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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1075816
審判番号 不服2001-9327  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-06-06 
確定日 2003-04-24 
事件の表示 平成3年特許願第311659号「株価情報通報装置及び無線端末」拒絶査定に対する審判事件[平成5年5月25日出願公開、特開平5-128121]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明
本願は、平成3年10月30日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成13年7月4日付の手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】 情報提供元から送られてくる株価情報データを受信する受信部と、注目銘柄の銘柄コードについての、株価の値上がりと値下がりとでそれぞれの株価変動率を設定すると共に値上がりと値下がりとで異なる周波数の可聴音発生を設定する設定部と、上記受信部で受信した株価情報データを表示する表示部と、上記受信部で受信した銘柄が設定部の注目銘柄であり且つ株価の値上がりと値下がりとでそれぞれの株価変動率を越えたか否かを判定する判定部と、株価変動率を越えた場合、値上がりか値下がりかによって設定部で定めた各々異なる周波数の可聴音を発生する可聴音発生部と、より成ることを特徴とする株価情報通報装置。」

2.引用例に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭58-144965号公報(以下、「引用例1」という。)には、株価表示装置に関して、図面と共に、以下(a)〜(g)の事項が記載されている。
(a)「さらに詳しくは…株価情報…は前記証券取引所より電電公社の通信回線などを介して送出され…端末の株価表示装置にて受信し、現時点における株価情報として表示する場合の表示制御方法と、この表示制御方法を容易に実現するための表示制御装置との改良に関するものである。」(第2頁左上欄第1〜9行)
(b)「本発明は…データの上限値および下限値で規定される指定変動範囲の設定により、データの現在値が指定変動範囲を超えているか否かも判定出来る一覧性表示方法と、この表示方法を容易に実現出来る装置を提供するもので、以下詳細に説明する。」(第2頁右下欄第7〜12行)
(c)「第2図は本発明の一覧性表示方法を容易に実現するための装置で、第1図に示す回路構成のほかに13の比較器を設けるとともに、12は選択銘柄および情報ブック記憶回路7の代りに、さらに各銘柄ごとの指定変動範囲を記憶させてある。14は表示制御回路であるが、第1図の8の機能のほかに前記指定変動範囲との比較結果を表示装置の表示面に特定記号で表示させるものである。この表示制御回路には表示装置がブラウン管表示装置の場合であれば銘柄コードや数値信号から銘柄名称や数字などを表示させるための文字発生回路や、映像信号出力回路などが含まれ…る。」(第3頁左上欄第5〜17行)
(d)「証券取引店などでも…証券取引の対象となった複数銘柄の値動きを監視することが多いので…これらの複数の銘柄を銘柄指定情報入力装置を通して指定し、情報ブックとして選択銘柄および情報ブック記憶装置に記憶しておく。」(第3頁右上欄第16行〜同頁左下欄第4行)
(e)「本発明は…第3図(A)に例示したように各銘柄ごとに売り、または買いの場合の値動きの限度を指定変動範囲として銘柄指定情報入力装置から情報ブックに入力しておく。」(第3頁左下欄第19行〜同頁右下欄第3行)
(f)「表示制御回路では上記の指示を受けて第3図(B)のような表示構成のもとに、同図(C)のように具体的な数値及びウリまたはカイの欄に前記指定変動範囲をプラス方向で超過した銘柄に対しては△、マイナス方向で超過した銘柄に対しては▽、指定変動範囲内および変動範囲を指定しないものに対しては無印の表示を行なう。」(第3頁右下欄第20行〜第4頁左上欄第6行)
(g)「以上のようにして株などの売買において、あらかじめ売、あるいは買を行なう場合の株のプラスあるいはマイナス方向の許容変動範囲を%で指定しておけば、売、あるいは買の適期を自動的に表示されるので、この適期の把握に労力を費す必要がない。」(第4頁左上欄第13〜18行)
上記株価表示装置内部では、上記(c)のように銘柄コードから銘柄名称が発生されるのであるから、銘柄に銘柄コードが対応付けられていることは明らかである。
したがって、以上(a)〜(g)の記載事項及び図面の記載から、引用例1には、
証券取引所から通信回線を介して伝送される株価情報を受信して表示装置9で表示する株価表示装置であって、銘柄に銘柄コードが対応付けられており、使用者が指定する銘柄について、上限値および下限値で規定される株価の指定変動範囲が記憶装置12に設定され、上限値および下限値は百分率で指定されており、受信した株価情報の銘柄が使用者が指定して設定された銘柄であって該銘柄の株価が指定変動範囲の上限値をプラス方向で超過したか否かと下限値をマイナス方向で超過したか否かを判定し、指定変動範囲の上限値をプラス方向で超過したかあるいは下限値をマイナス方向で超過した場合に、上限値をプラス方向で超過したかそれとも下限値をマイナス方向で超過したかを使用者が認知できる態様の特定記号(△、▽)を表示装置9に表示する株価表示装置(以下、「引用例1に記載された発明」という。)
が記載されていると認められる。
同じく引用された特開昭56-168694号公報(以下、「引用例2」という。)には、「本発明は株価情報伝送システムにおける株価通報テレビ装置のように送信側中央装置から一方的に各地に分散配置してある端末(証券会社等の受信装置)に情報が送られそのデータが端末装置で処理され陰極線管(CRT)などのデイスプレー装置に表示されている場合に、そのデータの一部または全部が更新されたことを音声応答で明白に認知できる方式…に関する。」(第1頁右下欄第14行〜第2頁左上欄第5行)、「本発明を実施した株価通報テレビ装置では表示の更新(値動き)に注目していなくても更新銘柄や値動きの状況を音声にて知ることができるため、証券会社等の社員は一般業務に従事しながら、また店頭の顧客も更新銘柄とその値動きを即時に認識することができ、その後はCRT画面で確認することもできる。」(第4頁左上欄第12〜18行)と記載されており、これらの記載事項及び図面の記載から、引用例2には、
株価通報テレビ装置において、株価情報をデイスプレー装置に表示すると共に、表示されるデータの更新を、使用者が表示に注目していなくとも即座に認知できるように、音声で通報すること
が記載されていると認められる。

3.本願発明と引用例1に記載された発明との対比
本願発明(以下、「前者」という。)と引用例1に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、
(イ)後者の「証券取引所」、「株価情報」、「表示装置9」、「使用者が指定する銘柄」、「株価表示装置」は、前者の「情報提供元」、「株価情報データ」、「表示部」、「注目銘柄」、「株価情報通報装置」にそれぞれ相当し、
(ロ)後者が株価情報を受信するのに、前者と同様に受信部を有することは明らかであり、
(ハ)後者の「使用者が指定する銘柄について」は、銘柄に銘柄コードが対応付けられているのであるから、前者の「注目銘柄の銘柄コードについて」に相当し、
(ニ)後者の「指定変動範囲」の「上限値」、「下限値」は、百分率で指定されるのであるから、前者の「値上がり」の「株価変動率」、「値下がり」の「株価変動率」にそれぞれ相当し、
(ホ)後者の「記憶装置12」は、使用者が指定する銘柄について、上限値および下限値で規定される株価の指定変動範囲が設定されるのであるから、注目銘柄の銘柄コードについての、株価の値上がりと値下がりとでそれぞれの株価変動率を設定する点で、前者の「設定部」に相当し、
(へ)後者の「株価が指定変動範囲の上限値をプラス方向で超過したか否かと下限値をマイナス方向で超過したか否かを判定し」は、前者の「株価の値上がりと値下がりとでそれぞれの株価変動率を越えたか否かを判定する」に相当し、
(ト)後者が判定するのに、前者と同様に判定部を有することは明らかであり、
(チ)後者の「上限値をプラス方向で超過したかそれとも下限値をマイナス方向で超過したかを使用者が認知できる態様の特定記号(△、▽)を表示装置9に表示する」も、前者の「値上がりか値下がりかによって設定部で定めた各々異なる周波数の可聴音を発生する」も、共に、値上がりか値下がりかが認知できる態様で使用者に通報していると言うことができる。
よって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
「情報提供元から送られてくる株価情報データを受信する受信部と、注目銘柄の銘柄コードについての、株価の値上がりと値下がりとでそれぞれの株価変動率を設定する設定部と、上記受信部で受信した株価情報データを表示する表示部と、上記受信部で受信した銘柄が設定部の注目銘柄であり且つ株価の値上がりと値下がりとでそれぞれの株価変動率を越えたか否かを判定する判定部とを有し、株価変動率を越えた場合、値上がりか値下がりかが認知できる態様で使用者に通報する株価情報通報装置。」である点。
[相違点]
前者が、設定した株価変動率を当該銘柄の株価が越えた場合、値上がりか値下がりかによって設定部で定めた各々異なる周波数の可聴音を可聴音発生部で発生しているのに対して、後者は、値上がりか値下がりかによって各々異なる特定記号(△、▽)を視覚的に表示している点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用例2に、株価情報通報装置において、株価情報の視覚的な表示とは別に、表示される情報の更新を、使用者が表示を注視していなくても即座に認知できるように、音声で通報することが記載されており、使用者が表示を注視していなくても即座に認知できるのは、聴覚的に認知できるからであることは自明であり、また、監視において、監視対象の状態を利用者に通報するのに、状態に応じた異なる周波数の音で聴覚的に通報することも周知であるから(例えば特開昭53-145499号公報、特開昭62-274398号公報、特開平2-230398号公報参照。)、後者において、設定した株価変動率を当該銘柄の株価が越えた場合、値上がりか値下がりかが認知できる態様で使用者に通報するのに、聴覚的に認知できるように、値上がりか値下がりかによって各々異なる周波数の可聴音で通報するようにし前者の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願発明の効果は、引用例1、2に記載された発明及び周知の技術手段の効果から予測できた程度のものである。

5.まとめ
以上のとおりであるので、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知の技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-02-13 
結審通知日 2003-02-18 
審決日 2003-03-03 
出願番号 特願平3-311659
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丹治 彰篠原 功一関 博文  
特許庁審判長 佐藤 荘助
特許庁審判官 山本 穂積
久保田 健
発明の名称 株価情報通報装置及び無線端末  
代理人 高崎 芳紘  

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