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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) H01L
管理番号 1075928
審判番号 無効2000-35340  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1988-10-12 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-06-26 
確定日 2003-04-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第2138047号発明「半導体装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2138047号の特許請求の範囲第1、3項に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 [1]本件発明
本件特許第2138047号(昭和62年3月30日出願、平成10年8月28日設定登録。)の特許請求の範囲第1、3項に記載された発明(以下、「本件発明1、2」という。)の要旨は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1、3項に記載された以下のとおりのものである(なお、本件発明1、2を構成要件ごとに分けて符号を付した。)。

「【請求項1】A:対向する一対の長辺側側面及び短辺側側面を有し長辺側側面の長さが短辺側側面の長さより長い平面長方形形状の樹脂パッケージと、
B:上記樹脂パッケージ内に設けられ、その長辺側側面が上記樹脂パッケージの長辺側側面と、その短辺側側面が上記樹脂パッケージの短辺側側面と対向し、その長辺側側面の長さが短辺側側面の長さより長い長方形形状を有するパッドと、
C:上記パッドとほほ同じ長方形形状を有し、上記パッド上にボンデイングされて上記樹脂パッケージに内蔵され、その短辺側に局在して配列された複数の電極を有する半導体素子と、
D:上記樹脂パッケージにおいて上記各電極に近接するように配設された複数の内部リード部と、上記樹脂パッケージの長辺側側面とほぼ平行にかつ上記樹脂パッケージの短辺側側面から外方に向かって延びる複数の外部リード部とからなる複数のリードと、
E:上記樹脂パッケージ内にて上記各電極をそれぞれ上記複数のリードの1つと接続する複数のリードワイヤ一と、
F:上記パッドの長辺側側面から上記樹脂パッケージの長辺側側面まで延在するよう上記樹脂パッケージの短辺側側面と平行に配置され、本装置の組立時、上記パッドをフレームに保持する2対のパッドリードと
G:を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】A:対向する一対の長辺側側面及び短辺側側面を有し長辺側側面の長さが短辺側側面の長さより長い平面長方形形状の樹脂パッケージと、
B:上記樹脂パッケージ内に設けられ、その長辺側側面が上記樹脂パッケージの長辺側側面と、その短辺側側面が上記樹脂パッケージの短辺側側面と対向し、その長辺側側面の長さが短辺側側面の長さより長い長方形形状を有するパッドと、
C:上記パッドとほぼ同じ長方形形状を有し、上記パッド上にボンデイングされて上記樹脂パッケージに内蔵され、その短辺側に局在して配列された複数の電極を有する半導体素子と、
D1:その一部が上記電極に近接するよう配設され、上記樹脂パッケージから外方に向かって延びる複数のリードと、
E:上記樹脂パッケージ内にて上記各電極をそれぞれ上記複数のリードの1つと接続する複数のリードワイヤ一と、
F1:上記パッドの長辺側側面から上記樹脂パッケージの長辺側側面まで延びるよう形成され、本装置の組立時、上記パッドをフレームに保持する2対のパッドリードとを備え、
D2:(d-1)上記複数のリードのうち両サイドに位置するものは、(d-2)その樹脂パッケージ内部側の内部リード部を上記パッケージ長辺側側面と対向する半導体素子側縁部と平行に延ばし、(d-3)該内部リード部の先端部を上記半導体素子側縁部に位置する電極に近接して配設し、(d-4)上記複数の内部リードのうち両サイドに位置する内部リード部先端部の、上記パッケージ長辺側側面と垂直方向の幅をその根元側より先端側で幅広くし、この幅広の先端部位にてリードワイヤーによって上記電極との接続をしたものとしていること
G:を特徴とする半導体装置。」

[2]請求人の主張及び証拠方法
これに対し、請求人は、平成12年6月26日付で本件無効審判を請求して、本件発明1、2を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由として、本件発明1、2は、甲第2号証の実願昭52-69135号(実開昭53-163061号)の願書に添付した明細書および図面の内容を撮影したマイクロフィルム、甲第3号証の特開昭62-42552号公報、及び甲第4号証の特開昭61-23351号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当し、本件特許は無効とされるべき旨主張し、その証拠方法として甲第1〜5号証を提出している。

[3]被請求人の主張
一方、被請求人は、上記理由に対して、本件発明1、2は上記甲第2〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件無効審判の請求は成り立たない旨主張している。

[4]甲第1〜5号証の記載事項
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証の特公平7-19872号公報は、本件特許の出願公告公報である。

(2)甲第2号証の記載事項
甲第2号証の実願昭52-69135号(実開昭53-163061号公報)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムには、半導体装置用リードフレームに関する発明が第1、2図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。

従来技術について
「樹脂封止形半導体装置の製造においては、枠体の内側に多数のリードを有するリードフレームを複数個分接続したものに、複数個の半導体素子(以下、「ペレット」と略称する)を金属合金や樹脂によって固定し、ペレット上の各電極と上記の各リードとをコネクタ線を介して接続し、樹脂でペレット部分を封着した後、枠体を切断し、各ペレットごとに分離するのが普通である。
第1図は従来の一般的なリードフレームの1ペレットに対応する部分の平面図である。第1図において、(1)は枠体、(2)はペレット固定部、一点鎖線で囲んだ(3)は樹脂封止範囲、(4)はインナーリード、(5)はアウターリードである。」(1頁下から4行〜2頁10行)

さらに、第1図の記載からみて、長方形状のペレット固定部2が、その長辺側側面から枠体1の長辺側側面まで延在した1対のリード(以下、「ペレット固定部用リード」という。なお、このペレット固定部用リードは、タブリード、サポートバーなどとして周知のものである。)によりそれぞれ連結されており、またペレット固定部2の短辺側には複数のインナーリード4の一端がそれぞれ近接して配置され、このインナーリード4の他端はペレット固定部2の長辺側と平行にペレット固定部2から遠ざかる方向にそのまま延長されて、長方形状の樹脂封止範囲3から外に引き出されてアウターリード5に接続された半導体装置用リードフレームが開示されている。
そして、樹脂封止範囲3はペレット固定部2の短辺側にはその短辺が、ペレット固定部2の長辺側にはその長辺が、それぞれ位置するような形状となされており、インナーリード4は、樹脂封止範囲3の短辺から引き出されている。
また、インナーリード4およびアウターリード5で構成される複数のリードのうち、両サイドに位置するものは、樹脂封止範囲3内のインナーリード4を樹脂封止範囲3の長辺側側面と平行にかつ他のリードのインナーリード4より長く延長し、さらにその先端部の樹脂封止範囲3の長辺側側面と垂直方向の幅を、その根元側より先端側で幅広くし、インナーリード4の先端をべレット固定部2の長辺側近傍に位置させることが開示されている。

(3)甲第3号証の記載事項
甲第3号証の特開昭62-42552号公報には、大型チップを小型パッケージに搭載することを可能にしたデユアルインラインパッケージのリードフレームに関する発明が第1、3、4図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。

従来の技術について
「外リード12は第3図の平面図に示されるリードフレームの一部で、第3図において、14はリードフレーム、15はダイステージ、16はタイバー、17は外フレームを示す。外リード12のダイステージに近い端部分はインナーリードと呼称される。」(1頁右欄10〜14行)

発明が解決しようとする問題点について
「最近、チップに形成されるICのパターンは微細化される一方で、チップの寸法は大型化し、前記したワイヤボンデイング用のパッドはチップの短辺に形成される傾向にある。・・・
第4図に示したリードフレームにワイヤをボンデイングする場合に、奇数本の真中にある外リード12aの接続において、それとチップの短辺に設けたパッドのうち外リード12aに最も近いパッド19aとをワイヤ20aで接続しても、ワイヤ20aは他の符号20を付して示すワイヤよりもかなり長い。・・・このようにワイヤ20aが長いと、チップの樹脂封止のときに樹脂に流されて他のワイヤと接触するなどの問題を発生する。・・・
本発明はこのような点に鑑みて創作されたもので、片側に奇数の外リードが設けられたリードフレームを用いて作るDIPにおいて、ダイステージの中心近くにある外リードとパッドとを接続するワイヤの長さを他のワイヤに比べ長くなりすぎることのないようなリードフレームを提供することを目的とする。」(2頁左上欄8行〜右上欄下から3行)

発明の効果について
「本発明によれば、特定の外リードの接続のためのワイヤが長くなることに基づく従来の問題点が解決され、」(2頁右下欄下から4行〜末行)

さらに、第1図の記載からみて、リードフレームの長方形状のダイステージ15にチップ18が搭載され、チップ18の各パッド19、19aと外リード12、12aの先端部とをワイヤ20、20aで接続することが開示され、チップ18は長方形状を有しており、その短辺側に各パッド19、19aが局在して配列され、さらに、チップ18は、その長辺側がダイステージ15の長辺側に、チップ18の短辺側がダイステージ15の短辺側に、それぞれ位置するような向きでダイステージ15に搭載されたリードフレームが開示されている。

(3)甲第4号証の記載事項
甲第4号証の特開昭61-23351号公報には、半導体IC基板を搭載するリードフレームに関する発明が、第1〜4図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。

従来技術について
「従来のこの種のリードフレームは、第1図に示すようにアイランド部の支持ピン数が〜2及び〜3の如く、2ピンのみである。このような形状では、リードフレーム製作工程、メッキ工程及び取扱い等において、第2図(従来ベースリボンの断面図A-A’)のアイランド部〜1’のように変形が発生する。」(1頁左欄下から5行〜右欄2行)

発明の目的について
「本発明は従来リードフレーム形状によるアイランド部の変形発生を防止し、且つアイランドサイズが大きくなっても同様に変形しないような形状を有するリードフレームの提供を目的としたものである。」(1頁右欄8〜12行)

第3、4図の実施例について
「本発明はリードフレームのアイランド部の支持ピン数を4ピン以上保有することを特徴とするリードフレームの形状に関するものである。
・・・リードフレームのアイランド部〜5にこれを支持する支持ピン〜6・・・11の6ピンを保有している。このような形状では第4図に示す通り、アイランド部〜5に変形は発生せず、従来形状の問題点である。組立、歩留及び品質に悪影響を与えることはない。更に、アイランド部〜5のサイズが大きくなっても変形の発生はない。」(1頁右下欄14行〜2頁左欄5行)

(4)甲第5号証
甲第5号証は、本件特許に係る出願の拒絶査定不服の審判事件における、平成9年10月8日付の「面接のお願い」の写である。

[5]対比・判断
(1)本件発明1
本件発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、甲第2号証に記載された樹脂封止範囲3とは、樹脂で封止される範囲を示しているから、樹脂封止範囲3はそのまま樹脂パッケージの範囲、すなわち樹脂パッケージに相当するものである。
また、甲第2号証の第1図に記載された「ペレット固定部用リード」は、ペレット固定部2の長辺側側面から樹脂封止範囲3の長辺側側面まで延在するよう樹脂封止範囲3の短辺側側面と平行に配置されているから、「ペレット固定部用リード」は、本件発明1の「パッドリード」に相当するものである。
そして、甲第2号証に記載された発明の「ペレット」、「ペレット固定部2」、「インナーリード4」、「アウターリード5」、及び「コネクタ線」は、それぞれ本件発明1の「半導体素子」、「パッド」、「内部リード部」、「外部リード部」、及び「リードワイヤー」に相当する。
してみると、本件発明1と甲第2号証に記載された発明とは、本件発明1の構成要件に沿って記載すると、
「A:対向する一対の長辺側側面及び短辺側側面を有し長辺側側面の長さが短辺側側面の長さより長い平面長方形形状の樹脂パッケージと、
B:上記樹脂パッケージ内に設けられ、その長辺側側面が上記樹脂パッケージの長辺側側面と、その短辺側側面が上記樹脂パッケージの短辺側側面と対向し、その長辺側側面の長さが短辺側側面の長さより長い長方形形状を有するパッドと、
Dの一部:上記樹脂パッケージの長辺側側面とほぼ平行にかつ上記樹脂パッケージの短辺側側面から外方に向かって延びる複数の外部リード部とからなる複数のリードと、
E:上記樹脂パッケージ内にて上記各電極をそれぞれ上記複数のリードの1つと接続する複数のリードワイヤ一と、
F:上記パッドの長辺側側面から上記樹脂パッケージの長辺側側面まで延在するよう上記樹脂パッケージの短辺側側面と平行に配置されたパッドリードと
G:を備えたことを特徴とする半導体装置。」
の点で一致する。

しかしながら、
(1-1)半導体素子について
本件発明1の構成要件Cは、「上記パッドとほぼ同じ長方形形状を有し、上記パッド上にボンデイングされて樹脂パッケージに内蔵され、その短辺側に局在して配列された複数の電極を有する」構成を備えているのに対し、甲第2号証に記載された発明は、電極の位置については明らかではない点
(1-2)複数のリードについて
本件発明1の構成要件Dは、「上記樹脂パッケージにおいて上記各電極に近接するように配設された複数の内部リード部」からなる複数のリードを備えているのに対し、甲第2号証に記載された発明は、電極に対するインナーリードの配設の仕方が不明である点
(1-3)パッドリードについて
本件発明1の構成要件Fは、「2対の」パッドリードを備えているのに対し、甲第2号証に記載された発明は、「1対の」ペレット固定部用リード(すなわちパッドリード)を備える点
で相違する。

そこで、上記相違点(1-1)〜(1-3)について検討する。
相違点(1-1)について
上記甲第3号証の第1図には、本件発明1のパッドに相当するダイステージ15とほぼ同じ長方形形状を有し、ダイステージ15上にボンデイングされて封止樹脂11に内蔵され、その短辺側に局在して配列された複数の電極に相当するパッド19、19aを有する半導体素子としてのチップ18が開示されている。
そして、甲第3号証の2頁左上欄8〜11行及び第4図に記載されているように、リードフレームの片側に9本の外リードが形成されたダイステージ上のチップに対しても、ワイヤボンデイング用のパッドはチップの短辺に形成される傾向にあることが示されている。
そうであるならば、甲第2号証に記載された発明のように、アウターリードがパッケージの短辺側側面から外方に向かって延びるように構成されている半導体装置用リードフレームに対しては、なおさら、ペレット上に備えた各電極をペレットの短辺側に形成しようとするものである。なぜならば、各電極をペレットの短辺側に形成することによりワイヤの長さを短くすることができるからであり、このように、ペレット固定部とほぼ同じ長方形形状を有するペレットの短辺側に各電極を形成することは当業者であれば容易に想到できることである。

相違点(1-2)について
本件発明1の構成要件Dにおいて、複数のリードのうちの複数の内部リードを、半導体素子の短辺側に局在して配列された複数の電極に近接するように配設することは、ワイヤボンデイングの容易性を勘案して適宜に設計できる程度の事項にすぎないから、上記「相違点(1-1)について」において説示した理由と同じ理由により、甲第2、3号証に記載されたものから当業者が容易に想到することができたものである。
相違点(1-3)について
上記甲4号証には、本件発明1のパッドに相当するアイランド部の変形防止のために、リードフレーム製作時、アイランド部の長辺側側面から、アイランド部をリードフレームに保持する2対の支持ピン7、8、9、11を備えることが開示され、甲第2号証に記載された発明の第1図にも、ペレット固定部2の長辺側と枠体1とを連結する1対の「ペレット固定部用リード」が記載されているから、甲第2号証に記載されたペレット固定部2の変形防止のために、1対の「ペレット固定部用リード」に替えて甲第4号証に記載された2対の支持ピン7、8、9、11を設けるようなことは当業者であれば容易に想到することができたものである。

そして、本件発明1は、甲第2〜4号証に記載された発明を組み合わせることによって得られる作用効果以上に格別に優れた作用効果を奏するものでもない。

したがって、本件発明1は、甲第2〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2
本件発明2と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、両者は、本件発明2の構成要件に沿って記載すると、
「A:対向する一対の長辺側側面及び短辺側側面を有し長辺側側面の長さが短辺側側面の長さより長い平面長方形形状の樹脂パッケージと、
B:上記樹脂パッケージ内に設けられ、その長辺側側面が上記樹脂パッケージの長辺側側面と、その短辺側側面が上記樹脂パッケージの短辺側側面と対向し、その長辺側側面の長さが短辺側側面の長さより長い長方形形状を有するパッドと、
D1の一部:上記樹脂パッケージから外方に向かって延びる複数のリードと、
E:上記樹脂パッケージ内にて上記各電極をそれぞれ上記複数のリードの1つと接続する複数のリードワイヤ一と、
F1の一部:上記パッドの長辺側側面から上記樹脂パッケージの長辺側側面まで延びるよう形成され、本装置の組立時、上記パッドをフレームに保持するパッドリードとを備え、
G:を特徴とする半導体装置。」
の点で一致する。

しかしながら、
(2-1)半導体素子について
本件発明2の構成要件Cは、「上記パッドとほぼ同じ長方形形状を有し、上記パッド上にボンデイングされて樹脂パッケージに内蔵され、その短辺側に局在して配列された複数の電極を有する」構成を備えているのに対し、甲第2号証に記載された発明は、電極の位置については明らかではない点
(2-2)複数のリードについて
本件発明2の構成要件D1は、「その一部が上記電極に近接するよう配設され」た複数のリードを備えているのに対し、甲第2号証に記載された発明は、電極に対するインナーリードの配設の仕方が不明である点
(2-3)パッドリードについて
本件発明2の構成要件F1は、「2対の」パッドリードを備えているのに対し、甲第2号証に記載された発明では、「1対の」ペレット固定部用リード(すなわちパッドリード)を備える点
(2-4)複数のリードのうち両サイドに位置するものについて
本件発明2の構成要件D2は、「(d-1)上記複数のリードのうち両サイドに位置するものは、(d-2)その樹脂パッケージ内部側の内部リード部を上記パッケージ長辺側側面と対向する半導体素子側縁部と平行に延ばし、(d-3)該内部リード部の先端部を上記半導体素子側縁部に位置する電極に近接して配設し、(d-4)上記複数の内部リードのうち両サイドに位置する内部リード部先端部の、上記パッケージ長辺側側面と垂直方向の幅をその根元側より先端側で幅広くし、この幅広の先端部位にてリードワイヤーによって上記電極との接続をした」構成を備えているのに対し、甲第2号証に記載された発明は、インナーリードはこのような構成を備えているのか否か不明である点
でそれぞれ相違する。

そこで、上記相違点(2-1)〜(2-4)について検討する。
相違点(2-1)について
上記相違点(2-1)は、上記「相違点(1-1)について」において検討済みであり、本件発明2の構成要件Cは甲第2,3号証に記載されたものから当業者が容易に想到することができたものである。

相違点(2-2)について
本件発明2の構成要件D1において、複数のリードの一部を、半導体素子の短辺側に局在して配列された複数の電極に近接するように配設することは、上記「相違点(1-1)について」において説示したように、適宜に設計できる程度の事項にすぎないから、甲第2、3号証に記載されたものから当業者が容易に想到することができたものである。

相違点(2-3)について
上記相違点(2-3)は、上記「相違点(1-3)について」において検討済みであり、本件発明2の構成要件F1は甲第2、4号証に記載されたものから当業者が容易に想到することができたものである。

相違点(2-4)について
本件発明2の構成要件D2の内、「(d-1)上記複数のリードのうち両サイドに位置するものは、(d-2)その樹脂パッケージ内部側の内部リード部を上記パッケージ長辺側側面と対向する半導体素子側縁部と平行に延ばし」については、甲第2号証の第1図に記載された両サイドのインナーリード4の構成と同一であり、また、「(d-3)該内部リード部の先端部を上記半導体素子側縁部に位置する電極に近接して配設し」については、上記「相違点(2-2)について」において説示したとおり、甲第2、3号証に記載されたものから当業者が容易に想到することができたものである。
さらに、「(d-4)上記複数の内部リードのうち両サイドに位置する内部リード部先端部の、上記パッケージ長辺側側面と垂直方向の幅をその根元側より先端側で幅広くし、この幅広の先端部位にてリードワイヤーによって上記電極との接続をしたものとしていること」については、甲第2号証の第1図に、両サイドのインナーリード4先端部の、樹脂封止範囲3の長辺側側面と垂直方向の幅をその根本側より先端側で幅広くする構成が記載されている。
そして、通常、インナーリードの幅広の先端部位と半導体素子に位置する電極とをリードワイヤーによって接続することは周知の技術にすぎないことからみて、構成要件(d-4)についても、甲第2号証に記載のものから当業者が容易に想到することができたものである。

そして、本件発明2は、甲第2〜4号証に記載された発明を組み合わせることによって得られる作用効果以上に格別に優れた作用効果を奏するものでもない。

したがって、本件発明2は、甲第2〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、被請求人は、答弁書において、本件発明1、2の半導体装置は、現在では、TSOP-I型と呼ばれるICパッケージであり、甲第2号証に記載された発明の半導体装置用リードフレームもパッケージの短辺側側面から外方に向かって延びているように構成されているから、TSOP-I型のICパッケージであるものの、甲第3号証に記載された半導体装置はDIP型のICパッケージであり、甲第4号証に記載されたリードフレームはQFP型のICパッケージを前提としているから、甲第2号証に記載された発明のTSOP-I型のICパッケージと甲第3,4号証に記載されたDIP型やQFP型の異なるタイプのICパッケージとは技術的課題を異にするものである旨主張している。
しかしながら、仮に甲第2号証に記載された発明の半導体装置がTSOP-I型のICパッケージであるとしても、TSOP-I型のICパッケージもDIP型やQFP型のICパッケージもICパッケージという同じ技術分野に属するものであり、DIP型のICパッケージについて小型化、高機能化、低コスト化等を図ることにより開発されたものがQFP型やTSOP-I型等のICパッケージであって、それぞれ使用される用途は異なる場合があるにしても、小型化のようにそれぞれのタイプに共通した技術的課題は存在するから、単に、TSOP-I型とDIP型やQFP型とは、異なるタイプのICパッケージだから技術的課題を異にするものであり、甲第2号証に記載された半導体装置に甲第3,4号証に記載のものを適用することは困難である、とすることはできない。
したがって、被請求人の主張は採用しない。

[7]むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、これを無効とすべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2001-03-29 
結審通知日 2001-04-13 
審決日 2001-05-09 
出願番号 特願昭62-77136
審決分類 P 1 112・ 121- Z (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 由紀夫豊永 茂弘  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 中澤 登
中村 朝幸
登録日 1998-08-28 
登録番号 特許第2138047号(P2138047)
発明の名称 半導体装置  
代理人 山本 光太郎  
代理人 井ノ口 壽  
代理人 近藤 恵嗣  
代理人 窪田 英一郎  
代理人 吉田 聡  
代理人 伊藤 高英  
代理人 永島 孝明  

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