ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
---|---|
管理番号 | 1076057 |
審判番号 | 不服2001-10495 |
総通号数 | 42 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-06-21 |
確定日 | 2003-05-01 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 8669号「旅行計画作成システム」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 7月31日出願公開、特開平 9-198439]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件審判請求に係る出願は、平成8年1月22日の出願であって、平成13年5月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月29日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成13年6月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について [補正却下の決定の結論] 平成13年6月29日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)本件補正による発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「入力情報に基づいて旅行計画を作成する旅行計画作成システムであって、 旅行開始から旅行終了までの旅行予定時間と、旅行中に立寄る立寄り場所及びその立寄り場所の滞在時間を含む立寄り場所情報と、を含む旅行予定情報を入力する入力手段と、 旅行中に消費される消費予定時間を前記立寄り場所情報に基づいて取得する消費予定時間取得手段と、 前記旅行予定時間と消費予定時間との比較を行い旅行予定時間に対する消費予定時間の過不足を判定する過不足判定手段と、 前記判定の結果、過不足がある場合に、滞在時間を有する立寄り場所の数と、前記立寄り場所の滞在時間と、の少なくとも一方を変更し立寄り場所における滞在時間を変更することにより、前記過不足を解消する方向に旅行計画が推移するように、計画を変更する計画変更手段と、 を含むことを特徴とする旅行計画作成システム。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「計画変更手段」について、該「計画変更手段」が変更するものが「滞在時間」であることを限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、又、この点は、段落番号0039に記載された事項であるから、同法同条第3項の規定に適合するものである。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、即ち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか否か、について以下に検討する。 (2)引用例に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-83679号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 A.本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、所望の時刻に走行目的地に到達するように自車の経路誘導を行うことができる自動車の経路誘導装置を提供することを目的とするものである。(公報第2頁段落番号0005) B.上記経路計画装置16は、地図データベース12を用いて自車現在位置から予め設定された走行目的地までの走行経路の計画を行うようになっている。この走行経路計画においては、自車現在位置から走行目的地までの走行経路ロスが最小となる最適走行経路を、ダイキストラ法等の手法を用いて求める処理が行われるようになっている。上記走行経路ロスは、上記各リンク毎および各ノード毎に設定されたコスト(すなわち、該リンクを走破するのに要する時間(旅行時間)、該リンクの道幅、勾配、舗装有無、該ノードにおける直進、右折、左折の別等、走行し易さを阻害する程度)の累積値として算出されるようになっている。(同第3頁段落番号0018) C.上記走行目的地の設定は、データ入力装置24においてタッチパネル等を用いたマニュアル入力により行われるようになっており、また、上記走行目的地への目標到達時刻についても、データ入力装置24においてマニュアル入力により設定することができるようになっている。(同第3頁段落番号020) D.上記経路計画装置16は、上記目標到達時刻の設定がなされていないときには、上記最適走行経路を求める処理を行うようになっているが、上記目標到達時刻の設定がなされたときには、この設定された目標到達時刻と上記最適走行経路を走行した場合の走行目的地への到達予定時刻との差に応じて走行経路を変更するようになっている。(同第3頁段落番号0021) E.上記外部情報受信装置26は、渋滞情報や事故・障害等の道路交通情報を受信するようになっている。ここで渋滞情報は、上記各リンク毎の旅行時間で表現されたものを用いるようになっている。受信された道路交通情報は、経路計画装置16に出力され、該経路計画装置16における上記最適走行経路の計画およびその変更に用いられるようになっている。また、上記時計28から現在時刻が経路計画装置16に出力されるようになっている。 (同第3〜4頁段落番号0022) F.経路誘導装置は、イグニッションスイッチオンにより起動し、経路計画装置16により、まず、誘導開始地を自車現在位置として走行目的地までの走行経路ロスが最小となる最適走行経路の計画を行い、この最適走行経路に従って経路誘導が行われる(ステップS1)。この起動当初はまだ外部情報が得られないので渋滞情報は加味されていないが、経路計画装置16は、交通情報受信装置26により新たな渋滞情報が受信されたとき(ステップS2)、あるいは自車が現在走行中のリンクの終端ノードNsに近づいたとき(ステップS3)、渋滞情報を考慮して再度最適走行経路の計画を行う(ステップS4)。その際、受信された渋滞情報を旅行時間tiとして各リンクLi毎のコスト演算に加味する。(同第4頁段落番号0024) G.こうして得られた最適走行経路に従って走行した場合における自車現在位置から走行目的地までの走行所要時間tt(tt=Σti+ts(ここにtsは自車現在位置からノードNsまでの旅行時間))と、残り時間tr(tr=目標到達時刻?現在時刻)とを比較する(ステップS5)。(同第4頁段落番号0025) H.その結果、走行所要時間ttの方が短ければ、到達予定時刻の方が目標到達時刻よりも早くなり、したがって時間的余裕があると判断して、時間調整のための代替走行経路を計画し、この代替走行経路に従って走行目的地Gまでの経路誘導を行う(ステップS6、S7、S9)。この代替走行経路は、到達予定時刻が目標到達時刻よりあまり遅れない範囲で、適当な評価基準に基づいて行う。例えば、より快適な走行を実現するため、景観良好地を通る走行経路を代替走行経路として選択したり、あるいは、経路誘導を一層円滑に行うため、視認性の良いランドマ?ク近傍を通る走行経路を代替走行経路として選択したりする。(同第4頁段落番号0026) I.一方、走行所要時間ttの方が長ければ、時間的余裕がなくむしろ目標到達時刻には間に合わない状況にあるので最適走行経路に従って走行目的地Gまでの経路誘導を行う(ステップS8、S9)。なお、この場合、走行経路ロスが多少増大してもよいのであれば(すなわち走行し易さを多少犠牲にしてもよいのであれば)、可能な限り目標到達時刻に間に合わせるように、上記最適走行経路に対して走行所要時間が短い走行経路設定しておき、これを代替走行経路として選択するようにしてもよい。(同第4頁段落番号0027) (3)対比・判断 例えば、人が日帰りでドライブをしようとするときには、何時に出発するか、どこに行くか、何を見るか、その場所を見るためにどのくらいの時間をさけるか、どこで食事をとるか、食事時間はどのくらいか、どの様なルートで廻るか、何時頃帰宅するか等、様々な条件を考えて、1日の計画をたてるのが一般的である。 換言すれば、人が旅行計画をたてる場合には、出発時間、立ち寄りたい場所(単数或いは複数)、その場所での滞在時間、それらの場所をどの様な順序で廻るか、帰宅時間等、様々な条件を考えて計画をたてるのが一般的である(例えば、小学生の遠足旅行等がよく知られた例である。)。 そして、その計画に基づいて、更に、移動等に要する時間をも考慮して、全ての行程消化のための時間(旅行に要する時間)を計算し、旅行に要する時間が、出発時間から帰宅時間までの時間を越える場合には、観光したい場所を減らしたり、観光時間(滞在時間)を短くして、帰宅予定時間内に帰宅できるように計画を変更するものであるのはよく知られた事実であり、これらのことは、人が旅行計画をたてる際の常套手段である。 本件補正発明は、コンピュータが処理する「旅行計画作成システム」であって、コンピュータがなす処理は、入力された情報、即ち、旅行開始から旅行終了までの旅行予定時間、立寄り場所、その立寄り場所での滞在時間、に基づいて、旅行予定時間と消費予定時間(前記立寄り場所及び立寄り場所での滞在時間から算出)とを比較して、過不足がある場合には、滞在時間を変更することにより、その過不足を解消しようとするものであるところ、このコンピュータが処理する内容は、上記した、人が旅行計画を立てる際の常套手段と同じものであることは明らかである。 してみると、本件補正発明は、人が旅行計画を立てる際に行う思考活動をコンピュータにさせたものと言うことができ、そうであれば、本件補正発明と上記常套手段とは、旅行計画作成のための思考内容の点で一致し、次の点で相違するものと認められる。 [相違点] 本件補正発明が、コンピュータが処理する旅行計画作成システムであり、コンピュータに旅行計画を作成させるために、入力手段、消費時間取得手段、過不足判定手段、計画変更手段を有している点。 この相違点について検討する。 上記引用例には、自車の現在位置から走行目的地までの最適経路を、種々の情報を入力することにより、経路誘導装置(ナビゲーション装置:コンピュータ)に決定させることが記載されているが、このような誘導装置がない場合、目的地までの経路は、人が選択・決定するものである。 即ち、引用例には、人が思考活動により選択・決定する、走行目的地までの経路を、種々の情報を入力することにより、コンピュータに選択・決定させる発明が記載されている。 このことを始めとして、各種シミュレーション等に見られるように、現在では、人が行う思考活動をコンピュータにさせるようにすることは当たり前のことであるから、人が思考活動により作成する旅行計画を、コンピュータに作成させるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることであると認められる。 そして、その際、コンピュータがそのような処理を為すのに必要な各手段について検討するに、引用例に記載された「経路誘導装置」は、上記Cに記載されるように、各種データを入力する「データ入力装置(入力手段)」を有しており、又、上記D、F〜Iの記載によれば、「走行所要時間(旅行に消費される時間)」と「残り時間」(誘導開始位置が自宅であるとすれば、旅行の開始から終了までの「旅行予定時間」と言える。)とを計算し、走行所要時間(旅行に消費される時間)と残り時間(旅行予定時間)とを比較して、その多少を判定し、この比較・判定結果から経路を変更するものであるから、「消費時間取得手段」、「判定手段」、「旅行計画変更手段」を有しているということができ、人が思考活動により作成する旅行計画を、コンピュータに作成させるようにするに際し、これら各手段を応用して上記相違点の構成とすることに、格別の困難性は認められない。 なお、引用例に記載された各手段は経路変更のための手段であるから、上記常套手段のような旅行計画作成に応用するに際しては、これら各手段を、上記常套手段に含まれる「立寄り場所」に関する条件(情報)をも加味したものとしなければならないことは言うまでもないことである。 以上のとおり、本件補正発明は、人が作成する旅行計画をコンピュータに作成させるに際し、上記引用例に記載された事項に基づいて必要な手段を特定したものということができるから、当業者が、上記常套手段及び引用例に基づいて、容易に発明することができたものであると認められる。 [作用効果]について そして、本件補正発明の作用効果も、上記常套手段及び引用例から当業者が予測できる範囲のものである。 [まとめ] したがって、本件補正発明は、常套手段及び引用例に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 上記のとおり、平成13年6月29日付けの手続補正が却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成12年11月21日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 「入力情報に基づいて旅行計画を作成する旅行計画作成システムであって、 旅行開始から旅行終了までの旅行予定時間と、旅行中に立寄る立寄り場所及びその立寄り場所の滞在時間を含む立寄り場所情報と、を含む旅行予定情報を入力する入力手段と、 旅行中に消費される消費予定時間を前記立寄り場所情報に基づいて取得する消費予定時間取得手段と、 前記旅行予定時間と消費予定時間との比較を行い旅行予定時間に対する消費予定時間の過不足を判定する過不足判定手段と、 前記判定の結果、過不足がある場合に該過不足を解消する方向に旅行計画が推移するように、滞在を伴う立寄り場所の数と、前記立寄り場所の滞在時間と、の少なくとも一方を変更する変更する計画変更手段と、 を含むことを特徴とする旅行計画作成システム。」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記2.において検討した本件補正発明から「計画変更手段」の変更対象を限定する事項である「滞在時間」に関する構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.」に記載したとおり、常套手段及び引用例に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、常套手段及び引用例に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例、及び、周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-02-25 |
結審通知日 | 2003-03-04 |
審決日 | 2003-03-18 |
出願番号 | 特願平8-8669 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判長 |
佐藤 荘助 |
特許庁審判官 |
岡 千代子 久保田 健 |
発明の名称 | 旅行計画作成システム |
代理人 | 吉田 研二 |
代理人 | 金山 敏彦 |
代理人 | 石田 純 |