• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1075965
審判番号 不服2001-17057  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-10-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-09-25 
確定日 2003-04-28 
事件の表示 平成 3年特許願第 76792号「磁気記録再生装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年10月12日出願公開、特開平 4-286776]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年3月17日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年4月4日付け、及び平成13年10月25日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という)

「磁気テープ上に設けられた複数のヘリカル記録トラツクに対してフアイルデータを記録し再生する磁気記録再生装置において、
上記磁気テープに記録した上記フアイルデータの先頭トラツク番号及び当該フアイルデータのトラツク数をフアイル管理情報として所定の上記ヘリカル記録トラツクに記録するとともに、上記ヘリカル記録トラツクそれぞれの先頭に当該ヘリカル記録トラツクに記録されたデータについてのトラツク情報を記録する記録手段と、
上記磁気テープから上記フアイル管理情報及び上記トラツク情報を読み出す読出手段と、
読み出した上記フアイル管理情報を記憶するフアイル管理情報記憶手段と、
上記フアイル管理情報記憶手段に記憶された上記フアイル管理情報と上記ヘリカル記録トラツクから読み出した上記トラツク情報とに基づいて、上記磁気テープに記録された上記フアイルデータの読み出し制御を行う読出制御手段と
を具えることを特徴とする磁気記録再生装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である昭和63年7月5日に頒布された「特開昭63-161582号公報」(以下、「引用例」という)には、次の事項が記載されている。

(1)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、回転ヘッド型のデジタル・オーディオ・テープレコーダ(DAT)を用いて、コンピュータ等のデータを記録するデータレコーダに関する。」(第1頁左下欄第15行〜第19行)

(2)「〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、回転ヘッドを有し、この回転ヘッドの1回転によって2本の傾斜トラックが形成されると共に、この2本の傾斜トラックを1フレームとして、デジタル信号がこの1フレーム内で完結するようにコード化されて記録再生されるようにした装置(DAT(1))が設けられ、少なくとも上記1フレームを構成する信号の一部(サブコード)として外部からのファイルマーク信号が供給されるごとに増加される数値(ファイナルナンバー=FNO)を記録するようにしたデータレコーダである。
〔作用〕
これによれば、DATの1フレームごとに外部からのファイルマーク信号の供給によって増加される数値を設けて記録を行うことにより、この数値を用いてサーチを容易に行うことができるので、このDATをデータストリーマとして円滑に用いることができるようになり、これによって記録媒体の消費や記録に要する時間の少ない良好なデータレコーダを得ることができる。
〔実施例〕
第1図において、(1)はDATの構成を示し、このDAT(1)には回転ヘッドドラム(11)が設けられ、磁気テープ(12)はこのドラム(11)の周囲の約90度の範囲に巻付けられて移送されている。そしてこのドラム(11)上にはA、B2ヶのヘッドが設けられ、このドラム(11)の1回転によって2本の傾斜トラックが記録・再生されるようになっている。
一方外部からのデジタルデータは、IO回路(13)に入力され、このIO回路(13)からデジタル信号処理回路(14)に供給されて上述のDATのフォーマットへの変換が行われる。このフォーマット化された信号が記録アンプ(15)、記録/再生切換スイッチ(16)の記録側接点を通じてヘッドA,Bに供給され、テープ(12)に記録される。
またテープ(12)に記録された信号がヘッドA,Bで再生されるとこの再生信号は記録/再生切換スイッチ(16)の再生側接点、再生アンプ(17)を通じて処理回路(14)に供給され、逆変換されて取出されたデジタルデータがIO回路(13)を通じて外部に出力される。
さらに外部からのコントロール信号がシステムコントロール回路(18)に供給され、このコントロール回路(18)からの信号によってヘッドドラム(11)の回転制御、テープ(12)の移送制御、スイッチ(16)の切換制御等が行われると共に、記録時コントロール回路(18)からの信号が処理回路(14)に供給されて後述するサブコード信号の形成等が行われる。また再生時には処理回路(14)で抽出された信号がコントロール回路(18)に供給され、トラッキング等の制御が行われると共に、この信号の一部が外部に取出される。」(第2頁右上欄第13行〜第3頁左上欄第11行)

(3)「さらに上述の装置において、第1のサブコード部及び第2のサブコード部にはそれぞれ2048ビットのデータが記録可能である。ここで音声信号の記録フォーマットでは、この2048ビットを64ビットずつのパックに区切り、このパックごとに記録されている信号のタイムコードや記録日時等の情報の記録が行われるようになっている。
そこでこのパックの中にデータレコーダ用のものを割当て、このパックを用いて種々の制御を行えるようにすることができる。
すなわち第3図はそのためのパックの構成を示す。図において64ビットが8ビットずつの8ワードに分けられる。このパック内の先頭(第1)ワードのMSB側の4ビットがITEMエリアとされ、このエリアは音声信号の記録フォーマットと共通であって、この4ビットの2進符号にパックの内容が表示される。なお4ビットで16通りの符号の内の9通りは既に音声信号の記録等のために定められており、その残りの7通りの内から任意のものをデータレコーダ用に定める。
さらに第1ワードのLSB側の3ビットと次の第2ワードがセーブセットナンバー(SSNO)エリアとされ、この合計11ビットにて例えばテープの先端からのバックアップの回数を示す2進値が設けられる。
また第3ワードがファイルナンバー(FNO)エリアとされ、1回にバックアップされたデータ(セーブセット)の内でのファイルの通し番号を示す2進値が設けられる。(第4頁左上欄第9行〜同頁右上欄第17行)

(4)「これによってファイルマークの記録が行われる。そしてこの記録された信号に対してファイルマークを用いたサーチが要求された場合には、まずサーチが要求された時点の再生フレームのファイルナンバー(FNO)が検出され、この値にサーチすべきファイルマークの数(±)が加算される。次に加算値と上述の検出値が比較され、加算値が大きいときは正方向、小さいときは逆方向へ高速サーチが開始される。さらにこの高速サーチ中に検出されたファイルナンバー(FNO)と上述の加算値が比較され、加算値と検出値の大小関係が変ったときにサーチ方向が反転されると共に速度が半減される。これによって所望のファイルマークをサーチすることができる。(第5頁右上欄第5行〜同欄第18行)

これらの記載事項及び図面の記載を参照すると、引用例には、

「磁気テープ(12)上に設けられた複数の傾斜トラックに対してデータを記録し再生するデータレコーダにおいて、
上記傾斜トラックそれぞれに、外部からのファイルマーク信号が供給されるごとに増加される数値(ファイルナンバー=FNO)を記録する記録アンプ(15)及び回転ヘッドドラム(11)と、
上記磁気テープから上記ファイルナンバー(FNO)を読み出す回転ヘッドドラム(11)及び再生アンプ(17)と、
上記傾斜トラックから読み出した上記ファイルナンバー(FNO)に基づいて、上記磁気テープに記録された上記データの高速サーチを行うシステムコントロール回路(18)と
を具えることを特徴とするデータレコーダ。」

の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
引用例記載の発明の(イ)傾斜トラック、(ロ)データレコーダ、(ハ)記録アンプ(15)及び回転ヘッドドラム(11)、(ニ)回転ヘッドドラム(11)及び再生アンプ(17)、(ホ)高速サーチ、(ヘ)システムコントロール回路(18)が、本願発明の(イ)ヘリカル記録トラツク、(ロ)磁気記録再生装置、(ハ)記録手段、(ニ)読出手段、(ホ)読み出し制御、(ヘ)読出制御手段に相当する。

また、引用例の第4頁左上欄9行〜同頁右上欄第17行の記載、及び第5頁右上欄第5行〜同欄第18行の記載からみて、引用例のものは、トラックのサブコード部のデータレコーダ用パックに記録されたファイルナンバー(FNO)を用いて高速サーチ制御を行っているものと認められるから、引用例の「ファイルナンバー(FNO)」が本願発明の「ヘリカル記録トラツクに記録されたデータについてのトラツク情報」に相当する。

したがって、本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、両者は、

「磁気テープ上に設けられた複数のヘリカル記録トラツクに対してデータを記録し再生する磁気記録再生装置において、
上記ヘリカル記録トラツクそれぞれに当該ヘリカル記録トラツクに記録されたデータについてのトラツク情報を記録する記録手段と、
上記磁気テープから上記トラツク情報を読み出す読出手段と、
上記ヘリカル記録トラツクから読み出した上記トラツク情報に基づいて、上記磁気テープに記録された上記データの読み出し制御を行う読出制御手段と
を具えることを特徴とする磁気記録再生装置。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

(1)本願発明では、データの形式がフアイルデータであるのに対し、引用例では単にデータと記載されており、データがフアイルデータ形式であるか否かが明確でない点
(2)本願発明のものが、磁気テープに記録したフアイルデータの先頭トラツク番号及び当該フアイルデータのトラツク数をフアイル管理情報として所定のヘリカル記録トラツクに記録し、該ファイル管理情報を読み出してフアイル管理情報記憶手段に記憶し、該フアイル管理情報記憶手段に記憶されたフアイル管理情報に基づいてフアイルデータの読み出し制御を行っているのに対し、引用例にはこれに対応する記載が無い点
(3)本願発明では、ヘリカル記録トラツクの「先頭」にトラツク情報を記録しているのに対し、引用例には、ファイルマークが記録されているパック(を含むサブコード部)がトラックの「先頭」に記録されるとの記載が無い点

4.当審の判断
上記相違点について検討する。

相違点(1)について
本願発明も引用例記載の発明も、ホストコンピュータのデータを記録するためのデータレコーダである点で差異は無く、また、コンピュータ等のディジタルデータをファイルデータの形式で取り扱うことは例えば特開平1-264683号公報等に記載されているよう周知慣用の技術手段であるものと認められることから、引用例記載の発明においてデータをファイルデータ形式とすることに格別の困難性があるものとは認められない。

相違点(2)について
磁気テープにファイルデータを記録する構成において、磁気テープ上に記録されたデータに関する管理情報をテープ上の所定部分(先頭部分)に記録しておき、テープのセット時に予め該管理情報を読み出してメモリ上に記憶し、記憶された管理情報を用いることによってデータの読み出し制御を行うよう構成することは、例えば特開平1-264683号公報、特開平2-246075号公報、特開平2-310878号公報等に記載されているよう周知慣用の技術手段であるものと認められる。
そして、特に特開平1-264683号公報には、テープ先頭のインデックス部に記録されたファイル管理のための情報(本願発明のファイル管理情報に相当)とヘリカルトラックのサブデータエリア(補助記録部)に記録されたファイル管理情報(本願発明のトラック情報に相当)の両方を用いて読み出し制御を行う構成も記載されていることから、引用例記載の発明に上記各公報に記載の周知慣用技術を組み合わせることに格別の困難性があるものとは認められない。
また、特開平1-264683号公報(特に第3頁左下欄第10行〜第12行の記載参照)には、ファイル管理情報として各ファイルの名称、作成日時、ファイルの先頭フレーム番号(本願発明における先頭トラック番号に対応)を用いることが記載され、特開平2-246075号公報(特に第3頁左上欄第11行〜第17行の記載参照)には、ファイル管理情報としてファイル名及び位置情報(本願発明における先頭トラック番号に対応)を用いることが記載され、特開平2-310878号公報(特に第2頁右上欄第2行〜第4行の記載参照)には、ファイル管理情報として、ファイルの大きさ(本願発明におけるファイルデータのトラック数に対応)、磁気テープ媒体上の物理的格納位置(本願発明における先頭トラック番号に対応)を用いることが記載されていることから、ファイル管理情報として「磁気テープに記録したフアイルデータの先頭トラツク番号及び当該フアイルデータのトラツク数」を用いるよう構成することは当業者が必要に応じて適宜なしうる設計的事項であるものと認められる。

相違点(3)について
本願の明細書【0029】段落には、トラツクの「先頭」に第2の補充データPD2を記録することによる効果は記載されているが、トラツクの「先頭」にトラツク情報を記録することについては記載が無く、また、トラツク情報をトラツクの「先頭」に記録することの技術的意味についても特に記載が無いことから、トラツク情報をトラツクのどの位置に設けるかは当業者が適宜設定しうる設計的事項に過ぎないものと認められる。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例記載の発明に周知慣用の技術手段を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-02-28 
結審通知日 2003-03-07 
審決日 2003-03-18 
出願番号 特願平3-76792
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 哲伊藤 隆夫  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 須田 勝巳
相馬 多美子
発明の名称 磁気記録再生装置  
代理人 田辺 恵基  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ