明5〜7、及び本件発明9〜12のいずれも甲第1、3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができない以上、本件発明15についても甲第1、3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることはできない。

よって、申立人1の主張は採用することができない。

<申立人2の主張に対して>
(1)本件発明1〜15と甲第1号証に記載の発明との対比
甲第1号証は申立人1の提出した甲第1号証の特開昭62-298146号公報であって、甲第1号証には、上記<申立人1の主張に対して>において説示したとおり、リードが「突出する部分の間がレジンで埋まっている」点については何らの記載も示唆もされていないから、本件発明1〜15は甲第1号証に記載の発明であるとすることはできない。

(2)本件発明1〜15と甲第3号証に記載の発明との対比
甲第3号証は申立人1の提出した甲第2号証の特開昭63-15453号公報であって、甲第3号証には、上記<申立人1の主張に対して>において説示したとおり、リードが「突出する部分の間がレジンで埋まっている」点については何らの記載も示唆もされていないから、本件発明1〜15は甲第3号証に記載の発明であるとすることはできない。

(3)本件発明1〜15と甲第1〜4号証に記載の発明との対比
本件発明1と甲第1号証に記載の発明とを対比すると、上記<申立人1の主張に対して>において説示したとおり、両者は、「第1の面、該第1の面より面積が小さい第2の面及び4つの側面を有するパッケージ、複数のリード並びに複数のタブ吊りリードとを具備する樹脂封止型半導体装置において、該第1の面の周縁で該リードの外端部分が該第1の面で露出し、かつ、該タブ吊りリードの一部分が該第1の面で露出するように構成されてなる樹脂封止型半導体装置」の点で一致するものの、本件発明1が「4つの側面のそれぞれは突出する部分の間がレジンで埋まっている複数のリードを有し」ているのに対し、甲第1号証に記載の発明はそのようなリードを有していない点で相違する。
そこで、上記相違点について検討すると、甲第2、2の1、3号証にはタブ吊りリードが記載されているものの、複数のリードの突出する部分の間がレジンで埋まっている構造については何も記載されていないし示唆もされていない。また甲第4号証には、表面実装型半導体装置において外部導出リードが先端部まで樹脂封止され、かつ外部導出リードの先端部の平坦部分の下面のみがパッケージ基体底面に露出している構造が示されているものの、本件発明1のように複数のリードの「突出する部分の間がレジンで埋まっている」構造ではないし、このような構造は適宜にできる設計的事項であるとすることもできない。
してみると、本件発明1は甲第1〜4号証に記載のものから容易に想到することはできない。
また、本件発明2〜15についても、上記の<申立人1の主張に対して>において説示したとおり、リードが「突出する部分の間がレジンで埋まっている」点を有しているから、本件発明2〜15は甲第1〜4号証に記載のもから容易に想到することはできない。
そして、本件発明1〜15は、複数のリードが突出する部分の間がレジンで埋まっていることにより、リードが他のものに引っ掛かるおそれがなくリード曲がりが防止でき、また半田ブリッジ現象の発生も防止できるとの作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明1〜15は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることはできない。

(4)特許法第36条違反について
申立人2は、本件特許の請求項1、5〜12に記載の、タブ吊りリードの一部分が第1の面から露出する構成は、特許明細書の発明の詳細な説明の欄に何らの記載も示唆もないから、本件特許に係る出願は特許法第36条第5項第1号の規定に違反している旨主張し、その根拠として、特許明細書に添付された図面の図2に記載されたタブ吊りリードは、平成12年3月3日付手続補正書により追加されたものであり、本件特許の出願に係る願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)には記載されていなかったものであるから、当該補正は要旨を変更するものである旨主張している。
そこで検討すると、当初明細書の段落【0013】の「前記枠19の四隅からは細いタブ吊りリード20が延在し、その先端で前記タブ6の四隅をそれぞれ支持している。」の記載、段落【0014】の「前記リード2の先端部およびタブ6を含むタブ吊りリード20の先端側は、図4に示すように、屈曲して一段高くなっている。これは、最終的にはリード2の外端部が、パッケージ1の下面5の周縁に張り付いた構造とするためである。」の記載、段落【0017】の「図8に示すように、ダイ35およびポンチ36によってリード2やタブ吊りリード20が切断されるが、この切断においてリード2やタブ吊りリード20はパッケージ1の付け根部分で切断し、パッケージ1の周縁からリード2やタブ吊りリード20が突出しないようにする。」の記載、及び図1〜8の記載からみて、タブ吊りリードについてもリードと同様の取り扱いとなっている以上、タブ吊りリードはパッケージの底面から露出していると解するのが自然であって、タブ吊りリードはパッケージの底面ではなく側面から露出していると解することはできない。
したがって、本件特許の請求項1、5〜12に記載の、タブ吊りリードの一部分が第1の面から露出する構成は、当初明細書の発明の詳細な説明の欄に直接記載されていないものの記載された事項の範囲内のものであって、本件特許の請求項1、5〜12に係る発明の特許は、特許法第36条第5項第1号の規定に違反してされたものではない。
また、上記のとおり、平成12年3月3日付手続補正書による補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであって、明細書の要旨を変更するものではない。

よって、申立人2の主張は採用することができない。

<取消理由に対して>
刊行物1の特開昭63-15453号公報は申立人1の甲第2号証、申立人2の甲第3号証であって、その記載事項は上記[5](1-2)に記載したとおりである。
刊行物2の特開昭58-162号公報は申立人2の甲第2号証であって、その記載事項は上記[5](2-2)に記載したとおりである。

(1)本件発明1〜15と刊行物1、2に記載の発明との対比
本件発明1〜15は、いずれも「突出する部分の間がレジンで埋まって」いる点を構成要件の一部としているのに対し、刊行物1には、リードのうち端子となる部分が樹脂パッケージの底面に露出するとともに、樹脂パッケージより側方への張り出しを極く短くすることが記載されているものの、樹脂パッケージが上下型より離型した状態では、端子となる部分は外枠の近傍まで樹脂で埋まっていることは明らかである(第8図参照)が、通常この埋まっている樹脂(以下、「バリ」という。)はリードの切断前に除去される(必要ならば、「実践講座 VLSIパッケージング技術(下)」41頁 日経BP社 1993年5月31日1版1刷、月刊Semiconductor World 増刊号 「’90 サーフェイス マウント テクノロジー 技術編」106頁 (株)プレスジャーナル 平成元年8月25日発行参照)から、リードの切断時にはこのバリは除去されているものと認められる。
一方、本件発明1〜15は、リードが樹脂パッケージの周縁から「突出する部分の間がレジンで埋まって」いる点を有しており、この突出する部分の間を埋めているレジンが上記バリに相当するものである。しかも、このバリに相当するレジンはリードの切断後においても除去されないで残存しており、刊行物1に記載のようにバリを除去するものに替えて除去しないで残存させることは容易に想到することができるものではない。
また、刊行物2にも上記の「突出する部分の間がレジンで埋まって」いる点については何らの記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1〜15は、リードの突出する部分の間がレジンで埋まっていることにより、リードが他のものに引っ掛かるおそれがなくリード曲がりが防止でき、また半田ブリッジ現象の発生も防止できるとの作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明1〜15は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[7]むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由および証拠によっては、本件発明1〜15の特許について拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとすることはできない。
また、他に本件発明1〜15の特許について拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとする理由を発見しない。
よって、平成6年法律第116号附則第14条の規定に基づく、平成7年政令第205号第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-03-07 
出願番号 特願平5-196626
審決分類 P 1 651・ 534- Y (H01L)
P 1 651・ 121- Y (H01L)
P 1 651・ 113- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 坂本 薫昭  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 市川裕司
伊藤 明
登録日 2000-12-01 
登録番号 特許第3136029号(P3136029)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 半導体装置  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ