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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1075728 |
審判番号 | 不服2000-18519 |
総通号数 | 42 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-01-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-11-22 |
確定日 | 2003-04-14 |
事件の表示 | 平成3年特許願第292666号「シリコン支持体にpn接合を製造する方法」拒絶査定に対する審判事件[平成7年1月17日出願公開、特開平7-14775]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯および、この出願の発明 本願は、平成3年11月8日(パリ条約による優先権主張1990年11月9日,ドイツ)の出願であって、その請求項1〜6に係る発明は、平成12年8月2日付けの手続補正書により補正された、明細書の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載されたとおりのものである。 そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、 「【請求項1】単結晶シリコン基板上にシリコン層を製造し、その際シリコン基板の部分をエッチング除去し、シリコン層をエッチング停止境界として利用し、まずドーピング濃度CDを有する第1の部分層(21)をドーピング濃度CSを有するシリコン基板(1)上に製造し、その際CDはCSよりも大きく選択し、引き続きドーピング濃度CEを有する少なくとも1つの別の部分層(22)を第1の部分層(21)上にエピタキシャル析出させることにより、シリコン層(2)が少なくとも2つの部分層(21、22)から構成されるシリコン素子を製造する方法において、シリコン層がシリコン基板とは反対のドーピング型を有し、こうして形成されたpn接合が基板のエッチングのためのエッチング停止部として遮断方向に極性化されて利用されることを特徴とする、シリコン素子を製造する方法。」である。 【2】拒絶理由の概要 一方、原審において平成12年5月22日付けで通知された拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の優先権主張日前の昭和61年(1986)5月10日に日本国内において頒布された「特開昭61-91967号公報」(以下、「引用例」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない、というものである。 【3】引用例の記載事項およびその開示内容 【3-1】引用例の記載事項 第1頁左下欄第5行〜同欄第10行に、 (引a)「半導体基体の一部に、その基体の裏面をエッチングすることにより薄膜部が形成され、・・・上記薄膜部の反対主面には不純物濃度勾配を有する高濃度半導体層が形成されている圧力感知素子」と記載され、 第3頁右上欄第9,10行に、 (引b)「厚さ400μm程度の低不純物濃度p型単結晶Si基板(ウエハ)6を用意する。」と記載され、 第3頁右上欄第16行〜同頁左下欄第3行に、 (引c)「次に、圧力センサの薄膜部の厚さを高精度に得るための重要なstepが達成される。エッチングストッパーとしての高濃度不純物半導体領域を得るために、・・・不純物を導入するためのSb(アンチモン)等のn型不純物をpredeposition又はイオン打込みにより基板表面に導入する。」と記載され、 第3頁右下欄第5行〜同欄第15行に、 (引d)「基板6の表面に厚さ25〜30μmの低濃度n型Si層8をエピタキシャル成長によって形成する。・・・このエピタキシャル成長の間、上記プレデポジットもしくはイオン打込みされたSbは、基板6およびSi層8内へdrive-in拡散され、不純物濃度勾配をもつ厚さ2μmの高濃度n型埋込層9(ピーク値:約1019atoms/cm3)が得られる。」と記載され、 第4頁左下欄第16行〜同頁右下欄第1行に、 (引e)「p型基板6の裏面((100)面)にホトレジストマスク14を設けてKOH等のアルカリエッチ液を使用する異方性エッチを行なうことにより第7図に示すように深い凹陥部15をあける。この凹陥部のエッチはn+型埋込層9に到達するように行なう。」と記載され、 第4頁右下欄第4行〜同欄第17行に、 (引f)「ところで、不純物のドープされたシリコン結晶基板に対してアルカリエッチを行なった場合に不純物濃度とエッチ速度の関係は第9a図に示すように濃度が低いうちはエッチ速度に変化はないが濃度が1019atoms/cm3に近づくと急速にエッチ速度が低下する。 一方、第7図に示す半導体のX-X’切断部分における不純物濃度分布は第9b図に示される。この図から明らかなように、n+型埋込層9はdrive-in diffusionによって形成されたため、不純物濃度勾配をもっている。このためエッチが高濃度埋込層に到達したところでエッチ速度が減速し、第9c図に示すように、徐々に平坦なエッチ面が形成される。」と記載され、 第5頁左上欄第6行〜同欄第10行に、 (引g)「エッチ速度が自ら制御されることになり基板裏面の異物や汚れ、結晶欠陥等によって生ずる部分的エッチの不均一はなくなり第8図に示すように薄膜部の底面として平坦なエッチ面が得られる。」と記載され、 また、第9b図には、 (引h)「3つの半導体層の不純物濃度」が明示され、 さらに、第8頁左下欄第8行〜同欄第13行に、 (引i)「以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野である圧力感知素子を有する半導体装置の製造法について説明したが、それに限定されるものではない。 たとえば、薄膜部を有する電子装置の薄膜部形成技術に適用できる。」と記載されている。 【3-2】引用例の開示内容 前記(引a)〜(引i)の記載から、引用例には、 (引z)「低不純物濃度p型単結晶Si基板上に高不純物濃度n+型半導体層及び低不純物濃度n型Si層からなるSi半導体層を製造し、その際Si基板の部分をエッチング除去し、高不純物濃度n+型半導体層をエッチングストッパーとして利用し、まず高不純物濃度n+型を有する第1の部分層を低不純物濃度p型を有するSi基板上に製造し、その際n+型の不純物濃度はp型の不純物濃度よりも大きく選択し、引き続き低不純物濃度n型を有する少なくとも1つの別の部分層を第1の部分層上にエピタキシャル成長させることにより、Si半導体層が少なくとも2つの部分層であるn+型半導体層及びn型Si層から構成されるSi薄膜素子を製造する方法において、Si半導体層がSi基板とは反対の不純物ドープ型を有し、こうして形成されたpn接合が基板のエッチングのため、エッチ速度が低下する方向においてp, n+に極化されており、当該pn接合がエッチングストッパーとして利用されることを特徴とする、Si薄膜素子を製造する方法」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 【4】本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比すると、 引用発明の「低不純物濃度p型単結晶Si基板」,「高不純物濃度n+型半導体層及び低不純物濃度n型Si層からなるSi半導体層」,「Si基板」,「高不純物濃度n+型半導体層をエッチングストッパーとして利用し」,「高不純物濃度n+型を有する第1の部分層」,「低不純物濃度p型を有するSi基板」,「その際n+型の不純物濃度はp型の不純物濃度よりも大きく選択し」,「低不純物濃度n型を有する少なくとも1つの別の部分層」,「エピタキシャル成長」,「2つの部分層であるn+型半導体層及びn型Si層」,「Si薄膜素子」,「不純物ドープ型」は、技術的に、それぞれ本願発明の「単結晶シリコン基板」,「シリコン層」,「シリコン基板」,「シリコン層をエッチング停止境界として利用し」,「ドーピング濃度CDを有する第1の部分層」,「ドーピング濃度CSを有するシリコン基板」,「その際CDはCSよりも大きく選択し」,「ドーピング濃度CEを有する少なくとも1つの別の部分層」,「エピタキシャル析出」,「2つの部分層」,「シリコン素子」,「ドーピング型」に相当し、これらは単なる用語上の相違でしかない。 したがって、両者は「単結晶シリコン基板上にシリコン層を製造し、その際シリコン基板の部分をエッチング除去し、シリコン層をエッチング停止境界として利用し、まずドーピング濃度CDを有する第1の部分層をドーピング濃度CSを有するシリコン基板上に製造し、その際CDはCSよりも大きく選択し、引き続きドーピング濃度CEを有する少なくとも1つの別の部分層を第1の部分層上にエピタキシャル析出させることにより、シリコン層が少なくとも2つの部分層から構成されるシリコン素子を製造する方法において、シリコン層がシリコン基板とは反対のドーピング型を有することを特徴とする、シリコン素子を製造する方法」であることで一致する。 一方、本願発明では(本pn)「pn接合が基板のエッチングのためのエッチング停止部として遮断方向に極性化されて利用される」と記載されているのに対して、引用発明では(引pn)「pn接合が基板のエッチングのため、エッチ速度が低下する方向においてp, n+に極化されており、当該pn接合がエッチングストッパーとして利用される」としていることで一応の差異(1)がある。 【5】当審の判断 前記差異(1)について検討すると、 引用発明の(引pn)「pn接合が基板のエッチングのため、エッチ速度が低下する方向においてp, n+に極化されており、当該pn接合がエッチングストッパーとして利用される」という事項は、上記引用例の摘記事項(引b),(引c),(引d),(引f),(引g)からすれば、 (引用解説)「低濃度p型単結晶シリコン基板の表面にn型シリコン薄膜を高精度に形成するため、エッチングストッパーとしての高濃度n型シリコン層を前記低濃度p型単結晶シリコン基板との間でpn接合となるよう設け、このpn接合部に不純物濃度勾配をもたせてエッチング速度を自己制御させることにより、前記低濃度p型単結晶シリコン基板から前記高濃度n型シリコン層への方向にエッチング作用に対する高い抵抗性、すなわち遮断性を発揮するようp,nとして極性化したエッチング停止部となるpn接合を有する」という内容である。 一方、本願明細書には、その段落【0007】,【0010】に、 「薄くした部分の残留厚および均一性の精細度は、そのように位置が安定したpn接合をエッチング停止境界として使用すると著しく改良することができる。」および「この場合本発明にもとづく方法により製造されかつ遮断方向に極性化されたpn接合をエッチング停止境界として利用した。」とのみ記載されているだけである。 してみれば、前記(引用解説)から、引用発明の前記(引pn)の記載は「シリコン基板のエッチングに対して高抵抗方向すなわち遮断方向に極性化されたpn接合をエッチング停止部として利用する」というものであるといえるから、前記差異(1)は単なる表現上の相違でしかない。 したがって、本願発明と引用発明との間には実質上の差異は存在しない。 【6】むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、上記の引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本願は、原審で通知された上記の拒絶理由によって拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-11-20 |
結審通知日 | 2002-11-22 |
審決日 | 2002-12-03 |
出願番号 | 特願平3-292666 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 和瀬田 芳正、池渕 立 |
特許庁審判長 |
朽名 一夫 |
特許庁審判官 |
川真田 秀男 中西 一友 |
発明の名称 | シリコン支持体にpn接合を製造する方法 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | ラインハルト・アインゼル |