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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G03G
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  G03G
管理番号 1074986
異議申立番号 異議2002-70300  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-09-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-02-06 
確定日 2003-04-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第3196754号「静電荷像現像用トナー及びその製造方法、静電荷像現像剤並びに画像形成方法」の請求項1、3、4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3196754号の請求項1、3、4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯・本件発明
特許第3196754号の請求項1ないし4に係る発明についての出願は、平成11年2月17日に出願され、平成13年6月8日にその特許の設定の登録がなされ、その後、コニカ株式会社及び斎籐秀和より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ平成14年7月23日付けで意見書が提出され、次いで、特許権者及び特許異議申立人に審尋がなされ、特許権者及び特許異議申立人より回答書が提出されたものであり、その請求項1、3、4に係る発明は、特許明細書の記載からみて次のとおりのものである。
「 【請求項1】 トナーの動的粘弾性における温度分散測定で周波数6.28rad/secの下で得られるトナーの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)の値が0℃以上の温度で一致する最も低い温度が60〜75℃の範囲にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られるトナーの重量平均分子量が20,000〜65,000の範囲にあり、かつGPC測定で得られるトナーの分子量が1,000以下のピーク面積が全体の3.0%以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項3】 キャリアとトナーとを含有する静電荷像現像剤において、前記トナーが請求項1記載の静電荷像現像用トナーであることを特徴とする静電荷像現像剤。
【請求項4】 静電荷像担持体上に静電潜像を形成する工程、現像剤担持体上の現像剤で前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する工程、及び前記トナー画像を転写体上に転写する工程、転写体上のトナー画像を被定着シート上に転写する工程、及びこれを熱定着する工程を有する画像形成方法において、前記現像剤として、請求項3記載の静電荷像現像剤を用いることを特徴とする画像形成方法。」

2. 特許異議申立の概要
2.1 特許異議申立人 コニカ株式会社は、
本件請求項1、3、4係る発明は、
参考資料1の記載を参照すると、甲第1号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることはできない。
また、本件請求項3及び4に係る発明は甲第1ないし8号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない、と主張する。

甲第1号証(特開平9-120175号公報)
甲第2号証(特開平10-207116号公報)
甲第3号証(特開平10-301323号公報)
甲第4号証(特開平10-301333号公報)
甲第5号証(特開平10-133423号公報)
甲第6号証(特開平10-319624号公報)
甲第7号証(特開平10-26842号公報)
甲第8号証(特開平10-307418号公報)
参考資料1(コニカ株式会社 オフィスドキュメントカンパニー サプライ開発統括部 企画グループ 山田裕之の作成した2002年1月18日付けの「実験成績証明書」)(以下、「実験成績証明書」という。)

2.2 特許異議申立人斎籐秀和は、本件請求項1、3、及び4項に係る発明は、
甲第1号証(特開平10-171156号公報)
甲第2号証(特開平9-204068号公報)
に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと主張する。
3.当審の判断
3.1 コニカ株式会社の申立について
3.1.1 甲号各証の記載
甲第1号証には、静電荷像現像用トナー、その製造方法、現像剤及び熱定着方法に関し次の記載がなされている。
(1a)「【請求項1】 分子量300〜600のオリゴマー成分を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のピーク面積比で1〜5%含む樹脂を含有し且つBET値比表面積が5〜100m2/gであることを特徴とする静電荷像現像用トナー。」
(1b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低温での定着性能に優れるとともに、生産性に優れた静電荷像現像用トナー、その製造方法、現像剤及び熱定着方法を提供する事にある。」
(1c)「【0102】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0103】
着色粒子製造例1
アルミニウムカップリング剤(プレンアクトAl-M:味の素社製)で表面処理したカーボンブラック(リーガル330R:キャボット社製)10.67gをドデシル硫酸ナトリウム4.92gを120mlの純水に溶解した溶液に添加し、撹拌しつつ超音波を付与することによりカーボンブラックの水分散液を調製した。また、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=3200)を熱を加えながら水中に界面活性剤により乳化させた固形分濃度=20重量%の乳化分散液を調製した。上記カーボンブラックの分散液に低分子量ポリプロピレン乳化分散液43gを混合し、さらに、スチレンモノマー98.1g、n-ブチルアクリレートモノマー18.4g、メタクリル酸モノマー6.1g、t-ドデシルメルカプタン3.3g、脱気済み純水850mlを添加した後に、窒素気流下撹拌を行いながら70℃まで昇温した。ついで、過硫酸カリウム4.1gを溶解した純水200mlを加え、撹拌下70℃にて6時間反応させた。得られたカーボンブラック含有着色微粒子分散液を「分散液1」とする。なお、このものの数平均一次粒子径(光散乱電気永動粒径測定装置 ELS-800:大塚電子工業社製による測定)及び分子量分布を下記に示す条件にて測定した。
【0104】
装置 :HLC-8020(東ソー社製)
カラム :GMHXLx2,G2000HXLx1
検出器 :RI
溶出液流速:1.0ミリリットル/分
試料濃度 :0.01g/20ミリリットル
試料量 :100マイクロリットル
検量線 :標準ポリスチレンにて作製
得られた着色微粒子の重量平均分子量(Mw)、オリゴマー量、数平均一次粒子径の結果を下記表1に示す。この「分散液1」600mlに対して2.7モル/lの塩化カリウム水溶液を160ml添加し、さらにイソプロピルアルコール94ml及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(エチレンオキサイド平均重合度は10である)5.4gを溶解した純水40mlを添加した。その後、撹拌下85℃まで昇温し、6時間反応させた。ついで反応終了後、反応液を濾過、水洗を行い、乾燥し本発明の着色粒子即ちトナーを得た。このものを「着色粒子1(トナー1)」とし、測定した体積平均粒径(島津製SALD-1100使用)、BET値比表面積を下記表2に示す。尚、BET値はフローソーブ2300(島津製作所製)を用い、1点法で測定した。」

(1d)「比較用着色粒子製造例2
着色粒子製造例1において、t-ドデシルメルカプタンを5.0gにした他は同様にして「比較用着色粒子2(比較用トナー2)を得た。」(【0108】)
(1e)【0116】表1


(1f)【0117】表2



甲第2ないし8号証には、静電荷像現像用トナーに関する技術事項が記載されているが、トナーの貯蔵弾性率、損失弾性率についての記載はなされていない。

3.1.2 対比判断
3.1.2.1 請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)について
甲第1号証に記載の発明は、「分子量300〜600のオリゴマー成分を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のピーク面積比で1〜5%含む樹脂を含有し且つBET値比表面積が5〜100m2/gである静電荷像現像用トナー」に関するものであり、「着色粒子製造例1」(1c)及び【表1】【表2】に記載された事項によると、
「カーボンブラック、低分子量ポリプロピレン、とスチレン、n-ブチルアクリレート、メタクリル酸からなるモノマーとの水系分散液を調製し攪拌下70℃にて6時間反応させてカーボンブラック含有着色微粒子分散液を得た。
得られた着色粒子は次の物性を有していた。
重量平均分子量(Mw) 20,700
オリゴマー300〜600(分子量) 1.5%
数平均一次粒子径 0.26μm

次いで、この分散液に塩化カリウム、ポリオキシエチレンノクチルフェニルエーテル等を添加した後、攪拌下85℃間で昇温し6時間反応させ「着色粒子1(トナー1)」を得た。
得られた「トナー1」の、体積平均粒径は5.24μm、BET値は47.1であった。」旨記載されている。
そこで、本件発明1と甲第1号証に記載の発明とを対比すると、両発明は、「静電荷像現像用トナー」で共通するものの、本件発明1の
(a)「トナーの動的粘弾性における温度分散測定で周波数6.28rad/secの下で得られるトナーの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)の値が0℃以上の温度で一致する最も低い温度が60〜75℃の範囲にある」こと
(b)「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られるトナーの重量平均分子量が20,000〜65,000の範囲にあり、かつGPC測定で得られるトナーの分子量が1,000以下のピーク面積が全体の3.0%以下である」こと
については甲第1号証には記載されていない点で両発明は相違する。
相違点について検討する。
「実験成績証明書」には、特開平9-120175号公報(甲第1号証)の実施例で開示されたトナー1及び比較用トナー2を忠実に追試して製造し、得られたトナーの「貯蔵弾性率と損失弾性率の一致する温度」及び「分子量が1,000以下のピーク面積の全体に対するパーセント」を含む物性を測定した結果として次の値が示されている。

「着色粒子1」、
重量平均分子量(Mw) 20,700
オリゴマー300〜600(分子量) 1.5%
数平均一次粒子径 0.26μm

「トナー1」
体積平均粒径 5.24μm
BET値 47.1
貯蔵弾性率と損失弾性率の値が℃以上で一致する最も低い温度
63℃
重量平均分子量 20,700
分子量1000以下のピーク面積の全面積に対する割合
1.5%
累積体積平均粒径D50 5.2μm

「実験成績証明書」によれば、
「着色粒子1」のオリゴマー300〜600(分子量)のピーク面積の全面積に対する割合は 1.5%であり、「トナー1」の分子量1000以下のピーク面積の全面積に対する割合は1.5%と同じ割合であることが示されている。
一方、一般的な化学合成した高分子化合物の分子量分布を想定すると、分子量1000以下のオリゴマー量には、分子量300〜600の範囲の外に、分子量600〜1000の範囲のものと、分子量300以下のものとを含むものであるから、分子量1000以下のピーク面積は分子量300〜600のピーク面積よりも大きくなるとするのが当業者の常識的な知識であるが、「実験成績証明書」での実験では、こうした当業者の常識とは相違する結果が得られている。
ところで、「着色粒子1」は、カーボンブラック、モノマー等を70℃で6時間反応させて得たものであり、「トナー1」はこの反応生成物を更に85℃6時間反応させたものであるから、両者の熱履歴は相違する。
しかしながら、前段の70℃6時間の反応はモノマーの重合反応により微細粒子を製造するものであり、後段の85℃6時間の反応は該微細粒子を凝集しトナーとして使用できる粒径とする反応であることは当業者が熟知するところであり、このことは、着色粒子1が0.26μm、トナー1が5.2μmの粒径を有することからも首肯できる。
したがって、後段の85℃6時間の反応は、粒度調整を目的とするものであるから、この反応によって、一旦重合した分子が更に重合したり解重合したりして分子量分布が大きく変化するとは考え難く、分子量1000以下のオリゴマーの割合と、分子量300〜600のオリゴマーの割合とが同一の値になる確率は極めて小さい。
そして、「実験成績証明書」においては、「着色粒子1」のオリゴマー300〜600(分子量)のピーク面積の全面積に対する割合、及び 分子量1000以下のピーク面積の全面積に対する割合については、測定値から計算等によって求めた確定値が単に挙げられているにすぎず、分子量分布等を示すなどして両者の値が同一であることが確かなことを示すものではないのであるから、「実験成績証明書」において追試した「トナー1」の物性値には疑問点があり、実験が甲第1号証の忠実な再現であるとすることはできない。
以上のとおりであるから、甲第1号証に上記相違点(a)及び(b)が記載されているとも示唆されているともいえない。
また、甲第2ないし8号証にも、上記相違点(a)が記載されているとも示唆されているともいえない。
そして、本件発明1は、「ドキュメントオフセット性、定着画像の折り曲げ耐性、被定着シートの剥離性、OHP透明性等の定着特性に優れ、かつ帯電均一性・安定性が高く、カブリ、飛散等がなく、優れた画質を形成できる静電荷像現像用トナー及びその製造方法、静電荷像現像用現像剤並びに画像形成方法を提供する」という優れた効果を奏するものである。(本件特許明細書段落【0019】、【表1】、【表2】、【表3】参照)
したがって、本件発明1が甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1ないし8号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともすることはできない。

3.1.2.2 請求項3及び4に係る発明について
請求項3及び4に係る発明は、請求項1に係る発明の構成要件をすべて引用するものであるから、請求項1に係る発明と同様の理由により甲第1ないし8号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3.2 異議申立人斎籐秀和の申立について
3.2.1 甲号各証の記載
甲第1号証には、
(1a)「 【請求項1】 結着樹脂、着色剤及びワックスを含有している静電荷像現像用トナーにおいて、
該トナーは、
(a)損失弾性率と貯蔵弾性率の比(G″/G′=tanδ)が1.0となる温度が55〜70℃の温度領域に存在し、かつ、そのときの弾性率が1.5×108Pa以下であり、
(b)温度40℃における貯蔵弾性率(G′40)と温度50℃における貯蔵弾性率(G′50)の比(G′40/G′50)が1.5〜5.0であり、
(c)貯蔵弾性率(G′50)と温度60℃における貯蔵弾性率(G′60)との比(G′50/G′60)が3〜20であり、
(d)温度70℃における貯蔵弾性率(G′70)と温度100℃における貯蔵弾性率(G′100 )の比(G′70/G′100 )が50〜250であり、
(e)温度110℃における貯蔵弾性率(G′110 )と温度140℃における貯蔵弾性率(G′140 )の比(G′110 /G′140 )が2〜20であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。」
(1b)「 【0322】
【発明の効果】
本発明の静電荷像現像用トナーは、転写紙の厚みが厚い紙であっても低温定着性,耐オフセット性,耐ブロッキング性及び多数枚耐久性等に優れているものである」と記載されている。

甲第2号証には、
(2a)「 【請求項1】 結着樹脂と着色剤を含有してなる電子写真用トナーであって、
該結着樹脂はビニル重合体を含有してなり、 該ビニル重合体は分子量7000以下の低分子量成分の含量がビニル重合体中の20重量%以下であり、重量平均分子量が20,000〜200,000の範囲にあり、かつスチレン単位を含まない重合体及びスチレン単位を60重量%以下含む重合体からなる群より選ばれる少なくとも1つの重合体であること、を特徴とする電子写真用トナー。」
(2b)「【0063】
【発明の効果】
スチレン単位含量を60重量%以下とし、低分子量成分の含量を20重量%以下とした重量平均分子量が200,000を越えない本発明のビニル重合体からなるトナーは定着器表面材料からの非接着性に優れ、離型剤塗布量が従来技術の1/10に低減したA4コピー1枚あたり0から5×10-3μl/cm2 であっても、定着器弾性体層厚さを2mmと従来より薄くしても、平滑な定着像を得ることができ、色鮮やかなカラー定着像を得ることができる。本発明により低コスト化、小型化、省電力化に適し、高画質が達成される。」
と記載されている。

3.2.2 対比判断
3.2.2.1 請求項1に係る発明について
甲第1号証には、「(a)損失弾性率と貯蔵弾性率の比(G″/G′=tanδ)が1.0となる温度が55〜70℃の温度領域に存在し、かつ、そのときの弾性率が1.5×108Pa以下」である静電荷荷像現像用トナーが記載されている。
しかしながら、甲第1号証に記載の発明は、(a)と同時に(b)ないし(e)の要件を同時に満足することによって、「転写紙の厚みが厚い紙であっても低温定着性,耐オフセット性,耐ブロッキング性及び多数枚耐久性等に優れている」という効果を奏するものである。
したがって、甲第1号証に記載の発明においては、「(a)」に係る要件を他の(b)ないし(e)とは切り離すことはできないものであるから、「(a)」に係る構成要件のみを他の発明を組み合わせる動機付けとなるものがないし、たとえ組み合わせたとしても如何なる効果が奏されるのかを予測することはできない。
また、甲第1号証には本件発明1の(b)「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られるトナーの重量平均分子量が20,000〜65,000の範囲にあり、かつGPC測定で得られるトナーの分子量が1,000以下のピーク面積が全体の3.0%以下であること」について記載又は示唆するものもない。
甲第2号証には、
(a)「トナーの動的粘弾性における温度分散測定で周波数6.28rad/secの下で得られるトナーの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)の値が0℃以上の温度で一致する最も低い温度が60〜75℃の範囲にあること」及び
(b)「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られるトナーの重量平均分子量が20,000〜65,000の範囲にあり、かつGPC測定で得られるトナーの分子量が1,000以下のピーク面積が全体の3.0%以下であること」について記載又は示唆するものはない。
したがって、甲第1及び2号証に記載の発明を組み合わせたとしても、本件発明1を構成することはできないので、本件発明1が、甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3.2.2.2 請求項3及び4について
請求項3及び4に係る発明は、請求項1に係る発明の構成要件をすべて引用するものであるから、請求項1に係る発明と同様の理由により甲第1ないし2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3.2.3 異議申立人コニカ株式会社及び斎籐秀和が提出した証拠の組み合わせについて
両異議申立人の提出した証拠に関しては、「3.2.1」及び「3.2.2」で検討したように、本件発明1の
(a)「トナーの動的粘弾性における温度分散測定で周波数6.28rad/secの下で得られるトナーの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)の値が0℃以上の温度で一致する最も低い温度が60〜75℃の範囲にあること」
(b)「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られるトナーの重量平均分子量が20,000〜65,000の範囲にあり、かつGPC測定で得られるトナーの分子量が1,000以下のピーク面積が全体の3.0%以下であること」
については記載されていないのであるから、それらの証拠を組み合わせても本件請求項1,3、4に係る発明を構成することはできない。

4. まとめ
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1、3,4に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、3、4発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1、3、4に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものとは認めない。
よって、結論の通り決定する。
 
異議決定日 2003-03-31 
出願番号 特願平11-38805
審決分類 P 1 652・ 113- Y (G03G)
P 1 652・ 121- Y (G03G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 菅野 芳男  
特許庁審判長 嶋矢 督
特許庁審判官 六車 江一
植野 浩志
登録日 2001-06-08 
登録番号 特許第3196754号(P3196754)
権利者 富士ゼロックス株式会社
発明の名称 静電荷像現像用トナー及びその製造方法、静電荷像現像剤並びに画像形成方法  
代理人 前川 純一  
代理人 佐藤 清孝  

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