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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1075725
審判番号 不服2000-20882  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-04-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-28 
確定日 2003-04-14 
事件の表示 平成 3年特許願第119467号「ラテラルバイポーラトランジスタ」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 4月 2日出願公開、特開平 5- 82529]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年4月23日の出願であって、その請求項1ないし6に係る発明は、平成12年11月2日付け手続補正書及び平成14年12月12日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものと認める。
「SiO2膜とこのSiO2膜上に減圧CVDで形成されたSiN膜との少なくとも2層の膜がベース領域上の絶縁膜になっているラテラルバイポーラトランジスタ。」


2.引用刊行物
これに対して、当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開平2-71524号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、「本発明は半導体装置の製造方法に係り,特に多結晶珪素(ポリSi)セルフアライン型集積回路(IC)の横型pnpトランジスタ(L-pnp Tr)の電流増幅率(hFE)を高くする製造方法に関する。」(第2頁左上欄第7〜10行)こと、「[従来の技術]
第4図(1)〜(3)は従来例によるポリSiセルフアライン型ICのL-pnp Trの製造方法を説明する断面図である。
第4図(1)において,n-Si基板1上の素子分離領域に分離絶縁層2を形成し,基板表面より不純物を導入してp型のエミッタ領域1Eとp型のコレクタ領域1Cを形成する。
ここで,エミッタ領域1Eとコレクタ領域1Cに挟まれたn-Si領域がベース領域となる。
次に,基板上に熱酸化により形成した薄い二酸化珪素(SiO2)層3を介して窒化珪素(Si3N4)層4を成長する。
第4図(2)において,エミッタ領域1Eとコレクタ領域1C上のSiO2層3とSi3N4層4にコンタクト窓を開口する。
次いで,コンタクト窓を覆って基板全面にポリSi層5を成長する。
第4図(3)において,通常のLOCOS工程によりポリSi層5に選択熱酸化を行い,分離絶縁層としてSiO2層5A,5Bを形成する。
次いで,ポリSi層5の結晶粒を成長させて電気抵抗を下げるために〜1100℃,40分程度のアニールを行う。
このアニールにより,エミッタ領域1Eとコレクタ領域1Cはn+型の埋込層18に届くようにする。これは,メモリセルに用いた場合α線耐性を向上するためにエミッタ,コレクタ接合に大容量を付加するために行うものである。」(第2頁左上欄第13行〜同頁左下欄第3行)こと、「次に,n-Si層1に熱酸化により形成した厚さ500Åの薄いSiO2層3を介して厚さ500ÅのSi3N4層4を気相成長する。」(第3頁右下欄第3〜5行)ことが、第1図、第3図、第4図とともに記載されている。

以上の記載から、引用刊行物2には、「SiO2層3とこのSiO2層3上に気相成長で形成されたSi3N4層4と選択熱酸化により形成されたSiO2層5Bがベース領域上に存在している横型pnpトランジスタ(L-pnp Tr)。」が示されている。

また、同様に当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開昭61-214569号公報(以下「引用刊行物3」という。)には、「この発明は、半導体技術に関するもので、たとえば半導体集積回路における横型のバイポーラトランジスタの形成に利用して有効な技術に関する。」(第1頁右下欄第8〜10行)こと、「第1図(A)〜(F)は、本発明をバイポーラ集積回路におけるラテラルトラトランジスタの形成に適用した場合の第1の実施例を製造工程順に示したものである。」(第2頁左下欄第12〜15行)こと、「その後、ホトエッチングにより上記酸化シリコン膜と窒化シリコン膜を部分的に除去し、これをマスクとして基板主面を少し削ってから熱酸化を行なって、比較的厚い素子分離用酸化膜5を形成する。分離用酸化膜形成後、マスクとなった窒化シリコン膜は除去して、第1図(A)の状態となめ。」(第2頁右下欄第8〜14行)こと、「第1図(A)の状態の後は、先ずCVD法(ケミカル・ベイパ・デポジション法)により窒化シリコン膜6を全面的に形成してから、ホトエッチングによりエミッタ領域およびコレクタ領域が形成されるべき部分の窒化シリコン膜6および酸化膜5aを除去して開口部6a,6bを形成し、この窒化シリコン膜6をマスクとして基板主面にSF2イオンを打ち込み高濃度のP+型エミッタ領域7およびコレクタ領域8を形成する。
それから、CVD法等によりノンドープ・ポリシリコン層(多結晶シリコン)を全面的に形成してから、引出し用電極の外端部に相当する部分に選択的にボロンを打ち込む。
・・・ポリシリコンからなる引出し電極9a,9bが形成されて第1図(B)の状態となる。」(第3頁左上欄第1行〜同頁右上欄第12行)こと、「第2図には、第1の実施例に比べてより簡易なプロセスによって形成することができる比較的高性能なラテラルトランジスタの実施例が示されている。
すなわち、この実施例は、N-型エピタキシャル層4からなる素子領域表面の酸化膜5aと窒化シリコン膜6にコンタクト穴6a,6bを形成し、その上にP型不純物がドープされたポリシリコン層からなるエミッタ引出し電極9aとコレクタ引出し電極9bとを形成する。そして、この引出し電極9a,9bからの不純物拡散によって、P型エミッタ領域7とコレクタ領域8とを形成するものである。」(第4頁右上欄第15行〜同頁左下欄第7行)ことが、第1図、第2図とともに記載されている。

また、同様に当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開平1-99243号公報(以下「引用刊行物4」という。)には、「従来技術では、第2図に示す如く、SOGに含有されるシラノール,アルコール等より遊離したOH-等のアニオンがSiO2膜204,202,208中を透過しSi基板201との界面まで到達し、界面状態を変化させチャンネルを形成するため、この領域において、リーク電流が発生し、素子特性を劣化させるという問題点があった。」(第1頁右下欄第12〜19行)こと、「第1図は、本発明の実施例における主要断面図であって、SiO2膜,シリコン窒化膜(以下、SiN膜と略記する。)およびSOG膜の3層より成る層間絶縁膜の構造を示すものである。以下、工程を追って説明していく。すなわち、シリコン酸化膜102上に形成された1層目の配線103上に、CVDによりSiO2膜104を0.5μm形成する。このとき、SiO2膜104は、ノンドープのものでも、あるいはまた、リン,ホウ素等の不純物をドープしたものでも良い。引き続き、前記SiO2膜104上にプラズマCVDによりSiN膜105を形成する。このSiN膜105は、SOG膜106中のアニオン等がSi基板101方向へ浸透していくのを防止し得る最低限度の膜厚で良く、本実施例では0.2μmである。次に、SiN膜105上にSOG膜106を回転塗布及びアニールすることにより形成している。このとき、SOG膜106の膜厚は、段差の下の最も厚い部分で0.4μm、段差の上の最も薄い部分で0.1μmであり、充分な平坦性が達成されている。このように、SiO2膜104とSiN膜105とSOG膜106の3層構造にすることにより、平坦性が充分であり、しかも、SOG膜中のアニオン等が素子特性を劣化させることのない良好な層間絶縁膜が得られている。」(第2頁左上欄第14行〜同頁右上欄最終行)ことが、第1図、第2図とともに記載されている。


3.対比・判断
そこで、本願発明と引用刊行物2に記載された発明とを対比すると、引用刊行物2には、横型pnpトランジスタ(L-pnp Tr)が記載されていて、横型はラテラル型のことであり、また、pnpトランジスタはバイポーラトランジスタであるので、引用刊行物2に記載のトランジスタは、本願発明と同じラテラルバイポーラトランジスタであり、引用刊行物2の「SiO2層3」と「Si3N4層4」は、それぞれ本願発明の「SiO2膜」と「SiN膜」に相当しており、また、引用刊行物2に記載の発明では、選択熱酸化により形成されたSiO2層5BがSi3N4層4に上に存在している3層の膜であるから、本願発明の「少なくとも2層の膜」となっており、また、引用刊行物2の「SiO2層3」と「Si3N4層4」は、ともに絶縁膜であり、ベース領域上に存在しているのであるから、本願発明の「ベース領域上の絶縁膜になっている」部分に相当しているので、
両者は、「SiO2膜とこのSiO2膜上に形成されたSiN膜との少なくとも2層の膜がベース領域上の絶縁膜になっているラテラルバイポーラトランジスタ。」の点で一致しているが、
本願発明が、SiN膜として、減圧CVDで形成されたSiN膜を用いているのに対して、引用刊行物2に記載の発明では、SiN膜として、気相成長で形成されたSiN膜を用いている点で相違している。
しかしながら、引用刊行物2に記載のような気相成長には、その方法として、気相エピタキシャル成長法などと共に、熱CVD法、減圧CVD法、常圧CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等の各種のCVD法が使用されることは、当該技術分野の慣用技術である。
また、引用刊行物3には、SiO2膜上のSiN膜がCVD法により形成されたことが記載されており、引用刊行物4には、SiO2膜上のSiN膜がプラズマCVDではあるが、CVDにより形成されたことが記載されているので、これらの引用刊行物3、4の記載と上記慣用技術とを勘案すると、引用刊行物2に記載の気相成長として、慣用技術であるCVDの内、減圧CVDを採用することは、当業者が適宜選択できた程度のことと認められ、上記相違点は、格別のものではない。

なお、請求人は、平成14年12月12日付けの意見書において、
「この引用文献2(上記引用刊行物2に相当)には、Si3N4層4が気相成長で形成されるとしか記載されていない(第3頁右下欄第5行)。もし、このSi3N4層4がプラズマ気相成長で形成されていれば、このSi3N4層4は減圧気相成長で形成されたSiN膜に比べてHやOHの透過を阻止する能力が低い。しかも、プラズマ気相成長で形成されたSi3N4層は層自体の中にHやOHを含んでいる。
このため、引用文献2のラテラルバイポーラトランジスタでは、SiO2層3とベース領域との界面に外部やSi3N4層4自体からHやOHが供給され易く、その結果、SiO2層3とベース領域との界面にホットキャリアが飛び込んで界面準位が発生し易く、従って、特性が安定しており信頼性も高いとは言い難い。」、
「この引用文献3(上記引用刊行物3に相当)には、窒化シリコン膜6がCVD法で形成されるとしか記載されていない(第3頁左上欄第1〜3行)。もし、この窒化シリコン膜6がプラズマCVD法で形成されていれば、この窒化シリコン膜6は減圧CVD法で形成されたSiN膜に比べてHやOHの透過を阻止する能力が低い。しかも、プラズマCVD法で形成された窒化シリコン膜は膜自体の中にHやOHを含んでいる。
このため、引用文献3のラテラルバイポーラトランジスタでは、酸化膜5aとベース領域との界面に外部や窒化シリコン膜6自体からHやOHが供給され易く、その結果、酸化膜5aとベース領域との界面にホットキャリアが飛び込んで界面準位が発生し易く、従って、特性が安定しており信頼性も高いとは言い難い。」、
「この引用文献4(上記引用刊行物4に相当)には、SiN膜105がプラズマCVDで形成されると記載されており(第2頁右上欄第6〜7行)、このSiN膜105は減圧CVDで形成されたSiN膜に比べてHやOHの透過を阻止する能力が低い。しかも、プラズマCVDで形成されたSiN膜は膜自体の中にHやOHを含んでいる。
このため、引用文献4の半導体装置では、SiO2膜104とSi基板101との界面に外部やSiN膜105自体からHやOHが供給され易く、その結果、SiO2膜104とSi基板101との界面にホットキャリアが飛び込んで界面準位が発生し易く、従って、特性が安定しており信頼性も高いとは言い難い。」
と主張しているが、本願の明細書中には、SiN膜を減圧CVDで形成する際の、減圧CVDの温度や圧力の条件が何ら示されていないので、SiN膜自体の中に含まれるHやOHの量も不明であり、プラズマCVD等の他のCVDにより形成されたSiN膜と、含まれるHやOHの量についての比較をすることができない。したがって、上記の請求人の主張は採用することができない。

そして、本願発明の作用効果も、当業者の予測を越えるものとは認められない。


4.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物2〜4に記載された発明及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-02-19 
結審通知日 2003-02-19 
審決日 2003-03-04 
出願番号 特願平3-119467
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河口 雅英  
特許庁審判長 松本 邦夫
特許庁審判官 朽名 一夫
橋本 武
発明の名称 ラテラルバイポーラトランジスタ  
代理人 土屋 勝  

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