• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1076043
審判番号 不服2001-9994  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-06-14 
確定日 2003-05-02 
事件の表示 平成5年特許願第105958号「証券情報表示装置」拒絶査定に対する審判事件[平成6年10月28日出願公開、特開平6-301682]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明
本願は、平成5年4月9日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成13年7月13日付の手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】 通信回線を介して伝送される証券・金融の取引情報を受信し、前記取引情報を表示部に表示する証券情報表示装置において、
予め設定された1日における単位時間内に受信した取引情報から前記単位時間における高値と安値を判定する判定制御部と、
前記判定した結果を記憶する記憶部と、
前記表示部の表示画面で時間を横軸に、価格を縦軸にして、前記単位時間を特定幅とし、前記高値を上辺に、前記安値を底辺に対応する価格の棒グラフを表示する表示制御部と、
単位時間内に受信した取引情報から前記単位時間内における売買高を計算する売買高計算制御部とを有し、
前記記憶部は、前記売買高計算制御部において計算された結果を記憶し、
前記表示制御部は、前記表示部の表示画面で前記時間を横軸にし、縦軸に売買高を示す軸を追加して、前記単位時間を特定幅とし、売買高の棒グラフを表示し、
前記判定制御部は、価格の棒グラフを表示した状態中に、新たな取引情報を受信すると、前記取引情報から前記表示中の単位時間における高値と安値を判定し、前記記憶部は、前記判定した結果を記憶し、前記表示制御部は、前記判定された高値と安値で価格の棒グラフを追加表示することを特徴とする証券情報表示装置。」

2.引用例に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された大浦勇三「UNISYSディーリング・サポート・システムの現状と機能概要」Computer Report、日本経営科学研究所、平成元年11月1日、Vol.29、No.13、p.51(以下、「引用例1」という。)には、ディーリング・サポート・システムに関し、以下(a)〜(c)の事項が記載されている。
(a)運用支援機能について、第51頁左欄第33行〜同頁右欄第2行に、「東証、BB、ロイター、テレレートなどの外部情報と自社コンピュータ・システムとのオンライン接続しディーリング業務支援を行う。トレーダ、ファンドマネージャなどの第一線の売買担当者が相場状況をにらみながら売買を実施していく際の合理的で、迅速な判断材料の提供を行う。運用支援機能として、次の3つの中核をなしている。・相場情報機能・分析(汎用分析/テクニカル分析)機能・裁定取引サポート機能」と記載されている。
(b)相場情報機能について、第51頁第4〜14行に、「東証・BBなどからリアルタイムに提供される相場情報データ(気配値、出来高)と単純加工データ(ベーシス、スプレッド値)をディーリング・ルーム内の端末にブロードキャスティングする機能である。…また、取り込まれた相場情報データは、ティックデータ・5分足・30分足・時間足・日足・週足・月足データとしてシステム内に時系列的に蓄積され、分析機能、裁定取引サポート機能に提供する。」と記載されている。
(c)第51頁図1に、証券系システムの概念図が記載されており、該図より、東京証券取引所、日本相互証券(BB)などからデジタルデータである相場情報データがディーリング・サポート・システムに伝送されることが看取される。
上記ディーリング・サポート・システムは上記(a)のように売買担当者に売買を実施していく際の判断材料の提供を行うことを目的とするのであるから、上記(b)の端末にブロードキャスティングされたデータが表示されることは明らかである。また、証券相場の分析手法として、ローソク足チャートに代表されるグラフチャートを中心にした分析手法があることが技術常識であるから、上記(b)の分析機能として、提供された5分足、30分足、時間足、日足、週足、月足データからそれらデータについてのグラフチャートを作成して表示することは明らかであり、さらに、証券市場が一般に1日毎に開かれるのであるから、5分足、30分足、時間足データを表示するのに1日におけるものについて表示することも自明のことである。
したがって、以上(a)〜(c)の記載事項から、引用例1には、
東京証券取引所、日本相互証券などの外部情報元にオンライン接続され、外部情報元からリアルタイムに提供され伝送されてくるデジタルデータである相場情報データ(気配値、出来高)を取り込み表示するディーリング・サポート・システムであって、取り込まれた相場情報データを時間足データ(又は5分足データ又は30分足データ)としてシステム内に時系列的に蓄積し、蓄積された時間足データ(又は5分足データ又は30分足データ)から1日における時間足データ(又は5分足データ又は30分足データ)についてのグラフチャートを分析機能により作成して表示するディーリング・サポート・システム(以下、「引用例1に記載された発明」という。)
が記載されていると認められる。
同じく引用された国際公開第92/12488号パンフレット(以下、「引用例2」という。特表平6-504152号公報参照。)には、リアルタイム・データの変化を示すビデオ表示文書を作成する装置に関し、以下(d)〜(g)の事項が記載されている。
(d)明細書第1頁第6〜9行に、「この発明は、リアルタイムで変化する値を持つ多くの変数を含む複雑なシステムを監視及び管理するためのアプリケーション・プログラムの分野に関するものである。」(上記公報第5頁左上欄第5〜7行参照。)旨記載されている。
(e)明細書第5頁第1〜13行に、「時間ベースのグラフ・ツールを使用して、グラフ表示オブジェクトを作成して、時間毎の価格などの変数値の変化をグラフで表示できる。…株式や債券などの複数の商品の値…などのリアルタイムで入力される値を表示するグラフ表示オブジェクトを作成できる。」(上記公報第6頁右上欄第14行〜同頁左下欄第1行参照。)旨記載されている。
(f)明細書第11頁第7〜17行に、「プログラムは、取引、売買高、スプレッド、インデックス、またはその他の値をグラフ化できる。…これらのグラフは通常、各バーが、ユーザの指定した異なる株式に関するリアルタイム値を表すバー・グラフであるが、異なる態様では、各バーは、複雑なシステムの変数のリアルタイム値を表すことができる。」(上記公報第8頁左下欄第13〜23行参照。)旨記載されている。
(g)明細書第11頁第33〜37行に、「リアルタイム・データは、使用されているネットワーク通信プロセスからプログラムへ渡され、事前にユーザが指定した書式、スタイル、及び位置に直ちに表示される。」(上記公報第8頁右下欄第16〜19行参照。)旨記載されている。
以上(d)〜(g)の記載事項及び図面の記載から、引用例2には、
株式を監視するための装置において、ネットワーク通信プロセスから渡されるリアルタイムの株式の時間毎の価格や売上高、スプレッド、インデックスなどの変数値の変化を直ちに表示すること
が記載されていると認められる。

3.本願発明と引用例1に記載された発明との対比
本願発明(以下、「前者」という。)と引用例1に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、
(イ)後者の「デジタルデータである相場情報データ(気配値、出来高)」は、前者の「証券・金融の取引情報」に相当し、
(ロ)後者は、東京証券取引所、日本相互証券などの外部情報元にオンライン接続されるのであるから、データが伝送されるのに、前者と同様に通信回線を介して伝送されることは明らかであり、
(ハ)後者は、表示するのに、前者と同様に表示部に表示し、表示を制御する表示制御部を有することは明らかであり、
(ニ)後者の「ディーリング・サポート・システム」は、前者の「証券情報表示装置」に相当し、
(ホ)後者の「1日における時間足データ(又は5分足データ又は30分足データ)についてのグラフチャート」は、前者の「価格の棒グラフ」と、価格のグラフである点で共通し、
(ヘ)単位時間毎の値の変化のグラフを表示するのに、時間を横軸に、値を縦軸にして、単位時間を特定幅としたグラフを表示することが技術常識であるから、後者が、「1日における時間足データ(又は5分足データ又は30分足データ)についてのグラフチャートを作成して表示する」のに、前者の「価格の棒グラフ」の表示と同様に時間を横軸に、価格を縦軸にして、単位時間を特定幅とし、表示することは自明のことである。
よって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
「通信回線を介して伝送される証券・金融の取引情報を受信し、前記取引情報を表示部に表示する証券情報表示装置において、前記表示部の表示画面で時間を横軸に、価格を縦軸にして、予め設定された1日における単位時間を特定幅とし、価格のグラフを表示する表示制御部を有する証券情報表示装置」である点。
[相違点]
(1)前者が、予め設定された1日における単位時間内に受信した取引情報から前記単位時間における高値と安値を判定する判定制御部と、前記単位時間内に受信した取引情報から前記単位時間内における売買高を計算する売買高計算制御部と、前記判定した結果と前記売買高計算制御部において計算された結果とを記憶する記憶部とを有し、表示制御部は、前記高値を上辺に、前記安値を底辺に対応する価格の棒グラフを表示し、さらに、縦軸に売買高を示す軸を追加して、前記単位時間を特定幅とし、売買高の棒グラフも表示するのに対して、引用例1に、単位時間内における高値を上辺に、安値を底辺に対応する棒グラフを表示する構成は記載されておらず、さらに、縦軸に売買高を示す軸を追加して、単位時間内における売買高の棒グラフを表示する構成も記載されていない点。
(2)前者が、価格のグラフを表示した状態中に、新たな取引情報を受信すると、前記取引情報から前記表示中の単位時間における価格のグラフを得て追加表示するのに対して、引用例1に、価格のグラフ(分析機能を用いて作成し表示するグラフチャート)をリアルタイムで作成し表示することは記載されていない点。

4.当審の判断
相違点(1)について検討する。
株価のグラフチャートとして、時間を横軸にし、価格を縦軸にして、単位時間を特定幅とし(1日、1週、1月も単位時間と言える。)、単位時間における高値と安値のグラフを表示し、さらに、縦軸に売買高を示す軸を追加して単位時間内における売買高の棒グラフを並行して表示することが周知であり(例えば、特開昭62-254261号公報(第2頁右下欄第11行〜第3頁右上欄第9行)参照。)、株価の高値と安値のグラフを表示するのに、高値を上辺に、安値を底辺に対応させた棒グラフを表示することも周知である(例えば、特開平2-87261号公報(第2頁右下欄第2〜11行)参照。)から、後者において、1日における単位時間を特定幅とする価格のグラフ(1日における時間足データ(又は5分足データ又は30分足データ)についてのグラフチャート)として、単位時間における高値に上辺を、安値に底辺を対応させた棒グラフを表示し、さらに、縦軸に売買高を示す軸を追加して単位時間内における売買高の棒グラフを表示することは、当業者が容易に推考し得たことであり、その際に、受信した取引情報(相場情報データ)から該棒グラフ(グラフチャート)を作成するのに、前者のような判定制御部、記憶部、売買高計算制御部を設けることは、当業者が適宜になし得た設計的事項にすぎない。
相違点(2)について検討する。
引用例2に、証券情報表示装置(株式を監視するための装置)において、リアルタイムの株式の時間毎の価格や売上高、スプレッド、インデックスなどの変数値の変化を直ちに表示することが記載されており、後者のディーリング・サポート・システムも上記2.(a)のように「売買担当者が相場状況をにらみながら売買を実施していく際の合理的で、迅速な判断材料の提供を行う」ことを目的とするのであるから、後者において、価格のグラフ(分析機能を用いて作成し表示するグラフチャート)をリアルタイムで作成し表示するように、価格のグラフを表示した状態中に、新たな取引情報を受信すると、前記取引情報から前記表示中の単位時間における価格のグラフを得て追加表示することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願発明の効果は、引用例1、2に記載された発明及び周知の技術手段の効果から予測できた程度のものである。

5.まとめ
以上のとおりであるので、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知の技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-02-18 
結審通知日 2003-02-25 
審決日 2003-03-10 
出願番号 特願平5-105958
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丹治 彰篠原 功一関 博文  
特許庁審判長 佐藤 荘助
特許庁審判官 山本 穂積
久保田 健
発明の名称 証券情報表示装置  
代理人 船津 暢宏  
代理人 阪本 清孝  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ