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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効としない C12N
審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない C12N
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない C12N
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効としない C12N
管理番号 1075665
審判番号 無効2000-35702  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-12-26 
確定日 2002-04-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3110452号発明「エンドグルカナーゼ酵素を含んでなるセルラーゼ調製物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許3110452号に係る出願は、1991年5月8日(優先権主張1990年5月9日及び1991年4月22日、デンマーク国)を国際出願日として特許出願され、本件発明は平成12年9月14日に特許の設定登録がなされ、この特許に対して、明治製菓株式会社より平成12年12月26日に本件無効審判の請求がなされたところ、訂正請求(後日取下げ)がなされ、これに対して、無効理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年1月4日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の可否に対する判断
1.訂正の内容
(1)特許請求の範囲の請求項1に係る記載、
「次の性質:
(a)SDS-PAGEにより測定した見かけ分子量が約43kDである;
(b)pH6.0〜10.0の範囲で活性である;
(c)pH3〜9.5の範囲のpH値において安定である;
(d)非晶質セルロースを分解する;及び
(e)セロビオースβ-p-ニトロフェニルを実質的に分解しない;
を有するフミコーラ(Humicola)属微生物由来のエンドグルカナーゼ酵素。」を、
「次の性質:
(a)SDS-PAGEにより測定した見かけ分子量が約43kDである;
(b)pH6.0〜10.0の範囲で活性である、ここで酵素活性は、(イ)35g/LのCMCを含む基質溶液と測定されるべき酵素溶液とを、基質溶液10mlと酵素溶液0.5mlの体積比で混合し、(ロ)反応混合物を40℃に温度調節した粘度計に移し、(ハ)混合直後に反応混合物の粘度を測定し、(ニ)前記混合の30分後に反応混合物の粘度を測定し、そして(ホ)粘度を1/2に低下させる酵素活性を1酵素活性単位と定義することにより決定されるCMC-エンドアーゼ活性により決定される;
(c)pH3〜9.5の範囲のpH値において安定である、ここで酵素活性は、(イ)35g/LのCMCを含む基質溶液と測定されるべき酵素溶液とを、基質溶液10mlと酵素溶液0.5mlの体積比で混合し、(ロ)反応混合物を40℃に温度調節した粘度計に移し、(ハ)混合直後に反応混合物の粘度を測定し、(ニ)前記混合の30分後に反応混合物の粘度を測定し、そして(ホ)粘度を1/2に低下させる酵素活性を1酵素活性単位と定義することにより決定されるCMC-エンドアーゼ活性により決定される;
(d)非晶質セルロースを分解する;
(e)セロビオースβ-p-ニトロフェニルを実質的に分解しない;及び
(f)フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)DSM1800由来の、配列番号2に示す1位のアミノ酸から284位のアミノ酸までのアミノ酸配列を有し且つSDS-PAGEにより測定した約43kDの見かけ分子量を有するエンドグルカナーゼに対して産生されるポリクローナル抗体と免疫反応性である;
を有するフミコーラ(Humicola)属微生物由来のエンドグルカナーゼ酵素。」と訂正する。(2)明細書4頁10行の「国際公開第WO89/00069」を「国際出願PCT/DK89/00069(国際公開WO89/09259」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項(1)のうち、(b)及び(c)の「ここで酵素活性は、(イ)35g/LのCMCを含む基質溶液と測定されるべき酵素溶液とを、基質溶液10mlと酵素溶液0.5mlの体積比で混合し、(ロ)反応混合物を40℃に温度調節した粘度計に移し、(ハ)混合直後に反応混合物の粘度を測定し、(ニ)前記混合の30分後に反応混合物の粘度を測定し、そして(ホ)粘度を1/2に低下させる酵素活性を1酵素活性単位と定義することにより決定されるCMC-エンドアーゼ活性により決定される」という事項は、(b)及び(c)に記載の
pH値を測定する測定法を特定するものであり、また、(f)は、「フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)DSM1800由来の、配列番号2に示す1位のアミノ酸から284位のアミノ酸までのアミノ酸配列を有し且つSDS-PAGEにより測定した約43kDの見かけ分子量を有するエンドグルカナーゼに対して産生されるポリクローナル抗体と免疫反応性である」という事項を請求項に直列的に付加するものであるから、訂正事項(1)は、特許請求の範囲の減縮に該当する。
また、訂正事項(2)は、誤記の訂正に該当する。
そして、これらの訂正は新規事項に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法134条2項及び同条5項で準用する126条2項及び3項の規定に適合するので、請求のとおり当該訂正を認める。
III.当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、「特許第3110452号の請求項1ないし7に係る特許発明について、本件特許は無効とすべきものとする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」とし、証拠方法として下記の甲第1号証乃至甲第31号証を提出して、その理由を概要次のとおり主張している。
A.無効理由1
本件請求項1乃至7に係る発明の特許は、甲第1号証、甲第3号証,又は甲第4号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号の規定に該当するものである。
B.無効理由2
本件請求項1乃至7に係る発明の特許は、甲第1号証、甲第3号証又は/及び甲第4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定に違反してなされたものである。
C.無効理由3
本件明細書の記載は、特許法36条4項及び5項に記載の要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

甲第1号証:WO 89/09259
甲第2号証:特表平3-504080号公報(甲第1号証の翻訳文)
甲第3号証:S.Hayashida and H.Yoshioka,Agric.Biol.Chem.44,481-487,1980
甲第4号証:S.Hayashida and H.Yoshioka,Agric.Biol.Chem.44,1721-1728,1980
甲第5号証:実験報告書-1
甲第6号証:実験報告書-2
甲第7号証:実験報告書-3
甲第8号証:実験報告書-4
甲第9号証:実験報告書-5
甲第10号証:実験報告書-6
甲第11号証:本件特許の出願に対し本件無効審判請求人が平成12年1月13日に提出した刊行物等提出書
甲第12号証:Journal of Biotechnology 67,1999,85-97
甲第13号証:本件特許の特許権者が所有する特許第2728531号に対応する欧州特許第406 314号の異議決定に対する審判部への控訴(控訴ファイル番号T1113/96-334)の審理の過程で1997年2月10日に本件特許権者の代理人によって欧州特許庁に提出された書面
甲第14号証:中村隆雄著「酵素のはなし」(1986.01.25(初版)、1991.01.25(追補)、学会出版センター発行)110-118頁
甲第15号証:「生化学実験講座5 酵素研究法(上)」(1975.08.20(第1版第1刷)東京化学同人発行)14-16頁
甲第16号証:「緩衝液の選択と応用 水素イオン・金属イオン」(1981.01.20(第1刷発行)、2000.07.10(第12刷発行)、講談社サイエンティク発行)61-63頁
甲第17号証:本件特許に対応する欧州特許出願第91909971.3-2106(EP 531 372)の審判部への控訴において、1998年9月29日に本件特許権者の代理人によって欧州特許庁に提出された書状及びそれに添付された審判請求理由
甲第18号証:本件特許に対応する欧州特許出願第91909971.3-2106(EP 531 372)の審判部への控訴(控訴ファイル番号T0749/98-334)の審理の過程で2000年1月17日に本件特許権者の代理人によって欧州特許庁に提出された書面
甲第19号証:特公平3-57235号公報
甲第20号証:東京高裁 平成10年(行ケ)第164号審決取消請求事件判決
甲第21号証:平成13年9月14日付早石修博士の鑑定書
甲第22号証:東京工業大学名誉教授大島泰郎博士の鑑定書
甲第23号証:東京高裁 昭和56年(行ケ)第314号特許権行政訴訟事件判決
甲第24号証:「糖鎖工学」(1993.4.1産業調査会バイオテクノロジー情報センター発行)18-46頁
甲第25号証:PNAS Vol.98,No.12,6611-6616
甲第26号証:Biosci.Biotech.Biochem.,58(2),344-348,1994
甲第27号証:Methods in Enzymology Vol.160,Biomass Part A Cellulose and Hemicellulose,S.Hayashida,K.Ohta and K.Mo,Cellulases of Humicola insolens and Humicola grisea,323-332,1988,Academic Press
甲第28号証:Takashima et al.,Biosci.Biotech.Biochem.,60(1),77-82,1996
甲第29号証:Pure &Appl.Chem.,Vol.59,No.2,257-268,1987
甲第30号証:船津勝編「酵素」(1980.2.20講談社発行)66頁
甲第31号証:福井ら編「バイオテクノロジー事典」(1987.5.5シーエムシー発行)400頁
2.被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は理由が無いものとする、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、証拠方法として下記の乙第1号証乃至乙第29号証を提出している。

乙第1号証:国際公開WO89/00069パンフレット
乙第2号証:Timothy Chardの供述書
乙第3号証:Roittの供述書
乙第4号証:オークテルルロニー法の結果
乙第5号証:特許第2598718号公報
乙第6号証:特許第2838005号公報
乙第7号証:酵素濃度比較試験結果
乙第8号証:Biochimica et Biophysica Acta 1426(1999)227-237
乙第9号証:Biochimica et Biophysica Acta 1426(1999)297-307
乙第10号証:Biochem.Soc.Trans.23(1995)180-185
乙第11号証:「食品工学実験書(上巻)」(昭和52年1月10日養賢堂発行)647-650
乙第12号証:ノボザイム社作成の分析報告書「CMC-エンドアーゼpH3からpH11の範囲におけるカレザイムおよび明治セルラーゼの活性」
乙第13号証:New Comprehensive Biochemistry,Vol.8(Elsevir)(1984)436-439
乙第14号証:「Novo Enzymes Product Sheet“CelluzymeTM”」
乙第15号証:「IUPAC法に関する実験報告」
乙第16号証:「安定pH範囲に関する実験報告」
乙第17号証:東京高裁昭和51年(行ケ)111号事件判決
乙第18号証:Cellulose Chem.Technol.19(1985)341-355
乙第19号証:「レーニンジャー 生化学(上)第2版」(昭和57年11月25日共立出版発行)175-176頁
乙第20号証:船津編「酵素」(1980年2月20日講談社発行)14、53,54頁
乙第21号証:「特許・実用新案審査基準」(平成5年7月20日発行)
乙第22号証:Bioscience,Biotechnology,and Biochemistry,Vol.63(10)(1999)1714-1720
乙第23号証:Specialerapport(1992.11.)
乙第24号証:「EGL3と本件発明のエンドグルカナーゼとのアミノ酸配列のアラインメント」
乙第25号証:J.Biotechnol.50(1996)137-147
乙第26号証:Biosci.Biotech.Biochem.61(1997)245-250
乙第27号証:WO99/01544
乙第28号証:「EG1,EGL2,EGL3及びEGL4のアミノ酸配列のアラインメント」
乙第29号証:「Cel6Bと本件発明のエンドグルカナーゼとのアミノ酸配列のアラインメント」
IV.本件発明
訂正後の本件請求項1乃至請求項7に係る発明(以下、「本件発明1乃至7」という。)は、訂正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本件発明1及び4は次のとおりである。
「【請求項1】次の性質:
(a)SDS-PAGEにより測定した見かけ分子量が約43kDである;
(b)pH6.0〜10.0の範囲で活性である、ここで酵素活性は、(イ)35g/LのCMCを含む基質溶液と測定されるべき酵素溶液とを、基質溶液10mlと酵素溶液0.5mlの体積比で混合し、(ロ)反応混合物を40℃に温度調節した粘度計に移し、(ハ)混合直後に反応混合物の粘度を測定し、(ニ)前記混合の30分後に反応混合物の粘度を測定し、そして(ホ)粘度を1/2に低下させる酵素活性を1酵素活性単位と定義することにより決定されるCMC-エンドアーゼ活性により決定される;
(c)pH3〜9.5の範囲のpH値において安定である、ここで酵素活性は、(イ)35g/LのCMCを含む基質溶液と測定されるべき酵素溶液とを、基質溶液10mlと酵素溶液0.5mlの体積比で混合し、(ロ)反応混合物を40℃に温度調節した粘度計に移し、(ハ)混合直後に反応混合物の粘度を測定し、(ニ)前記混合の30分後に反応混合物の粘度を測定し、そして(ホ)粘度を1/2に低下させる酵素活性を1酵素活性単位と定義することにより決定されるCMC-エンドアーゼ活性により決定される;
(d)非晶質セルロースを分解する;
(e)セロビオースβ-p-ニトロフェニルを実質的に分解しない;及び
(f)フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)DSM1800由来の、配列番号2に示す1位のアミノ酸から284位のアミノ酸までのアミノ酸配列を有し且つSDS-PAGEにより測定した約43kDの見かけ分子量を有するエンドグルカナーゼに対して産生されるポリクローナル抗体と免疫反応性である;
を有するフミコーラ(Humicola)属微生物由来のエンドグルカナーゼ酵素。」
「【請求項4】配列番号:2に示す1位のアミノ酸から284位のアミノ酸までのアミノ酸配列を有するエンドグルカナーゼ酵素。」
V.当審の判断
A.無効理由1について
(1)甲第1号証について
甲第1号証には、(い)「本発明のセルラーゼ調製品中に存在するエンドグルカナーゼ成分は、アルカリ条件の下で活性(・・)なものである。更に詳しくは、エンドグルカナーゼ成分は、pH7.5〜10に至適pHを有する。・・・この特性により、本発明のセルラーゼ調製品は洗浄目的に対し特に有用なものとなり、特に洗剤組成物中の成分として有用なものとなる。」(甲第1号証の翻訳文である甲第2号証3頁左下欄4〜12行)、(ろ)「CMC-エンドアーゼ(エンドグルカナーゼ)活性は、以下の如くCMCの粘度の減少から測定できる:PH9.0のトリス緩衝液0.1M中に35g/1のCMC(・・)を含有せしめて基質溶液を調製する。分析すべき酵素試料を同じ緩衝液中に溶解する。10mlの基質溶液および0.5mlの酵素溶液を混合し、次いで40℃に設定した粘度計(・・)に移した。混合後直ちに次いで30分後に粘度計の読みとりを行う。これらの条件で粘度を1/2に減少する酵素の量を、CMC-エンドアーゼ活性の1単位と規定する。」(同3頁右下欄13〜23行)、(は)「エンドグルカナーゼ成分をコードするDNAフラグメントは、例えば、cDNA又はセルラーゼ産生微生物、例えば上記の生物の一種のゲノムライブラリーを確立し、次いで常法、例えばエンドグルカナーゼの完全もしくは部分アミノ酸配列を基礎にして合成されたオリゴヌクレオチドプローブに対しハイブリッド形成により、陽性クローンをスクリーニングするか、又は適当な酵素活性(・・・CMC‐エンドアーゼおよびCAVU活性)を発現するクローンの選択により、又は天然のセルラーゼ(エンドグルカナーゼ)成分に対しての抗体と反応性を有するタンパク質を生産するクローンを選択することによって単離することができる。」(同4頁右下欄末行〜5頁左上欄10行)、(に)「通常、本発明の洗剤組成物の溶液のpHは、7〜12であり、ある場合には7.0〜10.5である。他の洗剤用酵素、例えばプロテアーゼ、リパーゼ又はアミラーゼは単独で又は上記の添加物と組合わせて本発明の洗剤用組成物に含有され得る。本発明のセルラーゼ調製品によって得ることのできる柔軟化、よごれ除去および色彩、明澄化は、洗液中、1l当たり5〜200CMC-エンドアーゼ単位のエンドグルカナーゼ活性に対応するセルラーゼ調製品の濃度を一般的に必要とする。」(同5頁右下欄5〜13行)との記載があり、また、(ほ)「実施例」の「例1」には、「フミコラ インソレンス(Humicola insolens)由来のセルラーゼを用いる精製および洗浄実験 H.インソレンス(・・・)セルラーゼの分画」として、「米国特許4435307の例6に従い、フミコラ インソレンス(・・・)DSM1800を培養することによりセルラーゼを産生する。・・・粗製セルラーゼをDEAE-セファデックスで精製し、次いでpH10でDEAE-セファロースによるアニオン交換クロマトグラフィーにより分離する。非吸着分画(F1という)は、粗製セルラーゼ又はACxI(・・・)の柔軟作用の約2倍の柔軟作用(タンパク質1mg当り)を有する。濃縮後、F1を2工程(NH4)2SO4沈殿法により分画する:25%飽和での沈殿物を廃棄し、しかる後55%飽和での沈殿物を集め、これをF1P1と称す。これは粗製セルローズよりも約3倍の柔軟力を有している。次いでF1P1をサイズクロマトグラフィー(セファクリル)により分離する。蛋白質は3個の主ピークC1,C2,C3で溶出する。C1は、約80,000の見掛分子量で溶出し、C2は約65,000の分子量で、C3は約40,000の分子量で溶出する。C1の主活性はPNP-セロビオースに対する活性である。C2の主活性はエンドグルカナーゼ活性である。C3分画は主にエキソグルカナーゼ活性を有する。従って、三つの分画の内、F1P1C2のみが本発明の範囲内である。これは粗製セルラーゼの約5倍の柔軟作用を有する。F1P1C2は単一蛋白質約50%を有し、エンドグルカナーゼIと称される。これは更に例えばTSKカラムによる調製サイズクロマトグラフィー法により精製できる。・・・(略)・・・表示の如く、粗製セルラーゼのF1,F1P1および最後のF1P1C2への分画で、柔軟化力(蛋白質の量当たり)は連続的に増加する。よごれの除去は同様に増加する。本発明の改善された調製品は、エンドグルカナーゼ活性(全蛋白質1mg当たりのCMC-エンドアーゼ)の増加並びにエンドグルカナーゼIの量の増加の点において従来技術の調製品と区別できる。粗製セルロースは、78%のCAVU活性を示すことが見出された。分画のCAVU活性は、75〜92%の範囲内にある。」(同6頁左上欄10〜左下欄下から8行)、(へ)「「エンドグルカナーゼI」の酵素化学的特徴 SDS-PAGEおよびマーカー蛋白質による等電点電気泳動は、それぞれ分子量(MW)及び等電点(p1)の決定に対し好都合の方法である。これらの方法により、エンドグルカナーゼIは、約65KDのMWおよび約8.5〜9.5のP1を有する。上記F1P1C2分画は、約50%のこのセルラーゼを含有し、更にこれは約50KD及び約5.8のP1を有する少量の蛋白質を含有する。高度のグリコシル化のため、SDSゲル中のMW及びP1は発酵条件および緩衝液のタイプの差異により精製中に変化しうる。酵素活性を、上記に定義した如きCMC-エンドアーゼおよびCAVU活性と同様に測定した。各々の場合、上記F1P1C2調製品を用い、純粋はエンドグルカナーゼIの性質を推定した。a)全蛋白質1mg当たり50超のCMC-エンドアーゼのエンドグルカナーゼ活性。b)本質的にセロビオヒドラーゼ活性なし(0.5 PNP-Cel/mg)。」(6頁左下欄下から7〜右下欄10行)が、それぞれ記載されている。
上記記載によると、甲第1号証には、フミコラ インソレンスから調製した粗製セルラーゼの分画であるF1,F1P1及びF1P1C2は、柔軟作用を有し、分画F1P1C2の主活性はエンドグルカナーゼ活性であること、並びに、分画F1P1C2の分子量は約65,000であり、これは、エンドグルカナーゼIと称される単一蛋白質を有し、この分子量は約65KDであることが開示されている。
しかるに、本件発明1に係る酵素は、「フミコーラ属微生物由来のエンドグルカナーゼ酵素」であるところ、甲第1号証に係る「分画F1P1C2」及び「エンドグルカナーゼI」も「フミコーラ属微生物由来のエンドグルカナーゼ酵素」であるから、これらはこの点で一致するが、前者が、「性質(a)」で特定されるように、「SDS-PAGEにより測定した見かけ分子量が約43kDである」のに対し、後2者が、約65KDの分子量である点で相違している。
したがって、前者は、後2者とは別異の酵素ということになり、また、甲第1号証には、分子量が約43KDであるエンドグルカナーゼについて教示するところは全くないのであるから、結局、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
これに関し、請求人は、「甲第1号証において、F1P1C2セルラーゼの分子量は、約65kDであると記載されているが、甲第5号証乃至甲第7号証(実験報告書-1〜3)から明らかなように、分画F1P1C2のエンドグルカナーゼ活性成分の分子量は、本件発明のエンドグルカナーゼと同じ約43kDである。したがって、分画F1P1C2画分には、本件特許請求の範囲1に記載された、43kDのエンドグルカナーゼが含まれており、F1P1C2セルラーゼと本件請求項1に記載されたエンドグルカナーゼ酵素とは区別することはできない。」(審判請求書21頁14〜21行)と主張している。
なるほど、甲第5号証には、甲第1号証に示される65kDのタンパク質(エンドグルカナーゼI)は、エンドグルカナーゼでないと結論できること、甲第6号証には、CMC-エンドアーゼ活性並びにエンドグルカナーゼ活性は65kD成分には全く検出されず、分画F1P1C2に認められたこれらの活性は50kD成分及び43kD成分に帰するものであり、65kD成分はエンドグルカナーゼではないものと結論されること、並びに甲第7号証には、分画F1P1C2の主要な色澄明化活性(柔軟化活性)を有する酵素成分は43kD成分であると結論されることがそれぞれ記載されている。
しかし、本件の優先日には、甲第1号証において、エンドグルカナーゼ活性を示す成分は、分子量が約65kDの「分画F1P1C2」或いは「エンドグルカナーゼI」であると認識されていたのであって、分子量が43kDの成分については、その存在すら認識されていなかったのである。
したがって、本件の優先日から遅れること10年余の、いずれも平成12年12月18日付の実験報告書である甲第5号証乃至甲第7号証により、甲第1号証に記載の分画F1P1C2のエンドグルカナーゼ活性は、分子量が65kDの成分とは別異の43kDの成分に起因することが明らかになったとしても、甲第5号証乃至甲第7号証を根拠に、本件の優先日において、甲第1号証に43kDの成分が開示されていたと解することはできない。
さらに、請求人は、甲第18号証及び甲第19号証も提出しているが、これらの証拠により、上記判断が左右されることはない。
また、本件発明4は、「配列番号:2に示す1位のアミノ酸から284位のアミノ酸までのアミノ酸配列を有するエンドグルカナーゼ酵素」であるところ、甲第1号証には、これについて開示されるところは全くないのであるから、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明ではない。
なお、本件発明2及び本件発明3は、本件発明1を更に限定したものであり、また、本件発明5乃至本件発明7は、本件発明1乃至本件発明4に係る酵素を含有する洗浄組成物に関するものであるから、上記、本件発明1及び本件発明4についての判断と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
(2)甲第3号証について
甲第3号証には、「フミコーラ インソレンスYH-8から得られるセルラーゼの熱安定性に及ぼす炭水化物残基の役割」というタイトルの下、(い)「CMCアーゼはpH3.0-11.0で、4℃、24時間安定であった。」(481頁左欄19〜20行)、(ろ)「図1に示すように、アビセラーゼ及びCMCアーゼの炭水化物残基は、マンノース及びN-アセチルグルコサミンからなる。アビセラーゼ及びCMCアーゼは、マンノースを14.0及び20.0%、並びに、N-アセチルグルコサミンを12.1及び19.0%それぞれ含んでいた。アビセラーゼ及びCMCアーゼ中の炭水化物の全含量はそれぞれ21.6及び39.0%であった。両酵素の炭水化物残基は豊富なN-アセチルグルコサミンを有していた。」(482頁右欄11〜20行)、(は)「天然セルラーゼからの炭水化物残基の部分除去 TURBO-グルコシダーゼで消化した両酵素は、1M塩酸でpH3.0に調整し、次いで4℃に終夜放置した。それから、生成した沈殿物を除くため遠心分離した。上澄をアンモニア水でpH5.5に調整し、物質と方法の項で述べたDEAE-セファデックスA-50カラム(・・・)に掛けた。TURBO-グルコシダーゼで消化したアビセラーゼ及びCMCアーゼ活性は、分割No.42-49と分割No.44-57にそれぞれ現れた(図2)。」(482頁右欄下から9行〜483頁左欄下から5行)、(に)「天然及び炭水化物除去したセルラーゼの分子量 天然のアビセラーゼ及びCMCアーゼはそれぞれ72,000と57,000であったが、65%-炭水化物を除去した分子量は、それぞれ60,000と43,000であった。一方、90%炭水化物を除去したセルラーゼは、それぞれ55,000と37,000となった(図3)。」(483頁右欄17〜25行)、(ほ)「4,65%-炭水化物除去CMCアーゼ[分子量43,000]」(483頁右欄図3中の4)、
(へ)「表I.天然及び炭水化物除去したセルラーゼの比活性
天然 65%炭水化物除去 90%炭水化物除去
アビセラーゼ 17.3 17.4 11.9
CMCアーゼ 39.2 39.4 34.5 」(485頁左欄第1表)、
(と)「天然アビセラーゼ及びCMCアーゼの特徴的な安定性は、含量の多い特徴的にN-アセチルグルコサミン含量の高い炭水化物残基によるものであると、示唆される。」(487頁左欄9〜13行)が、それぞれ記載されている。
上記(に)乃至(へ)の記載によると、フミコーラ インソレンスYH-8から得られるセルラーゼの1種であるCMCアーゼ(エンドグルカナーゼ)を、TURBO-グルコシダーゼで炭水化物を65%消化除去した「65%-炭水化物除去CMCアーゼ」(以下、「酵素派生物」という。)は、分子量が43,000であり、その比活性は、34.5であると解される。 ところで、本件発明4は「配列番号:2に示す1位のアミノ酸から284位のアミノ酸までのアミノ酸配列を有するエンドグルカナーゼ酵素」に係るところ、「配列番号:2に示す1位のアミノ酸から284位のアミノ酸までのアミノ酸配列」(以下、「配列番号2のアミノ酸配列」という。)が、甲第3号証に係る「酵素派生物」のタンパク質部分に存在しなければ、本件発明4は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。
よって検討するに、本件発明4に係る酵素は、甲第3号証に記載の酵素と同様、物質的には糖タンパク質に属するところ、糖タンパク質に係る糖鎖(炭水化物残基)とタンパク質との結合様式として、「N-グリコシル化」と「O-グリコシル化」の2種類が存在しており、「「N-グリコシル化」は、タンパク質のアミノ酸配列中に「Asn-Xaa-Thr」又は「Asn-Xaa-Ser」(XaaはProを除く任意のアミノ酸)が存在する場合に、「Asn」の側鎖のアミノ基に糖鎖が結合するものであり、この場合の糖鎖は、幾つかのマンノースユニットにN-アセチルグルコサミンが共有結合したものである。
O-グリコシル化は、タンパク質のアミノ酸配列中の「Ser」又は「Thr」の側鎖のヒドロキシル基に1〜3個の主としてマンノース(または他の糖)が結合したものである。」(答弁書13頁)ということは、当技術分野では良く知られている事項である。
(請求人は、甲第24号証乃至甲第26号証を提出し、「O-グリコシル化」でもN-アセチルグルコサミンを含有する場合があると主張しているが、甲第24号証には、N-アセチルグルコサミンがセリンやスレオニンに結合するのは、今のところ核と細胞質内にある糖タンパク質に限られる旨の記載(32頁左欄)に照らし、本件のような分泌型の酵素には該当しないと考えられること、甲第25号証は、ヒトのSp1タンパク質に関するものであって微生物に関する記述ではないこと、並びに、甲第26号証は、アスペルギルス属に関する記載であって、フミコラ属の微生物について該当するか不明であることを併せ考えると、上記請求人の主張は採用できない。)
そこで、「配列番号2のアミノ酸配列」をみると、そこには、「Asn-Xaa-Ser」であるところが1ヶ所ある(179位乃至181位)が、この「Xaa」は「Pro」であるから、上記記載によるとその部位で「N-グリコシル化」する余地はなく、また、「Ser」或いは「Thr」が多数存在し、しかも、本件明細書の「グルコシル化は、 グルコース 10 マンノース 28 と測定され,Mw6,840に相当する。」(特許公報7頁13欄43〜46行)という記載を踏まえると、「配列番号2のアミノ酸配列」にグリコシル化する場合は、「O-グリコシル化」であるといえる。
一方、甲第3号証に係る「酵素派生物」は、上記(ろ)及び(と)の記載によると、炭水化物残基としてN-アセチルグルコサミン含量が高いので、該「酵素派生物」における糖鎖は、「N-グリコシル化」ということになり、そのタンパク質部分のアミノ酸配列には、「Asn-Xaa-Thr」又は「Asn-Xaa-Ser」の配列が多数存在することになる。
そうすると、「配列番号2のアミノ酸配列」は、これらの配列を含まないのであるから、「配列番号2のアミノ酸配列」を有する本件発明4に係る酵素は、甲第3号証に係る「酵素派生物」とは別異のものということになる。
したがって、本件発明4は、甲第3号証に記載された発明ではない。
また、本件発明1は、「(f)フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)DSM1800由来の、配列番号2に示す1位のアミノ酸から284位のアミノ酸までのアミノ酸配列を有し且つSDS-PAGEにより測定した約43kDの見かけ分子量を有するエンドグルカナーゼに対して産生されるポリクローナル抗体と免疫反応性である」という事項で特定されるところ、上記のように甲第3号証に係る「酵素派生物」は、「配列番号2のアミノ酸配列」とは別異のアミノ酸配列からなるタンパク質部分を有し、しかも、糖鎖部分は本件発明4に係る酵素と異なりN-アセチルグルコサミンを豊富に含有するものであるから、性質(f)における「ポリクローナル抗体」、すなわち「配列番号2のアミノ酸配列」を有し、しかも「O-グリコシル化」である糖鎖を有する「エンドグルカナーゼ」に対し産生される「ポリクローナル抗体」は、甲第3号証に係る「酵素派生物」と免疫反応する可能性はないというべきである。
したがって、甲第3号証に係る「酵素派生物」に係る分子量が43,000であって、本件発明1に係る酵素の分子量と一致するとしても、本件発明1に係る酵素は、その「性質(f)」によって甲第3号証に係る「酵素派生物」と明確に峻別されるものであるから、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。
なお、請求人は、「甲第8号証乃至甲第10号証から明らかなように、甲第4号証に記載の林田法による緩衝液で測定したpHは、酸性側にあり、甲第13号証に記載のEP法による緩衝液ではpHは、アルカリ側にシフトすることから判断すると、甲第3号証に記載のエンドグルカナーゼの至適pH(pH5.0)は、本件請求項1に記載の活性pHの範囲(pH6.0〜10.0)に包含されることに疑いを容れる余地がない。」(審判請求書25頁4〜10行)と主張している。
しかし、本件発明1及び本件発明4に係る酵素は、甲第3号証に係る「酵素派生物」と、上述のように明確に峻別されるものであるから、「活性pH範囲」或いは「安定pH範囲」の異同について、上記証拠に基づきさらに検討する必要はない。
そして、甲第27号証に関しても、同様に検討する必要はない。
また、請求人は、甲第12号証に係るエンドグルカナーゼは、本件発明に係る酵素のアミノ酸配列と98.4%同一であるから、フミコーラ属の微生物が産生するCMCアーゼは、本件発明1に係る酵素に含まれることが強く示唆される、と主張している。
しかし、甲第12号証に、本件発明1に係る酵素と相同性の高い酵素が開示されていても、甲第12号証は、本件の優先日後に頒布された刊行物であるから、本件の優先日に、本件発明1に係る酵素と相同性の高い酵素が知られていたことにはならない。
したがって、上記請求人の主張は失当である。
また、本件発明2及び本件発明3は、本件発明1を更に限定したものであり、また、本件発明5乃至本件発明7は、本件発明1乃至本件発明4に係る酵素を含有する洗浄組成物に関するものであるから、上記、本件発明1及び本件発明4についての判断と同様の理由により、甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。
(3)甲第4号証について
甲第4号証は、「フミコーラ インソレンスYH-8の熱安定性セルラーゼの生産と精製」に係り、「精製した両酵素の色々な緩衝液(・・・)に溶解し、4℃、24時間放置した。pH処理の後、酵素はpH5.5に調整し、アビセラーゼとCMCアーゼの残存活性を50℃、24時間反応後に決定した。図9.に示すように、アビセラーゼとCMCアーゼはそれぞれ、pH3.5〜9.5、pH3.0〜11.0で安定であった。同様な酵素調製品を色々な緩衝液に溶解し、色々なpH値にてその活性を決定した。両酵素の50℃における至適pHは、それぞれ5.3と5.0であった。」(1727頁左欄9〜28行)、「図9.に示すように、アビセラーゼとCMCアーゼはそれぞれ、pH3.5〜9.5、pH3.0〜11.0で安定であった。」(1727頁左欄21〜23行)、「特に、精製したCMCアーゼ調製品は熱、酸性及びアルカリ性で安定で、45%の残存活性を示した。」(1727頁右欄31〜34行)が、それぞれ記載されている。
ところで、甲第3号証と甲第4号証とは、著者が「Shinsaku HAYASHIDA」及び「Hajime YOSHIOKA」、並びに、酵素を調製するために供した微生物が「Humicola insolensYH-8」といずれも両者で共通しており、また、雑誌への投稿日が前者が1979年4月9日、後者が1979年6月26日と日時が接近していることを併せ考えると、甲第4号証に係るCMCアーゼは、甲第3号証に係るCMCアーゼ、すなわち、分子量が57,000である酵素と同一のものといえる。
そして、甲第4号証には、分子量43,000のCMCアーゼについて開示されるところはないから、上記(2)での判断と同様の理由により本件発明1及び本件発明4は、甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。
なお、本件発明2及び本件発明3は、本件発明1を更に限定したものであり、また、本件発明5乃至本件発明7は、本件発明1乃至本件発明4に係る酵素を含有する洗浄組成物に関するものであるから、上記、本件発明1及び本件発明4についての判断と同様の理由により、甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。
B.無効理由2について
甲第1号証には、フミコラ インソレンスから調製した粗製セルラーゼの分画であるF1,F1P1及びF1P1C2が柔軟作用を有し、分画F1P1C2の主活性はエンドグルカナーゼ活性であること、並びに、分画F1P1C2の分子量は約65,000であり、これは、エンドグルカナーゼIと称される単一蛋白質を有し、この分子量は約65KDであることが記載されているものの、本件発明1のような約43kDの分子量を有するエンドグルカナーゼについて開示されておらず、示唆すらされていない。
しかも、甲第1号証には、「F1P1C2は単一蛋白質約50%を有し、エンドグルカナーゼIと称される。」(摘示事項(ほ))及び「エンドグルカナーゼIは、約65KDのMWおよび約8.5〜9.5のP1を有する。上記F1P1C2分画は、約50%のこのセルラーゼを含有し、更にこれは約50KD及び約5.8のP1を有する少量の蛋白質を含有する。」(摘示事項(へ))との記載があり、この記載に接した当業者は、「分画F1P1C2」のエンドグルカナーゼ活性は、「エンドグルカナーゼI」によるものであると理解するだけで、この分画中にさらに約43kDの分子量を有するエンドグルカナーゼが存在するなどとは予想だにしないといえる。したがって、本件発明1が、甲第1号証に記載の事項に基づき当業者が容易に想到し得たとは到底いえない。
また、「配列番号2のアミノ酸配列」を有する本件発明4も、甲第1号証に記載の事項から当業者が容易に想到し得るとはいえない。
甲第3号証には、フミコーラ インソレンスYH-8から得られるセルラーゼの1種であるCMCアーゼ(エンドグルカナーゼ)を、TURBO-グルコシダーゼで炭水化物を65%消化除去した「酵素派生物」は、分子量が43,000であり、その比活性は、34.5を示し、炭水化物残基として、N-アセチルグルコサミン含量が高いことが開示されているものの、「A.(2)」で検討したように、甲第3号証に係る「酵素派生物」は、本件発明1及び本件発明4に係る酵素と、そのタンパク質部分及び糖鎖部分において、大きく相違しているから、甲第3号証に記載の事項から、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
甲第4号証には、分子量43,000のCMCアーゼについて開示されるところはなく、また、示唆すらされていないから、本件発明1及び本件発明4は、甲第4号証に記載された事項に基づき当業者が容易に想到し得たとはいえない。
そして、甲第1号証,甲第3号証及び甲第4号証に記載された事項を組み合わせても、本件発明1或いは本件発明4に係る酵素が導き出せるとはいえない。
したがって、本件発明1及び本件発明4は、甲第1号証,甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本件発明2及び本件発明3は、本件発明1を更に限定したものであり、本件発明5乃至本件発明7は、本件発明1乃至本件発明4に係る酵素を含有する洗浄組成物に関するものであるから、上記、本件発明1及び本件発明4についての判断と同様の理由により、甲第1号証,甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
なお、請求人の提出した甲第11号証に記載の事項を検討しても、上記判断は左右されない。
C.無効理由3について
請求人の本件特許出願が特許法36条4項及び5項に規定の要件を満たしていないという主張は次のとおりである。
(1)請求項1記載の性質(b)の活性pH範囲、性質(c)の安定pH範囲は、(i)その測定法が明細書に記載されておらず、また(ii)何を基準にしてどの程度まで酵素が活性或いは安定である場合に酵素が活性或いは安定であるというのか、その程度も明細書に記載されていないから、性質(b)及び(c)は、本件発明の酵素を特定するための性質とはなり得ない。
(2)性質(f)の免疫反応性は、極めて定性的な表現を含むものであって酵素の特定には使用できないものである。
(3)本件発明に係る酵素は、モノクロナール抗体「F41」を用いる免疫アフィニティー精製により単離しているが、「F41」を産生するハイブリドーマは寄託されていないので、当業者は、本件発明を容易に実施することができない。
(1)の(i)について検討する。
訂正前の請求項1の記載によると、性質(b)及び(c)は、
「(b)pH6.0〜10.0の範囲で活性である;
(c)pH3〜9.5の範囲のpH値において安定である」であって、その測定法については何ら記載されていなかったところ、平成14年1月4日付訂正請求により、請求項1に係る性質(b)及び(c)は、
「(b)pH6.0〜10.0の範囲で活性である、ここで酵素活性は、(イ)35g/LのCMCを含む基質溶液と測定されるべき酵素溶液とを、基質溶液10mlと酵素溶液0.5mlの体積比で混合し、(ロ)反応混合物を40℃に温度調節した粘度計に移し、(ハ)混合直後に反応混合物の粘度を測定し、(ニ)前記混合の30分後に反応混合物の粘度を測定し、そして(ホ)粘度を1/2に低下させる酵素活性を1酵素活性単位と定義することにより決定されるCMC-エンドアーゼ活性により決定される;
(c)pH3〜9.5の範囲のpH値において安定である、ここで酵素活性は、(イ)35g/LのCMCを含む基質溶液と測定されるべき酵素溶液とを、基質溶液10mlと酵素溶液0.5mlの体積比で混合し、(ロ)反応混合物を40℃に温度調節した粘度計に移し、(ハ)混合直後に反応混合物の粘度を測定し、(ニ)前記混合の30分後に反応混合物の粘度を測定し、そして(ホ)粘度を1/2に低下させる酵素活性を1酵素活性単位と定義することにより決定されるCMC-エンドアーゼ活性により決定される」と訂正されたことにより、性質(b)及び(c)に係る各pHは、当初の明細書(3頁20行〜4頁3行)に記載されていた(イ)乃至(ホ)から成る測定法(以下、「粘度法」ということがある。)によることが明らかとなった。
したがって、上記無効理由(1)の(i)は解消したというべきである。
次に(ii)について検討するに、請求項1記載の性質(b)の活性pH範囲に関し、本件明細書には、「この酵素は約50℃で最大活性を示すと共にpH6.0と10.0との間で活性である。」(特許公報7頁14欄21〜22行)との記載があるものの、この範囲のpH値が何を基準にして導き出されたかについて具体的に開示されるところはない。
ところで、乙第12号証には、本件発明の実施品である「カレザイム」について、pH3からpH11の範囲にわたり、セルラーゼ活性をCMCの粘度を低下させる粘度法にて測定した場合、pH3,4,5,6,7,8,9,10及び11では、各々、33,41,117,116,151,176,128,59,17CMC-endoase単位/mgであったという実験結果が記載されている。
しかるに、請求項1記載の性質(b)には、「pH6.0〜10.0の範囲で活性である」との記載があるところ、乙第12号証によると、pH値10.0では「59CMC-endoase単位/mg」の活性があり、この活性値は、本件明細書の「本発明のセルラーゼ調製物は、そのエンドグルカナーゼ成分が総合タンパク質当たり少なくとも約50CMCエンドアーゼ単位のCMCエンドアーゼ活性を示す有益なものである。」(特許公報2頁4欄13〜16行)との記載を踏まえると、「pH10.0」が活性pH範囲の上限となるpH値であることを示しているといえる。
一方、pH値6.0に関し、乙第12号証には、「116CMC-endoase単位/mg」の活性値が示されているものの、性質(b)に記載のpH値の範囲外であるpH5においても、「117CMC-endoase単位/mg」の活性値が示されており、しかも、この活性値は、上記本件明細書に記載の「約50CMCエンドアーゼ単位」より遙かに高い数値であるから、請求項1記載の性質(b)において、活性pH値の下限値がなぜ「6.0」であるのか、乙第12号証の記載を参酌しても明らかでない。
しかし、乙第12号証によると、活性pH範囲の「6.0〜10.0」においては、59〜176CMC-endoase単位/mgといういずれも「約50CMCエンドアーゼ単位」を越える活性値を示していること、並びに、「pH6.0〜10.0」という活性pH範囲は、当初の明細書(19頁12〜13行)に記載されていたのであるから、被請求人は、当初から「pH6.0」を活性pH値の下限値と認識していたと解されること(乙第12号証は、本件優先日後の「2001年10月11日」に作成されたものである。)を併せ考えると、請求項1記載の性質(b)のpHの下限値として「6.0」と記載したことは、当業者として拙速であったという誹りは免れないものの、この記載を根拠に、特許法36条5項の規定に違反しているとまではいえない。
次に、請求項1記載の性質(c)の安定pH範囲に関し、本件明細書には、「この酵素はpH3と9.5との間で安定である。」(特許公報7頁14欄13行)との記載があるのみで、これ以外にこの事項について触れるところはない。
しかるに、乙第16号証は、pH3〜pH11の範囲内における本件発明の実施品である「カレザイム」の安定性についての実験報告であって、そこには、残存CMC-エンドアーゼ活性をCMC-粘度低下セルラーゼアッセイで定量したところ、pH3.00〜pH10.22の全試験範囲内で同様の残存活性を示したことが記載されている。
すると、請求項1記載の性質(c)の安定pH範囲は、「pH3〜9.5」であるのに、このpH値では、上限値において乙第16号証の記載と齟齬をきたしている。
しかし、甲第14号証には、「一般に、酵素の安定なpH域の幅は、活性-pH曲線にみられる活性なpH域の幅より広くなる。」(115頁下から6〜5行)との記載があり、事実、本件発明1においても、安定pH範囲は、「pH3〜9.5」という比較的広い範囲であり、しかも、請求項1記載の性質(c)の「9.5」と乙第16号証に係る「10.22」とは、「0.72」の差であって、これは上記の広いpH範囲に比べ僅かなものであるから、この程度の相違があることをもって、特許法36条5項に規定する要件を具備しないとはいえない。
ところで、請求人は、請求項1記載の性質(b)の活性pH範囲を画するものとしてのpH6.0及びpH10.0,並びに性質(c)の安定pH範囲を画するものとしてのpH3及びpH9.5に関しては、これらの数値がどのような根拠に基づいて判定されたのか、また臨界的意義を有するのか不明であると主張している。(平成13年9月28日付口頭審理陳述要領書7頁;甲第14号証乃至甲第16号証、甲第30号証、甲第31号証)
よって検討するに、本件明細書には、有益なCMCエンドアーゼ活性として、「約50CMCエンドアーゼ単位」が示されており、これは、性質(b)に係る活性pH範囲のpH値を判定する根拠になることは明らかで、また、性質(c)に係る安定pH範囲に関しては、乙第16号証に記載の「考察」によると、どの試験pHでも活性損失の傾向は存在しなかったのであるから、本件発明に係る酵素に関していえば、安定pH範囲のpH値を判定する根拠が明示されていなくても不明確であるとはいえない。
そして、性質(b)の活性pH範囲である「pH6.0〜10.0」においては、乙第12号証によると、いずれのpH値においても有益なCMCエンドアーゼ活性値である約50CMCエンドアーゼ単位を上回る活性値を示しており、また、性質(c)の安定pH範囲である「pH3〜9.5」においては、上記のように、どの試験pHでも活性損失の傾向は存在しないのであるから、性質(b)記載の「pH6.0〜10.0」の範囲内では「活性」、及び性質(c)記載の「pH3〜9.5」の範囲内では「安定」であることが実証されていることになる。したがって、「活性」乃至「安定」のpH範囲を画するpH値の意味について直接言及するところがないので、望ましい明細書の記載とはいえないものの、特許法36条4項の規定に違反するとまではいえない。
なお、請求人は、「臨界的意義を有するのか不明」とも主張しているが、「臨界的意義」とは、「その数値限定の内と外で効果上顕著な差異があること」(審査基準第II部第2章2.8(3))であると解されるところ、本件発明の実施品である「カレザイム」のpH-活性曲線(乙第12号証)では、特定のpH値の内と外で活性に顕著な差異が見出せるところはない。
しかし、酵素の活性-pH曲線は、通常は至適pHを頂点とする釣鐘状の曲線、すなわち、滑らかな曲線を示し(請求人も、平成13年9月28日付口頭審理陳述要領書29頁6〜7行で同旨の主張をしている。)、特定のpH値の内外で顕著な差異があることは少ないのであるから、本件酵素のpH-活性曲線に、「臨界的意義」が見出せないとの理由だけで、特許法36条4項の規定に違反するとはいえない。
(2)について検討する。
上記「A.(2)」で検討したように、請求項1記載の「性質(f)」により、本件発明1に係る酵素は、甲第3号証に係る「酵素派生物」から明確に峻別されるものであるから、本件発明の酵素を特定するための性質となり得るというべきである。
(3)について検討する。
モノクロナール抗体「F41」に関して、本件明細書には、「得られた画分F1P1C2をマウスの免疫感作に使用した。免疫感作は2週間の間隔で5回行い、各毎にフロイントアジュバントを含むタンパク質25μg使用した。・・・に記載されるようにハイブリドーマ細胞系を樹立した。・・・再クローン化されたハイブリドーマ細胞系を樹立した。これらの細胞系によって産生される抗体を、スクリーニングし、市販のマウスモノクローナルタイピングキッド(・・・)を使用してIgG1サブクラスに属するものについて選んだ。次に、常用のELISAによりF1P1C2との反応性について陽性抗体をスクリーニングしたところ、SDS-PAGEで粗フミコーラ インソレンスDSM1800セルラーゼを使用するイムノブロッティングに異なる応答を示し、次いでウェスタンブロットによりそれらが異なるエピトープを認識することを示すことが見出されたが、それらのすべてがELISA応答に非常に良好であるようなF4、F15およびF41の選択物を得た。これら3種の抗体は、CRBF1マウスの腹水中に多量に産生されていた。セファロースに結合したプロテインA(・・・)を使用するプロテインA精製法により腹水からマウスγグロブリンを精製した。」(6頁11欄16〜47行)、「最も高いELISA応答は、モノクロナール抗体F41で得られたので、それを免疫アフィニティー精製工程で使用した。」(6頁12欄9〜11行)が記載されている。
上記記載によると、分画F1P1C2と反応する抗体として、F4、F15及びF41という三種のものが得られており、このうち最も高いELISA応答は、「F41」に対してであることが分かる。
そうすると、分画F1P1C2と反応する抗体が、常用の方法により、ただ一種ではなく三種も調製されていることを踏まえると、「F41」を産生するハイブリドーマが寄託されていなくても、本件明細書には、本件発明を当業者が容易に実施し得る程度の記載があるというべきである。
すなわち、本件明細書に記載の調製法にしたがえば、「F41」に比べ若干性能が劣るとしても本件発明に係る酵素を精製するに足る抗体が取得できるといえる。
なお、本件明細書には、本件発明に係る酵素について、「配列番号2のアミノ酸配列」が開示されているのであるから、このアミノ酸配列に対応する塩基配列から適当な塩基配列の断片を調製し、これをプローブとして、フミコーラ インソレンスDSM1800から本件発明に係る酵素のc-DNAを採取し、これを適宜発現し、本件発明に係る酵素を取得することは、本件の優先日において当業者が容易に実施し得ること、すなわち、取得することが担保されているといえるから、この観点からも、モノクローナル抗体「F41」を産生するハイブリドーマが寄託されていなくても、これがために本件明細書の記載が不備であるとはいえない。
請求人は、甲第21号証(早石修博士の鑑定書)及び甲第22号証(大島泰郎博士の鑑定書)を提出しているが、これらに記載された上記判断と異なる意見は、当審の採用するところではない。
VI.まとめ
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件発明1乃至7についての特許を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
エンドグルカナーゼ酵素を含んでなるセルサーゼ調製物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 次の性質:
(a)SDS-PAGEにより測定した見かけ分子量が約43kDである;
(b)pH6.0〜10.0の範囲で活性である、ここで酵素活性は、(イ)35g/LのCMCを含む基質溶液と測定されるべき酵素溶液とを、基質溶液10mlと酵素溶液0.5mlの体積比で混合し、(ロ)反応混合物を40℃に温度調節した粘度計に移し、(ハ)混合直後に反応混合物の粘度を測定し、(ニ)前期混合の30分後に反応混合物の粘度を測定し、そして(ホ)粘度を1/2に低下させる酵素活性を1酵素活性単位と定義することにより決定されるCMC-エンドアーゼ活性により決定される;
(c)pH3〜9.5の範囲のpH値において安定である、ここで酵素活性は、(イ)35g/LのCMCを含む基質溶液と測定されるべき酵素溶液とを、基質溶液10mlと酵素溶液0.5mlの体積比で混合し、(ロ)反応混合物を40℃に温度調節した粘度計に移し、(ハ)混合直後に反応混合物の粘度を測定し、(ニ)前期混合の30分後に反応混合物の粘度を測定し、そして(ホ)粘度を1/2に低下させる酵素活性を1酵素活性単位と定義することにより決定されるCMC-エンドアーゼ活性により決定される;
(d)非晶質セルロースを分解する;
(e)セロビオースβ-p-ニトロフェニルを実質的に分解しない;及び
(f)フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)DSM1800由来の、配列番号2に示す1位のアミノ酸から284位のアミノ酸までのアミノ酸配列を有し且つSDS-PAGEにより測定した約43kDの見かけ分子量を有するエンドグルカナーゼに対して産生されるポリクローナル抗体と免疫反応性である;
を有するフミコーラ(Humicola)属微生物由来のエンドグルカナーゼ酵素。
【請求項2】 前記フミコーラ属微生物がフミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)である、請求の範囲第1項に記載のエンドグルカナーゼ酵素。
【請求項3】 約50℃で最大活性を示す、請求の範囲第1項又は第2項に記載のエンドグルカナーゼ酵素。
【請求項4】 配列番号:2に示す1位のアミノ酸から284位のアミノ酸までのアミノ酸配列を有するエンドグルカナーゼ酵素。
【請求項5】 請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項に記載のエンドグルカナーゼ酵素を含有する洗剤組成物。
【請求項6】 プロテアーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼおよび/またはアミラーゼのような別の酵素をさらに含んでなる請求の範囲第5項に記載の洗剤組成物。
【請求項7】 前記エンドグルカナーゼ酵素が、洗浄液1リットル当り0.01〜100mgの酵素タンパク質に相当する濃度で存在する請求の範囲第5項又は第6項に記載の洗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
発明の分野
本発明は単一成分エンドグルカナーゼを含んでなるセルラーゼ調製物、そのセルラーゼ調製物を含んでなる洗剤添加剤、そのセルラーゼ調製物を含む洗剤組成物ならびにそのセルラーゼ調製物によるセルロース含有織物の処理方法に関する。
発明の背景
当該技術分野では、一般に、綿含有織物の反復洗濯が織物に非常に不快なごわ付きを起こすことが周知であり、そして当該技術分野ではこの問題を解決する数種の方法が既に提案されてきた。例えば、ユニリーバー社(Unilever Ltd.)の英国特許第1,368,599号明細書は綿含有織物のごわ付きを低減するセルロース分解酵素の使用を教示する。また、米国特許第4,435,307号(ノボインダストリーA/S)明細書は、ごわ付き低減洗剤添加剤として、フミコーラ インソレンス(Humicola insolens)由来のセルロース分解酵素ならびにACxIと称されるその断片の使用を教示する。
当該技術分野で認識されているセルロース分解酵素の他の用途としては、織物からよごれの除去およびその色の澄明化(例えば、ヨーロッパ特許第220,016号参照)、水吸収性の向上(特公昭52-48236号)および色の局所的な変化を処理された織物に与える「ストーンウォッシュ(Stone-washed)」外観の提供(ヨーロッパ特許第307,564号)が挙げられる。さらに、セルロース分解酵素は、醸造酒業でβ-グルカンの分解に、製パン業では小麦粉の特性の改善に、製紙業ではセルロースの非晶質部分を除去してパルプ中の結晶セルロース含有率の向上のために、そしてパルプの排液特性の改善に、さらに飼料業でグルカンの消化の改善に使用される可能性がある。
セルロース分解酵素の実用上の開発は、ある程度まで、複合混合物である既知セルラーゼ調製物の性質により抑制されてきた。複数酵素系の製造の最適化は困難であるため、セルロース分解酵素類の工業的に有効なコストでの製造の実施が困難であり、そしてそれらの実用化は、セルロース系織物に対して所望の効果を奏するには多量のセルロース分解酵素を使用する必要から生じる困難性によって妨げられてきた。
上記に指摘したセルラーゼ調製物の短所は、多量のエンドグルカナーゼを含む調製物によって改善される可能性がある。エンドグルカナーゼ活性を増強したセルラーゼ調製物は、国際公開第WO89/00069号明細書で公表されている。
発明の要約
セルロース含有材料に対して好ましい活性レベルを示す単一エンドグルカナーゼ成分がここに単離された。
従って、本発明はフミコーラ インソレンス(Humicola insolens)DSM1800由来の高度に精製された〜43kDのエンドグルカナーゼに対して産生される抗体と免疫反応性であるか、またはその〜43kDエンドグルカナーゼに対する相同体である均一のエンドグルカナーゼを必須のものとして含んでなるセルラーゼ調製物に関する。
セルラーゼのこの特定のエンドグルカナーゼ成分は、相当な実用上の重要性を有するセルロース含有材料の処理にとって有益であることが見い出された。すなわち、このことが、例えば前記活性成分の生産に組換えDNA技術を使用することによってセルラーゼの原価上有効な製造を可能にし、そしてセルロース系材料に所望の作用を提供するのに少量のセルラーゼ調製物が必要とされるにすぎない点で酵素の現実的な使用を可能にする。
発明の詳細な記述
本発明のセルラーゼ調製物は、そのエンドグルカナーゼ成分が総タンパク質当り少なくとも約50CMCエンドアーゼ単位のCMCエンドアーゼ活性を示す有益なものである。
本明細書の文脈上、「CMCエンドアーゼ活性」の語は、以下に詳述されるように、本発明のセルラーゼ調製物とインキュベーション後、カルボキシメチルセルロース(CMC)溶液の粘度の低下によって測定されるような、セルロースのグルコース、セロビオースおよびトリロースへの分解能の観点によるエンドグルカナーゼ成分のエンドグルカナーゼ活性を意味する。
本発明の好ましいセルラーゼ調製物は、エンドグルカナーゼ成分が総タンパク質1mg当り少なくとも約60の、特に、少なくとも約90のCMCエンドアーゼ単位のCMCエンドアーゼ活性を示すものである。とりわけ好ましいエンドグルカナーゼ成分は、総タンパク質1mg当り少なくとも100CMCエンドアーゼ単位のCMCエンドアーゼ活性を示す。
CMCエンドアーゼ(エンドグルカナーゼ)活性は、次のようにCMCの低下する粘度から測定できる。
pH9.0の0.1Mトリス(Tris)緩衝液中35g/LのCMC(Hercules 7LFD)を含む基質溶液を調整する。分析すべき酵素試料をこの緩衝液に溶解する。
基質溶液10mLと酵素溶液0.5mLを混合し、40℃に温度を調節した粘度計(例えば、Haake VT181,NVセンサー,181rpm)に移す。
混合直後に粘度を読み取り、30分後に再度粘度を読み取る。これらの条件下で1/2に粘度を低下する酵素量を、CMCエンドアーゼ活性1単位と定義する。
当業者に既知の方法でマーカータンパク質と共にSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)および等電点電気泳動を行って、本発明のセルラーゼ調製物のエンドグルカナーゼの分子量と等電点(pI)をそれぞれ測定した。この方法により、特定のエンドグルカナーゼ成分の分子量は、〜43kDと決定された。このエンドグルカナーゼの等電点は約5.1と決定された。このエンドグルカナーゼの免疫化学的特性は、実質的に国際出願PCT/DK89/00069(国際公開WO89/09259)に記載されるように実施したところ、フミコーラ インソレンス DSM1800由来の高度に精製された〜43kDのエンドグルカナーゼに対して産生された抗体と免疫反応性であることが確認された。セロビオヒドロラーゼ活性は、セロビオースp-ニトロフェニルに対する活性として特定できる。この活性は、37℃およびpH7.0において1分間当りに放出されるニトロフェニルのマイクロモルとして測定される。本発明のエンドグルカナーゼは、実質的にはまったくセロビオヒドロラーゼ活性を示さないことが確認された。
本発明のセルラーゼ調製物のエンドグルカナーゼ成分は、例えば、米国特許第4,435,307号明細書に記載の粗フミコーラ インソレンス セルラーゼ混合物の逆相HPLC精製を始めとする大規模な精製操作により最初のうちは単離されてきた(後記実施例1を参照)。この操作は、驚くべきことに、非常に高いエンドグルカナーゼ活性に起因して、予想外に好ましい特性を有する単一成分として〜43kDのエンドグルカナーゼの単離物をもたらした。
他の態様では、本発明はエンドグルカナーゼ活性を示す酵素(以下、「エンドグルカナーゼ酵素」と称する)であって、添付の配列表ID#2に示されるアミノ酸配列を有する酵素またはエンドグルカナーゼ活性を示すその相同体に関する。本明細書における文脈上、「相同体」の語は、ある特定の限定された条件下〔例えば、5×SSCでの予備ソーキングし、20%ホルムアミド、5×デンハルト(Denhardt)溶液、50mMのリン酸ナトリウム、pH6.8、および50μgの変性超音波処理されたウシ胸線DNAの溶液中、約40℃で1時間予備ハイブリダイゼーションし、次いで100μMのATPを加えた同じ溶液中、約40℃で18時間ハイブリダイゼーションする〕で、このアミノ酸配列のエンドグルカナーゼ酵素をコードするDNAと同じプローブにハイブリッダイズするDNAによってコードされたポリペプチドを示すことを意図している。この語は、もとの配列のC末端およびN末端のいずれかもしくは両方に1個以上のアミノ酸残基が付加するか、あるいはもとの配列の1箇所以上の部位における1個以上のアミノ酸残基が置換するか、あるいはもとのアミノ酸配列のいずれかもしくは両末端におけるかまたはもとの配列内の1箇所以上の部位における1個以上のアミノ酸残基が欠失するか、あるいはもとの配列における1箇所以上の部位へ1個以上のアミノ酸残基が挿入することにより得られる前記配列の誘導体を包含することを意図している。
本発明のエンドグルカナーゼ酵素は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約(ブダペスト条約)の規定に従ってDeutshe Sammlung von Mikroorganismen,Mascheroder Weg 1B,D-3300 Braunschweig,FRGに1981年10月1日付で寄託され、フミコーラインソレンス(Humicola insolens)、例えばDSM1800株のようなフミコーラの一の種によって生産可能なものであってもよい。
さらなる態様では、本発明は、添付の配列表ID#4に示されるアミノ酸配列を有するエンドグルカナーゼ酵素またはエンドグルカナーゼ活性を示すその相同体(上記の定義に同じ)に関する。このエンドグルカナーゼ酵素は、フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)のようなフザリウムの一の種、例えばブダペスト条約の規定に従いDeutsche Sammlung von Mikroorganismen,Mascheroder Weg 1B,D-3300 Braunschweig,FRGに1983年6月6日付で寄託されたDSM2672株によって生産可能なものであってもよい。
さらに、相同的なエンドグルカナーゼは他のセルロース分解酵素産生微生物、例えば、トリコデルマ(Trichoderma)、ミセリオフトーラ(Myceliophthora)、ファネロシェーテ(Phanerochaete)、シゾフィラム(Schizophyllum)、ペニシリウム(Penicillium)、アスペルギルス(Aspergillus)およびゲオトリカム(Geotricum)の種から誘導されうることも予期されている。
また、本発明は上記のようなエンドグルカナーゼ酵素またはその酵素の前駆体をコードするDNA配列を含んでなるDNA構成物にも関する。特に、このDNA構成物は、添付の配列表ID#1もしくはID#3に示されるようなDNA配列か、またはそれらの変性体を有する。これらのDNA配列の適当な変性体の例は、上記エンドグルカナーゼの他のアミノ酸配列を生じないヌクレオチド置換体であるが、DNA構成物が導入される宿主有機体の使用可能なコドンに相当するか、または異なるアミノ酸配列を生じるためのもとの酵素と、場合によって異なる特性を有するエンドグルカナーゼ変異体を生じる可能性のある異なるタンパク質構造を生じるヌクレオチド置換体である。可能な変性の別の例は、配列中への1個以上のヌクレオチドの挿入、配列のいずれかの末端における1個以上のヌクレオチドの付加、あるいは配列のいずれかの末端または配列内での1個以上のヌクレオチドの欠失である。
上記エンドグルカナーゼ酵素をコードする本発明のDNA構成物は、確立された標準的な方法、例えばS.L.BeaucageおよびM.H.Caruthers,Tetrahedron Letters 22,1981,1859〜1869ページに記載されるホスホアミジト法またはMatthesら、EMBO Journal 3,1984,801〜805ページに記載される方法、により合成的に調製できる。ホスホアミジト法によれば、例えば、自動DNAシンセサイザーにより合成され、精製され、アニール化され、連結され、次いで適当なベクターにクローニングされる。
エンドグルカナーゼ酵素またはその前駆体をコードするDNA構成物は、例えば、フミコーラインソレンス(DSM1800)のようなセルラーゼ産生微生物のcDNAおよびゲノムライブラリーを創製し、次いで標準的な技法(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2版、Cold Spring Harbor,1989、参照)に従うエンドグルカナーゼの全体もしくは一部のアミノ酸配列に基づき合成されたオリゴヌクレオチドプローブを使用するハイブリダイゼーション、または適当な酵素活性(すなわち、上記に定義したようなCMCエンドアーゼ活性)を所持するクローンの選択、またはもとのセルラーゼ(エンドグルカナーゼ)に対する抗体と反応性を示すタンパク質産生クローンの選択、などの常用されている操作による陽性クローンのスクリーニングによって単離されうる。
最後に、このDNA構成物は、標準的技法に従う合成起源のフラグメント、ゲノム起源のフラグメントまたは(適当なものとして)cDNA起源のフラグメント(これらのフラグメントは完全なDNA構成物の様々な部分に相当する)の連結によって調製される合成およびゲノム起源の混合物、合成およびcDNA起源の混合物またはゲノムおよびcDNA起源の混合物であってもよい。また、DNA構成物は、例えば米国特許第4,683,202号明細書またはR.K.Saikiら、Science 239,1988,487〜491ページに記載されるような特定のプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応により調製することもできる。
さらに、本発明は、本発明の上記DNA構成物が挿入された組換え発現ベクターにも関する。これは、組換えDNA法を行うのに都合のよいいずれかのベクターであることができ、ベクターの選択はそれが導入される宿主細胞に左右されることが多いい。従って、ベクターは、自己複製ベクター、すなわち染色体外の独立体として存在し、その複製が染色体の複製に依存しない、例えプラスミドであることができる。また、ベクターは、宿主細胞に導入されたとき、その宿主細胞のゲノム中に組込まれ、それが組込まれた染色体と一緒に複製されるものであってもよい。
ベクターでは、エンドグルカナーゼをコードするDNA配列が、適当なプロモーターおよびターミネーターと調節可能に関連付けられている必要がある。プロモーターは、選んだ宿主細胞において転写活性を示し、そしてその宿主細胞と同種もしくは異種のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子から誘導されうるいずれかのDNA配列であることができる。エンドグルカナーゼをコードするDNA配列、プロモーターおよびターミネーターをそれぞれ連結し、次いでそれらを適当なベクター中に挿入するのに使用する操作は当業者に周知である(例えば、上記Sambrookら、参照)。
また、本発明は、本発明のDNA構成物または発現ベクターで形質転換された宿主細胞にも関する。例えば、宿主細胞は、アスペルギルス(Asperillus)のある種、最も好ましくは、アスペルギルス オリーゼ(Aspergillus oryzae)またはアスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)であることができる。カビ細胞は、それ自体既知方法によりプロトプラストを形成し、プロトプラストを形質転換し、次いで細胞壁を再生できる。宿主微生物としてのアスペルギルスの使用は、ヨーロッパ特許第238,023号明細書(Novo Industri A/S)に記載されており、その内容は引用することにより本明細書の内容となる。宿主細胞は、酵母細胞、例えばサッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の一菌株であってもよい。
また、宿主有機体は、細菌、特に、ストレプトマイセス(Streptomyces)、バチルス(Bacillus)およびイー・コリー(E.coli)の1菌株であってもよい。細菌細胞の形質転換は、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,1989に記載されるような常法によって行うことができる。
さらに本発明は、本発明のエンドグルカナーゼ酵素の生産方法であって、そのエンドグルカナーゼ酵素を発現する条件下で上記のような宿主細胞を適当な培地で培養する工程、次いで培養物からそのエンドグルカナーゼ酵素を回収する工程を含んでなる方法に関する。形質転換された宿主細胞を培養するのに使用する培地は、問題の宿主細胞を増殖するのに適するいずれかの常用されている培地であってもよい。発現されたエンドグルカナーゼは培養物中に分泌されることが都合よく、そして培養物から周知の手法、例えば、遠心もしくは濾過による培地からの細胞の分離、硫酸アンモニウムのような塩による培養物のタンパク質性成分の沈殿、次いでイオン交換クロマトグラフィー、もしくはアフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフ法により回収できる。
上述のような組換DNA法ならびに当該技術分野で周知のタンパク質精製法、発酵法および変法もしくは他の方法を使用することにより、高純度のエンドグルカナーゼを提供できる。
本発明のセルラーゼ調製物またはエンドグルカナーゼ酵素を、浸漬、洗濯またはすすぎ操作中に他の洗剤と一緒にセルロース含有織物へ添加することが都合よい。従って、他の態様では、本発明は本発明のセルラーゼ調製物またはエンドグルカナーゼ酵素を含んでなる洗剤添加物に関する。この洗剤添加物は、粉化しない顆粒、安定化された液体または保護された酵素の形態であることが適当である。粉化しない顆粒は、例えば米国特許第4,106,991号および同4,661,452号(両者とも、Novo Industri A/S)明細書に従って調製でき、そして場合によって当該技術分野で既知の方法により被覆してもよい。液体酵素調製物は、例えば、ポリプロピレングリコールのようなポリオール、糖もしくは糖アルコール、乳酸もしくはホウ酸の確立された方法による添加によって安定化できる。保護された酵素は、ヨーロッパ特許第238,216号明細書に公表された方法により調製できる。
本発明の洗剤添加物は、本添加物1g当り1〜500mg、好ましくは5〜250mg、最も好ましくは10〜100mg含むことが適当であろう。この洗剤添加物は、洗剤添加物に通常含められるプロテアーゼ、リパーゼ、パーオキシダーゼまたはアミラーゼのような他の酵素をさらに1種以上含めることができるものと理解されるであろう。
本発明によれば、プロテアーゼがバチルス レンタス(Bacillus lentus)セリンプロテアーゼより高い特異性を示すものである場合には、エンドグルカナーゼ酵素の向上した貯蔵安定性が得られることが見い出された。(本発明の目的上、バチルス レンタス セリンプロテアーゼより高い特異性を示すプロテアーゼは、BおよびR緩衝液(pH9.5)中1mg/mLのヒトインスリン0.5mLを1リットル当り0.6CPUの酵素溶液75μL[Novo Nordisk Analysis Methods No.AF 228/1、参照〕と37℃で120分間インキュベーションし、1NのHCl 50μLで反応を停止する条件下でバチルス レンタス セリンプロテアーゼを使用する場合よりも少ない成分にヒトインスリンを分解するものである。このようなプロテアーゼの例は、ズブチリシン ノボ(Novo)もしくはその変異体(例えば、米国特許第4,914,031号明細書に記載される変異体)、ノカルディア ダッソンビレイ(Nocardia dassonvillei)NRR18133から誘導されうるプロテアーゼ(国際公開第WO88/03947号明細書記載)、バチルス リケニホルミス(Bachllus licheniformis)から生産可能な、グルタミン酸およびアスパラギン酸に特異的なセリンプロテアーゼ(このプロテアーゼは同時係属中の国際特許出願第PCT/DK91/00067号明細書に詳述されている)、またはフザリウム エスピー(Fusarium sp.)DSM2672から生産可能なトリプシン様プロテアーゼ(このプロテアーゼは国際公開第WO89/06270号明細書に詳述されている)である。
さらなる別の態様では、本発明は、本発明のセルラーゼ調製物またはエンドグルカナーゼ酵素を含んでなる洗剤組成物に関する。
本発明の洗剤組成物は、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤または両性イオン界面活性剤、ならびにこれらの界面活性剤の混合物であってもよい界面活性剤をさらに含んでなる。アニオン界面活性剤の代表例としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、アルファオレフィンスルホン酸塩(AOS)、アルコールエトキシ硫酸塩(AES)および天然脂肪酸のアルカリ金属塩が挙げられる。しかしながら、エンドグルカナーゼはアニオン界面活性剤の存在下で安定性に乏しく、そして、一方、非イオン界面活性剤またはポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールもしくはポリビニルアルコールのような一定のポリマー化合物の存在下でより安定であることが見い出された。従って、本発明の洗剤組成物は、低濃度のアニオン界面活性剤および/または一定量の上述のような非イオン界面活性剤もしくは安定化ポリマーを含むことができる。
本発明の洗剤組成物は、例えば、ビルダー、漂白剤、漂白活性剤、抗凝集剤、金属イオン封鎖剤、土質再付着防止剤、香料、酵素安定化剤、などの当該技術分野で既知の他の洗剤成分を含んでもよい。
本発明の洗剤組成物は、いずれか適当な形状、例えば粉末または液体状に調製することができる。酵素は、上記のような酵素安定化剤を含めることにより液体洗剤中で安定化することができる。一般的に、本発明の洗剤組成物の溶液pHは、7〜12であり、そしてある例えでは7.0〜10.5である。プロテアーゼ、リパーゼまたはアミラーゼのような他の洗剤酵素を、上記の添加剤と独立にまたは組み合わせて本発明の洗剤組成物に含めることができる。
本発明のセルラーゼ調製物による柔軟化、土質除去および色の澄明化効果を得るには、洗濯液中のセルラーゼ調製物濃度が1リットル当り0.0001〜100、好ましくは0.0005〜60、そして最も好ましくは0.01〜20mgであることが必要である。
本発明の洗剤組成物は、典型的には、洗濯液中0.5〜20g/Lの濃度で使用される。一般的に、この洗剤組成物当り0.1〜5重量%、または、好ましくは0.2〜2重量%の量で洗剤添加物を加えることが最も都合がよい。
さらなる別の態様では、本発明は、セルロース含有織物の手触りが悪くなる速度を低減するか、またはセルロース含有織物の硬さを低減する方法であって、上記のようなセルラーゼ調製物またはエンドグルカナーゼ酵素によりセルロース含有織物を処理する工程を含んでなる方法に関する。さらに本発明は、着色セルロース含有織物の色の澄明化をもたらす方法であって、セルラーゼ調製物またはエンドグルカナーゼで着色セルロース含有織物を処理する工程を含んでなる方法、ならびに着色セルロース含有織物の色の局所的な変化をもたらす方法であって、本発明のセルラーゼ調製物またはエンドグルカナーゼにより着色セルロース含有織物を処理する工程を含んでなる方法に関する。本発明の方法は、洗濯中にセルロース含有織物を処理することにより実施できる。しかしながら、織物の処理は、場合によって、ソーキングもしくはすすぎ中に、あるいは織物が浸漬されているかもしくは浸漬されうる水にセルラーゼ調製物もしくはエンドグルカナーゼ酵素を単に添加することによって実施してもよい。
本発明によれば、紙パルプの排液特性が強度の著しい低下を伴うことなく本発明のエンドグルカナーゼによる処理で有意に改善できることが見い出された。従って、本発明は、さらに、パルプ排液の特性の改善方法であって、本発明のセルラーゼ調製物またはエンドグルカナーゼ酵素で紙パルプを処理する工程を含んでなる方法にも関する。本発明の方法で処理できるパルプの例としては、故紙パルプ、再循環板紙パルプ、クラフトパルプ、亜硫酸パルプまたは加工熱処理パルプおよび他の高収率パルプが挙げられる。
本発明は、以下の実施例の好ましい態様を参照しながらさらに詳細に説明されるが、これらの実施例のいずれかの態様に本発明の範囲が限定されることを意図するものでない。
実施例
例1
フミコーラ インソレンス(Humicola insolens)から〜43kDのエンドグルカナーゼ酵素の単位
1.フミコーラ インソレンス セルラーゼ混合物から精製れた〜43kDのエンドグルカナーゼと反応性のウサギ抗体の調製
米国特許第4,435,307号明細書の実施例6に記載されるようにフミコーラ インソレンス DSM1800を培養することによりセルラーゼを生産した。粗セルラーゼを、珪藻土による濾過、超遠心、活性含有物の凍結乾燥によって培養ブロスから回収した(米国特許第4,435,307号明細書の実施例1および6、参照)。
国際公開第89/09259号明細書に記載されるように粗セルラーゼを精製し、得られた画分F1P1C2をマウスの免疫感作に使用した。免疫感作は2週間の間隔で5回行い、各毎にフロイントアジュバントを含むタンパク質25μg使用した。Ed HarlowおよびDavid Lane,Antibodies.A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory 1988に記載されるようにハイブリドーマ細胞系を樹立した。この操作は以下のごとく具体的に記載できる。
マウスを放血した後、マウスの血清はF1P1C2画分に存在するタンパク質と反応することを示したので、脾臓を採取し、そして均質化し、次いでPEGおよびHyclone(Utah,USA)由来のフォクス・リバー(Fox-river)ミエローマ細胞と混合した。
これらのハイブリドーマを確立したHATスクリーニング法により選択した。
再クローン化されたハイブリドーマ細胞系を樹立した。これらの細胞系によって産生される抗体を、スクリーニングし、市販のマウスモノクローナルタイピングキット(Serotec,Oxford,England由来)を使用してIgG1サブクラスに属するものについて選んだ。次に、常用のELISAによりF1P1C2との反応性について陽性抗体をスクリーニングしたところ、SDS-PAGEで粗フミコーラ インソレンス DSM1800セルラーゼを使用するイムノブロッティングに異なる応答を示し、次いでウェスターンブロットによりそれらが異なるエピトープを認識することを示すことが見い出されたが、それらのすべてがELISA応答に非常に良好であるようなF4,F15およびF41の選択物を得た。
これら3種の抗体は、CRBF1マウスの腹水中に多量に産生されていた。セファロースに結合したプロテインA(Kem.En.Tek.,Copenhagen,Denmark)を使用するプロテインA精製法により腹水からマウスガンマグロブリンを精製した。
異なるモノクローナルガンマグロブリン類を、捕捉抗体としてモノクローナル抗体、抗原としてセルチーム(Celluzyme)の各種HPLC画分、および検出抗体としてセルチーム由来のエンドグルカナーゼBに対して産生されるウサギ抗体をそれぞれ使用するサンドイッチELISAでの応答について試験した。
ELISAにおけるバインディングを可視化するために、Dakopatts(Copenhagen,Denmark)由来のペルオキシダーゼへウサギIgGに対するブタ抗体を共有結合し、次いでOPD(1,2-フェニレンジアミン塩酸塩)/H2O2で可視化した。
最も高いELISA応答は、モノクローナル抗体F41で得られたので、それを免疫アフィニティー精製工程で使用した。
精製したマウスガンマーグロブリンF41を、製造者(Pharmacia,Sweden)に説明されるようにCNBr活性化セファロース4B 43gに結合し、次いで洗浄した。
2.フミコーラ インソレンス セルラーゼ調製物からの〜43kDのエンドグルカナーゼの免疫アフィニティー精製
フミコーラ インソレンス セルラーゼ混合物(上記)を3%乾燥物まで希釈し、4℃で15分以内にpHを3.5に調節した。pHを7.5に調節した後、沈殿物を濾去した。次に、40℃で硫酸ナトリウムを加えて活性酵素を沈殿させた(pH5.5で1kg当り260g)。この沈殿物を水に溶解して濾過した。酸処理を繰り返した。最後に、10.000Mwカットオフのポリビニルスルホネート膜を使用する限外濾過により濃縮した。
次に、セルラーゼ生成物を3%乾燥物になるまで希釈し、pHを9.0に調節した後、製造元(Pharmacia,Sweden)により推奨されるようにDEAEセファロースカラムによりアニオン交換クロマトグラフィーにかけた。
リン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)にて上記F41ガンマグロブリン結合セファロースカラムに上記プロテアーゼを含まない生成物をかけた。
カラムにかけた後、0.5Mの塩化ナトリウムを含む同じ緩衝液で洗浄した。次に、このカラムを0.5Mの塩化ナトリウムを含有する0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)で洗浄した後、カラムを5mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)で洗浄した。最後に、0.1Mのクエン酸で〜43kDのエンドグルカナーゼを溶離した。
総収量:1563CMC エンドアーゼ単位のエンドグルカナーゼ活性物25mg。
溶離されたタンパク質は、SDS-PAGEにより単一バンドでMW〜43kDを示すように泳動し、等電点電気泳動後のpIは約5.0〜5.2であった。
不活性タンパク質を逆相精製法で除去した。
不活性タンパク質と活性タンパク質を、2-プロパノールのグラージエントを使用するHPLCで分離した。不活性タンパク質は約25%2-プロパノールで溶離し、そして活性の〜43kDのエンドグルカナーゼは30%の2-プロパノールで溶離し、この活性エンドグルカナーゼはCMC-コンゴ-レッド清浄区分によって検出可能である。
この方法で、122CMCエンドアーゼ単位を有する活性タンパク質0.78mgを回収した。この操作を30回繰り返した。
〜43kDのエンドグルカナーゼを上記TFAとプロパノールを除去するために凍結乾燥して回収し、次いでリン酸緩衝液に溶解した。
精製物のエンドグルカナーゼ活性は、タンパク質1mg当り156CMCエンドアーゼ単位であり、凍結乾燥を含む総収率は、エンドグルカナーゼ活性の65%であった。
こうして得られた〜43kDの酵素を使用して、N.Axelsenら、A Manual of Quantitative Immunolelectrophoresis,Blackwell Scientific Publications,1973、第23章に記載される方法に準じてウサギを免疫感作した。精製イムノグロブリンは、それ自体既知の、硫酸アンモニウム沈殿、次いで透析、そしてDEAEセファデックスによるイオン交換クロマトグラフィーにより抗血清から回収した。エンドグルカナーゼに対する精製イムノグロブリンのバインディングを測定し、ウサギイムノグロブリンAS169をさらなる研究用として選んだ。
3.〜43kDのエンドグルカナーゼの特性決定
アミノ酸組成:完全加水分解によるアミノ酸分析後に次の組成が得られた。


アミノ酸組成より非グリコシル化タンパク質のMwは30,069と推定された。グリコシル化は、
グルコース 10
マンノース 28
と測定され、Mw 6,840に相当する。こうして、エンドグルカナーゼの総Mwは36,900(+/-2,400)であった。1分子当りの吸収係数は次のように推定された:
トリプトファン 9×5690
チロシン 6×1280
システイン 20×120
合 計 1分子当り61290
280nmにおける吸収係数1.66は、1mL当りタンパク質1mgに相当する(文献:S.C.GillおよびP.Hippel,Anal.Biochemistry 182,312〜326(1989))。
アミノ酸配列を、エドマン分解法によりアプライド・バイオシステムズ・475A・プロテインシクェネーター(Applied Biosystems 475A Protein Sequenator)で決定した。唯一の配列はこのタンパク質が純粋であることを示した。このアミノ配列を、添付の配列表ID#2に示す。
酵素の特性:
この酵素はpH3と9.5との間で安定である。
この酵素は、結晶セルロースまたは基質セルビオースβ-p-ニトロフェニル(セロビオヒドロラーゼの基質)を実質的に分解しないが、非晶質セルロースを主としてセロビオース、セロトリオースおよびセロテトラオースに分解するので、この酵素は不溶性非晶質セルロースからセロデキストリン類を生産するのに使用できることを示す。
この酵素は約50℃で最大活性を示すと共にpH6.0と10.0との間で活性である。
例2
アスペルギルス オリーゼ(Aspergillus oryzae)における〜43kDの上記エンドグルカナーゼのクローニングと発現
部分cDNA:
OkayamaおよびBerg(1982)Mol.Cell.Biol.2,161〜170ページの方法に従いフミコーラ インソレンス DSM1800株のmRNA(Kaplanら、(1979)Biochem.J.183,181〜184ページ)からcDNAライブラリーを作製した。このライブラリーを放射活性標識オリゴヌクレオチド類とハイブリダイゼーションし、組換え体から不動化したDNAと共に濾過した(Gergenら、(1979)Nucleic Acids Res.7,2115〜2136ページ)。これらのヌクレオチドプローブ類は、精製〜43kDのエンドグルカナーゼの代表的フラグメントのアミノ酸配列に基づき作製した。3種のプローブ(NOR 1251,2048および2050)にハイブリダイゼーションする1種のコロニーを見い出し、それを単離した。この配列は、挿入された680bpのcDNAが上記〜43kDのタンパク質のC末端の181アミノ酸をコードし、そして3′の翻訳されないmRNAであることを示す。このクローン由来の237bp鎖長のPvu I-Xho Iフラグメントを、フミコーラ インソレンスmRNAとのノーザンブロット法(Sambrookら、上記、7.40〜7.42ページおよび7.46〜7.48ページに記載)のプローブに使用したところ、完全な〜43kDのmRNAは約1100bpの鎖長を有することを示した。同じ菌株由来のゲノムライブラリーのプローブとして同じ237bpのフラグメントを使用した。
ゲノムのクローン:
フミコーラ インソレンス DSM1800株のゲノムライブラリーを、Yeltonの方法(M.M.Yeltonら、(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.LISA.81,1470〜1474ページ)により調製した総DNAから作製し、次いでSau3Aで部分消化した。4kbを越えるフラグメントをアガロースゲルから単離し、次いでBam H1で消化しそして脱リン酸化したpBR322に連結した。この連結生成物を、常法によりr-m+にしたイ.コーリー(E.coli)MC1000(CasadabanおよびCohen(1980)J.Mol.Biol.,138,179〜207ページ)に導入した。40.000個の組換え体を「部分cDNA」の欄に記載した237bpのPvu I-Xho I部分cDNAフラグメントでスクリーニングした。完全な〜43kDのエンドグルカナーゼ配列を含む2つのコロニーを選び、その遺伝子を製造元の説明書に従いシークエナーゼ(Sequenase)(商標)キット(Unitedstatus Biochemical Corporation)を使用して、ジデオキシ法で配列決定した。この配列は、ゲノム遺伝子中の1つのイントロンを除き完全鎖長のcDNA遺伝子(下記「完全鎖長のcDNA」の欄を参照、)の配列と同一であった。
このゲノム遺伝子を、パーキン・エルマー/シータス DNAアンプリフィケーションシステム(Perkin-Elmer/Cetus DNA Amplification System)を使用し、製造元の説明書に従うPCR法により増幅した。この遺伝子の5′末端ではプライマー NOR2378を使用した。このプライマーは、Bcl I部位で1つのCのTへの置換が起っている以外、その遺伝子の5′非翻訳末端とマッチする25merである。この遺伝子の3′末端では、プライマー NOR2389を使用した。このプライマーは、21塩基がその遺伝子の3′非翻訳末端とマッチし、そしてプライマーの5′端の5塩基がSal I部位を完成する26merである。
アスペルギルス発現ベクターpToc68は、プラスミドp775(この構築はヨーロッパ特許第238,023号明細書に記載されている)から以下のリンカーを挿入することにより構築した。

pTocの構築は、添付の図1に示す。
上記で得られたPCRフラグメントを、Bcl IおよびSal Iで消化し、次いでBam HIおよびXho Iで消化したpToc68に挿入した。得られたプラスミド(pDaHj 109)のインサートを配列決定したところ、もとのクローンと同一であることを示した。
完全鎖長のcDNA:
第一鎖cDNAを既知配列(NOR2153)の特定のプライマーから合成し、そして第二鎖の合成はGublerおよびHoffman(1983)GENE 25,263〜269ページに記載される方法に従って行った。ゲノム遺伝子の配列は、mRNAの5′部をとらえると同時にATG開始コドンの前の右にBam HI部位を導入するようなPCRプライマー(NOR2334)を設計できるようにした。5′末端でこのプライマーを使用し、3′末端でNOR2153を使用することにより二本鎖cDNA生成物上でPCRを行った。次に、PCR-cDNAの一部をコードする完全鎖長を、3′Pvu I-Eco0109と共にPCR反応由来の5′Bam HI-Pvu Iフラグメントを、クレノウポリメラーゼでそれをブラント端とするように満たし、Bam HI-Nru Iで切断したアスペルギルスの発現ベクターpToC68にクローニングして構築し(図1)、そして挿入されたDNAを検査した(pSX320)(図2参照)。この完全鎖長cDNAの配列を添付の配列表ID#1に示す。
使用したオリゴヌクレオチドプライマー類:

略字:
Y:ピリミジン(C+T)
R:プリン(A+G)
N:全4種の塩基
太字:もとの配列に対する変化または挿入部。
下線:PCRにより導入された制限部位。
〜43kDのエンドグルカナーゼの発現:
アスペルギルス オリーゼ(Aspergillus oryzae)IFO 4177のプロテアーゼ欠失誘導体であるアスペルギルス オリーゼ A1560-T40をプラスミドpS×320で形質転換し、pUC19ベクター(Yannisch-Perronら、(1985),GENE 33,103〜119ページ)上に2.7kbのXba Iフラグメントとしてアスペルギルス ニヅランス(Aspergillus nidulans)由来のamds遺伝子を担うpToC90で同時形質転換することによりアセトアミドによる選択に使用した(Corrickら、(1987),GENE 53,63〜71ページ)。形質転換は、ヨーロッパ特許出願公開第238,023号明細書に記載されるように行った。多数の形質転換体を〜43kDのエンドグルカナーゼの同時発現についてスクリーニングした。形質転換体をSDS-PAGE(明細書第4頁参照)とCMCエンドグルカナーゼ活性により評価した。
ゲノム遺伝子を含有するプラスミド(pCaHj109)で上記のようにアスペルギルス オリーゼ A1560-T40を形質転換した。これらの形質転換体の評価は、発現レベルがcDNAの形質転換体のそれと類似であることを示した。
精製された〜43kDのエンドグルカナーゼをそのN末端配列と糖含量について分析した。N末端配列は、HPLC精製〜43kDのエンドグルカナーゼのそれと同一であることを示した。糖含量は、グルコースよりも1モル当り10+/-8のガラクトースを組換え酵素が含む点でHPLC精製43kDの酵素のそれと異なる。
例3
フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)のゲノムDNAの単離
フザリウム オキシスポラムの凍結乾燥培養物をリン酸緩衝液で元へ戻し、5枚のフォックス(FOX)培地(酵母エキス6%,K2HPO4 1.5%,MgSO4・7H2O 0.75%,グルコース 22.5%,寒天 1.5%,pH5.6)プレートの各々に5度スポットし、37℃でインキュベーションした。インキュベーションの6日後、プレートからコロニーをかきとり、0.001%のツウィーン(Tween)-80 15mLに入れ、濃く曇った懸濁液を得た。
液体フォックス(FOX)培地300mLをそれぞれ含む4個の1リットルフラスコに上記胞子懸濁液2mLで植菌し、240rpmの30℃でインキュベーションした。インキュベーションの4日目に培養物を4層の滅菌ガーゼを通して濾過し、滅菌水で洗浄した。菌体をワットマン濾紙上で乾燥し、液体窒素で凍結し、冷却乳鉢で微粉末にすりつぶし、新鮮な溶菌緩衝液(10mM Tris-Cl,pH7.4,1%SDS,50mM EDTA,100μL DEPC)75mLに加えた。十分に混合した懸濁液を1時間65℃の湯浴でインキュベーションし、ベンチトップ型遠心機により5℃ 4000RPMで10分間回転した。上澄をデカントし、エタノールで沈殿させた。氷上で1時間後、その溶液を20分間19,000rpmで回転させた。上澄をデカント後、イソプロパノールで沈殿させた。10分間10,000rpmで遠心後、上澄をデカントし、ペレットを乾燥させた。
TER液(10mM Tri-HCl,pH7.4,1mM EDTA,100μg RNAseA)を各チューブに加え、それぞれのチューブを2日間4℃で貯蔵した。これらのチューブを取り出して65℃の湯浴中に30分間置き、不溶性のDNAを浮遊させた。溶液をフェノール/CHCl3/イソアミルアルコールで2度、CHCl3/イソアミルアルコールで2度抽出し、次いでエタノール沈殿した。ペレットを沈殿させ、エタノールを除去した。70%エタノールを加え、DNAを-20℃で一夜貯蔵した。デカントおよび乾燥後、TER 1mLを加え、1時間65℃でチューブをインキュベーションすることでDNAを溶解した。こうしてゲノムDNA 1.5mgを得られた。
フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)の〜43kDエンドグルカナーゼのクローニング
フミコーラの〜43kDエンドグルカナーゼに対するフザリウムの相同体を単離するために、PCRによる断片の増幅(米国特許第4,683,195号および同4,683,202号明細書に記載されるように)およびクローン化を行った。次に、この生成物を配列決定し、PCR増幅用プローブのライブラリーとして使用するプライマー類を構築した。これらのオリゴヌクレオチドを使用して、cDNAライブラリーから対応するクローンを単離した。
PCRを使用して43kDの相同体の部分鎖長cDNAとゲノムのフラグメントを単離した。PCR反応では、鋳型としてcDNAまたはゲノムDNAのいずれかと共に高変性のオリゴヌクレオチド(下記表を参照)の7種の組み合わせを使用した。ただ1種の組み合わせがフザリウムの43kD相同体の部分クローンを生成しただけである。2つの個別のセットのPCR条件を各オリゴヌクレオチド対について使用した。第一のセットは非常に少ない生成物を調製するが非常に高い特異性をもつように設計した。このセットの28サイクルで各種ファクターが特異性を保持した。65℃のアニーリング温度はこれらのオリゴヌクレオチドにとっては非常に高温であった。この温度のアニーリング時間はほんの30秒間に設定した。反応液100μL当り各変性プライマー混合物20ピコモルを使用した。使用したオリゴヌクレオチドは、「クローニング要素(Cloning element)を含まないデジェネレート(degenarate)領域だけを含み、Amplitaq(商標)(Perkin-Elmer Cetus)1単位を反応液100μL当りに使用し、そしてEDTAを最後の10分間の72℃インキュベーションの終りに反応チューブに加えてPCRサイクル後の低温でのミスマッチプライマーによる伸長を防いだ。第一セットのサイクルの生成物は、高い特異性を確保するのに必要な低い効率の増幅のためにアガロース電気泳動のエチジウムブロマイド染色により可視化されることは期待できないであろう。しかしながら、第二セットの増幅は、第一セットからの生成物を効率よく増幅するように設計された。このことを達成するファクターとしては、アニーリング温度を55℃に低下すること、アニーリング時間を1分まで延長すること、オリゴヌクレオチドの量を反応液100μL当り各混合物を100ピコモルまで増加すること、デジェネレートタンパク質に沿った「プライム(Prime)」クローニング要素を含む別の1組のオリゴヌクレオチド類を使用すること(溶融温度を極端に高める)、および反応液100μL当りAmplitaq(商標)ポリメラーゼを2.5単位使用することが挙げられる。
PCR反応は、Perkin-Elmer Cetusにより推奨されるように行った。マスター混合物を2つのDNA源(ゲノムおよびcDNA)のそれぞれについて作製した。これは、1×PCRの緩衝液(10mM Tris-HCl,pH8.3,50mM KCl,1.5mM MgCl2,0.01%ゼラチン、Perkin-Elmer Cetus),0.2mMのデオキシヌクレオチド(Ultrapure(商標)dNTPの100mM 溶液、Pharmacia),1単位のAmplitaq(商標)ポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus)および反応混合物100μL当り0.5μgのゲノムDNAまたは50ngのcDNAを含んでなり、そして脱イオン水で反応液100μL当り98μLに容量を調節した。ラベルを貼った0.5チューブ(エッペンドルフ)に各オリゴヌクレオチド混合物(下記参照)20ピコモル(20ピコモル/μL濃度の液1μL)を加えた。これらを、0.5mLチューブ中にまた、マスター混合物と軽質硬油とを含め、パーキン・エルマー・シータス(Perkin-Elmer Cetus)サーマルサイクラー(thermocycler)中へ入れた。適当なマスター混合物98μLと軽質硬油55μLをオリゴヌクレオチド類と共に各チューブに加えた。次に、順次段階的なサイクル(パラメーターについては下記チャートを参照のこと)で反応を開始した。最後の72℃インキュベーションの終りに、10mMのEDTA溶液(pH8.0)50μLを各チューブに加え、72℃でさらに5分間インキュベーションした。
43kDの相同体のPCRに使用したオリゴヌクレオチド対の表:


PCRサイクルの第一セット後、イソプロピルアルコール沈殿により反応混合物からDNAを精製し、サイクルの第二セットで使用した。軽質鉱油の大部分を各試料の上部から除いた後、試料を新たなラベルを貼ったチューブに移した。次に、各チューブを等量のPCI(49%フェノール:49%クロロホルム:2%イソアミルアルコール)で、次いで等量のクロロホルムで抽出した。次に、反応液へ7.5Mの酢酸アンモニウム75μL、グリコーゲン1μLおよびイソプロピルアルコール226μLを加えてDNAを沈殿させた。ペレットを脱イオン水20μLに再懸濁した。再懸濁液各2μLをラベルを貼ったチューブに入れ、それぞれ新たなプライマー(上記表参照)100ピコモル(20ピコモル/μL濃度の液5μL)と共に第二回のPCR増幅を行った。マスター混合物は、アレゲノム(Alegenomic)およびcDNA鋳型の除去ならびに反応チューブ中のオリゴヌクレオチドとDNA容量を添加する水の量を減らすことにより増加するように補足したこと以外上記のように調製した。反応とサイクルは上記のように設定した(上記表を参照)。
28サイクルが終了した後、軽質鉱油を試料の上部ら除去し、次いでPCR混合物を新たなチューブに採取した。各試料10μLをパラフィン上にスポットし、約5分間45℃でインキュベーションして、残存する軽質鉱油をパラフィンに吸収させ試料容量を減少させた。次に、これらの液滴を6倍の色素2μLと共に1%アガロースゲル(Seaken GTG(商標)、FMC,Rockland,ME)にのせて電位泳動を行った。鋳型がcDNAであって反応番号2に約550塩基対の単一バンドが見られた。鋳型がゲノムDNAであって反応番号12に約620塩基対のバンドが見られた。これらの反応液をオリゴヌクレオチドZC3486およびZC3561(表1)でプライムした。これは、フミコーラ43kD配列との比較から予期される510塩基対PCR生成物と非常に近似していた。ゲノム鋳型による反応でより大きな生成物が合成されるのは、この領域内にイントロンが存在することによる。これらの2つのバンドを含むアガロースを切り出し、製造業者の説明書に従ってPrep-A-Gene(商標)キット(Bio Rad)を使用することによりDNAを抽出した。DNAは脱イオン水50μLで溶離し、3Mの酢酸ナトリウム、グリコーゲン1μLおよびエタノール140μLで沈殿させた。DNAペレットを乾燥し、TE(10mM Tris-HCl,pH8.0,1mM EDTA)7μLで再懸濁させた。
pBSsk-′ベクターにクローニングしたPCRフラグメントを、最初にEco RIと共にpBluescript II sk-(Stratagene,La Jolla,CA)で消化して調製し、次いで切断プラスミドを0.8%のseaplaque GTG(商標)アガロース(FMC)からPre-A-Gene(商標)キット(Bio Rad)を使用し、製造業元の指示に沿って精製した。オリゴヌクレオチドZC1773およびZC1774(表1)を、パーキン・エルマーシータス(Perkin-Elmer Cetus)PCRサーマルサイクラーにより各オリゴヌクレオチド2ピロモルずつ混合し、アニーリング緩衝液(200mM Tris-HCl,pH7.6,50mM MgCl2)0.5μLを加えた脱イオン水で反応液量を4μLまで増量し、次いで30秒間65℃の温度に保持しそして20分かけてゆっくり20℃まで冷却することによってアニーリングした。次に、これらのオリゴヌクレオチドをEco RI消化pBluescoriptベクターへ次のようにして連結した。脱イオン水5.5μL、アニーリングされたオリゴヌクレオチド2μL、消化されたベクターの脱イオン水による1:3希釈物1μL,10×T4 DNAリガーゼ緩衝液(Boehringer-Mannheim Biochemicals,Indianapolis IN)1μLおよびT4 DNAリガーゼ(Gibco-BRL)0.5μlを混合し、次いで2.5時間16℃で混合物をインキュベーションした。次に、連結混合物を脱イオン水で100μLの容量に調節し、次いでPCIおよびクロロホルムで抽出した。電気穿孔法の(エレクトロポレーション)の効率を高めるために、次に、酢酸アンモニウム50μL、グリコーゲン1μLおよびイソプロパノール151μLでDNAを沈殿させた。バイオラッド(Bio-Rad)電気穿孔法装置により、製造業元の指示に従って、脱イオン水による再懸濁液10μLの1μLのイ・コリー(E.coli)DH10-Bエレクトロマックス(electromax)細胞(Gibco-BRL)中へ電気穿孔法を実施した。電気穿孔法の直後に、キュベットへ2×YTブロス(1リットル当り:トリプトン16g、酵母エキス10g、NaCl 10g)1mLを加えて混合した。各種希釈物を、100μg/mLのアミピシリンを含み、ジメチルホルムアミド中20mg/mLのX-Gal(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-6-D-ガラクトロピラノシド、Sigma,st.Louis,MO)100μLと1MのIPTG(Sigma)20μLを塗布した100mmのLBプレート(1リットル当り:トリプトン10g、酵母エキス8g、NaCl 5g、寒天14.5g)上へのせた。1夜生育後、上記バクテリアプラークについて上述する条件に従って、オリゴヌクレオチドZC3424(ブルースクリプトリバースプライマー)およびZC3425(T7プロモータープライマー)(表1)を使用する小さなインサートについてのPCRにより各種青色コロニーと白色コロニーを解析した。最初に1分45秒94℃で変性後、45秒間94℃、30秒40℃および1分間72℃を30サイクル行った。PCR生成物のアガロースゲル電気泳動により、pBluescript クローニング領域中に小さなインサートを含むPCRバンドを与える1つの青色コロニーを、150μg/mLのアンピシリンを含むTB(1リットル当り:トリプトン12g、酵母エキス24g、グリセロール4mLをオートクレーブした後、0.17M KH2PO4,0.72MK2HPO4 100mLを加えた。Sambrockら、Molecular Cloning、第2版、1989,A.2)の液体培地100mL中で1夜生育した。配列分析は正しくオリゴヌクレオチドが挿入されたことを示すが、プロモーターのフレームのpBluescriptベクター中に存在するβ-ガラクトシダーゼ遺伝子は保持されたままであった。DNA調製物の50μgをEco RIで消化し、PCIとクロロホルムで抽出し、次いで酢酸ナトリウムとエタノールで沈殿させた。DNAペレットを脱イオン水50μLに再懸濁した。消化されたpBS sk-′を、10×T4 DNAポリメラーゼ緩衝液〔0.33M Tris/酢酸、pH8.0,0.66M 酢酸カリウム、0.1M酢酸マグネシウム、5mMジチオスレイトール、5mM BSA(New England Biolabs)〕40μL、脱イオン水260μL、1mMのdTTP(Ultrapure (商標)、Pharmacia)40μLおよびT4 DNAポリメラーゼ(1U/μL)(Gibco-BRL)40μLを1mg/mLのベクターDNAに加えることによりカットバックした。混合物を15分間12℃でインキュベーションし、次いで10分間70℃でインキュベーションした。連結に使用するDNAを調製するために、PCIとクロロホルムで抽出し、次いで酢酸ナトリウムとエタノールで沈殿させた。ペレットを脱イオン水200μLに再懸濁し、濃度0.1μg/μLとした。上記カットバックpBS sk-′ベクターへの挿入用43kD相同的PCR生成物を調製するために、dTTPの代りにdATPを含めた10μL容量の反応液中でT4 DNAポリメラーゼ(Gibco-BRL)によりそれらをカットバックした。得られたDNA溶液をPCIとクロロホルムで抽出し、次いで酢酸ナトリウム、グリコーゲンおよびエタノールによって沈殿した。DNAペレットを脱イオン水10μLに再懸濁した。DNA試料7.5μLを、10×リガーゼ緩衝液(Boehringer-Mannheim)1μLおよびT4 DNAリガーゼ(Boehringer-Mannheim)0.5μLで0.1μgのカットバックpBS sk-′(0.1μg/μL)に連結した。次に、この連結反応混合物を脱イオン水で150μL容量まで増量し、次いでPCIとクロロホルムで抽出した。電気穿孔法の効率を高めるために、次に、酢酸ナトリウム15μL、グリコーゲン1μLおよびイソプロパノール166μLでDNAを沈殿させた。脱イオン水再懸濁液10μLのうち1μLを、製造元の指示に従ってBio-Rad電気穿孔法装置によりイ・コリーDH10-Bエレクトロマックス細胞(BRL)中に電気穿孔した。電気穿孔法の直後、SOBブロス(1リットル当り:トリプトン20g、酵母エキス5g、1M NaCl 10mL、1M KCl 2.5mLをオートクレーブした後、1M MgCl2 10mLと1M MgSO4 10mLを加えた)をキュベットに加え、次いで細胞混合物を100mlチューブに移し、好気下で1時間37℃にてインキュベーションした。各種希釈物を、アンピシリン100μg/mLを含み、ジメチルホルムアミド中20mg/mLのX-Gal(Sigma)と1MのIPTG(Sigma)を塗布した100mmのLBプレート上にのせた。2種の形質転換(cDNAとゲノム)のそれぞれ3個の白色コロニーを採取し、配列決定した。配列分析は、インサートがフミコーラの43kDセルラーゼと高度に相同性であることを示した。ゲノムのインサートは、イントロンの存在を除きcDNAと同一であった。2つの42merオリゴヌクレオチドZC3709およびZC3710(表1)は、ライブラリープローブおよびPCRプライマーと使用する配列から設計した。これらのオリゴヌクレオチドはPCR生成物の逆の末端に由来し、DNAの対向する鎖にハイブリッドするように設計されているので、それらはライブラリーのスクリーニングの際に可能性のあるクローンを試験するためのPCR反応のプライマーとして使用できる。
フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)cDNAライブラリーの構築
フザリウム オキシスポラムを発酵によって生育し、いろいろな時間に試料を採取してRNAを抽出し、セルラーゼ活性を分析した。活性の分析には、総セルラーゼ活性のアッセイと色澄明化のアッセイを含む。最高の色澄明化を示すフザリウム オキシスポラム試料は、ポリ(A)+RNAが単離された全体のRNAから抽出された。
フザリウム オキシスポラムのcDNAライブラリーを構築するために、第一鎖cDNAを2種の反応液(一つは放射能標識したdATPで、他の一つは放射能標識しないdATP)で合成した。2.5×反応混合物を、以下の試薬を次の順序で混合することにより室温で調製した。5×の逆転写酵素緩衝液(Gibco-BRL,Gaithersburg,Maryland)10μL、200mMのジチオスレイトール(-70℃で保蔵された原液由来または新たに調製)2.5μLおよび各オリゴヌクレオチドチド三リン酸(dATP,dGTP,dTTPおよび5-メチルdCTP,Pharmacia LKB Biotechnology,Alamada,CA.から得た)10mMを含む混合物2.5μL。反応混合物を2つのチューブに7.5μLずつ分注した。10μCi/μLの32Pα-dATP(Amersham,Arlington Heights,IL)1.3μLを一つのチューブに加え、もう一方のチューブには水1.3μLを加えた。各混合物の7μLを最終反応チューブに移した。それぞれのチューブで、5mMのTris-HCl(pH7.4)および50μMのEDTA 14μL中フザリウム オキシスポラムのポリ(A)+RNA5μgを、1μg/μLの第一鎖プライマー(ZC2938:GACAGAGCACAGAATTCACTAGTGAGCTCT15)2μLと混合した。このRNAプライマー混合物を4分間65℃に加熱し、氷水で冷却し、次いで微量遠心管で短時間遠心した。RNAプライマー混合物8μLを最終反応チューブに加えた。200U/μLのSuperscript(商標)逆転写酵素(Gibco-BRL)5μLを各チューブに加えた。ゆるやかに撹拌した後、チューブを30分間45℃でインキュベーションした。10mMのTris-HCl(pH7.4),1mMのEDTA 80μLを各チューブに加え、試料を回転させて、簡単に遠心した。各チューブから3μLを採取し、TCA沈殿により取り込まれたカウントと反応液中の総カウントを測定した。各チューブからの試料2μLをゲル電気泳動で分析した。各試料の残りを、オイスターグリコーゲンの存在下でエタノール沈殿処理した。核酸を遠心によりペレット化し、次いでこれらのペレットを80%エタノールで洗浄した。エタノール洗浄後、試料を10分間通気乾燥した。第一鎖の合成は、ポリ(A)+RNAからDNAの転換率33%に相当するフザリウムオキシスポラムcDNA 1.6μgを与えた。
第二鎖の合成は、ヘアピンDNAをもたらす第二鎖合成の第一鎖プライミングを促進する条件下で第一鎖反応液由来のRNA-DNAハイブリダイゼーションによって行った。2つの第一鎖反応液のれぞれに由来する第一鎖生成物を、水71μLに再懸濁した。次の試薬、5×第二鎖緩衝液(100mM Tris,pH7.4,450mM KCl,23mM MgCl2および50mM(NH4)2SO4)20μL,5mM β-NAD 3μLおよび各10mMのデオキシヌクレオチド三リン酸混合物5μLを、室温で上記反応チューブに添加した。α-32PdATP 1μLを、第一鎖合成用の末標識dATPを含む反応混合物に加え、一方、一鎖合成用の標識dATPを含むチューブには水1μLを含めた。次に、各チューブに、7U/μLのイ・コリーDNAリガーゼ(Boehringer-Mannheim,Indianapolis,IN)0.6μL、8U/μLのイ・コリーDNAポリメラーゼI(Amersham)3.1μLおよび2U/μLのRNase H(Gibco-BRL)を加えた。反応液を2時間16℃でインキュベーションした。インキュベーション後、各反応液由来の2μLを使用してTCA沈殿性カウントと反応液の総カウントを測定し、次いで各反応液由来の2μLをゲル電気泳動により分析した。各試料の残りに、2.5μg/μLのオイスターグリコーゲン2μL、0.5mMのEDTA 5μLおよび10mMのTris-HCl(pH7.4)、1mMのEDTA 200μLを加えた。試料をフェノール-クロロホルムで抽出し、次いでイソプロパノール沈殿させた。遠心後、ペレットを80%エタノール100μLで洗浄し、通気乾燥した。反応の各々によって得られた二本鎖cDNAは、約2.5μgであった。
ムングビーン(mung been)ヌクレアーゼ処理によりヘアピンの一本鎖DNAを切り取った。各cDNAペレットを水15μLに再懸濁し、次いで各チューブに10×ムングビーン緩衝液(0.3M酢酸ナトリウム、pH4.6、3M NaClおよび10mM ZnSO4) 2.5μL 10mMのDTT2.5μL、50%のグリセロール2.5μLおよび10U/μLのムングビーンヌクレアーゼ(New England Biolabs,Beverly,MA)2.5μLを加えた。反応液を30分間30℃でインキュベーションし、各チューブに10mMのTris-HCl(pH7.4)および1mM EDTA 75μLを加えた。2μLのアリコートをアルカリ性アガロースゲル分析により分析した。1MのTris-HCl(pH7.4)100μLを各チューブに加え、試料をフェノール-クロロホルムで2度抽出した。DNAをイソプロパノールで沈殿させ、次いで遠心によりペレット化した。遠心後、DNAのペレットを80%エタノールで洗浄し、通気乾燥した。2つの反応のそれぞれからのDNAの収量は、約2μgであった。
このcDNAの末端をT4 DNAポリメラーゼで処理して平滑にした。水24μLの合計容量で2つの試料に由来するDNAを再懸濁した後、合わせた。このDNAに、10×T4緩衝液(330mM Tris-酢酸塩、pH7.9、670mM KAc、100mM MgAcおよび1mg/mLのゼラチン)4μL、1mMのdNTP 4μL、50mMのDTT 4μLおよび1U/μLのT4DNAポリメラーゼ(Boehringer-Mannheim)4μLを加えた。これらの試料を1時間15℃でインキュベーションした。インキュベーション後、10mMのTris-HCl(pH7.4)および1mMのEDTA 160μLを加え、次いで試料をフェノール-クロロホルムで抽出した。DNAをイソプロパノールで沈殿させ、次いで遠心によりペレット化した。遠心後、DNAを80%エタノールで洗浄し、次いで通気乾燥した。
このDNAを水6.5μLで再懸後、Eco RIアダプターを平滑化されたDNAに付加した。このDNAに、1μg/μLのEco RIアダプター(Invitrogen,San Diego,CAカタログ#409-20)1μL、10×リガーゼ緩衝液(0.5M Tris,pH7.8および50mM MgCl2)1μL、10mMのATP0.5μL、100mMのDTT 0.5μLおよび1U/μLのT4 DNAリガーゼ(Boehringer-Mannheim)1μLを加えた。この試料を室温で1夜インキュベーションした後、リガーゼを15分間65℃で変性した。
第一鎖プライマーによってコードされたSsIクローニング部位を、SsIエンドヌクレアーゼで消化することにより露出させた。このDNAに水33μL、10×Ss I緩衝液(0.5M Tris,pH8.0,1M MgCl2および0.5M NaCl)5μLおよび5U/μLのSsI 2μLを加え、この試料を2時間37℃でインキュベーションした。10mMのTris-HCl(pH7.4)および1mMのEDTA 150μLを加え、試料をフェノール-クロロホルムで抽出し、次いでDNAをイソプロパノールで沈殿させた。
cDNAをセファロースCL2B(Pharmacia LKB Biotechnology)カラムでクロマト処理してcDNAのサイズを選択し、そしてアダプターを含まないものを除去した。セファロースCL2Bカラム1.1mLを1mLのプラスチック使い捨てピペットに流し込み、そのカラムを50倍カラム容量の緩衝液(10mL Tris,pH7.4および1mM EDTA)で洗浄した。試料をのせ、1滴ずつ画分を集め、ポイド容積中のDNAを集めた。画分したDNAをイソプロパノールで沈殿させた。遠心後、DNAを80%エタノールで洗浄し、次いで通気乾燥した。
フザリウム オキシスポラムのcDNAライブラリーを、Eco RIおよびSst Iで消化したベクターpYcDE8′(国際公開第WO90/10698号参照)にそのcDNAを連結することにより樹立した。10×リガーゼ緩衝液8μL、10mMのATP 4μL、200mMのDTT 4μLおよび1単位のT4 DNAリガーゼ(Boehringer-Mannheim)を含むリゲーション反応溶液8μL中、cDNA 400ngに390ngのベクターを連結した。室温で1夜インキュベーション後、オイスターグリコーゲン5μgおよび10mMのTris-HClおよび1mMのEDTA 120μgを加え、試料をフェノール-クロロホルムで抽出した。DNAをエタノールで沈殿させ、DNAペレットを80%エタノールで洗浄した。通気乾燥後、DNAを水3μLに再懸濁した。電気穿孔法成分DH10B細胞(Gibco-BRL)37μLを上記DNAに加え、Bio-Rad Gene Pulser(Model #1652076)およびBio-Rad Pulse Controller(Model #1652098)エレクトロポレーションニット(Bio-Rad Laboratories,Richmond,CA)により電気穿孔法を完了した。SOC(Hanahan,J.Mol.Biol.166(1983),557〜580)の4mLをエレクトロポレーション処理した細胞に加え、次いで細胞懸濁液400μLを10枚の150mm LBアンピシリンプレートの各々に広げた。1夜インキュベーション後、LBamp培地10mLを各プレートに加え、細胞を培地から採取した。グリセロール原液とプラスミド調製物を各プレートから作製した。ライブラリーのバックグランド(インサートを含まないベクター)を、インサートを伴わないベクターの連結と電気穿孔法後の数個のクローンの力価測定によって約1%において樹立した。
43kD相同体の完全鎖長cDNAクローンを単離するため、1,100,000コロニーのライブラリーを100μg/mLのアンピシリンを含む150mmのLBプレート上にまいた。各10枚のプレート上にグリセロール原液由来の100,000コロニーをまき、そして各5枚のプレート上に20,000コロニーをまいた。上記のように釣菌を2度行った。予備ハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションおよび洗浄も上記のように実施した。ハイブリダイゼーションでは、2つの末端が標識された42merのオリゴヌクレオチド類、ZC3709およびZC3710(43kd相同体に特異性である)を使用した。フィルターは、77℃でTMACLにより20分間1度洗浄した。複写フィルター上に現われる22個のスポットが観察された。プレートの対応する領域をピペットの大きい端を使用してそぎ取り、1×PCR緩衝液に入れた。単離されたこれらを、各単離物に対して2セットのオリゴヌクレオチドを使用してPCR分析した。2種の43kD特異性オリゴヌクレオチドを含む一つのセットを、ハイブリダイゼーションプローブとして使用し、そしてもう一つのものは、一つの43kD特異性オリゴヌクレオチド(ZC3709)と一つのベクター特異性オリゴヌクレオチド(ZC3634)を含む。PCRは、パーキンエルマーシータスの指示に従って上記のように行った。各プライマー20ピコモルと細胞懸濁液5μLを、50μLの各反応液中で使用した。94℃における1分30秒の最初の変性後、94℃1分と72℃2分の30サイクルを使用し、最後の伸長は72℃で10分の時間とした。結果は22個のうち17が上記2つの43kD特異性オリゴヌクレオチド認識部位を含むことを示した。残りの5つのクローンは、上記2つの部位の一つ(ZC3709)を含むが、ベクター特異性プライマーを使用するPCRにより切り縮められそして十分な長さでないので他の部位を含まないことが明らかにされた。9種の最も長いクローンをスクリーニングの別のレベルで単一コロニーを単離目的で選んだ。各5つの10倍希釈物を、第一セットのリフト(lift)について上記したような操作でまいた。9種のすべてが二次レベルのスクリーニングのオートラジオグラフ上にシグナルを示した。コロニーは非常に密集していたので、放射能シグナルの領域内の数個の分離したコロニーを単一コロニーとして70μg/mLのアンピシリンを含む150mm LBプレート上で単離した。コロニーをつまようじでそぎ取りマスター混合物25μLに入れたこと以外第一レベルのスクリーニングについて記載したようにオリゴヌクレオチドZC3709およびZC3710を使用するPCRによって〜43kDエンドグルカナーゼに対する相同性を試験した。9個のクローンのうち7個について予期したサイズのバンドが得られた。これらの培養を150μg/mLのアンピシリンを含むテリフィック ブロス(Terrific Broth)20mLで開始した。DNAを、上記のようなアルカリ溶菌およびPEG沈殿によって単離した。
DNA配列分析
これらのcDNAを、酵母発現ベクターpYCDE8′により配列決定した。New England Nuclearからの35-SdATP(M.D.Bigginら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80,1983,3963〜3965ページ、参照)を使用するジデオキシチェインターミネーション法(F.Sangerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74,1977,5463〜5467ページ)を、すべての配列決定反応に使用した。これらの反応は、Pharmaciaからの変性t7DNAポリメラーゼ(S.TaborおよびC.C.Richardson,Proc.Natl.Acadd.Sci.USA 84,1987,4767〜4771ページ、参照)で触媒され、そしてADH1プロモーター(ZC996:ATT GTT CTC GTT CCC TTT CTT)に相補的なオリゴヌクレオチド、CYC1ターミネーター(ZC3635:TGT ACG CAT CTA ACA TTA)に相補的なオリゴヌクレオチドまたは目的のDNAに相補的なオリゴヌクレオチドによりプライムされた。二本鎖鋳型はNaOHで変性(E.Y.ChenおよびP.H.Seeburg,DNA 4,1985,165〜170ページ)した後、配列決定用オリゴヌクレオチドとハイブリダイゼーションさた。オリゴヌクレオチド類は、Applied Biosystems Model 380A DNA シンセサイザーにより合成した。配列決定反応に使用したオリゴヌクレオチド類を下記シーケンシングオリゴヌクレオチド表に列挙する。


例4
色澄明化試験
フミコーラ(Humicola)〜43kDエンドグルカナーゼ(30の精製実施物の混合物)を、色澄明試験について米国特許第4,435,307号の実施例6に記載のフミコーラ インソレンス(Humicola insolens)セルラーゼ調製物と比較した。
試験材料として、使い古した黒色綿スワッチを使用した。澄明試験は、3回反復洗浄するターゴトメーターで行った。各洗濯の間にスワッチを1度乾燥した。
条件:
30分間40℃で2g/Lの液体洗剤および水の硬度9°dH。スワッチの大きさは10×15cmであり、各ビーカー中に2枚のワッチを入れる。
洗剤の組成は次のとおりである。
アニオン界面活性剤(Nansa 1169/p) 10%
非イオン界面活性剤(Berol 160) 15%
エタノール 10%
トリエタノールアミン 5%
水 60%
(塩酸でpHを8.0に調節した)。
用量:
2種の酵素を63および125CMCエンドアーゼ単位/Lで使用した。
結果:
結果は、1〜7点の範囲でスワッチを評価する22人のパネラーによって評価された。より高い点数はより良い澄明化が得られたものである。

本発明の〜43kDエンドグルカナーゼは、従来技術のフミコーラ インソレンス(H.insolens)より約30倍優れた性能を示し、そして国際公開第WO89/09259号に従うセルラーゼ調製物より約6倍優れた性能を示すことがわかる。
例5
プロテアーゼの存在下でのフミコーラ(Humicola)〜43kDエンドグルカナーゼの安定性
異なるプロテアーゼが存在する液体洗剤中の本発明の〜43kDエンドグルカナーゼの貯蔵安定性を、以下の条件下で測定した。
酵素
本発明の〜43kDエンドグルカナーゼ
Glu/Asp特異性バチルス リケニフォルミス(B.licheniformis)セリンプロテアーゼ
トリプシン様フザリウムエスピー(Fusarium sp.)DSM2672 プロテアーゼ
バチルス レンタス(B.lentus)セリンプロテアーゼSubtilisin Novo
洗剤
乳白剤、香料または酵素(実験で添加されるもの以外)のどれも含まれていない米国で市販されている液体洗剤。酵素安定剤として+1-1%(重量/重量)のホウ酸。
用量
エンドグルカナーゼ:洗剤1g当り12CMCU
プロテアーゼ:洗剤1g当り0.2mg
インキュベーション
35℃で7日
残存活性
相当するプロテアーゼと共にインキュベーション7日後のエンドグルカナーゼ残存活性は、そのCMCアーゼ活性(CMCU)で測定した。CMCアーゼ活性は次のように測定した。
脱イオン水中30g/LのCMC(Hercules 7LFD)基質溶液を調製した。測定すべき酵素試料を0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.5)に溶解した。酵素液1.0mLと0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.5)2.0mLを試験管中で混合し、酵素反応はその試験管に基質溶液1.0mLを加えることにより開始した。混合液を20分間40℃でインキュベーションし、その後反応を0.125Mのリン酸三ナトリウム・12H2O 2.0mL添加するすることにより停止した。ブライド試料はインキュベーションすることなく調製した。
フェリシアニド溶液(脱イオン水1L中フェリシアン化ナトリウム1.60gおよびリン酸三ナトリウム・12H2O 14.0g)2.0mLを試験試料ならびにブラインド試料に加え、直ちに沸騰水に浸した後10分間インキュベーションした。インキュベーション後、試料を水道水で冷却した。420nmで吸光度を測定し、標準曲線はグルコース溶液で作成した。
1 CMCアーゼ単位(CMCU)は、上記に特定される条件下で、1分間にグルコース1マイクロモルに相当する量の還元糖を生成する酵素量として定義されている。
結果
本発明のエンドグルカナーゼの貯蔵安定性は、上記条件下でその残存活性(CMCU%として)として測定された。

これらの結果は、Savinaseより高度の特異性をもつプロテアーゼが洗剤組成物に含められた場合に、本発明のエンドグルカナーゼの液体洗剤中での貯蔵安定性が改善されることを示す。
例6
デニム織物の色の局所的な変化を付与するためのフミコーラ〜43kDエンドグルカナーゼの使用
「ストーンウォッシュ」の外観に近似するジーンズの表面の色に局所的な変化を付与するために、12kgの「ウォッシュコーター(Wascator)」FL120洗濯物抽出機中でデニムジーンズを〜43kDエンドグルカナーゼ処理にかけた。
機械負荷量当り4本のジーンズを使用した。実験条件は以下のとおりであった。
糊抜き
40Lの水
100mLのB. amyloliquefaciensアミラーゼ*,120L
70gのKH2PO4
30gのNa2HPO4
55℃
10分
pH6.8
*Novo Nordisk A/Sより入手可
糊抜きの後排水した。
摩耗
40Lの水
120gのH. insolensセルラーゼ混合物または×gの〜43kDエンドグルカナーゼ
70gのKH2PO4
30gのNa2HPO4
55℃
75分
pH6.6
摩耗処理後、排水、すすぎ、後洗濯およびすすぎを行った。結果は、ジーンズの視覚的外観を判断することにより評価した。
各種用量の〜43kDエンドグルカナーゼを使用してフミコーラインソレンス(H.insolens)セルラーゼ混合物120gによって得られるのと等価の摩耗レベルを得た。この等価のレベルは、〜43kDエンドグルカナーゼ1.0〜1.25gで得られた。処理被服の引裂強さの測定値は、両酵素処理間で有意差が示されなかった。
例7
織物表面の毛羽の除去へのフミコーラ(Humicola)〜43kDエンドグルカナーゼの使用
新しい織物に対して高度の柔軟性を付与する酵素の効力を検査するために、12kgの「ウォッシュコーター」FL120洗濯抽出機中で綿100%の織物を〜43kDエンドグルカナーゼで処理した。
実験条件は次のとおりであった。
織物
綿100%の織物は、Nordisk Textilより漂白済み(NT2116-b)または未漂白(NT2116-ub)のものを入手した。織物400gを機械負荷量当り使用した。
糊抜き
40Lの水
200mLのB. amyloliquefaciensアミラーゼ,120L
60gのKH2PO4
20gのNa2HPO4
60℃
10分
pH6.4
糊抜き処理後、排水した。
主洗濯
40Lの水
0-600gのH. insolensセルラーゼ調製物または×gの〜43kDエンドグルカナーゼ
60gのKH2PO4
40gのNa2HPO4
60℃
60分
pH6.7
摩耗処理後排水した。
後洗濯
40Lの水
40gのNa2CO3
10gのBerol 08
80℃
15分
pH10.1
後洗濯後排水した。
〜43kDエンドグルカナーゼを3段階の濃度で主洗濯で使用した。
織物試料の重量減小を処理前後に測定した。重量減小を%で表示し、そして糊抜された織物と比較した。
織物の厚さを、厚さ測定器L&W、タイプ22/1によって測定した。織物のスワッチ(10×6cm)2枚を測定し、μmによる5箇所の測定値を各スワッチについて記録した。スワッチは、98.07kPaの加圧下で測定された。保持された厚さを%で表示し、糊抜き織物と比較した。
織物の強度は、引裂試験機(Elemendorf 09)によって測定した。6枚のスワッチ(10×6cm)をたて方向に切断し、そして6枚のスワッチ(10×6cm)をよこ方向に切断した。引裂強さは、ASTM D1424に従いmNで測定した。酵素処理織物の織物強度は、糊抜き織物との比較において%で表示される。
織物の剛性は、キングファブリックスティフネステスター(King Fabric Stiffness Tester)で測定した。4枚のスワッチ(10×20cm;たて方向に10cm)を織物から切り取り、各スワッチを裏返しに折り重(10×10cm)、そして中央に開口リングを備えたテーブル上に置いた。織物を、グラムで教示される一定の力のピストンでリングを介して押した。ASTM D4032円形折り曲げ試験法(Circular Bend Test Method)に従い測定を行った。保持織物曲げ剛性は、糊抜きされた織物と比較において%で表示される。
これらの試験の結果は、次の表に示される。

例8
紙パルプの処理へのフミコーラ(Humicola)〜43kDエンドグルカナーゼの使用
パルプ排液に対する酵母の効果を検査するために、各種タイプの紙パルプの処理に〜43kDエンドグルカナーゼを使用した。
実験条件は次のとおりであった。
パルプ
1.回収紙混合物:新聞紙33%、雑誌33%およびコンピューター用紙33%からなる。脱インク薬品の使用または不使用(それぞれ、WPCまたはWP)。
2.再循環ボール箱(RCC)。
3.漂白クラフトパルプ:マツ製(BK)。
4.未漂白熱砕木パルプ:モミ製(TMP)。
セルラーゼ活性(CEVU)の測定
トリス(Tris)緩衝液(pH9.0)中33.3g/LのCMC(Hercules 7LFD)含有基質溶液を調製した。測定すべき酵素試料を上記緩衝液に溶解した。基質溶液10mLと酵素溶液0.5mLを混合し、40℃に温度調節された粘度計(Haake VT181,NV sensor,181rpm)に移した。1セルラーゼ粘度単位(CEVU)は、ノボノルディスクアナリティカルメソッド(Novo Nordisk Analytical Method)No.AF253(ノボノルディスクより入手可)により定義される。
パルプ排液の測定(ショッパー・リーグラー)
ショッパー・リーグラー(Schopper-Riegler)(SR)数は、2g/Lの粘度をもつ均質パルプに対するISOスタンダード5267(パート1)に従って測定した。既知量のパルプを金属製の篩を通して漏斗中へ流した。この漏斗には、軸方向の孔と横方向の孔が設けられている。横方向の孔を通過する濾液量をショッパー・リーグラー単位が目盛られた容器で測定する。
酵素処理
〜43kDエンドグルカナーゼ調製物を7CEVU/mLに希釈し、上記パルプ(50gDS、粘度3%)に加えた。酵素用量は、乾燥パルプ1kg当り2400CEVUであった。酵素処理は、60分間ゆるやかに撹拌しながらpH7.5および40℃で行った。試料を30分間後に採取して反応の進行をモニターした。60分後、反応を停止するためにパルプを冷水(+4℃)で粘度0.5%に希釈した。
湿潤パルプの排液を上記のように測定し、ショッパー・リーグラー(SR)値を求めた。減圧下での排液時間も測定した。
結果を下記表にまとめる。



上記表から、〜43kDエンドグルカナーゼ処理は、製紙で使用されるパルプのSR値の著しい低下をもたらし、そして排液が有意に改善されることを示す。
ラピッド カーテン(Rapid Kothen)装置により各種パルプから紙シートを作製し、各種パラメーター(破壊長を含む)に関する強度を測定した。酵素の作用に起因する強度特性の低下はみられなかった。










 
訂正の要旨 訂正の要旨
審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2002-03-01 
結審通知日 2002-03-06 
審決日 2002-03-19 
出願番号 特願平3-509707
審決分類 P 1 112・ 531- YA (C12N)
P 1 112・ 121- YA (C12N)
P 1 112・ 113- YA (C12N)
P 1 112・ 534- YA (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小暮 道明光本 美奈子坂崎 恵美子  
特許庁審判長 徳廣 正道
特許庁審判官 佐伯 裕子
眞壽田 順啓
登録日 2000-09-14 
登録番号 特許第3110452号(P3110452)
発明の名称 エンドグルカナーゼ酵素を含んでなるセルラーゼ調製物  
代理人 鶴田 準一  
代理人 小林 純子  
代理人 岩出 昌利  
代理人 西山 雅也  
代理人 樋口 外治  
代理人 石井 貞次  
代理人 小林 純子  
代理人 平木 祐輔  
代理人 石田 敬  
代理人 鶴田 準一  
代理人 岩出 昌利  
代理人 西山 雅也  
代理人 大屋 憲一  
代理人 福本 積  
代理人 石田 敬  
代理人 福本 積  
代理人 樋口 外治  
代理人 日野 あけみ  
代理人 日野 あけみ  

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